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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y43
管理番号 1114936 
審判番号 無効2004-89031 
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-06-11 
確定日 2005-03-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4708608号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4708608号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4708608号商標(以下「本件商標」という。)は、「うおや亭」の文字を横書きしてなり、平成14年12月25日に登録出願、第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供」を指定役務として、平成15年9月12日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の利益について
請求人は、役務「すしを含む飲食物の提供」に商標「うおや亭」を使用していたところ、書面(甲第1号証)において、被請求人から本件商標の商標権を侵害する旨の警告を受けたので、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)請求人(株式会社魚喜)の経歴について
請求人の子会社であった「有限会社うおや亭」は、当初、平成7年8月1日に「有限会社ロッキー」として設立され、その後、平成9年7月1日「有限会社うおや亭」に商号変更し、平成13年9月3日に請求人と合併し現在に至る(甲第2号証)。
よって、請求人は、「有限会社うおや亭」が所有する権利を全て承継するものである。
(3)請求人が営業する店舗について
有限会社うおや亭は、平成9年7月1日に商号変更を行い株式会社魚喜に合併される平成13年9月3日までに、「うおや亭」又は「回転寿司うおや亭」の名称で神奈川県、静岡県、東京都、岐阜県において店舗を出店し営業を行っている(甲第3号証の1ないし甲第3号証の6)。
(4)請求人が出店した店舗について
請求人は、平成13年9月3日に有限会社うおや亭を合併した後、本件商標の登録出願日までに、「うおや亭」又は「うおや亭」を店名の一部に含む店舗を東京都において出店し展開している(甲第3号証の1ないし甲第3号証の6及び甲第4号証)。
さらに、請求人は、平成14年4月15日に東京証券取引所市場第二部に上場され、現在に至っている(甲第4号証)。
(5)「うおや亭」又は「回転寿司うおや亭」の周知著名性について
請求人が展開する「うおや亭」又は「回転寿司うおや亭」は、雑誌、新聞等の刊行物、インターネット上のホームページ等の情報伝達媒体において広く紹介されている(甲第5号証の1ないし甲第12号証)。
請求人が営業する各店舗の出店後から平成15年12月までの各店舗の1日当たりの平均客数、売り上げ実績は、店舗別一日平均実績推移表(甲第13号証)に示すとおりである。
よって、「うおや亭」は、請求人が行う魚を使った刺身、すし等の飲食物を提供する役務を示す商標として、本件商標の登録出願以前において、需要者の間に広く認識され、さらには、著名なものとして認識されていたものである。
(6)商標法第4条1項第10号について
請求人が魚を使った刺身、すし等の飲食物を提供する店舗名として、さらにはその業務を表示するために用いる商標「うおや亭」又は「うおや亭」を要部とする「回転寿司うおや亭」は、本件商標の登録出願当時において、請求人の役務であるすし等の飲食物を提供する役務を表示するものとして需要者の間に広く知られていたものである。
一方、本件商標は、「うおや亭」と横書し、その指定商品を第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供」とするものである。
本件商標は、「ウオヤテイ」と称呼されるものであり、請求人が使用する商標「うおや亭」又は「回転寿司うおや亭」も、「ウオヤテイ」又は「カイテンスシウオヤテイ」と称呼されるものであり、同一の称呼を生じ、要部の称呼において一致するものである。そして、本件商標の指定役務も請求人が取り扱う役務と一致するものである。
よって、本件商標は、請求人が使用する周知商標と同一又は類似のものであって、その指定役務「飲食物の提供」については請求人の役務と共通にするものである。
(7)商標法第4条1項第15号について
請求人は、本件商標の役務である「宿泊施設の提供」まで行うものではない。
しかし、請求人は、甲第4号証(リクナビ:株式会社魚喜)及び甲第5号証(雑誌)等からも明らかなように、鮮魚等水産加工物の小売りを業務とし、この業務を中心にして食品に関する業務を展開している。
また、請求人が使用する商標「うおや亭」は、関東、関西を含む中京において広く知られたものであり「宿泊施設の提供」に「うおや亭」の商標を使用した場合には、需要者をして、請求人がその業務分野に進出したものであって、請求人が提供する役務を表示するかの如く誤認、混同することは明らかである。
そうしてみると、本件商標は、請求人が行う役務と混同を生ずるおそれがある。
(8)商標法第4条第1項第19号について
本件商標権者は、本件商標のみならず、他人の著名な標章と同一又は類似の標章を商標とする出願を行っていることが特許庁の電子図書館において確認されている。
本件商標においても、請求人において商標登録を受けていないことを見出して出願を行い登録を受けたことは明らかである。
(9)商標法第4条第1項第7号について
商標権者は、甲第1号証(請求人宛書面)の警告を行った後、請求人との話し合いの場において、高額な価額での譲渡の提案を行うなど、たまたま不登録事由が見過ごされて登録されたことに起因して不当な利益を得ようとするものであり、商標法の制度目的を悪用したものといわざるを得ない。
請求人及び請求人の代理人との話し合いの経過については、請求人会社の社員が作成した「報告書 商標権侵害について(第2回目)」(甲第14号証)に示すとおりである。
なお、本件商標権に基づく警告後の請求人及び請求人の代理人との交渉の経緯を立証し、本件商標権者が本件商標を出願するに至った意図を明確にするため、商標権者の尋問を求めるものであり、さらに、請求人の代理人とともに商標権者との交渉に立ち会った請求人会社の社員を証人として尋問を求める。
(10)商標法第3条第1項柱書きについて
商標権者は、甲第14号証(報告書)にも示されるように、請求人及び請求人の代理人との話し合いの場等において、直ちに譲渡の提案を行うなど、本件商標を使用する意思は認められない。この点については、商標権者の尋問において立証する。
このような事実からも、商標権者は、本件商標を使用する意思が全くなく登録出願を行ったものであものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条1項第10号、同第15号について
被請求人は、この点について、単に、争う、と主張するのみであって、一切の根拠ある主張を示すものではない。
(2)商標法第4条1項第19号について
被請求人は、この点についても、単に、争う、と主張するのみで一切の根拠ある主張を示すものではない。
被請求人は、請求書で記載した出願のみならず、他の商標登録出願を行っていることが特許庁のデータベースから確認される。
このように、被請求人が出願する商標は、請求書において示した出願のみならず、全ての出願が他人が使用し、さらには他人の造語に係る商標であって、他人の著名な商標に化体された業務上の信用にフリーライドすることを目的とした登録出願であることは容易に推認されるところである。
(4)商標法第4条1項第7号について
被請求人は、請求人の主張した点について、高額な譲渡提案などしていないとし、さらに、甲第14号証(報告書)の証拠には同意できないとしてしている。
この本件商標権に基づく警告後の請求人との交渉の経緯、被請求人が本件商標を出願するに至った意図については、被請求人の尋問により立証する用意があるので、あらためて被請求人の尋問を求める。
(5)商標法第3条第1項柱書きについて
被請求人は、本件商標の使用の意思もなく出願を行ったことについても、被請求人の尋問により立証する用意があるので、あらためて被請求人の尋問を求める。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 被請求人は、請求人に高額の譲渡提案などはしていない。
2 甲第14号証(報告書)で提示された議事録は、テープレコーダーによる録音から記述されたものと推測できる。
同日の話し合いをテープレコーダーにて録音している事は当方に対し、事前にも又事後にも何ら説明もなく、これは隠し撮りであり、まったく卑怯かつ信義に反する行為と言わざるを得ない。
従って、甲第14号証(報告書)の証拠については、同意できない。
3 請求人は商標法上の不利を認識し、被請求人に対し話し合いを求めた事実(乙第1号証ないし乙第3号証)は、請求人が本件商標を有効と認めた事を前提とした行為であり、無効審判請求を提起する事自体大いに矛盾する行為と言わざるを得ない。

第4 当審の判断
1 請求人の提出に係る甲第各号証によれば、下記の事実が認められる。
(1)請求人は、被請求人(商標権者)から、本件商標の商標権を侵害する旨の警告を受けていること(甲第1号証)。
(2)請求人(株式会社魚喜)は、有限会社うおや亭と平成13年9月3日に合併し現在に至っていること(甲第2号証)。
(3)請求人は、回転寿司等を営業する各店舗を神奈川県、静岡県、東京都、岐阜県において出店し、その名称(UOKIグループ飲食店名)に「うおや亭」、「回転寿司うおや亭」又は該文字と各出店場所(地名)と結合し飲食店名(商標)として、例えば、「うおや亭湘南台店」、「うおや亭パレットタウンサンウォーク店」等の表示をもって使用していること(甲第3号証の1ないし甲第3号証の6)。
(4)請求人の会社は、現在、東京証券取引所市場第二部に上場されていること(甲第4号証)。
(5)有限会社うおや亭及び請求人の使用する「うおや亭」、「回転寿司うおや亭」又は該文字と結合された各飲食店名(商標)は、平成10年頃より、パンフレット、各種雑誌、新聞、インターネット上のホームページ等において、継続して宣伝広告され掲載されている事実が認められる(甲第3号証の1ないし甲第12号証)。
2 請求人の使用する各飲食店名(商標)の周知著名性について
前記した(2)ないし(5)の事実及び請求人が営業する各店舗の1日当たりの平均客数、売り上げ実績(甲第13号証)等この種業界の実情を総合勘案すれば、「うおや亭」、「回転寿司うおや亭」又は該文字と結合された各飲食店名(商標)は、請求人(UOKIグループ)が「寿司等の飲食物を提供」する役務を表示する商標として、本件商標の登録出願時を経て登録査定時に至るまで、継続して需要者の間に広く認識されている商標と認められるものである。
3 商標法第4条1項第10号について
本件商標は、「うおや亭」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応し「ウオヤテイ」の称呼を生ずるものである。
他方、請求人が使用する「うおや亭」、「回転寿司うおや亭」又は該文字を要部とする商標(飲食店名)よりは、「うおや亭」の文字部分に相応し「ウオヤテイ」の称呼を生ずるものである。
してみれば、本件商標と請求人が寿司等の飲食物を提供する役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されている商標とは、「ウオヤテイ」の称呼を共通にする類似の商標である。また、本件商標の指定役務「飲食物の提供」と請求人の業務に係る役務「寿司等の飲食物の提供」とは同一又は類似するものである。
そうしてみると、 本件商標は、請求人が使用し需要者の間に広く認識されている商標と類似のものであって、その指定役務「飲食物の提供」については請求人の役務と同一又は類似するものである。
4 商標法第4条1項第15号について
本件商標と請求人が寿司等の飲食物を提供する役務を表示する商標として、需要者の間に広く認識されている商標とは、「ウオヤテイ」の称呼を共通にする類似の商標であることは、前記3のとおりである。
そうして、請求人は、役務「寿司等の飲食物の提供」の他に、鮮魚小売り店を各地、各場所において業務を行っていること(甲第4号証)、請求人が寿司等の飲食物を提供する役務を表示する商標として広く知られている周知著名性の程度、請求人に係る業務と本件商標の役務中「宿泊施設の提供」とはこの種業界において比較的密接の関係にあることを考慮すれば、本件商標をその指定役務中「宿泊施設の提供」に使用した場合には、請求人の使用商標を想起、連想させ、請求人の業務に係る役務若しくは請求人と経済的または組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
5 請求人の提出した証人尋問申請について
請求人は、商標法第4条第1項第7号及び商標法第3条第1項柱書の無効理由に関して、当事者間の証人尋問を求め、その理由を明らかにし、立証する、旨述べている。
しかしながら、本件商標は、請求人提出に係る甲第各号証より、前記3及び前記4のとおり認定、判断し得るものであるから、当事者間の証人尋問を行う必要はないものとして判断、審理した。
6 結語
したがって、本件商標は、他の無効理由の点を判断するまでもなく、本件商標の指定役務中「飲食物の提供」についての登録は、商標法第4条1項第10号及び本件商標の指定役務中「宿泊施設の提供」についての登録は、商標法第4条1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2005-01-28 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-15 
出願番号 商願2002-111275(T2002-111275) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Y43)
T 1 11・ 25- Z (Y43)
最終処分 成立  
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2003-09-12 
登録番号 商標登録第4708608号(T4708608) 
商標の称呼 ウオヤテー、ウオヤ 
代理人 高村 隆司 
代理人 田村 榮一 

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