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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 035
審判 全部無効 商4条1項12号他人の登録防護標章 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 035
管理番号 1096586 
審判番号 無効2002-35545 
総通号数 54 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-06-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-25 
確定日 2004-04-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第3370289号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3370289号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3370289号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおり、「SEIKO」の文字を横書きしてなり、使用に基づく特例の適用を主張して平成4年9月30日に登録出願、第35類「建築物における来訪者の受付及び案内」を指定役務として、同10年10月2日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第167号証(枝番を含む。)を提出している。
1 無効理由の要点
本件商標は、請求人が所有する登録第175840号商標(以下「引用商標」という。)の防護標章登録第40号の標章と同一であるから、商標法第4条第1項第12号に該当し、また、請求人が商品「時計」について使用する商標として世界中で広く認識されている「SEIKO」の標章と同一又は類似であるだけでなく、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークと同一又は類似するものであるから、これを被請求人が指定役務について使用するときは、需要者が、請求人又は請求人と組織的・経済的に何等かの関係を有する者の業務にかかる役務であると誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第15号に該当する。
したがって、本件商標は、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録は無効とされるべきである。
2 「SEIKO」の著名性について
(1)「SEIKO」の標章は、請求人が時計について大正13年(1924)年から使用を始めたものであって、大正14年製造開始の「10型腕時計」には、時計の正面に「SEIKO」が表示されており(甲第6号証)、それから今日まで80年近くの長きにわたって、「SEIKO」は、請求人によって時計について継続して使用されてきた。
甲第23ないし第105号証は、本件商標の登録審決時及び出願時において、請求人が「時計」について「SEIKO」の標章を使用した例であり、この実績だけでも「SEIKO」は請求人が「時計」について使用する著名商標であるといえる。
(2)請求人が「SEIKO」を時計について使用してきた間に、「SEIKO」時計は、オリンピック大会及び各種の国際競技大会において公式時計として採用され(甲第7及び第8号証)、とくに本件商標の出願前に3回、登録審決まで2回のオリンピック大会が全世界にテレビ放送された中で、各種計測機械上に表示された「SEIKO」が世界各国に放送されたこと、請求人が宣伝広告費用として毎年巨額を投じてきたこと(甲第17ないし第22号証)、「SEIKO」の標章が、AIPPI日本部会発行の「有名商標集」に掲載されていること(甲第130及び第132号証)、特許庁のホームページ「日本国周知・著名商標」に著名商標として掲載されていること(甲第133号証)などからすれば、「SEIKO」の標章は、本件商標の登録審決時及び出願時において、請求人が「時計」について使用する著名商標であることは明らかである。
また、「SEIKO」時計が、昭和39(1964)年開催の東京オリンピックにおいて初めて公式時計として採用され、その後もオリンピック大会をはじめ各種の国際競技大会において公式時計に採用され、その度に競技の内容がテレビ放送されて計測機械上に「SEIKO」が表示されたこと(甲第7、第8、第128及び第129号証)、リサーチ会社及び新聞社が行った有名企業のブランドイメージ調査において常にトップクラスの評価を得ていたこと(甲第132ないし第139号証)、さらには、これらの有名ブランドのランキング調査が、商品ブランドの評価だけではなくブランドに含まれる企業イメージも評価しており、この中で、請求人の「SEIKO」が常にトップクラスの評価を得ていたことを総合して判断をすれば、「SEIKO」は、本件商標の登録審決時及び出願時において、請求人が「時計」について使用する著名商標であっただけでなく、請求人の著名なハウスマークとなっていたのである。
(3)さらにまた、請求人は、時計以外の商品及び役務についても「SEIKO」を使用しているだけでなく(甲第7、第8、甲第12ないし第16号証、甲第106ないし第127号証)、多くの関係会社を有しており、これら関係会社とともに企業グループを形成して時計以外にも多くの商品及び役務について「SEIKO」を使用して企業活動をしている。換言すれば、請求人及び関係会社は「SEIKO」を共通して使用する企業連合体として多角経営を行っていたのであり(甲第7及び第8号証)、その結果、「SEIKO」の標章は、本件商標の登録審決時ならびに出願時において、請求人の著名なハウスマークとしてだけでなく、請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークとなっていたといえるのである。このことは、平成14(2002)年開催のソルトレイク冬期オリンピックにおいて、請求人ならびに関係会社が公式時計を担当したこと(甲第9ないし第11号証)を挙げるまでもなく今日においても全く揺るぎないものなのである。
(4)「SEIKO」に化体された信用は、請求人及び関係会社が長年にわたる企業努力によって培ってきたものであって、この信用は第三者によって侵されてはならないものであり、第三者は、如何なる商品及び役務についても「SEIKO」を使用する権利はないのである。第三者による「SEIKO」の使用は、請求人及び請求人の企業グループとの間で商品及び役務について出所の混同を招くものであり、これは著名商標の只乗り行為であって到底認められるものではない。
3 商標法第4条第1項第12号該当について
(1)引用商標は、別掲(2)のとおり、「SEIKO」の文字を横書きしてなり、大正14(1925)年1月19日に出願、第21類「時計並其各部及附属品」を指定商品として同年12月2日に登録され、その後、5回の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである(甲第3及び第4号証)。
引用商標は、本件商標の出願日までに、商品については第1類から第34類について防護標章登録第1号から第39号の登録を受け、またサービスマークの登録制度を導入した商標法の改正を機に、現行区分の第35類から第42類(ただし、第42類は省令改正前のもの)の全ての役務について平成7、8年に防護標章登録第40号から第47号の登録を受けた。
さらに、引用商標は、防護標章登録第1号から第39号で登録を受けていなかった商品「カフスボタン,宝玉及びその模造品」並びに「ボタン類」についても、平成9年に防護第48号及び第49号の登録を受け、これによって、「時計」を除く全ての商品及び全ての役務について防護標章登録を受けたものである。
また、登録を受けた防護標章登録のうち、第1号から第39号については既に2回ないし1回の更新登録を行っており、登録を受けた防護標章登録は現在全て有効に存続している。
引用商標は、時計を除く全ての商品及び役務について防護標章登録を受けたものであり、最初の防護標章登録を受けたときから4半世紀の長きにわたって著名性を保持しているものである。すなわち、防護標章登録の更新登録手続においては、出願ごとに防護される標章が著名性を保持しているか否かの審査を受けなければならないように定められており、引用商標は、更新登録出願時に、いずれの区分についても商標法第64条に規定された防護標章登録の登録要件を備えていることが認められて更新登録がなされている。
したがって、引用標章は、全ての商品及び全ての役務について防護標章登録の登録を受けた実績から判断しても、日本を代表する著名商標の一つであることは明らかである。
(2)本件商標は、平成4年9月30日に出願されたものであるが、引用商標について第35類の役務を指定役務とする防護標章登録出願も、平成4年9月30日に出願され、同7年1月26日に防護標章登録第40号として登録された。
一方、本件商標が拒絶査定された平成6年8月5日の時点で、引用商標についての防護標章は登録されていなかったから、審査時に本件商標を商標法第4条第1項第12号の規定によって拒絶査定することはできなかったが、登録審決をした平成10年5月15日には、引用商標の防護標章登録第40号がすでに登録されていたのである。にもかかわらず、審判合議体は、本件商標が上記規定に該当するとしなかったが、その理由が、仮に本件商標と引用商標が同一でないと判断したものであるとすれば、合議体は「標章の同一」をあまりにも狭く解釈しすぎている。
標章の同一が機械的にコピーされたもののように寸分違わないものをいうのであれば、同法第64条の規定は無意味なものとなってしまうことになる。本件商標と引用商標は、共にゴシック体であって、「S」と「O」については、引用商標がやや丸みを有しているのに対し、本件商標がやや角ばっている感じかするが、この程度の差は微差にすぎず、さらに「S、O」を除く「EIK」の3文字については両者全く同一書体で構成されている。このため、本件商標と引用商標は、きわめて酷似したものであり、両者は同一の商標であるといえる。
本件商標は、引用商標について防護標章登録第40号として登録された登録防護標章と同一の商標であって、商標法第4条第1項第12号に該当するものである。
4 商標法第4条第1項第15号該当について
(1)本件商標は、「使用に基づく特例の適用」を主張して出願されたものであって、審査において、「この商標登録出願に係る商標は、『SEIKO』の文字よりなるものであるところ、これは株式会社服部セイコー(東京都中央区銀座4丁目5番1号)が商品『時計』について使用する商標として、世界に広く認識されているものであるから、このようなものをその指定役務について使用するときは、前記の者の業務にかかる商品と混同を生ずるおそれがあるものと認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。」という理由によって拒絶査定された。
本件商標は「使用に基づく特例の適用」を主張したものであるが、特例出願は、平成3年法律第65号で定めた「附則」第5条第3項の規定により、平成4年4月1日から同年9月30日までに出願された役務に係る商標登録出願において、2以上の同一又は類似の出願があったときは「特例出願」を優先するというものである。
すなわち、上記期間内に、2以上の同一又は類似の役務商標登録出願がなされたとき、それらが特例出願と通常出願であれば、特例出願を登録して通常出願は拒絶し、また2以上の出願が共に特例出願であれば、何れの特例出願も登録をすると規定したものであって、「特例出願」であれば著名商標が存在する場合であってもこれを登録をする、と規定したものではない。
(2)使用に基づく特例出願に係る使用の事実を証明する資料は、出願前から日本国内において自己の業務に係る役務について使用しているものであることを立証すれば足りるものであった。本件商標において、商標の使用説明書に添付された資料は、社団法人大阪ビルメンテナンス協会発行の使用証明書、被請求人の経歴書、星光グループ業務案内と称するパンフレットであり、これらの資料は、本件商標が出願時に被請求人によって日本国内で使用されていたことを裏付けるとされるものとして提出されているが、このことを以て、著名商標が存在する中で本件商標を登録する根拠とはならない。
本件商標の指定役務が属する第35類についてされた防護標章登録の登録は、本件商標の出願後ではあるが、これは、引用商標が本件商標の出願時に著名でなかったものが短時間のうちに著名になったということではない。引用商標は、本件商標の出願時において、請求人が時計について使用する著名商標であると共に、請求人及び請求人の企業グループの著名なハウスマークであり、本件商標の出願時においても、引用商標を他人が本件商標の指定役務について使用すると、当該役務の需要者が請求人の業務に係る役務と誤認し、役務の出所について混同を生ずるおそれがあったといえる。したがって、引用商標についてなされた防護標章登録出願の登録査定は、引用商標を他人が時計以外の役務について使用をすると、当該役務は請求人の業務に係るものと誤認し、出所の混同をするおそれがあることを単に追認したものに他ならないのである。
(3)請求人は、本件商標が出願公告された時に、当該商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当して登録できないことを理由とする登録異議申立てを行ったが、異議決定は、「SEIKO」もしくは「セイコー」の文字が請求人の時計等を表示するものとして需要者の間で広く認識されていることは認めたものの、「時計」と「建築物における来訪者の受付及び案内」とはおよそ共通する要素を見出し得ないと認定して出願商標を登録したのであるが、出願商標の登録審決時及び出願時に、「SEIKO」は、請求人が「時計」について使用する著名商標であっただけでなく、請求人及び請求人の企業グループの著名なハウスマークとして取引者、需要者間で広く認識されていたのであるから、「時計」と「建築物における来訪者の受付及び案内」という商品と役務の関連性についての審理をしただけでは不十分なのであって、請求人及び請求人の企業グループの著名なハウスマークの「SEIKO」を、被請求人が当該役務について使用したときに、請求人の業務にかかる役務と出所の混同をするか否かについての審理がされなくてはならなかった。
この点、異議決定は、「時計」と「出願商標の役務」はおよそ共通する要素がないというだけで結論を出したが、これでは、審理が十分尽くされたとはいえないものであった。
なぜなら、他人の業務に係る役務と混同するおそれがあるか否かが問題となるときに、その他人が、全ての商品又は役務を取り扱っていることが常に要求されるものではなく、商標法第4条第1項第15号に関する商標審査基準においても、多角経営の可能性が考慮されれば足りるとされているのであるから、現に、請求人及び請求人の関係会社が多角経営を行っていること並びに「SEIKO」が著名性を有していることを合わせて考慮すれば、審判合議体は、被請求人が、「SEIKO」を「建築物における来訪者の受付及び案内」について使用をすると、取引者、需要者は、当該役務が請求人又は請求人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずるおそれがあったと認定しなければならなかった。
それにもかかわらず、異議決定は、単に「時計」と「出願商標の役務」を比較しただけであって、これでは「SEIKO」の著名性の判断が十分に審理されていなかったことになる。
要するに、異議決定は、請求人の「SEIKO」が、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークであることを考慮しないで結論を出した点に誤りがあると言わざるを得ない。
(4)一方、被請求人は、審査における審査官の拒絶理由通知に対して提出した意見書において、「SEIKO」を、総合ビルメンテナンス業を営む上での役務について使用しているが、請求人の「SEIKO」との間で混同を生じたことはなかったと述べている。しかしながら、出願商標の登録適格を判断するときには、現実問題として混同したか否かを判断するのではなく、混同を生ずるおそれがあるか否かが問われるのであり、ここでは、「おそれ」があれば出願は拒絶されるのである。
審判合議体は、「SEIKO」からは「成功、精巧」など30以上の成語が存在し、また、NTT発行の「ハローページ'93.3'94.2」によれば「セイコウ、セイコー」の文字を含む営業表示が100以上存在することを理由に異議申立てを退けたのであるが、「SEIKO」は、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークとして取引者、需要者間で広く知られているのであるから、出願商標は請求人の業務に係る役務と出所において混同を生ずるおそれがあると認められなければならず、「成功、精巧」の成語があったり、また「セイコウ、セイコー」の文字を含む営業表示が存在していたとしても、「SEIKO」と表示された標章を被請求人が使用すれば、取引者、需要者は請求人の業務であると誤認し、役務の出所について混同を生ずることは明らかである。
異議決定は、本件商標と「SEIKO」が同一又は類似であり、「SEIKO」が、請求人の時計についての著名商標であると認めたものの、「時計」と「出願商標の役務」はおよそ共通する要素がないと認定しただけで、「SEIKO」の著名性についての審理を十分尽くさないまま結論を出した点に誤りがあったといわざるを得ない。
(5)請求人は、「SEIKO」の標章を、登録第3055509号(建物の貸与)及び登録第3370490号(駐車場の提供)によって役務商標として商標登録を受けている。これらの登録は、いずれも「使用に基づく特例出願」によるものであり、請求人は、本件商標の出願時に「SEIKO」を使用して「建物の貸与,駐車場の提供」業務を行っていただけでなく、登録審決時においても、その業務を行っていた(甲第12ないし第16号証)。
本件商標の役務「建築物における来訪者の受付及び案内」と、請求人が行っている役務「建物の貸与,駐車場の提供」とは類似していないが、「建物の貸与,駐車場の提供」業務を行う者であれば、「建築物における来訪者の受付及び案内」業務を行うことは容易に予測されることであるから、被請求人が本件商標を、その指定役務に使用した場合には、需要者が時と処を異にすれば、当該役務が請求人と組織的・経済的に何らかの関係ある者によって提供されていると誤認することは当然のことといえるのである。
本件商標についての異議決定及び審決は、「SEIKO」が、請求人及び請求人の企業グループの著名なハウスマークであることの認定を誤って結論を出したばかりでなく、請求人が行っている「建物の貸与,駐車場の提供」業務を考慮しないで結論を出した点についても誤りがあると言えるのである。
(6) ところで、商標法第4条第1項第15号に関し、最高裁判所から注目すべき判決が平成12年ならびに平成13年になされた。
ア)平成12年7月11日判決 平成10年(行ヒ)第85号審決取消請求事件(甲第143号証)
最高裁は、本件判決の中で、「一 商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は、当該商標をその指定商品等に使用したときに、当該商品等が他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ、すなわち、いわゆる広義の混同を生ずるおそれがある商品を包含する。二 商標法4条1項15号にいう「混同を生ずるおそれ」の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の関連性の程度、取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし、右指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断すべきである。」と判示し、商標法第4条第1項第15号の規定が、著名商標への只乗り(いわゆるフリーライド)及び当該表示の希釈化(いわゆるダイリューション)を防止し、商標の識別機能を保護することによって商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするものであることを明確に示した。
上記最高裁の判決は、本件無効審判請求事件についてもあてはまるものである。
イ)平成13年7月6日判決 平成12年(行ヒ)第172号審決取消請求事件(甲第144号証)
最高裁は、本件判決の中で、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」の判断基準について、上記の最高裁平成10年(行ヒ)第85号判決を引用し、その上で、「引用商標が元来は普通名称であり、その独創性が低いとしても、指定商品が日常的に消費される性質の商品であることやその需要者が特別な専門的知識を有しない一般大衆であり、これを購入するに際して払われる注意力はさほど高いものでないと見なければならないから、本願商標の本号該当性を判断する上で、引用商標の独創性の程度が低いことを重視するのは相当でないというべきである。」と判示した。
この判決は、まさに本件無効審判請求事件そのものであり、たとえ、「SEIKO」から「成功」「精巧」などの成語が存在し、又は、「セイコウ」「セイコー」の文字を含む営業表示が存在するとしても、「SEIKO」が、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークであるときは、他人に商標登録をしてはならないのであり、最高裁の判決は、このことを明確に判示したというべきである。
(7)以上のとおり、「SEIKO」は、本件商標の登録審決時及び出願時に、請求人が時計について使用する著名商標であると同時に、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークであったから、被請求人が、本件商標をその指定役務について使用をすると、需要者が、請求人又は請求人と組織的・経済的に何等かの関係を有する者の業務であるかのように誤認し、その役務の需要者が役務の出所について混同を生ずるおそれがある商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
5 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)「SEIKO」の著名性について
被請求人は、請求人が時計について使用する「SEIKO」が著名であることを認めたうえで、その範囲は、時計を中心にして、宝飾品、精密機械、時間測定機器程度であると主張しているが、失当である。
被請求人は、甲第135ないし第142号証の企業イメージ調査に関し、コカ・コーラは飲料、日本航空は航空輸送、高島屋は百貨店のイメージを前提としており、企業イメージ調査で「SEIKO」が上位を占めているとしても、それは、時計のSEIKOのイメージがオーバーラップしているにすぎないと主張している。
しかし、例えば、コカ・コーラ不動産、JAL不動産と言った企業が出現し、又はこれがブランドとして使用されれば、一般世人は、これらの業務はコカ・コーラ又は日本航空が行っている業務であると誤認するであろうことは明らかである。
請求人が使用する「SEIKO」が時計について著名であることは、被請求人自身が認めているだけでなく、特許庁においても顕著な事実であるから、仮に「SEIKO不動産」といった企業が出現すれば、それは請求人又は請求人と何らかの関連がある者が行う業務であると誤認することは当然のことである。これに加えて、請求人が行う不動産業務は、遊休不動産を利用したといったものではなく、甲第14号証に示すように、パンフレットに「SEIKO」を表記して広くテナントを募集した貸しビル業であり副業的なものでない。
請求人の「SEIKO」が著名であるからこそ、「SEIKO」ブランドは企業イメージ調査で上位を占めたのであり(甲第135ないし第142号証)、それにもかかわらず、請求人の「SEIKO」が著名商標であることを認めたうえでなす被請求人の上記主張は、自己矛盾を犯していると言える。
また、そもそも著名商標の著名性の範囲は、当該商標権者が実際に取扱っている商品、役務の範囲内に止まるものでないことは言うまでもないところ、被請求人のこの点に関する主張は、請求人の「SEIKO」が著名商標であることを認めておきながら、著名性の範囲を、請求人が取扱っている商品、役務の範囲中の更にその一部に止めようとしているものであり、およそ失当と言うほかはないものである。
(2)この点に関して、被請求人は、請求人の「SEIKO」について、時計の広告量に比べて他の商品の広告が少ないとも述べている。
しかし、請求人は、審判請求時に、請求人又は関係会社が時計以外の商品又は役務について「SEIKO」を使用している実績としてカタログを提出しているから(甲第106ないし第127号)、被請求人の主張は失当である。
なお、請求人が審判請求時に提出したものはカタログが主であったから、新たに、請求人及び請求人の関係会社が時計以外の商品について行った広告、並びに時計以外の商品に使用した実績を追加提出する(甲第145ないし第160号証の2)。
上記のとおり、請求人又は請求人の関係会社が使用する「SEIKO」は、使用商品が産業用ロボット、電池などにも及んでおり、広範囲の業種において使用されていることが明らかである。
しかも、使用されている「SEIKO」は、請求人の会社案内に表記されたものと同一であり、請求人及び請求人の関係会社からなる企業グループは、商品又は役務について、常に統一された「SEIKO」を使用しているのであって、これこそ、請求人及び請求人の企業グループを表示するハウスマークなのである。
よって、上記追加提出の書証ならびに請求人が本件審判請求時に提出した各書証を検討する限り、請求人の「SEIKO」が、請求人の著名商標であり、その著名性の範囲は、「時計を中心にして宝飾品、精密機器、時間測定機器程度」に止まるものではなく、全ての商品、役務に及んでいることが極めて明らかである。
(3)被請求人は、「星光」とそのローマ字綴り「SEIKO」を、ごく自然に被請求人の略称や被請求人の役務の商標として使用していると述べると共に、乙第10、第15及び第16号証を使用実績として提出している。
しかし、これらの各書証の作成時期は、乙第10号証が平成14年8月(同号証裏表紙「02.8.2,000」の表示)、乙第15号証が平成14年中(同号証表紙上の「2002」の表示)、乙第16号証は時期不明というものであり、これらは、いずれも本件商標の出願時(平成4年9月)、同登録審決時(平成10年7月)よりもはるかに後の時期の作成にかかるものであるか、時期不明のものばかりである。
したがって、上記各書証は、そもそも被請求人の主張を裏付けるための証拠としての適格性を有しているものではない。
上記各書証中において、被請求人が使用している商標は「星光」と「S字マーク(2つの四角図形を45°ずらした輪郭の中にS字を表記したもの)」であり、「SEIKO」は単に社名「星光」を補助的にローマ字表示しているにすぎない。
これを具体的に述べれば、会社案内として提出された乙第10号証は、表紙に「SEIKO GROUP」の表記があるものの、表紙全面にわたって大きな上記「S字マーク」が表記されており、また、同号証8頁に「SEIKOPATROL」を表記した自動車が掲載されてはいるが、ここでは該記載とともに「S字マーク」が併記されているので、たとえ「SEIKO GROUP」「SEIKO PATROL」の表記がなされていたとしても、これらは「星光」の社名を、単にローマ字表示している程度のものにすぎない。
また、乙第15号証は、従業員・得意先向け刊行物であるとして提出されているが、ここでも表紙上に「SEIKO PLANET」と共に「星光プラネット」が表記されており、また、第20回全国ビルクリーニング技能コンクール大会を紹介した記事中に表示された写真中では、主催者表示として「星光ビルサービス株式会社」の社名と共に「S字マーク」が表記されているが、「SEIKO」は表記されていない。「星光」ないし「S字マーク」については上述のとおりの使用がなされているものの、「SEIKO PLANET」は、「星光プラネット」を、単にローマ字で記述的に表示したものに止まっている。
さらに、乙第16号証は、従業員ユニフォームとして提出されており「SEIKO」が表示されてはいるが、他方で肩部分に「S字マーク」が表記されている。したがって、従業員ユニフォーム上に表記された「SEIKO」も、「星光」をローマ字表示した程度のものにすぎない。
これに加えて、乙第9号証(同号証は、平成14年4月以後「同号証1頁、3頁を参照」の作成であり、本事件においての証拠としての適格性を有しているとはいえない)は、会社経歴書であるが、会社経歴書と言えば、会社案内と共に自己PRには欠かせない重要なパンフレットであると考えられるところ、当該号証中には「SEIKO」が使用されていない。前述したように、被請求人は、「SEIKO」をごく自然に被請求人の略称や役務の商標として使用していると述べているが、そもそも会社のPR用パンフレットとなる経歴書に「SEIKO」が使用されていないものである。
この他、乙第17号証(同号証も、裏表紙上に見られる「環境マネジメントシステム登録証」中の記載から判断すると、作成時期は平成13年以後であり、本事件においての証拠としての適格性を有しているとはいえない)も、被請求人及び関係会社の業務案内として提出されているが、該パンフレットも会社のPR用パンフレットであるにもかかわらず「SEIKO」は使用されていない。
以上のとおり、被請求人及び被請求人グループが使用する商標は「星光」及び「S字マーク」が主たるものであって、「SEIKO」はごく一部で使用されているだけであり、たまたま使用された場合であっても、せいぜい社名のローマ字表示として付随的に使用されているという程度にすぎないものである。
(4)もっとも、被請求人の「SEIKO」の使用が、社名のローマ字表示として付随的なものであるとしても、被請求人が、自らの役務の提供にあたって「SEIKO」を使用することは、請求人の著名な商標である「SEIKO」に化体されている信用を損ない、かつその出所について混同を生ぜしめるものである。
すなわち、被請求人による「SEIKO」の使用は、役務の出所について混同を生じせしめるだけでなく、請求人の著名商標に化体された業務上の信用を損ない、さらには、請求人及び請求人の企業グループの著名なハウスマークに化体された業務上の信用をも損なうものであり到底許されるものではなく、同商標の登録も許されるものではない。
(5)本件商標が商標法第4条第1項第12号に該当することについて
被請求人は、請求人が会社案内中で使用している「SEIKO」のロゴが防護標章登録を受けた標章と異なっているので、請求人の防護標章登録には無効理由が存在すると主張しているが、失当である。
防護標章登録制度は、商標権の効力を禁止権の範囲にまで拡張させるものであって、商標法第64条にその登録要件を規定しているものである。
商標法は、防護標章登録を受ける条件として「標章が登録商標と同一であること」を要求しており、防護標章登録を登録商標と同一の標章に限定しているが、現実に使用されている著名商標と防護標章となる登録商標とは、相互に同一性を有するものであればよいとした判断がなされている(東京高裁平成7年(行ケ)第88号、平成8年1月30日判決:甲第161号)。
上記判決は、ローマ字の小文字と大文字の違いがあっても、両者に同一性が認められると共に、使用商標が著名性を有していれば、登録商標を防護標章として登録してよいとするものであるところ、請求人の使用商標と登録防護標章の場合には、書体に極めてわずかな違いは認められるものの、両者が同一性ある商標であることは疑う余地がないほど酷似しているものであるから、防護標章の登録要件を具備していることはいうまでもないところである。
本件無効審判事件で議論されるべきは、請求人の防護標章登録に係る標章が使用商標と同一であるのか否かではなく、本件商標と請求人の登録防護標章とが同一であるのか否かということである。
本件商標と請求人の登録防護標章は、極めて酷似したものであって、社会通念上において両者は同一性がある商標であると認められるから、本件商標は同法第4条第1項第12号の規定に該当することが明らかである。
(6)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
被請求人は、請求人の「SEIKO」が時計について著名であることは認めたものの、本件審判請求に係る指定役務については、出所の混同を生じない旨を主張しているが、以下のとおり失当である。
(ア)表示の類似性
被請求人は、請求人が使用する商標は明朝体で構成されており、被請求人の本件商標はゴシック体であるから、両者は外観が大きく異なると述べているが、請求人使用の商標は、ゴシック体を基調としたものであって、このような書体を明朝体とはいわない。明朝体は、縦線が太く、横線が細いものであり、大部分の新聞が採用している書体である。いずれにしても、請求人使用の商標と本件商標が、一見して同一性を有していることは明らかである。
(イ)周知著名性
被請求人は、請求人の「SEIKO」が時計について著名であることを認め、請求人の「SEIKO」の著名性が普通に及ぶ範囲は、宝飾品、精密機械、時間測定機器程度であると主張しているが、商標が著名になるには、多数の商品・役務について使用されることが条件というものではなく、使用された商品・役務の数に係わりなく著名になるものが数多く存在しており、しかも、著名性の程度が圧倒的に高いものが存在している。
請求人の時計は多種類あり、一般世人ないしは需要者は、腕時計、置時計、柱時計、目覚まし時計などを通じて、日常的に「SEIKO」と接している。
また、学校、職場、公共施設、公園、ゴルフ場などには大型時計が設置されることが少なくないので、ここでも「SEIKO」と接する機会があり、一般世人ないしは需要者は、日夜、請求人の「SEIKO」と接しているのである。
そうであれば、被請求人が管理する建物・施設にも、請求人の「SEIKO」時計が設置されていることが少なくないであろうことを勘案すると、このような建物・施設で、被請求人の従業員が「SEIKO」を表示したユニフォームを着用して「建築物における来訪者の受付及び案内」業務を行えば、又は、「SEIKO」時計が設置されていない建物・施設において、被請求人の従業員が「SEIKO」を表示したユニフォームを着用して上記業務を行った場合にも、取引者はもとより一般需要者は、請求人の「SEIKO」と被請求人の「SEIKO」を明確に区別することは到底できず、その従業員を、請求人の子会社あるいは請求人と何らかの関連ある企業の従業員であると誤認することは当然のことである。
請求人の商品も被請求人の役務も、いずれも一般世人にとって身近なものであり、請求人及び被請求人は、決して特殊な商品・役務を取り扱う企業ではないものであるから、被請求人が、本件商標の役務に「SEIKO」を使用すれば、役務の出所について請求人との間で混同を生ずるおそれがあることは明白である。
(ウ)独創性
請求人の「SEIKO」は、上述のとおり、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌、その他の媒体を通じて日本国内だけでなく世界各国において広く知られたものとなっており、その著名性は圧倒的に高いものとなっている。
しかも、一般世人は、日常的に「SEIKO」と接する機会があるのであるから、「出所の混同を生ずるおそれ」の有無を判断するときに、請求人の「SEIKO」が造語でないから独創性を欠き、「出所の混同を生ずる」おそれもないと結論するのは失当である。
また、被請求人は、名称の一部にセイコー又はセイコウの称呼が生ずる語を有する法人が存在することを主張し、乙第21ないし第30号証を提出しているが、これらは、請求人使用の「SEIKO」の著名性を否定するものではない。
請求人は、これまでも被請求人が指摘するまでもなく、第三者による「SEIKO」の無断使用例を発見した場合には、その都度、その使用の中止を申し入れてきている。そこで、その一例を示せば、以下のとおりである。
・平成2年4月に申し入れた「SEIKOネズミ撃退器」における「SEIKO」の使用中止ならびに商号変更の例(甲第162号証の1ないし5)。
・平成4年5月に申し入れた「SEIKO、セイコーハミガキ、SUNSEIKO」における「SEIKO、セイコー、SUNSEIKO」の使用中止例(甲第163号証の1ないし4)。
・平成10年5月に申し入れた「SEIKO、セイコー(オフィス用品)」における「SEIKO、セイコー」の使用中止ならびに商号変更の例(甲第164号証の1ないし5)。
・平成10年9月に申し入れた「SEIKO、セイコーハウジング」における「SEIKO、セイコー」の使用中止ならびに商号変更の例(甲第165号証の1ないし7)。
・平成12年10月に申し入れた「SEIKO自動車教習所及びSEIKO賃貸建物」における「SEIKO」の使用中止例(甲第166号証の1ないし7)。
以上のとおり、各事例は、請求人の「SEIKO」の著名性が、あらゆる商品や役務に及んでいることを具体的に示しており、このため請求人から申し入れを受けた各相手方も、全て請求人からの申し入れに応じて、自らが使用してきた表示である「SEIKO」の使用の中止に応じているものである。
請求人は、これまで「SEIKO」の無断使用者に対して使用中止又は変更を請求して、これを実現してきているが、ブランド管理は、必要により今後も的確に行っていく予定である。
仮に、被請求人指摘の「SEIKO」表示の使用例が現存しているとしても、これらは、請求人からの申し入れに応じて使用を中止すべき事例であるこというまでもない。したがって、上記の事例をもってして、請求人の「SEIKO」表示の著名性が否定されることはあり得ないものである。
(エ)ブランドの使用される商品・役務と対象となる他人の商品・役務との関連
被請求人が行う「建築物における来訪者の受付及び案内」業務は、街中にある建物又は施設が対象となっており、また、その業務は、特別な時間帯ではない、ごく通常の時間に行われるものである。
一方、請求人の「SEIKO」時計は、個人的に使用される場合はもとより、公共的な場所で使用される場合のどちらの場合においても、世間一般の人々が普通に使用し、また接することができるものであって、決して、特殊な職業人や特定の年齢層の人のみが使用対象となるものではない。
被請求人が登録を受けた役務と請求人の時計とは「およそ共通する要素を見出しえない」と結論したのが、異議決定であったが、被請求人が管理する建物・施設に請求人の「SEIKO」時計が設置されていることも少なくないし、また、このような設置の有無にかかわらず、このような場所で、被請求人が「SEIKO」を表示した役務を提供した場合には、請求人の著名な商標「SEIKO」と被請求人の「SEIKO」表示との間には、「SEIKO」を共通とする要素が存在する。
(オ)商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
請求人の「時計」及び被請求人の「建築物における来訪者の受付及び案内」業務は、いずれも特別な知識又は能力を備えた者が取り扱うものではなく、ごく一般的な世人が使用する商品であり、また、ごく一般の世人が提供を受け得る役務である。
そうであれば、被請求人が管理する建物・施設においても、請求人の「SEIKO」時計が設置されていることは少なくないし、また、このような設置の有無にかかわらず、一般世人の普通の注意力をもってすれば、被請求人による「SEIKO」を表示したうえでの役務の提供が、請求人又は請求人の関係会社によって提供されていると誤認されることは明らかであり、結局のところ、本件商標は、請求人の「SEIKO」との間で、役務の出所につき混同を生じさせるおそれが高いものと言わざるを得ないものである。
(カ)2003(平15).4.22付け「日経MJ」に、日経BPコンサルティングが実施した「ブランド・ジャパン2003」の調査結果が掲載されており(甲第167号証)、これによれば、請求人は、総合ランキングが41位であり、さらに、イメージ別ランキングの「品質が優れている」部門で2位にランクされているのであり、「SEIKO」が、今日においても、請求人の著名商標であると同時に、請求人及び請求人の企業グループを表わす著名なハウスマークであることを裏付けているものである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1ないし第30号証を提出している。
1 請求の理由の認否と簡単な意見
(1)セイコー株式会社(以下「セイコー(株)」という。)及び関連会社の歴史・事実そのものの成立は争わないが、甲第8号証のセイコー(株)の会社案内のSEIKO商標のロゴ体が、請求人防護標章のロゴ体とは全く異なる、請求人使用主要商標であることが注目される。また、請求人は、時計以外に「宝飾品、眼鏡レンズ、・・・・パーソナルコンピュータ・・・・小型精密組立ロボット、その他」を販売している模様だが、その販売量・市場規模は僅少であると推測できる。
(2)請求人の主張「3(1)」の内、引用商標の防護標章の取得・更新の手続きは認めその余は争う。本件防護標章の防護第40号(35類)、同第42号(36類)、同第45号(37類)、同第44号(39類)、同第46号(42類)に関する登録手続は、著名性ついては、「特許庁における顕著な事実」に依存し、著名性を立証する証拠は提出されておらず、また、「防護標章の指定商品・役務との混同のおそれ」の立証もなされていない。これを立証するために、本件商標と同一分類の防護第40号(35類)の出願書類を、乙第8号証として提出する。このように本件防護標章登録は、「絵に書いた餅」、「張り子の虎」のような存在で、全ての商品・役務に防護標章登録を得ていても、(全ての商品・役務に著名性が及ぶ)著名商標とはいえない。
(3)請求人及び請求人の関係会社が取り扱う業務が商品に限られないという事実そのものの成立は争わないが、小売店の経営指導はメーカー・卸売業者にとって当たり前のことである。また、建物の貸与や駐車場の提供も、遊休不動産を所持しているなら、個人・法人を問わず行っており、大規模・専業か否かが問題であり、請求人の当該業務は付随的業務にすぎない。
(4)請求人及びその企業グループの売上高、宣伝広告費等の事実そのものの成立は争わないが、毎年140億円を超える広告費のほとんどは、時計の広告に費やされたと思われる。
(5)請求人が行う宣伝広告が多種、多様であること、「SEIKO」時計がオリンピック等において公式時計として採用された等の事実そのものの成立は争わないが、時計の広告量の膨大なことに比して、他の商品の広告は少ない。広告のSEIKOの商標は、防護標章とは全く異なる参考資料の請求人使用主要商標である。また、請求人がオリンピックの時計及び時計に付属する計測機材の公式サプライヤーであることも認める。
しかし、これら膨大な広告資料やオリンピックからも、SEIKOが時計の商標として有名であることは認識できるが、それ以上のものはない。
(6)企業・ブランドの知名度の調査結果が発表され、請求人の知名度がベスト10に入っていること等の事実そのものの成立は争わないが、ブランドイメージ調査は、調査結果上では自明なものとして表れていないが、ブランドの使用されている商品又は役務との関係が不可分であることを忘れてはならない。即ち、調査協力者は、コカ・コーラはコーラを中心としたノンアルコール飲料、日本航空は航空輸送、高島屋は百貨店をイメージの前提としており、甲第135ないし第142号証のイメージ調査でSEIKOが上位を占めているとしても、時計のSEIKOのイメージがオーバーラップしているにすぎない。因みに、ブランドが出所混同を生じるか否かは、こうした有名度(著名度)に加えて、甲第143,144号証の判例で示された他の基準、例えば、ブランドの言葉としての独創性、そのブランドの使用される商品・役務と対象となる他人の商標の商標・役務との関連性、取引者・需要者の関連性などを考慮することが必要である。
(7)請求人は、先ず、SEIKOの時計の商標としての著名性を主張している。被請求人もこのこと自体をとやかく言わないが、防護標章の原登録商標の使用例が甲号証に見られないので、著名商標は使用主要商標を指すと解釈しておく。
また、SEIKOが請求人のハウスマークという点も防護標章の原登録商標の使用例が甲号証に見られないので、使用主要商標を指すと解釈しておく。
しかし、SEIKO特に請求人使用主要商標が、請求人グループのハウスマークとの主張には大いに異議がある。何故なら、請求人グループ各社のパンフレット等で立証されていないからである。請求人は、セイコーエプソン株式会社を関係会社としているが、被請求人代理人の調べた限りでは、セイコーエプソン株式会社はEPSONをハウスマークにしているようである。
請求人のグループ会社といっても、財閥系や日立・東芝・SONY等の電気メーカーに比べてその裾野(業種)は狭く、請求人グループ会社イコール請求人といってもよく、その社章をハウスマークというのが妥当で、著名な使用商品は時計のみといっても過言ではない。
ところが、請求人は、上記のような状況下であるにも拘わらず、第三者は、如何なる商品・役務についてもSEIKOを(その著名性により)使用する権利はなく、第三者によるSElKOの使用は(全て)請求人及び請求人グループとの間で出所の混同を招き、著名商標の只乗り行為になり、到底認められることではないと、決めつけている。
もちろん、後述するように、被請求人は、SEIKOを使用することを只乗り行為とは全く考えたことはなく、請求人の当該主張は、請求人自身が、甲第143及び第144号証の判例で示された基準、即ち、「表示の類似性の程度、周知著名性及び独創性の程度、そのブランドの使用される商品・役務と対象となる他人の商標の商標・役務との関連性、取引者・需要者の関連性等を、商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断する。」という基準を十分吟味していない。即ち、請求人は、自己に都合のよいことだけを主張し、SElKOの絶対著名性を主張しているのであり不当である。
因みに、甲第143号証の最高裁平成10年(行ヒ)第85号では、「香水」の著名商標と、「化粧用具、身飾品、頭飾品、かばん類、袋物等」の商標との混同は、女性の装飾という用途で一致していることが重要要素になっている。
甲第144号証の最高裁平成12年(行ヒ)第172号では、ラルフ・ローレンの「POLO」が、造語による商標に比して、独創性の程度は低いが、引用・本願両商標の対象が洋服で商品の関連性が強いため混同の認定がなされた。請求人は、この最高裁事件が本件事件にそっくりと述べているが、商標の独創性に言及している点では、本件事件の参考になるが、商品・役務の関係が請求人と被請求人全く異なる本件とは結局事案が違う。
2 被請求人の主張
(1)被請求人会社について
被請求人会社である星光ビル管理株式会社は、乙第9号証の経歴書や乙第10号証の会社案内(SElKO GROUP 星光グループ業務案内)に示されるように、総合ビルメンテナンス会社であり、昭和25年にエビス土地建物株式会社として設立され、昭和28年に日本生命保険相互会社が経営参加し、昭和50年に現在の星光ビル管理株式会社となった。先に述べたように星光の星は日本生命の日生から採ったものである。その後、社業は順調に伸び、先に述べたように、日本生命が所有するビル群のビルメンテナンスで培った技術・ノウハウを生かして多数の他社ビル・マンション・病院・工場・イベント施設等のビルメンテナンス(全国4000件以上)を行っている。星光ビルサービス株式会社他の子会社を含めたSEIKO(星光)グループ全体のパートを含めた従業員数も平成6年3月頃は、5,200名余りであったが、現在では6,000名を越えており、年商も平成6年頃は約300億円であったが現在は約387億と、バブル崩壊後の低成長下でも伸びている。なお、ビルメンテナンス会社は、サービス産業であるので、年商300億円は通常の企業の1,000億円を優に超える額に匹敵する。
また、乙第11及び第12号証は、本件商標が出願された平成4年度のビルメンテナンス業界の所得(年商ではない。)番付だが、星光ビル管理株式会社とその子会社の星光ビルサービス株式会社の合計は、業界3位の位置にあり、ビルメンテナンス業界の最大手の1社といえた。
この傾向は今も変わらず、乙第13及び第14号証の平成12年(2000年)の売上ランキングでは、星光ビル管理株式会社とその子会社の星光ビルサービス株式会社の合計が業界3位にある。なお、リスト中、日立ビルシステムは、エレベーターの製造・販売が主力で、その部分の売上が過大であるため、ダントツに大きいのである。
こうした被請求人星光ビル管理株式会社の名称中、「星光」が識別力がある部分であるから、被請求人は、「星光」とそのローマ字綴り「SEIKO」を、ごく自然に被請求人の略称や、被請求人の役務の商標として使用している。
「SEIKO」の使用例は、乙第10号証の会社案内「SEIKO GROUP」、従業員・得意先に定期的に配布する「SEIKO/PLANET」(乙第15号証)、制服(乙第16号証)などに使用されている。また、ビルメンテナンス業務の概略は乙第17号証のとおりである。
(2)本件審判までの経緯
以上のように、被請求人は、「星光」、「SElKO」を被請求人の業務に応じて使用していたところ、平成4年にサービスマークの登録制度が開始したので、自己のビルメンテナンス業務を精査した上で、第35,36,37,39,42類に5件の出願をなした。上記出願の指定役務はいずれも被請求人会社の業務範囲である。
これら5件の出願は、審査中に請求人のSEIKOと混同を招くおそれがあるとして拒絶査定を受けたが、審判でこの拒絶査定は破棄され、商標登録第3370289号(第35類)、同第3370289号(第36類)、同第4219662号(第37類)、同第4209199号(第39類)、同第4210154号(第42類)として登録された。これら登録の内2件について請求人より異議申立を受けたがいずれも理由がないとして退けられた。この異議決定は、請求人のSEIKOを著名と認めつつも、商標としての独創性の欠如や、時計とビルメンテナンス業務の業種としての乖離を重視して出された決定であり、平衡感覚に富んだ卓見で現在に通じ、素人にも十分説得力がある。2つの異議決定はほぼ同内容であるので、平成6年審判第15272号(商標登録第3370289号)の異議決定を乙第1号証として提出する。
その後、請求人は、乙第2ないし第7号証の往復書簡に示されるように、SEIKOは請求人の世界に知られたブランドであるから、本件商標を含む5件を請求人に譲渡することを求め、その中で、全分類に防護標章を取得している、譲渡しないなら無効審判請求をする等が提示された。
被請求人は、数十年の使用実績から、ビル管理のSEIKO(星光)という評判も高く、被請求人自身も差止・損害賠償の源となる本件商標権の保持は必須のものであるので、請求人の無理難題な要求を断ったところ、本件無効審判請求を含めて5件の無効審判請求を受けた次第である。
(3)商標法第4条第1項第12号該当について
商標法第4条第1項第12号該当のためには、防護標章と本件商標(出願商標)が、絶対的に同一であることが必要である。
請求人も認めているように、請求人防護標章と本件商標は異なるロゴ体である。
即ち、請求人は触れていないが、文字の太さが請求人防護標章と本件商標とは全く異なり、両商標の外観は全く異なる。また、請求人も認めているように、請求人防護標章と本件商標とは、SとOの形状が全く異なり、Eも若干異なる。
このように、請求人防護標章と字体が全く異なる本件商標が、同項第12号に該当しないことは、明らかである。
次に、請求人防護標章は、甲号証に全く使用されていなく、当該商標が著名とは全くいえず、SEIKOの独創性の欠如、時計と、業態を全く異にする第35,36,37,39,42類の役務を考慮すると、無効な登録である。
よって、被請求人は、答弁書提出後、直ちに、請求人防護標章の防護第40号(35類)、同第42号(36類)、同第45号(37類)、同第44号(39類)、同第46号(42類)の無効審判を請求する予定である。
(4)商標法第4条第1項第15号該当について
請求人は、本件商標等の出願時の意見書、異議決定等を引用し、これを非難しているが、結局、請求人商標の著名性が、全商品・全役務に及ぶという立場に立っているので、これと立場を異にする被請求人は、請求人の主張を全否定するに止め、逐一反論しない。
被請求人の主張は、甲第1号証の異議決定理由と、立場を同じくするが、異議決定後に判決された甲第143及び第144号証の最高裁判例で示された基準、即ち、「表示の類似性の程度、周知著名性及び独創性の程度、そのブランドの使用される商品・役務と対象となる他人の商標の商標・役務との関連性、取引者・需要者の関連性等を、商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として、総合的に判断する。」という基準に基づいて、本件商標が商標法第4条第1項第15号該当しないことを主張する。
(ア)表示の類似性の程度
請求人使用主要商標のSEIKOが明朝体であるのに対し、本件商標のSEIKOはゴシック体で、両者の外観は大きく異なる。この差は、請求人商標の著名な時計と、本件商標の指定役務の隔絶した差異を考慮すると大きい。
(イ)周知著名性の程度
請求人商標の時計における周知著名性は、被請求人も否定しない。しかし、先に述べたように、請求人の関連会社の業務の裾野は狭く、時計以外の商品・役務の売上は僅少と推測される。また、有力関連会社であるセイコーエプソン株式会社が、SEIKOブランドではなく、EPSONブランドを使用していることからも解るように、請求人には、財閥・電気メーカーのように、ブランド統制をしているように思えない。
請求人は、ブランドイメージ調査結果を強調しているが、この調査結果は、時計のSEIKOとしてのブランドイメージとオーバーラップしているのであり、直ちに、その著名性が全商品・全役務に及ぶものではない。
したがって、請求人のSEIKOの著名性が普通に及ぶ範囲は、時計を中心にして、宝飾品、精密機械、時間測定機器程度と考えるのが妥当と考える。
(ウ)独創性の程度
乙第1号証の異議決定でも、SEIKOの独創性には、大きな疑問が示されている。
即ち、乙第18号証(本件商標の審査中に提出したものと同一のもの)の広辞苑でも、セイコウの読みの出る熟語は、30以上あり、中でも「精巧、精工、正孔、精鉱、製鋼、精好など」は、品質表示などの記述的語句であり、SEIKOは、いわゆる「弱い商標」といってよい。
また、女性の名前にも、「聖子、征子、成子、誠子、盛子、斉子など」、SEIKOと呼ばれる名前がある。
法人名称に至っては乙第19号証(本件商標の審査中に提出したものと同一のもの)の大阪市内の電話帳(10数年前から、大阪市内の電話帳は、地域分割されているので、昭和58年発行と非常に古いが、傾向は現在と同様とすることができる。)で、セイコー、セイコウ、又はこれらの読みを有する法人名を数えると、数百社ある。乙第1号証の異議決定では、東京の電話帳では、セイコー、セイコウを語頭に有する法人数は、100以上あると認定しているが、セイコー、セイコウの読みを有する法人名迄数えると1,000社以上になると想像できる。
このように、セイコー、セイコウ(SEIKO)の称呼を法人名称の一部に有する法人は、日本全国に無数にあり、これらは、請求人のセイコー株式会社と混同することなく、商取引を行っていると解するのが自然である。
また、セイコー、セイコウ(SEIKO)の称呼を法人名称の一部に有する法人が、自社の略称のローマ字名称として、SEIKOを使っている例はかなり多いと思料する。
以下は、被請求人が、インターネット等で集めた一例で、全国の中の氷山の一角にすぎない。
・被請求人の星光ビル管理株式会社が、SEIKOを使用していることは、乙第10、第15及び第16号証より明らかである。
・被請求人の代理人である今村元は、大阪星光学院高等学校を卒業している(乙第20号証)が、昭和41年発行の卒業アルバム(乙第21号証)には、バレーボール部、野球部のユニフオームに大きくSElKOの文字が示されている。
・横浜の聖光学院もSEIKOを少なくとも使用している(乙第22号証)。
・セイコー不動産グループがSElKOを使用している(乙23号証)。
・ゴルフ会員券売買の株式会社星光がSEIKOを使用している(乙第24号証)。
・静光産業株式会社がSEIKOを使用している(乙第25号証)。
・電気工事などを行う株式会社正興電機製作所がSEIKOを使用している(乙第26号証)。
・セイコー印刷株式会社がSEIKOを使用している(乙第27号証)。
・地図を販売している株式会社セイコー社が SEIKOを使用している(乙第28号証)。
・不動産業者の株式会社セイコーハウジングがSElKOを使用している(乙第29号証)。
・歌手の松田聖子がSEIKOを使用している(乙第30号証)。
上述のことから、請求人のSEIKOが独創性の非常に乏しい、いわゆる「弱い商標」であることが明らかである。
(エ)そのブランドの使用される商品・役務と対象となる他人の商標の商標・役務との関連性
請求人のSEIKOが広く使用されている商品は、「時計」であるのに対し、本件商標の指定役務は、総合ビルメンテナンス業の業務範囲である、「第35類:建築物における来訪者の受付及び案内」であり、業種・業態が全く異なる。
(オ)商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力
以上(ア)ないし(エ)を総合的に勘案し、商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力をもってすれば、取引者及び需要者が本件登録商標と請求人商標の出所の混同を生ずるおそれがあるとは考えられず、また、両商標の使用主体が関係会社・グループ会社と混同するおそれも考えられない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号には該当しない。

第4 当審の判断
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第12号及び同項第15号の規定に違反して登録されたものである旨主張しているので、以下、各号毎に検討する。
1 商標法第4条第1項第12号について
他人の登録防護標章と同一の商標であって、その指定役務について使用するものは登録することができないことは、商標法第4条第1項第12号の規定から明らかである。
しかして、この規定の趣旨は、「防護標章登録を受けたときは他人のその標章の使用は商標権の侵害とみなされ(67条1号)、その範囲内においては他人のその標章の使用が禁止されるのであるから、その標章と同一の商標についてはその指定商品又は役務に関する限り商標登録をすべきではないとの理由による。すなわち、この関係は11号と全く同様である。11号と違い、登録防護標章に類似する標章について規定しなかったのは、類似の範囲に関してはその使用が侵害とみなされるわけではないからである。」(発明協会発行、特許庁編「工業所有権法逐条解説」)とされることから、同項第12号は、当該商標と登録防護標章とが同一(相似形を含む。)の場合に限り、適用されると解すべきである。
これを本件についてみるに、請求人が引用する引用商標の防護標章登録第40号は、本件商標の指定役務を含む役務を指定役務とするものであるが、引用商標の構成は、別掲(2)のとおり、肉太のゴシック体で「SEIKO」の文字を書してなり、「S」と「O」がやや丸みを帯びているのに対し、本件商標は細い線書きの「SEIKO」の文字を書してなり、「S」と「O」がやや角張った感じを受けるものであって、両者は全体として異なった印象を看者に与えるものであるから、両者は類似するものであるとはいえても、相似形でもなく、これを同一のものということはできない。
そうすると、本件商標が商標法第4条第1項第12号に該当するものであるとする請求人の主張は採用することができない。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人の提出に係る各甲号証によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、時計について「SEIKO」の文字からなる標章を大正13年に使用開始して以来、今日まで「SEIKO」標章を継続使用している(甲第6、第23ないし第105号証)。
(イ)「SEIKO」の標章を付した時計は、東京オリンピック大会を初め、数度のオリンピック大会及び各種の国際競技大会において公式時計として採用され、オリンピック大会が全世界に放送されるに伴い、「SEIKO」の標章を付した時計も視聴者の耳目にふれることとなった(甲第7、第8、第128及び第129号証)。
(ウ)請求人は、毎年巨額の宣伝広告費を投じてきており(甲第17ないし第22号証)、現に各種新聞、雑誌等に宣伝広告を行っている(甲第23ないし第105、第134、第145ないし第160号証)。
(エ)「SEIKO」商標は、AIPPI日本部会発行の「有名商標集」及び特許庁のホームページ「日本国周知・著名商標」に掲載されている(甲第130、第132及び第133号証)。
(オ)請求人及び「SEIKO」商標は、リサーチ会社及び新聞社による有名企業のブランドイメージ調査において常にトップクラスの評価を得ている(甲第135ないし第142号証)。
(カ)請求人は、時計以外の商品及び役務についても「SEIKO」を商標として使用しているだけでなく、多くの関係会社を有している(甲第7、第8、第12ないし第16、第106ないし第127、第145ないし第160号証)。
(2)以上の事実からすれば、「SEIKO」の文字からなる標章は、本件商標の登録出願時及び登録審決時には既に、時計に使用する商標として取引者、需要者間に広く認識されていたものというべきである。この点については、被請求人も争っていない。
さらに、請求人は、我が国における代表的な企業の一つであり、関係会社により企業グループを形成し、時計のみならず、眼鏡、シェーバー、ミュージカルアクセサリー、テレビ、コンピュータ等の商品の製造・販売を初め、建物の貸与等の役務の提供も行うなど、多角経営を行っていること、そして、これら商品及び役務については、いずれも「SEIKO」商標が使用されていることが認められる。
他方、本件商標は、別掲(1)のとおり、「SEIKO」の文字を横書きしてなるところ、上記請求人の周知著名な商標とは同じ大文字による綴りであり、称呼を共通にし、外観においても彼此相紛らわしい類似の商標である。
また、商品「時計」は老若何女を問わず一般世人にとって身近なありふれた商品であり、本件商標の指定役務の提供を行う場面にも置かれるものである。
かかる事情において、本件商標をその指定役務について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている請求人の「SEIKO」の商標を連想、想起し、該役務が請求人又は同人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如く、役務の出所について混同を生ずるおそれがあるものというのが相当である。
被請求人は、請求人の「SEIKO」の商標の著名性が及ぶ範囲は、時計を中心にして宝飾品、精密機械、時間測定機器程度であること、「セイコウ」の読みの出る熟語は30以上あり、中でも「精巧、精工、製鋼」等は品質表示などの記述的語句であり、「聖子、征子、成子、誠子」等の女性の名前でもあって、独創性がなく弱い商標であること、セイコー又はセイコウの称呼を名称中に有する法人は国内に無数に存在すること、請求人の「SEIKO」商標が使用されている「時計」と本件商標の指定役務とは業種・業態が全く異なること等を主張し、商品等の取引者及び需要者の普通に払われる注意力をもってすれば、本件商標と請求人商標と混同するおそれはない旨主張している。
確かに、「SEIKO」の文字は種々の既成の熟語や女性の名前に通ずる場合があるとしても、上記のとおり、請求人の「SEIKO」の商標は極めて著名であり、これと本件商標が酷似していること、請求人は時計のみならず各種の商品や役務の業務を行うなど、多角経営を行っていること、請求人が行っている業務と本件商標の指定役務とが全く無関係であるとまでは断定できないこと等を総合すれば、上記のとおり判断するのが相当であるから、被請求人のこの主張は採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第12号に該当しないとしても、同項第15号の規定に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別 掲
(1)本件商標


(2)引用登録第175840号商標の防護標章登録第40号標章

審理終結日 2004-01-23 
結審通知日 2004-01-28 
審決日 2004-03-02 
出願番号 商願平4-292411 
審決分類 T 1 11・ 28- Z (035)
T 1 11・ 271- Z (035)
最終処分 成立 
前審関与審査官 佐藤 敏樹 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 山本 良廣
宮川 久成
登録日 1998-10-02 
登録番号 商標登録第3370289号(T3370289) 
商標の称呼 セイコー 
代理人 水谷 直樹 
代理人 辻本 一義 
代理人 神吉 出 
代理人 辻本 希世士 
代理人 中山 清 
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