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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z42
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Z42
審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない Z42
管理番号 1094969 
審判番号 無効2003-35154 
総通号数 53 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-05-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-04-15 
確定日 2004-03-18 
事件の表示 上記当事者間の登録第4549124号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4549124号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成12年12月1日に登録出願、第42類「動物の診療」を指定役務として同14年3月8日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、「本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と申立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1ないし第99号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)請求人は、本件商標登録出願の日前より、本件商標に含まれる「日本動物医療センター」の名称を、本件指定役務と同一の役務につき使用してきていることから、本件審判請求をするについて利害関係を有する。
(2)商標法第4条第1項第10号該当性について
請求人は、「動物の疾病予防の診断及び治療、動物の臨床検査及び研究」等を目的として昭和41年11月9日に設立され、その主たる事業として、同44年2月1日より今日に至るまで、「日本動物医療センター」なる名称の動物総合病院(以下、この動物総合病院を「請求人病院」といい、「日本動物医療センター」の標章を「引用標章」という。)を経営してきている(甲第3及び第4号証)。
請求人病院は、各地に多数存在する単なる動物診療所とは異なり、多くの診断科目ごとに別れた診療部門を備える他に、多種の動物臨床検査施設、入院設備、ホテル設備、美容施設等を備えた、日本で最初の大規模な動物専用の総合病院である(甲第5号証)。
その建物は、地上4階、地下1階で全館冷暖房付きという、昭和44年当時においてこの種施設としては、関係者の、いわゆる度肝を抜く規模及び内容であり、竣工式には当時の内閣総理大臣故佐藤栄作氏も列席され(甲第6号証)、当然のことながら、多くのマスコミの注目を浴びて、広く紹介されるところとなった(甲第7ないし第11号証)。また、開業当時だけではなく、その後も度々テレビ、新聞、雑誌等のマスコミの取材の対象となり、機会あるごとに新聞や雑誌に紹介されたり、引用され、また、テレビでも紹介されてきている(甲第12ないし第24号証)。さらに、定期刊行物において、ペット関連の記事の連載を行ってきている(甲第25ないし第29号証)。
かくして引用標章は、動物病院業界(獣医師業界)はもとより、ペット業者並びに一般のペット飼育者等の間において、昭和44年の開業当時から周知著名となり、その状況は、現在に至るも何ら変わりはない(甲第33ないし第59号証)。
なお、現在においても、これ程大規模な動物総合病院は稀で、インターネット上も、「日本動物医療」等で検索すると、先ず請求人が抽出される。また、24時間対応の救急動物病院としても紹介されている(甲第30号証)。
さらに、請求人の名称は全国的に知れ渡っているため、近時各地の中学校から職場体験の申込みがあり、平成11年4月以降、毎年実施してきている(甲第31号証の1ないし4)。
上述したように、引用標章は、動物の診療という役務について請求人が30年以上も引続き使用し続けてきたものであり、本件商標の登録出願日である平成12年12月1日の時点において、請求人の行なう役務についての名称として周知であった。
本件商標は、この請求人の周知な引用標章をそっくりそのまま含むものであって、商標全体としてそれに類似するものであることは疑いの余地がない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に規定する商標に該当する。
(3)商標法第4条第1項第15号該当性について
(2)項で述べたとおり、引用標章は、本件商標の登録出願当時において、役務「動物の診療」について請求人が使用する商標として需要者の間に広く知られていた。
かかる状況の下、この商標に類似する本件商標が役務「動物の診療」に使用された場合は、一般需要者は、その役務が請求人又はその許諾を受けた者の行なう役務であると誤認することが必至であり、需要者が不利益を蒙ると共に、請求人が営営として築き上げてきた業務上の信用が阻害されるおそれのあることは疑いのないところである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に規定する商標に該当する。
(4)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は、請求人の経営する動物病院の名称「日本動物医療センター」をそっくりそのまま含んでおり、しかも請求人の承諾を得ることなく登録されているので、その登録は商標法第4条第1項第8号の規定に反してなされたものである。
なお、請求人の正式名称は「株式会社日本動物医療センター」であるので、「日本動物医療センター」はその略称と考えることもできるが、その場合においても、上記のとおり引用標章は、請求人の略称(商標)として、第8号において要求される著名性を十分に備えているということができる。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に規定する商標に該当する。
(5)まとめ
上述したとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、第15号及び第8号に規定する商標に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(6)答弁に対する弁駁
(ア)被請求人は、甲第5号証の写真から、請求人の指す病院の名称は「日本動物医療センター」ではなく「動物綜合病院」であるとする。
しかし、甲第5号証にも明示されているように、請求人の営業上の表示はあくまで、「日本動物医療センター」であって、「動物綜合病院」は愛称であるに過ぎない。このことは、甲第6号証以下各号証からも明らかなところである。
(イ)被請求人は、甲第5号証のパンフレットは10年以上も前のものであるので、この病院の現在の実態は不明であるとする。
しかし、請求人が引続き請求人病院の運営を行ってきていることは、甲第3及び第30ないし59号証から明らかなところである。さらに、獣医師の証明書を提出する(甲第60ないし第67号証)。また、請求人病院に勤務し、その後全国各地で独立して動物病院を経営している獣医師が多数いる(甲第68ないし第92号証)。これらの証明書からも、請求人病院が多くの獣医師を輩出し続けていて、この種動物病院としては大規模のまま今日まで推移してきていることを十分に窺い知ることができる。甲第60ないし第92号証の証明書は、同時に引用標章の周知性をも立証するものである。
(ウ)被請求人は、甲第8及び第10号証は、引用標章とは無関係とするが、他の甲号証からして、その記事や映画ニュースの対象が、請求人の経営する「日本動物医療センター」であることは明らかなところである。
被請求人はまた、甲第6ないし第11号証の記事は、いずれも本件商標の出願日より31年も前のことであるから、引用標章の周知性とはなんら関連しないとする。
しかし、これらの証拠資料は、引用標章が請求人の使用する商標としてその当時から周知であったことを立証するためのもので、その後の継続的使用により、その周知性が2000年12月又は2001年12月の時点まで維持されていることは、甲第30ないし第59号証から明らかである。
(エ)被請求人は、甲第12ないし第29号証は、本件商標の出願時より20年近くも前のものであって、出願時の周知性となんら関連性がないとする。
この主張に対しては、上記理由(ウ)と同じことがいえる。
(オ)被請求人は、甲第33号証以下の証明書について、その証明者が如何なる者か不明としているので、以下にその点を明らかにしておく。
甲第33ないし第35及び第37号証 動物用医薬品、処方食取扱い業者
甲第36号証 漢方薬会社
甲第38、第46及び第59号証 動物用具、ドライヤー、手入用品取扱い業者
甲第39及び第40号証 医薬品取扱い会社
甲第41及び第42号証 血液、尿、組織等の検査機関
甲第43、第45、第52及び第56ないし第58号証 創立当初からの顧客
甲第44号証 レントゲン、内視鏡、手術台、顕微鏡等の医療器具取扱い業者
甲第47号証 犬の美容師トリマー養成学校
甲第48ないし第51号証 動物霊園
甲第53号証 税理士
甲第54号証 酸素ボンベ取扱い業者
甲第55号証 銀行
被請求人はまた、甲第33号証以下の証明書は出願時の周知性を証明するだけで査定時の周知性は証明していないとするが、出願時から査定時までは約1年に過ぎず、30年もの長きに渡り、営営として築き上げてきた業務上の信用を基礎とする商標の周知性が、引き続き使用しているにも関わらず(各証明書は、請求人の商標が各証明書の日付まで、引続き使用されていることを証明している。)、たった1年で失われるという状況が考えられるであろうか。証明書の内容を合理的に解釈すれば、被請求人の主張が当を得ないものであることは明白である。
引用標章の周知性に関する主張をさらに補充するために、財団法人日本動物愛護協会(甲第97号証)、日本大学動物病院(甲第98号証)及び麻布大学教授・動物病院長(甲第99号証)の証明書を追加する。
(カ)被請求人は、甲第30号証は2002年5月10日の発行であるから、本件出願の出願時又は査定時の周知性と関連性がないとしている。
しかし、甲第30号証は、引用標章の周知性が維持されていることを立証するものである。なお、甲第30号証から、24時間対応の救急病院は数少ないことを窺い知ることができるが、この種病院の存在を知っているということは、少なくとも近隣(請求人に対しては首都圏)の動物病院、獣医師等にとっては常識的事項であるといえる。
(キ)被請求人は、甲第31号証に関し、職場体験をした中学生及び担当教員の数が少ないため、周知性を確認させるものではないとする。
しかし、甲第31号証は、数ある動物病院の中から請求人の病院を選択して、わざわざ遠方から職場体験にきているという事実を示すもので、そのことは、取りも直さず、請求人の病院には長年の実績があり、請求人の商標が周知であることを物語っている。
さらに被請求人は、職場体験をした中学校に地域的偏りがあるとしているので、大阪府、愛知県(海部郡弥富町)及び新潟県の関係者の資料を追加する(甲第93ないし第95号証)。
(ク)被請求人は、請求人の全証拠からは、請求人の病院が設立以来30年以上の期間にわたって絶え間なく存在し、かつ引用標章を使用してきたことまでは証明できないとしている。
しかし、これらの事実は、例えば、甲第3、第4及び第33ないし第59号証から確認できることである。
また、被請求人は、請求人の売上実績の立証がなされていないとする。
しかし、引用標章の「動物の診療」という役務についての周知性は、主として診療報酬から成る売上実績ではなく、営業実績(長年継続性)、業界(獣医師界)での認知度等が重視されるべきと考える。
してみると、先に提出した周知性に関する証明書(甲第33ないし第59号証)に加え、請求人病院から独立して動物病院を経営する獣医が多数存在する事実(甲第68ないし第92号証)、全国各地から職場体験訪問の申し出がある事実(甲第31、第93ないし第95号証)、請求人病院が全国に数少ない24時間対応の救急病院の1つとして紹介されている事実(甲第30号証)等からして、引用標章が請求人が役務「動物の診療」について使用する商標として、本件商標の出願日である平成12年12月1日及びその登録査定日である同13年12月25日の時点において周知であったことに疑いの余地はない。
なお、「日本動物医療センター」の広告は、電話帳等において継続して行ってきている(甲第96号証)。
(ケ)被請求人は、引用標章は周知性を備えていないとするが、上述したところから、この被請求人の主張に理由がないことは明らかである。
(コ)被請求人は、請求人の名称「株式会社日本動物医療センター」の略称である「日本動物医療センター」に著名性が認められないから、本件商標は、第4条1項第8号に規定する「他人の著名な略称を含む商標」に該当しないとする。
しかし、甲各号証を綜合的にみれば、引用標章が、上記法条にいう「著名な略称」に該当することに疑いはない。
(サ)被請求人は、「被請求人会社は大阪府堺市に夜間診療を行える病院を運営し、…メディアには頻繁に登場しており、斯界では有名な存在である」としている。
しかし、甲第30号証の「夜間診療が可能な動物病院」の中に、大阪府堺市の動物病院は存在せず、被請求人の主張は理由のないものであることは明らかである。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
(ア)甲第5号証にある写真の建物入口の看板によれば、請求人の指す病院の名称は「日本動物医療センター」ではなく「動物綜合病院」であると認められる。なおこの商標「動物綜合病院」は、甲第6号証第2頁左欄中段の写真、甲第21号証第2頁の写真、甲第24号証第1頁の左下画面写真にもはっきりと表れている。
また、甲第8及び第10号証においても「動物綜合病院」の商標が使用されている。すなわち、請求人がこの病院について使用する商標は、必ずしも引用標章ではない。
(イ)東京の市外局番03地域の市内局番が3桁から4桁に変更されたのは平成3年 (1991年)1月1日であるところ、甲第5号証のパンフレットには「電話三七八局」と記載されているので、遅くともこの証拠の成立は平成2年以前、すなわち本件商標の出願日の10年以上前であると推認される。この病院の現在の実態は明らかにされていない。
(ウ)甲第6ないし第11号証の雑誌又は新聞の記事のうち、まず甲第8及び第10号証には引用標章の記載はないため、これら各号証は引用標章の周知性とは無関係である。同時に、この代わりに「動物綜合病院」と記載されており、したがって請求人の使用商標は「動物綜合病院」であると認められる。
その他の甲各号証によれば、この病院が設立された昭和44年(1969年)当時にはある程度の注目を集めたことが一応は認められる。しかし、これは、本件商標の出願日より実に約31年前のことであるから、昭和44年又は45年に成立したこれら甲各号証は、本件商標の出願時(2000年12月)又は査定時(2001年12月)における請求人商標の周知性とはなんら関連しない。
(エ)請求人の病院設立時以降の新聞・雑誌の記事として、甲第12ないし第29号証が提出されている。
しかし、これらの成立は、昭和46年のものが2件、51年が1件、53年が6件、54年が5件、55年が3件、56年が1件である。最新の甲第23号証でさえ、その成立は昭和56年(1981年)9月1日、すなわち本件商標の出願時より20年近くも前であって、出願時の周知性となんら関連性がない。
なお、甲第16号証のパンフレットは、配付枚数が明らかでない。
(オ)被請求人の会社は、後述するように獣医師100人以上の出資によって運営されているが、少なくとも被請求人会社役員のいずれもが、本件審判の請求を受けるまで請求人の「日本動物医療センター」の名称を知らなかった。
請求人は、甲第33ないし第59号証を以て証明書を提出しているが、これらのうち、まず甲第36、第38、第39、第41ないし第44、第46、第47、第50及び第51号証は、これに署名又は個人印の捺印がなく意思表示が認められないため、証明書としての成立を認めない。
次に、甲第56ないし第59号証の証明者である東京都渋谷区、中野区又は埼玉県川口市に在住の個人が何者であるか、特に動物医療の業界との関係が不明である。
したがって、その他の、日本全薬工業株式会社の代表取締役(甲第33号証)、森久保薬品株式会社の取締役事業部長(甲第34号証)、イソップ薬品株式会社の代表取締役(甲第35号証)、株式会社共立商会の代表取締役(甲第37号証)、福神株式会社の福神氏(甲第40号証)、有限会社榎尾管財の代表者(甲第45号証)、哲学堂動物霊園の園長(甲第48号証)、株式会社日本動物霊園の代表取締役(甲第49号証)、成願寺の小林氏(甲第52号証)、税理士の吉田氏(甲第53号証)、株式会社世田谷酸(甲第54号証)、株式会社東日本銀行の初台支店長(甲第55号証)の12名が、請求人の商標の周知性を一応証明していることになる。
しかるに第一に、これらすべての証明書は、本件商標の出願日である平成12年12月1日の時点で周知であったことを言うが査定時の周知性については証明していない。第二に、これらの証明者はすべて東京都内、しかもほとんどが請求人所在の渋谷区の隣接区内に所在し、全国単位で見たとき周知の範囲が極度に狭い。第三に、被請求人の調査によれば、証明者のうち少なくとも甲第33ないし第35、第40及び第54号証の証明者は製薬会社であり、少なくとも第48、第49及び第52号証の証明者は動物霊園であって、本件商標の指定役務「動物の診療」の需要者ではない。特に、甲第53号証の税理士及び甲第55号証の銀行には、動物医療の業界との関連性がない。第四に、証明者の中に公的な機関はなく、すべて一私人であって請求人と取引関係にある者であると思われ、証明書の信用力に欠ける。
したがって、本件商標の出願時及び査定時において引用標章が需要者の間に広く知られていた、ということはできない。
(カ)特定の言葉(「日本動物医療」)をインターネットで検索したときに抽出される順番は、その言葉を含む商標の周知性の有無とは関連しない。最近の雑誌記事として唯一である甲第30号証は、2002年5月10日の発行であって、その成立は本件商標の登録後である。したがって、本件商標の出願時又は査定時の周知性と関連性がない。
(キ)請求人の病院に職場体験に関する連絡があった事実は認めるが、甲第31号証のファクシミリ受信紙の内容は中学生の職場体験に関するものであり、当該中学生及びその担当教員の合計数名が「日本動物医療センター」の名称を知っている事実は、到底この商標の周知性を推認させるものではない。また送信者は、甲第31号証の1及び3は岩手県江刺市、その2は岩手県宮古市、その4は岩手県久慈市に所在の各中学校であり、すべて岩手県内に限られている。やはり地域に偏りがある。
その他の中学校の職場体験の実施の事実は、知らない。立証がない。因みに、ここに挙げられる中学校は東京都以東の数校のみであり、「全国的に知れ渡っている」との請求人の主張は当たらない。
(ク)請求人の提出に係る全証拠から、請求人が昭和44年に動物病院を設立し、少なくとも昭和56年までは存続した事実がほぼ推認できるが、その後の平成13年頃までの約20年間にわたっては主体的な立証がない。一応の証明力が認められる証明書が12件あるが、病院が設立以来30年以上の期間にわたって絶え間なく存在し、かつ引用標章を使用してきたことまでは証明できない筈である。また、たとえ仮に引用標章の使用を継続してきた事実があるとしても、国内の獣医師の数が2万7千人を越えるこの業界において、需要者に周知といえる程度にまではその名を知られてはいない。
商標の周知性は、使用期間の長さによってのみ生まれるものではない。時を経て増減するものである。したがって商標の使用開始時にいかほどの取材を受けたかは、本件審判で争われるべき事実ではない。引用標章の、本件商標の出願時又は査定時における周知性については、例えば請求人の売上げや広告の実績さえ立証されておらず、これを推認することができない。
(ケ)以上みたように、引用標章は商標法第4条第1項第10号にいういわゆる周知性を備えておらず、本件商標は同号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
乙第1号証に示すとおり、被請求人の業務の主な目的は「犬猫病院及び家畜診療所の経営」であって、具体的には「動物の診療」に関し、請求人のものとほぼ合致するため、商標法第4条第1項第15号の適用はない。また、上記のとおり、引用標章は、役務「動物の診療」においてすら周知ではないので、この役務を越えたいわゆる広義の混同が起こり得る筈はなく、本件商標は同号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標が、請求人名称の略称「日本動物医療センター」の文字を含む点のみは認めるが、請求人も認めるように、請求人名称は「株式会社日本動物医療センター」であるのに対して、本件商標はこの「株式会社」の文字を含んでいない。請求人の上記略称が著名であるとの立証は一切ないので、本件商標は法第4条第1項第8号所定の「他人の著名な略称を含む商標」に該当しない。
商号中には、会社の種類を表す文字を用いなければならない(商法第17条)。また、商法下での商号登記は、商標法下での商標登録よりも簡易な手続で行われる。すなわち、商号は「同一市町村内においては、同一の営業のため他人が登記したものと判然区別することができない」もの以外はすべて登記される(商業登記法第27条)。つまり市町村さえ異なれば、たとえ同一の商号であってもいくつでも登記され得る。このように、商号は法人に付された記号に過ぎず、商標に比べ、地域及び類似範囲の点から見て、選択の自由度が格段に大きいのである。したがって、簡単に取得した商号のうちの「株式会社」等以外の部分、すなわち「略称」を以て他人の商標登録を阻止しようとするならば、衡平性にもとることのないよう、その略称には相応の著名性が求められる。
(4)被請求人の補足主張
被請求人である株式会社ネオ・ベッツは、夜間の動物の診療を組織的に行う日本初の病院を運営することを主目的として、主に関西の、獣医師26人の出資により平成元年に設立された。現在は、大阪府堺市に夜間診療を行える病院を運営し、株主・会員病院は関西を中心に132を教える。この間にメディアには頻繁に登場しており、斯界では有名な存在である。
(5) まとめ
第一に、甲第5号証の写真、甲第8号証の記事本文、甲第10号証の記事本文その他によれば、請求人の使用商標は「日本動物医療センター」ではなく「動物綜合病院」であると認められる。したがって、請求人は引用標章を必ずしも統一的に使用していない。
第二に、甲第5ないし第29号証は、いずれも成立が本件商標の出願時より20年以上も前のものであって、本件商標の出願時又は査定時における引用標章の周知性を立証し得ない。
第三に、甲第31号証の1ないし4では引用標章の周知性を窺い知ることさえできない。これらのファクンミリ受信程度の通信は、いかな零細企業でも行っている。
第四に、甲第33ないし第59号証の証明書のうち、約半分は証拠としての証明力がない。(2)(オ)に示した残り約半分には一応の証明力が認められるものの、動物医療業界の広さを考えたとき、引用標章が需要者に周知というにはなお程遠い。
第五に、証明力が認められる証明書を含む甲第31号証の1ないし第59号証は、ほとんどが東京23区と岩手県に関するものである。矮小な地域の少人数が知っているという事実のみからでは、周知性の存在を導き得ない。
したがって、本件商標が、商標法第4条第1項第10号、第15号又は第8号に該当するとの主張は、いずれも理由がない。

第4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、役務「動物の診療」について自ら使用する引用標章が本件商標の登録出願時において周知であった旨主張しているので、この点について検討する。
請求人の提出に係る甲号証及び請求の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
(ア)請求人は、「動物の疾病予防の診断及び治療、動物の臨床検査及び研究」等を目的として昭和41年11月9日に設立され、その主たる事業として昭和44年から「日本動物医療センター」なる名称の請求人病院の経営を始めたこと(甲第3ないし第5号証)。
(イ)請求人病院は、地上4階地下1階の全館冷暖房付きの建物で、多くの診断科目ごとに別れた診療部門のほか、多種の動物臨床検査施設、入院施設、ホテル設備、美容施設等を備えたもので、その開業前後には、日本で最初の大規模な動物専用の総合病院として新聞、雑誌等で紹介されたこと(甲第5ないし第10号証)。
(ウ)その後も、昭和46年から同55年にかけて、新聞記事等において請求人病院が紹介された(甲第12、第13、第15、第17、第19及び第21号証)ほか、動物に係る報道記事や雑誌記事等において、請求人病院の獣医師ないしは請求人病院の談話として掲載されたこと(甲第11、第14、第18及び第22ないし第24号証)。
(エ)昭和53年10月から同54年1月にかけて、請求人病院の獣医師名で雑誌記事が連載されたこと(甲第25ないし第29号証)。
(オ)請求人病院では、平成12年から中学生の職場訪問又は職場体験学習を受け入れていること(甲第31、第93ないし第95号証)。
(カ)動物用医薬品取扱い業者及び動物霊園業者等により、請求人病院が周知である旨の証明がされていること(甲第33ないし第59号証)。
(キ)獣医師により、請求人病院が開業以来現在まで営業している旨又は請求人病院に勤務していた旨の証明がされていること(甲第60ないし第92号証)。
(ク)1997年(平成8年)ないし2003年(平成15年)発行の電話帳「タウンページ新宿・渋谷版」又は「ハローページ中野区版」に、「日本動物医療センター」として広告されたこと(甲第96号証)。
以上の事実によれば、請求人病院は、開業した昭和44年当時、大規模な動物専用の総合病院として目新しいこともあり新聞、雑誌等のマスメディアで紹介され世人の注目を集め、その結果、引用標章は、ある程度需要者間に認識されていたものと推認される。そして、その後今日に至るまで、請求人病院は、継続して引用標章を役務「動物の診察」に使用し、業務を行っていることが認められる。
しかしながら、請求人病院が新聞、雑誌等で紹介されたり、請求人病院の獣医師による記事が雑誌に連載されたのは、開業当初から昭和55年頃までであり、その後は紹介されることはなく、また、請求人病院自体が積極的に広告、宣伝等を行っていたことも認められない。もっとも、甲第96号証によれば、平成8年以降現在まで、「日本動物医療センター」の名の下で電話帳に広告していたことが認められるが、該広告の具体的な内容が不明であるばかりでなく、電話帳の対象範囲も東京都のごく一部に限られるものである。そうすると、これら紹介されたこと及び広告されたことをもって、上記紹介から既に20年以上が経過している本件商標の登録出願時ないし登録査定時まで継続して、引用標章が需要者間に広く認識されていたとは俄に認め難い。
さらに、動物用医薬品取扱い業者等による引用標章の周知性の証明は、証明者の殆どが請求人の取引関係者とみられ、その内容も請求人が作成した定型文の印刷による証明願いに対応して証明するものであって、証明者が如何なる根拠に基づいて証明しているか必ずしも明らかでなく、これらの証明書をもって直ちに引用標章が本件商標の登録出願時に需要者間に広く認識されていたということもできない。また、獣医師による証明は、請求人病院が開業以来現在まで継続して営業していること又は請求人病院に勤務した経験があることを立証するするに止まり、引用標章の周知著名性について具体的に立証するものではない。また、中学生等の職場訪問や職場体験学習は、ごく限られた範囲の者によるものであって、これらによって引用標章が需要者間に広く認識されていたとはいえない。
その他、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が需要者間に広く認識されていたことを認めるに足る証拠の提出はない。
以上を総合勘案するに、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用標章が請求人の業務に係る役務「動物の診療」を表示する商標として需要者間に広く認識されていたものと認めることはできない。
したがって、本件商標が構成中に「日本動物医療センター」の文字を有し、引用標章と類似するものであり、本件商標の指定役務と引用標章が使用されている役務とが類似するものであるとしても、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するということはできない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、請求人が使用する引用標章は、請求人の業務に係る役務を表示する商標として需要者間に広く認識されているものとは認められないから、被請求人が本件商標をその指定役務について使用しても、これに接する取引者、需要者がその構成中の「日本動物医療センター」の文字に注目して引用標章ないしは請求人を連想、想起するようなことはないというべきであり、該役務が請求人又は同人と経済的組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかの如くその出所について混同を生ずるおそれはないと判断するのが相当である。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
(3)商標法第4条第1項第8号について
請求人の名称は「株式会社日本動物医療センター」であるから、これから「株式会社」の文字を省いた「日本動物医療センター」は請求人名称の略称というべきであり、本件商標はこの請求人の名称の略称を含んでいるものといえる。
ところで、他人の名称の略称が商標法第4条第1項第8号に該当するためには、それが著名な場合に限られることは同号の規定から明らかである。
しかるに、引用標章が需要者間に広く認識されていたものとは認められないことは、上記(1)のとおりであり、請求人名称の略称についても同様に著名とは認められない。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。
(4)まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第8号のいずれにも該当するものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別掲】
本件商標

審理終結日 2004-01-20 
結審通知日 2004-01-23 
審決日 2004-02-04 
出願番号 商願2000-129333(T2000-129333) 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Z42)
T 1 11・ 23- Y (Z42)
T 1 11・ 25- Y (Z42)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 佐藤 正雄
特許庁審判官 宮川 久成
山本 良廣
登録日 2002-03-08 
登録番号 商標登録第4549124号(T4549124) 
商標の称呼 ネオベッツ、ニッポンドーブツイリョーセンター、ベッツ、ドーブツイリョーセンター、ニッポンドーブツイリョー 
代理人 折寄 武士 
代理人 齋藤 晴男 
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