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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
審判199835464 審決 商標
無効200135481 審決 商標
審判19951811 審決 商標
無効200335435 審決 商標
審判199911793 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 034
管理番号 1106797 
審判番号 無効2002-35271 
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-12-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-06-26 
確定日 2004-11-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4017664号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4017664号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4017664号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第34類「喫煙用具(貴金属製のものを除く。),たばこ,紙巻きたばこ用紙,マッチ」を指定商品として、平成5年11月25日に登録出願、同9年6月27日に設定登録されたものである。
2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を次のように主張し、証拠方法として甲第1号証ないし同第23号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)本件商標は、甲第1号証に示すとおり登録されたものであるが、以下に述べるとおり審判請求人(以下「請求人」という。)が本件登録出願前より使用し著名となっている標章と混同をきたすものである。
(2)請求人の使用する「POLO」標章及び「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」標章など所謂「POLO」ブランドの歴史及びその著名性について(ア)請求人は、米国ニューヨーク州所在のリミテッド パートナーシップであり、被服や眼鏡、フレグランスその他のファッション関連商品について、関連会社やライセンシー及び販売店を通して世界的な規模で製造及び販売に携わっているものである。
請求人がライセンシーや販売店等を通じて製造販売している商品は、請求人の主な構成員であり世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレンによってデザインされたものである。英国の伝統を基調とし、それに機能性を加えたデザインと卓越した製造技術並びに一貫した品質管理による良質の製品は、本拠地である米国のみならず、日本を含む数十カ国に及ぶ世界の国々において、多くの消費者から高い評価を得ており、現在では世界的規模でファッション関連事業を展開している。
(イ)請求人商品のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1939年米国ニューヨーク州ブロンクスで生まれ、学業を終えたのち手袋やネクタイ等のセールスを経験し、1967年(昭和42)ネクタイ製造販売会社である「ボー・ブランメル」に入社した。そこで自らデザインしたネクタイを販売する新しい会社を任されるようになり、彼のデザインした幅広のネクタイに「POLO」のラベルを付すとともに、その会社名を「ポロ・ファッションズ」とした。それはポロ競技が当時の裕福な階級に限定された排他的なスポーツであり、そのスタイルにおいても高級・高雅性をイメージさせたからである。
そして彼のデザインした幅広のネクタイが評判となり、1968年(昭和43)「POLO」標章を付したラルフ・ローレンのネクタイがニューヨークの大手百貨店であるブルーミングデールで販売され高価であったにもかかわらず大好評を博した。因みに当時ブルーミングデールで商品にデザイナーブランドが付けられて販売されていたのはクリスチャン・ディオールのみであった。
ラルフ・ローレンは、1968年(昭和43)独立し「ポロ・ファッションズ社」を新たに設立し、その年自らデザインしたスーツを発表した。以後精力的にメンズウエアのデザインを発表し、1970年(昭和45)には早くもファッション界のアカデミー賞とも称される「コティ・アメリカン・ファッション・クリティックス賞」のベスト・メンズウエア・デザイナー賞を受賞した。そして、その後は順調に業績を伸ばした結果、当時はデパートのメンズ部門がデザイナーに個人のブティックを与えることは前例にない時代であったがブルーミングデールを初めとする全米の有名デパート等に自らのブティックを出店していった。
また、婦人用商品は、1971年(昭和46)婦人用のシャツブラウスのデザインをかわきりに、1972年(昭和47)には婦人服のフル・コレクションを発表してメンズウエアでの高い評価と並んで小売業者や顧客たちの間で爆発的な人気を呼ぶに至った。そして、紳士用の商品には「POLO」又は「POLO by RALPH LAULEN」の標章を使用していたが婦人用には「Ralph Lauren」と「馬に乗ったポロプレーヤーの図形(以下「ポロプレーヤーマーク」という。)」の標章を使用することにした。なお、1972年(昭和47)頃からメンズウエアも含めラルフ・ローレンの全商品に「ポロプレーヤーマーク」を付すようにした。
そして、ラルフ・ローレンは、1973年(昭和48)に映画「華麗なるギャツビー」の衣装を担当したことから広く世界の人々にその名を知られるようになりデザイナーとしての名声が不動のものとなった。それとともに、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品に使用する標章「POLO」並びに「POLO by RALPH LAULEN」及び「ポロプレーヤーマーク」は、所謂「POLO」ブランドと称されるとともに、それら「POLO」ブランドを冠した商品は、被服に続いて眼鏡やフレグランスなどのファッション関連商品、ホーム・ファニシング、レザーグッズ、ゴルフ用品などに亘ってトータルに展開してきており、「POLO」ブランドは、請求人のブランドとして遅くても1970年代前半には米国はもとより全世界的に著名となっていた。
(3)「POLO」ブランドを付した請求人商品の日本における著名性
米国における成功を受けて、日本においても「POLO」ブランドを付した請求人商品が販売され、わが国において「POLO」ブランドが「POLO(ポロ)」と略称されて著名性を獲得するようになった。その経緯は以下のとおりである。
(ア)日本における「POLO」ブランドの最初のライセンシーは、菱屋株式会社であり、1975年(昭和50)「POLO」標章を付したネクタイの製造販売を開始した。ついで、1976年(昭和51)株式会社西武百貨店がメンズウエアについてライセンス契約を結び、直ちに販売を開始し、以後1978年(昭和53)レディースウエア、1980年(昭和55)ボーイズウエア、1982年(昭和57)ガールズウエア及びレザーグッズ、1985年(昭和60)寝具等ホーム・ファニシング、1994年(平成6)ゴルフ用被服及び小物、1997年(平成9)幼児服及びジーンズ製品の販売を夫々開始し、精力的に請求人の商品を展開してきている。
(イ)西武百貨店は,上記ライセンス商品の展開にあわせて新聞・雑誌等のメディアを通じて請求人商品の広告宣伝に力を注いだ。すなわち、1977年(昭和52)から1987年(昭和62)まで毎年4000万円〜1億1800万円の宣伝・販促費を投じており、1988年(昭和63)西武百貨店の請求人商品を取り扱う部門が独立し、株式会社ポロ・ラルフローレン・ジャパンが設立されてからは毎年4億1100万円〜13億7700万円の宣伝・販促費を費やして請求人商品の普及に努めている。なお、かかる宣伝活動の際も「POLO」ブランドが使用されていることは勿論である。かかる広告宣伝活動の結果、日本における請求人商品の売上げは、1977年(昭和52)の5億6000万円を皮切りに毎年前年度を大幅に上回る伸びを示し、現在では年間900億円近い売上げを誇る日本でも有数の人気の高いブランドの一つとなっている。
(ウ)そして、請求人の広告宣伝及び企業活動の結果、証拠に示すとおり、「POLO」或いは「POLO by RALPH LAULEN」及び「ポロプレーヤーマーク」からなる「POLO」ブランドがアメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・口一レンのデザインに係るファッション関連商品に付されるものとして、わが国において昭和51〜52年頃から使用され、遅くとも昭和50年代後半までには「POLO」ブランドがわが国取引者・需要者の間で「POLO(ポロ)」の略称で広く知られるようになり周知・著名性を獲得したこと明らかである。
そして、その著名性は、本件商標の出願時及び登録時はもとより現在も継続している。因みに、ラルフ・ローレンに係る「POLO」ブランドを模倣した所謂偽ブランド商品が第三者によって大量に販売され摘発されるという事件が昭和63年から平成11年にかけて何度も発生しているほどである。(エ)以上から明らかなように、被請求人が本件商標を出願した以前から既にラルフ・ローレンがデザインし「POLO」ブランドを付した商品が日本において盛んに販売されており「POLO」ブランド及びその略称「POLO(ポロ)」の著名性は確立していた。
(4)本件商標が請求人の使用する「POLO」ブランドと混同を生ずる理由
(ア)本件商標は、斜め右方に向いた馬に乗り上体を屈めてマレット(打球槌)でボールを打とうとするポロ競技プレーヤーの図形を顕著に表し、その図形を囲む輪郭様に「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字を円形に表示してなるものである。しかして、請求人が使用する「POLO」ブランドは、「POLO」又は「POLO by RALPH LAULEN」及び「ポロプレーヤーマーク」を単独又は組合せて使用しているものであるが、そのうちの「ポロプレーヤーマーク」は、斜め左方に向いた馬に乗り上体をやや屈めてマレットを振り下ろそうとするポロ競技プレーヤーを表してなるものである。そうすると、両図形は、子細に見れば差異を有するが、全体として躍動的動きを看取させる図柄でともに走るが如き馬及び馬に乗ってマレットを操っているポロ競技プレーヤーを描いてなる点において構成の軌を一にするものであり、全体の外観において紛らわしいものと言い得るものである。
(イ)また、上記ポロ競技プレーヤーの図形を囲む円輪郭様に「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字を表しているが、「U.S.POLO」における「U.S.」は、米国を表すものとして後に続く「POLO」の語を修飾する語であり、「ASSOCIATION」は、「協会」を意味する語であるから、「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字部分において「POLO」の文字は重要な意味を持つ言葉と認識されるものである。また、「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字を全体として一連の語句として捉えたとしても、それが特定の熟語や団体名称を表すものとして、わが国の一般の需要者・取引者によく知られているものではない。
(ウ)さらに、「POLO」ブランドは、「POLO」又は「POLO by RALPH LAULEN」及び「ポロプレーヤーマーク」を単独で使用し、夫々単独で著名性を有するが、上述のとおり「ポロプレーヤーマーク」と「POLO」又は「POLO by RALPH LAULEN」の文字を組合せても使用しており、それが更に強い自他商品識別力と顧客吸引力を発揮して著名性を有している。
(エ)そして、本件指定商品中のたばこケース、灰皿、パイプ等はデザインが重要な要素とされるものであり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニやピエール・バルマン等の所謂デザイナーズブランドオーナーたちもそれら喫煙具を取扱っている。
(オ)そうとすると、本件商標が指定商品中「たばこケース、灰皿、パイプ」等のファッション商品に使用された場合には、それに接する取引者・需要者は、その図形や「POLO」の文字部分に着目して、「POLO(ポロ)」と略称される「ポロプレーヤーマーク」や「POLO」などの「POLO」ブランドを想起・連想し、ラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと言うべきである。
(カ)上記の主張は、最高裁判所平成12年(行ヒ)第172号事件、東京高等裁判所平成12年(行ケ)第140号事件、同平成12年(行ケ)第276号事件の判決に徴して首肯できることである。さらに、本件商標の図形部分とほとんど同一構成の図形からなる又はそれを含む被請求人の商願平3-122109号(審判9-3255、11行ケ418-訴取下)、商願平3一122108号(審判7-1811、12行ケ309一訴取下)、商願平1-26956号(審判6-2334、11行ケ402-訴取下)、商願平3-122113号(審判9-3256、11行ケ419-訴取下)は、何れも請求人の使用標章である「ポロプレーヤーマーク」と混同すると判断された審決が確定している。さらに、本件商標の「U.S.POLO」と「ASSOCIATION」の文字部分を組み合わせた「U.S.POLO ASSOCIATION」からなる商願平2-88383号(審判6-19082、11行ケ420、13行ヒ221)もラルフローレンの「POLO」ブランドと混同するとの東京高裁判決が確淀している。
(キ)以上述べたとおり、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合は、取引者・需要者をして請求人または請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)答弁に対する弁駁
本件商標の商標法4条1項15号該当性を否定する被請求人の主張は、以下のとおり理由がない。
(ア)ポロプレーヤーマークの著名性が証明されていないと主張する。しかし、請求人が引用する商標は、甲各号証によって明らかなとおり、「POLO」「POLO by RALPH LAUREN」及び「馬に乗ったポロ競技プレーヤーの図形(ポロプレーヤーマーク)」等を単独または組み合わせて使用している標章である。そして引用商標が所謂「POLO」ブランドとして著名性を有していると主張しているのである。したがって、引用商標の一であるポロプレーヤーマーク自体についても甲3、4、5、13、14、15号証による使用事実および甲16号証ポロの偽物商品の新聞記事によって周知著名であること明らかである。また、引用商標の一であるポロプレーヤーマーク自体の著名性については、最高裁、東京高裁判決(甲19、20、21号証)においても認めているところである。
(イ)本件商標の図形とポロプレーヤーマークとは構成の軌を一にするとはいえないと主張する。しかし、両図形は、走っているごとき一頭の馬、一人のポロ競技者、競技者がマレットを携えているなどの共通する要素で構成されており、確かにマレットの位置に差異はあるが、両図形とも一頭の馬に乗った一人のポロ競技者がマレット(打球槌)をもってプレーをしている様を動的動きを看取させる図柄で、しかも白黒による陰影を特色とする描法で描かれている点においても共通している。したがって、両図形は構成の軌を一にすると言い得るものである。なお、本件図形が「POLO」を含む文字によって囲まれているところから、「POLO」及びポロプレーヤーマークの著名性に照らせば、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者・需要者において、引用商標であるポロプレーヤーマークを想起し著名な「POLO」ブランドの一であると誤認することが十分に想定されるものである。
(ウ)被請求人は、その名称「U.S.POLO ASSOCIATION」が100年以上歴史のある団体名称であり、本件商標中の「POLO」の部分は、競技の名称に由来するところから、「POLO」と略称しない旨主張し、先判例として最高裁12行ヒ172号(パームスプリング事件)福田判事の補足意見及び東京高裁12行ケ430号(CAMBRIDGE事件)判決を挙げている。
福田判事の補足意見は、「POLO」の字句が含まれている場合であっても、『POLO』の語と結合された語がラルフ・ローレン以外の商品の出所を強く連想させるときや、当該商標の構成中にラルフ・ローレンとの関連性を打ち消す表示が含まれている場合に商標法4条1項15号該当性が否定される余地がある」旨述べており、また、CAMBRIDGE事件は、当該商標との類似性、CAMBRIDGE大学の我が国における顕著な著名性に基づいて判断されている。しかし、本件は、ポロ競技の認識度が低いわが国において、米国ポロ協会や被請求人の存在が一般に知られているものではない。まして、本件商標との関連性を知る状況にない。そして、「U.S.」及び「ASSOCIATION」の語がなんら出所表示力をもたない普通名詞にすぎないことからするとこれらの語がラルフ・ローレン以外の商品の出所を強く連想させることはあり得ないし、また、ラルフ・ローレンとの関連性を打ち消す表示でもない。したがって、本件は、上記先判例とは事案を異にするものであって、本件商標を使用した場合にはラルフ・ローレンとの関連性を十分想起させ商品の混同を生ずると言えるものである。
(エ)本件指定商品は、引用標章が著名性を獲得していると考えられる被服、眼鏡と生産部門、販売部門、原材料、用途、需要者の範囲等を異にするから混同を生じるおそれはないと主張する。しかし、近時、ブランドイメージをライフスタイル全般に反映させたいという消費者のニーズに応え、所謂デザイナーズブランドは商品を多岐に亘って取り扱っており、本件指定商品である喫煙具についてもピエール・バルマン、ヴァレンティノ・ガラヴァーニなど他分野を主とするデザイナーもてがけている(甲第4号証)。ラルフ・ローレンのデザインによる請求人が取り扱う「POLO」ブランドも同様であって、現に「ライターケース」等の紳士用小物、「カーテン」「テーブル掛け」「壁掛け」等の室内装飾品や化粧品、ペイントなど多岐に渡る商品を取り扱っている。したがって、デザイナーズブランド商品の展開状況及び請求人が本件指定商品の一部または関連商品分野に進出している事実から、需要者をして本件指定商品についてもラルフ・ローレンがデザインをしていると認識している、またはされる蓋然性は非常に高い。
(オ)被請求人は、米国ポロ協会とポロ競技及び被請求人のライセンスビジネスについて縷々説明している。しかし、ポロ競技の認識度が低い我が国において、米国ポロ協会や被請求人の存在がー般に知られているものではない。まして、本件商標との関連性を知る状況にない。また、各国で商標登録を取得しているとして、リストを提出している(本件商標と同一の商標が含まれているか不明であるが)が、我が国における「POLO」ブランドの著名性は顕著なものである上に、我が国固有の取引事情というべきその著名性に便乗した偽ブランドの横行する状況等の実情は、それら外国における登録状況等をもって、わが国も同列に扱うべき根拠とはならない。したがって、上記事情が請求人の取り扱いに係る商品と出所混同の生ずる可能性を減ずる根拠とはならない。
(6)以上述べたとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、無効にすべきものである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求人の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を次のとおり主張し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)審判請求人は、引用商標として「POLO」および「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」標章を挙げており、上記の図形標章を含めて「POLO」ブランドと呼び、「POLO」ブランドの著名性を述べている。
しかしながら、その記載は、文字商標「POLO」(正確には「Polo/by Ralph Lauren」)に関する記述であり、具体的に図形について触れられている部分は第4頁第11行目だけであり、図形商標についての著名性がこれらの主張によって十分に証明されたとは考えられない。 また、混同を生ずる理由(第6頁第13行目から)について、図形が構成の軌を一にすると述べている。
しかしながら、本件商標の図形は、右向きの馬の上にポロの競技者が下を見ながら真下にあるポロの玉を、下向きに降ろしたマレットで正に打たんとしている図であり、馬の足とマレットが混在し、全体として動きを感じさせる図形である。
これに対して、請求人の図形は、やや左向きの馬の図形で、右足を上げた状態の馬の上にポロ競技のプレーヤーが体を伸ばしてマレットを右手の上方に高々と振り上げている図形であり、振り上げられたマレットは競技者の左肩上まで持ち上げられており、このマレットが上方に突出していることが他のポロに関する図形と比較して特徴的な部分である。
請求人は、「走るが如き馬及び馬に乗ってマレットを操っているポロプレイヤーを全体として躍動的動きを看取させる図柄」において構成の軌を一にすると述べているが、競技中のポロプレーヤーを表すかぎり、必ず「走るが如き馬及び馬に乗ってマレットを操っている」ものであり、それだけでは到底、「構成の軌を一にする」と言えるものではない。
本件図形では、馬の足とマレットが混在し、全体として動きを感じさせる点に特徴があり、引用図形では、マレットが右手の上方に高々と振り上げられ上方に突出していることに特徴がある。両者を対比すれば容易に区別される全く異なった図形であり、構成の軌を一にすると評価できるものではなく、時と所を別にして観た場合も混同を生ずる図形とは考えられない。
(2)図形商標の並存例
本件商標は、1993年11月25日付の出願であるが、本件商標の図形と略同一の図形を含む商標が、旧第23類において、1991年10月31日付で出願され、商標登録第2657767号として登録され現在も権利が存続している(乙第1号証)。
上記の商標権は、商標法第4条第1項第15号の審査基準が変更される前の審査により登録されたものであるが、登録後においても、時計・眼鏡を指定商品とする上記の登録商標と審判請求人の商品の間に出所混同が生じているという事実は全く存在しておらず、現実の出所混同を軽視するような審査基準の変更が必要であったか疑問である。
上記の商標権は、登録後すでに8年を経過しており、本件商標と同一の図形について、被請求人の業務上の信用が化体しているものである。本件商標の図形に接する需要者・取引者は、容易に上記の商標登録権利者が商品を展開したと考えることはあっても、構成の軌を一にするものではない引用図形と関連ある商標であると考えることはない。被請求人が営々と築き上げた業務上の信用の保護が十分に考慮されるべきものである。
特に、図形商標の類否では、本件商標の図形と引用図形では類似しないと判断するのが通例である。
さらに、従来の商標法第4条第1項第15号の判断では、商品が同一であれば、類似と判断される商標であって、商品が同一・類似の外側にあるときに「混同」を認定していた。これに対して、新審査基準では「類似」の概念を用いることなく混同を論じているが、従来、「類似」とは考えられなかった図形商標同士において混同が生ずるおそれがあることは極めて稀であると考えられる。本件がそのような稀な例であるかは、市場における取引の実態を十分に考慮して判断されるべきである。
現実に混同が生じていないものについて「おそれ」があるとして、登録を拒絶することは、真に産業の発達を目指しているとは言い難い。審査基準を改定によって現実に混同を生じない商標にまで、商標法第4条第1項第15号の適用をすべきものでないことは商標法の法目的から考えても明らかである。
(3)権利者の名称「U.S.POLO ASSOCIATION」
本件商標「U.S.POLO ASSOCIATION」は、本件商標権者の上部団体の名称であり。「U.S.POLO ASSOCIATION」(全米ポロ協会)は、100年以上の歴史を誇る全米のポロを統括する団体であり、本件商標中の「POLO」は、競技の名称に由来するものである。
本件商標の「POLO」の部分は、競技名称の普通名称であるので、商標の出所表示機能が低い部分であり、この部分だけを取り出して、本件商標を「POLO」と略称することはない。
また、本件商標は、100年の歴史を誇る団体の名称として知られているので、ラルフ・ローレンとの関連性を想起されることは全く考えられない。
審判請求人の引用商標「POLO」が普通名称であるので、出所表示機能が減殺されることは、最高裁判決の少数意見において述べられている。その後、「CAMBRIDGE UNIVERSITY/POLO CLUB」判決(東京高判平成12(行ケ)430号)においても同様の判断がなされている。
なお、上記判決では「ラルフ・ローレンよりもはるかに古い歴史を有する、英国の伝統と由緒のある大学として著名な『ケンブリッジ大学』を想起するから、そのような大学が、米国のファッションデザイナーにすぎないラルフ・ローレンとの間に、緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にあるものと認識するとは到底認め難い」と判示している(乙第7号証の2)。
(4)出所混同の不可能性
本件商標および引用商標は、それぞれ、ポロ競技者を表したものであり、ポロプレーヤーを表したこという共通点以上に両者が類似するものでないことは、両図形を対比してみれば、自ずと明らかである。
本件商標および引用図形の表すポロ競技は、既に映画や各種の宣伝活動で一般に広く親しまれている(乙第2号証の1)。なお、ポロ競技は「ペルシア起源の騎乗球技。現今のものは、四人ずつ二組に分れ、一個の木のボールを馬上から長柄の槌(マレット)で相手側のゴールへ打ち込み合って勝負を争う。」と岩波書店「広辞苑」にも紹介されている(乙第2号証の2)。
公開された特許庁の審査基準において、商標法第4条第1項第15号の規定については、「他人の著名な商標と結合した商標」の取扱いとして、「他人の著名な商標と結合した商標は原則として出所混同を生ずるおそれがあるものと推認して取扱うものとする」と記載されている。
しかしながら、審査基準は「原則として推認して取扱う」としているだけであり、具体的には、ただし書きを設けて、現実に混同を生じないものについては商標法第4条第1項第15号の適用を排除している。ただし書きでは、「既成の語の一部となっているもの」「出所の混同のおそれがないことが明白なもの」を除く、と記載している(乙第3号証)。この審査基準に照らすと、本件商標は、他人の著名商標自体を含んでいるものではなく、他人の著名な商標と類似する商標でもない。また、その指定商品との関係において、引用図形が著名性を獲得していると考えられるのは、被服、眼鏡等である。なお、眼鏡については、本件商標と略同一の図形の商標が被請求人により登録されている事実は、先に述べた通りである。
引用図形が被服・眼鏡において著名性を獲得したとしても、本件商標の指定商品は「喫煙用具,タバコ,マッチ」等であり、これらの商品は、生産部門も、販売部門も、原材料も、用途も、需要者の範囲においてもいずれも一致するものではないので、その商品は混同を生ずるおそれは全くない。
<先判決例>
特許庁の審査では「POLO」といえば、必ず「ザ ポロ/ローレン カンパニー」の著名商標と取扱っているが、東京高裁平成12(行ケ)40判決および同平成12(行ケ)41判決では、「ザ ポロ/ローレン カンパニー」は、「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン POLO by RALPH LAUREN」の形で商標を使用しており、「POLO」「ポロ」の商標を専ら使用しているのではないと判断されている(乙第4号証〜乙第5号証)。また、研究社「英和商品名辞典」においては「Polo/ポロ」の項目ではなく、「Polo by Ralph Lauren」の項目を立てて記載している(乙第6号証)。さらに、最高裁平成12(行ヒ)172判決の補足意見では、「『ポロ』は語源的には普通名称なので、商標の出所表示機能がある程度減殺されている。『ポロ』の語を含んでいるときでもラルフ・ローレンとの関連性を打ち消す表示が含まれているときは商標法第4条第1項第15号該当性が否定され、登録を受ける余地があるというべき」と真理を突く貴重な意見が判示されている(乙第7号証)。
また、「CAMBRIDGE UNIVERSITY/POLO CLUB」事件の東京高裁の判決では、2段書き「CAMBRIDGE UNIVERSITY/POLO CLUB」の文字とポロプレイヤーの図形を配した商標について、ラルフ・ローレンの業務に係る商品との出所混同の可能性を否定している。
上記の判決では、「POLO」がスポーツ競技の一種であることが広く認められていること、スポーツ競技の名称であることから、ラルフ・ローレンの「POLO」商標は商品の出所表示機能がある程度減殺されていること、上記商標中「POLO」は、商標全体の中に溶け込み「POLO」だけが看者の注意をひいて「ポロ」と略称されることがないこと、「ケンブリッジ大学」の名称との関係で、ラルフ・ローレンと営業上の関係があることを想起し難いことが判示されている(乙第7号証の2)。
これらの判決例は、100年を超える歴史を誇り、全米のポロ競技を統括する権利者の名称「U.S.POLO ASSOCIATION」についても十分に尊重されるべき判断である。
著名商標の保護を考える余り、第三者の正当な商標権の登録を妨げることが無いように、あくまでも営利団体(会社)の利益の追求に混乱を生じさせないように取扱うことが肝要である。
(5)被請求人(商標権者)とポロ競技
(ア)米国ポロ協会/United States Polo Associationの活動
米国ポロ協会/United States Polo Association(別訳:全米ポロ協会)は、「ザ ポロ/ローレン カンパニー」が「POLO」商標を採用する以前(1890年設立)から存在しているアメリカでも著名なポロスポーツの統括団体の名称である。
この種の組織としては、ゴルフのUSPG(United States ProfessionaI Golf)や、テニスのUSTA(United States Tennis Association)や、フットボールのNFL(NationaI Football League)、バスケットボールのNBA(National Basketball Association)等々と同様の組織である。
現在は、これらの団体は独自に、その協会名を使用して、スポーツ関連商品のライセンスビジネスを行い、それらの物販から得た利益を各スポーツの振興に役立てているのが実情である。従って、各スポーツ団体は、それぞれ、その協会名で商標の登録をしており、日本でも多くの公報に各団体からの申請が登録公告されている。
なお、商標権者の親会社が米国におけるポロ・スポーツの統括団体であることを示す資料として、「2000年国際ポロカレンダー・ダイレクトリー」を提出する。ダイレクトリーにおいて、米国のポロクラブの先頭に商標権者の協会の名前があり、その後に各州別にポロ団体が紹介されている(乙第8号証)。
(イ)商標権者の活動
商標権者は、米国ポロ協会/United States Polo Associationの下部組織であり、米国ポロ協会/United States Polo Associationが上記の諸団体と同様に積極的に推進している商標等の積極活用を具体化する為の団体である。すなわち、日本において数多くのライセンシーに使用権を付与して、その利益を米国ポロ協会/United States Polo Associationに還元している。商標権者は、日本国内において、現在、株式会社ユーエスピーエージャパンをマスターライセンシーとし(1997年以前においては、株式会社 ロスモーリ)、20社を越すサブ・ライセンシーを擁している。
そのサブ・ライセンシーとしては、内外衣料製品(株)、兼吉(株)、ポプラ(株)、アルプス・力ワムラ(株)、(有)ナカエ、(株)山豊、(株)サロンジエ、(株)タカイシ、(株)タムラコーポレーション、フェニックスコーポレーション(株)、(株)小山等々が挙げられる。その取り扱い商品は、メンズ、レディースウエアー、アンダーウエア一、帽子、ハンカチ、エプロン、革小物、ベルト、バッグ、時計、傘、サンダル等に及んでいる(乙第9号証、「ファッション・ブランド年鑑2000」参照)。また、世界各国におけるマスターライセンシーについては、乙第10号証の通りである。これらのマスターライセンシーの下にそれぞれ多数のサブライセンシーが存在していることがわかる。
商標権者は、上記のライセンス事業により得られた収益をもって、ポロ用具(ヘルメット、プロテクター等々)の改良や、大学のポロクラブに対する援助活動を行っているものである。
(ウ)各国登録の実情
商標権者は、本国アメリカを始めとして、ヨーロッパおよび日本その他の数多くの国で自己の名称およびイメージキャラクターの登録を推進している。世界各国での登録例は、乙第11号証の通りである。
米国ポロ協会/United States Polo Associationは、これら各国の権利についても、自己の名前をはじめとする各種商標および「US OPEN POLO CHAMPIONSHIP」の商標権を基礎として各国においてライセンス事業を行っている。
日本の審査においては、今後はマドリッドプロトコルを経由して出願される商標について、拒絶理由が発見されない限り登録になることになる。商標権者の商標に関しても、これらの世界各国における登録と同一の形態の商標出願は、日本においても当然に登録が許容されるべきであると考えられる。
ちなみに、世界各国では混同の可能性がないとして登録された名称が、日本においてだけ、「ザ ポロ/ローレン カンパニー」の業務と混同を生ずるというような奇異な認定がされている。このような世界の動向を無視した判断が許容されるはずはない。世界でも商標権者の親会社の主催する著名な競技会の名称が、一部に「POLO」の文字を含むことを理由に拒絶されるのは、出所の混同の本質を見ないあまりにも拡張解釈した結果と考えられ、世界の審査の統一的な審査の基準から外れる結果となることは明白である。この点における特許庁の新たな審査基準は後述するようにWIPOの要請を逸脱する拡張保護である。
(エ)ザ ポロ/ローレン カンパニーとポロ競技
ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップまたはラルフ・ローレン社は、ポロスポーツとは直接は一切関係がない団体である。従って、その売上がスポーツのポロ競技の発展等に直接関連しているとは考えられない。
ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップまたはラルフ・ローレン社がポロプレーヤーのマークを商標として選択し利用した経緯については明らかではないが、出願人等が長年に亘って培った伝統的なポロ競技の雰囲気やイメージを利用する意図から積極的にポロプレーヤーのマークおよび「POLO」の文字を商標として選択したものと考えられる。
実際に、ニューヨーク周辺でポロ競技とは無関係に育ったラルフ・ローレン氏は、裕福な生活をしているポロ愛好者のライフスタイルまたはそのコンセプトをシンボルとして利用したものと推察される。
ポロ競技が、勇猛果敢な貴族のスポーツであるという認識は、現在では多くの日本人の間にも十分に認識されている。なお、日本において、ポロスポーツがどのように取り上げられているかについては、「ポロその歴史と精神」(乙第2号証)の通りである。
営利を目的とする一会社の有する商標の存在をもって、ポロスポーツの純然たる団体に対して、その名称等を商標として使用させないということは、本末転倒である。むしろ「POLO」を商標として利用したザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ等がポロ競技にある程度の貢献する為に積極的に商標権者等のポロ競技支援団体関連商標の使用を許可すべきである。
一方、欧米において、使用が公に認められている大会名や正式名称について、日本においてだけ商標の登録が拒絶される理由はない。ちなみに、「POLO」商標は多くの業者が併存して使用していた為に、ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ自身も、「POLO」だけでなく「POLO BY RALPH LAUREN」の商標を登録しているのが現在の登録の実情である。
(オ)同一事件の他の国での判断
被請求人がシンガポールにおいて、同一の図形を登録するについて、本件と同様にザ ポロ/ラルフローレン社と類否を争った事件について、非類似であると判断されて、本件商標と同一の図形が登録になった判決が本年になって出されており、各国において注目されている。国際的な審査の統一から考えても、本件商標をラルフローレンの図形と類似すると判断する事は希な事と考えられる。なお、判決を現在入手中であるので、入手次第補充する予定である。
(カ)結語
上記の通り、本件商標は、審判請求人の商標を商標中に含むものではなく、また類似する商標を含むものでもない。本件商標は、引用商標の商標権者の業務に係る商品との間に出所混同を生ずるおそれはないから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではない。

4 当審の判断
(1)引用商標の著名性について
請求人は、同人が使用している標章「POLO」及び「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」等は本件商標の登録出願前より著名となっている旨主張しているのに対し、被請求人は、「POLO」は普通名称であるので、「POLO」の出所表示機能は減殺されるものであり、引用商標「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」についての著名性が十分に証明されたとは考えられない旨主張しているので、先ず、引用商標の著名性について検討する。
昭和53年7月20日講談社発行の「男の一流品大図鑑」(甲第3号証)には、ラルフ・ローレンのデザインに係る引用商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介がされており、それには「1974年の映画『華麗なるギャツビー』は、現代アメリカの混迷と退廃に対する痛烈な警鐘にもなっていた。この映画で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが、ポロ社の創業者であり、アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」、「30歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし、わずか10年で、ポロ・ブランドを、しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを、世界に通用させた」との記載があり、昭和55年5月25日講談社発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」(甲第13号証)には、紳士服の項に「『POLO』ポロ(アメリカ)」として、「アメリカン・トラディショナル・ファッションの総本山ブルックス・ブラザーズで独自の服飾感覚をみがきながら、ニューヨーク大学に学んだラルフ・ローレン。知性と感性が躍動する都会的デザインが、シェイプ・アップされたからだに、フィットします。」との記載が、また、眼鏡の項目に「『POLO』ポロ(アメリカ)」として、「ニュートラディショナルの旗手ラルフ・ローレンのデザインフレーム」との記載があること、昭和58年9月28日サンケイマーケティング発行の「舶来ブランド事典『’84ザ・ブランド』」(甲第4号証)には、引用商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介がされており、それには「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け、世界中にファンが多い」、「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載があること、昭和55年4月15日洋品界発行の「月刊『アパレルファッション店』別冊1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」(甲第9号証)には、「ポロ・バイ・ラルフ・ローレン」について、「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず、その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介が記載されているほか、「〈販路〉西武百貨店、全国展開 〈導入企業〉(株)西武百貨店 〈発売開始〉51年」等の記載があることが認められる。
昭和59年9月25日ボイス情報株式会社発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」(甲第10号証)には、請求人がポロ・バイ・ラルフ・ローレンのブランドを我が国において株式会社西武百貨店(以下「西武百貨店」という。)にライセンスしていること、ライセンス開始年度は昭和51年であることが記載されている。西武百貨店は、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品及びこれに付す引用商標の周知を図るべく新聞広告するなどして(甲第3号証、甲第11号証、甲第12号証、甲第14号証及び甲第15号証)、積極的に上記商品の販売活動を行ってきた(甲第7号証)。
平成元年5月19日付け「朝日新聞」(甲第16号証)には、「『ポロ』の偽大量販売 警視庁通信販売会社を摘発」の見出しの下に「警視庁・・・は十九日、『Polo(ポロ)』の商標で知られるラルフローレンブランドのにせポロシャツを通信販売で大量に売っていたとして、・・・を取り調べた。」「調べでは、同社は・・・昨年二月ごろから、米国の『ザ・ローレン・カンパニー』社の商標・デザインで西武百貨店が日本での独占製造販売権を持っている『Polo』の商標と、乗馬の人がポロ競技をしているマークを付けたポロシャツ・トレーナーなどを全国の一万人に売っていた疑い。」との記事が掲載されたこと、同11年9月9日付け「日本経済新聞」(甲第17号証)には、「ラルフローレン 偽物衣類を販売 容疑の社長ら逮捕」との見出しの下に「警視庁・・・は八日、米国の衣料品ブランド『ポロ・ラルフローレン』の偽物セーターを販売したなどとして・・・二人を・・・逮捕した。」「調べによると、〇〇容疑者らは、三月上旬・・・『ポロ』ブランドの偽物セーターを販売したほか、五月上旬、・・・同ブランドの偽物ベストなど・・を販売目的で所持していた疑い。」旨の記事が掲載されたことが認められる。
上記認定の事実によれば、横長四角形中に「Polo」の欧文字を配した標章と「by RALPH LAUREN」(又は「by Ralph Lauren」)の欧文字を組み合わせた標章よりなる商標及び「馬に乗ったポロプレーヤーの図形」は、アメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係る被服等の商品を示すものとして、我が国においては、昭和51年ころから使用されるようになり、遅くとも昭和50年代半ばまでには取引者・需要者間に広く認識されるに至っていたこと、その当時から、上記商標及びこれを付した商品ブランドは「ポロ」、「POLO」(「Polo」)と略称されることもあり、ラルフ・ローレンの「ポロ」、「Polo」ないし「POLO」として著名になり、強い自他商品識別力及び顧客吸引力を獲得していたものであり、その周知著名性は、その後、本件商標の登録出願時(平成5年11月25日)はもとより、登録査定時(同9年4月10日)を経て今日に至るまで継続していることが認められる。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、別掲(1)のとおり、馬に乗ったポロプレーヤーがマレットを振り下げてポロ競技をしている図形を顕著に表し、その図形を囲むように、「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字を円形輪郭状に表してなるものである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして著名な商標となっていることは前記(1)の認定のとおりである。
そこで、本件商標と引用商標の類似性について検討してみるに、本件商標構成中の図形部分と引用商標構成中の図形部分とは、馬の向き、ポロプレーヤーが持っているマレットの位置、ボールの有無等において差異が認められるものの、いずれも馬に乗ったポロプレーヤーがマレットを振りながらポロ競技をしている図形を描いたものである点において基本的な構成を共通にしているので、上述したとおり引用商標が極めて高い著名性を有することを併せ考慮すれば、時と所を異にして観察する場合には、本件商標と引用商標とは類似性が高い商標といい得るものである。
加えて、本件商標の円形輪郭状に表された欧文字部分は、別掲(1)に示したとおり、「U.S.POLO」の文字を円弧の上半分に、「ASSOCIATION」の文字を円弧の下半分に表した構成からなるものであって、前記(1)においてその著名性を認定したポロ商標の基幹商標ともいうべき「POLO」の文字を明瞭に有してなるものであるから、これに接する取引者、需要者は、「POLO」の文字部分に着目し、該文字部分をもって強く印象付けられると同時に、全体としてポロ社又はラルフ・ローレンに係る事業と関連付けて考察する場合が少なからずあるとみるのが相当である。
この点について、被請求人は、「ポロ」は語源的には普通名称なので、商標の出所表示機能がある程度減殺され、「ポロ」の語を含んでいるときでもラルフ・ローレンとの関連性を打ち消す表示が含まれているときは商標法第4条第1項第15号該当性が否定され、登録を受ける余地があるというべきとする最高裁平成12年(行ヒ)第172号事件判決の補足意見を引用し、加えて、米国ポロ協会/United States Polo Associationは、請求人が「POLO」商標を採用する以前の1890年に設立されたアメリカでも著名なポロスポーツの統括団体であり、現在、その協会名を使用して、スポーツ関連商品のライセンスビジネスを行い、それらの物販から得た利益を各スポーツの振興に役立てており、商標権者は、同協会の下部組織であり、米国ポロ協会が積極的に推進している商標等の積極活用を具体化する為の団体で、日本国内において、現在、株式会社ユーエスピーエージャパンをマスターライセンシーとし、20社を越すサブ・ライセンシーを擁している旨主張している。
しかしながら、本件商標は、馬に乗ったポロプレーヤーの図形と「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の文字を円形輪郭状に表した構成よりなるところ、1997年9月25日朝日新聞社発行「ポロ その歴史と精神」(乙第2号証の1)によれば、「1890年、ニューヨークを本部にポロ協会(現在の全米ポロ協会、USPA)が創立された」との記載が認められるから、構成中の「U.S.POLO」及び「ASSOCIATION」の欧文字は、ポロ協会(又は全米ポロ協会)を意味する「United States Polo Association」の略称表記であるとしても、本件全証拠によっても、ポロ競技そのものについての認識が低い我が国においては、上記略称を表記するものとして広く知られているとは認められず、構成中の「POLO」の文字及び馬に乗ったポロプレーヤーの図形が本件商標の指定商品の取引者・需要者に想起、連想させることに対するラルフ・ローレンとの関連性を打ち消す表示には当たらないというべきものである。
次に、本件商標の指定商品と引用商標の使用商品との関連性について検討するに、被請求人は、引用図形が著名性を獲得していると考えられるのは、被服、眼鏡等であり、本件商標の指定商品は「喫煙用具,タバコ,マッチ」等であって、これらの商品は、被服、眼鏡等とは生産部門も、販売部門も、原材料も、用途も、需要者の範囲のいずれも一致するものではないので、商品の混同を生ずるおそれは全くない旨主張している。
しかしながら、引用商標が著名であるのは、被服、眼鏡等であるとしても、本件商標の指定商品中の「喫煙用具」もいわゆるファッション関連分野の商品の一つであり、有名ブランドが多様な商品に用いられていることは珍しくないことである。
甲各号証をみても、昭和59年1月1日株式会社婦人画報社発行「MEN’S CLUB」1984年1月号(甲第5号証)には、「アメリカン・デザイナーの雄 ラルフ・ローレン物語」と題して、ラルフ・ローレンの業績や同氏に対するインタビュー等が記載されており、引用商標を掲げた「ポロ」ブランドが「ポロ設立は1969年。以来変わらぬデザイン・ポリシー」と記載され、「今シーズンデビューしたラルフ・ローレンのホーム・ファーニッシング・コレクションは壁紙から寝具、食器まで包括した意欲的なトータル・ホーム・ルック」等と記載されていること、1990年株式会社研究社発行「英和商品名辞典」(甲第6号証、乙第6号証)の「Polo by Ralph Lauren(ポロバイラルフローレン)」の項には、「・・・また、同氏は,寝室・食卓用リネン・ガラス器・陶器・カトラリー・壁紙など幅広いジャンルの日用品もデザインしている。」と記載されていること、昭和62年7月24日付け「繊研新聞」(甲第11号証)の記事には、「西武百貨店とアメリカのラルフ・ローレンとのビジネスが日本市場で順調に拡大している。メンズ、レディスに加えホームファニシングなどライフスタイル全般に商材を広げ、年間売上は170億円(卸売りベース)を超えるビッグブランドに成長した。・・・」と記載され、また昭和63年10月29日付け「日経流通新聞」(甲第12号証)の記事には、「・・・西武百貨店は現在、ポロ・ラルフローレンブランドで紳士服、婦人服、子供服、皮革製品、ホームファニシングと紳士服のポロブランドのボリュームゾーンであるチャップスブランドを取り扱っている。」と記載されていること等が認められる。
これらの認定事実によれば、ラルフ・ローレンがデザインする商品は、被服、眼鏡ばかりでなく、壁紙から寝具、食器等の幅広いジャンルの日用品にまで及んでおり、ラルフ・ローレンのデザインしたこれらの製品には、引用商標が使用され、我が国では、遅くとも昭和61年ころから西武百貨店で取り扱われ、その売上が拡大してきていることが認められる。そして、本件商標の指定商品が主として一般的な生活用品であることからすれば、両商品の取引者・需要者を共通にすることが多いといえるものであり、その需要者が専門的知識経験を必要としない通常の者であることからすれば、これらの商品を購入するに際して払われる注意力はさほど高いとはいえないものである。
(3)結論
以上によれば、本件商標は、構成中に世界的に有名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等のファッンョンに関連する商品に使用して著名な「Polo」の文字と同一の綴りからなる「POLO」の文字及び同じく著名なポロプレーヤーの図形と類似するポロプレーヤの図形を有しており、かつ、本件商標の指定商品にはファッション関連分野の商品が含まれているばかりでなく、引用商標が使用されている商品とは取引者・需要者を共通にすることが多いものであること等の事情が認められ、これらの事情を総合勘案すると、本件商標を指定商品に使用する場合には、これに接する取引者・需要者が「POLO」の文字及びポロプレーヤーの図形に着目して、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると連想、想起し、その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
(1)本件商標(登録第4017664号商標)



(2)引用商標


審理終結日 2003-10-08 
結審通知日 2003-10-14 
審決日 2003-10-27 
出願番号 商願平5-117881 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (034)
最終処分 成立 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 井岡 賢一
柳原 雪身
登録日 1997-06-27 
登録番号 商標登録第4017664号(T4017664) 
商標の称呼 ユウエスポロアソシエーション、ユウエスポロ 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 曾我 道照 
代理人 岡田 稔 
代理人 広瀬 文彦 
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