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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) Y41
管理番号 1104978 
判定請求番号 判定2004-60001 
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2004-11-26 
種別 判定 
判定請求日 2003-12-26 
確定日 2004-10-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第4693228号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 役務「幼児に対する知識の教授」に使用するイ号標章は、登録第4693228号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第4693228号商標(以下「本件商標」という。)は、「自由学園」の文字を標準文字で表してなり、第41類に属する「技芸・スポーツ又は知識の教授」を含む商標登録原簿記載の役務を指定役務として、平成14年11月27日に登録出願され、同15年7月18日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
本件判定請求人(以下、「請求人」という。)が、役務「幼児に対する学習塾の経営」(請求人は、使用する役務を「幼児に対する学習塾の経営」としているが、役務の表示としては、「幼児に対する知識の教授」が適切と認められるので、以下、「幼児に対する知識の教授」とする。)に使用するイ号標章は、別掲のとおりの「チャイルド自由学園」の文字よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第30号証を提出した。
1 判定請求の必要性
請求人は被請求人より、請求人が使用しているイ号標章が本件商標に類似し混同を生じるとして変更を求める通告を受けた(甲第5号証)。
しかし、イ号標章は、本件商標の登録出願より遥か以前より使用されて京阪神地方を中心に全国的に知名度も高まっており要求に応じられない状況にあるから、請求人としては、問題の解決を図るべく日本知的財産仲裁センターに調停の申立てを行い「本件商標権の効力の範囲に属しない」旨主張し、証拠として提出する必要があるため特許庁による判定を求めた。
2 判定請求の理由
(1)イ号標章は、本件商標と類似しない。
(2)イ号標章は、自己の名称「株式会社チャイルド自由学園」の著名な略称「チャイルド自由学園」を普通に用いられる方法で表示する商標に該当するため、本件商標の商標権の効力は及ばない(商標法第26条)。
(3)請求人は、イ号標章を自己の業務に永年にわたり使用しており、先使用による商標の使用をする権利を有するため、イ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない(商標法第32条)。
(4)本件商標は、その登録出願日前の出願に係る他人の商標登録と類似するため、商標法第4条第1項第11号に該当するにも拘らず登録されたものであるから、無効理由(同法第46条1項第1号)を有している。
以上の理由によりイ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。
3 イ号標章の使用態様について
請求人は、本部及び全国各地区の学習塾で社名又は校名としての使用及び関連商品の他、看板等の表示、マスコミを通じ広告宣伝にイ号標章を使用している。
4 請求人の簡単な経歴
請求人である、株式会社チャイルド自由学園(前身は「株式会社関医協」、平成8年6月28日に社名を現在の名称に商号変更)は、科学的な幼児・児童の頭脳開発の研究をもとに幼児の知能開発のためトレーニング指導方法を独自に開発し、昭和47年(1972年)5月に設立された(甲第4号証)。
「チャイルド自由学園」の名称は、昭和63年(1988年)1月より使用され、同社はこの名称を用いて幼児期における人格形成を目的とする音楽、絵画、文学等による情操教育を主とした学習塾の経営等の業務を開始し、新聞、雑誌、地域新聞、チラシ、マスコミを通じて広く広告宣伝され今日に至っている。
なお、この名称は、使用開始後(平成元年6月21日)に請求人が商標登録出願し(甲第1号証、以下、「登録A商標」という。)(態様は、別掲のとおりの「チャイルド自由学園」の文字よりなる。)、旧第26類「書籍、雑誌」を指定商品とし、同4年6月30日に登録第2430815号商標として設定登録、同14年4月16日更新登録、同15年2月12日に書換登録がされている。
5 イ号標章の周知性について
学習塾としての「チャイルド自由学園」は、当初は京阪神を中心に関西地方で始められたが、以来順調に業績が進展し拡大してきたため、中部地方や関東地方にも次々に開園するに至り、その後も旺盛な営業活動と企業努力さらには種々の改革を経たことにより、平成14年10月には関西地方に19校、中部地方に3校、関東地方に3校(合計25校)を保有するに至り、本判定請求時の平成15年12月現在も継続して広く業務を行っている。
請求人は、その名声が高まるにつれて幼児、児童の父兄・母親向けの雑誌や一般紙の特集等でたびたび取り上げられ、その結果各地方の業者や一般需要者において広く知れわたり、少なくとも現在を含めて本件商標の登録出願日以前には関西地方を中心に、愛知県名古屋市、及び千葉県千葉市等において広く知られ、「チャイルド自由学園」といえば幼児、児童の特殊教育を中心にした学習塾を想起する程度に周知著名になっている(甲第18号証ないし甲第29号証)。
6 イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属しないとの説明
(1)第1の理由
本件商標は、「自由学園」からなる標準文字商標であり、「ジユウガクエン」の称呼を生じる。
他方、イ号標章は、「チャイルド自由学園」の文字よりなり、これより生ずる「チャイルドジユウガクエン」の称呼も格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、構成文字全体をもって「チャイルドジユウガクエン」とのみ称呼される一体不可分のものと認識、把握されるとみることができる。
したがって、本件商標より生ずる「ジユウガクエン」の称呼とイ号標章より生ずる「チャイルドジユウガクエン」の称呼とは、その前半部分に「チャイルド」の音の有無の差及び音数に明らかな差異を有することから、称呼上、明確に聴別し得るものである。
また、本件商標とイ号標章とは、「自由学園」を含む部分において同一である。しかし、イ号標章は、「チャイルド」と「自由学園」を一連一体に結合してなり、しかも「チャイルド」はそれ自体特別顕著性を有することは明らかであるから全体として外観、称呼、観念において非類似とみることができる。
ちなみに、「チャイルド」と他の文字を一体に結合した商標は、「チャイルド大学(登録第3159543号商標)」、「チャイルド本社(登録第3287781号商標)」、「コスモチャイルド(登録第3071807号商標)」等多数の登録例がある。
したがって、イ号標章は本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。(商標法第25条、同第37条)
(2)第2の理由
請求人は、自己の名称「株式会社チャイルド自由学園」の略称「チャイルド自由学園」を普通に用いられる方法で表示し使用してきたもので、その使用態様は、当初より現在にいたるまで一貫して登録A商標のままで、例えば「チャイルド学園」とか「チャイルド」を分離して「自由学園」等、その他いかなる使用態様の変更もしたことがないものであるから、不正競争の目的等は一切なく、単に自己の名称の略称を普通に用いられる方法で表示しているにすぎないため本件商標権の効力が及ばない。(商標法第26条)
(3)第3の理由
請求人のイ号標章は、本件商標の出願日平成14年11月27日の時点において、少なくとも京阪神を中心に関西地方において請求人の業務に係る役務を表示するものとして取引者並びに需要者間に広く周知されるに至っており(甲第18号証ないし甲第29号証)、かつ、イ号標章は不正競争の目的でなく誠実に継続して使用されてきたから、先使用による商標の使用する権利を有している。(商標法第32条)
(4)第4の理由
本件商標は、本件商標の登録出願日前の出願に係る「東京自由学園」の文字よりなる、登録第4145910号商標(平成10年5月15日設定登録。以下「登録B商標」という。)(甲第2号証)、及び、「国際自由学園」の文字よりなる、登録第4153893号商標(平成10年6月5日設定登録。以下「登録C商標」という。)(甲第3号証)と類似するため、同法第4条1項第11号に違反して登録されたものであり、同法第46条1項第1号により登録を無効とされるべきものである。
本件商標は、「自由学園」を標準文字で表したものであり、登録B商標は「東京」と「自由学園」の文字を一体に結合して「東京自由学園」としたものであるが、「東京」の文字は単に地名を表わすにすぎないから、要部は、「自由学園」にある。登録C商標は、「国際」と「自由学園」を一つに結合して「国際自由学園」としたものであり、「国際」の文字は、世界、インターナショナルといった意味の普通名詞であるから、それ自体に特別顕著性はない。そうすると、本件商標と登録B商標及び登録C商標とは共に要部「自由学園」を共通にする類似の商標で、何れも、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授等」を指定役務としており、本件商標に係る指定役務と同一である。
7 答弁に対する弁駁
(1)判定の対象と類否判断の原則に対して
商標法第28条によると、「判定の対象」は、特許、実用新案及び意匠と異なり、「商標権の効力」とされている。これは、判定の対象を単に商標の類否や商品(役務)の類否判断に限定すると、商標権をめぐる紛争解決に判定の実効性があがらないため、商標権の効力が及ばない範囲(同法第26条)や先使用による商標の使用をする権利(同法第32条)等も判定の対象とするための措置と解される。
そもそも、判定制度とは、イ号標章の使用について商標権の効力が及ぶか否かという問題について、専門的な知識を有する特許庁が、厳正・中立的な立場から公的見解を短期間に示す制度である。
したがって、紛争の迅速な解決を強く求める請求人は、「商標が非類似」であることを主張するだけでなく、判定の対象として同法が当然に予定している「商標権の効力が及ばない範囲(同法第26条)や先使用による商標の使用をする権利(同法第32条)」を主張したにすぎない。
類否判断について、「取引の実情」を考慮することは被請求人が示した最高裁判決(昭和39年(行ツ)第110号)より明らかであるが、後述のとおり、取引の実情を考慮してもなお、請求人が使用するイ号標章は本件商標と非類似であり、本件商標権の効力は及ばない。
(2)第1の理由の反論に対する弁駁
(ア)被請求人はイ号標章「チャイルド自由学園」のうち、「チャイルド」の部分には識別力がない旨主張している。しかし、「チャイルド」に識別力がないのであれば、判定請求の理由で指摘した「チャイルド」を含む各種登録商標についていかなる説明がつけられるのか。これらの登録商標から「チャイルド」の部分を除外すると、「大学」や「本社」、「社」しか残らず、「チャイルド」にいたっては、全く何も残らないことになる。したがって、「チャイルド」の部分はそれ自体商標としての識別力を有することは明らかである。
(ィ)取引の実情を考慮した類否判断を検討すると、被請求人が自己の名称ないしはその略称「自由学園」を長年にわたり使用し、関東の一部の地域において周知となっていることは請求人も認めないという訳ではない。
しかし、請求人が主としてイ号標章を使用する関西地域においては、「自由学園」といえば「箕面自由学園」(甲第6号証)の略称と考えるのが普通であり、少なくとも関西では、「学校法人自由学園」を一義的に意味するほどに周知とはいえない。「箕面自由学園」もまた、被請求人同様に大正時代の同時期に創立され関西地方では名だたる有名校となっているからである。
これに対し、登録B商標や登録C商標などにおける「東京」や「国際」はそれのみではイ号標章における「チャイルド」ほどの識別力がなく、その要部が「東京」や「国際」を捨象した「自由学園」にあると考えられる。したがって、イ号標章と登録B商標及び登録C商標とを同列に論じられるべきではない。
(ウ)被請求人は、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼、観念においていずれも類似し、その取引の実情からしても混同のおそれの高いものであって、両者は類似すると主張する。
しかし、外観においては、本件商標は単に「自由学園」のみからなり、イ号標章は、「チャイルド」と「自由学園」を一体不可分に結合した文字構成からなる「チャイルド自由学園」であるから外観上の相違は明白である。また称呼については、本件商標は「ジユウガクエン」の称呼であり、イ号標章は、「チャイルドジユウガクエン」と一連に称呼するものであるから、明らかに相違する。
さらに、観念については、既に述べているように「チャイルド」自体に識別力を有するものであるから「チャイルド」を有しない本件商標の「自由学園」とは少なくとも観念上の相違は明白である。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼、観念の何れもが相違し、両者は互いに非類似である以上、たとえ本件商標の「自由学園」が周知であったとしても出所について混同を生じる余地は全くないといわざるを得ない。
この点における請求人の主張の正当性を立証するため、同様趣旨の審決例(甲第30号証)を提出する。この審決例は、世界的に著名なファションデザイナーのクリスチャンディオールの略称「DIOR」を引用して「ANTONIO DIOR」の登録商標について異議申立てがなされたケースである。
(エ)次に、関西以外の地域で両者が出所の混同を生じうるかについて検討する。東京及びその近隣地域において、被請求人の名称が相応に周知であるということを被請求人からイ号標章使用差止めの通告を受けた後、鋭意検討を行った結果、請求人は、被請求人に対し、混同を防止するために適正な措置を講じることはやぶさかではない旨表明し、さらに、その上で日本知的財産権仲裁センターに調停の申立を行うことで、互いに話し合いのテーブルにつき、迅速な解決を強く求める法的手続をとった。にもかかわらず、被請求人は、正当な理由もなく調停申立の受諾を拒否し続け、指定された回答期限を意図的に遅延して今だに一切話し合いのテーブルにつこうとしていないという事実がある。
請求人が求める唯一のものは、紛争の早期解決であり、16年以上の永きにわたり使用してきたイ号標章の継続使用と営業活動であり、本判定請求の趣旨のとおりの結論である。
(3)イ号標章の実際の使用に対する弁駁
被請求人は、請求人によるイ号標章の使用態様のなかに、「板宿教室」において、「チャイルド」と「自由学園」とを分離して使用した事例を指摘した。
請求人は、商標の使用監督責任を果たす義務がある。請求人の基本的な経営姿勢としてはこのことを厳格に実践すべく各教室の長に指導監督してきたが、板宿教室の事例については認識不足が否めなかった。そこで、請求人は直ちに板宿教室の長に対して即刻是正を命じ、使用態様の是正を確認すると共に、被請求人が指摘したホームページ(乙第2号証)を改めた。また、同時に、各教室の長にあらためて商標の使用に関する注意を促した。
これにより、現在では、指摘されるような使用態様は一切なくなっていることを附言する。
(4)第2の理由の反論に対する弁駁
請求人は、イ号標章が図案化された縦長のロゴタイプで構成されていることを根拠として、イ号標章の使用が「普通に用いられる方法」で自己の名称の略称を意図的に使用しなかったと主張するが、登録A商標は、標準文字制度が存在していなかった平成元年に登録出願したものであり、かつ、書体をやや縦長に変形したといっても、それが図案化というほどの変形といえるかどうかは甚だ疑問であり、かつ、請求人は、被請求人からイ号標章の使用の差止めの通告を受けるまで商標法第26条を意識していた訳ではない。
(5)第3の理由の反論に対する弁駁
請求人は、昭和63年1月に「チャイルド自由学園」の名を冠した学習塾の経営を開始してから現在に至るまで、すでに16年以上もの間業務を継続しており、開校以来、「チャイルド自由学園」の名称を誠実に使用し続け、その名称は朝日新聞などの一流新聞、児童向けの全国誌等々にも特集記事として掲載されたり、さらに、地域密着型の新聞にも広告宣伝を行い、継続して業務を行っている。
その結果、上述のとおり、遅くとも平成14年頃には関西地方に19校、中部地方に3校、関東地方に3校の教室を開講するに至っている事実を看過すべきではない。同法第32条が認められるための周知性は十分に獲得していると考える。
(6)第4の理由の反論に対する弁駁
被請求人は、本件商標には無効理由が存在するとの主張は無意味であると主張しているが、上述のとおり、請求人が切望することは、イ号標章の継続的使用であり、本件商標権の効力が及ばないとの確認である。
(7)その他の理由についての反論に対する弁駁
答弁書には、本件商標が、「被請求人にとっての命ともいうべき大切な知的財産」と記載され、また、「被請求人の誠実な商標管理が実を結び」と記載されている。
では、なぜ、請求人は命ともいうべき「自由学園」の名称を、大正の創業当初から平成14年に至るまで商標登録出願を行わなかったのか。そして、登録されるや否や、今やありふれた名称ともなっている「自由学園」の名称を含む標章の使用者に校名変更措置の通告書を送り続けているのか。その一方で、話し合いに一切応じようとしない姿勢が、果たして「誠実な商標管理」といえるのであろうか。
それに引きかえ、イ号標章は、昭和63年1月に「児童に対する知識の教授」の業務について使用を開始した約1年後の、平成元年6月21日に商標登録出願され、新たに教室を開講する際にも、その長に対し商標の使用許諾と使用責任について説明し、監督義務を覆行して今日に至っている。
なお、平成元年当時は役務商標の登録制度がなかったため、当時の商標実務の慣行にしたがって、旧第26類「書籍・雑誌」を指定商品として登録出願したにすぎない。請求人は一貫して「誠実な商標管理」を実践しており、今後も変わることはない。

第5 被請求人の答弁
被請求人は、請求書に対し、以下のとおり反駁するとともに被請求人の主張を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第87号証を提出した。
1 判定の対象と類否判断の原則
本件商標の商標権の効力が、請求人の請求書末尾に添付されたイ号標章に及ぶか否かの問題は、原則として、イ号標章の使用が商標法25条に抵触するか若しくは同法第37条に該当するか否かという問題である。これに、商標権の効力制限規定としての同法第26条(本件判定請求理由の第2)、若しくは、同法第32条(本判定請求の理由(3))が例外的に適用されるか否かを考察すべきである。
したがって、本件商標とイ号標章の類否について検討しなければならないが、判定における商標の類否は、まず、対比される商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであり、取引の実状を明らかにしうる限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきである(最高裁昭和43年2月27日判決 昭和39年(行ツ)第110号)。
2 イ号標章の実際の使用
請求人は、請求書において、イ号標章は「『チャイルド』と『自由学園』の文字を一体に結合してなるものであるから、その構成文字全体をもって一体不可分のものと認識されるものであり、自己の名称の略称『チャイルド自由学園』を普通に用いられる方法で表示し使用してきたもので、その使用態様は当初より現在にいたるまで一貫して登録A商標のままで、(中略)『チャイルド』を分離して『自由学園』等、その他いかなる使用態様の変更をもしたことがない」と述べている。
しかしながら、請求人がイ号標章の実際の使用例として提出した乙第2号証(請求人がイ号標章を使用して経営する学習塾(フランチャイズ教室)のひとつである神戸市須磨区の「板宿教室」のホームページからのプリントアウト)によれば、請求人のフランチャイジー自体が、現にイ号標章を分離して使用している。
上記使用態様からも明らかなように、そもそもイ号標章は、一連に表示するには長すぎ、称呼も全体で11音と冗長である。したがって、市井の需要者・取引者からすれば、「チャイルド」と「自由学園(ジユウガクエン)」とを分離して認識・称呼すると考えるのが自然である。ましてや、役務商標にとっての重要な要件である「視認性」に鑑みれば、イ号標章の構成要素のうち、最も顧客吸引力を有し、出所識別標識として機能するのは、周知となっている「自由学園」の文字部分だというべきである。この意味でも、乙第2号証に示すような分離使用は、極めて違法性が高い。
3 本件商標「自由学園」の周知性
学校法人自由学園は、大正10年(1921年)4月15日に、羽仁吉一・もと子夫妻に(以下「羽仁夫妻」という。)により、東京目白(現在の豊島区西池袋)に女子のための中等教育を行う学校として創立された(乙第3号証ないし乙第7号証及び乙第21号証)。羽仁夫妻は、当時の一流紙、報知新聞の元記者(もと子は日本最初の女性新聞記者)であり、後に婦人啓蒙雑誌「婦人之友」を創刊、編集・発行するジャーナリストであった(乙第5号証及び乙第6号証)。
校名である「自由学園」は、新約聖書ヨハネによる福音書にあるイエス・キリストの言葉からとられた(乙第5号証ないし乙第7号証)。羽仁夫妻は、自分たちの理想とする教育を行うため、当時の女学校令によらない「各種学校」として「自由学園」を発足させた。校舎の設計は、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライトが引き受けた(乙第5号証、乙第6号証及び乙第10号証)。このライトが設計した最初の校舎は、後に「明日館(みょうにちかん)」と名付けられ(乙第11号証)、1997年には、国の重要文化財に指定された(乙第10号証及び乙第14号証)。
昭和2年に、自由学園は現在の東京都東久留米市に土地を求めて移転し、昭和3年に初等部が設立された。
その後、昭和10年に男子部、昭和14年に幼児生活団(幼稚園)、昭和24年に大学に相当する男子最高学部、翌昭和25年に女子最高学部(短期大学に相当)ができ、4歳児から22歳までの青年男女を育てる一貫教育校となった(乙第5号証ないし乙第9号証)。当初は、文部省令によらない各種学校だった女子、男子の中等科、高等科は、戦後の学制改革の際に文部省が許可を与え、新制中学、高等学校となった。しかし、4年制の男子最高学部と2年制の女子最高学部は今日も文部科学省の大学令によらない各種学校のままであり、自由学園独自の教育を行っている(乙第6号証)。
「羽仁もと子」や「自由学園」については、広辞苑や他の国語辞典の「羽仁もと子」の項にも記載がある(乙第15号証及び乙第16号証)。この他、大正10年(1921年)に我が国で起こった出来事を掲載した事典等には、写真を使用する等して大きく取り上げられている(乙第17号証ないし乙第19号証、乙第22号証及び乙第23号証)。我が国を代表する辞典を始め、一般の事典や新聞(乙第87号証)、週刊誌にまで「自由学園」の設立に関する記事が掲載されているということは、「自由学園」が、幅広い範囲の一般大衆に知られている事実を示唆するものであり、学校名としての一定の周知性を裏付けるものである。
上記したように、「自由学園」商標は、被請求人により、大正10年(1921年)から 80年以上の永きにわたり、一貫して「教育(知識の教授)」並びに「教育」に関連するサービスについて使用されている。そして、「自由学園」における教育(知識の教授)のユニークさは、国内外で評判を呼び、古くから新聞・雑誌等のマスコミや、各種書籍等に取り上げられてきた(乙第20号証、乙第24号証ないし乙第55号証、乙第86号証)。
また、「自由学園」の教育の素晴らしさや、その創設者である羽仁もと子女史については、1932年(昭和7年)にフランスで開かれた世界新教育会議での同人の講演によって、世界的にも注目を浴びた(乙第24号証、乙第37号証)。「自由学園」の創立30周年記念式典(昭和26年)には、当時の吉田茂総理大臣、戦後小学校に給食制度を採用した文部大臣天野貞祐氏、高松宮殿下等著名な方々が訪問され(乙第79号証)、新聞でも報道された(乙第80号証及び乙第81号証)。
さらに、「自由学園」の卒業生の中には、女優の岸田今日子氏、指揮者の故山本直純氏、映画監督の羽仁進氏(乙第82号証)等有名人が数多く輩出し、政財界の著名人、知識人、有名人にも「自由学園」とゆかりのある人々が多い。このため、高松宮日記を始め、有名知識人の著作には「自由学園」に関する記述が数多く登場する(乙第56号証ないし乙第73号証)。
他方、校舎改築工事に伴い、昭和11年と昭和56年に「自由学園」敷地内(現在の東京都東久留米市)から、武蔵野を代表する大遺跡が発掘されたことがあった(乙第74号証ないし乙第78号証)。これがマスコミによって大きく報道されたことにより、改めて、「自由学園」の名が全国に広まることともなった。
以上のことから「自由学園」が、被請求人の運営する学校名及び被請求人の略称として、また、被請求人が提供する役務「知識の教授、他」についての商標として、わが国及び一部外国において広く知られていたことは明らかである。
4 第1の理由に対する反論
請求人は、本件商標とイ号標章とが類似しないことを判定請求の理由の第1に挙げている。
しかしながら、本件商標とイ号標章とは、以下に述べるとおり、外観、称呼、観念においていずれも類似し、その取引の実情からしても、混同のおそれの高いものであって、両者は類似するものである。
ここで、本件商標とイ号標章の構成を確認すると、本件商標は「自由学園」の文字を横書きした標準文字の構成よりなるのに対し、イ号標章は、若干縦長に図案化されたカタカナ文字「チャイルド」と、漢字の「自由学園」とを結合して横書きした構成よりなる。
イ号標章は、本件商標をその構成要素とし、冒頭に「チャイルド」という識別力の無い語を付加したにすぎない。すなわち「チャイルド」の語は、カタカナ語として通用するほど日本人にはなじみの深い英単語であり(乙第1号証)、「知識の教授」という指定役務との関連では「幼児」という対象ないし主たる需要者を意味する内容表示として頻繁に使用される用語である。加えて、前述のとおり本件商標は周知性を獲得しているものであり、これを勘案すれば、イ号標章中 「自由学園」の部分は特に強い識別力を発揮し、イ号標章を目にした者は、「自由学園」の部分にのみ注意を惹き付けられるというべきである。ましてや、イ号標章を構成するカタカナ文字と漢字は、視覚的に観察した場合、前半と後半に分離し易く、上記の傾向を強めるものである。したがって、本件商標とイ号標章とは、外観上類似する。
さらに、「自由学園」の周知性により、イ号標章全体からは「幼児の(あるいは『幼児向け』の)『自由学園』」との観念が生じるから、あたかも、被請求人が経営する幼稚園であるかの如き誤解を生じさせる。また、「自由学園」の語は、「生徒の自主性を尊重し、自由に伸び伸びと育てる学園」といった鮮烈な印象を与えるものであり、独創性のあるものである。更に、請求人は幼児教室と呼ばれる小学校受験のための教育等を行う学習塾を経営している者であるが、イ号標章が使用された学習塾の看板等を見た者は、被請求人がその一貫した教育思想の下に経営する学習塾であると誤信したり、あるいは、請求人の幼児教室に通うことにより、被請求人の運営する初等部(小学校)に合格し易いかの如き観念上の誤認・混同をも生じさせるおそれがある。したがって、本件商標とイ号標章とは観念上も類似する。
このことは、特許庁商標課編「商標審査基準」において、周知な他人の登録商標と他の文字とを結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものを含め、原則として、その他人の登録商標と類似するものとする。とされていることからも明らかである。
次に、本件商標とイ号標章から生ずる称呼について考察する。本件商標からは「ジユウガクエン」の称呼が生ずるが、イ号標章も、横一連に表されているとはいえ、「チャイルド」が前記のような識別力のない語である以上、「チャイルドジユウガクエン」の他、「ジユウガクエン」という単独の称呼も生じるというべきである。
上記の点に関し、請求人も登録B商標、登録C商標といった他人の登録商標について、これらは、本件商標に識別力のない文字を付加したにすぎないものであり、その要部は「自由学園」であるから、本件商標と類似すると述べており、この理は、「チャイルド自由学園」についても全く同様に該当するはずであるから、請求人は、両者の類似を自認しているというべきである。
したがって、本件商標とイ号標章とは、外観、観念及び称呼上において、いずれも類似する。
また、イ号標章が使用されている役務は「幼児に対する知識の教授」であるが、これが本件商標の指定役務である「知識の教授」に含まれることはいうまでもない。
そればかりか、イ号標章は、本件商標の指定役務と同一又は類似の役務である「幼児に対する知識の教授」について関東(千葉県2箇所)で使用しており、その使用目的、方法、対象とする需要者において同一または極めて類似している現状において、東京都に所在する被請求人と何らかの関係(姉妹校や提携校、あるいは資本的な繋がり)があるのではないか、との問い合わせがなされる可能性は非常に高い。すなわち、本件商標とイ号標章との間には「狭義の混同」のみならず「広義の混同」を生ずるおそれがあることは明らかであり、イ号標章は、被請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれのある商標であって、最高裁平成10年(行ヒ)第85号,同12年7月11日第3小法廷判決(民集54巻6号、レールデュタン事件)の判旨に照らしても、本件商標とは類似するというべきである。
以上述べたように、イ号標章の「幼児に対する知識の教授」についての使用は、同法第37条第1項第1号に規定する「指定役務についての登録商標に類似する商標の使用」に該当するものである。
5 第2の理由に対する反論
請求人は、判定請求の第2の理由として「チャイルド自由学園」は、請求人の著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標にすぎないから、本件商標の効力は及ばないとする。
しかしながら、商標法第26条第1項第1号は、取引社会における「普通に用いられる方法」による表示を商標権の禁止的効力から除外する場合を定めた規定である。これに関し、請求人は、第2の理由に関する記載のいずれにおいても「イ号標章」という文言を使用していない。これは、イ号標章が、図案化された縦長のロゴタイプで構成されているため、「普通に用いられる方法」で自己の名称の略称を記載しているということができず、あえて意図的に使用しなかったものと思われる。
しかし、判定請求の対象物はあくまでイ号標章であり、本件商標の商標権の効力の範囲に属するか否かについて結論を示せばよいのであるから、請求人の「第2の理由」は失当である。
さらに、同法第26条第1項第1号に該当するというためには、自己の名称の「著名な」略称であることが要求される。これに関し、請求人は、その著名性について何ら主張・立証していない。
またさらに、本来であれば、請求人は、同法第26条第2項に規定する「不正競争の目的で」用いたのではないことを要するが、前記検証のように、請求人は、「自己の名称『株式会社チャイルド自由学園』の略称『チャイルド自由学園』を普通に用いられる方法で表示し使用してきたもので、その使用態様は当初より現在にいたるまで一貫して登録A商標(甲第1号証)のままで、・・(中略)・・チャイルドを分離して『自由学園』等、その他いかなる使用態様の変更をもしたことがない」等と述べておきながら、フランチャイジーによる「自由学園」の漢字部分の分離・独立使用を認めている(乙第2号証)。したがって、同法第26条第2項の該当性も否定できず、イ号標章については、同法第26条の適用の余地はない。
6 第3の理由に対する反論
判定請求の第3の理由として、請求人は、「イ号標章を自己の業務に永年にわたり使用しており、先使用による商標の使用をする権利を有する」と主張する。
しかしながら、商標法第32条第1項にいう「広く認識された」の範囲は、同法第4条第1項第10号の範囲と同義であり、相当程度の周知性が厳格に求められることになっている。これは、相当程度周知でなければ、保護に値する財産的価値が生じないものとみられるからである。また、先使用を主張するのであれば、出願前からの使用、不正競争の目的でないこと、周知であること、継続使用の四つの要件を具備しなければならない。請求人は、その証明のために甲第18号証ないし甲第29号証を提出しているが、これらの証拠によっては、イ号標章が、同法第32条第1項の「広く認識された」商標に該当するということは到底できず、その他の要件を具備しているということもできない。
さらに、同法第32条の存在理由は、本来的には同法第4条第1項第10号の過誤登録の場合の救済であるから、この登録無効審判を請求していない状況において、請求人は、本判定において、イ号標章に関し、同法第32条の適用を主張することはできないというべきである。
7 第4の理由に対する反論
さらに、請求人は、第4の理由として他人の登録商標を出し、本件商標に無効理由が存すると主張するが、請求の対象物はイ号標章であり、この主張は無意味である。
付言すれば、請求人が指摘する登録B商標及び登録C商標に対し、被請求人は、それぞれ商標登録無効審判を請求している。
8 その他の理由についての反論
請求人は、本件商標「自由学園」は、「ありふれた名称」であり、「自由学園」及びそれを含む名称が全国各地に存在するとして例を挙げている。たしかに、「自由学園」という名称は、今でこそさして新しい感じは受けないかもしれないが、これは、被請求人の「自由学園」が著名となったためであり、設立当初の大正10年(1921年)当時は、学校名に「学園」と付けること自体が最初のことであったのみならず、「自由」という名称も、極めて新しい印象を与えるものであった(乙第83号証)。これは、真理こそ自由を与えるのだという羽仁夫妻の信仰に基づいた教育理念の強い表白であり、のちに、太平洋戦争のきびしい思想統制の中で、軍や文部当局が執拗に名称変更をせまってきた時も、二人の棄て身の決意によって、守り抜かれたものである(乙第25号証及び乙第26号証、乙第83号証及び乙第84号証)。
このような被請求人にとっての命ともいうべき大切な知的財産を、被請求人とはまったく関係のない第三者に不当に利用されるというような事態は、断じて許されるべきではない。特に、請求人は学習塾を経営する者であり、同じ「教育」という分野におけるいわば「同業者」であるから、本件商標「自由学園」に化体した名声や、莫大な顧客吸引力について十分な認識を持っていたものと推認できる。また、イ号標章の使用によって、被請求人の周知商標「自由学園」が有する出所識別機能(指標力)は稀釈化の危機に瀕している。
本件商標には、これまで80年以上にもわたり培ってきた「イメージ(印象)のよさ」が備わっている。したがって、イ号標章の使用により、本件商標の持つ「イメージ」は損なわれ、これが、本件商標の標識としての機能の弱化につながる。イ号標章は、被請求人の築き上げてきた「イメージ」や、「自由学園」の教育理念とは似ても似つかぬ「教育」事業について使用されており、被請求人の周知商標に化体した上記イメージや業務上の信用力(グッドウィル)は著しく汚染される一方で、被請求人は、そのことにより不正の利益を得ることになる。
イ号標章が、被請求人の商標「自由学園」と無関係に選択されたとは考えられず、その顧客吸引力へ“ただ乗り”し、当該顧客吸引力を不当に利用しようとするものであることは、前記の諸事情からみて客観的に明白である。
被請求人は、「自由学園」商標に化体する顧客吸引力を冒用する者に対し、断固たる態度で臨んでおり、校名の変更措置をお願いしている。
このような被請求人の誠実な商標管理が実を結び、実際に「大阪自由学園」は、平成16年4月1日より「大阪自由学院」とその名称を変更することとなった。

第6 当審の判断
1 本判定請求により、請求人が求めているのは、(a)請求人の使用するイ号標章が、本件商標の商標権の効力の範囲、すなわち、本件商標の商標権の専用権(商標法第25条にいう使用権)、禁止する効力(同法第37条にいう、いわゆる禁止権)の範囲に属するか、(b)イ号標章の使用が本件商標に対して先使用により使用する権利(同法第32条にいう、いわゆる先使用権)を有するか、(c)イ号標章を使用することは、本件商標の商標権の効力が及ばない範囲(同法第26条)中の、自己の名称の著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標に該当するか、(d)本件商標が同法第4条第1項第11号に違反して設定登録された無効事由を有する商標であって、明らかな権利濫用であるといえるか、(e)本件商標は、ありふれた氏または名称といえるか、についてである。
以下、(a)ないし(e)について検討する。
2 本件商標とイ号標章の類否について
本件商標とイ号標章の構成は、前記第1及び第2のとおりであって、役務の範囲は、本件商標は「技芸・スポーツ又は知識の教授」であり、イ号標章は「幼児に対する知識の教授」であるから、両者の役務の範囲は、同一又は類似といえる。
そこで、先ず、本件商標及びイ号標章の構成について検討するに、本件商標は、「自由」及び「学園」の文字を、イ号標章は、「チャイルド」、「自由」及び「学園」の文字をそれぞれ構成要素としている。そして、構成する各文字についてみると、「自由」の文字(語)は、「心のままであること。思うとおり。自在。(後略)」(広辞苑 株式会社岩波書店 1998年11月11日発行 第五版第一刷)の意を、「学園」の文字(語)は、「学校
の異称。私立で下級から上級までのいくつかの学校を含む組織をいうことが多い。(後略)」(広辞苑 同上)の意を、さらに、「チャイルド」の文字(語)は、「子供(外来語)」(日本語になった外国語 株式会社集英社 1994年3月15日、第3版第1刷)の意をもって、それぞれの文字(語)が一般に親しまれている日常的に使用される普通名詞といえる文字(語)である。
さらに、イ号標章の構成中の「チャイルド」の文字(語)は、指定役務「幼児に対する知識の教授」との関係からしても、幼児、子供を対象としている役務を表し、自他役務の識別力が極めて弱いか識別力を有しないものといえるものである。また、「自由」の文字(語)についてみても、教育に関わる分野においては、上記の語義より学校等の名称に多く使用されているものであって、自他役務の識別力が極めて弱いか識別力を有しないものといえるものであり、更に「学園」の文字(語)は、学校ないし学校の組織を意味する普通名詞である。
そして、イ号標章は、「チャイルド自由学園」の片仮名文字と漢字とからなるものであるが、同じ書体、同じ大きさで一体的に表されており、また、これより生ずる「チャイルドジユウガクエン」の称呼も省略を要するほどに冗長なものということはできない。
以上よりすると、これらの各語を結合したものは学校の名称を表示する一体不可分の標章として認識把握されると考えるのが自然である。
他方、本件商標は、その構成より「ジユウガクエン」の称呼を生ずるものであり、「自由学園」という名称の学校を表示する標章と認識されるといえるものである。
そうすると、本件商標より生ずる「ジユウガクエン」の称呼とイ号標章より生ずる「チャイルドジユウガクエン」の称呼は、前半部分に「チャイルド」の音の有無の差を有することから、両称呼は、明らかに聴別できるものである。
また、本件商標とイ号標章の構成は前記第1及び第2のとおりであるから、両者は、外観上明らかに区別し得るものである。
さらに、観念についてみても、本件商標は、「自由学園」という名称の学校、イ号標章は、一体不可分の「チャイルド自由学園」という名称の学校であって、観念上も相違するといえる。
したがって、本件商標とイ号標章は、称呼、外観、観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であるから、請求人の使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲、すなわち、本件商標の商標権のいわゆる専用権、禁止権(商標法第25条及び同法第37条)の範囲に属しないものである。
3 先使用権について
イ号標章は、上記2のとおり、本件商標とは非類似の商標であって、先使用による商標の使用をする権利(商標法第32条)の要件を欠いているものであるから、判定の対象となし得ないものである。
4 自己の名称の著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標に該当するかについて
イ号標章は、上記2のとおり、一体不可分の商標であって、本件商標とは商標として別異のものであるから、前提において、商標法第26条第1項第1号の「自己の・・・・・著名な略称普通に用いられる方法で表示する商標」に該当しないものである。
その他、イ号標章には、本件商標の効力が及ぶとみるべき点は存在しない。
なお、請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して設定登録された無効事由を有する商標であって、明らかな権利濫用である、旨主張し、本件商標の権利濫用について判定を求めているが、権利濫用については、商標法第28条の「商標権の効力については、特許庁に対し、判定を求めることができる。」と規定されている「商標権の効力」の範囲内とすることは適当でないというのが相当であるから、本判定の対象にしないこととした。また、請求人は、本件商標は、ありふれた名称である、旨も主張しているが、同様の趣旨にて本判定の対象にしないこととした。
したがって、イ号標章には、本件商標の商標権の効力が及ばないといわざるを得ない。
よって、結論のとおり判定する。
別掲
別 掲

イ号標章及び登録A商標


判定日 2004-10-05 
出願番号 商願2002-100379(T2002-100379) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (Y41)
最終処分 成立 
前審関与審査官 岩本 明訓 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 和田 恵美
三澤 惠美子
登録日 2003-07-18 
登録番号 商標登録第4693228号(T4693228) 
商標の称呼 ジユーガクエン、ジユー 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 森脇 康博 
代理人 松尾 和子 
代理人 中村 稔 
代理人 富岡 英次 
代理人 大島 厚 
代理人 森脇 正志 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 加藤 ちあき 
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