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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z36
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z36
管理番号 1101465 
審判番号 無効2003-35200 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-20 
確定日 2004-07-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4422485号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4422485号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4422485商標(以下「本件商標」という。)は、「IHI」の文字を標準文字により横書きしてなり、平成11年3月26日に登録出願、第36類「預金の受入れ(債券の発行により代える場合を含む。)及び定期積金の受入れ,資金の貸付け及び手形の割引,内国為替取引,債務の保証及び手形の引受け,有価証券の貸付け,金銭債権の取得及び譲渡,有価証券・貴金属その他の物品の保護預かり,両替,金融先物取引の受託,金銭・有価証券・金銭債権・動産・土地若しくはその定著物又は地上権若しくは土地の賃借権の信託の引受け,債券の募集の受託,外国為替取引,信用状に関する業務,割賦購入のあっせん,クレジットカードの利用者に代ってする支払代金の清算,割賦販売利用者に代ってする支払代金の清算,金銭債務の保証,クレジットカード会員のクレジットカード利用に際しての信用の保証,金融分析,金融市場に関する調査,資産運用に関する相談及び指導,クレジットカード・デビットカード発行の取次ぎ,金融先物取引に関する情報の提供,住宅資金の貸付に関する情報の提供,クレジットカード利用金額に関する情報の提供,前払式証票の発行,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引,有価証券の売買・有価証券指数等先物取引・有価証券オプション取引及び外国市場証券先物取引の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券市場における有価証券の売買取引・有価証券指数等先物取引及び有価証券オプション取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,外国有価証券市場における有価証券の売買取引及び外国市場証券先物取引の委託の媒介・取次ぎ又は代理,有価証券の引受け,有価証券の売出し,有価証券の募集又は売出しの取扱い,株式市況に関する情報の提供,有価証券投資に関する助言,証券投資に関する調査研究,ゴルフ会員権に関する情報の提供,商品市場における先物取引の受託,商品先物市況に関する情報の提供,生命保険契約の締結の媒介,生命保険の引受け,損害保険契約の締結の代理,損害保険に係る損害の査定,損害保険の引受け,保険料率の算出,クレジットカードを利用した購入商品に対する補償,企業の信用に関する調査,個人信用情報の収集・保管・照合,企業の財務に関する情報の提供,慈善のための募金,慈善事業活動のための企画・運営,紙幣・硬貨計算機の貸与,現金支払機・現金自動預け払い機の貸与,両替機の貸与の媒介又は取次ぎ」を指定役務として、平成12年10月6日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論と同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人について
ア 請求人の概要
請求人は、1853年(嘉永6年)に石川島造船所として創業を開始し、創業以来150年の歴史を経て現在に至っている。
企業規模をみれば、平成14年3月期においては、資本金649億円、従業員数10,966名、年間売上高(連結ベース)1兆824億円の規模を有し、長年にわたり業界トップクラスの大企業として活動を展開している(甲第2号証(枝番号を含む。以下同じ))。
請求人は、昭和35年に現商号「石川島播磨重工業株式会社」を採用したと同時に、その英文表記の要部頭文字をとった英文字「IHI」を略称及び商標として使用を開始し、現在も変わりなく自己の商品及びサービスに使用を継続しているものである(甲第3号証及び甲第9号証)。
イ 請求人の事業内容
本件商標の出願当時における請求人の事業内容をみれば、産業機械、船舶・海洋、各種プラントから宇宙開発、生活・レジャー事業など、非常に広範囲にわたっている。中でも、生活・レジャー事業で提供される製品は、一般需要者にもなじみ深いものである。
また、請求人は、企業グループとして「IHIグループ」を形成し、関連する多数の企業を該グループに組織しているものであるが、これら企業の商号には「アイ・エイチ・アイ」を冠するものが複数存在し、これらの企業も自己の事業においては請求人の商標「IHI」を広く使用している状況にある(甲第2号証及び甲第3号証)。
これらの関連企業を含むIHIグループとして把握すれば、請求人の商標「IHI」が使用される事業範囲は更に拡大し、物流、保険代行、情報処理等も含めて極めて広範囲となる。該IHIグループ全体で取り扱われる製品及びサービスは産業界全体に行き渡るものであり、同時に使用される請求人の商標「IHI」は産業界全体に浸透しているといっても過言ではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と請求人の商標「IHI」の類似性
本件商標も請求人の商標も「IHI」なる文字商標であって、両者とも明らかに「アイエイチアイ」の称呼を生ずるものであるから、少なくとも外観と称呼においては同一商標と見て差し支えない商標である。
イ 商標「IHI」の独創性及び請求人の商標の著名性
「IHI」なる語は、市販の辞典類を確認しても既成語として掲載されている事実は発見できない。したがって、「IHI」の語は特定の観念を生ずることのない極めて独創性の高い造語といえるものであって、自他商品の識別標識としての機能を充分に備えるものであり、一般の取引者及び需要者にとっては、これが何人かの商標であると認識することは疑いのないものである。
請求人は、長年にわたりテレビコマーシャルや新聞広告などの幅広い広告活動を積極的に展開し、その随所で「IHI」を商標として使用を継続してきた。
また、請求人が取り扱う製品の中には、生活・レジャー事業で提供される製品のように一般大衆にも馴染み深いものが存することは前記したとおりであるが、長年にわたってこのような製品に商標「IHI」を使用すること自体も一般大衆に対して請求人の商標「IHI」を著名化させる一つの広告的効果を発揮している筈である(甲第2号証及び甲第5号証)。
以上のように、請求人の長年にわたる広告活動、製品体系等を総合してみれば、請求人の商標「IHI」が特定の産業界に限定されることなく、広く一般大衆に対して著名なものであることは明白な事実である。
ウ 本件商標の指定役務と請求人の業務及び商品等と間の関連性
本件商標の指定役務は、国際分類第36類に属するものであり、その産業分野は、保険・不動産・金融等である。
請求人の企業グループたるIHIグループの中には保険事業を営む連結子会社(石川島興業株式会社)が存在し、本件商標の出願時以前から既に保険分野においては商標「IHI」を使用している実績がある(甲第7号証及び甲第8号証)。
また、不動産分野にあっては、請求人自身が平成4年から不動産事業を開始し、その活動の中で商標「IHI」を使用してきた。
加えて、請求人の製品には大型船舶やプラントなど、大規模で高額な商品が多く、これらの売買にあっても不動産売買等と同様に金融分野との関係は極めて深いものである。なお、請求人がリースや貸付・保証・投資に関する事業を会社の目的として設定している(甲第4号証)。
このように、請求人の広範囲な事業活動からすれば、請求人の業務及び商品等は、本件商標の指定役務に対しても深い関係があることは明白な事実である。
エ 出所混同のおそれ
してみれば、被請求人が本件商標をその指定役務について使用すれば、対象となる取引者及び需要者に対して被請求人が請求人と何らかの関係があるものと出所の混同を生じさせ、いわゆるフリーライドやダイリューションにより請求人が多大なる不利益を被るおそれが極めて高いといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違背して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第8号について
前記したごとく、請求人は、「IHI」の文字を請求人の略称として長年にわたり使用を継続している。
そして、新聞記事等においては、請求人を「IHI」と略記する事例が多分に見受けられ、少なくとも本件商標の出願時には「IHI」が請求人の略称として一般的に通用する状況にあったことは明白な事実である。
被請求人は、本件商標「IHI」を使用することについて請求人から承諾を得ているものではなく、被請求人が請求人の承諾なく本件商標「IHI」を使用することは、請求人の人格権を毀損する蓋然性は否定できない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違背して登録されたものである。
(4)むすび
以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に該当するにもかかわらず登録されたものであって、商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、前記請求人の主張に対して、何ら答弁するところがない。

4 当審の判断
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、請求人は、1853年(嘉永6年)に石川島造船所として創業、以来150年にわたる歴史を有する企業である。その後、昭和35年に現商号「石川島播磨重工業株式会社」に商号を変更し、それ以降「IHI」の文字を商号の略称として使用すると共に、「IHI」の文字からなる商標を産業機械、船舶・海洋、宇宙開発、生活・レジャー事業など、広範にわたる事業について継続して使用している。
また、請求人を中核とする多くの関連企業より形成されている「IHIグループ」に属する企業は、「IHI」の文字からなる商標を少なからず使用しているものと推認することができ、その事業範囲は、請求人の事業のほか、物流、保険代行、情報処理等と極めて多岐にわたっている。
請求人の事業規模は、例えば、平成10年度(平成10年4月ないし同11年3月期)においては、資本金約650億円、売上高(連結ベース)では1兆円を越えていることが認められる。
以上からすると、本件商標の登録出願の時には、「IHI」の文字からなる商標は、少なくとも請求人の事業である産業機械、船舶・海洋、宇宙開発、生活・レジャー関連の事業に係る商品及び役務を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものであり、その著名であるという事実は登録査定時(平成12年8月22日)においても継続していたものと判断するのが相当である。
しかして、本件商標は、前記のとおり「IHI」の文字よりなるものであって、その構成は、請求人の使用する著名な「IHI」の文字からなる商標と文字構成を同じくするものである。しかも、請求人を中核とするIHIグループに属する企業は、産業機械、船舶・海洋、宇宙開発、生活・レジャー関連のほか、物流、保険代行、情報処理など本件商標の指定役務にも関連する広範な事業を行っていること前記のとおりである。
そうとすれば、商標権者が本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接した取引者、需要者は、該役務を請求人又は「IHIグループ」など請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その出所について混同するおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-02-09 
結審通知日 2004-02-13 
審決日 2004-03-09 
出願番号 商願平11-27174 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z36)
T 1 11・ 23- Z (Z36)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 柳原 雪身
井岡 賢一
登録日 2000-10-06 
登録番号 商標登録第4422485号(T4422485) 
商標の称呼 アイエイチアイ、アイエッチアイ、イヒ 
代理人 樋口 豊治 
代理人 青山 葆 
代理人 山田 恒光 
代理人 大塚 誠一 

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