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審判番号(事件番号) データベース 権利
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審決分類 審判 査定不服 商3条1項6号 1号から5号以外のもの 登録しない Z1937
管理番号 1110069 
審判番号 不服2001-1877 
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-02-13 
確定日 2004-11-25 
事件の表示 平成11年商標登録願第 63082号拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 第1 本願商標
本願商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第19類「ゴム製の建築用又は構築用の専用材料」及び第37類「防水工事」を指定商品及び指定役務として、平成11年7月14日に登録出願されたものである。

第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標は、凸が施されてはいるが、その指定商品及び指定役務との関係よりすれば、特異性があるものとは認められず、通常採用し得る形状の範囲を超えているとは認識し得ないので、全体としてその商品の形状若しくは役務の提供に供する物の形状の一形態を表したものと認識する立体的形状のみよりなるものといわざるを得ないから、これをその指定商品及び指定役務に使用しても、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
なお、出願人は、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものである旨主張し、甲第1号証ないし甲第11号証を提出しているが、これらの証拠をもっては、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったものであると認めることはできない。」旨認定、判断して、本願を拒絶したものである。

第3 当審の判断
1 平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は自他役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように、商品等の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品又は自他役務を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は、当該商品等の形状を表示したものであると認識するにとどまり、このような商品等の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、未だ商品等の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標もって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商品等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、自他商品又は自他役務の識別機能を果たし得ることができないものであるから、商標法第3条第1項第3号若しくは同第6号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
2 これを本件についてみるに、本願商標は、別掲(1)のとおり、相対する側面が凸型の形状となるように、上面の中央部に、他の2つの側面に平行して突起部(以下「中央突起部」という。)が伸びている板状の形状である。
そして、本願商標を構成する立体的形状は、甲第3号証(公開特許公報:昭58-160500)によれば、「トンネル等の漏水防止用パッキン体」(以下「本件パッキン体」という。)であって、トンネル等のコンクリートの壁打継部からの漏水を防止するためのものであること、本件パッキン体の取付方法は、別掲(2)の(ア)図及び(イ)図のとおり、トンネル等のコンクリートの壁打継部20に沿って、開口部両端に低段部22a、22bのある溝24を形成し、その溝に本件パッキン体10を、その中央突起部がコンクリートの壁18a、18b面と一致するように、かつ、本件パッキン体の底面の後部に空間26を設けるように設置し、また、本件パッキン体の上面における中央突起部以外の部分は、コンクリートの壁面と一致するように、上記溝における開口部両端の低段部にエポキシ樹脂30a、30bを充填するものであること、上記方法で本件パッキン体をトンネル等のコンクリートの壁打継部に形成した溝に設置することにより、漏水が本件パッキン体の後方の空間26を通って、下方の排水路に流れ落ち、トンネル内に漏水が滴下することなく、また、本件パッキン体は、コンクリートの壁面と一致するように充填されたエポキシ樹脂により、溝からの脱落が防止され、さらに、コンクリートの壁面に接着されたエポキシ樹脂は、本件パッキン体の中央突起部により分離されているから、コンクリートの壁打継部が振動等によりその間隔に変化が起こっても、ひび割れ等を起こすことがないという効果が得られることなどが認められる。
そうすると、本願商標の構成中、上面における中央突起部以外の部分は、この部分とコンクリートの壁とをエポキシ樹脂により接着し、本件パッキン体が溝からの脱落を防止するために設けられた形状であること、また、同じく構成中の中央突起部は、コンクリートの壁面に接着されたエポキシ樹脂を分離する機能を有し、これにより、コンクリートの壁打継部に変化が起こっても、エポキシ樹脂がひび割れ等を起こさないように設けられたものであること、さらに、本願商標が板状の形状であることについては、漏水が本件パッキン体の後方を通りやすくし、かつ、本件パッキン体を溝に取り付けやすいといったなどの機能面から採用された形状と理解されるものである。
以上によれば、本願商標を構成する立体的形状は、トンネル等のコンクリートの壁打継部からの漏水を防止するといった効果をよりよく発揮させるために採用されたものであって、機能と必然的に結びついたものというべきであるから、その需要者をして、「トンネル等の漏水防止用パッキン体」及び「トンネル等の漏水防止工事等防水工事の提供の用に供する物」の形状の一形態を表したものと理解させるにすぎないものと認められる。
したがって、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務について使用しても、商品の形状及び役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示したものと認められるから、自他商品及び自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
3(1)請求人(出願人)は、本願商標は「トンネルの防水工事に使用するゴム製充填材」及び「防水工事」について、昭和58年ころから継続して使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品及び役務を表示するものであることを認識するに至ったものであるから、商標法第3条第2項により登録されるべきである旨主張し、甲第2号証ないし甲第18号証を提出している。
そこで、提出された甲各号証を検討するに、
(a)甲第2号証は「トンネル等の漏水防止工法」、甲第3号証は「トンネル等の漏水防止用パッキン体」に関する各公開特許公報であるところ、前記したとおり、甲第3号証によれば、本願商標が「トンネル等の漏水防止用パッキン体」の形状であることは理解できるとしても、これらをもって、本願商標が需要者の間に広く認識されていたという事実を証明したことにはならない。
(b)甲第4号証は、「スリーエス工法」に関するパンフレットであるところ、該パンフレットには、スリーエス工法により施工されるトンネルの漏水防止工事の説明と該工事に使用される材料が掲載されているが、掲載された材料の中には、本願商標と同一の構成よりなる形状のものはなく、「ハイスポンゴム」と称される充填材の断面図が掲載されているにすぎない。
(c)甲第5号証は、「土木工事標準積算基準書(道路編) 平成12年度」(建設省)、甲第6号証及び甲第7号証は、「建設省土木工事積算基準」(財団法人 建設物価調査会発行)の平成9年度版及び平成12年度版であって、これらに「トンネル漏水対策工(伸縮性材料を用いたトンネル漏水対策)」に関する記載があるとしても、数多くある工事積算のうちの一つとして、掲載されたにすぎないものであり、また、「伸縮性(ゴム系)充填材」の断面図は掲載されているものの、本願商標と同一の構成よりなる形状の掲載はない。
(d)甲第8号証ないし甲第10号証によれば、請求人は、昭和57年ころから伸縮性材料を用いたトンネル漏水対策工事を行っていたと窺い知ることはできるが、これらの工事に際して作成された工法明細書等は、請求人が行う「トンネルの漏水防止工法」としての説明が主であり、工事に用いられる充填材が「ハイスポンゴム」などと呼ばれていたとしても、本願商標と同一の形状よりなる充填材について明記した書類は皆無である。
(e)甲第11号証及び甲第12号証は、証明書であるところ、その大半のものは、「2000年」の記載はあるものの、「月日」の記載はない(年月日の記載されたものは、2000年10月3日から12日にかけて証明したものである。)。そして、その内容は、いずれの証明書にも、本願商標と同一の立体的形状を表示し、該形状のゴム製の防水工事用充填材は、請求人が販売し、請求人の提供する防水工事に使用するものであること、及び該形状のゴム製の防水工事用充填材と同一の形状の他社製品は市場になく、他社の防水工事に使用されていないことを証明するものである。
しかし、これらの証明者がいかなる根拠をもって、上記内容を証明したのか明らかではなく、いわゆる請求人があらかじめ作成した型どおりの証明内容について、証明者が型どおりの署名捺印をしたものと推認されるものであり、これら証明書をもって、本願商標が需要者の間に広く認識されていたと直ちに認めることはできない。
(f)甲第13号証は、「防水ジャーナル」(1994年10月号)であるところ、請求人は、「トンネルの厄介者、漏水を処理するスリーエス工法」などとして、宣伝広告をした事実が認められるが、「独立発砲ゴムを導水材として使用し、」と、あるいは掲載図の説明として「スリーエス工法の標準断面図です。」などと記載されているにすぎないものである。また、「トンネル漏水処理/青函トンネル迫部施工例」は、工法についての説明であり、本願商標と同一の形状からなる充填材が表示されていることは見出せない。
(g)甲第14号証ないし甲第18号証は、本願商標と同一の立体的形状及び本願商標に近似した立体的形状のゴム製充填材並びにゴム製充填材を用いた工事の工程写真であるところ、これらの写真をもってしては、本願商標が需要者の間に広く認識されていたという事実を認めることはできない。
(2)以上を総合すると、請求人はその業務に係る商品「トンネルの防水工事に使用するゴム製充填材」を販売している事実は窺うことができるとしても、該商品が請求人が行うトンネル工事に付随して販売されたもの以外に、該商品そのものが単独で実際にどの程度販売されたかは明らかではない。むしろ、上記「トンネルの防水工事に使用するゴム製充填材」は、請求人の提供するスリーエス工法と称される「トンネルの防水工事」に付随する商品として、かつ、該スリーエス工法をその需要者に宣伝するために、その説明手段の一つとして断面図が示されているにすぎず(甲第4号証ないし甲第10号証、甲第13号証)、また、該商品がトンネル内に設置された場合は、商品そのものは、コンクリートの壁打継部の溝の内部に埋め込まれ、その表面もほぼエポキシ樹脂に覆われるから、商品の全体の形状が需要者の目に触れることはきわめて少ないものと認められ、このような商品の使用方法からすれば、「トンネルの防水工事に使用するゴム製充填材」の断面図が示されたことをもって、本願商標を構成する立体的形状が著名性を獲得したものと認めることはできないし、それ故、甲第11号証及び甲第12号証(証明書)は、前記認定のとおり、証明の根拠が明らかではない限り、本願商標の著名性を立証する証拠としては、十分であるとはいえない。
したがって、本願商標が「トンネルの防水工事に使用するゴム製充填材」及び「防水工事」について使用された結果、需要者が請求人の業務に係る商品及び役務であることを認識することができるに至った商標と認めることは困難であるといわざるを得ない。
その他、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するに至ったと認めるに足る証拠の提出はない。
4 したがって、本願商標が商標法第3条第1項第6号に該当するものであって、かつ、同法第3条第2項の要件を具備していないとした原査定の認定、判断は、妥当なものであって、取り消すべき理由はない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本願商標



(2)





審理終結日 2004-09-22 
結審通知日 2004-09-28 
審決日 2004-10-12 
出願番号 商願平11-63082 
審決分類 T 1 8・ 16- Z (Z1937)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 謙三 
特許庁審判長 茂木 静代
特許庁審判官 内山 進
津金 純子
代理人 寺田 正美 

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