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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 041
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 041
管理番号 1101388 
審判番号 無効2003-35193 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-14 
確定日 2004-07-16 
事件の表示 上記当事者間の登録第4145910号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4145910号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1.本件商標
本件登録第4145910号商標(以下「本件商標」という。)は、平成8年4月9日に登録出願され、「東京自由学園」の文字を横書きしてなり、第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),能力開発に関するセミナーその他のセミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として、平成10年5月15日に設定登録されたものである。

第2.請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第85号証を提出した。
1.商標法第4条第1項第10号、同15号に関する主張
(1)請求人商標「自由学園」の周知性
請求人である「学校法人自由学園」(以下「自由学園」という。)は、大正10年(1921年)4月15日に、羽仁吉一・もと子夫妻により、東京目白(現在の豊島区西池袋)に女子のための中等教育を行う学校として創立された(甲第3号証ないし同第5号証、甲第6号証57頁、甲第7号証238頁、甲第21号証219頁)。羽仁吉一・もと子の二人は、自分たちの理想とする教育を行うため、当時の女学校令によらない「各種学校」として「自由学園」を発足させた。そして、昭和2年に、自由学園は現在の東京都東久留米市に移転し、昭和3年に初等部が設立された。
自由学園の校舎は、近代建築として歴史的に価値あるものが多く、建築学の対象としても、新聞や雑誌に頻繁に取り上げられてきた(甲第10号証ないし同第13号証)。
その後、昭和10年に男子部、昭和14年に幼児生活団(幼稚園)、昭和24年に大学に相当する男子最高学部、翌昭和25年に女子最高学部(短期大学に相当)ができ、4歳児から22歳までの青年男女を育てる一貫教育校となった(甲第5号証、甲第6号証60頁、甲第7号証238頁、甲第8号証73頁、甲第9号証)。当初は、文部省令によらない各種学校だった女子、男子の中等科、高等科は、戦後の学制改革の際に文部省が許可を与え、新制中学、高等学校となった。しかし、4年制の男子最高学部と2年制の女子最高学部は今日も文部科学省の大学令によらない各種学校のままであり、自由学園独自の教育を行っている(甲第6号証60頁)。
また、「羽仁もと子」や「自由学園」については、広辞苑や他の国語辞典の「羽仁もと子」の項にも記載がある(甲第15号証及び甲第16号証)。この他、大正10年(1921年)に我が国で起こった出来事を掲載した事典等には、写真を使用するなどして大きく取り上げられていること(甲第17号証ないし同第19号証、甲第22号証及び甲第23号証)は、「自由学園」が、幅広い範囲の一般大衆に知られている事実を示すものであり、学校名としての一定の周知性を裏付けるものである。
上記したように、「自由学園」商標(以下「引用商標」という。)は、請求人により、大正10年(1921年)から80年以上の永きにわたり、一貫して「教育(知識の教授)」並びに「教育」に関連するサービスについて使用されている。そして、「自由学園」における教育(知識の教授)のユニークさは、国内外で評判を呼び、古くから新聞・雑誌等のマスコミや、各種書籍等に取り上げられてきた(甲第20号証、甲第24号証ないし同第55号証)。
また、「自由学園」の教育の素晴らしさや、その創設者である羽仁もと子女史については、1932年(昭和7年)にフランスで開かれた世界新教育会議での羽仁もと子氏の講演によって、世界的にも注目を浴びた(甲第24号証、甲第37号証)。そして、「自由学園」の創立30周年記念式典(昭和26年)には、当時の吉田茂総理大臣、戦後小学校に給食制度を採用した文部大臣天野真祐氏、高松宮殿下など著名な方々が訪問され(甲第79号証)、新聞でも報道された(甲第80号証及び甲第81号証)。
さらに、「自由学園」の卒業生の中には、女優の岸田今日子氏、指揮者の故山本直純氏、映画監督の羽仁進氏(甲第82号証)など有名人が数多く輩出し、政財界の著名人、知識人、有名人にも「自由学園」とゆかりのある人々が多い。このため、高松宮日記(甲第56号証)を始め、有名知識人の著作には「自由学園」に関する記述が数多く登場する(甲第57号証ないし同第73号証)。
他方、校舎改築工事に伴い、昭和11年と昭和56年に「自由学園」敷地内(現在の東京都東久留米市)から、武蔵野を代表する大遺跡が発掘されたことがあった(甲第74号証ないし同第78号証)。これがマスコミによって大きく報道されたことにより、改めて、「自由学園」の名が全国に広まることともなった。
以上のことから「自由学園」が、請求人の運営する学校名及び請求人の略称として、また、請求人が提供する役務(知識の教授、他)についての商標として、本件商標の出願日である平成8年4月9日はもとより、その以前から、わが国及び一部外国において広く知られていたことは明らかである。
(2)請求人商標「自由学園」と本件商標「東京自由学園」の類似性
本件商標は、「東京自由学園」と横書きした構成からなるものであり、請求人の商標をそっくりそのままその構成要素とし、頭に「東京」という地名を付加したにすぎないものである。したがって、本件商標からは「トウキョウジユウガクエン」という称呼の他、「ジユウガクエン」単独の称呼も生ずるものと考えられる。
いわゆる「呉青山学院中学校」事件判決(東京地裁平成13年(ワ)第967号:不正競争行為差止等請求事件)からも明らかなように、頭に付された「東京」は、単なる地名であるから識別力がなく、省略されて称呼・観念される場合があり得る。ましてや、請求人の住所(東京都豊島区:登記簿上の住所であり設立の地でもある。)並びに請求人が運営する「自由学園」の現在の所在地(東京都東久留米市)はいずれも「東京」都であるから、マスコミ等の報道や書籍の記述においては、請求人自身が「東京自由学園」(甲第61号証183頁2行目)や「東京の自由学園」と称される場合も多く、紛らわしいことこのうえない。
さらに、引用商標「自由学園」の上記したような「教育(=知識の教授)」についての周知性をも勘案すれば、本件商標中「自由学園」の部分は特に強い識別力を発揮し、本件商標を目にした者は、「自由学園」の部分にのみ注意を惹き付けられるというべきである。
また、本件商標の指定役務は、請求人が永年携わってきた「教育」事業そのもの、もしくは、それと深い関連を持った役務である。
したがって、本件商標「東京自由学園」と、「教育(知識の教授)」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている引用商標「自由学園」とは、称呼・観念を共通にする類似の商標であり、本件商標は、請求人の提供する上記役務と同一又は類似の役務を指定役務とするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
上述のとおり、請求人は、本件商標と引用商標との間に「狭義の混同を生ずるおそれ」があると思料するが、仮に、同10号に該当しない場合であっても、本件商標「東京自由学園」が、その指定役務について使用された場合には、請求人の引用商標「自由学園」との関係で、あたかも請求人、又は請求人と、業務上あるいは組織上何らかの特殊な関係がある企業体が提供する役務であるかの如く、誤認・混同されることは必至である。
よって、本件商標と引用商標との間に、たとえ「狭義の混同を生ずるおそれ」がなくても「広義の混同を生ずるおそれ」があることは明らかであり、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれのある商標であって、商標法第4条第1項第15号に該当する。
2.商標法第4条第1項第8号に関する主張
前述のとおり「自由学園」は、請求人が80年以上にわたって使用してきた学校名であり、商標法第4条第1項第8号が保護法益とする請求人の「人格」が化体したものであって、請求人の周知な略称となっていることは明白である。
しかして、被請求人は、請求人とは無関係の一私企業であり、本件商標の出願にあたり、請求人から承諾を得ていない。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号にも該当するものである。
3.商標法第4条第1項第19号に関する主張
「自由学園」という名称は、設立当初の大正10年(1921年)当時は、学校名に「学園」と付けること自体が最初のことであったのみならず、「自由」という名称も、極めて新しい印象を与えるものであった(甲第83号証124頁)。これは、真理こそ自由を与えるのだという羽仁吉一・もと子夫妻の信仰に基づいた教育理念の強い表白であり、のちに、太平洋戦争のきびしい思想統制の中で、政府及び軍部は、超国家主義体制のもと「自由」などという「勝手気まま」を連想させる言葉を、麗々しく校名にかかげているのは「もってのほかの怪しからぬ振舞い」との理由で校名変更を要求した。これに対し、1943年初夏、羽仁もと子学園長は、単身で陸軍省に出頭し(甲第85号証256頁乃至258頁)、文字通り「命がけ」で、校名「自由学園」を守り通してきたものである。
上述のごとく、引用商標「自由学園」は、「教育」という分野において、一定の周知性を獲得しているのに対し、本件商標「東京自由学園」は、引用商標をそっくりそのまま構成要素とするものである。よって、本件商標が「教育」関連分野について実際に使用されれば、請求人の周知商標「自由学園」が有する出所識別機能(指標力)が稀釈化されることは必至である。
また、引用商標には、これまで80年以上にもわたり培ってきた「イメージ(印象)のよさ」が備わっている。したがって、本件商標が「教育」関連事業に使用されると、引用商標の持つ「イメージ」は損なわれ、これが、引用商標の標識としての機能の弱化につながる。請求人の周知商標に化体した上記イメージや業務上の信用(グッドウィル)は著しく汚染される一方で、被請求人は、そのことにより不正の利益を得ることになる。
本件商標「東京自由学園」が引用商標「自由学園」と無関係に選択されたとは考えられず、その顧客吸引力へ“ただ乗り”し、当該顧客吸引力を不当に利用しようとするものであることは、前記の諸事情からみて客観的に明白である。
したがって、本件商標「東京自由学園」は、「教育(=知識の教授)」を表示するものとして、日本国内及び一部外国における需要者の間に広く認識されている引用商標「自由学園」と、同一の文字を構成要素とする類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものというべきであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4.結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号及び同第19号に該当し、その登録は、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。

第3.被請求人の主張
被請求人は、何ら答弁していない。

第4.当審の判断
1.本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当することについて
本件商標は、前記のとおり「東京自由学園」の文字よりなるところ、請求人より提出された甲第3号証ないし同第85号証によれば、請求人である「学校法人 自由学園」は、大正10年(1921年)4月15日に羽仁吉一・もと子夫妻により、東京目白(現在の豊島区西池袋)に女子のための中等教育を行う学校として創立されたことが認められる。
その後、「自由学園」の名称は、請求人により大正10年から現在に至るまで80年以上の永きにわたり、一貫して「教育(知識の教授)」及び教育に関連する役務について使用され、そして、「自由学園」における教育のユニークさは、国内外で評判を呼び、古くから新聞・雑誌等のマスコミや、各種書籍等に取り上げられてきたことが認められる。
してみれば、「自由学園」が請求人が運営する学校名及び請求人の略称として、また、請求人が提供する役務(知識の教授、他)についての商標として、本件商標の出願日(平成8年4月9日)より、はるか以前から、わが国において広く知られていたことが認められる。
しかして、本件商標は、他人(請求人)の著名な略称「自由学園」を含む「東京自由学園」の文字よりなるものであり、かつ、請求人の承諾を得たものとは認められない。
2.本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
さらに、以上の事実からすると、請求人が提供する役務「知識の教授」について使用する「自由学園」の文字からなる引用商標は、本件商標の登録出願時はもとより、登録査定時においても、既に、わが国において需要者の間に広く認識され、著名性を獲得していたものであって、また、本件商標は、その著名な引用商標に自他役務を識別力のない又は薄い地域名称を表す「東京」の文字を冠した「東京自由学園」の文字よりなるものであり、かつ、その指定役務が請求人の提供する役務「知識の教授」と同じ役務について使用するものであるから、本件商標をその指定役務に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、本件商標より、直ちに請求人の引用商標「自由学園」を連想、想起し、その役務を請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る役務であるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
3.むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-04-01 
結審通知日 2004-04-05 
審決日 2004-06-04 
出願番号 商願平8-37464 
審決分類 T 1 11・ 23- Z (041)
T 1 11・ 271- Z (041)
最終処分 成立 
前審関与審査官 小林 由美子 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 富田 領一郎
小川 有三
登録日 1998-05-15 
登録番号 商標登録第4145910号(T4145910) 
商標の称呼 トーキョージユーガクエン、ジユーガクエン 
代理人 大島 厚 
代理人 松尾 和子 
代理人 加藤 ちあき 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 中村 稔 
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