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審決分類 |
審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない 028 |
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管理番号 | 1096570 |
審判番号 | 取消2002-30878 |
総通号数 | 54 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2004-06-25 |
種別 | 商標取消の審決 |
審判請求日 | 2002-07-19 |
確定日 | 2004-04-12 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第3282983号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第3282983号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、平成5年12月24日に登録出願、第28類「囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形,愛玩動物用おもちゃ,運動用具,釣り具」を指定商品として、平成9年4月18日に設定登録されたものである。 2 請求人の主張の要点 請求人は、「商標法第51条1項の規定により、商標登録第3282983号の登録を取消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証(平成14年11月29日に特許庁に提出した審判事件弁駁書に添付されている甲第1号証ないし甲第5号証は、それ以前に提出された証拠方法と番号が重複するので、甲第9号証ないし甲第13号証として扱う。)を提出した。 A.請求の理由 (1)取消事由 本件商標の登録は、商標法51条1項の規定により取り消されるべきものである。 (2)取消原因 (ア)商標の混同のおそれ 請求人と被請求人の商標は、外観、呼称、観念の三つの要素が類似している。 商標の「外観類似」では、請求人「福の神/仙臺四郎」で、被請求人が「幸運を呼ぶ/福の神/仙臺四郎」と、「幸運を呼ぶ」の部分を除けば同じである。 商標の「呼称類似」では、「フクノカミ」「センダイシロー」「フクノカミセンダイシロー」「シロー」「コオウンヲヨブ」「コオウンヲヨブフクノカミセンダイシロー」と商標を発音したときの音が、「コオウンヲヨブ」を除けば同じである。 商標の「観念類似」では、「仙臺四郎」が固有名称で「福の神」が要部に当たり、御利益がある神様を表す「福の神様」としての観念が同一である。 請求人と被請求人の両方が類似した商標を冠して、縁起物の仙台四郎商品を販売することは、需要者たる一般消費者に誤認、混同をおこすおそれがある。 これらのことから、商標法37条1項1号、2号(侵害とみなす行為)に該当する。 (イ)販売商品の誤認混同 請求人は、願書記載のとおりの商標からなり、平成5年6月22日登録出願、第6類「キーホルダー,鋳鉄製置物」を指定商品として同9年5月2日に設定登録された登録第3299718号商標(以下「引用商標1」という)、願書記載のとおりの商標からなり、同5年6月22日登録出願、第16類「紙袋,額入り書画」を指定商品として同9年11月28日に設定登録された登録第3362794号商標(以下「引用商標2」という)、願書記載のとおりの商標からなり、同5年6月22日登録出願、第18類「巾着」を指定商品として同8年4月30日に設定登録された登録第3141495号商標(以下「引用商標3」という)、願書記載のとおりの商標からなり、同11年8月20日登録出願、第21類「土鈴の置物,素焼き又は陶磁器製の動物・人形の置物」を指定商品として同13年4月6日に設定登録された登録第4465247号商標(以下「引用商標4」という)、願書記載のとおりの商標からなり、同9年10月23日登録出願、第21類「陶磁器製置物,徳利,その他の食器類(貴金属製のものを除く。),貯金箱(金属製のものを除く)カード状のお守り」を指定商品として同11年3月26日に設定登録された登録第4254820号商標(以下「引用商標5」という)及び願書記載のとおりの商標からなり、同5年6月22日登録出願、第24類「布製のれん」を指定商品として同8年6月28日に設定登録された登録第3167963号商標(以下「引用商標6」という)を、縁起物商品に「福の神/仙臺四郎」の商標を冠し、商売の神様として商売繁盛、大願成就、家内安全等を付して販売している。 被請求人は、本件商標を、その指定商品第28類「人形、おもちゃ」ではなく、請求人と同じような商品に「幸運を呼ぶ福の神/仙臺四郎」の商標を冠し、商売の神様として販売している。 請求人と被請求人の商品の販売先も同じ様な環境で、社寺や土産店等の売店などで、販売する得意先が重複しているのが現状である。 請求人と被請求人の両方が類似した商標を冠して、類似した縁起物の仙台四郎商品を販売することは、需要者たる一般消費者が商品を誤認、混同するおそれがある。 これらのことから、商標法37条1項1号、2号(侵害とみなす行為)に該当する。 (ウ)請求人の商標の周知性(甲第5号証) 明治時代頃より色々な仙台四郎の写真が存在し、一部の人々の間で細々と流通していたようで、仙台近辺のごく一部の人々にしかその存在が知られていなかった。 請求人は、昭和61年4月初旬の各新聞に掲載のとおり、斉藤実デザイン研究所の発想で「福の神 仙臺四郎」が生まれ、三瀧山不動院に御本体を奉納し、仙台市中央通り「佐々重ビル」にて仙臺四郎祭を開催(4月3日から4月6日までの4日間)したことで話題になり、マスコミ等の取り上げるところとなって最初の「仙台四郎ブーム」が興った。 それ以前(昭和60年頃)に請求人は斉藤実デザイン研究所より使用権を認められ、四郎商品の制作と販売に入った。 次に、平成5年頃からと思われるが、マスコミ等で「仙台四郎」が脚光を浴び、「仙台四郎ブーム」が興った。 被請求人が主張する「私が先に創り、マスコミ等で仙台四郎ブームを興した。」との根拠になる新聞、雑誌記事(甲第8号証)は、この頃のものである。 これらのことから、商標法第32条の規定(先使用権)からすれば、商標「福の神/仙臺四郎」の使用は請求人が正当である。 (エ)請求人の商標の先願 商標出願は、請求人の引用商標1ないし引用商標3及び引用商標6の出願日は平成5年6月22日で被請求人の本件商標の出願日は平成5年12月24日であるので、請求人の方が半年早く出願して登録を受けている。 これらのことから、商標法第8条の規定(先願)からしても、商標「福の神/仙臺四郎」の帰属は、請求人が正当である。 (オ)商標登録を受けられない商標 被請求人の本件商標は、商標法第4条1項10号.11号.15号に規定する商標登録を受けることができない商標である。 (3)むすび 被請求人は「不正競争防止法第2条1項1号、13号」における不正競争行為並びに「不当景品類及び不当表示防止法第4条各号」における不当表示に当たる。 平成11年9月3日より、弁護士を通して内容証明便(3回)でのやり取りにて協議するが不調に終わった。 次に平成13年3月15日に、仙台簡易裁判所にて第1回目「調停」から平成14年5月20日の最終調停(12回)でも、不調に終わった。 以上のことから、商標法第51条1項の規定により、本件商標の登録を取消す審判を求める次第である。 B.弁駁の趣旨 被請求人がこれまで行ってきた一連の商標の使用行為は,請求人が取得している商標に対し、列記するような商標法の各条文に違反しており、明らかに商標の不正使用に該当する。 被請求人が販売する商品が、請求人の商標が指定する置物その他に該当するのか、反対に請求人の販売する商品が、被請求人の商標が指定する人形その他に該当するのか、明確な判断ができずに今日に至っている。 長年にわたって、代理人弁護士同士による内容証明便での協議や簡易裁判所における調停の場でも、被請求人の主張は全く変わらず話し合いにならない状況が続いてきた。 今日、請求人としては、この錯綜して行き詰まった局面を打開するには、特許庁における商標取消審判しか方法が無いと考える次第である。 よって、商標法第51条1項の規定により、被請求人の本件商標登録は取り消されるべき商標に該当するものである。 3 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。 (1)本件は、商標法第51条1項により登録取消が可能な場合ではない。 同法第51条1項は、商標権者が故意に(ア)自己の登録商標に類似した商標を指定商品に用いた場合(イ)自己の登録商標を類似商品に用いた場合(ウ)自己の登録商標に類似した商標を類似商品に用いた場合の各場合に、他人の業務にかかる商品と混同を生ずるものをしたときに適用があるのである。 ところで本件は、被請求人が、第28類の指定商品である「人形、おもちゃ」等に対して自己の登録商標を用いた場合である。 本件のように、被請求人が「登録商標」を「指定商品」について使用した場合には本条項の適用がされないことは明らかである。 (2)ところで、請求人は条文の文言である「類似」について、請求人の登録商標と被請求人の登録商標との類似を問題としているが、本条で問題となるのは、被請求人が用いた商標が被請求人の登録商標に類似しているか否かであって、請求人の主張は失当である。 (3)かつ、同法の適用にあっては「故意」が必要であるところ、本件においては被請求人が請求人の商品と混同を生じることについて知悉した上で商標を用いたものではないから、本条の適用はないものである。 すなわち、同上の「故意」とは、「他人の業務にかかる商品と混同を生ずることについて商標権者に故意の存すること」であり、これが要件とされるから、本件のように混同を生じることを認識していなかった場合に適用されないことは明らかである。 「仙臺四郎まつり」が開催されたことについては被請求人は知らなかったのであり、かつ請求人は昭和61年ころは仙臺四郎の商品を製造販売してはいなかった。 そして、被請求人が請求人の商品を販売していた事実は存在しない。 (4)ことの実体を見れば、請求人こそが引用商標をもって、被請求人の本件商標にて仙臺四郎の商品を販売しているものである。 SE-1ないし4,18,19,24,30,21,20,28はいずれも「人形」であり、第28類の指定商品である。SE-07については販売した事実はない。 なお、甲第4号証の1/1ページ、「注意」4行目に「総発売元の『こま屋』によると」とあることから明らかなように、このホームページは被請求人のものではない。この業者は、被請求人及び請求人の双方から商品を仕入れて販売している業者である。 (5)被請求人は、昭和62年に「福の神しろばか」を「おもちゃ、人形」等を指定商品として商標を出願し、平成元年11月28日に登録されている(乙第1号証)。「しろばか」とは「四郎馬鹿」の意味である。被請求人は、「しろばか」という商品の名称を変更しようとして新たな商標を出願したにすぎない。 また、被請求人は昭和63年3月4日に土鈴人形を意匠登録している(乙第2号証)。以上からすれば、被請求人は昭和60年ころから土鈴人形を製作・販売してきたことは引用商標1ないし引用商標3及び引用商標6の出願日が被請求人の出願日よりも前の日であることはそのとおりであるが、請求人は、引用商標4及び引用商標5については平成11年に至りようやく登録申請しているのであり、自己の商標権が「人形、おもちゃ」等に及んでいなかったことを認識していたというべきである。 加えて、引用商標4及び引用商標5の出願時期からすれば、請求人は仙台簡易裁判所に調停を申し立てるに先だって引用商標4について「土鈴の置物」として、引用商標5について「カード状のお守り」として出願しているのであり、引用商標1ないし引用商標3及び引用商標6が、被請求人の商品に及ばないことを熟知していたというべきである。したがって本件請求には、被請求人の商標権を侵害しようとする不当な意図があることは明らかである。 (7)以上より、請求人の審判請求は直ちに棄却されるべきである。 4 当審の判断 本件商標は、別掲に示すとおりの構成よりなり、構成中に「仙臺四郎」の文字を有しているところ、甲第3号証ないし甲第5号証によれば、「仙臺四郎」(「仙台四郎」とも表記される。)は、江戸末期から明治にかけて実在した人物で、何時もニコニコしており、同人が立ち寄った店、芝居小屋等は必ず大入り満員、商売繁盛したといわれ、明治時代、商売繁盛の福の神として仙台商人の間で大切にされ、仙台では同人の写真を福の神として飾ることも行われてきた事実が認められる。また、前記甲各号証によれば、昭和61年及び平成5年に仙台四郎をキャラクターに使ったポスター、貯金箱、額入りの写真、キーホルダー、のれん、巾着、清酒、トレーナー、色紙、絵馬、土鈴、置物など様々な商品が仙台を中心に販売された事実及び前記の商品販売及び仙台四郎について新聞紙上において紹介された事実が認められる。 そして、以上の事実を前提に、請求人が、それぞれ請求人の販売商品と被請求人の販売商品であると主張する商品をみると、これらの商品について表されている「福ノ神 仙臺四郎」、「福の神 仙台四郎」、「仙臺四郎」又は「仙台四郎」の文字は、いずれも、仙台四郎が仙台商人の間で福の神とされてきたことから、これにあやかる意味で福の神としてその名称を表示使用しているものであることが明らかであり、自己の商品と他人の商品とを識別するための商標として使用しているものではないと認められる。同様に、これらの商品に表されている人物の写真(肖像)又は立体像(甲第4号証中のSEー18のように一部に有する場合を含む。)は、仙台四郎の写真(肖像)とされているもの自体を表し又は仙台四郎の特徴を表したものと認められるから、これらについても福の神として仙台四郎の姿を表すにすぎないことが明らかであり、自己の商品と他人の商品を識別するための商標として使用しているものではないといわなければならない。 以上のとおり、被請求人(商標権者)が指定商品または指定商品と類似する商品について本件商標又は本件商標と類似する商標を使用しているという事実は認め得ないから、被請求人(商標権者)が故意に指定商品または指定商品と類似する商品について本件商標又は本件商標と類似する商標を使用し商品の品質の誤認又は他人の業務に係る商品と混同を生ずるものをしたことを認めることができない。 したがって、本件商標の商標登録は、商標法第51条第1項の規定により、取り消すことができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 本件商標 |
審理終結日 | 2004-02-10 |
結審通知日 | 2004-02-16 |
審決日 | 2004-03-02 |
出願番号 | 商願平5-128956 |
審決分類 |
T
1
31・
3-
Y
(028)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 飯山 茂、渡邉 健司 |
特許庁審判長 |
滝沢 智夫 |
特許庁審判官 |
小林 薫 岩崎 良子 |
登録日 | 1997-04-18 |
登録番号 | 商標登録第3282983号(T3282983) |
商標の称呼 | コーウンオヨブフクノカミセンダイシロー、コーウンオヨブ、フクノカミ、センダイシロー |
代理人 | 阿部 潔 |
代理人 | 青木 正芳 |