• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効200489090 審決 商標
無効200035003 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09
管理番号 1095063 
審判番号 無効2002-35336 
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-08-13 
確定日 2004-03-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4455006号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4455006号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4455006号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぼくは航空管制官」の文字を標準文字にて書してなり、平成12年10月12日に登録出願、第9類「家庭用テレビゲームおもちゃ」を指定商品として、平成13年2月23日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第25号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第10号違反について
請求人の商品と被請求人の商品を直接比較し、その内容が同一もしくは類似であれば、商品分類上たとえ別々に区分されていても類似と認定されてしかるべきである。また請求人と被請求人の商品は、それぞれの生産者、販売者、需要者が同一であり、非類似とされるべきではない。さらにパソコン用と家庭用テレビゲーム機用、とりわけプレイステーション用ゲームソフトを非類似とすることは現在の市場状況においては妥当性を欠く。
本件商標の登録出願時及び査定時において、すでに取引者、需要者の間で請求人の商品の商標として広く知られていたことを証明するため、「異議の決定」で資料不足が指摘されていた商品の販売地域、年間の販売量等の資料パソコンゲームとしての周知性証明(甲第9号証)、ゲーム一般での周知性証明(甲第10号証)を提出する。
東京地裁も、この周知性について、その判決文(甲第4号証)で、『「ぼくは航空管制官」の標章は、以下の通り、テクノブレイン社に由来するものである。すなわち、a)同標章は、テクノブレイン社が、航空管制の業務についてのシュミレーションゲームであるテクノブレイン社のソフトとして開発、販売し、大ヒット商品となった結果、テクノブレイン社のソフトを示す標章として周知となった。また、b)「ぼくは航空管制官」の標章は、テクノブレイン社の商品、又は同社の許諾を受けた商品であることを示す標章と解すべきであり、原告(シスコン社)の独自の商品を示す標章ということはできない。』と認定している。
2 商標法第4条第1項第19号違反について
「請求人に無断で、かつ極秘裏に登録出願したこと」「出願時期が件外株式会社タム(以下「タム社」という。)の商品発表時期と一致すること」「状況的に商標出願が不必要であったこと」「タム社に対する販売差し止め要求の理由があまりにも不条理であること」「巨額の損害賠償請求を行ったこと」などから、本件商標登録は、請求人が該商標を登録していないことを奇貨として、当初から、請求人とタム社の業務を妨害し、両者に損害を加えるとともに、不正な利益を得るために使用することを目的としたものと云うほかない。
加えて、請求人の商標「ぼくは航空管制官」は、請求人(被請求人に対して他人)の業務に係る産品を表示するものとして、自他共に争いのない、周知商標であるが、被請求人はこれと全く同一の商標を不正の目的で、使用をするために、出願登録したものであるから、本件登録は商標法第4条第1項第19号違反であり、登録無効とされるべきである。
3 商標法第4条第1項第7号違反について
被請求人は該商標登録後においても、不正の目的をもって、商標権を濫用し、版元の著作権者、請求人並びにタム社に対し多大の損害を与えており、契約上の信義則違反、公序良俗に反している。従って、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当するに到っている。よって、本件商は同法第46条第1項第5号により、登録無効とされるべきである。
4.結論
本件商標は、請求人がその商品に使用する商標として、全国周知であり、内外の取引者、需要間に広く知られていた。被請求人は既存の周知商標の存在を故意に無視て、特許庁を欺瞞し、不正に登録したもので、先ず、商標法第4条第1第10号違反の登録であることが明らかとなった。
而も、その出願、登録の経過において、その目的が、極めて悪質であり他の著作権使用受諾者から、不正に多額の損害賠償金を請求することを目的としたものであることが明白となった。東京地裁判決においてもその不正が確認され、該判決も確定した。従って、本件商標は前記第10号の他に、同法同条同項第19号にも違反であることが確認された。
その上、商標登録後において、前述の通り不正なる賠償請求が行われたことにより、商標法第4条第1項第7号に違反するものとなった事実が明白となったので、結局本件商標は、同法第46条第1項第1号及び第5号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件商標の登録を維持する、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
1.本件商標は商標法第4条第10項(第4条第1項第10号の誤記と認められる。)に違反して登録されたものではない。
(1)商品の相違
被請求人の本件商標に付す商品は、プレイステーション1(以下「PS1」)用ソフトであり、「家庭庭用テレビゲームおもちゃ」(24A01)である。一方請求人の商品は、パソコン用ゲームソフトであり、「電子応用機械器具及びその部品」(11C01)である。一見して判明する通りこれらの商品は互いに非類似なのであるが、請求人は、自己の理屈をもって、これらの商品が互いに非類似と主張している。
ここで、請求人と同様に類似の4要件に照らして考察してみる。
ア.製造販売が同一の事業者によって行われているか否か
乙第1号証は、家庭用テレビゲーム各社の製造販売しているゲームタイトルをゲーム機器別に一覧にしたものである。これを見ると各社は、PS用ソフトやゲームボーイアドバンス(以下「GBA」という)等のゲーム機器についてのソフトの生産をしている。一例を挙げれば、株式会社バンプレストは、PS用ソフト、GBAソフト、ファミコン用ソフト、ドリームキャスト用ソフト等の家庭用テレビゲーム機器のためのソフトを生産している。しかし、パソコン用ソフトを生産しているメーカーはない。
イ.商品の販売場所が一致するか否か
PS用ソフトとパソコン用ソフトは、同一販売店で販売されない。乙第2号証は家庭用テレビゲームおもちゃに関する雑誌「ファミ通」の2002年9月6日号に掲載されている販売店(協力店)リストである。本雑誌は、家庭用テレビゲームおもちゃに関しての業界内の著名雑誌である。
これをみると、家庭用テレビゲームおもちゃは、専門店で販売され、パソコン用ソフトと同じ販売店で販売されない。例えば、現在我が国において、1,000店を超える販売店を持つ娯楽品専門店 ”TSUTAYA”では、家庭用テレビゲームおもちゃとパソコンゲームを同時に販売していない(乙第3号証)。
また、請求人のいう、パソコンゲームとPS用ソフトが販売されているという販売店を考察する。請求人の提示した資料7-3というのは、不明瞭であるので、前記協力店リスト中の販売店である「ビックカメラ新宿西口店」について考察してみる。「ビックカメラ新宿西口店」では、取り扱い品目がゲームソフト、パソコン、カメラ、シーツ、テニスラケット、自転車、スポーツ用品、寝具、自転車、等商品分類でいえば広範囲にわたり、商品を販売されているのが実状である。請求人は、商品の類似を同一店舗という単位で販売すべきとあるが、このような商品分類が多岐に渡る場合に同一店舗で判断することは、全ての商品が類似することになり妥当ではない。その中でも家庭用テレビゲームおもちやは5階に、パソコン用ソフトは4階と明確に売り場のフロアを分離させ、それぞれの異なる需要者が購入しやすいようにしているのである(乙第4号証)
ウ.需要者の範囲が一致するか否か
家庭用テレビゲームおもちゃは、主として年齢層の低い子供が需要者であり、パソコン用ソフトは、少なくともパソコン操作ができる年齢に達している必要がある。
又、現在我が国には、家庭用テレビゲームおもちゃとパソコン用ゲームソフトを同時に取り扱う業界雑誌はない。前記「ファミ通」の新作ゲームスケジュール表(乙第5号証)では、「PLAYSTATION」、「DREAMCAST」、「Xbox」等のみを家庭用テレビゲームおもちゃとして掲載しており、需要者の相違するパソコンゲームは別の雑誌に掲載されるのである。
以上より、特許庁の審査基準上の要件からも家庭用テレビゲームおもちゃとパソコン用ゲームソフトは、非類似であるといえる。
なお、ここで請求人は、甲第8号証において、SONY社が「PLAY STATION」について平成9年に出願された商標3件についてその指定商品が「家庭用テレビゲームおもちゃ」となっていないので、「家庭用テレビゲームおもちゃ」として認識していないと挙げている。しかし被請求人独自の調査では、昭和62年に「PLAYSTATOIN」に関しての最も早い出願として、「おもちゃ」を指定商品として出願していた(乙第6号証)。これは将来大規模に展開する同社ゲーム機器の先駆けとして出願されたものと思われる。その後、防護的な意味で平成9年に被請求人が挙げた商標登録の出願がされたものである。
(2)テクノブレイン標章「ぼくは航空管制官」の周知性について
請求人が根拠として挙げた判決は『(i)同標章は、テクノブレイン社が、航空管制の業務についてのシミュレーションゲームであるテクノブレイン社のソフトとして、開発、販売し、大ヒット商品となった結果、テクノブレイン社のソフトを示す標章として周知となった。また、(ii)「ぼくは航空管制官」の標章は、テクノブレイン社の商品、又は同社の許諾を受けた商品であることを示す標章と解すべきであり、原告(シスコン社)の独自の商品を示す標章ということはできない。』というものである。
上記判決については、テクノブレイン社がパソコン用ゲームソフトという商品非類似のごく限られた範囲のみにおいて周知であると認定したものである。テクノブレイン社が同標章を家庭用テレビゲームおもちゃに関して周知にしたとは全く触れられていない。又、指定商品の双方が類似であるか非類似であるか否かについても全く触れられていない。ここは、専門的機関たる特許庁が率先しての判断をもって双方の指定商品の類似性の判断を率先するべきかと考える。
パソコン版とPS版の製品の売上のヒットの目安は、請求人も述べている通り、パソコン版がPS版と比べてはるかに小さい。家庭用テレビゲームおもちゃでは、「二、三万本が売上の最低ライン」であるが、パソコンゲームの市場では、「その二、三万本が大ヒットといわれる。」とある。(乙第7号証)。テクノブレイン社のパソコン版はおよそ最低ラインの5倍販売している。しかし、被請求人の商品は、5万本に満たない。もし商品が類似であるとすれば、家庭用テレビゲームおもちゃ業界でもその周知性が、影響し、販売数量最低ラインの5倍前後になっていたはずである。
(3)被請求人の自白について、
被請求人は、確かに請求人対し、商標法第32条の先使用権を認めたという事実は存在する。しかし、これをもって本来不変である指定商品の類似判断を曲げてはならない。被請求人の自白とは関係なく指定商品の類似判断は行われるべきである。
2.本件商標は、商標法第4条第1項第19号違反の登録ではい。
(1)原告が家庭用テレビゲーム業界で商標登録を得ておかなければならない理由
まず、家庭用テレビゲームおもちゃ業界に特有な侵害者の手口について述べる。家庭用テレビゲームおもちゃ業界は、侵害者の違法コピーに備えて、CD-ROM、DVD-ROMを読み込むゲーム機器本体にハードウェア上のコピーガードを設け違法コピーができないようにしている。当業界における侵害者の手口はこれらのコピーガード機能を何らかの手段で無効にし製品を違法コピーするものである。
市場に流通しているコピーガードを解除する集積回路が組み込まれたICチップはMODチップとよばれている。(乙第8号証)このMODチップをゲーム機器本体に容易に取り付けることによってコピーガード機能を無効にすることができる。又MODチップの使用以外にも、コピーガードを容易に解除する方法を紹介した雑誌も市場に流通している。そのような雑誌には、違法コピー商品を専門に取り扱う販売者さえも掲載されている状況である(乙第9号証)。
家庭用テレビゲームおもちゃ業界では、その対処方法として最も有効な方法が商標登録を得ることなのである。商標登録を得ておけば、これらの違法コピー製品はゲームのタイトル名も同時にコピーされてしまうので、即座に権利行使することができるのである。不正競争防止法、著作権法による保護も考えられるが、いずれも裁判確定まで相当の日数を要する等の実行性に欠ける面がある。
(2)ゲーム業界(全てのゲームを含む)におけるライセンシングビジネスと商標出願に係る慣習について、
家庭用テレビゲームを含むゲーム業界では、ライセンサーは版権ビジネスに集中したいため、万一権利侵害の問題が発生した場合は、自己が傍観できる立場を保有するためにライセンシーにその独自の責任と費用において、権利侵害に対処させることが当業界の一般的慣習なのである。
例えば、爆発的にヒットしたゲームタイトノレに「テトリス」、「パックマン」というものがある。これらはライセンサーのゲーム機器から異なるゲーム機器への移植はもちろん、文房具や衣服の商品までライセンシングが拡大しているタイトルである。
しかし、ライセンサーは侵害の手口が多発するゲーム関連の分野においては、ライセンシーに自己の責任において侵害者に対処できるように独自の商標登録出願を許諾している。
(3)著作権許諾契約第11条 (責任範囲)について
請求人と被請求人との間の著作権許諾契約の第11条の規定は、前述のゲーム業界の商標出願の許諾に関する慣習に照らせば、請求人がライセンシングビジネスに集中したいため、被請求人に対して商標出願の許諾を含む被請求人の防衛策を認めた規定と解することができる。請求人は被請求人と第三者間の問題に関しては、この規定により責任をとわれないのである。その見返りとして被請求人が独自に商標を出願できることを被請求人が認めたと考えるのが妥当である。
(4)被請求人の出願行為と権利行使の正当性
ア.被請求人は、請求人と当時は友好的に存続していた著作権許諾契約により、被請求人独自のPS用ソフトを製造した。
ここで、商標の出願の許諾があったかどうかについて、前記東京地裁判決では、商標の出願の許諾はなかったとされた。被請求人は請求人から許諾を受けたのであるが、商標に関しての知識に乏しい請求人は特に何ら許諾を受けた事実を文書に記載することを要求しなかった。被請求人としては請求人のライセンスビジネスを妨害する不正な目的で商標登録出願をする目的など全くなく、将来万一発生する侵害間題については独自に対処すべき問題であるため、特に契約書等に商標の許諾の有無についての文言を残す必要を要しなかったのである。被請求人が出願をする行為は出願の許諾の有無に関わらず何らの不正の目的はない。被請求人は、自己に関するゲームソフト、社名、付属品を全て出願しているのである(乙第10号証)。それはとりもなおさず、既に述べたように家庭用テレビゲームおもちゃ業界に特有な侵害の特殊性があったためである。又、既に述べたように家庭用テレビゲーム業界では、ライセンサーの商品をライセンシーが商標出願することは、頻繁に行われており、特段珍しいことではない。そして、家庭用テレビゲームおもちやに限って出願し、その他の分類に関しては一切出願していない。ライセンシング業務を妨害する意図があれば、ここで「衣服、文房具、書籍」等も指定、商品として出願したはずである。
イ.出願の時期については、任天堂スペースワールド(平成12年8月)でタム社の商品を販売を知り、これを妨害するために出願したと上記判決では判示されている。
被請求人は、平成11年6月8日の著作権許諾契約から1年5月のちに本商標を出願している。これについては、次のような事情が伴う。まず、本商品の開発は非常な困難を極め、実際に製品が完成できるか未定であった。しかし、被請求人の開発スタッフは何とか完成にこぎつけたのである。従って、確実に販売開始がされる日である平成11年12月までは商標出願がされなかったことについては合理的な理由がある。次に商標出願が更に10か月後であることは、次の事情が伴う。商標の出願の目的は、あくまで流通秩序の維持・被請求人の商標に化体した業務上の信用を保護することにあるのは、いうまでもない。
この法目的達成のためには、出願の時期と製品販売の時期とは全く関係はないものである。すなわちせっかく販売しても全く売れなかったりする場合もある。家庭用テレビゲームおもちゃの侵害者は自らの行為を目立たせなくするため、たいていは販売開始後数か月経過した後に侵害行為を始めるものである。せっかく登録料を支払うのであるから被請求人の商標戦略としては、本ソフトについては、販売のピークが過ぎ去った頃に出願しただけというのが実状である。出願が遅れても、権利行使をしたい場合は、早期審査の制度も存在するので、問題はないと考え、出願の時期が製品販売から更に10月後になったという実状があったのである。
ウ.一方製品の広告は、製品完成間近から行い、総計で6千4百万円を投じ市場の開拓を行った。これについては、既に証拠を挙げ証明している。まだ広告の残存効果も失われていない1年に満たない期間でタム社がPSと同一の商品である「ぼくは航空管制官」のGBA版の販売告知があったのである。請求人から何も知らされていない被請求人は、早期審査の手続きを採らざるを得なかったのも合理的といえる。
エ.その後、確かに、被請求人は、タム社に対し、商標権に基づく侵害訴訟を提起せず、著作権の侵害を理由に、販売の差し止めを要求する通知書をタム社に平成13年2月23日に送付した。しかし、これについては、純粋に画面上の類似性が被請求人の著作権を侵害したと判断しただけである。この点については、被請求人から許諾を受けた著作権の内容は、ゲームの内容、遊び方、図柄等等に限られている。画面上の類似性は被請求人の独自性の部分であると判断したので著作権契約に違背しないと考えた。
オ.その後、タム社の販売を紹介する「ファミ通」2001年3月30 日号の記事(乙第11号証)を発見した。この記事によると「プレイステーション版の雰囲気を損なわず、見事な移植」、「もっとモード(ステージ)のほしいところ」、「単調なだけにものたりないってのも事実。機体の接近度など、状況が把握しづらいのも×」とGBA版を被請求人が製作したように紹介されており、しかも、当業界におけるゲーム会社の開発能力の一般的水準に達しないようにこの記事は報告されている。家庭用テレビゲーム業界に詳しい雑誌社の記者ですら出所混同が生じているので、一般消費者・需要者は完全に出所混同が生じていると判断したのである。しかも家庭用テレビゲームおもちゃ業界の一般需要者は比較的年齢層の低い子供達が主である。このような子供達はこの記事を見て被請求人の開発能力を疑っていることは明らかである。
カ.タム社の当社商標に化体した顧客吸引力のフリーライド
タム社のGBA版は商品の類似する家庭用テレビゲーム業界に被請求人に何らの報告もされず、いきなり販売が開始されることになったものである。
タム社は既に被請求人の宣伝努力の結果、被請求人の商品を示すものとして周知となった本商標の顧客吸引力を不当に利用しようとしていた。請求人又はタム社が家庭用テレビゲーム業界で広告宣伝したという証拠は全く提出されていない。請求人のパソコン版の宣伝努力により商品が非類似である「家庭用テレビゲームおもちゃ」に関して請求人の商品が著名である証拠も提出されていないのである。
著作権許諾契約書には請求人から被請求人へのPSに限った製品の開発・販売を許諾したものである。しかし、PS版とGBA版が商品同一の関係にあることは明らかである。既に本件商標が被請求人の努力により充分な顧客吸引力を獲得した市場に参入しようとするのである。もし最初からGBA版への移植を予定したのであれば、契約書にその旨謳った文言が被請求人からの申し出により記載されているはずである。又、被請求人の広告宣伝がされた後に市場に参入しようとするのであれば、この場合もやはり被請求人の広告残存効果を利用するのであるから、被請求人から請求人への正式な承認を得ておくという商取引上の常識行為が請求人からされるべきであった。
思うに、被請求人の本件商標が充分な顧客吸引力を得た後、契約書やその他の文言で同一商品の参入が記載されていなかったことを奇貨として、請求人は当社の商標のフリーライドをする目的で、タム社にGBA版を許諾する意思があったものと考えられる。
キ.前記東京地裁判決については、被請求人のタム社への権利行使は妥当なものではないとして認められないものとの判決については、異存がないので控訴をしなかった。しかし商標登録としては、商標法第4条に違背しないので、登録が維持されることについて何の問題もないと考える。
3.結論
以上、前述の通り、被請求人の本件商標は、なんらの商標法第46条に掲げる登録無効理由に該当しない。請求人の標章「ぼくは航空管制官」は被請求人の商標に係る指定商品とは非類似の小規模なパソコンゲーム業界に限り周知であり、家庭用テレビゲームおもちゃに関しては周知とは言いがたいと思われる。従って、同法第4条第1項第10号に該当しない。
又、出願に際しては被請求人独自の商標登録を得ておかなければならない正当な理由が存在しており、同法第4条第1項第19号にも該当しない。また、東京地裁判決においては、判決が確定したと雖もあくまでタム社に対する被請求人の権利行使が妥当なものではないと判示されたにとどまりこれをもって、同法第4条第1項第7号に該当するとはいえない。

第4 当審の判断
1 請求人提出の甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)請求人は、実在する複数の空港を想定して、飛行機離発着等に関する管制業務を担当する航空管制官の業務を体験するシミュレーションゲームをパソコン用ゲームソフトとして開発し、平成10年7月に公表し、同8月より発売している。
(2)該ソフトは、想定される空港・航空機を追加するキッドであるパワーアップキットを発売しており、内容の充実を図ると共に、航空関連雑誌により広告宣伝が行われた。そして、大型小売店でのパソコンソフトの部門別週間売り上げ実績で1位になるなど人気を博していたことが認められる。(甲第1号証及び甲第9号証)
(3)請求人と被請求人との間で、請求人が独自に権利を有するパーソナルコンヒュータ向けに開発されたゲームソフトである「ぼくは航空管制官」のゲーム内容、グラフィック、および音声を使用した件外ソニー株式会社の業務に係る「家庭用テレビゲームおもちゃ」向けゲームソフト「ぼくは航空管制官」を開発し、制作、販売することについての著作権許諾契約を締結していることが認められる。(甲第2号証)
(4)件外タム社は、平成12年8月開催された、商品展示会である件外任天堂株式会社の展示ブースであるスペースワールドにおいて、GBA版ゲームソフトの発売について公表し(甲第13号証)、平成13年3月21日に製品を発売している。
(5)請求人のソフト「ぼくは航空管制官」のシリーズは、15タイトルが発売され、その数は多数にのぼっており(資料9-16)、主要流通の売上ランキングのゲーム部門において上位の位置を得ていること(資料9-13)。
(6)被請求人が、請求人との契約に基づいて開発し、製品を発売するにあたって、被請求人が行った広告(資料10-1)中に、「おなじみのボクカンが、ついにプレイステーションで登場!」とのフレーズが用いられていること(資料10-1)。
2 本件商標の出願に不正の目的があったか否かについて
(1)上記事実よりすれば、請求人が開発し、販売した、「ぼくは航空管制官」の標章を付したパソコン用ゲームソフトは、本件商標出願時に、取引者、需要者間においてすでに広く知られていたものと認めることができる。
そうとすれば、本件商標に係わる商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」と請求人使用の「パソコン用ゲームソフト」が、被請求人主張のように商品において類似するものではないとしても、「ぼくは航空管制官」の標章は、商品「パソコン用ゲームソフト」において、請求人の標章として、その商品の取引者、需要者間において広く知られていたものとみることができるものである。
(2)請求人と被請求人との「著作権許諾契約書」の全文及び第1条(甲第2号証)によれば、請求人は、被請求人に対しては、ソニープレーステーション向けゲームソフトに限定して、開発、制作、販売を非独占的に認めているものであって、被請求人は、請求人が件外タム社へ著作権を許諾した事実を被請求人に知らせなかったことが契約違背と主張することはできないと解されるところであり、同契約内容は、第三者が被請求人の商品と同種のものを発売することを被請求人が阻止することができるとする契約ということはできないものである。
(3)甲第2号証の契約第11条をもって、被請求人は、請求人が被請求人に対して商標出願の許諾を含む被請求人の防衛方策を認めた規定と解することができると主張するが、同条には、被請求人が主張する主旨の文言は明記されておらず、被請求人に本件商標の出願の許諾を与えたものと解することはできないから、被請求人の答弁は採用することはできない。
(4)被請求人が、請求人から著作権の許諾を受けたのは、平成11年6月8日であるところ、本件商標登録出願は、平成12年10月12日になされており、本件商標の登録出願が、上記契約期日に遅れること約1年4月後になされているのは、いささか不自然というべきである。
この点について、被請求人は、答弁書11頁において商品開発の状況や販売動向などの事情があった旨を述べているが、商品の開発・販売の計画をして一年以上後に当該商品に使用する商標を登録出願することが通常の行為とはいえず、むしろ商標登録出願は、その業務に係る一種の「先行投資」的なものとして、商品の企画・開発段階でなされることの方が普通というべきであり、そうでなくとも、当該商品の販売(本件の場合は、平成11年12月である。)と同時になされるのが一般的である。そして、この種業界において、本件のように、企画・開発や販売後、相当の期間遅れて登録出願されるという商慣習があるとの証拠もないから、上記の理由を述べる被請求人の主張は採用することができない。
(5)件外タム社が、件外株式会社任天堂の取り扱いに係る商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」に使用するゲームソフトの発売を公表したのは、平成12年8月末である(甲第13号証)ところ、本件商標の登録出願がその約1月半後であることからすると、被請求人が、本件商標を出願したのは、件外タム社による上記の公表事実を知ったことによるものと推認することもできるものである。なぜならば、ある事業者が、その業務上、同業者の取り扱う商品の開発・販売動向を日常的に把握することは当然のことといえ、被請求人において、そのような対応をしているとみること自体何ら不自然ではないからである。
これに、上記(4)における判断を加えれば、本件商標の登録出願の動機を前示のようにみることは決して不自然とはいえないものである。
(6)そこで、この被請求人による本件商標の出願行為について、不正の目的をもって使用をするものであったか否かについてさらに検討を進める。
請求人と被請求人との甲第2号証の契約は、「非独占的」なものであることからすれば、「自己の権利保全のため」(答弁書11頁ないし14頁における「(B)」の主張の全趣旨)といっても、前記(1)で認定したように、パーソナルコンピュータ用のゲームソフトとして周知となっていた請求人の未登録商標「ボクは航空管制官」について、たとえ、指定商品が類似しない本件商標を、請求人の承諾を得ずになした本件登録出願行為は、請求人との関係において信義誠実の原則に背く行為であり、被請求人において、故意又は過失がなかったとすることはできないというべきである。
(7)甲第21号証は、被請求人による請求人に対する「回答書」の写しであるところ、こにおいて、被請求人は、「1について」として「回答人(被請求人)は、PS版ソフトを、現在でも毎月製造している。回答人は、通知人(請求人)から許諾されたPS版ソフトについて、第三者からの権利侵害等を防ぎ、不利益がないよう自己の権利保全のために、平成一二年一〇月、商標登録出願した。」との回答をしている。
ところで、件外株式会社任天堂の取り扱いに係る商品「家庭用テレビゲームおもちゃ」に使用するゲームソフトと、被請求人が取り扱う本件指定商品であるゲームソフトとは使用機種が異なることで、互いのゲームソフトに互換性はないが、件外タム社のソフトの出現により、被請求人において、自己の商品の売り上げに何らかの影響が生ずるものとの判断が働いたことは推認するに難くないところである。
その際、被請求人が、本件商標の登録出願をなしたことについて、「自己の権利保全のため」とする被請求人の答弁(答弁書11頁ないし14頁における「(B)」の主張の全趣旨)は、その限りにおいて是とすることもできるものであるが、本件の登録出願行為は、前記(6)で述べたように、請求人との関係で信義則に反する行為であって、甲第2号証の契約が「非独占的」契約であることからすれば、甲第21号証の回答書の内容は是認できず、また、上記答弁も採用することができない。
そうとすれば、被請求人が本件商標を登録出願した行為には、少なくとも、件外タム社との関係でゲームソフトの販売行為において優位な立場に立とうとの意思が働いたとみることができるものである。
(8)本件商標の登録出願に係る平成12年12月6付の「早期審査に関する事情説明書」は、件外タム社の使用予定を理由とするものであるところ、甲第2号証の契約は「非独占的」契約であることから、被請求人は、この契約の内容を超えた範囲については、第三者に対する権利を主張することはできないと解すべきであり、本件商標登録出願に係る権利が、第三者に侵害されるおそれを「早期審査」の理由としたことは、被請求人による、登録商標を受ける権利の濫用ともみるべき行為であったといわなければならない。
(9)以上の(1)ないし(8)の認定判断に、甲第4号証に係る訴訟提起の経緯及び、請求人、被請求人の主張の全趣旨を含めて総合的に検討すれば、本件商標登録の出願は、請求人の取り扱いに係るパーソナルコンピュータ用のゲームソフトとして周知となっていた、未登録商標「ボクは航空管制官」と同一の文字からなる商標の登録を受けることで、件外タム社のソフトの販売を妨げる目的をもってなされたと判断するのが相当であり、本件商標は商標法4条1項19号に該当する。
したがって、本件商標は、請求人の他の理由によって無効とすることはできないとしても、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと認められるから、同法第46条第1項により、その登録を無効にすべきものとする。
なお、請求人より口頭審理の申請があったが、口頭審理によって、上記認定、判断に影響を及ぼすものとは認められないから、口頭審理は行わない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2004-02-02 
結審通知日 2004-02-05 
審決日 2004-02-17 
出願番号 商願2000-111083(T2000-111083) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (Z09)
最終処分 成立 
特許庁審判長 滝沢 智夫
特許庁審判官 岩崎 良子
宮川 久成
登録日 2001-02-23 
登録番号 商標登録第4455006号(T4455006) 
商標の称呼 ボクワコークーカンセーカン 
代理人 田中 貞夫 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ