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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Z09
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z09
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z09
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Z09
管理番号 1103172 
審判番号 無効2003-35343 
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-10-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-08-22 
確定日 2004-08-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第4563557号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4563557号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成13年3月12日に登録出願され、第9類「電気通信機械器具,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品,電池,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,録音済み磁気テープ・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他のレコード,録画済み磁気テープ・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の録画済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、平成14年4月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の引用する商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第964053号商標は、「MGM」の欧文字を横書きしてなり、昭和44年10月28日に登録出願され、第26類「印刷物,書画,彫刻,写真,これらの附属品」を指定商品として、同47年5月24日に設定登録されたものである。なお、指定商品については、平成14年5月15日にした書換登録申請により、第6類「金属製彫刻」、第9類「映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ」、第16類「印刷物,書画,写真,写真立て」、第19類「石製彫刻,コンクリート製彫刻,大理石製彫刻」及び第20類「額縁,石こう製彫刻,プラスチック製彫刻,木製彫刻」に書換登録(登録日平成14年7月3日)がされたものである。
同じく登録第4220659号商標は、「MGM」の欧文字を横書きしてなり、平成8年7月3日に登録出願され、第9類「映写フィルム,録音済みの磁気カード・磁気シート及び磁気テープ,録音済みのコンパクトディスク,その他のレコード,メトロノーム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,計算尺」を指定商品として、同10年12月11日に設定登録されたものである。(以下、2件をまとめて「引用商標」という。)

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第8号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるから、同法第46条に基づき、その登録は無効とされるべきものである。
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が抵触することは明らかである。そこで、両商標の類否について以下に考察する。
まず、外観においては、引用商標が欧文字「MGM」から成るものであるのに対し、本件商標は、別掲に示されるように、上部の欧文字「M」をデザイン化したUFOを想起させるような図形と、下部の文字との組み合わせにより構成されるものであるが、その態様から図形部分と文字部分は分離して捉えるのが相当であり、その要部は文字部分となる。そして、当該文字部分は、黒地に白抜きの欧文字「MG」と、近時、欧文字により構成された商標は一般的にロゴ化される傾向にあることから容易に「M」と認識されるものとの結合として、「MGM」と把握されるとするのが極めて自然である。
よって、本件商標は、その要部である文字部分について、引用商標と外観において類似するといえるものである。
次に、称呼においては、引用商標はその構成から「エムジーエム」の称呼を生ずることが明らかであるが、本件商標についても、上述の構成からすれば、その文字部分をもって同一の「エムジーエム」の称呼を生ずるとするのが極めて自然である。
よって、両商標は、称呼を同一にするものである。
さらに、観念については、両商標とも造語であって、本来は特定の意味合いを有するものではない。しかしながら、商標「MGM」が米国の映画制作会社「MGM」を表示するものとして世界的に著名である事実を鑑みるに、上述の構成からなる両商標に接した取引者及び需要者が、「米国の映画制作会社MGM」を連想するのがごく自然であることからすれば、両商標は具体的な観念を共通にするものである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念の全ての面において相互に類似する。
以上により、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 商標法第4条第1項第8号について
<「MGM」の著名性について>
請求人「メトロ‐ゴールドウィン‐メイヤー ライオン コーポレーション(Metro‐Goldwyn‐Mayer Lion Corporation)」は、米国カリフォルニア州法人であるMGMグループの基幹会社「メトロ‐ゴールドウィン‐メイヤー インコーポレーテッド(Metro‐Goldwyn‐Mayer Inc.)」(以下「MGM社」という。)の子会社であって、MGMグループの商標を管理・保全する役割を担うことから、MGMグループを代表して無効審判を請求するものである。
MGMグループの基幹会社MGM社は、1924年に映画製作会社として設立された。その後現在に至るまで、実に約80年にわたって、その略称である「MGM」の名と咆哮するライオンの画像のもとに、「風と共に去りぬ」(1939年)、「オズの魔法使い」(1939年)、「花嫁の父」(1950年)、「雨に唄えば」(1952年)、「ベンハー」(1959年)等、世界中の誰もが知る歴史に残る名作映画の数々を製作し、映画製作を通じて米国のエンターテイメントを世界に発信し、その歴史を形作ってきたものである。
さらに、今日においては、映画業界におけるその名声に甘んじることなく、テレビ、ビデオ、音楽といった様々なメディアの製作をも手掛け、マルチメディアカンパニーとして精力的にその事業の範囲を拡大しており、まさに、名実ともに米国におけるエンターテイメントのリーダーカンパニーとしての地位を不動のものとしている(甲第4号証及び甲第5号証)。
その長い歴史と偉大な功績は、甲第5号証に示すとおり、「MGM」の題名のもとに一冊の書籍が出版される程のものなのである。
そして、上述のように、MGM社は、その略称「MGM」の名のもとに上記事業を展開したものであるから、遅くとも1960年代には、「MGM」はその略称として世界的に広く知られるに至り、もちろん我が国においても「MGM」はあらゆる映画を通じて需要者の間に広く浸透したものであり、その著名性を疑う余地はない。
なお、本件商標の出願時である2001年(平成13年)当初における「MGM」の著名性については、マーケティング研究で定評のある米国の季刊誌「Brand Marketing」(1999年春号)において、MGM社を「MGM」として取り上げ、その歴史と功績を高く評価し、「米国における映画産業の象徴」として位置づけていることからも裏付けられるものである(甲第6号証)。
さらに、米国の映画製作会社の団体である「Motion Picture Association(MPA)」(甲第7号証)の代表者であるウィリアム エム マーレイ氏も、自らの署名のもとに「MGM」の著名性を認めている(甲第8号証)。
また、本件商標の出願時である2001年(平成13年)当初から現在まで、MGM社は、MGMグループとしてその傘下にあらゆるメディア製作に係る子会社を有している。その地理的範囲は世界各国に及び、その数は米国内で16社、米国以外で11社、合計で実に27社にものぼるものであり、その事業規模の大きさを感じさせる(甲第9号証)。そして、各子会社は、著名なMGMグループの一員であることの明示として、その名称の頭に「MGM」を有するものである。
なお、1998年(平成10年)から2002年(平成14年)までのMGM社の年間収益は、以下に示すとおりである(甲第10号証)。これらの数字から、MGMの世界的規模での事業展開を伺い知ることができる。
1998年度 約1240億7230万円(12億4072万3千ドル) 1999年度 約1210億9790万円(11億4243万3千ドル) 2000年度 約1348億8172万円(12億3744万7千ドル) 2001年度 約1692億7878万円(13億8753万1千ドル) 2002年度 約2034億5455万円(16億5410万2千ドル) さらに、MGM社は、その事業展開の一環として世界各地で「MGM」を使用した広告・宣伝活動を展開しており、1999年(平成11年)から2002年(平成14年)にかけての広告・宣伝費用は以下のとおりである。
1999年度 約270億円(2億7000万ドル)以上
2000年度 約220億円(2億2000万ドル)以上
2001年度 約340億円(3億4000万ドル)以上
2002年度 約400億円(4億ドル)以上
また、MGMは、その著名商標「MGM」についての保護を万全とすべく、日本を含む世界各国において商標「MGM」をはじめとして「MGM」関連の商標登録を保有しており、その数は実に416件にも及ぶものである(甲第11号証)。
以上のとおり、「MGM」は、MGM社の著名な略称であって、本件商標はその承諾を得ることなく当該略称を含むものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
上述のように、商標「MGM」が、本件商標の出願時以前から、MGM社の業務を表示するものとして著名であることは疑う余地のない事実である。
そして、著名商標「MGM」は、MGM社の略称であるが、その単語自体が特定の観念を有するような既成語ではなく、造語商標であって、また、その使用の態様からハウスマークといえるものである。
また、上述のように、MGM社は、マルチメディアカンパニーとして世界各地で幅広く多角的にその事業を展開するものである。
さらに、本件商標の指定商品の全てが、MGM社が上述のマルチメディアカンパニーとしての事業において著名商標「MGM」を使用する商品と抵触する関係あるいは極めて密接な関係にあることは明らかである。
本件商標は、前記したとおり、欧文字「M」をデザイン化したUFOを想起させるような図形部分と、黒地に白抜きの欧文字「MG」とやや図案化された欧文字「M」との結合として「MGM」と把握される文字部分との組み合わせにより構成されるものであることから、著名商標「MGM」をその構成に含むものである。
上述の事実から総合判断すれば、本件商標が指定商品に使用された場合に、本件商標に接した取引者及び需要者が、本件商標の文字部分に注目して記憶にある著名商標「MGM」を連想し、MGM社と経済的又は組織的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認して、その出所について混同するおそれは極めて大きいと言わざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
4 商標法第4条第1項第19号について
本件商標が出願されたのは平成13年(2001年)3月12日であり、その時点で商標「MGM」が世界的な著名性を有していたことは、上述の事実より明らかである。
これに当該著名商標がMGM社の略称としての造語であることを考え合わせれば、被請求人が、本件商標の出願当初において、当該指定商品について、あえて、「MGM」と認識される文字部分を要部とする本件商標を採択、使用することは、偶然の一致とは認め難いものである。
よって、被請求人は、事前調査等により本件商標が普通に用いられる「MGM」の欧文字のみでは登録され得ないことを知ったうえで、著名商標「MGM」に似せてロゴ化した本件商標を登録したものであって、MGM社のマルチメディア業界における名声へのただ乗り(フリーライド)という不正の目的の存在を推認させるとともに、ひいては著名商標「MGM」の希釈化(ダイリューシヨン)にもつながるものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
5 利害関係の存在について
MGM社は、上述のように商標「MGM」を現に使用しており、本件商標の使用による業務の混同を防止する必要がある。請求人は、MGMグループの一員として、その商標を管理・保全する役割を担う子会社であることから、MGMグループを代表して本件無効審判を請求するものである。
したがって、請求人は本件無効審判を請求するについて利害関係を有する。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第5 当審の判断
本件商標は、別掲に示したとおりの図形と文字との結合よりなるところ、その上部に大きく描かれた図形は、何を表現したものか理解し難いものであって、該図形部分からは特定の称呼、観念を生ずるものとは認められないものであり、また、その下部に書された「MG」の文字及びその右側の図形と認められる部分との関連性も認められないものである。
しかして、請求人は前記のとおり、本件商標から「エムジーエム」の称呼を生ずる旨主張しているが、その構成中の欧文字「MG」の右側に配置されている構成部分は、これを客観的にみた場合、直ちに特定の文字を認識し得るものとはいい難いばかりでなく、その左側に黒塗りの長方形内に白抜きで書された「MG」の文字とは、その表現方法が明らかに異なるものであるから、該部分は、独特の構成からなる図形として理解、認識されるものとみるのが自然であって、該「MG」の文字とつなげて「エムジーエム」の称呼をもって取引に資されることはないと判断するのが相当である。他に、該部分を「M」とみるべき証左も何ら示されていないものである。
そうすると、本件商標から「エムジーエム」の称呼及び「米国の映画製作会社MGM」の観念を生ずるものとし、そのうえで、本件商標と引用商標とが称呼及び観念において類似するものであるとする請求人の主張は、採用することがきない。
その他、本件商標と引用商標とを類似のものとすべき事由は見出せない。
次に、本件商標は、その構成から「MGM/エムジーエム」を認識させるものではないという上記の認定を妥当とするところであるから、本件商標が他人の名称の著名な略称を含む商標に該当するものとは認められない。
また、前記のとおり、本件商標は、引用商標とは十分に区別し得る別異の商標といえるものであるから、例え、引用商標「MGM」が米国の映画製作会社を表示するものとして需要者の間に相当程度知られていたとしても、商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合に、これに接する取引者、需要者が、直ちに引用商標を連想、想起するものとは考えにくく、その商品がMGM社又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあったものということはできない。
さらに、以上のことからすれば、本件商標は、請求人がその業務に係る商品及び役務について使用する引用商標の出所表示機能を希釈化させたり、または、その名声を毀損させるなど不正の利益を得る目的をもって出願されたものとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
本件商標


審理終結日 2004-03-24 
結審通知日 2004-03-29 
審決日 2004-04-14 
出願番号 商願2001-21699(T2001-21699) 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Z09)
T 1 11・ 271- Y (Z09)
T 1 11・ 222- Y (Z09)
T 1 11・ 23- Y (Z09)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 2002-04-26 
登録番号 商標登録第4563557号(T4563557) 
商標の称呼 エムジイ 
代理人 浅村 肇 
代理人 望月 良次 
代理人 高原 千鶴子 
代理人 浅村 皓 

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