• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z2528
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない Z2528
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z2528
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z2528
管理番号 1109874 
審判番号 無効2003-35404 
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2005-02-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-29 
確定日 2004-12-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第4600145号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4600145号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成13年7月19日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,仮装用衣服」及び第28類「遊戯用器具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,ビリヤード用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,スキーワックス,釣り具」を指定商品として、同14年8月30日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用商標
請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する商標(以下「引用商標」という。)は、別掲(2)のとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第49号証(枝番を含む。なお、丙第1号証ないし丙第7号証は、それぞれ甲第43号証ないし甲第49号証と読み替えた。)を提出している。
1 請求の理由
(1)無効理由について
請求人は、本件商標の出願前から、本件商標と同一または実質的に同一の商標であって請求人が発案した外観構成に特徴のある「三日月の図形及び朋の漢字」からなる引用商標を使用していた。この引用商標は、請求人が使用した結果、本件商標の出願前には、特定の商品について周知または需要者・取引者の間である程度知られる存在になっていた。また、請求人と被請求人の代表者及び構成員とは、本件商標の出願前からの知り合いであり、被請求人の代表者及び構成員は、請求人が引用商標を使用していることを熟知していた。しかるに、被請求人の代表者及び構成員は、請求人が引用商標を使用していることを熟知した上で、引用商標と同一または実質的に同一の本件商標を出願して登録を受けたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、第19号、第10号及び第15号に該当するものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
(ア)商標法第4条第1項第7号に該当する理由
本件商標は、下記a)ないしe)の条件に該当する商標であり、商標法第4条第1項第7号に該当する商標である。
a)本件商標は、請求人が本件商標の出願前から使用していた引用商標と同一または実質的に同一であること。
b)引用商標は、構成上顕著な特徴を有していること。
c)引用商標は、本件商標の出願前から特定の商品について使用された結果、その商品について周知または少なくとも需要者・取引者にある程度知られるに至っていること。
d)本件商標の名義人(被請求人)は、本件商標の出願前に、引用商標の存在を知る立場にあったこと。
e)上記a)ないしd)の条件から、公序良俗に反する(公正な取引秩序を乱す)こと。
具体的に説明すると、まず、請求人及び請求人関係者は、本件商標の出願前から、外観構成に特徴のある「三日月の図形及び朋の漢字」からなる引用商標を、「環境にやさしい」等のコンセプトまたはポリシーのもと、宣伝広告活動、製造・販売活動を通じて、商品「サーフボード用ワックス」及びこれに関連する商品に継続して使用していた(甲第5号証の1ないし甲第22号証)。その結果、引用商標は、本件商標の出願前に、商品「サーフボード用ワックス」に使用する商標として周知または需要者・取引者の間である程度知られた存在となっていた。また、請求人は、この引用商標の使用に際して、地方公共団体の補助金交付申請、PL法対策保険の加入等の手続を行い、引用商標に関する事業を適切に進めるための努力を行っていた(甲第23号証の1ないし甲第25号証)。
ここで、請求人と請求人関係者との人的関係について説明すると、請求人関係者は「サーフボード用ワックス」の製造業者であり、請求人は、本件商標の出願前に、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」に使用することについて、請求人関係者と契約を締結した(甲第3号証)。請求人は、本件商標の出願前から現在に至るまで、この請求人関係者を通じて、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」に継続して使用している(甲第5号証の1ないし甲第22号証)。
また、請求人は、引用商標を使用した商品「サーフボード用ワックス」の事業が軌道に乗ってきたため、本件商標の出願前に、商品「サーフボード用ワックス」以外の関連商品にも引用商標を使用して、引用商標に関する事業の拡大を図っていた(甲第26号証及び甲第27号証)。
請求人は、引用商標の事業を国内だけでなく海外にも展開するため、本件商標の出願前に米国で開催された輸入展示会に引用商標を付した商品を出品したところ、出品した商品が現地で高い評価を受けるに至った(甲第28号証の1ないし8)。そこで、請求人は、引用商標の事業の海外展開として、まず引用商標を使用した商品「Tシャツ」の製造販売事業を米国で行うこととした。請求人は、引用商標の米国事業を具体化するにあたり、被請求人の代表者(谷口)及び現構成員(宮川)を引き入れて米国企業「ブレイクウォーター」を設立した(甲第29号証)。
ここで、請求人と被請求人との関係について説明すると、請求人は、上記米国輸入展示会の終了後、それまで請求人とは何らの面識もなかった被請求人の代表者(谷口)及び現構成員(宮川)と知り合い関係となった。被請求谷口及び宮川は、請求人の引用商標に関する事業に興味を示し、請求人の米国事業への参加を求めてきたため、請求人は、引用商標の米国事業活動に谷口及び宮川を加えた形で、米国企業「ブレイクウォーター」を設立した。米国企業「ブレイクウォーター」の設立に際しては、請求人を引用商標のブランド発案者として、谷口が「Tシャツ」を指定商品とする引用商標の米国商標権(日本の商標権ではない)の取得を、宮川が引用商標を使用する商品「Tシャツ」の製造をそれぞれ担当する旨の取り決めを、請求人と谷口及び宮川との間で合意している(甲第29号証)。その後、本件商標が出願される直前まで、請求人はこの米国における引用商標の事業の準備状況について、谷口から電子メール及びファクシミリによる報告を受けていた(甲第30号証の1ないし8)。また、宮川は、引用商標を使用する商品「Tシャツ」の製造担当として、請求人と電子メール及びFAX通信のやりとりをしていた。
すなわち、これらの事実から、被請求人が、本件商標の出願前に、引用商標が請求人が使用する商標であることを熟知していたことは明らかである。なお、米国企業「ブレイクウォーター」は、請求人と谷口及び宮川との間で設立されたものの、本件商標の出願前に谷口からの連絡が途絶えてしまったため、米国企業「ブレークウォーター」による引用商標を使用した米国事業は頓挫した。
このような経緯がある中で、被請求人は、請求人に無断で、本件商標について商標登録出願を行い商標登録を受けた。本件商標と引用商標を比較すると、本件商標は外観構成上顕著な特徴を有する「三日月の図形及び朋の漢字」からなり、本件商標は引用商標と同一または実質的に同一の商標であることは明らかである。なお、本件商標の指定商品には、請求人及び請求人関係者が引用商標を使用する商品「サーフボード用ワックス」に類似する商品及びこれに関連する商品は含まれているものの、商品「サーフボード用ワックス」そのものは含まれていない。
このように、被請求人が本件商標すなわち引用商標と同一または実質的に同一の商標を商品「サーフボード用ワックス」以外の商品を指定商品として出願し登録を受けたことは、請求人の知り得ないところで秘密裏に行われたものである。
被請求人は、本件商標の出願後、請求人関係者に対して、本件商標に基づく警告書を送付した(甲第4号証)。この警告書には、本件商標が登録された後に請求人関係者の行為が本件商標の商標権を侵害する旨が記載されている。請求人関係者は、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」及びこれに関連する商品に使用することについて請求人と契約関係にあり、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」及びこれに関連する商品に使用している。これに対して、被請求人が発送した警告書は、請求人関係者が引用商標を使用して商品「被服」の販売を予定していることのみを対象としている。すなわち、この警告書において、被請求人は、請求人関係者が引用商標を使用する主要商品「サーフボード用ワックス」については何も言及していない。
また、後に説明するように、引用商標は、本件商標の出願前から取引の際に「朋」「ガッツキ」「がっつき」等の別名称で取引されており、このことは需要者・取引者の間でも知られている。被請求人は、引用商標が別名称で取引されていることを知りながら、この引用商標の別名称と同一または実質的に同一の商標(以下「引用関連商標」という。)についても、商品「サーフボード用ワックス」及びその周辺商品を指定商品として商標登録出願を行い商標登録を受けようとしている(甲第1号証の3及び甲第32号証の1ないし3)。すなわち、被請求人は、引用商標だけでなく、引用商標と密接に関係のある請求人の引用関連商標についても一括で権利化を図ろうとしている。
被請求人は、本件商標の登録後に、本件商標(すなわち引用商標と同一または実質的に同一の商標)を使用して営業活動を行っている(甲第33号証ないし甲第37号証)。被請求人が頒布した取引書類には、本件商標のコンセプトまたはポリシーとして「環境にやさしい」等の文言が掲げられているが、これらの文言は引用商標のコンセプトまたはポリシーと殆ど同一のものである(甲第33号証ないし甲第37号証)。
また、この取引書類には、本件商標が雑誌で紹介されたことを示す雑誌の写しが添付されている(甲第33号証)。しかしながら、この雑誌はそもそも請求人が引用商標のブランド価値を高めるために引用商標の宣伝広告活動の一環として請求人が主体となって掲載した雑誌である(甲第8号証の1)。すなわち、被請求人は、請求人が引用商標を掲載した雑誌の写しを、あたかも被請求人の商標であるかのように取引書類を頒布しているのである。
さらに、これらの取引書類には、請求人が引用商標を使用する商品「サーフボード用ワックス」の製造元名称として使用する「波魂堂」の文字も掲載されている(甲第34号証)。
また、被請求人は、本件商標が引用商標に由来し、被請求人が引用商標を使用した商品「サーフボード用ワックス」を製造販売している等、全くの虚偽の情報を新聞に掲載し、また本件商標の関連事業について大手商社とライセンス契約をした旨の情報を新聞に掲載して、実質的な宣伝広告を行っている(甲第38号証の1及び2)。
このように、被請求人が本件商標を商品「サーフボード用ワックス」に使用している事実が全くないことは明らかであり、本件商標が引用商標とは全く関係のない商標であるにもかかわらず、被請求人は、本件商標が引用商標に由来する商標であり、被請求人自ら商品「サーフボード用ワックス」に使用する商標であるかのように本件商標の営業活動を行って、需要者・取引者を欺いている。
なお、本件商標は、被請求人すなわち米国企業「ブレイクウォーター インコーポレイテッド」の名義で出願登録されている(甲第39号証)。しかし、この「ブレイクウォーター インコーポレイテッド」なる者は、上述の請求人が関与した「ブレイクウォーター」とは何ら関係が無く、しかもその米国登記は全く存在せず、その事務所すら米国に存在する事実はない(甲第40号証)。すなわち、被請求人は、米国法人としての実体がないにもかかわらず、実体があるかのように装って本件商標を出願し登録を受けてその営業活動を行っている。
以上のとおり、被請求人は、引用商標が本件商標の出願前に請求人が発案した構成上顕著な特徴を有する商標であること、及び、本件商標の出願前から請求人及び請求人と契約関係にある者の使用により特定の商品について周知または需要者・取引者の間である程度知られる存在になっていたことを知りながら、請求人が引用商標を登録していないことをいいことに、引用商標と同一または実質的に同一の商標である本件商標について出願し登録を受けて本件商標を使用している。その上、本件商標の使用に際して「環境にやさしい」等の引用商標に内在するコンセプトまたはポリシーまでもフリーライドするものである。そして、被請求人は、引用商標を使用する際に、請求人が発案した造語に係る商標であって引用商標と密接に関連する商標「ガッツキ」「波魂堂」も併せて使用している(甲第34号証)。このうち商標「ガッツキ」については、商標「GATTSUKI」及び「ガッツキ」の文字を上下二段に並記した商標として出願まで行い権利化しようとしており(甲第32号証の2及び3)、被請求人は引用商標だけでなく引用商標と密接に関係する商標までも権利化しようとしている。
さらに、引用商標を使用した「サーフボード用ワックス」の製造販売実績が全くないにもかかわらず、引用商標を使用した「サーフボード用ワックス」をあたかも被請求人が開発したものであるかのように偽って、本件商標の営業行為を行っている。このことは、請求人が引用商標について掲載した雑誌記事を、被請求人が本件商標に関する雑誌記事であるかのように被請求人の営業パンフレットに添付している行為をしていることからも明らかである(甲第33号証及び甲第34号証等)。
したがって、被請求人が本件商標について出願し登録を受ける行為は、引用商標の真の使用者である請求人及び請求人関係者に対して不当な損害を与えるだけでなく、健全な需要者・取引者に対しても不当な損害を与えるものであり、本件商標登録は、公正な競業秩序・商道徳及び信義則に反するものであることが明らかである。
よって、本件商標は、公の秩序及び善良の風俗を害するものであって、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(イ)商標第4条第1項第19号に該当する理由
本件商標は、不正の目的で出願・登録されたことが明らかであり、商標法第4条第1項第19号に該当する商標である。
請求人または請求人関係者が、宣伝広告活動、製造・販売活動を通じて商品「サーフボード用ワックス」に引用商標を継続して使用した結果、引用商標を使用した「サーフボード用ワックス」が多くの雑誌・新聞で広告・紹介記事として取り上げられている(甲第6号証の3及び甲第7号証の1ないし甲第8号証の5)。その結果、引用商標は、請求人または請求人と契約関係にある者の業務に係る商品「サーフボード用ワックス」を表示するものとして需要者の間に広く知られる存在となった(全国的に周知となっている)。
本件商標は、この構成上顕著な特徴を有し全国的に周知な引用商標と同一または実質的に同一の商標であり、被請求人は、引用商標が本件商標が出願される前に請求人が発案した商標であること、及び、引用商標が商品「サーフボード用ワックス」を表示する商標であることを知りながら、請求人が引用商標を登録していないことをいいことに、請求人に無断でこの本件商標を出願し登録を受たことは明らかである。そして、本件商標は、引用商標の構成だけでなく、「環境にやさしい」等の引用商標のコンセプトまたはポリシーまでフリーライドするものである。
したがって、被請求人が本件商標を出願し登録を受ける行為は、明らかに引用商標の顧客吸引力をフリーライドするものであり、本件商標は不正の目的をもって出願、登録されたものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(ウ)商標第4条第1項第10号及び第15号に該当する理由
本件商標は、未登録の周知商標と類似し、かつ、この周知商標との関係で商品の出所の混同を生じることは明らかである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に該当する。
上述のとおり、引用商標は、請求人または請求人関係者の業務に係る商品「サーフボード用ワックス」を表示するものとして需要者の間に広く知られるに至っている(全国的に周知となっている)。本件商標は、この周知な引用商標と同一または実質的に同一の商標であり、本件商標の指定商品中「スキーワックス」は、引用商標を使用する商品「サーフボード用ワックス」と類似する商品であることが明らかである。
また、上述のとおり、本件商標は、「サーフボード用ワックス」を表示するものとして全国的に周知となっている引用商標と同一または実質的に同一の商標であるため、本件商標が指定商品「スキーワックス」以外の商品に使用されると、本件商標を使用した商品または本件商標を使用する者が、引用商標を「サーフボード用ワックス」に使用する請求人または請求人関係者と組織的ないし経済的に何らかの関係があるものと、需要者・取引者が誤認混同することは明らかである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び第15号に該当するものである。
(2)むすび
以上より、本件商標は、商標法第4条第7号、第19号、第10号及び第15号に違反して登録されたものであるため、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
2 答弁に対する弁駁
(1)主張立証事項の整理
甲第43号証は、請求人が本件審判の請求書と一緒に証拠として提出した雑誌・新聞・イベントちらしの広告・記事を発行日(イベント開催日)順に整理した資料である。甲第44号証は、請求人が本件審判の請求書と一緒に証拠として提出した取引書類を取引日順に整理した資料である。甲第45号証は、請求人が本件審判の請求書と一緒に証拠として提出した通信書類及び被請求人が本件審判の答弁書と一緒に証拠として提出した通信書類をまとめて通信日順に整理した資料である。甲第46号証は、請求人及び被請求人が提出した証拠の一部をもとに、本件商標を取り巻く事実を時系列に整理した資料である。甲第47号証は、本件審判の請求書における請求人の主張、本件審判の答弁書における被請求人の主張及び本件審判の弁駁書における請求人の主張立証事項を並記して整理した資料である。以下、これらの整理された資料を参照しながら、本件審判の請求時に請求人が提出した証拠を適宜用いて、本件商標登録には無効理由があることを再度主張する。
(2)引用商標の使用事実と周知性について
被請求人は、引用商標を請求人が使用する商標であることを認めた上で、引用商標の使用開始の時期が不明確であり、引用商標は使用期間が短いために周知ではない旨を主張している。しかしながら、本件審判の請求書において請求人が主張したとおり、引用商標は、「サーフボード用ワックス」の商標として請求人が発案し、請求人及び請求人関係者(デルフィナス)によって使用された結果、商品「サーフボード用ワックス」の商標として需要者の間に広く認識されている。ここで、引用商標の使用事実及び周知性について、引用商標の取り巻く環境を考慮しながら、改めて説明する。
甲第5号証の1、甲第5号証の3及び甲第6号証の3を見ると、これらの証拠には、引用商標が国産初の植物成分が配合された「サーフボード用ワックス」のブランドであることが紹介されている。「サーフボード用ワックス」を含むサーフィン関連商品は、わが国では、当時(少なくとも本件商標の出願時には)外国製が主流となっていた(甲第8号証の2)。その中で、請求人及び請求人関係者が引用商標を付して製造販売する「サーフボード用ワックス」は、植物成分配合の「サーフボード用ワックス」としては日本で唯一の存在となっており、その事実はサーフィン業界では画期的なことであった。またサーフィン関連商品は、一般普及品とは異なり、需要者が特定の範囲に限られるので、その意味でも引用商標を付した「サーフボード用ワックス」の存任は、当時(少なくとも本件商標の出願時には)、サーフィン業界で注目されていた。
このような状況のもと、甲第43号証を参考に甲第7号証の1を見ると、引用商標は少なくとも1998年12月13日の時点で広告に使用されている。その後、たびたび雑誌・新聞に広告または記事として紹介されている(甲第5号証の1ないし甲第5号証の10、甲第6号証の3及び甲第7号証の2ないし甲第8号証の3)。引用商標が付された「サーフボード用ワックス」が、これだけ多くの雑誌・新聞に広告・紹介された事実を見ても、引用商標が付された「サーフボード用ワックス」が当時、サーフィン業界でいかに注目されていたかがわかる。
また、甲第44号証を参考にして甲第9号証の1を見ると、請求人及び請求人関係者は、1999年8月31日に、自らが製造販売する「サーフボード用ワックス」(引用商標が付されている)をコンビニエンスストアの代理店(大山南九州株式会社)に納品することに成功し、そして甲第9号証の4を見ると、請求人及び請求人関係者は、1999年9月17日には、大手スポーツ用品店の代理店(セキノレーシングスポーツ)へ納品することに成功したことが判る。引用商標が付された「サーフボード用ワックス」がコンビニエンスストアで販売されたという事実は、流通業界全体でみても画期的なことである。これは、販売される前段階で引用商標について使用実績があり、しかもその使用実績が中途半端なものではなかったことを裏付けるものである。
引用商標がたびたび雑誌・新聞により広告または紹介されていたこと、本件商標が出願される約2年前には引用商標が付された「サーフボード用ワックス」がコンビニエンスストアの代理店へ納品されその後大手スポーツ用品店の代理店へも納品された事実があることを考慮すると、本件商標が出願される約2年半前よりもっと前より引用商標が使用されていたことは推認できる。
このように、「サーフボード用ワックス」を含むサーフィン関連商品の需要者の範囲が特定の範囲に限られていること、その状況の中で引用商標が日本で唯一植物成分が配合された「サーフボード用ワックス」のブランドであること、本件商標が出願される約2年半前から雑誌・新聞等で広告・紹介されてきた事実があること、そして本件商標が出願される約2年前から引用商標が付された「サーフボード用ワックス」がコンビニエンスストアで販売されていた事実があることを考慮すると、かりに、引用商標の使用期間が約2年半であったとしても、その使用期間内に引用商標は十分に周知になっているものと思料する。
(3)引用商標の発案者について
被請求人は、答弁書において引用商標の発案者が請求人ではなく俳優の真木蔵人である旨を主張している。請求人が製造販売する「サーフボード用ワックス」及び「ウェットスーツ」の事業において、真木蔵人にはブランドイメージの発案者及び広告塔として関与してもらった事実があることは確かである。しかしながら、引用商標に関して、真木蔵人には引用商標が完成するまでのブランドイメージを発案してもらっただけで、引用商標を具体的なデザインとして確立し、かつ引用商標を「サーフボード用ワックス」及びその関連商品のビジネスに結びつけたのは請求人である。したがって、引用商標の発案者は、請求人であることに変わりはない。
(4)請求人と被請求人との関係について
被請求人は、被請求人の引用商標に関するビジネス(「被服」の販売)について、あたかも日本を対象とするビジネスパートナーであったかのような主張をしている。しかしながら、本件審判の請求書でも主張したように、被請求人が主張する引用商標に関するビジネスは、あくまでも米国を対象としたものであって、日本を対象とするものではない。しかも、被請求人が引用商標に関する米国ビジネスにビジネスパートナーとして参加した時期は、1999年9月の米国トレードショー後(厳密には2000年初旬)である。このことは、本件審判の請求時に請求人が提出した証拠(甲第45号証及び甲第46号証参照)からも裏付けられている。
ここで、引用商標の米国ビジネスの経緯について具体的に説明すると、請求人は、本件審判の請求時に主張立証したとおり、引用商標の日本における「サーフボード用ワックス」のビジネスが軌道に乗り始めたため(甲第43号証及び甲第44号証参照)、引用商標のビジネスを米国に展開することを目的として、1999年9月に開催された米国トレードショーに引用商標を付した商品「サーフボード用ワックス」「被服(Tシャツ)」を出展した(甲第28号証の1及び4)。同トレードショーの出展中、請求人は、出展した商品に対して、多数の企業から引き合いを受け、それらの企業の中には米国の大手アウトドアウェア企業である「パタゴニア」が含まれていた。「パタゴニア」は、請求人に対して、単に商品に興味を示しただけでなく、「自然環境にやさしい」という引用商標のコンセプトに深い興味を示していた。請求人としては、引用商標の米国ビジネスを実現させるためには「パタゴニア」のような米国の大手企業であって引用商標のコンセプトに理解を示す企業と組むことが最善の策と考え、当時請求人と知り合いであり米国に在住していた被請求人の代表者に、現地で「パタゴニア」と交渉をしてもらうよう要請をした。請求人は「パタゴニア」と交渉を開始するため、同トレードショー後の2000年2月12日に渡米している。請求人と被請求人の代表者とが実質的なビジネスパートナーとなったのはちょうどこの時期である。その後、請求人は被請求人の代表者から米国ビジネスを展開するためには米国に法人を設立する必要があるとのアドバイスを受けた(甲第30号証の1及び2)。そこで、請求人は、被請求人の代表者と米国法人設立の準備をするため、2000年10月13日に再度渡米した。ただし、米国法人の設立申請は被請求人の代表者が代理人を介して行っており、請求人は立ち会っていない。この米国法人の設立については、被請求人の主張に不明な点があるので後に詳述する。
このように、被請求人は、1999年9月に開催された米国トレードショーの時点では引用商標の米国ビジネスに参加しておらず、参加したのは米国トレードショー終了後に請求人が「パタゴニア」から引き合いを受けた後(2000年2月12日に請求人が渡米したあたり)に参加してきたのものである。これに対して、被請求人の主張は、被請求人が1999年9月の米国トレードショーの開催前から引用商標の米国ビジネスに参加していたかのような主張内容となっている。したがって、上述した引用商標の米国ビジネスの経緯からも明らかなように、被請求人が引用商標の米国ビジネス参加したのは1999年9月の米国トレードショー終了後であるにも拘わらず、引用商標の米国ビジネスに同トレードショーの開催前から参加しているかのような被請求人の主張には誤りがあるといわざるを得ない。
請求人が本件審判の請求時に提出した引用商標に関する請求人と被請求人の代表者及び構成員との間でなされた通信記録(電子メール)及び被請求人が答弁書において提出した請求人と被請求人の代表者との間でなされた通信記録(FAX)を見ると(甲第45号証参照)、引用商標の米国ビジネスに関する内容は記載されているものの、引用商標の日本におけるビジネスについては何ら記載されていない。ましてや、引用商標を付した商品「サーフボード用ワックス」「被服」を米国発の商品として日本で製造販売するような計画をしていた事実も記載されていない。また、請求人が被請求人の代表者及び構成員に引用商標の管理を任せるだとか、引用商標のビジネスについて請求人が資金を提供するといったような約束ごとをした事実は何ら記載されていない。さらに、請求人が日本で引用商標の出願をし、登録を受けることについて被請求人の代表者及び構成員から催促されたというような事実、または請求人が日本で引用商標の出願をしなかったために被請求人が日本で引用商標の出願をしたことを請求人に報告した事実は全く記載されていない。
なお、被請求人は、被請求人が請求人にかけた国際電話の通話記録(乙第4号証)を提出しているが、国際電話の通話記録だけでは、請求人が被請求人の代表者及び構成員から早く日本で引用商標の出願をするように催促されていたといったような具体的な通信内容を客観的に立証することはできないものと思料する。
また、被請求人は請求人との間で引用商標を付した商品「被服」をまず米国で販売し、その後米国発として日本で販売する計画をしていたと主張している。しかしながら、上述の通信記録が示すとおり、請求人と被請求人との間において、そのような計画をした事実は全くない。
請求人は、上述の米国トレードショーに出展した際に引用商標を付した「のれん」、「ちょうちん」、「はっぴ」を製造し、これらを「サーフボード用ワックス」「被服(Tシャツ)」と併せて同トレードショーに出展している。また「サーフボード用ワックス」の展示方法も「ざる」に入れて展示するなど、引用商標が日本発であることを前面に押し出す工夫をしていた(甲第28号証の1ないし3)。これらの事実は、引用商標に関する米国ビジネスが日本発であることを示しているものと思料する。
それどころか、被請求人は引用商標のビジネスの最終目的を米国にすべきであるとの意向を請求人に伝えている事実がある(甲第30号証の1)。また、引用商標の表示の特徴(毛筆書きの「三日月」の図形と毛筆書きの「朋」の漢字とを組み合わせている点)を考慮しても、引用商標からは和風のイメージが想起されるため、引用商標のビジネス手法としては日本発の商品を海外に発信するというビジネス手法を取ることはあっても(甲第8号証の2)、米国発の商品として日本に持ち込むというビジネス手法は客観的に見て極めて不自然であると思料する。したがって、引用商標のビジネス計画が米国発の商品として日本で販売するというものであったとの被請求人の主張は、事実に反するものであるばかりか、ビジネス手法として客観的にあり得ないものであると思料する。
(5)請求人の主張及び証拠の訂正について
被請求人は、請求人と被請求人の代表者が知り合った時期が、米国トレードショー終了後(1999年以降)ではなく、1984年からである旨を主張している。これについては、上述のとおり引用商標に関する米国ビジネスに被請求人がビジネスパートナーとして参加した時期が米国トレードショー後であることを主張立証すべきところを、請求人と被請求人とが知り合った時期が米国トレードショー終了後(1999年以降)であるものと請求人が誤って主張したものである。したがって、請求人と被請求人とが知り合った事実については、請求人の主張立証に誤りがあったことを認め、「請求人と被請求人とが知り合った時期は1999年9月開催の米国トレードショー後である」を「請求人の米国ビジネスに被請求人の代表者及び構成員が参加した時期は1999年9月の米国トレードショー後である」に訂正する。しかしながら、被請求人も認めているように、被請求人が1984年から引用商標に関する米国ビジネスに参加したわけではなく、あくまでも米国トレードショー後に引用商標に関する米国ビジネスに参加してきたのである。被請求人は、請求人と約20年来の知り合い関係であったにも拘わらず、請求人の引用商標と同じ商標について不正に出願し登録を受け、さらには引用商標と同じ商標を不正に使用をしているものであり、このような請求人と被請求人との関係に関する被請求人自らの主張によっても、本件商標登録に無効理由があることは明らかであると思料する。
(6)被請求人の主張立証について
甲第47号証は、参考までに請求人の主張立証及び被請求人の主張立証を並記した表である。この表を参照すれば一目瞭然のとおり、請求人の主張立証事項に対して被請求人は本件商標登録に無効理由があることについての重要な部分についてはほとんど反論していない(例えば、請求人が引用商標について掲載した雑誌記事の写しを、被請求人が本件商標に関する雑誌記事であるかのように被請求人の営業パンフレットに添付して営業を行っている事実があること(甲第8号証の1及び甲第33号証)に対してなぜそのような行為をしたのか全く反論していない)。また、反論をしたとしても単に主張をするだけでその主張の裏付けとなる証拠が提出されていないか、または証拠が提出されていたとしてもその主張を裏付ける十分なものとは言えないものばかりである(例えば、引用商標に関するビジネスが米国を対象としていたものであること及びその米国ビジネスについて請求人と被請求人の代表者及び構成員との役割について確認された念書が被請求人の構成員の名のもと作成された事実に対して、念書を作成した被請求人の構成員は当時検査入院していたと主張するだけで、それを裏付ける医師の診断書等の証拠は提出されていない)。
また、被請求人は、乙第11号証及び乙第12号証を提出し、請求人が被請求人に対して不誠実な対応を取った旨を主張している。この被請求人の主張に対して請求人としては特段反論するつもりはないが、乙第11号証の書簡及び乙第12号証の書簡が存在する経緯について説明する。乙第11号証は、本件答弁書が提出される前の2003年12月8日付けで被請求人が請求人に送付し請求人に本件無効審判を話し合いで解決することを求める書簡の写しである。請求人としては、この被請求人の要求内容によっては、被請求人の要求に応じる考えがあった。しかしながら、被請求人は、本件商標登録に無効理由があることが明らかであるにもかかわらず本件商標登録に無効理由はないと主張し、しかも本件答弁書の内容と同様に事実に反する根拠のない主張をしていた。このような被請求人の態度には同意することはできなかったので、請求人としては、被請求人の要求には応じられない旨を記載した書簡(乙第12号証)を送付した。なお、乙第11号証の書簡を請求人に送付したことは、被請求人が本件商標登録の無効理由を裏付ける客観的な証拠が多数存在することから本件審判を有利に進めることができないものとその当時に判断した結果であると思料する。このように、本件商標登録に無効理由があることが明らかである以上、被請求人の乙第11号証の書簡に対して請求人が乙第12号証の書簡を送付した行為は正当な行為であると思料する。
以上のとおり、答弁書における被請求人の主張立証だけでは、本件商標登録の無効理由を覆すことは到底できるものではなく、被請求人の主張のほとんどは根拠のないものであって事実に反するものであることは明らかである。
(7)被請求人の証拠の信憑性について
被請求人は、乙第16号証の「California Business Portal」で検索した企業情報を提出した上で、被請求人が米国法人が設立された時期として、答弁書の第3頁第1行ないし第4行では1999年10月に設立されたと主張し、答弁書第15頁第8行では2000年10月に設立の申請がなされたと主張しており、本件答弁書の中で矛盾した主張をしている。本件商標登録に無効理由がある以上、被請求人が米国法人として設立された事実及びその設立時期がいつであるかは本件の無効審判においてさほど重要ではないが、被請求人の主張立証に不審な点があるため、確認のため被請求人が提出した乙第16号証に従って、被請求人の企業情報を調査した。その結果、「California Business Portal」の企業情報の凡例(甲第49号証の3参照)を見る限りでは、被請求人は米国法人として2000年10月に設立の申請がなされていた(答弁書の第3頁第1行〜第4行の主張は誤っている)ことが判った。なお、被請求人が米国法人として設立された時期が1999年10月でなく2000年10月であることは、請求人と被請求人との間で交わされた2000年8月29日及び2000年8月31日付け電子メール(甲第30号証の1及び2)において、被請求人の代表者から請求人に対して引用商標の米国ビジネスに関して米国現地会社の設立が必要であることを報告している事実があることからも裏付けられている。
また、被請求人は、答弁書において被請求人が米国法人として「Status:active」(活動中)であるとの主張をしている。これに対して、請求人が「California Business Portal」で調査したところでは、2004年4月16日現在、被請求人は「Status:suspended」(活動停止)になっている(甲第49号証の1参照)。しかもこの中で被請求人の「Mailing Address」(住所)は、本件商標の登録原簿(甲第1号証の2)及び本件答弁書に記載の住所とは異なるものとなっている。
また、被請求人は、被請求人が活動中であることを立証するため家賃等の請求書及び小切手の写し(乙第17号証)を提出している。そして、これらの書類の宛先となっている「DEE-LIGHT CLOTHING INC.」なる米国法人と被請求人との関係について部屋を共同使用している関係にある旨を主張している。しかしながら、この「DEE-LIGHT CLOTHING INC.」なる法人についても、「California Business Portal」の企業情報を調査したところ、2004年4月16日現在、「DEE-LIGHT CLOTHING INC.」なる米国法人は「Status:conditionally dissolved」(条件付き解散)となっており(甲第49号証の2参照)、「California Business Portal」の企業情報の凡例(甲第49号証の3参照)を見る限りでは「DEE-LIGHT CLOTHING INC.」は実質的に解散状態にある。したがって、甲第49号証の3の存在を考慮すると、被請求人が共同使用していると主張する相手企業の存在すら疑わしいものであり、被請求人が活動中であるとの被請求人の主張立証の信憑性に対して疑いを持たざるを得ない。
このように、被請求人は、被請求人が米国法人として活動停止の状態にあるにも拘わらず活動中であるとの虚偽の主張をしたり、またその活動の事実を裏付ける証拠として信憑性に疑いがあるといわざるを得ない証拠を提出したり、さらには住所が変更されているにも拘わらず平然と変更前の住所を記載して答弁書を提出するなど、被請求人の主張立証には疑わしい点が多く見受けられる。このような疑義の多い被請求人の主張立証により、本件商標登録の無効理由を覆すことは到底できないものと思料する。
また、甲第47号証の表からも明らかなように、請求人がこれまでに提出した証拠と被請求人が提出した証拠とを比較しても、請求人が提出した証拠の方が被請求人が提出した証拠よりも状況証拠の量としては圧倒的に多いものとなっている。また、両証拠の質を比較しても、請求人側の証拠には、雑誌・新聞記事、取引伝票等の第三者がその発行に関与した証拠が数多く含まれており、これらの証拠はいずれも本件商標登録の無効理由を直接的に裏付ける客観的な証拠であるのに対して、被請求人側の証拠には、第三者がその発行に関与した証拠はわずかに含まれているものの、これらの証拠はいずれも本件商標登録の無効理由を直接的に裏付ける客観的な証拠とはいえない点で、証拠の質においても請求人が提出した証拠は被請求人が提出した証拠よりも圧倒的に勝るものと思料する。
(8)まとめ
以上のとおり、被請求人の主張はほとんどが事実に反するものであり、本件商標登録に無効理由があることは明らかである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出している。
1 審判請求書によれば、本件商標は、商標法第4条第1項7号、19号及び15号の規定に該当するから、本件商標は、商標法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである、とのことである。その理由として、(ア)被請求人が本件商標について出願し登録を受ける行為は、引用商標の真の所有者である請求人及び請求人関係者に対して不当な損害を与えるだけでなく、健全な需要者・取引者に対しても不当な損害を与えるものであり、本件商標は、公正な競業秩序・商道徳及び信義則に反する、(イ)被請求人が本件商標を出願し登録を受ける行為は、明らかに引用商標の顧客吸引力をフリーライドするものであり、本件商標は不正の目的をもって出願、登録されたものである、(ウ)本件商標は、未登録の周知商標と類似し、かつ、この周知商標との関係で商品の出所の混同を生じることは明らかである、と述べている。
しかしながら、以下に述べるように、請求人の主張は殆ど全てが事実無根といっても過言でないほどまで、事実と反するものであり、全く理由のないものである。さらに提出に係る証拠の一部には偽造されたものも含まれている。
2 請求人と被請求人の関係について
被請求人は、本件商標に関する「Tシャツ」「サーフボード用ワックス」等を販売するために、請求人である湯野武臣の発案に基づいて、谷口忠男を代表者として1999年10月に米国において設立された法人である。請求人の湯野は、湯野のサーフィン仲間である真木蔵人がデザインした本件商標をサーフボード用ワックスに使用し、わが国で販売していた。その後、1999年に当該商標を使用した「Tシャツ」を米国での展示会に出品した際に、本件商標にかかる商品をまずアメリカで販売し、その後日本で販売することを考えた。これは、カリフォルニアがサーフィンのメッカとも言うべきサーファーにとってはあこがれの場所であることから、まず、カリフォルニアで販売し、アメリカ発というキャッチフレーズが日本での販売には最も効果的と考えたからである。
そこで、請求人は、1984年からのサーフィン仲間である谷口が米国に在住し、サーフィン用貝、スポーツ用具等の販売を行っていることから、谷口と連絡をとり、本件商標にかかる商品の販売の計画を話し合った。その内容は、まず谷口が米国に在住していることから、谷口が本件商品に関するビジネスの主体となるブレークウォーター インコーポレイテッドを米国において設立して商品の企画、販売を担当し、湯野が商品の製造に係る費用を提供することであった。その後、宮川が加わり、宮川が商品を製作し発注することになった。そして、これら3者はそれぞれが全く独立した関係にあり、本件商品を販売して得た利益は3者で分け合う、というビジネス上のパートナーの関係にあった。そして、まずアメリカでのビジネスを開始するために、宮川は韓国の会社にTシャツの製造を依頼して、製造させ、その間に谷口は米国での商品の販売ルートを築くために活動を行った。
しかしながら、湯野は約束に反して資金を全く提供せず、その結果宮川は商品の製造者に資金を支払うことができなくなってしまい、商品が製造者から入ってこないという状況になり、米国では商品の販売が困難な事態に陥ってしまった。しかしながら、米国側での販売活動は順調に進んだ。2001年に入り、米国のアウトドアグッズの販売店として有名なパタゴニアの日本での販売店を通じた販売の準備が整い、当初の計画どおり、アメリカ発といったキャッチフレーズの元で商品を日本で具体的に販売を開始する時期になった。そして、パタゴニアから日本での商標登録がされているか確認を求められ、谷口は、湯野と連絡をとった。谷口は湯野に対して本件商標が登録されているか再三確認したところ、湯野はその商標はすでに登録が取れているから心配要らないと回答してきており、谷口は始めは安心して本件商標の商品の日本での販売計画を立て、具体化していった。
しかしながら、湯野は本件商標の登録は取れているとはいっているが、登録番号等を知らせてこないため谷口は心配になり調査を行ったところ、登録されてないことを知ったのである。日本は先願主義を採用していること、湯野が適切な回答をしてこなかったこと、被請求人が本件商標の管理をまかされていることから、谷口はわが国で商標権を確保するため慌てて本件商標の登録出願をしなければならない事態となった。このような状況にもかかわらず湯野はその後も、すでに商標登録されているから問題ないと言い続けてきた。
また、これと同じ時期、湯野はビジネスパートナーである谷口及び宮川に何ら相談することなく、無断でデルフィナスに対して商標の使用許諾を行い本件商標を使用させていた。このように、湯野と谷口はビジネス上のパートナーの関係があり、互いに役割分担があり、湯野には資金の提供義務があるにもかかわらずそれを怠ったり、第三者のデルフィナスに商品の製造、販売を行わしているにもかかわらずそれを谷口及び宮川に告知しなかった。
このような事情であるから、これまでの湯野の不誠実な態度や不明確な対応もあって、湯野と話し合い結論を待っていたのではこれまでに行ってきた計画がすべて台無しになることは明らかであるから、被請求人は本件商標の出願をしたのである。そして、出願後谷口は、湯野は本件商標の登録を有してないことを知らせ、デルフィナスとも正式な契約を結ばせるために、デルフィナスに対して平成13年11月29日付け書状(甲第4号証)及び平成14年1月11日付け書状(乙第1号証)を送ったのである。本来ならば、デルフィナスは湯野にクレームを言い、湯野は谷口に対して何らかの連絡をしてくるはずである。しかしながら、これに対し湯野は全く回答してこなかったので、被請求人は湯野の態度にさらに疑問を抱かざるを得なくなるとともに、日本でのビジネス展開を谷口が独自で行わなければならない状況になり、現在にいたっている。
したがって、被請求人による本件商標の登録は、谷口と湯野の間で計画された本件商標に関する事業を遂行するために必要な行為であり、これは当然に正当な行為であるから、何ら無効理由を含むものではない。
以上を踏まえ、以下に答弁する。
3 商標法第4条第1項第7号に関する答弁
(1)請求人は、「ここで、請求人と請求人関係者…、請求人は、本件商標の出願前に、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」に使用することについて、請求人関係者と契約を締結した(甲第3号証)。請求人は、本件商標出願前から現在に至るまで、この請求人関係者を通じて、引用商標を商品「サーフボード用ワックス」に継続して使用している(甲第5号証の1ないし甲第22号証)。」と述べている。
しかしながら、まず、第一に、本件商標のデザインは請求人である湯野自身が創作したものではなく、湯野の友人である真木蔵人が創作したものである。湯野はそれについて商標登録を有していないにもかかわらず、自らの商標と称して他人に使用許諾の契約をしているにすぎない。したがって、これをもって湯野が本件商標について商標登録を受ける権利を有していることを理由付けるものではない。また、デルフィナスが本件商標を使用していることをもって、湯野の商標であることを理由付けるものではない。すなわち、前述のように、湯野と谷口らは1999年以後ビジネス上のパートナーの関係にあり、本件商標の管理を担当する被請求人が本来は商標の登録権利者となってしかるべきであり、本件商標は湯野個人の商標であるようなことはありえない。
なお、後述のように請求人と被請求人はもともとウェットスーツの製造販売者と当該商品の顧客であるとともに、サーフィン仲間という関係であったことから、上記本件商標に関するビジネスを書面による契約を交わして行っていたわけではないので、書面により上記関係を直接証明することはできないが、添付の乙第2号証ないし乙第4号証からも明らかなように、請求人と被請求人は何度もファックスや電話で話し合いをしている。したがって、これからも、請求人と被請求人が本件商標に関して共同してビジネスを行う立場にあったものであることは明らかである。
(2)請求人は、請求人と被請求人との関係等を述べているが、これは明らかに事実に反するものである。すなわち、「それまで請求人とは何ら面識もなかった谷口宮川は」、と述べているが、請求人の湯野と谷口は、1999年に本件商標に関するビジネスの話し合いを開始するより15年も前の1984年以来の旧知の間柄であり、一緒に食事をとったりする関係であった。両人は、サーフィン仲間であり、1984年に知り合って以来、一緒にサーフィンをしたり、何度か宮崎や東京で合ったり、またファックス等で連絡し合う関係であった。また、湯野は宮崎でウェットスーツを製造しており、その工場にも谷口はお客としてたびたび訪れ、湯野の母親が工場の隣で経営している民宿に1ヶ月も滞在したことがある。すなわち、このように互いに20年近くも友人の関係があり、湯野は当然その関係を熟知していながら、上記のように「それまで何ら面識もなかった」と明らかに事実と反することを、ただ単に本件における主張を有利に導くために公然と主張するような性格の人であり、このことは、本件に関する請求人の他の主張が不正確なものであることを理由付けるものである。
また、被請求人は、請求人と被請求人の関係を考えると、本件は無効審判で争うような性質のものではく、話し合いで解決をすべきものと判断し、被請求人は請求人に対し書面を送り、上記の事柄を指摘したところ(乙第11号証)。これに関し、湯野の代理人から回答があり、「湯野氏の認識に誤解があった」と簡単に主張を撤回するような回答をしてきた(乙第12号証)。しかも、もともとは、谷口は請求人湯野の客であり、一緒にサーフィンをしたり、食事をしたり、請求人の工場の隣にある母親の民宿に1ヶ月も滞在したり、その後も谷口は米国に住んでいながらも時折連絡をとり合うというような間柄であったにもかかわらず、「認識に誤解があった」といういいかげんな回答をしてきているのである。これも、いかに請求人の主張があいまいで、不実のものが多いことを示すものに他ならない。
(3)次に、「谷口及び宮川は、請求人の引用商標に関する事業に興昧を示し、請求人の米国事業への参加を求めてきたため」と主張するが、これも事実に反する。すなわち、米国カリフォルニアは、サーフィンのメッカともいうべきところであり、サーファーにとっては憧れの場所であることから、サーフィンに関係したTシャツ等は、カリフォルニアのイメージが商品の販売の促進に役立つことから、本件商標についてのTシャツをまず米国で販売し、その後、米国発のキャッチフレーズのもとで日本で販売することを計画し、湯野は谷口らと本件商標に関するビジネスを持ちかけてきたのである。すなわち、本件商標のビジネスの最終目標は日本で商品を販売することにあり、湯野は日本でビジネスを行うために谷口に参加を求めたのであり、米国事業への参加を求めたのではない。
これに関し、湯野は、乙第12号証において、「湯野が谷口に話を持ちかけた内容は、米国における事業に限られるものであり、…」と述べている。
しかしながら、前述のように米国発のキャッチフレーズでわが国においてTシャツ等を販売をすることを目的として本件商標に関する事業が計画されたのであるから、湯野の上記の主張は明らかに事実に反することである。しかも米国に限っても湯野は谷口らに製品を作らせ、販売ルートを開拓させたにもかかわらず、全く自己の役割りである資金を提供しなかったのである。また、乙第12号証によれば、「湯野が谷口に資金を提供することについて具体的に取り決めをした事実は一切ない。」とのことであるが、米国に住んでおらず、米国に工場を持っているわけでもなく、しかも、販売店ルートも持っていない湯野が谷口と事業をするうえでできることは資金の提供を約束する以外に何があるのであろうか。したがって、この点についても請求人の主張は明らかに事実に反するものである。さらに、湯野が谷口に対して持ちかけた事業とは一体何か、またこれに関する請求人の役割は何であるか請求人は全く説明していない。
(4)さらに、「請求人は、引用商標の米国事業活動に谷口及び宮川を加えた形で、米国企業『ブレークウォータ一』を設立した」と主張し、甲第29号証を提出している。
しかしながら、まず、ブレークウォーター社は、湯野の提案に基づくものであるとはいっても、谷口が設立した会社であり、宮川や湯野が設立したものではない。さらに、甲第29号証は、宮川が署名したとされる「念書」であるが、宮川はこのような念書を作成していない(乙第13号証)。すなわち、当該証拠は、請求人か請求人の関係者の誰かによって偽造されたものである。本件商標が登録された後、被請求人は日本国内でのライセンシ-を開拓するため株式会社トーメンと交渉を行っていたところ、湯野の関係者と思われる株式会社キャラッツの内藤久考から谷口や(株)トーメンへ宮川個人のプライバシーに関する書面が何通も送られたり、谷口には、甲第29号証の書面が送られてきた。これに対し、宮川は、当該甲第29号証にかかる書面が作成されていた2002年2月14日には、病院に検査入院をしており、そのような書面には署名、捺印をしておらず、当該書面が明らかに偽造されたものであることから、宮川は内藤に対し、当該書面を作成していない旨述べた通知書を送っている(乙第13号証)。したがって、甲第29号証に述べられている事柄は全てが事実無根であり、このように、請求人はねつ造された証拠を提出してまで、事実を湾曲させ、本件を自己に有利に導こうとしている。
しかしながら、当該証拠がねつ造されたものであるから、これに記載された内容が事実でないこと及びこれによって請求人が立証しようとする事実、「3人で会社を設立した」、「アメリカでの商標が必要とされて」、「パタゴニアとの関係をつないだガッツキの発案者である湯野と…」は事実と反することは明らかである。すなわち、ブレークウォーターを設立したのは谷口であり、アメリカでの商標が必要とされて会社を設立したのでもなく、前述のように本件商標に関する事業を最終的には日本で行うために設立されたのである。さらに、ガッツキを創作したのは湯野ではなく、湯野や谷口のサーフィン仲間の真木蔵人である。さらに、パタゴニアとの関係を作ったのは、湯野ではなく谷口である。
(5)請求人は甲第30号証1ないし8を提出し、これにより被請求人は本件商標登録出願前に、引用商標が請求人の使用する商標であることを熟知していた、と述べている。しかしながら、前述したように、請求人と被請求人はビジネス上のパートナーであり当該電子メールは、米国での本件商標に関する商品の販売についての通信文である。すなわち、前述したように、本件商標は湯野が創作したものではなく、本件商標に関するビジネスは請求人と、谷口と宮川の三者が共同でなされることになっていたのであり、本件商標が湯野氏のものであることを前提になされたものではない。
(6)次に、「本件商標の出願前に谷口からの連絡が途絶えてしまったため、米国企業『ブレークウォーター』による引用商標を使用した米国事業は頓挫した」、と述べているが、これも全く事実無根の主張である。すなわち、前述したように、湯野が資金を提供するという立場にあったにもかかわらず、湯野が資金を提供しないという不誠実な行為を行ったため、谷口及び宮川が商品を販売することが困難な状態になってしまったのである。しかも、その原因は請求人にあるにもかかわらず、しかも、谷口は再三、湯野に電話をして資金を提供するよう求めていたにもかかわらず、「谷口からの連絡が途絶えた」とか、「米国事業は頓挫した」とか、全く事実に反することを請求人は主張している。すなわち、湯野はまめに詳しく書面をやり取りする性格でないことから、湯野と谷口との話し合いはほとんどが国際電話で行われていた。すなわち、乙第4号証に示すように、現時点で提出ができる電話の記録だけでも、谷口は湯野に2000年7月7日から本件商標の出願日である平成13年7月19日の直前の、2001年6月2日まで合計で80回以上も電話をしており、さらに出願をした後の2001年9月16日にも電話で話をしているのである。
(7)さらに、「被請求人は、請求人に無断で、本件商標について商標登録出願を行い、商標登録を受けた」と主張している。しかしながら、前述のように、本件商標に関するビジネスは、3者の共同で日本において商品を販売することが目的で始められたものであり、日本での販売が具体化するに際し谷口は、本件商標の出願の直前の平成13年5月31日まで、本件商標について問題がないか何度も問い合わせており、最終的に登録がなされてないことを知り慌てて商標登録出願をしたのであり、しかも、出願がされた後にも谷口は湯野に対し電話で話をしている。決して請求人に無断で商標登録出願をしたのではない。
請求人は、熊谷啓太が作成した甲第41号証を提出している。しかしながら、前述のように被請求人は正当な事業活動をしてきたのであり、本件商標の出願についても請求人に対して無断で行ったのではないことは明らかである。そのような事実があるにもかかわらず、熊谷の証言の内容は明らかに事実に反することであり、しかも多くが事実を述べているのではなく、谷口らを中傷するような極めて過激な表現で自分の意見を述べているにすぎない。したがって、当該証言が尋常な状態でなされたものでは無いことは容易に推測できるから、当該証言が全く証拠力がないことは明らかである。また、このような証拠を提出すること自体、請求人が事実を無理やり湾曲しようとしていることを示すものに他ならない。
(8)さらに、請求人は、本件商標が指定商品中に「サーフボード用ワックス」が含まれてないことを理由に、本件商標の出願が請求人の知り得ないところで行われた、と主張している。
これも全く請求人の邪推ともいうべきものである。谷口は日本に弁理士の知り合いがいなかったため、知人を通じて出願を依頼することになり、その知人は、急いでいることもあり、第25類と第28類のいわゆるクラスヘッディングの商品を指定すれば十分と考え、クラスヘッディングの商品を指定して出願するよう依頼した。本件商標の出願の後、本件商標の指定商品には「サーフボード用ワックス」が含まれてないことを知ったが、本件商標の指定商品には「サーフボード用ワックス」と類似する「スキーワックス」が含まれているから慌てて追加出願する必要がないこと、当面重要な商品は「Tシャツ」であり、「被服」が含まれていることから、とりあえずは問題がないこと、等を考慮してあえて「サーフボード用ワックス」については追加出願をしなかったに過ぎない。このように、「サーフボード用ワックス」が指定商品に含まれていないことは、単に、請求人の不誠実さが原因で本件商標の出願を急いだため、その結果、商品の表示について被請求人と代理人との間で十分な検討がなされなかったことに起因するにすぎない。
(9)請求人は、「被請求人は、引用商標だけでなく、引用商標と密接な関係のある請求人の引用関連商標についても一括で権利化を図ろうとしている。」と述べている。しかしながら、何度も繰り返すが、請求人と被請求人はサーフィンに関連した商品すなわち、主にTシャツ等を日本で販売することを目的として始められたのであり、請求人との間で始められた事業を日本で行うために当然必要なことをしたに過ぎない。
(10)次に請求人は、「被請求人が頒布した取引書類には『環境にやさしい』等の文言が掲げられ、これらの文言は引用商標のコンセプト又はポリシーとほとんど同じである」と述べ、「被請求人は、請求人が引用商標を掲載した雑誌の写しをあたかも被請求人の商標であるかのように取引書類を頒布している」、と主張している。しかしながら、今日においては、「環境にやさしい」といった文言は、環境保護を重要なテーマとする様々な分野で広く一般的に使用されている文言であり、サーフボード用ワックスの業界でも当然ながら例外ではない。したがって、環境保護を考えた商品に対し、「環境にやさしい」という文言を用いることは当然のことであり、何ら請求人の宣伝文句をまねたものでもない。
(11)さらに、請求人は、「さらに、これらの取引書類には、引用商標及び引用商標の別名称として引用商標と密接に関連する引用関連商標だけでなく、請求人が引用商標を使用する商品『サーフボード用ワックス』の製造名称として使用する『波魂堂』の文字も掲載されている(甲第34号証)。」と述べている。しかして、「波魂堂」の文字の使用は本件とは何ら関係のないことと考えるが、一応述べておく。すなわち「波魂堂」は、そもそも請求人の提案で被請求人が採用したものであり、当初は被請求人の名称は「HAKONDOU,INC.」であった。しかしながら、「波魂堂」は個別の商標と考え、会社名としては他のものが適切と考え、被請求人は会社名を現在の「BREAKWATER,INC.」に変更し(乙第14号証)、米国においては、「波魂堂」の文字を含む本件商標と同一の商標を請求人である湯野の確認のもとで、当初は商標登録出願をした(乙第15号証)。したがって、仮に「波魂堂」を使用しても、何ら違法なことではないが、被請求人にとっては使用する必要がないので、現在は使用していない。
(12)さらに、請求人は、「…。すなわち、被請求人『ブレイクウォーター インコーポレイテッド』は、米国法人としての実体がないにもかかわらず、実体があるかのように装って本件商標を出願し登録を受けてその営業活動を行っている。」と主張している。しかしながら、この主張も全く事実に反するものである(乙第16号証及び乙第17号証)。すなわち、乙第16号証「California Business Portal」に示すように、被請求人は適法に設立され、存続している法人である。前述したように、被請求人は請求人との話し合いのすえ、米国で設立された法人であり、しかも谷口と請求人は何度も電話で会話をして、本件商標に関する事業の打ち合わせをしてきたにもかかわらず、「被請求人は実体があるかのように装って」と述べていることは、一体何を目的として、いかなる事実をもとに主張をしているのか理解できない。
(13)請求人は、「被請求人が本件商標について出願し登録を受ける行為は、引用商標の真の使用者である請求人及び請求人関係者に対して不当な損害をあたえるだけでなく、健全な需要者・取引者に対しても不当な損害を与えるものであり、本件商標登録は、公正な競業秩序・商道徳及び信義則に反するものである。」と主張している。
しかしながら、これまで述べてきたように、請求人の主張はほとんど全てが事実無根であることが明らかであるばかりでなく、被請求人は請求人との当初からの計画を遂行するため努力してきたのであり、本件商標の登録なくしては、これまで行ってきた計画が全て無駄になるのである。したがって、本件商標の出願及び登録は、当然必要なこととして行った公正な競業秩序・商道徳及び信義則にかなうものであることは明らかであるから、何ら公の秩序及び善良の風俗を害するものではない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
4 商標法第4条第1項第19号に関する答弁
請求人は、被請求人が本件商標を出願し、登録を受ける行為は、明らかに引用商標の顧客吸引力をフリーライドするものであり、本件商標は不正の目的をもって、出願、登録されたものである、とのことである。そして、その理由として、「被請求人は、引用商標が本件商標が出願される前に請求人が発案した商標であること、及び、引用商標が商品『サーフボード用ワックス』を表示する商標であることを知りながら、請求人が引用商標を登録していないことをいいことに、請求人に無断で本件商標を出願し登録を受けたことは明らかである。」と、ここでも主張している。
しかしながら、まず、第一に、本件商標に係る図形は、わが国及び外国において広く知られたものではない。次に、前述したように、本件商標を構成する図形は、請求人が発案したものではなく、請求人の商標でもない。さらに、本件商標にかかるわが国での事業は、請求人と被請求人が共同で行うことが当初から予定されており、請求人があまりにも不誠実であったためにその事業を行うために被請求人が出願し、登録を受けたのである。さらに、本件商標に関しては、被請求人が管理、運営をまかされているのであり、本件商標に関する事業を行う上では、被請求人は当然とるべき必要な行為として本件商標の出願をしたのであるから、被請求人は、本件商標を不正の利益を得る目的や、他人に損害を与える目的等の不正な目的をもって使用するのではない。
以上のように、本件商標の出願及び登録は、明らかにわが国での本件商標に関する事業を行う上では正当かつ必要な行為であるから、被請求人は何ら不正な目的をもって本件商標を出願し、登録を得たものではない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。
5 商標法第4条第1項第10号及び同第15号に関する答弁
請求人は、本件商標が請求人の不登録の周知商標と類似し、かつ、この周知商標との関係で商品の出所の混同を生じると主張している。
被請求人は、本件商標が湯野により本件商標の出願日より以前から、わが国で「サーフボード用ワックス」に使用されていたことを否定しない。しかしながら、前述したように、1999年以降は、わが国において本件商標に関する事業は、請求人と被請求人が共同で行うことを予定して始められたのであり、被請求人が本件商標の管理を行うことになっている。請求人と谷口の間では書面による明確な取り決めは無かったが、かかる両者の取り決めに基づき、まず、米国で被請求人が設立されたのである。わが国においては、前述のように本件商標の登録を請求人が取得しなかったから、現実の事業主体である被請求人が登録を取得したのである。
したがって、まず、第一に被請求人は、請求人との話合いで始められた事業を遂行するために必要な行為として本件商標の出願を行ったのであるから、そもそも請求人との間で混同が生じることはありえない。かかる事情から、被請求人は本件商標登録出願後に請求人に電話をし、さらにはデルフィナスに書面を送り、被請求人は請求人に対して本件商標の出願をしたことを知らせ(乙第1号証)、本件商標に関する事業を正しい方向に導くため努力したにもかかわらず、請求人は被請求人に対して何ら回答してこなかった。さらに、本件審判の請求がなされた後も被請求人は請求人に書面を送り本件を話し合いによって解決することを提案したが、請求人は被請求人との話し合いを拒否したのである(乙第11号証及び乙第12号証)。したがって、かかる本件商標の出願、登録の経緯に照らせば、そもそも本件商標が商標法第4条第1項第10号及び第15号の適用が問題となる事柄でないことは明らかである。
次に、請求人は本件商標にかかる商標が、請求人の未登録周知商標である、とのことである。本件商標と同一の商標が「サーフボード用ワックス」について本件商標の出願日である、平成13年7月19日より前から請求人により使用されていることを被請求人は否定しない。しかしながら、請求人は本件審判請求書において、当該商標の使用開始日や販売高等、当該商標が周知であることを示す事実を何ら主張、立証していない。請求人の提出した証拠によれば、「サーフボード用ワックス」について当該商標の使用が開始されたのは、平成10年末と思われるが、本件商標の出願日のわずか2年半前である。したがって、わずか2年半の期間の使用では当該商標が周知である、とは到底言えるものではない。
また、請求人は「Tシャツ」の写真を提出しているが、当該商品が販売された事実を証明する証拠は提出されていない。当該商標が付されたTシャツは単なるサンプル品と推測される。すなわち、本件商標が使用された「Tシャツ」が販売された事実がないから、当該商標が「Tシャツ」について周知であるとは到底いえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものではない。
6 以上述べた理由により、請求人の主張は何ら理由のないものであるから、本件商標の登録は商標第4条第1項第7号、同第19号、同第10号及び同第15号のいずれにも該当するものではない。よって、被請求人は答弁の趣旨記載の審決を求める次第である。

第5 当審の判断
(1)引用商標の著名性について
請求人の提出に係る甲第3号証の「波乗り滑り止め『朋』の製造販売契約書」は、請求人を代表者とするギャップインターナショナルが発案者である「サーフィン用滑り止めワックス波乗り滑り止め『朋』について」デルフィナスが製造し、販売することができる旨の契約を平成10年10月1日に締結したこと、甲第5号証の1ないし5及び9ないし11のサーフィン関連の雑誌等(平成11年3月ないし平成12年1月発行)には、引用商標を使用したサーフボード用ワックス(以下「使用商品」という。)の紹介、広告記事及びプレゼント記事が掲載されていたこと、甲第5号証の6ないし8は、インターネットのホームページの写し(ともに平成11年9月21日作成)であり、これによりインターネット上で使用商品が販売されていたこと、甲第7号証の1の音楽イベント(平成10年12月13日開催)のポスター及び甲第7号証の2のサーフィン大会(平成12年4月8日及び9日開催)のポスター及び参加応募用紙に協賛として引用商標が掲載されていたこと、甲第8号証の1、2、4及び5のサーフィン関連の雑誌(平成11年7月ないし平成12年1月発行)には、引用商標に関する紹介記事が掲載されていたこと、甲第8号証の3の新聞(平成11年11月30日発行)に使用商品をプレゼントとし使用商品が紹介されていたこと、甲第9号証の1ないし22の物品受領書(平成11年8月ないし平成12年6月発行)には、使用商品が取り引きされていたこと、甲第13号証の1ないし9及び甲第14号証の1ないし5の包装紙の納品書及び請求明細書(平成11年2月17日ないし平成13年5月23日付け)、甲17号証の1ないし3及び甲第18号証の1ないし3の段ボールの納品書及び明細書(平成11年2月ないし平成13年5月)、甲第20号証の1及び2及び甲第21号証のステッカーの納品書及び明細書(平成11年3月ないし平成11年3月)には、引用商標を使用した使用商品用の包装紙、段ボール及びステッカーが製造されていたそれぞれの事実を認めることができる。
また、甲第28号証の1ないし5は、平成11年9月6日から米国で開催されたサーフィン関連商品の輸入展示会に関する写真等である。
以上の証拠によれば、引用商標が付された使用商品が使用されていた事実は認められるが、甲第3号証等によれば、その使用が開始されたのは、平成10年10月以降であるとみられ、本件商標の登録出願日の僅か2年半前であるばかりでなく、上記以外の証拠は、日付が不明なもの又は日付の確認できるものであっても、本件商標の登録出願日以降のもの或いは引用商標の使用に関するものではなく、請求人の事業計画等に関するもの或いは被請求人から送信された電子メール等である。
そうすると、請求人の提出に係るこの程度の証拠によっては、引用商標が本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係る使用商品の商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるに充分なものということはできない。
なお、請求人は、使用商品がコンビニエンスストアで販売されていた事実があるから、引用商標は十分周知になっている、旨主張しているが、仮にコンビニエンスストアで販売されていたことが事実であるとしても、使用商品の用途がサーフィンに使用するものであることからすると、その販売店舗は限定されるというべきであるから、コンビニエンスストアで販売されていたとしてもそのことから直ちに引用商標が周知であるといえない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
被請求人は、「谷口が米国に在住していることから、谷口が本件商品に関するビジネスの主体となるブレークウォーター インコーポレイテッドを米国において設立して商品の企画、販売を担当し、湯野が商品の製造に係る費用を提供することであった。その後、宮川が加わり、宮川が商品を製作し発注することになった。そして、これら3者はそれぞれが全く独立した関係にあり、本件商品を販売して得た利益は3者で分け合う、というビジネス上パートナーの関係にあった。」旨主張しているのに対し、請求人は、請求人と被請求人の代表者との間でなされたとする通信記録の内容について否定はしているが、請求人が米国トレードショー後の2000年2月12日に渡米し、その時期に請求人と被請求人の代表者とが実質的なビジネスパートナーとなった旨主張している。
そうすると、請求人と被請求人の代表者との間でされたとする通信記録の内容について疑わしい部分が残るとしても、請求人と被請求人の代表者とは、本件商標に関する使用についてある程度の合意がされていたものと推認し得るものであるから、被請求人が本件商標を出願し、登録することについて、不正があったとまではいい得ない。
してみれば、本件商標は、その構成別掲(1)のとおりであって、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その指定商品に使用することが、公正な競業秩序、商道徳又は信義則に反するようなものともいえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるとすることはできない。
(3)商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号について
請求人は、引用商標が広く認識されていたことを前提としているが、上記で述べたように、引用商標は本件商標の登録出願時には、請求人の業務に係る使用商品の商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認められないから、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者が引用商標を直ちに連想又は想起するとは認められず、該商品が請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはなく、不正の目的をもって使用をするものとはいえない。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号に該当するものであるとすることはできない。
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号のいずれの規定にも違反して登録されたものではなく、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
なお、請求人が援用する審決例は、本件と事案を異にするものであるから、この点に関する請求人の主張は採用の限りでない。
また、請求人は、本件商標と同一又は実質的に同一の引用商標は、請求人の発案に係るものである等種々述べているが、それらは当事者間で解決すべき問題であるから、本件の判断を左右するものではなく、この点に関する請求人の主張も採用の限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(1)本件商標

(2)引用商標

審理終結日 2004-10-14 
結審通知日 2004-10-15 
審決日 2004-11-05 
出願番号 商願2001-66464(T2001-66464) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (Z2528)
T 1 11・ 271- Y (Z2528)
T 1 11・ 25- Y (Z2528)
T 1 11・ 222- Y (Z2528)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 高野 義三
内山 進
登録日 2002-08-30 
登録番号 商標登録第4600145号(T4600145) 
商標の称呼 トモ、ホー、ガッツキ 
代理人 西浦 嗣晴 
代理人 大島 厚 
代理人 松尾 和子 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 中村 稔 
代理人 熊倉 禎男 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ