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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z05
管理番号 1101373 
審判番号 無効2003-35309 
総通号数 57 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-09-24 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-24 
確定日 2004-07-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第4524299号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4524299号商標(以下「本件商標」という。)は、「メバン」の文字を標準文字により表してなり、平成12年12月7日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として平成13年11月22日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第2049558号商標(以下「引用商標A」という。)は、「メバロチン」の文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として昭和63年5月26日に設定登録され、その後、平成10年1月27日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。 同じく、登録第2069627号商標(以下「引用商標B」という。)は、「MEVALOTIN」の文字を横書きしてなり、昭和61年1月20日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として昭和63年8月29日に設定登録され、その後、平成10年4月28日に商標権の存続期間の更新登録がされているものである。 同じく、登録第2448922号商標(以下「引用商標C」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成元年10月27日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として平成4年8月31日に設定登録され、その後、平成14年4月2日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに指定商品を、平成14年3月22日にした書換登録申請により、第1類、第2類、第3類、第4類、第5類、第8類、第9類、第10類、第16類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする書換登録が平成14年4月17日になされているものである。
同じく、登録第2448923号商標(以下「引用商標D」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、平成元年10月27日に登録出願、第1類「化学品(他の類に属するものを除く)薬剤、医療補助品」を指定商品として平成4年8月31日に設定登録され、その後、平成14年4月2日に商標権の存続期間の更新登録がされ、さらに指定商品を、平成14年3月22日にした書換登録申請により、第1類、第2類、第3類、第4類、第5類、第8類、第9類、第10類、第16類、第19類、第21類及び第30類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品とする書換登録が平成14年4月17日になされているものである。

3 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第39号証を提出している。
(1)本件商標と引用商標AないしDとを比較検討してみるに、両者の構成はそれぞれ上記のとおりであって、それぞれの構成上、前者からは、「メバン」の称呼を生ずるものであること明らかであるのに対して、後4者からは、「メバロチン」の称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標より生ずる「メバン」の称呼と各引用商標より生ずる「メバロチン」の称呼とは、語頭からの「メ」、「バ」及び語尾の「ン」の3音を全く同じくしているところ、文字により構成された商標における、自他商品を識別するための標識としての機能を果す場合において、最も重要な要素となる語頭部分に存する音であるばかりでなく、語尾における「ン」音をも共通にしているものであるから、語中央部において、「ロチ」音の有無に差異を有するものではあるが、両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の「メバ」の文字部分は、後半部の「ン」及び「ロチン」の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、いわゆる、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきものである。さらに、薬剤等の商標として、「メバ」の音で始まるものは、各引用商標のみであることからも、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、観念的な連想を惹きおこし易い、その基幹部分「メバ」を共通にし、しかも、薬剤の商標の接尾語として、我が国においては、比較的好まれてありふれて採択使用されている文字の「ン」をも共通にしている点からも、請求人の製造・販売する商品「高脂血症薬剤」に使用する引用商標「メバロチン」を連想させ、これに接する取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの充分にある、彼此相紛らわしい商標であるといわなければならないところである。
(2)引用商標AないしDは、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)に付されて使用され、平成1年の発売以来、その売上高は、当初の70億円(市場占有率17.5%)から、その売上を延ばし、同11年度には、1288億円(市場占有率53.9%)にものぼり、「高脂血症用薬剤」の単品商品が、売出しからの11年間で、1兆59億円に達している事実がある(甲第11号証)。
また、上記商品の宣伝広告活動も、広告代理店、株式会社丹水社を通じて、活発かつ盛大に行っており、その宣伝広告費も、単品商品「高脂血症用薬剤」の金額としては、平成1年に1600万円台であったものが、同14年は10月までに2100万円台を投じ、発売以来の14年間で、4億3000万円以上もの広告費をかけているものである(甲第12及び第13号証)。
その他にも、「メバロチン」に関して、株式会社医薬広告社、協和企画株式会社又は株式会社東宣を通じての広告出稿一覧表がある(甲第14ないし第16号証)。
さらに、請求人は、引用商標AないしDの周知、著名性を立証すべく、宣伝広告を掲載した具体的な誌名等について、その証拠方法として甲第23ないし第32号証を提出する。
以上の証拠方法によって、請求人は、各引用商標を、斯界における最も有効な媒体(雑誌等)を用いて、継続的、かつ、定期的に反復した宣伝広告に努めた結果、各引用商標は、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識された周知、著名な商標であるといわなければならないところである。
したがって、引用商標AないしDと相紛らわしい本件商標を、その指定商品である「薬剤」について使用をするときには、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の業務に係る商品であるかの如く誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれの充分にあるものといわなければならないところである。
(3)請求人の上記主張理由の正当性を立証すべく、本件事案と判断の軌を一にする次の審決例、判決例及び同様の争いであるところの(乙第37ないし第39号証)審決を挙げて、請求人は、これを自己の主張理由に有利に援用することとする。
(ア)平成10年審判第35358号(平成11年7月22日審決)
「カプトロン/CAPTORON」=「カプトリル/CAPTORIL」(第5類)、そこで、『カプトロン』『CAPTORON』の文字よりなる本件商標と周知、著名な『カプトリル』『CAPTORIL』の商標とを比較するに、両者は、いずれも特定の意味合いを看取させない造語商標と認められるものであって、前半部の『カプト』『CAPTO』の文字部分を共通にし、後半部において『ロン』『RON』の文字部分と『リル』『RIL』の文字部分との差異を有するものである。しかして、『RON』の文字が『ロン』の称呼を、『RIL』の文字が『リル』の称呼を生ずるものであって、『ロン』の文字と『リル』の文字は、いずれも薬剤の商標の接尾語として我が国においては比較的好まれてありふれて使用されている語であることから、両商標が薬剤に使用された場合には、その構成中の『CAPTO』『カプト』の文字部分は、『ロン』、『RON』、『リル』、『RIL』の文字部分に比して自他商品の識別力が強く、商標として重要な要素を占めるものといえる。
してみれば、被請求人が本件商標をその指定商品である『薬剤』に使用した場合には、前記認定の実情よりして、これに接する取引者・需要者は、『カプト』『CAPTO』の文字部分に着目し、該商品が請求人の取扱に係る商品であるかの如く誤認し、その出所について混同を生ずるおそれがあるものと判断するのが相当である。」
これを不服としての、被請求人の提訴、平成11年(行ケ)第309号東京高等裁判所判決も、上告、平成12年(行ツ)第352号及び同(行ヒ)第336号最高裁判所決定も、これを支持しているものである。
(イ)昭和50年(行ケ)第74号(昭和51年7月13日判決)
「アリナポン/ALINAPON」=「ALINAMIN/アリナミン」(旧第1類)
「本件商標の類似性を検討すると、本件商標を指定商品に使用するときは、観念的な連想を惹きおこし易いその基幹部分『アリナ』(ALINA)を共通にし、しかも薬剤の商標の接尾語として慣用されることと『ン』(N)を共通とする何れも2音であることで類似する語尾部分を結合した点から、原告が製造・販売するビタミン剤に使用する引用商標『アリナミン』(ALINAMIN)を連想させ、取引者・需要者はあたかもシリーズ商標もしくは姉妹商品として原告の製造・販売にかかるものと誤認し、商品の出所につき混同を生ずる恐れがある。そして指定商品が抵触することはいうまでもない。したがって本件商標は取引の実情にてらし、全体として引用商標に類似する商標として商標法第4条第1項第11号に該当するものといわねばならない。」
(4)上記の事実を勘案するとき、薬剤の商標として「メバ」の音で始まるものは、各引用商標の外には存在しないことから、これに、薬剤の商標の接尾語として、我が国においては、比較的好まれてありふれて使用されている文字の「ン」を共通にする本件商標は、被請求人の創作に係る商標であるというよりは、むしろ、各引用商標の著名性に、明らかに只乗りする意図の下に、単に、「メバロチン」の語中央部の「ロチ」を除いて「メバン」として出願された商標であると断ぜざるを得ないところである。
請求人は、このような事実を立証するものとして、平成15年6月30日発行の「読売新聞」(朝刊)に掲載された記事を甲第21号証として提出する。
なお、請求人(担当者)が、2002年7月31日、特許庁商標懇談会発行の「商標懇2002年7月号」(甲第22号証)に寄稿した「企業と商標」において、先発医薬品の特許権が切れたことを奇貨として、後発医薬品が先発医薬品の商標を真似て発売されることは、いわゆる、著名商標への只乗り(フリーライド)行為に外ならず、ひいては、著名商標の希釈化(ダイリューション)につながるものであるから、特許庁における著名商標の保護政策をのぞむものであると提言しているところである。
(5)また、請求人は、被請求人の本件商標を使用した製品のパンフレットを甲第33号証として、また、請求人の業務に係る引用商標A及び引用商標Bを使用した製品の写真を甲第34号証として提出する。
そして、甲第33号証の第2頁上部に掲載されている「メバン錠5(mg)」及び「メバン錠10(mg)」の写真と、甲第34号証の「メバロチン5mg」及び「メバロチン10mg」の写真を対比してみれば、いずれも、商品の変質、損傷を防ぐために、製品(錠剤)10錠ずつのパッケージを示したものであるが、両者の製品は、共に、「5mg」の包装は、錠剤の色彩を白色とし、表面は金色地に赤色で、裏面は銀色地に赤色で表し、また、「10mg」の包装は錠剤の色彩を薄いピンク色とし、表面を金色地に緑色で、裏面は銀色地に緑色で表されているばかりでなく、いずれも、表面は複数の横線を赤色又は緑色で表し、裏面の文字、記号等の配列をも同じくするものであるから、両者の製品は、対比観察をする場合においてさえ、互いに彼此を識別することが困難であり、しかも、繁忙を極める大病院や薬局等で、医師、看護士又は薬剤師等は元より、この最終需要者である患者でさえも、それぞれの製品を誤認、混同をするおそれは決して少なくないものと認めざるを得ないところである。
これらの事実をもってしても、被請求人の行為は、故意であるという外なく、しかも、請求人及び被請求人の商品は、いずれも、「高脂血症用薬剤」であって、その商品は、人の健康保持に欠かせないか、若しくは、人の生命に重大な影響を齎すものであるから、これは、2003年1月1日、株式会社集英社発行の「情報・知識imidas2003」(甲第35号証)に掲載されている「トレード・ドレス」の模倣に外ならず、不正競争の目的をもってなされたものであることが、容易に窺えるところである。
(6)してみれば、本件商標は、引用商標AないしDと称呼の点において、互いに彼此相紛らわしい類似の商標であるといわなければならず、かつ、本件商標の指定商品である「薬剤」は、各引用商標のそれに包含されていること明らかなところであり、また、引用商標AないしDが、請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するためのものとして、取引者及び需要者の間において、極めて広く認識されている周知、著名な商標であるから、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときは、これらに接する取引者及び需要者をして、その商品が、請求人の取り扱いに係る商品と誤認し、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれの充分にある商標であるから、結局、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項(第1号)の規定に基づいて、その登録は、無効とされるべきものである。

4 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論掲記のとおりの審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第3号証を提出している。
(1)請求人は、「両商標が、薬剤について使用される場合には、その構成中の語頭部分の『メバ』の文字部分は、後半部の『ン』及び『ロチン』の文字部分に比して、自他商品の識別力を果す最も重要な部分、いわゆる、商標の要部若しくは商標の基幹部分というべきものである。」と主張する。
しかしながら、本件商標についても引用商標「メバロチン」についても、「メバ」の文字部分が、商標の要部若しくは商標の基幹部分であるとは認められない。
本件商標は、わずか3音という短い音構成からなる一体不可分の商標である。したがって、「メバ」と「ン」とを対比してどちらが識別力を有する等論ずること自体不合理であり、本件商標は全体をもって自他商品の識別力を発揮するものである。
また、本件商標について敢えてその要部を認定するとすれば、それは「メバ」の部分ではなく、「メ」の部分というべきである。何故なら、薬剤の商標として「バン」の文字を接尾語とするものは多数存在する。すなわち、特許庁の商標出願登録情報によれば、2003年9月17日現在、薬剤を指定商品に含む出願登録商標で「バン」を接尾語とするものは386件あり、うち登録商標は374件である。「○○バン」は「○○チン」等と同様、薬剤の商標の接尾語として広く用いられるものである。そして、その中には「アバン/AVAN」(商標登録第1633007号)、「ズバン」(商標登録第581063号)、「ピバン」(商標登録第2023899号)、「ニバン/NIBAN」(商標登録第2099070号)、「ロバン/LOBAN」(商標登録第2513530号)、「ホバン/FOVANE」(商標登録第2609803号)、「カバン」(商標登録第4645395号)のごとく、本件商標と同様の3文字商標も存在する。かかる事情を考慮すれば、本件商標について、敢えて商標の要部を認定するならば、それは薬剤の商標の接尾語としてありふれて使用されている「バン」の部分を除く「メ」の部分というべきである。
一方、引用商標「メバロチン」についても、その要部が「メバ」の文字部分にあるとは認められない。メバロチンの「医薬品インタビューフォーム」(乙第1号証、「名称の由来」欄参照)には、引用商標「メバロチン」の名称の由来は、「本剤の薬理作用(メバロン酸の合成酵素阻害)を表す『メバロン酸』と『一般名(プラバスタチンナトリウム)』から引用してメバロチンとした」と請求人自身が説明している。すなわち、引用商標「メバロチン」は元来「メバロ」の文字と「チン」の文字を組み合わせてなる商標であり、「メバ」の文字部分が「メバロチン」の要部であるとの主張は、上記名称の由来を考慮しても甚だ不合理である。また、このような名称の由来を別論にしても、5文字からなる引用商標「メバロチン」においては、薬剤の商標の接尾語としてありふれて使用されている「チン」の文字を除いた語頭の「メバロ」の文字部分が商標の要部であると考えるのが自然であるし、さらにメバロン酸の薬理作用を知る取引者、需要者にとっては、メバロン酸をイメージさせる「メバロ」の部分が商標の要部であると考えるのは必然である。
このように、両商標はその要部を異にするものであり、両商標の要部が「メバ」にあるとする請求人の主張は失当である。
(2)請求人は、「薬剤等の商標として、『メバ』の音で始まるものは、各引用商標のみであることからも、本件商標をその指定商品である『薬剤』について使用をするときは、観念的な連想を惹きおこし易い」と主張し、さらに本件商標について、「請求人の製造・販売する商品『高脂血症薬剤』に使用する引用商標『メバロチン』を連想させ、これに接する取引者・需要者は、請求人のシリーズ商標若しくは姉妹商品として、請求人の製造・販売に係るものと誤認し、その商品の出所につき、混同を生じさせるおそれの充分にある彼此相紛らわしい商標である」と主張する。
しかしながら、以下に述べるように、本件商標と各引用商標は外観・称呼・観念において顕著に相違し、全体として明らかに別異の商標であるから、両者が同一の商品に使用されたとしても、観念的な連想を惹きおこしたり、姉妹商品等と誤認されるようなことはあり得ない。
すなわち、本件商標は、わずか3音という音構成からなり、各引用商標は5音構成からなるため、両商標をそれぞれ一連に称呼すれば、全体の語調、語感は明らかに相違している。本件商標は、その3音という音構成から簡潔な印象を与え、一音ずつ明瞭に、しかも一気に称呼される。一方、5音構成からなる各引用商標には、本件商標に全く存在していない音質の「ロ」と「チ」が中間音として連続して入っており、本件商標と比較すれば冗長な印象がある。各引用商標を一連に称呼すれば、前音節の「メバロ」は平滑に発音されるか、もしくは「バ」でいったん上り調子となり、後音節「チン」の「チ」の部分はいずれの場合でもアクセントをおいて発音される。
このように、両者は音構成、音数、音質及び抑揚の際立った相違から、それぞれ一連に称呼するも、その語調、語感が顕著に相違し、聴感相紛れることはない。
また、外観については、本件商標が「メバン」の片仮名文字を標準文字で横書きしてなるのに対し、引用商標Aは「メバロチン」の片仮名文字を横書きしてなり、引用商標Bは「MEBALOTIN」の欧文字を横書きしてなり、引用商標C及びDはそれぞれ幾何学図形と「MEBALOTIN」の欧文字を組み合わせてなるものであるから、本件商標と各引用商標とは、外観上非類似の商標であることはいうまでもない。
さらに、観念についても、本件商標と各引用商標はいずれも特定の語義をもたない創造語と認められるから、観念上相紛らわしいことはない。
このように、本件商標は、商標自体が外観・称呼・観念いずれの点からしても各引用商標とは明白に非類似であるから、これを薬剤等について使用しても、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれは全くない。
(3)請求人は、各引用商標が請求人業務に係る商品「高脂血症用薬剤」を表示するものとして周知、著名な商標であるから、本件商標をその指定商品である「薬剤」について使用をするときには、その商品の出所につき混同を生じさせるおそれがあると主張し、「カプトロン/CAPTORON」vs「力プトリル/CAPTORIL」の審決や判決例、また「アリナポン/ALINAPON」vs「ALINAMIN/アリナミン」の判決例を挙げている。
しかしながら、仮に各引用商標が請求人の業務に係る商品について周知、著名であるとしても、本件商標と各引用商標は前述のように全体として明らかに別異のものである以上、商品の出所について混同が生ずる余地はない。 また、上記審決例、判決例は、いずれも対比する商標の音構成が5音対5音のケースであり、本件のような3音対5音を対比するのとは事情が全く異なっている。すなわち、上記ケースはいずれも対比する商標の音数が5音であり、語尾の2音が異なる、もしくは第4音目が異なる、というものである。このようなケースであれば、全体を称呼したときにその語調や語感が全体として紛らわしいものになったり、商標の著名性により出所混同が生ずることも考えられないことではない。しかしながら、本件は、対比する商標の音構成が3音と5音であり、類否判断における前提を全く異にするから、上記ケースと同一に論ずることはできない。
(4)請求人は、「薬剤の商標として『メバ』の音で始まるものは、各引用商標の外には存在しないことから、これに、薬剤の商標の接尾語としてありふれて使用されている文字の『ン』を共通にする本件商標は、被請求人の創作に係る商標であるというよりは、むしろ、各引用商標の著名性に、明らかに只乗りする意図の下に、単に、『メバロチン』の語中央部の『ロチ』を除いて『メバン』として出願された商標である」と主張し、これを立証するものとして、新聞記事(甲第21及び第36号証)を提出している。
しかしながら、本件商標は、「メバロン酸」を由来として被請求人自らが創作した商標であり(乙第2号証、医薬品インタビューフォーム「名称の由来」欄参照)、請求人の主張には何ら根拠がない。そればかりか、請求人の主張は、引用商標に係る商標権の効力範囲を混同の生じ得ない全く非類似の範囲にまで拡張しようとするもので、到底認めることができない。
請求人の提出した甲第21号証(新聞記事)からは、請求人の主力医薬品「メバロチン」が非常によく売れる薬であることが窺えるものの、同記事は、医薬品「メバロチン」の特許切れに伴い、後発医薬品が20社前後のメーカーから一斉に発売され、医薬品市場は激戦模様になるだろうことを伝えているにすぎず、本件商標が各引用商標の著名性に只乗りするものであることを何ら立証するものではなく、示唆するものでさえない。
同様に、甲第36号証は、請求人が後発品メーカー5社を相手取り、包装が極めて似ているとして不正競争防止法に基づく販売差し止めと損害賠償を求める訴えを起こしたという事実を伝えているにすぎず、この記事をもって著名商標の只乗りが推認されるとは到底いえるものではない。
(5)請求人は、両者の製品は包装が類似しているから、それぞれの製品を誤認、混同するおそれがあると主張する。また、被請求人の行為は「トレード・ドレス」の模倣に外ならず、不正競争の目的をもってなされたものであることが容易に窺えると主張する。
かかる問題は商標それ自体の類似性に起因する混同の問題ではないから、かかる請求人の主張は本件商標登録無効審判事件で採用されるべきものではない。
しかも、被請求人は本件商標を使用した製品(錠剤)の包装を平成15年10月4日の生産分から変更する(乙第3号証)。
よって、両者の製品を誤認・混同するおそれは商標法上も不正競争防止法上も生じ得ないものとなる。
(6)以上詳述したように、請求人の主張はいずれも失当であり、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件商標に無効理由があるとは到底認められない。そして、本件商標と各引用商標とは全く別異の商標であって商品の出所の混同を生ずる余地はないから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に何ら違反するものではない。

5 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号違反について
本件商標と各引用商標との類否について検討するに、本件商標は、その構成文字に相応して「メバン」の称呼を生ずること明らかである。他方、引用商標Aは「メバロチン」の、引用商標Bは「MEVALOTIN」の各文字から構成されるものであるから、その構成文字に相応して「メバロチン」の称呼を生ずること明らかである。また、引用商標C及びDは「MEVALOTIN」の文字と図形の組み合わせからなるところ、それぞれの図形部分は具体的に何を表したか直ちに認識し難いのに対して文字部分は明らかに判読し得るものであって、文字部分自体が独立して自他商品の識別標識としての機能を果し得るものというべきであるから、該文字部分に相応して「メバロチン」の称呼を生ずるものである。
しかして、本件商標から生ずる「メバン」の称呼と各引用商標から生ずる「メバロチン」の称呼とは、3音対5音という構成音数の相違に加え、中間における「ロチ」の音の有無という差異を有しており、しかも前者は一気一息にはぎれのよい調子で称呼され簡潔な印象を与えるのに対し、後者は前半の「メバ」と後半の「ロチン」との間に一拍分あるような比較的冗長なぎこちない印象を与えるものであって、かかる差異が比較的短い構成音の両者に与える影響は大きく、それぞれを一連に称呼するときは、全体の音感、音調が相違し、彼此相紛れることなく明瞭に区別し得るものである。
さらに、本件商標と各引用商標とは、その構成に照らし、外観上判然と区別し得る差異を有するものであり、また、いずれも特定の既成観念を有するものとして親しまれているともいえないから、観念上両者を比較すべくもない。
してみれば、本件商標と各引用商標とは、称呼、外観及び観念のいずれの点においても類似する商標ということはできない。
なお、請求人は、本件商標も各引用商標も「メバ」の部分が商標の要部ないしは基幹部分というべきである旨主張するが、その合理的根拠は見出し難いばかりでなく、本件商標は片仮名3文字からなる簡潔なものであって、いずれを要部とすべきというほどのものではないし、一連一体の全体をもって自他商品の識別力を有するというべきであるから、請求人の主張は採用することができない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号違反について
請求人は、各引用商標が請求人の業務に係る商品「高脂血症用薬剤」(動脈硬化用薬剤)に使用する商標として周知、著名となっていることから、本件商標をその指定商品に使用するときには商品の出所について混同を生ずるおそれがある旨主張しているので、この点について検討する。
確かに、請求人の提出に係る各甲号証によれば、各引用商標は 商品「高脂血症用薬剤」に使用する商標として取引者、需要者間に広く認識されていることが認められるとしても、本件商標と各引用商標とは、上記のとおり、互いに相紛れるおそれのない類似しない商標であって明らかに別異の商標であるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が各引用商標を直ちに連想、想起するようなことはなく、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所の混同を生ずるおそれもないというべきである。
なお、請求人は、本件商標は各引用商標の著名性に只乗りする意図の下に、「メバロチン」から「ロチ」を除き「メバン」としたものである旨主張し、その事実を立証するとして証拠を提出しているが、提出された証拠はいずれも本件商標が各引用商標の著名性に只乗りするものであることを立証するものとはいえず、他にその事実を証するに足る証左は見出せないから、請求人の主張は採用することができない。
また、請求人は、被請求人の本件商標を使用した製品と請求人の引用商標を使用した製品とは、包装が類似しているために誤認、混同するおそれがあり、被請求人の行為は不正競争の目的をもってなされたものである旨主張するが、かかる問題は、商標法に基づき商標登録の無効を求める本件審判の射程外というべきであって、本件とは別論といわざるを得ない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではないから、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-04-14 
結審通知日 2004-04-16 
審決日 2004-06-01 
出願番号 商願2000-131799(T2000-131799) 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Z05)
T 1 11・ 271- Y (Z05)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小川 有三
富田 領一郎
登録日 2001-11-22 
登録番号 商標登録第4524299号(T4524299) 
商標の称呼 メバン 
代理人 浅村 肇 
代理人 浅村 皓 
代理人 新保 克芳 
代理人 岡野 光男 
代理人 宇佐美 利二 
代理人 鈴木 俊一郎 
代理人 八本 佳子 

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