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審決分類 審判 一部無効 観念類似 無効としない 025
審判 一部無効 称呼類似 無効としない 025
管理番号 1098472 
審判番号 無効2003-35214 
総通号数 55 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-07-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-05-28 
確定日 2004-05-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第4378659号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4378659商標(以下「本件商標」という。)は、「LABRA」の文字と「ラブラ」の文字とを二段に横書きしてなり、平成7年10月5日に登録出願、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類,靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具,げた,草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,乗馬靴」を指定商品として、平成12年4月21日に設定登録されたものである。

2 請求人の引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第2202445号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、昭和62年12月24日に登録出願、第17類「被服、その他本類に属する商品」を指定商品として、平成2年1月30日に設定登録、その後、平成11年11月16日に商標権存続期間の更新登録がされたものである。

3 請求人の主張
請求人は、「(1)本件商標の指定商品中『洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子』の登録はこれを無効とする(2)審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証を提出している。
(1)本件商標と引用商標との対比
(ア) 本件商標は、「LABRA」の英文字と「ラブラ」の片仮名文字を二段に横書きしてなるものであり、「ラブラ」の片仮名文字に対応して「ラブラ」の称呼を生じる。
この「LABRA」の英文字それ自体からは、特定の観念を引き出すものではない(labrumの複数形であることは認める:甲第4号証)が、被請求人による本件商標の使用態様をも考慮すると「ラブラドール」という犬が連想される(甲第3号証)。
すなわち、被請求人は、本件商標を犬の後ろ向きのシルエットと組み合わせて使用していること(甲第4号証)、「Labrador」(ラブラドール)は、ラブラドールリトリーバ犬を観念させる(甲第4号証ないし甲第8号証)ところ、本件商標は、この「Labrador」の語幹部分であることからすれば、本件商標が「Labrador」(ラブラドール)を省略したものであると認識されて、本件商標の使用態様と相侯って、本件商標からは、「ラブラドール」という犬が連想されるのである。
したがって、本件商標からは、「ラブラ」という称呼とともに、「ラブラドール」という犬が観念ないし連想されることがあるというべきである。
(イ)これに対して、引用商標は、犬のシルエット図形とこの図形に重ねて「Labrador Retriever」の英文字を横書きしてなるものである。この引用商標の英文字部分である「Labrador Retriever」に対応して「ラブラドールリトリーバー」という称呼と「ラブラドールリトリーバー犬」という観念が生じるが、これらの称呼と観念しか生じないということはできない。
外観上、「Labrador」と「Retriever」との間に間隔があり、しかも17字からなる、一語とするには長い語であるから、同英文字を構成する「Labrador」と「Retriever」とを分離して観察することも多いというべきである。
したがって、引用商標からは「ラブラドール」あるいは「ラブラドル」の称呼も生じる(2000年無効審判第35315号審決、平成13年(行ケ)第114号判決参照)。
さらに、引用商標の構成をみると、「Labrador Retriever」の英文字中、犬のシルエット図形と重なっている文字は白抜き文字であり、重なっていない文字を塗り潰し文字であって、「Labra」、「dor」、「Re」、「triever」の各構成文字に分離されるから、引用商標に接したとき、引用商標をもって「ラブラドール」と称呼することはもちろん、「Labrador」の接頭語かつ語幹であって商標の外観上も独立して認識される「Labra」に対応する「ラブラ」と称呼することがあるというべきである。
このように商標の接頭語のみが抽出されて称呼されることは、迅速を重んじる取引の実情に照らしても首肯されるところである。
したがって、引用商標からは「ラブラ」の称呼が生じ得るとともに、「ラブラドール」という犬の観念ないし連想が生じるのである。
(ウ)したがって、本件商標と引用商標とは、「ラブラ」の称呼を共通にし、「ラブラドール」という犬の観念ないし連想を共通にするものであって、類似の商標といわざるを得ない。
(2)指定商品間の対比
そして、本件商標の指定商品中「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ゲートル,毛皮製ストール,ショール,スカーフ,足袋,足袋カバー,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」は、引用商標の「被服その他本類に属する商品」と同一又は類似する。
(3)弁駁の内容
(ア)既に述べたとおり、審決及び判決において、引用商標は、「Labrador」と「Retriever」とに分離観察されると認定しているのであって、その後、本件商標の登録時である平成12年当時までに、この分離観察されるとする認定を覆すべきと認めるに足りる証拠はない。
(イ)また、請求人は、引用商標の白黒の色差だけから、引用商標から「Labra」が独立して認識され、これに対応する「ラブラ」の称呼が生じると主張しているものではない。引用商標を構成する「Labrador」の頭5文字「Labra」は、これに続く「dor」とは外観上明確に区別されていることから、「ラブラドール」を単に「ラブラ」と略称して取引に資することがあるというべきであると主張しているのである。
そして、被請求人が主張するように、一般的な消費者を基準とすれば、引用商標の構成文字中の「Labrador」に対応する「ラブラドール」又は「ラブラドル」の自然的称呼を単に「ラブラ」と略称することがあるというべきである。このことは、犬種としての「ラブラドールリトリーバー犬」が後発的に「ラブラ」と略称されるようになっていること(甲第11号証ないし甲第17号証)、また、犬種としての「Labrador Retriever」あるいは「Labrador」が「Lab」と略称されるようになっている(甲第18号証ないし甲第20号証)ことなどからも認められる。
(ウ)商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商標に使用された場合に、商品の出所について誤認、混同を生じるおそれがあるか否かによって決すべきあるところ、その判断にあたっては、商品に使用された商標の称呼、外観、観念によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して、全体的に考察すべきであり、しかも、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断するのが相当である。
そこで、本件をみると、本件商標の構成文字中の「LABRA」は引用商標の外観上も区別されている語頭にそっくりそのまま含まれ、その称呼でもある「ラブラ」も引用商標から生じる称呼「ラブラドール」にそっくりそのまま含まれ、又は引用商標から生じる称呼「ラブラ」と同じであること、さらに、これらに、取引の実情や一般消費者の認識の程度を基準とすれば、本件商標及び引用商標からは、ラブラドールあるいはラブラドールリトリーバーという犬という程度の観念を生じるものであること、本件商標の登録時以前から引用商標と標章「LABRA」は併用されており、引用商標に接したことがある一般消費者は、標章「LABRA」をもって請求人の出所と誤認することからすれば、本件商標と引用商標とは、被服について使用されるとき、商品の出所について誤認、混同を生じるおそれがあるというべきである。
(4)まとめ
以上の次第で、本件商標は、請求の趣旨に記載の指定商品については、商標法第4条第1項第11号の規定に該当し、同法第46条第1項第1号の規定によって、その登録を無効とされるべきである。

4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第7号証を提出している。
(1)本件商標の観念について
(ア)本件商標の称呼である「ラブラ」からは、取引者、需要者がラブラドールリトリーバー犬という犬を当然に連想するということはできないものである。
なぜなら、本件商標は、ラブラという3つの音からなる、短く完結した称呼を有するものであり、請求人も認める通りの造語なのであって、何らの観念も発生しておらず、また、そもそもラブラドールリトリーバー犬自体が一般的にラブラと呼ばれている事実もないからである。
したがって、取引者、需要者(本件登録商標の指定商品は、被服等であることからすれば、取引者を愛犬家に限定することなく、被服等を購入する一般的な消費者を基準とすることは当然である。)には、また、愛犬家であっても、「ラブラ」がラブラドールリトリーバー犬という犬を連想させることはないのである。
(イ)「ラブラ」の文字から、ラブラドールリトリーバー犬という犬が連想されない以上、後ろ向きの犬のシルエットと組み合わせて使用した例があるとしても、やはり本件商標からラブラドールリトリーバー犬という犬が連想されるわけではない。なお、請求人は、本件商標が「Labrador」を省略したものであるとか、語幹部分である等と主張するが、本件商標は、造語であってかかる指摘は誤りである。
また、請求人の引用商標はあくまで「Labrador Retriever」に犬の図形を組み合わせた商標であって、「Labrador」ではない。そして「Labrador」は、むしろカナダ東部ニューファンドランド州の地名であるラブラドル地方又はその地方が存するラブラドル半島(乙第1号証)を観念させる語であり、ラブラドールリトリーバー犬の略称として広く定着している事実もない。
さらに、そもそも被服等の業界においては、犬のシルエットと文字からなる商標における該文字が、必ずしも犬種名を表示するものとはいえないことは、他の商標例からも明らかでもある(甲第8号証)。
故に、一般の取引者・需要者にとっては、「LABRA」の文字と後ろ向きの犬のシルエットから、ラブラドールリトリーバー犬という犬を連想することはないというべきである。
(2)引用商標の称呼について
引用商標の文字は、明らかに一体として「Labrador Retriever」と読むべき文字列であることは自明であって、白黒の色差を根拠に、細分化して「Labra」、「dor」、「Re」、「triever」の各部分ごとに認識対象とする請求人主張の手法は、あまりに技巧的かつ不自然であり、一般人の認識の仕方からも、かけ離れている。
故に、引用商標と比較して、はるかに短い「ラブラ」の称呼が生じるものとは到底いえないのである。
(3)本件商標と引用商標の外観について
それぞれの構成よりすると、引用商標は、本件商標と外観においても見誤るおそれは全くないことは明らかである。
(4)本件商標及び引用商標等の登録の経緯について
本件商標は、登録に至る過程において、類似する商標として件外商標(乙第2号証)を引用された経緯があるが、引用商標に類似するものとは判断されていないのである。
つまり、引用商標から発生する称呼は、「ラブラドールリトリーバー」であることは明らかであり、その観念は「ラブラドールリトリーバー犬」と認められるべきである。本件商標である「Labra」とは称呼も観念も全く類似しないものである。
(5)まとめ
このように、本件商標は、引用商標と称呼、観念において類似しているとはいえず、また外観においても顕著な差異を有するものであることは明白であり、過去の審査基準・結果とも合致しているものである。
故に、本件商標と引用商標とは、互いに識別し得るものであるので、商標法第4条第1項第11号の規定に該当しないものである。

5 当審の判断
本件商標は、前記のとおり「LABRA」及び「ラブラ」の両文字よりなるものであり、これらの文字に相応して「ラブラ」の称呼を生じ、特定の語義を有しない一種の造語よりなるものと認められる。
この点に関し、請求人は、「『ラブラ』から、『ラブラドール』あるいは『ラブラドールリトリバー』という犬という程度の観念は生ずる」旨主張し、甲第11号証ないし甲第20号証を提出している。
しかしながら、甲第11号証ないし甲第17号証は、「ラブラドールリトリーバー犬」を「ラブラ」と略称して使用しているウエブサイトのコピーであるところ、これらはいずれも、個人のウエブサイトにすぎないものである。また、甲第18号証ないし甲第20号証は、「Lab」が「Labrador Retriever」の略である旨が掲載されている辞書のコピーであるから、これによって「ラブラ」が「Labrador Retriever」の略であることを証明したとはいい難い。したがって、以上の証拠は、被服等の業界における一般的な取引の実情を示すものとは到底認め難いものである。
さらに、請求人は、被請求人が本件商標を犬の後ろ向きのシルエット図形と組み合わせて使用していること、及び「Labrador」(ラブラドール)は、ラブラドールリトリーバ犬を観念させるところ、本件商標は、この「Labrador」の語幹部分であることからすれば、本件商標が「Labrador」(ラブラドール)を省略したものであると認識されて、本件商標の使用態様と相俟って、本件商標からは、「ラブラドール」という犬が連想される旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成は、上記のとおり「LABRA」及び「ラブラ」の両文字よりなるにとどまるものであり、犬の後ろ向きのシルエットの図形と組み合わせて構成されているものではない。被請求人が請求人の指摘する商標を現に使用している事実が存するとしても、本件商標に存在しない犬の後ろ向きのシルエットの図形により本件商標の称呼、観念が左右されるものでないことは明らかである。しかも、「LABRA」の文字は、特定の観念を生じない造語よりなること上述のとおりであり、取引者、需要者がこれよりラブラドール犬を連想するとは認められず、これを認めるに足りる証拠はない。
他方、引用商標は、別掲に示すとおり、犬の横向きのシルエット図形と「Labrador Retriever」の文字を横書きしてなるものであるところ、その文字部分から「ラブラドールリトリーバー」、「ラブラドール」及び「リトリーバー」の称呼が生ずるものと認められる。
この点に関して、請求人は、「引用商標を構成する『Labrador』の頭5文字『Labra』はこれに続く『dor』とは外観上明確に区別されていることから、『ラブラドール』を単に『ラブラ』と略称して取引に資することがある」旨主張している。
確かに、引用商標の構成文字中、犬のシルエット図形と重なっている「dor」及び「Re」の文字は白抜きで表され、犬のシルエット図形と重なっていない「Labra」及び「triever」の文字は黒塗りで表されていることは認められるが、色彩を用いないでシルエット図形を背景として文字を表す場合に、引用商標のようにシルエット図形と重なる文字部分を白抜きで表すのは通常の方法にすぎないものであって、このように表すことによりいずれかの文字部分が強調されていると看取されるものではないというべきである。
したがって、引用商標における「Labra」の文字が外観上独立して認識されるとは認められないから、引用商標からは「Labra」の文字部分に相応した「ラブラ」の称呼は生じないといわなければならない。
そうとすれば、本件商標より生ずる「ラブラ」の称呼と引用商標より生ずる「ラブラドールリトリーバー」、「ラブラドール」及び「リトリーバー」の称呼とは、構成音数、音構成に著しい差異を有するものであり、明確に聴別し得るものと認められる。
また、本件商標は、特定の観念を生じない造語よりなること上記のとおりであるから、引用商標の観念について論ずるまでもなく、両商標は、観念においては比較することができないものであり、かつ、外観においても明らかに区別し得るものである。
してみれば、本件商標は、引用商標と称呼、観念、外観のいずれの点においても類似しないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲

引用商標

審理終結日 2004-03-26 
結審通知日 2004-03-30 
審決日 2004-04-16 
出願番号 商願平7-102843 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (025)
T 1 12・ 263- Y (025)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 薫 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 柳原 雪身
井岡 賢一
登録日 2000-04-21 
登録番号 商標登録第4378659号(T4378659) 
商標の称呼 ラブラ 
代理人 三原 研自 
代理人 稲元 富保 
代理人 中村 智廣 
代理人 丸山 裕司 

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