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審決分類 審判 一部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Z09
審判 一部無効 称呼類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Z09
審判 一部無効 観念類似 無効とする(請求一部成立)取り消す(申し立て一部成立) Z09
管理番号 1101576 
審判番号 無効2003-35372 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-09-05 
確定日 2004-07-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4560955号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4560955号の指定商品中第9類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」についての登録を無効とする。 その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4560955号商標(以下「本件商標」という。)は、平成
13年2月13日に登録出願され、「Harvest-Drive」の欧文字を標準文字で書してなり、第9類「電気通信機械器具,電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品,電池,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,録音済み磁気テープ・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他のレコード,録画済み磁気テープ・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の録画済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲームおもちゃ」、第35類「広告,トレーディングスタンプの発行,経営の診断及び指導,市場調査,商品の販売に関する
情報の提供,ホテルの事業の管理,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約講読の取次ぎ,書類の複製,速記,筆耕,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,文書又は磁気テープのファイリング,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,通信販売の注文・受付・発注に関する事務処理の代行,電子計算機端末による商品の受注・発注事務の代行」及び第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入あっせん,前払式証票の発行,ガス料金又は電気料金の徴収の代行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供,骨董品の評価,美術品の評価,宝玉の評価,企業の信用に関する調査,慈善のための募金,中古自動車の評価,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与,商品の販売又はサービスの提供に関する料金の徴収の代行,クレジットカードの利用者に代わってする支払代金の清算,クレジットカードの発行者に代わってする支払代金の清算,電子マネー利用者に代わってする支払代金の決済,デビットカード利用者に代わってする支払代金の決済,クレジットカードの発行の取次ぎ,金融に関する情報の提供,金融に関するコンサルティング,金融に関する調査・分析・予想,税務相談及び税務代理に関する情報の提供」を指定商品、役務として、同14年4月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
登録第2677680号商標(以下「引用商標」という。)は、平成1年5月9日に登録出願され、「HARVEST」の欧文字を横書きしてなり、第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具、電気材料」を指定商品として、同6年6月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標中の第9類の『全指定商品』又は『電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品』についての登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第21号証を提出した。
(1)本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
本件商標は、「Harvest-Drive」の欧文字を書してなるものであるところ、構成中の「Harvest」の語は、「刈入れ、収穫(する。)」等の語義を有する英語であり、「Drive」の文字(語)は、本件商標の指定商品中の「電子応用機械器具及びその部品」を取り扱う商品分野においては、「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置」の普通名称として普通に使用され、良く知られているものである。
このことは、甲第1号証ないし同第4号証以外にも、例えば、第4659305号登録商標の指定商品の表示中に「コンピュータ用ハードディスクドライブ,DVD-ROMドライブ,CD-RWドライブ,CD-ROMドライブ,フロッピーデスクドライブ」が「電子応用機械器具及びその部品」の概念に属する商品の普通名称として登録されている事実があり、同じく第4607727号登録商標の指定商品中には「携帯用コンピュータ用ディスクドライブ」が商品の普通名称として登録されている事実もあり、これら表示の他、「CD-ROMディスク駆動装置、電子計算機用ディスク駆動装置」等の表示が特許庁の電子図書館資料「商品・役務名リスト(国際分類第8版)に「11CO1」の類似群コードを付されて掲載されている事実もあり、特に甲第4号証は、本件商標の権利者のパーソナルコンピューター「バイオ」ノートブックシリーズの総合カタログであり、商標権者自身が、英語「Drive」に通じる「ドライブ」の文字を商品の普通名称として使用しているところである。
このような事実が存することからすれば、本件商標を指定商品中の「コンピュータ用ハードディスクドライブ,DVD-ROMドライブ,CD-RWドライブ,CD-ROMドライブ,フロッピーディスクドライブ」等の商品について使用しても本件商標構成中の「Drive」の文字部分は、単に、商品(駆動装置=ドライブ)の普通名称を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないばかりでなく、該商品以外の商品について使用する場合には商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものであり、第9類の指定商品についての登録は、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきである。
(2)本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
本件商標は、上記した通り、構成中の「Drive」の文字は「ドライブ」と読まれ、「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置」の普通名称として普通に使用され、良く知られているものであるから、指定商品中の「コンピュータ用ハードディスクドライブ、DVD-ROMドライブ、CD-RWドライブ、CD-ROMドライブ、フロッピーディスクドライブ」等の商品について使用しても、単に、商品の普通名称を表示するにすぎず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
してみると、本件商標を上記商品等について使用した場合、自他商品の識別標識としての機能を果たすのは構成中の「Harvest」の文字部分であり、それ自体独立しても自他商品の識別標識としての機能を果たし得ることは明らかであり、該文字部分に相応して、本件商標は、単に「ハーベスト」の称呼及び「刈入れ、収穫(する。)」等の観念をも生じるものである。 また、引用商標は上記した通り「HARVEST」の文字よりなるものであるから、構成文字に相応して「ハーベスト」の称呼及び「刈入れ、収穫(する。)」等の観念が生じるものであり、かつ、その指定商品中に「コンピュータ用ハードディスクドライブ」と同一又は類似の商品が包含されていることは明らかである。
してみると、本件商標は、引用商標と「ハーベスト」の称呼及び「刈入れ、収穫(する。)」等の観念を共通にする類似の商標であり、引用商標が本件商標の登録出願日前の商標登録出願に係る他人の登録商標であること及び指定商品において抵触するものであることも明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条策1項第11号に違反してなされたものであるから、商標法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきである。
(3)答弁に対する弁駁
(a)請求人の利害関係について
被請求人は、「請求人は利害請求について何も立証していない。」と主張している。
しかしながら、請求人は、自己の所有に係る登録商標(第2677680号商標)を引用して本件無効審判を請求しているので、本件審判請求について法律上の利益を有する者であることは明らかである。
(b)商標法第4条第1項16号違反について
被請求人は、「無効理由を有するか否かの判断時は、商標法第46条第1項第1号の場合は最終判断日である登録査定時又は登録審決時である。」として、「請求人が提出している甲第1号証以外は、それぞれ本件商標の登録査定日より後に発行されたもので証拠としての適格性に欠ける。」と主張する。
そこで、請求人は、本件商標の設定登録日である平成14年4月19日はもとよりその商標登録出願日である平成13年2月13日以前からコンピュータを取り扱う商品分野において「Drive(ドライブ)」の語が「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置」の普通名称として使用されていた事実を証するため、甲第5号証ないし同第21号証を提出する。
(c)商標法第4条第1項第11号違反について
被請求人は、過去の登録例、審決例及び異議の決定例等を挙げて、商標構成中に「Drive」の文宇を含む商標が「駆動装置」以外の商品を指定商品として登録されていること等を前提として、本件商標から生じる称呼は「ハーベストドライブ」のみである旨主張している。
しかしながら、本件商標をその指定商品中に包含されていること明らかな「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置」について使用した場合、本件商標構成中の「Drive」の文宇部分は、前段において主張・立証したとおり商品の普通名称を表示したにすぎず、本件商標にあって自他商品の識別標識としての機能を顕著に果たすのは構成中の「Harvest」の文字部分であるといえるから、本件商標からは「ハーベストドライブ」の称呼のほか単に「ハーベスト(収穫)」の称呼・観念をも生じるものであり、引用商標とは「ハーベスト(収穫)」の称呼・観念を共通にする類似の商標たるを免れないものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由及び弁駁に対する答弁を要旨次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第55号証を提出した。
(1)請求人の利害関係について
請求人は利害請求について何も立証していない。無効審判は登録異議申立と異なり何人も請求できるものではない。
そこで、利害関係を有するということを前提に答弁することとする。
(2)商標法第4条第1項第16号違反について
無効理由を有するか否の判断時は、商標法第46条第1項第1号の場合は最終判断日である登録査定時又は登録審決時である。すなわち、平成14年4月19日である。
請求人が提出している甲第1号証以外は、それぞれ2002年10月14日、2003年3月17日及び2003年8月発行のもので登録査定日より後に発行されたもので証拠としての適格性に欠けるが、以下に本件商標が商標法第4条第1項第16号に該当しない点についてその理由を申し述べる。(a)請求人が提出した甲第1号証の証拠「2000/01パソコン用語辞典」には「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置のこと。」と記載されている。
しかし、株式会社自由国民社により1999年10月1日に発行された「カタカナ・外来語/略語辞典」第394頁(乙第1号証)の「ドライブ」の項目には「イ)テニスのボールの打ち方の一つ。ボールは順方向に回転する。ロ)車を運転すること。車で遠乗りすること。」と解説されているが「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置のこと。」とは紹介されていない。
(b)「Drive」の英単語に関して、株式会社三省堂により2001年4月8日に発行された「グランドコンサイス英和辞典」(乙第2号証)の第764頁によれば、「イ)追いやる、ロ)(人を)追い立てる、ハ)(車)を運転する、ニ)(エンジンなどを)作動させる、ホ)(くい・くぎなど」を打ち込む、ヘ)(〜走者を)進ませる。」などの他動詞が1番目に記載され、第2番目に「自動詞」、第3番目に名詞として「イ)自動車(馬車)旅行、ロ)(家畜などを)追い立てること、ハ)精力、迫力、活力、ニ)[機械]伝動〈駆動〉(装置);[コンピュータ]ドライブ、駆動装置、ホ)[球技]強打されたボール、ヘ)疾走感覚、ト)(ブリッジ)などの競技会」として掲載されている。
従って、「drive」の文字を見た一般需要者・取引者が直ちにコンピュータの「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置のこと。」を連想するものではない。
(c)前述のように「drive」の英単語が、他動詞・自動詞・名詞として使用され、かつ名詞としてほぼ7通りの意味合いを有することから単独で「ハード・ディスクやフロッピー・ディスクなどの駆動装置のこと。」の意味と認識されることはなく、他の名詞との結合商標で初めて特定の駆動装置として認識されるものである。
このことは、日外アソシエーツ株式会社により2002年11月25日に発行された「ビジネス技術実用英和大辞典」(乙第3号証)の第346頁の右欄によれば「a hard(disk)drive」の表現で「ハードディスク装置」、「a tape drive」の表現で「テープ駆動装置」、「floppy(disk)drive」の表現で「フロッピーディスクドライブ」、「CD-ROM drive」の表現で「CD-ROM駆動装置」の意味を有する旨記載されている事実からも容易に連想されるものである。
本件商標は、欧文字「Harvest-Drive」と一連に書してなるものであり、該商標より発生する称呼は「ハーベストドライブ」となる。英単語として「Harvest」は乙第2号証の第1147真に掲載されているように「イ)収穫、刈り入れ。ロ)(単数形で)結果、収穫、報い」程度の意味を有することから、これと「drive」とを結合させた時に連想されるものとして「駆動装置」が連想されるのではなく「収穫活力」の意味合いの方が相応しく、商品の品質表示であると認識されるおそれは全くない。
(d)かかる被請求人の主張を証左するものとして後段部に「drive」が結合された第9類の登録商標公報を乙第4号証ないし同第20号証として提出する。
以上のように本件商標は、第9類の「駆動装置」以外の商品に使用した時に商品の品質の誤認を生ずるおそれは全くなく、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第11号違反について
請求人は、本件商標と引用商標とは類似するものであるから、第9類の「全指定商品」又は「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」について無効事由がある旨主張する。
しかし、その主張には承服できないので以下にその理由を申し述べる。
(a)本件商標は「Harvest-Drive」の文字よりなるところ、「Harvest」と「Drive」の文字は、上記した通りの意味合いを有するものであるから、該商標より発生する称呼は「ハーベストドライブ」となる。
また、「Harvest」(ハーベスト)が、「収穫、刈り入れ」などの意味を有することから選択される「Drive」の意味として「〜活力、〜精力」となり「Drive」の部分が「駆動装置」を意味する普通名詞として認識されないものである。
従って、本件商標「Harvest-Drive」を称呼した一般需要者・取引者は、これを分離する特別の事情も存在しないために「ハーベストドライブ」と一連に称呼する。従って、引用商標「HARVEST」(ハーベスト)とは後段部の「ドライブ」の称呼の有無による大きな4音相違があり、これらを聴取した一般需要者・取引者が商品の出所について混同を起こす程度に類似とは言えない。
かかる被請求人の主張を証左するものとして、乙第5号証、乙第21号証及び同第22号証を提出する。
(b)さらに、後段部に「DRIVE」又は「Drive」と、前段部に識別力を有する商標「A」との結合商標の審査で、指定商品を「駆動装置」に限定することなく、商標「A」+「drive」と商標「A」とを互いに非類似とした審査例を乙第23号証ないし同第42号証として提出する。
(c)乙第3号証の第746頁に「navigator」が「航法装置」の普通名詞として掲載されているという点で、請求人の「drive」(駆動装置)の主張とほぼ同一事案について「HARVEST」Vs「HarvestNavigator」とが互いに非類似の商標として設定登録されている事実からも本件商標から「Harvest」のみが抽出されない。
(4)以上述べたように、本件商標は商標法第4条第1項第16号及び同法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(5)弁駁に対する答弁
(a)商標法第4条第1項第16号違反について
請求人は、新たに甲第5号証ないし同第21号証を提出した。
まず、特許法の改正(商標法も準用)に伴い無効審判について、「請求の理由」の要旨を変更する審判請求書の補正を認めないことになった(平成11年1月施行)、そしてこれに伴う運用指針で『「請求の理由」の要旨変更となるものは、無効審判請求書に記載された特定の無効理由の内容が変わることにより、被請求人の防御に大きな影響を与え、再度反論の機会を与えないと攻撃防御のバランスを失するものがこれに相当する。』と規定された。
従って、甲第5号証ないし同第21号証の証拠は、もしこれら証拠に基づき無効事由が認定されるのであれば実質的な請求の理由の要旨変更に該当するものであり、かかる場合には請求の理由の補正を審判官は却下すべきと考える。
次に請求人は、商標法第46条第1項第5号の規定に基づく商標法第4条第1項第16号を無効の理由として挙げているが、本件審判事件においてはこれも請求の趣旨を変更するものであり、要旨を変更するものと言わざるを得ない。従って請求の理由の補正を審判官は却下すべきと考える。
(b)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標を称呼した一般需要者・取引者は、これを分離する特別の事情も存在しないため「ハーベストドライブ」とのみ一連に称呼する。
従って、引用商標「HARVEST」(ハーベスト)とは後段部の「ドライブ」の称呼の有無による大きな4音相違があり、これを聴取した一般需要者・取引者が商品の出所について混同を起こす程度に類似とは言えない。

第5 当審の判断
請求人は、請求の趣旨において「本件商標の指定商品中の第9類『全指定商品』又は『電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品』について無効とする。」旨主張しているが、これは請求の趣旨として不適切であるから、本件審判請求は本件商標の指定商品中の第9類「全指定商品」について請求されたものと解して当審の判断をする。
(1)請求人の利害関係の有無及び甲第5号証ないし同第21号証の適否について
請求人は、本件商標の登録を無効とする理由の一つとして、同人が所有する引用商標を引用しており、本件商標の商標権の存否によって、請求人がその権利に対する法律的地位に直接的な影響を受けるか、又は受ける可能性が十分あるものと容易に推認できるものである。
してみれば、請求人は、本件審判を請求する法律上の利益を有するものといわなければならない。
次に、請求人が提出した平成16年1月5日付け弁駁書に添付された甲第5号証ないし同第21号証提出の趣旨は、請求の理由及び弁駁に照らして、本件商標の登録を無効とする理由の追加証拠と認められものであって、本件審判請求の理由の要旨を変更するものといえない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも採用の限りではない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記に示したとおり、「Harvest-Drive」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「Harvest」の文字は、「刈り入れ、収穫(する。)」(乙第2号証)等の意味を、「Drive」の文字は、「ハード・ディスクやフロッピーディスクなどの駆動装置のこと。」(甲第1号証)、「追いやる、(人を)追い立てる、(車)を運転する、(エンジンなどを)作動させる、(くい・くぎなどを)打ち込む、(〜走者を)進ませる。」などの他動詞が1番目に記載され、第2番目に「自動詞」、第3番目に名詞として「自動車(馬車)旅行、(家畜などを)追い立てること、精力、迫力、活力、[機械]伝動〈駆動〉(装置);[コンピュータ]ドライブ、駆動装置、[球技]強打されたボール、疾走感覚、(ブリッジ)などの競技会」(乙第2号証)等の意味を有するものと認められる。
そして、パーソナルコンピュータ(パソコン)関連の専門雑誌(甲第13号証ないし同第21号証)上で、欧文字「Drive」の表音文字と容易に把握、理解し得る「ドライブ」の片仮名文字は、例えば「コンピュータ用ハードディスクドラブ、DVD-ROMドライブ、CD-RWドライブ、CD-ROMドライブ、フロッピーディスクドライブ」等の駆動装置を指称するものとして普通に用いられている実情にあることを併せ考えれば、本件商標は、その指定商品中「電子応用機械器具及びその部品」との関係において、前半部に位置する「Harvest」の文字部分が自他商品識別機能を果たす部分とみるのが相当である。
そうとすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標を適宜分離抽出して、称呼することが十分あり得るものであって、本件商標からは、書された文字に相応して「ハーベストドライブ」の称呼のほか、「Harvest」の文字に相応して「ハーベスト」の称呼、「収穫、刈り入れ」の観念をも生ずるものと認められる。
他方、引用商標は、「Harvest」の文字を書してなることから、その構成文字に相応して「ハーベスト」の称呼、「収穫、刈り入れ」の観念が生ずること明らかである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、共に「ハーベスト」の称呼、「収穫、刈り入れ」の観念を共通にする類似の商標であり、かつ、本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」と引用商標の指定商品中「電子応用機械器具」とは、同一又は類似する商品である。
したがって、本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
なお、被請求人は、本件商標は、一体不可分に「ハーベストドライブ」(収穫活力)の称呼、観念のみを生ずる旨主張している。
しかしながら、我が国において、英語教育は相当程度普及しているものの、「Harvest-Drive」の文字全体から直ちに「収穫活力」の意味合いを理解し得る者がいるとしても、それは、本件商標の指定商品に係る平均的な取引者、需要者でなく例外に属する者といわなければならない。また、同人は多くの既登録例を挙げているが、その事例は、商標の具体的な構成が本件商標とは異なるばかりか、商標の類否の判断は、本件商標と引用商標との対比において、個別、具体的に判断すべきものであるから、結局、同人の主張は、いずれも採用する限りではない。
次に、本件商標の指定商品中前記商品以外の商品との関係で本件商標をみるに、本件商標を構成する「Harvest」と「Drive」との各文字は、連綴記号のハイフン(-)を介して「Harvest-Drive」と外観上バランス良く一体的に構成されており、該文字全体より生ずる「ハーベストドライブ」の称呼も格別冗長ともいえず一連一体に称呼し得るものであり、かつ、一般に親しまれた熟語的意味合いを有しない一種の造語とみるのが相当である。
加えて、甲各号証を総合勘案するも本件商標を構成する「Drive」の文字が商品の品質を表す事実は見出すことができない。
してみれば、本件商標中「Harvest」の文字部分を分離抽出して、本件商標と引用商標とは「ハーベスト」(収穫)の称呼、観念を共通にする類似の商標であるとして、本件商標を商標法第4条第1項第11号に該当するとした請求人主張の無効の理由は、その前提において失当であり採用できない。
(3)商標法第4条第1項第16号について
本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」については、商標法第4条第1項第11号に該当すること前記のとおりであるから、その余の指定商品との関係について本件商標をみるに、本件商標を構成する「Drive」の文字は、請求人提出の甲各号証を精査するも「Drive」の語が商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるとする証拠は見出すことができないばかりか、本件商標は、前述のとおり、一連一体のものとしてのみ把握、理解するのが相当であるから、殊更に、「Drive」の文字部分を商品の品質を表す語として把握、理解するのは適当ではない。
そうとすると、本件商標の指定商品中「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気テープ・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」以外の指定商品に本件商標を使用しても取引者、需要者は、商品の品質について誤認を生ずるおそれがないものといわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に違反して登録されたものではない。
(4)以上のとおり、本件商標は、その指定商品中第9類「電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・同ICカード・同磁気ディスク・同光ディスク・同光磁気ディスク・その他の電子応用機械器具及びその部品」について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきものである。
しかしながら、本件商標の指定商品中前記商品を除くその余の商品については、無効とすることができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-06-01 
結審通知日 2004-06-03 
審決日 2004-06-16 
出願番号 商願2001-17755(T2001-17755) 
審決分類 T 1 12・ 263- ZC (Z09)
T 1 12・ 262- ZC (Z09)
T 1 12・ 272- ZC (Z09)
最終処分 一部成立  
前審関与審査官 岩本 和雄 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 2002-04-19 
登録番号 商標登録第4560955号(T4560955) 
商標の称呼 ハーベストドライブ、ハーベスト 
代理人 三好 秀和 
代理人 須永 浩子 
代理人 近藤 美帆 
代理人 押本 泰彦 
代理人 川又 澄雄 

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