• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
審判 全部無効 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z05
管理番号 1103228 
審判番号 無効2003-35330 
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-08-11 
確定日 2004-08-25 
事件の表示 上記当事者間の登録第4533710号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4533710号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4533710商標(以下「本件商標」という。)は、「POISON」の文字を標準文字により横書きしてなり、平成12年7月25日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同14年1月11日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2055741号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和58年7月27日に登録出願、第4類「せっけん類(薬剤に属するものを除く)歯みがき、化粧品(薬剤に属するものを除く)香料類」を指定商品として、同63年6月24日に設定登録され、その後、平成10年6月9日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

3 請求人の主張の要旨
請求人は、結論と同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第134号証を提出している。
(1)引用商標の著名性について
請求人である「Parfums Christian Dior」(パルファン クリスチャン ディオール)は、フランスの著名なファッションデザイナーである「Christian Dior(クリスチャン ディオール)」を創始者とするフランス国法人であり、1947年に化粧品及び香料類の製造販売をその業とする企業として設立されたものである。
香水類又はオーデコロン「POISON」は、1986年5月から販売が開始されたものであり、香水「POISON」は、数々の雑誌において1980年代を代表する商品として紹介されている(甲第14号証、同第18号証、同第22号証、同第24号証及び同第29号証)
この香水類又はオーデコロン「POISON」に続きそのシリーズ商品として、より優しい香りの「TENDRE POISON」が1994年2月に、また、より官能的な香りの「HYPNOTIC POISON」が1998年9月に発売されている。我が国において請求人は、引用商標のほかにも、この「TENDRE POISON」を商標登録している(甲第5号証及び同第6号証)。
上記各商品の販売店への卸売価格における累計売上高は、2002年4月現在において「POISON」が約35億円、「TENDRE POISON」が約20億円、「HYPNOTIC POISON」が約2億円となっている(甲第60号証)。さらに、これらの各商品は我が国のみでなくヨーロッパ諸国やアメリカにおいても好調な販売実績を残している(甲第61号証)。
この請求人の業務にかかる商品「POISON」、「TENDRE POISON」、及び「HYPNOTIC POISON」は、各種書籍、雑誌、及びインターネット上のHP等において数多く取り上げられ、いずれの商品も高品質、高級感等の信用が形成されており、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、その発売以来現在においても著名に至っているというべきである(甲第13号証ないし同第40号証、甲第55号証及び同第56号証、並びに甲第124号証ないし同第133号証)。
また、諸外国においてもこの「POISON」は、商標登録されており、請求人の業務にかかる商品に使用される商標として認識されているといえる(甲第62号証ないし同第114号証)。
以上のように、「POISON」は、本件商標の登録出願及び登録査定時である平成12年には既に、請求人の業務に係る商品である香水等の化粧品を表示するものとして、我が国においてはもちろんのこと、世界的に極めて高い信用が形成され著名に至っているというべきである。
(2)指定商品の関連性について
本件商標及び引用商標の指定商品は、前記のとおりである。
まず、一般的に「薬剤」の一部は「化粧品」の原材料として使用されるものであり、その生産部門、原材料において両商品は関連性を有しているというべきである。
また、両商品は、共に薬局等の同一の販売店において販売されており、大型店舗においても同一の売り場にて取り扱われているというのが実際の販売形態の実情である。
本件商標の指定商品「薬剤」には、例えば「日本薬局方の薬用せっけん、薬用ベビーオイル、薬用ベビーパウダー、浴剤」が含まれており、一方、引用商標の指定商品中「せっけん類」には「薬用せっけん」が、また「化粧品」には「ベビーオイル、ベビーパウダー、バスオイル、バスソルト」が含まれているものである。このように両商標の指定商品は、その用途及び需要者層もまた同じくするものというべきである。
昨今、我が国における化粧品メーカー又は医薬品メーカーはそれぞれ互いの分野に事業を展開する傾向があるといえ、医薬品メーカーが化粧品の製造販売を行い、化粧品メーカーが医薬品事業を展開するケースが見受けられる(甲第116号証ないし同第122号証)。したがって、被請求人は、実際にその業務として医薬品と並んで化粧品等の製造販売を行っているというべきである。
このように、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は、同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認されるおそれあり、非常に高い関連性を有する商品というべきである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
(ア)外観
本件商標及び引用商標はそれぞれ同一のアルファベット「POISON」からなるものであり、その構成文字を同じくし基本的構成を共通にするものである。引用商標における片仮名文字「プワゾン」はアルファベット「POISON」から生ずる称呼の一つである仏語読みの称呼を片仮名文字にて表したものであり、引用商標においては欧文字「POISON」がその構成の要部として認識されるというべきである。
したがって、取引者・需要者が時と所を異にして両商標を観察した場合、両者は、その外観的印象において極めて近似するものとして認識され、互いに相紛れるおそれを有し、本件商標は、引用商標とその構成の軌を一にする同一又は類似の商標として認識されるというべきである。
(イ)称呼
称呼においては、本件商標から英語読みの「ポイズン」との称呼しか生じないとする特別な事情は何ら存在せず、本件商標からは英語的発音である「ポイズン」との称呼と共に仏語的発音である「プワゾン」又は「ポワゾン」との称呼が生ずるというべきである(甲第7号証及び同第8号証)。
一方、引用商標からも同様に「プワゾン」、「ポワゾン」、又は「ポイズン」との称呼が生ずるというべきである。
したがって、本件商標及び引用商標は、同一の称呼を生ずる類似の商標として認識されるというべきである。
(ウ)観念
観念においては、本件商標及び引用商標は共に、その構成文字から「毒、毒物、毒薬」等の意味合いを喚起させるものである(甲第7号証及び同第8号証)。
したがって、本件商標と引用商標とは、同一の観念を生ずる商標というべきである。
(エ)小括
以上のことから、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼及び観念の各要素において近似した印象において認識される同一又は類似の商標というべきである。
(4)商標法第3条第1項第3号及び商標法第4条第1項第16号該当について
本件商標は、「POISON」の欧文字を普通に書してなる標準文字商標であるところ、その構成中「POISON」の欧文字は、英語又は仏語で「毒、毒物、毒薬」等の意味を有する文字部分である(甲第7号証及び同第8号証)。
また、特許庁商標課編集による「商品・サービス国際分類表[第8版]」には、第5類の指定商品として英語表記「Poisons」、日本語訳「毒薬」、類似群「01BO1」との記載がみられる(甲第134号証)。この指定商品「Poisons/毒薬」は、本件商標の指定商品「薬剤」に含まれるものである。
以上のことから、本件商標「POISON」をその指定商品「薬剤」のうち「毒薬」に使用した場合には、本件商標は、単に商品の効能を表示したにすぎず、商品の効能を普通に用いられる方法で表示する普通名称として認識され、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
また、本件商標の指定商品中「毒薬」以外の「薬剤」に使用するときには、その商品の品質につき誤認を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当するというべきである。
(5)商標法第4条第1項第19号該当について
上述したように、本件商標と引用商標とは、同一又は類似の商標というべきである。また、引用商標は、本件商標の登録出願時には、既に香水等の化粧品に関し極めて広く知られていた著名商標というべきである。
さらに、被請求人は、化粧品について200件を超える商標登録及び商標登録出願を有しており、また被請求人目身のホームページにおいては、その事業内容に化粧品などの製造販売との記載がみうけられ、被請求人は、化粧品の製造販売を業務として行っているといえる(甲第115号証及び同第123号証)。また、後述するように、本件商標の指定商品「薬剤」は、引用商標が著名性を獲得している香水等の化粧品とその販売部門、生産部門、原材料、需要者の範囲等を同じくする非常に関連性の高い商品である。
以上のことから、被請求人は、本件商標出願時に著名な引用商標の存在を認識していたものと推認され、偶然に著名な引用商標と同一又は類似の本件商標を出願したとは考えにくいものである。
したがって、本件商標は、著名な引用商標と同一又は類似であり、出所混同のおそれまではなくとも出所表示機能を希釈化させ、また、その名声を毀損させる目的をもって商標出願されたというべきであり、「不正の目的をもって使用するもの」というべきである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。
(6)商標法第4条第1項第7号該当について
上述したように、著名商標である引用商標は、請求人による不断の努力によって高い名声・信用・評判が維持されており、本件商標は、引用商標が有する高い名声・信用・評判にフリーライドするものであることが明らかであり、引用商標の高い名声・信用・評判を希釈化させるおそれがある。
すなわち、本件商標の登録を有効なものとして維持することは、引用商標に化体した信用力、顧客吸引力を無償で利用する結果を招来し、客観的に公正な商品又は役務に関する取引秩序を維持するという商標法の法目的に合致しないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、引用商標に化体した名声・信用・評判を僭用して不正な利益を得るために使用する目的でなされたというべきであり、本件商標は商取引の秩序を乱すものであり、ひいては国際信義に反するものとして、公序良俗を害する商標というべきである(昭和58年審判第19123号審決、東京高裁平成10年(行ツ)11号・12号判決参照)。
以上のことから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべきであり、商標法第4条第1項第7号に該当するというべきである。
(7)商標法第4条第1項第15号該当について
最高裁判所は、別件商標に係る審決取消請求事件において、出所混同のおそれの有無を判断する際の要素の一つとして引用商標の周知著名性の程度をあげている(平成12年(行ヒ)第172号最高裁第2小法廷判決:甲第57号証)。
請求人の業務にかかる香水等の化粧品に使用される商標として著名な引用商標と類似するというべき本件商標が、引用商標の指定商品と非常に密接な関連性を有するというべき本件商標の指定商品に使用された場合、上記判例と同様に、引用商標の著名性が高度であることを考慮すれば、本件商標に接する取引者・需要者は、恰も請求人若しくは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかと誤認し、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
(8)被請求人の答弁に対する弁駁の理由
(ア)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号について
被請求人は、「このため、本件商標を自ら使用する場合には、『poison』に『free』などの打ち消し語を付け使用すると考える方が自然といえるからである。」旨主張している。かかる主張は、被請求人は、人畜無害な商品に本件商標「POISON」を使用した場合に、その商品が「毒」ではないことを示すため、すなわち需要者が品質誤認を生じないようにするために、「free」などの打ち消し語を付けて使用すると主張するのであるから、そのことは、まさに本件商標のみで使用した場合に品質誤認が生ずることを自ら認めているというべきものである。
(イ)商標法第4条第1項第19号及び同第7号について
被請求人は、「登録商標『ホイ』、『ポイ』、『ごきぶりホイホイ』が請求人により希釈化される“おそれ”がある」ことから、本件商標が「請求人の著名商標と類似で不正の目的で使用するものであるとの主張は全く理由のないものである」、また「商取引の秩序を乱したり、国際信義に反するものとして、公序良俗を害する商標であるとの主張には全く理由がないといえる」旨主張している。
本件無効審判請求においては、本件商標「POISON」の無効理由該当性が問題となっているのであって、答弁書中における被請求人名義の他商標の希釈化のおそれをもってして、本件商標が引用商標の希釈化を引き起こすおそれがないとする被請求人の主張は、本件無効審判事件と関連性が弱いというべきであり、このような被請求人の主張は受け入れ難いものである。
(ウ)商標法第4条第1項第15号について
被請求人は、乙第1号証ないし同第3号証並びに同第6号証を根拠に、「今回の出所の混同についての請求人主張にも何ら理由のないことは明白である。したがって、請求人の出所の混同についての主張には全く理由がないものである」旨主張している。
しかしながら、被請求人の提出に係る乙第1号証ないし同第3号証と本件審判事件とは事案を異にするというべきであり、また、本件商標に係る異議決定である乙第6号証によってもいまだ、本件商標は、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものと思料する。したがって、乙第6号証を根拠に本件商標が出所混同のおそれがないとする被請求人の主張は受け入れ難いものである。
(9)結び
以上に述べたとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号、同第15号、同第16号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件商標は、これを無効とすべきものではなく、登録とする、請求人の費用は請求人の負担とする」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第6号証を提出している。
請求人の主張は、大きくは3つに大別できる。つまり、ダイリューション、フリーライド、出所の混同の3つである。しかしながら、請求人の主張には、それぞれ理由がなく、登録を無効とする根拠がないことを以下のとおり述べる。
なお、請求人は、普通名称と認識されること、及び商品の品質誤認を主張しているが、このようなことは、特許庁において審査・審理済みのことであり、被請求人がわざわざ主張するまでも全く理由がないものである。
(1)商標法第4条第1項第19号
請求人は、「理由の要点」でその理由を述べているが、被請求人は、むしろ、全く逆の発想で、“人畜無害”の環境や人にやさしいイメージの“誘引剤を使用した粘着捕獲器「ごきぶりホイホイ」”、“人畜にやさしく害虫に選択的に効果を発揮するピレスロイド系殺虫剤配合の家庭用殺虫剤”を25年間継続的に販売しているのである。このため、本件商標を自ら使用する場合には、「poison」に「free」などの打ち消し語を付け使用すると考える方が自然といえるからである。その上、以下に述べるように登録商標「ホイ」、「ポイ」、「ごきぶりホイホイ」が請求人により希釈化される“おそれ”があるのである。
したがって、請求人の「POISON」ブランドにフリーライド希釈化せんとする“必要性”はもとより“おそれ”が、被請求人にないことは明白である。
更に、被請求人は、「POISON」なる香水を登録出願時全く知らなかったし、むしろ、被請求人は、昭和48年に発売の粘着捕獲器の著名な商品名「ごきぶりホイホイ」ブランドにフリーライド希釈化せんとする動きを封じ込めるために、「ホイ」「ポイ」「ホイホイ」「ポイポイ」「HOIHOI」「HOYHOY」「POYPOY」「ごきぶりホイホイ」「ゴキブリホイホイ」など「ホイ」「ポイ」(ポイは、POIかPOYとローマ字若しくは英語では表記する)を標章中に有する商標出願を行い、多数の商標権を取得(乙第4号証及び同第5号証)しているのである。
つまり、昭和48年に発売の粘着捕獲器の著名な商品名「ごきぶりホイホイ」のヒットに便乗して、標章中に「ポイ」「ホイ」を有する商標出願を行う企業があとをたたず、請求人も同じことを日本市場で展開しているのである。この事実を請求人は否定することはできないであろう。それ故、たとえ知られていたとしても、この「POISON」なる香水は、請求人の証拠によれば、主に複数の業界紙、雑誌に掲載されていることが示されているだけで、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞、産経新聞の四大紙、テレビコマーシャル、商工会議所など公的機関の証明がなく、マイナーなブランドであると考えられるからこそ、被請求人に気付かれず、請求人商標「POISON/プワゾン」に対する無効審判請求を免れたのである。その上、被請求人が請求人に本件商標の買取を求めたり、請求人に代理店契約を強要するような”必要性”はもとより“おそれ”は、前記商標権「ポイ」「ホイ」…(中略)…「ゴキブリホイホイ」の事実から全くないといえる。請求人のブランドは「プワゾン」ということで、被請求人ブランドと初めて区別できるのである。したがって、請求人の著名商標と類似で不正の目的で使用するものであるとの主張は全く理由のないものである。
(2)商標法第4条第1項第7号
請求人は、「理由の要点」でその理由を述べているが、被請求人は、むしろ、全く逆の発想で、“人畜無害”の環境や人にやさしいイメージの“誘引剤を使用した粘着捕獲器「ごきぶりホイホイ」”、“人畜にやさしく害虫に選択的に効果を発揮するピレスロイド系殺虫剤配合の家庭用殺虫剤”を25年間継続的に販売しているのである。このため本件商標を自ら使用する場合には、「poison」に「free」などの打ち消し語を付け使用すると考える方が自然といえるからである。その上、前記のように登録商標「ポイ」、「ホイ」…(中略)…「ゴキブリホイホイ」が請求人により希釈化される“おそれ”があるのである。
したがって、請求人の「POISON」ブランドにフリーライド希釈化せんとする“必要性”はもとより“おそれ”が、被請求人にないことは明白である。むしろ、希釈化を行っているのは請求人であるといっても過言ではないのである。したがって、商取引の秩序を乱したり、国際信義に反するものとして、公序良俗を害する商標であるとの主張には全く理由がないといえる。
(3)商標法第4条第1項第15号
請求人は、「理由の要点」でその理由を述べているが、請求人の本件商標に対する異議申立てについての登録維持決定(乙第6号証)はもとより、乙第1号証ないし同3号証からも、また今回の出所の混同についての請求人主張にも、何ら理由のないことは明白である。
したがって、請求人の出所の混同についての主張には全く理由のないものである。
(4)乙第7号証ないし同第9号証の追加
乙第7号証は、人にやさしい特殊誘引剤入り粘着捕獲器「ごきぶりホイホイ」が、新発売より今年で30年目であることを立証する。
乙第8号証は、今年9月2日付けでホイ、ポイ、ホイホイほか「ごきぶりホイホイ」の商標権が、「ごきぶりホイホイ」の製造販売業者であるアース製薬株式会社へ譲渡されたことを立証する。
乙第9号証は、被請求人の平成11年ないし同14年度の宣伝費が毎年90億円前後であり、「ごきぶりホイホイ」を含めたアース商品の宣伝を強化して知名度の向上につとめていることを立証する。
なお、被請求人は、請求人の行為こそ、ホイ、ポイ、ホイホイほか「ごきぶりホイホイ」ブランドを希釈化につながることを既に述べているが、「POISON」中の「SON」は、息子という意味を有しており、「POISISTER」(姉妹)「POIBROTHER」(兄弟)「POIFATHER」(父)「POIMOTHER」(母)という「POI」ファミリーを想定させることも、希釈化につながる理由の一つとして挙げることができるのである。
(4)結び
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号、同法第4条第1項第7号、同第15号、同第16号、同第19号に違反して登録されたものということはできず、同法第46条第1項第1号の規定に基づき、その登録を無効とすべきものではない。

5 当審の判断
本件商標は、前記のとおり「POISON」の文字よりなるところ、該文字は、「毒、毒薬、毒物、劇薬」を意味するものであることが認められる(1998年1月10日株式会社小学館発行「ランダムハウス英和大辞典第2版」、甲第8号証)。
ところで、1998年1月16日株式会社南山堂発行「南山堂医学大辞典」の「毒薬」[英仏poison 独Gift]の項に、「医薬品の中で毒薬とされるものは、臨床上、中毒量と薬用量との幅が狭く、かつ薬理作用が激しいため、生命維持に障害を与えるか、もしくはその恐れのある薬物で、厚生大臣の指定(薬事法)するものをさす。」と記載されている。
そして、薬事法(昭和35年8月10日法律第145号)は、その第7章「医薬品等の取扱い」第1節「毒薬及び劇薬の取扱い」に第44条ないし第48条を措き、第44条に「毒性が強いものとして厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて指定する医薬品(以下「毒薬」という)は、・・・」と「毒薬」について規定している。
また、標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関する1957年6月15日のニース協定の国際分類(以下「国際分類」という。)の第7版(1997年(平成9年)1月1日発効)及び第8版(2002年(平成14年)1月1日発効)に、第5類に属する商品として、英語表記「Poisons」、日本語訳「毒薬」が掲載されており、国際分類は、1999年(平成11年)7月現在で、130以上の国、地域で使用されている(特許庁商標課編「商品・サービス国際分類表」参照)。
以上によれば、薬事法における「医薬品」には「毒薬」が含まれていて、これを英語では「poison」と表記するものであることが英和辞典、医薬品の専門書に掲載され、世界の多くの国、地域で使用されている国際分類には「poisons」の名称で掲載されているのであるから、「poison」の文字が医薬品に含まれる「毒薬」を意味するものであることは、本件商標の登録査定時(平成13年11月9日)には、既にこの種の商品を取り扱う業界の取引者、需要者の間における共通の認識として広く浸透していたものと判断するのが相当である。
してみれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、これを「毒薬」を意味するものと理解し、自他商品の識別標識とは認識しないものというべきであるから、本件商標は、その指定商品中「毒薬」については、商品の品質、効能を表示するに止まり、上記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質について誤認を生じさせるおそれが あるものと認められる。
したがって、その余の点について判断するまでもなく、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲




審理終結日 2004-06-25 
結審通知日 2004-06-29 
審決日 2004-07-14 
出願番号 商願2000-88420(T2000-88420) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z05)
T 1 11・ 22- Z (Z05)
T 1 11・ 272- Z (Z05)
T 1 11・ 222- Z (Z05)
T 1 11・ 13- Z (Z05)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
三澤 惠美子
登録日 2002-01-11 
登録番号 商標登録第4533710号(T4533710) 
商標の称呼 ポイズン 
代理人 田中 克郎 
代理人 宮川 美津子 
代理人 稲葉 良幸 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ