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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Z25 審判 全部無効 称呼類似 無効としない Z25 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z25 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z25 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Z25 |
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管理番号 | 1113514 |
審判番号 | 無効2004-35084 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2005-04-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-02-09 |
確定日 | 2005-02-28 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4523251号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4523251号商標(以下「本件商標」という。)は、平成13年2月9日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成13年11月16日に設定登録されたものである。 第2 請求人の引用する商標 請求人が本件商標の登録の無効理由に引用する登録商標は、「ケイツー」の文字(標準文字による)を書してなり、平成12年8月15日に登録出願され、第12類、第18類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成14年8月2日に設定登録された登録第4592004号商標(以下「引用商標1」という。)、「ケイツウ」の文字を横書にしてなり、昭和55年9月1日に登録出願され、第6類、第9類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、昭和58年7月28日に設定登録された登録第1606001号商標(以下「引用商標2」という。)、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成12年9月11日に登録出願され、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成13年7月6日に設定登録された登録第4488859号商標(以下「引用商標3」という。)及び別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、昭和47年6月22日に登録出願され、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和52年11月7日に設定登録された登録第1310298号商標(以下「引用商標4」という。)である(以下これら4件を一括していう場合は「各引用商標」という。)。 第3 請求人の主張 請求人は、「本件商標の登録は、全ての指定商品についてその登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第92号証を提出した。 本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第8号、同第7号及び同第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効とすべきものである。 1 請求の理由 (1)本件商標と各引用商標が類似すること (1-1)本件商標の構成は、前説示のとおりであるから、これが「ケイツー」と称呼して認識されることは明らかである。 すなわち、ときに、ロゴ化された商標からは特定の称呼が生じないとの観察の仕方があるかもしれないが、本件商標をみれば、「K」と「II」を構成要素に含んでいることは一目瞭然としている。 それゆえ、本件商標は「ケイツー」と呼称して認識されるものであり、この点、特許庁の商標公報においても本件商標につき「ケイツー」の称呼が記載されている(甲第1号証)。 さらに、過去の裁判例においても本件商標や引用商標3及び4のようにロゴ化された図形から取引上一定の称呼を生ずるものと判断されたものが存在し、実際の取引上にもそのような例は多数存在する(甲第6号証及び同第7号証)。 加えて、特許庁の審判においても文字をロゴ化、図案化したものから一定の称呼が生じるものと判断された例が多数存在する(甲第8号証ないし同第12号証)。 このように本件商標及び引用商標3及び4が文字をロゴ化したものであっても一定の称呼「ケイツー」の称呼が生じると認識されるとすることは何ら不自然なことではない。 次に、本件商標は被請求人自身により現実に使用されており、その現実の使用状況をみると、本件商標を言い表す際、欧文字「K」及びローマ数字「II」の文字の組み合わせからなる「KII」の文字を素直に使用している。例えば、被請求人に係るホームページにおいて本件商標が記載されているページに本件商標を表す為、単に「KII」と記載し、被請求人は本件商標には「KII」の文字がその構成中に含まれることを自ら認めている。また、同ホームページ中の文章中には「・・・『KII』といった自社ブランドを開発し・・・」や「オリジナルブランド『KII』」等と記載している(甲第13号証)。 さらに、被請求人の取扱う「KII」ブランドの婦人服には「KIIbyTakihyo」と記載された布タグが縫い付けられており、紙製の商品タグにも同様の記載が付されている。 次に、現実の取引の場面において、取引者や需要者に被請求人の上記「KII」がどのように称呼されているかを明らかにすべく、被請求人の「KΙΙ」商品の卸先に対し架電調査を行ったところ、被請求人製の上記「KII」は「ケイツー」という称呼で現実に認識されている(甲第14号証)。 また、上記「KII」は、繊維業界の機関紙である「繊研新聞」でも紹介されており「KII」に関し、「『タキヒョー』の『ケイツー』は・・・」と記載されている(甲第15号証)。 以上のことに鑑みれば、被請求人自身が本件商標に欧文字「K」及びローマ数字「II」の文字の構成部分が含まれていることを前提に、これを採択したものであり、かつ、この構成部分を要部として本件商標からは「ケイツー」の呼称が生じるものと自認しており、更に、取引者や需要者にもそのように認識されていることがわかる。 (1-2)他方、各引用商標をみてみると片仮名文字よりなる引用商標1及び2からは、「ケイツー」の称呼が生じることは当然のところであり、引用商標3及び4は欧文字「K」とアラビヤ数字「2」を合してロゴ化してなることが明白であるところ、本件商標と同様の理由から、「ケイツー」の呼称で認識されるものである。 また、引用商標3及び4は、請求人の商号「K2 Corporation」の要部「K2」をロゴ化したものであるところ、「K2 Corporation」は米国において他に「K2 In‐ILine Skates」,「K2 Snowboards」及び「K2 Skis」などの「K2」を含む100%子会社を擁し、スキー、スノーボード、スケートボードなどのスポーツ用品会社として、上位のシェアを占め、「K2」の略称で世界的に著名な会社になっていると同時に、その要部をロゴ化した引用商標3及び4も「ケイツー」の称呼で呼び習わされているものである。 更に、わが国においても、請求人「K2 Corporation」は100%子会社「株式会社ケイツージャパン」を1978年に設立し(甲第16号証、同第17号証)、その商号とともに「K2」のロゴ(引用商標3及び4)を「ケイツー」の呼び名で称呼し、取引者及び一般需要者からも「ケイツー」の呼び名で愛称され、著名となり、かつ社会通念化しているものである。なお、各引用商標も「ケイツー」の呼び名でもって著名であることは、後で詳述する。 (1-3)したがって、本件商標及び各引用商標からはともに「ケイツー」の称呼が生じ、互いに類似の商標であることは当然の論理的帰結であり、取引の実際に合致するものである。 (1-4)本件商標の指定商品及び各引用商標の指定商品の類似 本件商標は、前記記載の商品を指定商品とするが、特許庁の商品類否の審査基準からみて、この全ての商品に関し、引用商標1及び3の指定商品と類似し、「被服」については、引用商標4の指定商品と類似し、「運動用特殊衣服,運動用特殊靴」については引用商標2の指定商品と類似するものである(甲第1号証ないし同第5号証)。 よって、本件商標は、各引用商標と称呼上類似するものであり、指定商品の点でも各引用商標に係る指定商品と同一又は類似の関係にあるので、商標法第4条第1項第11号に該当することは明らかである。 (2)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する点について (2-1)上記で述べたように各引用商標と商標・商品ともに類似関係にあるが、本件商標と各引用商標とが外観上、並びにそこから看取される観念において異なる印象を与えるため、仮に本件商標と各引用商標とが非類似とされ本件商標が各引用商標との関係で商標法第4条第1項第11号に該当しないとされるとしても、本件商標は次のとおり同法第4条第1項第15号に該当するものである。 すなわち、上述のように、本件商標が指定商品「被服」につき実際に使用される度に「ケイツー」と称呼されている事実及び各引用商標が「運動用特殊被服その他の被服」などについて「ケイツー」の称呼で世界的に著名な商標として認識されている事実に照らせば、取引者・需要者が本件商標を請求人の業務に係る商品であると誤って認識することは容易に想像されるところである。 (2-2)請求人及び著名ブランド「K2」(ケイツー)について (a)請求人K2社は、歴史ある著名な国際的スポーツメーカーであり、そのハウスマーク「K2」(ケイツー)は、世界的に著名なスポーツブランドとして圧倒的な顧客吸引力と信用の化体した商標である(甲第69号証ないし同第85号証)。 K2社は、1964年にアメリカ合衆国シアトルのバション・アイランドで創業者ビル・カーシュナー及びドン・カーシュナーにより設立された会社である。ブランド「K2」(ケイツー)はこの創業者の名前及び世界2番目の最高峰「K2」(ケイツー)の名に由来する(甲第17号証)。 「K2」ブランドは、もともと医療機器等を製造していた創業者が、ある日借りてきたスキーに満足できず、自分たちで欲しいスキーを作り上げようとの思いからはじまったもので、1964年の製造開始当時は僅か250組の販売に過ぎなかったK2社のスキーは、その性能と独創性から一大人気を博し、僅か数年で数万台規模の販売数に伸びるに至った(甲第17号証)。 1965年のワールドカップ大回転では、K2スキーのチームが優勝した。これはアメリカ製スキーとして初の快挙として話題となり、さらに1984年のサラエボオリンピック・スラロームでもK2スキーを使用したメイヤー兄弟が優勝したことなどによって、K2社のスキーの性能・品質の高さは世界に知れ渡り、「K2」ブランドはその高い信頼と名声を獲得し、その地位を確立するに至った。 K2社は、1978年には我が国にも進出し株式会社K2ジャパンの設立やノルウェーのマドショスA/S社の吸収(1989年)等を経て、その資金力強化と国際的な販売網の拡充を図る一方で、スキー以外の商品(スノーボードやマウンテンバイク等)にも積極的に進出し、総合スポーツメーカーとしての地位を確立している。 このような背景の下、現在ではK2社のメインブランドである「K2」は、その歴史、品質の高さと名声を獲得した世界的スポーツブランドとしてスポーツ関係者は勿論のこと、我が国の一般需要者にも浸透している。すなわち、「K2」ブランドは、我が国に進出して25年以上の歴史を有し、既に我が国において広く浸透している。そして大手スポーツ量販店のほとんどで取扱われており、その取扱商品もスキーだけではなく、スノーボード・インラインスケート・スケートボード・BMX・MTB製品、各種スポーツに用いる被服はもちろんTシャツや、スニーカー等多岐にわたっている(甲第18号証ないし同第45号証)。 また、上記K2ジャパンはこれら商品販売、各種スポーツに関する情報提供も行っている(甲第17号証)。また、ケイツーブランドの商品は大手スポーツ用品量販店であるVICTORIAや石井スポーツなどでも数多く取り扱われている(甲第48号証ないし同第61号証)。 また、2001年頃には、請求人製の「キックスケーター」(キックボード)が我が国で一大流行したことからも(甲第44号証、同第86号証)、請求人の名称及び「K2」ブランドは日本で周知となった。 そして、株式会社K2ジャパンの日本での宣伝広告活動について述べると、株式会社K2ジャパンは1982年頃から継続し長期間にわたって日本スポーツ工業新聞社を通して「K2」ブランドを宣伝・広告しており(甲第62号証)、株式会社山と渓谷社発行の雑誌「skier」においても、「K2」ブランドを広告宣伝している(甲第63号証)。株式会社K2ジャパンのホームページにおいても、K2ブランドの各種商品を広く紹介している。更に、多くのスポーツイベントも催している(甲第46号証及び同第47号証)。 さらに、請求人の製造に係る商品は、その質の高さから業界の一流品としての地位を得ており、スキー雑誌において、トップブランドの特集をすれば、請求人ブランドが登場する(甲第65号証及び同第66号証)。 「K2」ブランドの日本における各取扱店における証明書によっても、「K2」ブランドが日本において周知であることが立証されている(甲第48号証ないし同第61号証)。請求人ブランドのスノーボード製品の売上は、わが国における主要ブランド別売上で首位の占有率を誇り、スキー製品の売上も、上位10社以内に位置する(甲第67号証及び同第68号証)。 (2-2)請求人K2社は、「K2」、「K2」からの同一性のある表音「ケイツー」が生ずる各商標について多数出願し、総括的にブランドの登録管理している(甲第69号証ないし同第85号証)。 このことからも証明されるとおり、少なくとも本件商標登録出願当時に「K2」は世界的一流スポーツブランドとして高い信用と名声を獲得した著名商標としてその地位を確立している。 (2-3)企業における多角経営の可能性 請求人は、スキー、スノーボード、インラインスケート、マウンテンバイクなど多種多様なスポーツ用品を製造販売している。また、各種スポーツイベントやスポーツ情報提供業務も行っている。請求人は、スポーツ関連業務を主としているが、近年、異業種同士の共同制作によって、さまざまな製品やサービスが販売又は提供されることが多々ある。 請求人についても、請求人の日本法人である株式会社K2ジャパンはフォード・ジャパン・リミテッドとの共同制作にて「K2/フォードオリジナルオーディオチェア」を製作し、販売活動をしており、また日本たばこ産業株式会社が販売活動の商品として請求人ブランドのスノーボードを使用している(甲第87号証及び同第88号証)。 このような背景に鑑みれば、企業の多角経営の可能性は様々な分野に存在し、本件商標の指定商品の分野についてもその例外ではない。 (2-4)商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 請求人商標「K2」は、上記で述べたとおり、現在スポーツ関連製品や被服、スポーツイベントなど、スポーツに関連する分野において著名である。 特に近年スポーツへの関心が高まっていることから、そのスポーツメーカーのブランド力も高まり、これを利用するために他業種がスポーツメーカーにブランド使用の申し入れをすることは多々ある。 その証拠に上記で述べた他業種と共同で各種活動を行っており、また、近年のビジネス界の流行として、異業種同士の共同制作が盛んである(甲第87号証及び同第88号証)。 したがって、万人が興味・関心を持つスポーツ分野のブランドもまた、様々な商品・役務へ商品化する可能性があるといえ、更に本件商標は著名商標である引用商標3及び4を直感させる商標であり、請求人に係る「K2」ブランドに化体した出所表示力を利用することで本件商標に係る商品が請求人と経済的・組織的に何らかの関連のある商品であると出所の混同を生じさせるものであり、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。 (3)本件商標が商標法第4条第1項第8号の規定に該当する点について 本件商標は、上述のようにアルファベット文字「K」及びローマ数字「II」の文字を組み合わせた構成部分を含むものでありますが、この構成部分は上の著名商標「K2」と比して、ローマ数字「II」とアラビヤ数字「2」とので相違するにしても、「II」と「2」は、共に同じ意味合いを有する数字であり、しかも、ローマ数字とアラビヤ数字は日常頻繁に使用される文字であることから、「KII」と「K2」は社会通念上同一視されるものである。また、「K2」の文字が上述のとおり請求人を表す著名ブランドであり、請求人「ケイツー,コーポレーション」の名称(商号)の略称として既に多くの人々に親しまれている実情に照らせば、本件商標が同号にいう他人の名称の略称と同一性を有する商標として認識されることは容易に想像されるところである。したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第8号に該当することは明らかである。 (4)本件商標が商標法第4条第1項第7号の規定に該当する点について この規定は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標は登録を受けられない旨を定めている。これは、商標の構成自体がきょう激、卑わい、若しくは差別的な印象を与えるような文字、図形などから構成されている場合だけでなく、商標自体はこのようなものでなくとも、これを指定商品又は指定役務に使用することが社会公共の利益・社会の一般的道徳観念に反する場合や一般に国際信義に反する商標である場合にその登録を拒絶すべきことを定めていると解されているところである。 また、近時における諸外国との貿易摩擦が激化する中で、世界的に著名な商標を適切に保護することが国際社会での我が国の当然の義務である点も考えれば、他人の著名な標章と混同されるような商標の登録が認められることは、国際信義に反するもので、このような商標の登録を認めることは商標法の目的に反することはいうまでもない。 上述のとおり、本件商標は請求人の著名商標中の「2」を「II」に変更しただけの文字をその構成中に含むもので、請求人K2社の著名ブランド「K2」そのものを直ちに認識させ、「K2」ブランドの顧客吸引力にフリーライドしていることに他ならない。本件商標の構成内容からみて、被請求人が正当な権利を有して著名商標「K2」と偶然に一致する標章を採択したものとみることは到底できるものではない。 したがって、本件商標は、前記の「K2」に依拠し、不正に意図して、その登録出願をしたものと推察し得るものといわざる得ないものである。 また、仮にこのような意図がないにしても、本件商標が国際信義に反し第4条第1項第7号に該当することは明らかである。 (5)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する点について この規定は、いわゆる他人の周知・著名商標の「不正な目的」を有する剽窃的な出願商標の登録を排除せしめんとするものである。 他人の商標が外国や我が国で周知・著名であることは、同規定を適用する第一の要件であるが、それとともに周知・著名の事実は、同号にいう「不正の目的」の存在を認定する有力な材料となり、他人の商標が周知・著名でなければ、そもそも、不正の利益を得ることや損害を与える対象の商標となることは稀であり、むしろ、出願商標が他人の周知・著名商標と同一又は類似のものであるときは、そのことをもって不正の目的の存在を推認しうるものと考えられる(甲第90号証)。 よって、上述のよう不正の目的の存在が推察できるものであり本件商標が商標法第4条第1項第19号にも該当するものである。 (6)以上のとおり、本件商標は、その出願時点で既に商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に該当したものであり、商標法46条第1項1号に基づきその登録を無効にすべきものであえるから、その旨の審決を求めるものである。 2 弁駁の理由 (1)被請求人は、本件商標は、アルファベット「K」とローマ数字「II」を組み合わせたものであるとの請求人の主張に対し、本件商標が被請求人の創作に係る特殊な図形であり、アルファベットとローマ数字の組合わせたものであるとの主張自体が根本的に誤っているものと述べ、本件商標の右側の構成は、色彩を異にした帯状の図形と、2本の線を縦に表したものであり、何等ローマ数字を表したものではなく、本件商標はあくまで特殊な図形である旨を主張し、判決例(乙第1号証の1)及び併存登録例(乙第1号証の2、同第1号証の3)をその証拠として提出している。 そして、被請求人は、これら証拠が本件と同様の状況にある商標「KII」が普通の態様で表したものとは認識しえない程度に特異な構成とした図形として「ケイツウ」と類似しないとされた事例であり、本件商標も全く同じような状況であるから、「ケイツー」の称呼は生じない旨を主張している。 しかしながら、被請求人のこの主張は失当なものといわざるを得ず、到底容認できるものではない。 (a)まず、被請求人が本件商標の右側の構成が、何等ローマ数字を表したものではなく、本件商標はあくまで特殊な図形であると主張されている点であるが、本件審判請求書で述べたように、本件商標右側下部の文字はローマ数字「II」であると認識されるもので本件商標は「ケイツー」の称呼が生じるものとして認識されることは明らかである。 本件商標が仮に被請求人の創作に係る特殊な図形であるにしても、これが「KII」の文字を含んだ商標であることは明らかであり、本件商標からは「ケイツー」の称呼が生ずることはいうまでもない。 (b)次に、被請求人は、判決例(乙第1号証の1)が本件と同様の事例であると主張されているようであるが、この主張についても全く納得することはできない。 まず、この判決例(乙第1号証の1)は、いわゆる禁反言が問題になった裁判例であるが、被請求人の提出した乙第1号証の1は、この禁反言の争点を問題点にした論文資料であり判決文が一部省略されているので、請求人はこの判決例と本件とが全く異なる事例であることを立証すべくこの裁判例の判決全文を証拠として提出する(甲第91号証)。 つまり、この裁判例では原告登録商標(甲第1号証の2)の「K」の右側構成部分の左右の縦軸の太さが全く異なり、二本の縦の間隔が広い等の理由から当該右側構成部分をローマ数字「II」とは認定できないと判断したものと思料される。 この点、本件無効審判事件における本件商標は、その右側構成部分下部に全く同じ太さ長さの縦軸二本が平行に引かれており、この構成部分に接した者はローマ数字「II」であると素直に捉えることは容易に想像できる。 よって、上記裁判例(乙第1号証の1)と本件無効審判事件とは全く異なる事情を有し、これらを同様の事例として取り上げ被請求人に係る本件商標から「ケイツー」の称呼が生じないと主張することは全くもって失当であると言わざるを得ない。 従って、本件商標は欧文字「K」、「II」及びその上部に二色の長方形の図形部分から構成されるもので、本件商標からは「ケイツー」の称呼が生じ、審判請求書で述べた無効理由を有することは明らかである。 (2)被請求人は、請求人が所有する引用商標3及び4について、極めて図形化された商標であり、需要者はその特異な外観に強い印象を受けるもので、単にその称呼のみによって、自他商品の識別に資されることはないと主張し、異議決定(乙第2号証)を証拠として挙げている。 確かに、商標は単にその称呼のみをもって自他商品識別に資されるものではないことはいえる場合はあるにしても、本件においては、本件商標から「ケイツー」の称呼が生ずるものであり、「ケイツー」(K2)は、審判請求書で述べたとおり、国際的なスポーツメーカーであるケイーツー、コーポレーション(K2社)の略称として長年に亘り使用され既に世界中に知られた商標である(甲第18号証ないし同第68号証、甲第86号証ないし同第88号証等)。そして、引用商標3及び4は、このK2社のハウスマークとして永年に亘り世界中で使用されてきたものであり、引用商標3及び4からは「ケイツー」の称呼が生じるものとして既に世界中の取引者・需要者に深く浸透している。 被請求人が、本件商標と引用商標3及び4を外観上全く異なるからといって、両者が非類似の商標だと主張することは取引の実情を全く無視したものと言わざるを得ない。本件商標が本件審判請求書に記載したように商標法第4条第1項第11号又は同15号に該当することは明らかである。 また「被請求人は請求人に悪意すら感じる」と言っているが、被請求人は何故このような主張をしているのか全く理解することはできない。むしろ、請求人に係る「K2」(ケイツー)は既に説明したように、国際的に広く知られた著名ブランドであり、「ケイツー」の称呼を生ずる本件商標を採択すること自体いわゆる「フリーライド」による不正な取引を意図した悪意を持った行為と言わざるを得ない。本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当することは明らかであると考える。 (3)被請求人は、乙第6号証の商標を使用していたと主張し使用例として広告の写を提出しているが(乙第7号証ないし同第18号証)、これらにはいずれも明らかに欧文字「K」及びローマ数字「II」の文字を装飾化した「KII」の図形商標であり、乙第6号証及び本件商標とは全く異なる態様の商標が掲載されているだけなので、本件には何の影響も及ぼすものではない。むしろ被請求人が過去に「KII」の商標を使用していたものが(乙第7号証ないし同第18号証)、現在では本件商標の態様に変更して使用していることを容易に推察することができる。つまり、本件商標は過去に一時期使用していた「KII」マーク(乙第7号証ないし同第18号証)を継承したもので、本件商標が欧文字「K」とローマ数字「II」をその構成に含むものであることは明らかである。被請求人が答弁書で主張しているように本件商標の右側の構成は、何等ローマ数字を表したものではなく、本件商標が特殊な図形であるとするのは明らかに妥当ではない。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第18号証(枝番を含む)を提出している。 (1)請求人は、本件商標は、アルファベット「K」とローマ数字「II」を組み合わせたものであると主張しているが、本件商標は、被請求人の創作に係る特殊な図形であり、アルファベットとローマ数字の組合せに係るものとする主張自体が根本的に誤っているものである。 即ち、本件商標の右側の構成は、色彩を異にした帯状の図形と、2本の線を縦に表したものであり、何等ローマ数字を表したものではなく、本件商標は、あくまで特殊な図形であであって、「ケイツー」の称呼は生じないものである。 (2)また、請求人が有する引用商標3及び4についても、極めて図案化された商標であり、需要者はその特異な外観に強い印象を受けるものであり、単にその称呼のみによって自他商品の識別に資されることがない。 しかも、請求人は乙第2号証の存在が分かっているにも拘わらず、本件商標と類似すると主張していることには、悪意すら感じられるものである。 このように、引用商標3及び4と非類似であることは明らかであることから、引用商標3及び4が仮に著名な図形(あくまでスキー板等)であっても、本件商標が商標法第4条第1項第15号、同19号、同7号、同8号に該当しないことは言うまでもないことである。 (3)尚、上記乙第6号証の商標を以前有していたことから、被請求人は、本件商標とは異なる態様で乙第7号証ないし同第18号証に示された商標を、以前使用していた事実がある(勿論、現在では使用していない)。 このため本件商標の使用も請求人の商標とは無関係であり、不正の目的で使用しているものではなく公序良俗に反する使用をしているものでもない。 また、上記乙第7号証ないし同第18号証の商標も、登録商標の範囲内と判断して使用していたもので、使用によって商品の誤認混同を生じていたものでもない。 (4)以上述べたように、本件商標はあくまでも図案化された商標であり、引用商標と類似したり、混同を生じるようなおそれは全くないものである。 また、不正の目的なども全くないものであるので、本件審判については、答弁の趣旨通りの審決を求めるものである。 第5 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号の主張について 先ず、本件商標と各引用商標との類否について検討するに、本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるところ、その構成に係る左側に配された文字は、アルファベット文字の大文字「K」を表したものと容易に看取できるものである。 次に、「K」の右側に配された標章部分についてみるに、前記「K」と下端を揃え、かつ、「K」の約三分の二程度の高さの「二本の縦平行線」及びその平行線の略延長線上に下端から「K」の約五分の四程度の所より前記平行線の約2.5倍程度の長さのある帯状の、しかも、「K」の上端に相当する高さまでの部分を「K」及び「二本の縦平行線」と同じ濃い青に、残余の部分については薄い青色に色彩を施してなる「帯状の図形」を配した構成であるところ、両標章は纏まりよく一体不可分に構成された図形よりなるものであって、殊更、「二本の縦平行線」の部分を分離抽出して、これよりローマ数字「II」を直ちに認識することは困難といわなければならない。 しかして、本件商標は、アルファベット文字「K」と個性ある特異な独創性に富んだ図形とを組み合わせた標章で、かつ、左右バランスのとれた構成及び色彩からなる一個の商標と認められる。 してみれば、本件商標は、特定の称呼及び観念を生ずるものでないとみるのが相当である。 これに対し、引用商標1及び2は、前記のとおり、前者は「ケイツー」の片仮名文字を標準文字で表し、後者は「ケイツウ」の文字を横書きしてなるものであるから、両者はその構成文字に相応して「ケイツー」又は「ケイツウ」の称呼を生じ、特定の語義を有しない造語と認められる。また、引用商標3及び4は、それぞれ別掲(2)及び(3)に示すとおり、両商標は、アルファベット文字「K」と算用数字「2」を組み合わせたある種モノグラム的な構成よりなるものと看取し得ることから、これより「ケイツー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものと認められる。 そこで、本件商標と各引用商標との類否についてみるに、本件商標は、前述のとおり、構成された標章全体をもって一個の商標とみるのが相当であり、これより特定の称呼、観念を生ずるものでないから、「ケイツー」又は「ケイツウ」の称呼を生ずる各引用商標とは、称呼、観念について比較することができない。 更に、外観についても本件商標と各引用商標の構成は、前記のとおりであるから明らかに区別できるのもである。 してみれば、本件商標と各引用商標は、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても類似する商標とは言えないものである。 なお、この点について、請求人は、「本件商標は、欧文字『K』、ローマ数字『II』及びその上部に二色の長方形の図形部分から構成されるもので、本件商標からは『ケイツー』の称呼を生ずる。」旨主張し、証拠を提出している。 しかしながら、請求人提出の甲第1号証(商標出願・登録情報検索(詳細画面)写し)によれば、検索情報の一つとして「称呼」の欄に「ケイツ」の他5個の称呼が記載されていることが認められるが、そもそも特許庁ホームページ内の特許電子図書館による検索情報は、あくまでも参考情報として一般に公開されているにすぎないものであって合議体を何ら拘束するものでないこと明らかである。このことは、甲第6号証(商標出願・登録情報検索(詳細画面)写し)及び同第7号証(称呼検索(詳細画面)写し)についても同様である。 また、甲第13号証(被請求人のホームページ写し)、同第14号証(電話録取書)及び同第15号証(繊研新聞写し)によれば、被請求人は、アルファベット文字「K」とローマ数字「II」を結合してなる自社オリジナル・ブランド「KII」を商品「被服」について使用していることが推認し得るところであるが、別掲(1)に示す本件商標が「ケイツー」と称呼され取り引きに資する事実は、前記証拠から見出すことができない。 してみれば、請求人の主張は、採用の限りでない。 2 その他の主張について 請求人提出の証拠によれば、引用商標3及び4のアルファベット文字「K」と算用数字「2」の組み合わされた別掲(2)及び(3)に示す商標は、同人及び同人の日本法人「株式会社ケイツージャパン」によって、商品「スキー板、スノーボードおよびその関連商品」について使用され、かつ、新聞、雑誌及びインターネット等で継続的に広告宣伝された結果、本件商標の登録出願時(平成13年2月9日)に、「ケイツー」と称呼され、取引者、需要者の間で相当程度知られるまでに至ったことが認められる。 しかしながら、本件商標は、前述のとおり、称呼及び観念を生じない一個の商標としてみるのが相当であって、引用商標3及び4とは類似しない別異の商標であるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、請求人所有の引用商標3及び4を連想、想起し、その商品を同人又は同人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと認めることができない。 また、本件商標は、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形からなるものではない上、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものでないばかりか、本件商標が公正な競業秩序を乱し国際信義に反するものとは認められない。 更に、本件商標は、特定の称呼、観念を生じない一個の商標と認められるから、本件商標が他人(請求人)の名称若しくは著名な略称を含む商標とは言えない。 してみれば、本件商標は、引用商標3及び4と類似しないばかりか、被請求人が本件商標をその指定商品に使用することが、請求人の業務に係る商品に使用する引用商標3及び4の出所表示機能を希釈化させたり、又はその名声を毀損させる等不正の利益を得る目的をもって使用をするものとも言えない。 3 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
【別掲】 (1)本件商標(登録第4523251号商標) 色彩は原本参照 (2)引用商標3(登録第4488859号商標) (3)引用商標4(登録第1310298号商標) 色彩は原本参照 |
審理終結日 | 2004-10-05 |
結審通知日 | 2004-10-06 |
審決日 | 2004-10-19 |
出願番号 | 商願2001-10834(T2001-10834) |
審決分類 |
T
1
11・
23-
Y
(Z25)
T 1 11・ 22- Y (Z25) T 1 11・ 222- Y (Z25) T 1 11・ 262- Y (Z25) T 1 11・ 271- Y (Z25) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 野口 光 |
特許庁審判長 |
佐藤 正雄 |
特許庁審判官 |
宮川 久成 山本 良廣 |
登録日 | 2001-11-16 |
登録番号 | 商標登録第4523251号(T4523251) |
商標の称呼 | ケイアイアイ、キイ、ケイニ、ケイツー、ケイエルエル、ケイ |
代理人 | 菊地 栄 |
代理人 | 足立 勉 |
代理人 | 岸田 正行 |
代理人 | 水野 勝文 |