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審判番号(事件番号) データベース 権利
異議200390376 審決 商標

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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z08
管理番号 1103246 
審判番号 無効2003-35364 
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-01 
確定日 2004-08-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第4572268号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4572268号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標登録の無効の審判
1 本件商標
本件商標登録の無効の審判に係る、登録第4572268号商標(以下「本件商標」という。)は、「HENNESY」及び「ヘネシー」の各文字を上下二段に横書きしてなり、平成11年9月30日に登録出願、第8類「手動工具(「すみつぼ類・皮砥・鋼砥・砥石」を除く。),手動利器(「刀剣」を除く。)」を指定商品として、平成14年5月31日に設定登録されたものである。
2 本件商標登録の無効の審判
本件商標登録の無効の審判は、本件商標が商標法4条1項19号、同8号、同15号及び同7号に違反して登録されたものであるとして、同法46条により本件商標の登録を無効にすることを請求するものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、「HENNESSY」「ヘネシー」の各文字を二段に書してなり、第28類「酒類(薬用酒を除く)」を指定商品として、昭和58年3月28日に登録され、その後商標権の存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続している登録第1573695号商標及び、「Hennessy」の文字を書してなり、第33類「洋酒、果実酒」を指定商品として、平成6年9月30日に登録された登録第3005630号商標(以下、上記両登録商標を「引用各商標」という。)を引用し、その理由を要旨次のように述べるとともに、証拠方法として甲第1号証ないし同第68号証を提出した。
1 請求の理由
(1)引用各商標及び請求人の略称たる「HENNESSY/ヘネシー」の著名性について
請求人は1765年にアイルランド出身のリチャード・ヘネシーによって創設されたフランス国法人であり一般に「ヘネシー社」と略称されている(甲第24号証ないし同第39号証並びに同第41号証及び同第42号証)。リチャード・ヘネシーにより創業された「ヘネシー社」は、その息子ジェームズ・ヘネシーにより会社組織となり、その後も一族による経営が継続されている(甲第27号証ないし同第29号証及び甲第39号証)。
このように、請求人の略称であり且つ請求人の業務に係る商品に使用される商標である「HENNESY」(注:「HENNESSY」の誤記と認める。)または「ヘネシー」の語は、請求人の創設者及びその後の経営者に由来するものであり、非常に独自性の高い略称又は商標である。
請求人「ヘネシー社」は世界一のシャンパン・メーカーである「モエ・エ・シャンドン」と合併し「モエ・ヘネシー」グループを結成後、現在においては、「LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシー)」グループの一員としてファッション界及び化粧品業界の企業と連携し、相乗効果にて地盤をさらに強化しつつある(甲第26号証、同第29号証、同第39号証、同第45号証、及び同第46号証)。この「LVMH」グループにおける「H」の文字は、請求人「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」の略称である「HENNESSY」の頭文字に由来するものである。現在「ヘネシー社」はコニャック業界におけるトップ・セリング・ブランドであり、請求人の商品は、世界で約四分の一のシェアを占めている。(甲第23号証、同第29号証ないし同第32号証、同第38号証、及び同第39号証)。
請求人「ヘネシー社」のコニャックは大手有名メーカーの製品のなかでも酒質の厚い商品であると評されている(甲第25号証ないし同第27号証、同第29号証、及び同第32号証)。また、「ヘネシー社」は秘蔵の古酒を大量に貯蔵しており、それらを小出しにブレンドすることにより最高級のコニャックを生産することが可能であり、市場に一定して高品質の商品を供給できることから現在のコニャックメーカーとしての地位を築いたものである(甲第39号証)。
我が国において請求人の商品は、明治4(1871)年に「コニャック」第一号として輸入されて以来、太平洋戦争中の一時期を除き継続して輸入販売されている。輸入開始当初は、商品価格が国民の平均月収の2か月分を越える高級品であったため需要は限られていたが、昭和33(1958)年にジャーディンマセソン社と日本における代理店契約を締結して以降、輸入量は増大し当該年度の販売量は10,000ダースを達成した。その後も独自のブレンド技術による品質の高さから請求人の商品は広く知られ、昭和52(1977)年の「ヘネシーVS.0.Pクリアボトル」の発売をきっかけに、昭和57(1982)年には輸入量が100,000ダースを越えるに至り、請求人は現在に至るまで「ブランデー、コニャック」のトップ・ブランドとしての地位を不動のものとしている(甲第23号証)。
このコニャックのトップメーカーである請求人の略称且つ請求人の業務に係る商品に使用される商標として「HENNESSY」及び「ヘネシー」の語は、酒類に関する刊行物においては勿論のこと、酒類に限定しない多岐にわたる一流品及び著名商標を掲載する刊行物において頻繁に掲載されている(甲第23号証ないし同第42号証)。これら刊行物において、請求人「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」は「ヘネシー社」と略称されており(甲第24号証ないし同第35号証、同第37号証、同第39号証、同第41号証、及び同第42号証)、また引用各商標の使用されている請求人の業務に係る商品について詳細に紹介されている(甲第23号証ないし同第44号証、及び同第47号証)。
これら上記の、辞書、新聞、及び刊行物等において請求人自体及び引用各商標共に大々的に取り上げられ紹介されているにもかかわらず、請求人は活発な広告・PR活動を継続しており、特に昭和52(1977)年にスタートした「ソムリエ・シリーズ」と呼ばれている広告は、各種新聞・雑誌等に掲載され請求人の商品とともに広く知られている(甲第23号証)。このように、引用各商標は請求人の不断の努力により我が国において高い名声や信用、顧客吸引力等を獲得するに至っていることから、引用各商標をそっくり真似した標章の付された偽造品が出回る模倣・盗用事件が発生するに至っている(甲第48号証ないし同第52号証)。そこで請求人が商標権侵害等を理由とする商標使用差止等請求事件を東京地方裁判所に提訴したところ、平成7(1995)年4月28日言渡の判決において、「原告商標(引用各商標)が付された原告(請求人)の製造販売するコニャックは世界で約四分の一のシェアを占め、日本国内では、昭和63年に約四〇〇万本の販売が予想されてシェア第一位であること」、「原告が販売する原告商標の付されたコニャックは品質の優れた良質の商品であるとの評価が取引業者、消費者に確立しており」、及び「原告商標は、優れた原告の商品を表示するものとして著名なもの」と認められ、被告に対する損害賠償請求が認められている(平成6年(ワ)第11023号商標使用差止請求事件;甲第53号証)。
また、引用の登録第1573695号商標については防護標章登録第1号及び第2号、引用の登録第3005630号商標については防護標章登録第1号ないし第12号が認められていることからも、引用各商標の著名性は顕著な事実である(甲第3号証及び同第21号証)。さらに、請求人は「HENNESSY」又は「ヘネシー」の文字を含む商標を多数所有しており(甲第66号証)、本件商標の指定商品と同一又は類似の商品である第8類指定商品についても引用の登録第3005630号商標の防護標章登録出願を行っている(甲第22号証)。
また、別件商標に係る異議申立決定及び特許庁における審査の過程において、引用各商標の著名性が認められ、別件各商標が引用各商標と出所混同のおそれがあると認められている(甲第54号証ないし同第65号証)。
以上に述べたところから、本件商標の出願当時である1999(平成11)年には、請求人の創業者の名に由来する「HENNESSY」及び「ヘネシー」の語は、請求人「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」の著名な略称及び請求人の業務にかかる酒類等の商品に使用される商標として、我が国の取引者・需要者において極めて著名となっていたというべきである。
(2)商標法4条1項19号について
本件商標は請求人が商品「ブランデー、コニャック」等の酒類に使用して著名な引用各商標と類似の商標であり、また引用各商標は請求人の創業者に由来する独自性の高い商標であることから、本件商標は請求人の著名な引用各商標を不正の目的をもって使用するものと推認される。
また、本件商標は引用各商標に化体した高い名声・信用・評判にフリーライドする目的で出願した商標というべきであり、引用各商標の出所表示機能を稀釈化し、その名声を毀損させる商標というべきである。
したがって、本件商標は請求人の業務にかかる著名な引用各商標と類似の商標であり、不正の目的をもって使用するものというべきである。
(3)商標法4条1項8号について
本件商標はその構成中に請求人の著名な略称というべき「ヘネシー」の文字部分を含むものである。また本件商標を出願することに関し、請求人の承諾を得ているものではない。
(4)商標法4条1項15号について
請求人の業務にかかる商品「ブランデー、コニャック」等の酒類に使用される著名な引用各商標と類似するというべき本件商標が、引用各商標の指定商品と高い関連性を有する本件商標の指定商品に使用された場合、本件商標に接する取引者・需要者は、本件商標をあたかも請求人若しくは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(5)商標法4条1項7号について
本件商標は著名な引用各商標に極めて類似する商標というべきであるところ、本件商標は引用各商標に化体した高い信用・評判・名声にフリーライドし、その稀釈化を引き起こすおそれがあるというべきである。
また、この本件商標を特定個人の商標として登録し使用することは、引用各商標に化体した顧客吸引力を無償で利用する結果を招来し、客観的に公正な取引秩序を維持するという商標法の法目的に合致しない。
以上のことから、本件商標は商取引の秩序を乱すものであり、延いては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する商標というべきである。
(6)結び
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法4条1項7号、同8号、同15号及び同19号に違反して登録されたものであり、同法46条1項1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出した。
本件商標の指定商品である「手動工具,手動利器」と引用商標の使用されている商品「コニャック,ブランデー」とは、生産者、販売者をはじめ、需要者、原材料、用途等に至るまで著しく異にする非類似の商品であるので、請求人が使用されている商品との関係を考慮すれば,被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させるものとは認められず、その商品が請求人の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。また、本件商標「HENNESY/へネシー」は、請求人「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」の略称を含む商標ということはできず、不正の目的をもって使用するものとも認められず、商標法4条1項7号、8号、15号及び19号のいずれにも該当しない。
1 被請求人は、本件商標の登録から遡ること約20年、昭和57年12月に、本願商標に関連する下記の商標を所有している。
(1)商標登録第1557330号(乙第1、2号証)
商 標 :へネシー
指定商品:手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く。)
(2)商標登録第1557331号(乙第3、4号証)
商 標 :へネシー/ミニカット
指定商品:手動利器、手動工具、金具(他の類に属するものを除く。)
両商標は昭和53年12月15日に出願され、昭和57年12月24日に登録、10年後の存続期間満了前において平成4年12月18日に登録商標の使用説明書を添付して存続期間の更新出願を行ない、平成5年7月29日に存続期間の更新登録がなされており、その後の存続期間満了時にも更新登録申請を行い、現在も商標権は存続している。
このような商標権を取得している事実からも明らかなように、被請求人においては、「ヘネシー」ブランドを被請求人の商標として重視していることが分かる。
2 上記両商標については、真に自己の業務に係る指定商品について出願し、登録されたものであって、実際に被請求人は両商標を現に使用を開始してから複数回にわたって理美容ばさみの価格改正を行っている。
これらの登録商標をステッカー(乙第5、6号証)、カタログ(乙第7号証)及び価格表(乙第8号証)に示すとおり、指定商品中手動利器に属する「理美容用はさみ」において、現在に至るまで永年にわたり使用してきている。
乙第9号証は、被請求人関連会社が独自に管理しており、何度かにわたって改正した価格の推移表(抜粋)である。
乙第10号証は理容室・美容室向けに提供する理美容ばさみの価格表の写で、昭和54年から平成12年9月30日までの改定時期において使用していたもので、理美容ばさみを必要とする美容室・理容室向けに提供し、購入する際、需要者の参考となるものある。
3 さらには、被請求人が理美容ハサミとして製造・販売している当該登録商標を付した商品は、そのデザインの良さが高く評価されている。
中でも、平成8年度には日用品部門で理美容ハサミ「三梳へネシーリスハンドS27」がグッド・デザイン中小企業庁長官特別賞を受賞している。乙第11号証は平成8年度グッド・デザイン中小企業庁長官特別賞の写である。乙第13号証は理美容ばさみ「三梳へネシーリスハンドS27」の平成8年度グッド・デザイン商品選定証の写、また、乙第14号証は理美容ばさみ「三梳へネシーリスハンドS27」の平成9年度グッド・デザイン商品選定証の写である。
乙第13号証及び同第14号証では、商品「理美容バサミ」について被請求人の登録商標「ヘネシー」(乙第1号証)を使用しているが、グッドデザイン賞を選定・審査する中小企業庁及び財団法人日本デザイン産業振興会は、商品「理美容バサミ」において「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」が商品「コニャック,ブランデー」に使用している商標「HENNESSY」と関係のある者の業務に係るものであるかのように、誤認混同を生じているとは思えないし、権威ある上記選定・審査団体において、不正の目的をもって使用する商品を上記賞に選定するなど、決してあり得ない。
すなわち、理美容ばさみ業界その他の日用品分野において、乙第1、2号証の「ヘネシー」製品は、被請求人が正当に取得した商標として周知のものとなっていると思料する。
このように、被請求人関連会社は昭和57年12月に商標権が発生してから、現在迄約18年もの間、永続的に登録商標を使用し、理美容ばさみ業界において、確固たる信用を築き上げてきた。また、これら登録商標は理美容ばさみ業界においては周知のものとなっている。
これらの経緯から、被請求人は既に権利化された登録商標「ヘネシー」及び「ヘネシー/ミニカット」を長年にわたり使用していることを踏まえて、今般更に英文字を付した「HENNESY/へネシー」を商標登録したことは、既に権利化され永年にわたって使用することにより培われたブランドの強化を図るために他ならない。
以上のとおり、被請求人は本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものでは決してなく、あくまでも自己の既存の登録商標のさらなる保護のために登録をしているのである。
被請求人は永年にわたって既に権利化された登録商標「ヘネシー」及び「ヘネシー/ミニカット」を本件商標の指定商品である「手動工具,手動利器」において使用している。したがって、請求人が主張するように、引用商標が洋酒業界において世界的に著名であるにしても、本件商標の指定商品「手動工具,手動利器」と引用商標の指定商品「コニャック,ブランデー」とは、商品の流通経路、販売状況、需要者において全く異なるうえ、取引にかかる通例や商慣習、取引実態も大きく異なることから、本件商標を指定商品「手動工具,手動利器」に使用してもその出所について混同は生じ得ない。
結局、本件商標は、不正の目的をもって使用する商標ではなく、また両商品は流通経路や取引の実態が全く異なり、本件商標を指定商品に使用しても、その出所について混同を生じ得ないのはもちろん、被請求人は既に取得した前述の登録商標を使用していることから、「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」が商品「コニャック,ブランデー」に使用する商標「HENNESSY」の出所表示機能を希釈化せしめるものではないと確信する次第である。請求人が自己の商標「HENNESSY/へネシー」の著名性を立証する証拠として提出した各書証においても、洋酒のラベルに書かれた「HENNESSY」の商標や「Ste.Jas.HENNESSY & Co.」の読みを説明する「ヘネシー」の片仮名文字が記載されていることは確認できるものの、単に「ヘネシー」と片仮名のみでの表記が、酒類を超えてはさみ類に至るまで著名であることまで立証しているようには見受けられない。「ソシエテ ジャ ヘネシー エ コンパニー」の商号の著名な略称と理解されない片仮名の「ヘネシー」は、いわゆる人格権を保護する規定の対象には当たらず、本件商標をはじめとする片仮名4文字を共通にする商標がすべて請求人会社に帰属するような解釈はなされないといえる。ましてや本件商標のローマ字表記部分は「HENNESSY」ではなく「HENNESY」で、これは、はさみ類の取引に当たる日本人にとっては「HENNESSY」よりもより自然な西洋の外来語風な表記で、洋酒の「HENNESSY/へネシー」に係る取引上の秩序を乱すに至る商標には該当しない。

第4 当審の判断
1 請求人の商標「HENNESSY」、「Hennessy」、「ヘネシー」の著名性について
(1)請求人が提出した甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は1765年に創設されたフランス国法人であること(甲第24号証ないし同39号証)。
(イ)請求人は、「コニャック(ブランデー)」の製造業者であり、その製造に係る「コニャック(ブランデー)」に「HENNESSY」、「Hennessy」、「ヘネシー」の各文字からなる商標(以下、これらの各商標を一括して「ヘネシー商標」ということがある。)を継続して使用し、かつ、ヘネシー商標をもって、請求人の「コニャック(ブランデー)」を宣伝していること(甲第23号証ないし同第44号証並びに同第47号証ないし同第48号証)。
(ウ)ヘネシー商標が付された請求人の「コニャック(ブランデー)」は、明治4(1871)年には、わが国に輸入され、以来、太平洋戦争中の一時期を除き継続して輸入され、昭和57(1982)年には輸入量が100,000ダースを越え、現在に至っていること(甲第23号証)。
(エ)ヘネシー商標が付された請求人の「コニャック(ブランデー)」は、世界におけるコニャックのトップブランドといわれていること(甲第29号証ないし同第32号証)。
(オ)請求人の業務に係るものではない「コニャック(ブランデー)」に、ヘネシー商標が使用された商品(いわゆる偽物)が大量に販売されているとの新聞報道がされたこと(甲第49号証ないし同第52号証)。
(2)以上及び請求人の提出した甲各号証を総合して検討すれば、請求人が「コニャック(ブランデー)」に使用する「HENNESSY」又は「Hennessy」の文字からなる商標及びこれらを片仮名で「ヘネシー」と表記する各商標は、本件商標の登録出願時(平成11年9月30日)及び登録査定時(平成14年5月31日)に我が国において、取引者・需要者のみならず、国民一般の間で広く知られ、著名となっていたということができるものである。
2 本件商標と請求人の前記商標との比較
本件商標の片仮名部分「ヘネシー」は、請求人の前記商標中、片仮名で「ヘネシー」と表記する商標と同一である。また、本件商標の欧文字部分「HENNESY」は、請求人の前記商標中、「HENNESSY」又は「Hennessy」の文字からなる商標との綴りの相違は末尾に近い位置の「S(s)」の文字が1字であるか2字重なっているかの差異のみであり、その差異は目立つものでなく、生ずる称呼も「ヘネシー」であり、同一のものである。
また、「ヘネシー」、「HENNESSY」、「Hennessy」の各語及び「HENNESY」の語が特定の語義を有する成語として知られているとの証左はなく、むしろ、これらの各語は、特定の語義を有しない造語というのが相当である。
してみると、本件商標とヘネシー商標とは、観念において区別できず、その称呼および外観において極めて紛らわしいものというべきである。
3 商品の出所の混同を生ずるおそれについて
以上によれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、需要者がその商品を請求人の業務に係る商品又は請求人と組織的又は経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤信して、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。
被請求人は、本件商標の指定商品である「手動工具,手動利器」と、請求人が取り扱う商品「コニャック(ブランデー)」とは、生産者、販売者をはじめ、需要者、原材料、用途等に至るまで著しく異にする非類似の商品である旨主張してる。
しかしながら、ヘネシー商標が国民一般の間で著名となっていること、前記「1」で認定・判断したとおりであり、一方、本件商標の指定商品には、一般家庭において使用される手動工具や手動利器も含まれており、その需要者層は広範囲であり、理美容ばさみ業界に関わる者に限られないことは明らかである。
また、被請求人は「ヘネシー」の文字からなる登録第1557330号商標、「ヘネシー」の文字を含む登録第1557331号商標の商標権者であって、これらの登録商標は、その指定商品中の「手動利器」に属する「理美容用はさみ」について、現在に至るまで永年にわたり使用した結果、理美容ばさみ業界において、確固たる信用を築き上げ、これら登録商標は業界においては周知のものであるから、被請求人が本件商標をその指定商品に使用しても、ヘネシー商標を連想又は想起させるものではなく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはない旨述べている。
しかしながら、請求人の上記商標は、「ヘネシー」、「ヘネシー/ミニカット」の文字よりなるものであって、被請求人のこれら商標が、「コニャック(ブランデー)」に使用する請求人のヘネシー商標を上回る著名性を備えているとする証拠はない。そうであれば、「HENNESSY」又は「Hennessy」の文字よりなる請求人の著名商標と外観において類似する「HENNESY」の文字を含む本件商標が、ヘネシー商標と混同するおそれはないとすることはできないといわなければならない。
4 結論
したがって、本件商標は、商標法4条1項15号に違反して登録されたものであるから、商標法46条1項の規定に基づき、その商標登録は、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-07-01 
結審通知日 2004-07-05 
審決日 2004-07-16 
出願番号 商願平11-89504 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z08)
最終処分 成立  
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 2002-05-31 
登録番号 商標登録第4572268号(T4572268) 
商標の称呼 ヘネシー 
代理人 秋山 佳子 
代理人 秋山 泰治 
代理人 田中 克郎 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 倉内 義朗 

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