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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y35
管理番号 1111698 
審判番号 無効2004-35062 
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-02-02 
確定日 2005-02-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第4708544号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4708544号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4708544号商標(以下「本件商標」という。)は、「SHUNKAN」の文字を横書きしてなり、平成14年12月20日に登録出願、第35類「広告,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査,商品の販売に関する情報の提供,ホテル事業の管理,建築物における来訪者の受付及び案内」、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」及び第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,カーテンの貸与,会議室の貸与,家具の貸与,加熱器の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与,調理台の貸与,展示施設の貸与,流し台の貸与,布団の貸与」を指定役務として、同15年8月1日に登録査定が送達され、同月20日に付け出願人名義変更届により被請求人が出願人となり、同15年9月12日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第65号証を提出している。
<請求の理由>
(1)利害関係
被請求人は、請求人に対し、請求人の業務にかかる貸ビルの7階及び8階のフロアの愛称が被請求人の所有にかかる本件商標の商標権の侵害に該当する、と主張して内容証明郵便物による「警告書」を送りつけてきている(甲第1号証)ので、請求人は、本件商標に関し無効審判を請求する利害関係を有する者に該当する。
(2)請求人
請求人は、東日本旅客鉄道株式会社(通称「JR東日本」)の子会社であり、JR東日本グループに所属している会社である(甲第8号証)。
請求人は、JR東日本グループにおいて、ショッピング事業を担当し、東京都新宿区に所在するJR東日本「新宿駅」の駅ビルである「My City新宿」を各種テナントに貸しているものである(甲第9号証)。この駅ビル「My City新宿」は、ショッピング街やレストラン街などとして消費者に広く知れ渡っていて有名になっており、「My City新宿」の7階及び8階のフロアはレストラン街となっており、これらフロアの2002年におけるリニューアル・オープンに際しては、日本を代表する空間デザイナー杉本貴志がフロア・デザインを担当しており、このレストラン街は「上段に『SHUN』・下段に『KAN』」を配した愛称にて親しまれている(甲第10号証及び甲第11号証)。
(3)被請求人及び原出願人
ア 被請求人の住所地
本件商標の商標登録原簿に記載されている被請求人の住所地である「東京都多摩市中沢一丁目30番2号」は、「溝口隣之助」という個人の住居であり(甲第12号証)、また、上記で述べた内容証明郵便物による「警告書」に記載された「開発準備室」が存在すると被請求人が称している「東京都新宿区新宿2-15-24 ヒカリビル2F」は、契約した多数の会社のため連絡受付代行を行なっている業者「TED東京」がテナントとして入居しているだけであった(甲第13号証)。
したがって、これらの事実から勘案するに、被請求人は、単に「溝口隣之助」宅と同じ住所に商業登記簿上存在しているだけであり、その「開発準備室」なる部署も実在しておらず、被請求人は営業活動の全く無い休眠会社である、と思料される。
イ 被請求人の商標登録願
請求人が調査したところ、被請求人は、甲第14号証ないし甲第18号証の5件の商標登録願を出願中であり、これ以外の出願中の商標は無く、また、登録商標も皆無であった。
ウ 原出願人の住所地
本件商標は、平成15年8月20日付けで出願人名義変更届が提出された後に設定登録されたものであるが、本件商標の公開商標公報に記載されている原出願人の住所地である「東京都板橋区徳丸3-18-12 TOP徳丸208号」は、空室であるのか表札が全く出されていない状態であり、また、「TOP徳丸」自体、一般家庭が入居するような集合住宅であって、会社が営業の本拠を置くような商業ビルではなかった(甲第19号証)。
したがって、これらの事実から勘案するに、被請求人は、単にこの住所に商業登記簿上存在しているだけであり、営業活動の全く無い休眠会社であると思料される。
エ 原出願人の商標登録願
請求人が調査したところ、原出願人は、甲第20号証の1件の商標登録願を出願中であり、これ以外の出願中の商標は無く、また、登録商標も皆無であった。
(4)「My City新宿」の7階及び8階のフロアの愛称
請求人の業務にかかる「My City新宿」の7階及び8階に所在するレストラン街については、請求人は、これまでの既成概念を打ち破るコンセプトで再生しリニューアルしようと決意し、コンペに応募してきた5社の企画案のなかから日本を代表する空間デザイナー杉本貴志を代表者とするスーパーポテトの案を採用してフロア・デザインを依頼し、さらに飯島直樹、黒川勉、近藤康夫、森田恭通、水谷壮市といった人気デザイナーに各テナント店舗のデザインを依頼した上、「恣意的に響かず、かつ、多様性を持つ言葉」をフロアの愛称にしようと検討した結果、「上段に『SHUN』・下段に『KAN』」を配した愛称が決定され採用されて、2002年11月にリニューアル・オープンしたものであり、デザイナーによるレストラン街のデザインは、わが国では画期的なことから、種々のマスコミにて報道されたものである。
また、当該愛称については、リニューアル・オープンに先立って、2002年8月からは、プレス・リリースとしてマスコミ報道各社には伝えられており、2002年10月からはリニューアル・オープンに先立つキャンペーンとして広範囲に当該愛称の告知が行われており、それ以降も、請求人自らの広報活動以外にも、雑誌の紹介記事やテレビジョン番組による紹介などを通じて、日本全国に広く知られており、有名になり、著名になったものである。
当該愛称は、本件商標の商標登録願の出願日である平成14年12月20日にはすでに著名性を有し、本件商標の登録査定の起案日である平成15年8月1日にも著名性を保持しており、現在に至るも著名性を維持しているものである(甲第10号証及び甲第11号証並びに甲第21号証ないし甲第65号証)。
(5)登録無効理由
上記に照らしてみれば、本件商標は商標法第46条第1項に該当することは明らかである。すなわち、
ア 商標法第3条第1項柱書
被請求人(及び原出願人)は、本件商標につき、自己の業務に係る役務に使用する意図は有しておらず、請求人の業務に対する「いやがらせ」か、または、商標権侵害の損害賠償を口実に請求人に対して金銭を請求する手段として本件商標を所有するに至っているので、商標法第3条第1項柱書の要件を欠いている。
イ 商標法第4条第1項第7号
被請求人(及び原出願人)は、自己の業務に係る役務に使用する意図を有しているか否かはさておき、本件商標について、少なくとも、請求人の業務に対する「いやがらせ」か、または、商標権侵害の損害賠償を口実に請求人に対して金銭を請求する手段として用いる意図で所有するに至っており、正当な商取引の必要性に基づいて本件商標を所有するに至っているわけではないから、公序良俗に反する。
また、仮に被請求人が本件商標を自分で使用する意図を有している(又は原出願人が本件商標を自分で使用する意図を有していた)と仮定しても、被請求人(又は原出願人)が本件商標を使用したとすると、「他人(請求人)の商品等表示として需要者間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、他人(請求人)の営業と混同を生じさせる」ことになり、かつ、「自己の商品等表示として他人(請求人)の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用する」こととなるので、不正競争防止法第2条第1項第1号及び第2号に該当することとなるから、その使用が他の法律に違反して違法となってしまう商標である本件商標は、公序良俗に反する。
ウ 商標法第4条第1項第15号
本件商標は、請求人の著名な「上段に『SHUN』・下段に『KAN』」を配したフロアの愛称と同一又は類似であり、被請求人にとって他人である請求人の業務に係る役務と混同を生じるおそれがある。
エ 商標法第4条第1項第10号(予備的主張)
フロアの愛称が商標(すなわち、自他商品・役務識別機能・出所表示機能を果たす標章)であるか否かは疑問ではあるが、仮にフロアの愛称が商標であると仮定すれば、本件商標は、被請求人にとって他人である請求人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されている「上段に『SHUN』・下段に『KAN』」と同一又は類似であり、役務も抵触している。
オ 商標法第4条第1項第19号(予備的主張)
フロアの愛称が商標(すなわち、自他商品・役務識別機能・出所表示機能を果たす標章)であるか否かは疑問ではあるが、仮にフロアの愛称が商標であると仮定すれば、本件商標は、被請求人にとって他人である請求人の業務に係る役務を表示するものとして広く認識されている「上段に『SHUN』・下段に『KAN』」と同一又は類似であり、不正の目的(請求人の業務に対する「いやがらせ」か、または、商標権侵害の損害賠償を口実に請求人に対して金銭を請求する目的)をもっている。
(6)結論
上記にて論じたように、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号又は同第15号に違反して登録されたものであるから同法第46条第1項に該当し、その登録は無効とされるべきものである。
また、仮に、これらの条項のいずれにも該当しない場合には、予備的に、本件商標は、商標法第4条第1項第10号又は同第19号に違反して登録されたものであるから同法第46条第1項に該当し、その登録は無効とされるべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第10号証及び証拠説明書を提出している。
<答弁の理由>
請求の理由に対する認否および被請求人の主張
(1)について認める。
(2)について1文、2文は認める。3文は、有名になっている点について争い、その余は不知。
(3)について
アについて
請求人の多摩と新宿の住所については認めるが、休眠会社である点は争う。
多摩市中沢の住居には、平成13年10月25日付締結の建物賃貸借契約書に基づき、被請求人が事務所を構えており、業務を行っている(乙第1号証、乙第2号証及び乙第9号証)請求人は、相当に古い航空地図だけを根拠に「溝口隣之助」なる住人が、今でも同所に住んでいると主張しているにすぎない。
また、新宿区新宿2丁目のヒカリビル所在の「TED東京」は、確かに連絡事務代行会社であるが、昭和52年5月から会員企業に対して連絡代行および秘書サービスを提供している、業界ではいわゆる老舗であり、その会員企業からは、長年にわたり大変に大きな信頼を得続けている。同社は、都心部に事務所を構えることが難しい地方の会社の東京営業所として利用されたり、また、事業を本格展開する前に、一時的に連絡事務を代行してもらうために利用する会社が数多く契約している(乙第5号証)。
被請求人は平成14年2月5日に入会契約を結び、現在でもTED東京の会員企業として登録されている(乙第6号証)。
さらに、被請求人の社長である伊藤紳は、MBHの経営以外に、個人でもタイ国を舞台とするゴルフ関連事業を行っており、TED東京とは個人としても会員登録をして、「東京事務所」としてTED東京を利用している。
イについて認める。
ウについて
住所については認めるが、休眠会社であることは争う。
インターナショナルマーケティングサービスの本店所在地である、板橋区徳丸所在の「TOP徳丸」は確かに居住用マンションではあるが、「INTERNATIONAL MARKETING SERVICE,Inc」との表札が郵便受けおよび208号室のドア付近に現に表示されている(乙第9号証)。
請求人は、これも相当に古い航空地図だけを根拠に「空室」と主張しているにすぎない。
このTOP徳丸208号室は、平成14年5月からは、IMSの本店所在地ならびに社長である田谷千夏の自宅として用いられており、現存するからこそ、特許庁等から送付される郵便物が配達されている(乙第3号証)。
エについて認める。
(4)について
1文については不知。2文については、事実については不知で、有名、著名である点については争う。
(5)について
1文について争う。
アについて争う。
被請求人は、実体があり、本件商標を被請求人が近日オープンするホテルに使用する予定である。
すなわち、被請求人は、新島のホテルを購入し(乙第4号証及び乙第8号証)、改装後、本件商標を使用する予定である(乙第7号証)。
また、当該商標の原出願人は、出願の時点では請求人が使用している商標について何等知る由もない。さらに、わずか一月程度の使用の結果、請求人が主張するような周知・著名性が獲得できるはずもない。さらに、「いやがらせ」や金銭を請求する手段ではない。
イについて
1文について争う。かかる意図はない。2文について争う。
請求人は、本件商標を使用したとすると、不正競争防止法第2条第1項第1号及び第2号に該当すると主張する。
しかし、第1号との関係では、(ア)他人の商品等表示として需要者との間に広く認識されているものの存在、(イ)不正競争行為者が上記の商品等表示と同一もしくは類似の商品等表示を使用し、またはその表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引き渡しのため展示し、輸出し、もしくは輸入すること、(ウ)上記行為によって、他人の商品または営業と混同のおそれを生じること、が要件とされるところ、いずれの要件をも満たさない。
すわなち、(ア)については、請求人の表示は今だ広く知られていない。(イ)(ウ)については、どのような表示を被請求人が行うかどうかによって異なろうが、現段階では不明である以上、これらの要件を充足しないことは明らかである。
また、第2号との関係では、(ア)自己の商品等の表示として、(イ)他人の著名な商品等表示と、(ウ)同一若しくは類似のものを使用し、商品を譲渡等の行為をすることが要件とされるが、(イ)(ウ)いずれの要件も満たされない。
すわなち、(イ)については、判例上著名性の地域範囲は、一地方において著名であるだけでは足りず、全国的に著名であることが必要であるとされており、請求人の表示が全国的でないことは明らかである。
(ウ)については、どのような表示を被請求人が行うかどうかによって異なろうが現段階では不明である以上、これらの要件を充足しないことは明らかである。
ウについて争う。
商標法第4条第1項第15号は、商品、役務の類似性を要求する同項第10号との関係上、出所の混同の原因となる他人の業務を示す表示の認知度は、第10号にいう公知性と同等以上のものが必要である(最高裁昭和57年11月12日民集36巻11号2233頁等)ところ、本件では、かかる公知性は認められない。
すわなち、商標法第4条第1項第10号に該当するためには、隣接数県の相当の地域にわたり、少なくともその同種取り扱い業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するところ(東京高判昭和58年6月16日無体集15巻2号501頁)、請求人の表示がかかる認識を有されていないことは明らかである。
エについて争う。
商標法第4条第1項第10号に該当するためには、隣接数県の相当の地域にわたり、少なくともその同種取り扱い業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するところ、請求人の表示がかかる認識を有されていないことは明らかである。
オについて争う。
請求人の表示は、広く認識されていないし、被請求人は、いやがらせや金銭を請求する目的はない。
(6)について争う。
理由はないことは、これまで主張したとおりである。

4 当審の判断
本件商標は、上記のとおり、「SHUNKAN」の欧文字を書してなるものであるものであるところ、請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、第10号及び第15号に該当するものである旨主張している。
しかして、商標法4条1項7号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(ア)商標の構成自体がきょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字、図形、又は、当該商標を指定商品あるいは指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、あるいは、社会の一般道徳観念に反するような商標、(イ)特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標、(ウ)商標法以外の法律によって、その使用等が禁止されている商標等が含まれる、と解すべきである。そして、上にいう、社会の一般道徳観念に反するような場合には、本件のように、ある商標をその指定役務について登録し、これを排他的に使用することが、当該商標をなす用語等につき当該商標出願人よりもより密接な関係を有する者等の利益を害し、剽窃的行為である、と評することのできる場合も含まれ、このような商標を出願し登録する行為は、商標法4条1項7号に該当するというべきである。
そこで、請求人及び被請求人の主張並びに両者の提出に係る証拠について検討し、本件商標が商標法第4条第1項第7号に該当するかについて判断する。
甲第8号証によれば、請求人は、東日本旅客鉄道株式会社(通称「JR東日本」)の子会社であることが認められる。そして、甲第21号証及び甲第22号証のマスコミ報道各社に発した平成14年8月及び同年9月のプレス・リリース及び甲第30号証、甲第32号証ないし甲第35号証、甲第39号証、甲第41号証ないし甲第43号証、甲第45号証、甲第47号証ないし甲第52号証、甲第54号証ないし甲第59号証の雑誌の記事等によれば、請求人がJR新宿駅の駅ビルである「My City新宿」を平成14年にリニューアルし、その7階及び8階に所在するテナントによるレストラン街のフロアの愛称として、上段に「SHUN」、下段に「KAN」の欧文字を書してなる標章(別掲(1)。以下「使用標章」という。)を使用することについて、本件商標の登録出願日(平成14年12月20日)前には、既に公表され、一定程度広く知られていたものと認められ、このことは、本件登録出願に係る権利についての被請求人への譲渡時期(同15年8月18日)においても同様と認められる。
また、甲第1号証の警告書は、平成16年1月15日付けで請求人に対する被請求人による警告であって、その内容の要旨は、請求人が新宿駅ビル内7階及び8階にて行っている業務内容は、被請求人の商標権を侵害する行為と考えられ、請求人による「SHUNKAN」の使用を中止するよう求め、適切な回答がなければ、法的措置を執らざるを得ない、とするものである。
さらに、甲第14号証ないし甲第18号証によれば、被請求人は、平成15年9月2日に、「旬歓」の文字と「新宿 SHUNKAN」の文字からなる商願2003-80356(別掲(2))、「瞬歓」の文字と「JR SHINJUKU SHUNKAN」の文字からなる商願2003-80357(別掲(3))、「マインシティ瞬間」の文字と「Mine City SHUNKAN」の文字からなる商願2003-80358(別掲(4))を登録出願し、同月17日に、「瞬感」の文字と「SHUNKAN Jr.」の文字からなる商願2003-85297(別掲(5))及び「旬館」の文字と「shinjuku SHUNKAN」からなる商願2003-85298(別掲(6))を登録出願をしていることが認められ、これらの商標登録出願は、いずれも第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,資金の貸付及び手形の割引,債務の保証及び手形の引受け」を指定役務とするものである。
以上の各事実よりすると、本件商標は、請求人が前記駅ビル内のレストラン街に使用する愛称として、本件商標の登録出願時及び被請求人が譲渡により本件商標(商標登録出願)を取得した時点において、少なくとも東京及びその周辺においては広く知られているものと認められる使用標章と綴り字を同じくする「SHUNKAN」の文字よりなるものであり、しかも、被請求人は、本件商標(商標登録出願)を取得したとほぼ同時期に「SHUNKAN」の文字と「新宿」、「JR」、「SHINJUKU」、「マインシティ」、「Mine City」等の文字を組み合わせ、請求人の前記駅ビル及びそのレストラン街を想起させる商標を「建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与」等を指定役務として登録出願しているものであるから、被請求人が取得した本件商標は、使用標章と偶然に一致したものとは認め難い。
そして、被請求人による前記の警告が本件商標の設定登録後僅か5ヶ月ほどになされたものであり、しかも、請求人による使用標章のフロアの愛称への使用は、自他役務の識別標識たる商標といえるかは疑義のあるところではあるが、該警告は、その使用が本件商標に係る商標権を侵害するとして行われたものであるから、被請求人のかかる行為は、飲食物の提供等を行うテナントの入居により運営している前記駅ビルに係る請求人の業務に関し少なからぬ関連性を有するといえる「建物の管理、建物の貸借の代理又は媒介、建物の貸与、飲食物の提供」等の役務について商標権を取得することにより、請求人に係る新宿駅ビル内レストラン街の愛称として既に東京及びその周辺において広く知られている使用標章の使用を阻害し、ひいては、請求人の営業の妨害を図らんとしたものといわざるをえないものである。
また、被請求人は、本件商標を被請求人が新島で購入し近日オープンするホテルに使用する予定であると旨主張し、これを証するものとして乙第4号証、乙第7号証及び乙第8号証を提出しているが、本件商標と使用標章は、前記のとおり、構成する文字が偶然に一致したものとは認め難いものであり、しかも、上述のとおり、被請求人が「SHUNKAN」の文字を含み請求人の業務に係るMyCity新宿のレストラン街を想起させる商標登録出願をしていることからすると、被請求人の主張はにわかに信じ難く、被請求人の進めているとする本件商標の使用を前提としたとするホテル事業のその後の進捗等についても何ら明らかにしていない。
以上のとおり、被請求人による本件商標の取得行為は、商標権者自らがその使用を前提としてされたものとは認め難く、むしろ、本件商標権の取得によって、上述のとおり、請求人の営業の妨害を図ってなされたものといわざるを得ない。
そうすると、被請求人(商標権者)による本件商標の取得は、不正目的によるというほかなく、社会の一般道徳に反するものであって、公序良俗に反すると認められるから、本件商標は、設定登録後、遅くとも被請求人が警告を行った平成16年1月15日頃には、商標法第4条1項第7号に該当するものになっているといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第5号に該当し、同条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)使用標章



(2)商願2003-80356



(3)商願2003-80357



(4)商願2003-80358



(5)商願2003-85297



(6)商願2003-85298


審理終結日 2004-11-19 
結審通知日 2004-11-24 
審決日 2004-12-17 
出願番号 商願2002-111090(T2002-111090) 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Y35)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 内山 進
高野 義三
登録日 2003-09-12 
登録番号 商標登録第4708544号(T4708544) 
商標の称呼 シュンカン 
代理人 戸田 泉 
代理人 吉村 仁 
代理人 吉村 悟 

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