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審決分類 審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Z30
管理番号 1110031 
審判番号 無効2003-35199 
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-16 
確定日 2004-12-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4499463号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4499463号の指定商品中第30類「調味料,香辛料」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4499463号商標(以下、「本件商標」という。)は平成12年5月30日に登録出願され、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第30類「玉子料理を含む弁当,宅配用弁当,コーヒー及びココア,コーヒー豆,茶,調味料,香辛料,食品香料(精油のものを除く。),米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン,穀物の加工品,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,菓子及びパン,あん入り中華まんじゅう,即席菓子のもと,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,アーモンドペースト,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,氷,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,酒かす,ホイップクリーム用安定剤」の指定商品及び役務の区分第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定商品及び指定役務として、同13年8月17日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効に引用する登録第2080564号商標(以下「引用1商標」という。)は、「タマゴヤ」(「ヤ」の文字は、他の文字に比して小さく書されている。)の片仮名文字を横書きしてなり、昭和61年5月9日に登録出願され、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同63年9月30日に設定登録、その後、平成11年4月27日付けで商標権存続期間の更新登録がなされ現に有効に存続している。
同じく登録第3039231号商標(以下「引用2商標」という。)は、「たまご屋さんのカステラ」の文字を横書きしてなり、平成4年11月18日に登録出願され、第30類「カステラ」を指定商品として、同7年4月28日に設定登録され現に有効に存続している。
同じく登録第4407675号商標(以下「引用3商標」という。)は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成11年8月5日に登録出願され、第30類「焼きプリン」を指定商品として、同12年8月11日に設定登録され現に有効に存続している。

3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の指定商品中の第30類『調味料,香辛料,菓子及びパン』についての登録は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番含む)を提出した。
(1)本件商標は、別掲(1)に示すとおり「図形」と「玉子屋」の文字の組み合わせの商標であるから、「玉子屋」の文字部分より「タマゴヤ」の称呼を生ずる。
他方、引用1商標は、「タマゴヤ」の文字よりなるものであるから、その構成文字に相応して「タマゴヤ」の称呼を生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用1商標は「タマゴヤ」の称呼において類似する商標であり、かつ、本件商標の指定商品中の第30類「調味料,香辛料」と引用1商標の指定商品は類似する。
(2)引用2商標は、「たまご屋さんのカステラ」の文字よりなるところ、これをその指定商品である「カステラ」に使用する場合、その要部は「たまご屋さんの」又は「たまご屋」の文字にあるものと認められるから、構成中の「たまご屋」の文字部分に相応して「タマゴヤ」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と引用2商標は「タマゴヤ」の称呼において類似する商標であり、かつ、引用2商標の指定商品である「カステラ」は本件商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」に包含されるものである。
(3)引用3商標は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるところ、構成中の「たまご屋さんの」の文字は、独立して自他商品の識別標識として機能し得ると認められるものであるから、上記(2)と同様の理由により、構成中の「たまご屋」の文字部分に相応して「タマゴヤ」の称呼を生ずるものとみるのが相当である。
してみれば、本件商標と引用3商標は「タマゴヤ」の称呼において類似する商標であり、かつ、引用3商標の指定商品である「焼きプリン」は本件商標の指定商品中の第30類「菓子及びパン」に包含されるものである。
(4)そして、引用1商標ないし引用3商標は、本件商標の出願日(平成12年5月30日)前に出願された登録商標であるから、本件商標は商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
(1)一般日本語としての「玉子屋(タマゴヤ)」ないし「玉子屋さん(タマゴヤサン)」は、「鶏卵生産業者ないし鶏卵流通業者(問屋、小売)」を意味している。この点に関し、幾つかの国語辞典に当たって見たが、余りに常識的な用語のためか、見出し語になかったので、インターネットで検索してみた。
乙第1号証として提出するインターネット検索によるホームページには、「うちは玉子屋さん日記」の表題がある。このホームページは、養鶏(鶏卵生産)業者の中学2年生になる娘さんが作成するもので、その家業を「玉子屋さん」と自称している。
乙第2号証として提出するインターネット検索によるホームページには、「長田の玉子屋さん・訪問記」の表題がある。このホームページで、養鶏(鶏卵生産)業者を「玉子屋さん」と呼称している。
乙第3号証として提出するインターネット検索によるホームページには、「玉子屋さん」を表題とする記事と写真がある。「玉子各種」と「乾物少々」を商っている小売業者(鶏卵生産業者の出店)を「玉子屋さん」と呼称している。
乙第4号証として提出するインターネット検索による「福島名産品本舗森山のおんせんたまご」には、卵の小売業者が自らの電話番号を「ニッコリタマゴヤサン」と暗誦させている。
乙第5号証として提出するインターネット検索による「全国たまご商業共同組合ホームページ」には、「タマゴヤのマヨネーズ」の用例が示されており、鶏卵流通業者である同組合が自らを「タマゴヤ」と自称している。
以上を総合すると、「タマゴヤ」ないしは「タマゴヤサン」の称呼は、一般的に、「鶏卵生産業者・鶏卵流通業者(問屋、小売)」を指標するものであり、また、この称呼を含む商標は、当該商品の製造・流通・販売等に関わる者が、「鶏卵生産業者ないし鶏卵流通業者(問屋、小売)」と何らかの関係を持っていると連想されるのは極めて自然である。
さらにいえば、田舎の集落などでは、昔の家業がそのまま現在の屋号(その家の呼び名)に引き継がれていることは、「屋根屋、酒屋、油屋、蒟蒻屋、綿屋、種屋」の例を挙げるまでもなく、広く知られている事実がある。かような例からすると、かつての家業が「鶏卵生産業者・鶏卵流通業者(問屋、小売)」であった者が、別な新規商売の開始にあたり「タマゴヤ」の称呼を含む屋号を選択することも容易に想像できるところである。
以上の観点から甲号証を見ると、甲第2号証に係る商標における「夕マゴヤ」、甲第3号証並びに甲第4号証に係る商標における「たまご屋さん」の部分は、当該商標の使用者が「鶏卵生産業者ないし鶏卵流通業者(問屋、小売)」であることを表現している部分であり、「タマゴヤ」なる称呼は、自他商品の識別機能を果たし得ない記述的構成要素である。即ち、「タマゴヤ」なる称呼については、類否判断の対象となることはないものである。
上記に関し、甲第2号証について敷衍すると、この商標は、「夕マゴヤ」と表現し、即ち、「タマゴ」に対して「ャ」を小さく表現した点で特殊な表現方法として登録が認められたものと理解できる。従って、この商標から「タマゴヤ」なる称呼が自他商品識別機能を発揮することはない。即ち、この商標は文字表現の部分を対象とするものであって、当該指定商品に関し「タマゴヤ」なる呼称(音声)については、類否判断対象外である。
(2)結論
以上の論拠により、本件商標と引用1商標ないし引用3商標とは非類似の商標であると確信する。

5 当審の判断
(1)本件商標は、別掲(1)に示すとおり「卵のカラを割ったヒヨコの図形」と「玉子屋」の文字よりなるものである。
しかして、被請求人は答弁書において、「引用各商標の『タマゴヤ』及び『たまご屋さん』の文字部分は、当該商標の使用者が『鶏卵生産業者ないし鶏卵流通業者(問屋、小売)』であることを表現している部分であり、『タマゴヤ』なる称呼は、自他商品の識別機能を果たし得ない記述的構成要素である。」旨主張している。
しかしながら、商標がその商品の品質を表示するものであって、自他商品識別力を有しないとする場合は、当該商標とその指定商品との関係をも考慮して判断すべきものと認められるところ、本件商標及び引用1商標ないし引用3商標の指定商品中には、被請求人の主張に該当するとみられる具体的な商品は見あたらないところである。
してみれば、この点に関する被請求人の主張は理由がないというべきである。
(2)そこで、本件商標と引用1商標ないし引用3商標の類否について判断する。
a)本件商標は、前記したとおりの構成よりなるところ、その構成中で独立して自他商品の識別標識として機能し得ると認められる「玉子屋」の文字に相応して「タマゴヤ」の称呼を生ずるものと判断するのが相当である。
他方、引用1商標は前記したとおり「タマゴヤ」の文字よりなるところ、語尾の「ヤ」の文字が、「タマゴ」の文字に比して小さく書されている事実はあるが、その故に「タマゴ」と「ヤ」の文字が分離して看取されるという格別の事情はないとみられるものであり、引用1商標は「タマゴヤ」の文字全体で一連の商標とみるのが相当である。
そうとすれば、引用1商標よりは「タマゴヤ」の称呼を生ずると認められるから、本件商標と引用1商標は「タマゴヤ」の称呼において類似するものである。
また、本件商標の指定商品中の「調味料,香辛料」と引用1商標の指定商品は同一又は類似するものである。
してみれば、本件商標は引用1商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわざるを得ない。
b)引用2商標は、上記した通り「たまご屋さんのカステラ」の文字を同書・同大にまとまりよく一連に書してなるものであるから、当該文字に接する取引者・需要者は、これより「卵屋又は玉子屋(屋号として認識される。)さんの作ったカステラ」という一連の意味合いを認識するとみるのが相当である。
そうとすれば、これよりは「タマゴヤサンノカステラ」、又はその指定商品との関係において「タマゴヤサンノ」の称呼を生ずると認められるものであり、「タマゴヤ」のみの称呼は生じ得ないものと判断するのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「タマゴヤ」の称呼と引用2商標より生ずる「タマゴヤサンノカステラ」及び「タマゴヤサンノ」の称呼とを比較するに、両者は、音構成、構成音数において顕著な差異を認められるから称呼上十分に区別し得るものである。
さらに、本件商標よりは「玉子屋(卵屋)」の観念を生ずるのに対して、引用2商標よりは「卵屋(玉子屋)さんの作ったカステラ」の観念を生ずるから、両者は観念上も区別し得るものである。
加えて、両商標の構成は上記した通りであるから、両者の構成上判然と区別し得る差異を有し外観において相紛れるおそれはないものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用2商標は、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標である。
そして、他に両商標が類似するという理由を発見し得ない。
してみれば、本件商標は引用2商標との関係においては、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
c)引用3商標は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるところ、その構成中の「たまご屋さんの」の文字部分は、上段の「産みたてのたまごでつくった」の文字と下段の「焼きプリン」の文字と繋がって「産み立てのたまごで作った卵屋(玉子屋)さんの焼きプリン」という一連の意味合いを認識させる他、独立して自他商品の識別標識として機能し得るものとみるのが相当である。
そうとすれば、構成中の「たまご屋さんの」の文字部分よりは「タマゴヤサンノ」の称呼を生ずると認められるものであり、当該文字部分より「タマゴヤ」のみの称呼は生じ得ないものと判断するのが相当である。
そこで、本件商標より生ずる「タマゴヤ」の称呼と引用3商標より生ずる「タマゴヤサンノ」の称呼とを比較するに、両者は、音構成、構成音数において顕著な差異を認められ称呼上十分に区別し得るものである。
さらに、本件商標よりは「玉子屋(卵屋)」の観念を生ずるのに対して、引用3商標よりは「産み立てのたまごで作った卵屋(玉子屋)さんの焼きプリン」及び「卵屋(玉子屋)さんの」の観念を生ずるから、両者は観念上も区別し得るものである。
加えて、両商標の構成は上記した通りであるから、両者の構成上判然と区別し得る差違を有し外観において相紛れるおそれはないものというべきである。
そうとすれば、本件商標と引用3商標は、その称呼、観念及び外観のいずれからしても十分に区別し得る商標である。
そして、他に両商標が類似するという理由を発見し得ない。
してみれば、本件商標は引用3商標との関係においては、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(3)したがって、本件商標の登録は、指定商品中の「調味料,香辛料」については商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とされるべきものである。
しかしながら、本件商標の指定商品中上記商品を除くその余の商品については、無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
(1)本件商標


(2)引用登録第4407675号商標(引用3商標)

審理終結日 2004-05-06 
結審通知日 2004-05-10 
審決日 2004-05-21 
出願番号 商願2000-59185(T2000-59185) 
審決分類 T 1 12・ 262- ZC (Z30)
最終処分 一部成立  
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 2001-08-17 
登録番号 商標登録第4499463号(T4499463) 
商標の称呼 タマゴヤ 
代理人 坂口 信昭 
代理人 奈良 武 

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