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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 042
管理番号 1091935 
審判番号 審判1999-35790 
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-27 
確定日 2004-02-05 
事件の表示 上記当事者間の登録第4198489号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成14年4月26日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14年(行ケ)第285号、平成15年5月21日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第4198489号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4198489号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲(1)のとおり、左横書きした「力王」の文字(漢字)及び同文字上部に小さく振り仮名風に表示した「りきおう」の仮名文字よりなり、平成9年2月17日に登録出願、第42類「飲食物の提供」を指定役務として同10年10年16日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、証拠方法として甲第1号証ないし甲第203号証を提出し、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであり、その登録は無効にされるべきである旨述べた。

3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とすると答弁し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出し、本件商標は上記法条に該当するものではなく、その登録は無効にされるべきではない旨述べた。

4 当審の判断
(1)商標の類似性の程度について
本件商標は、後掲(1)のとおり、ゴシック書体により左横書きした「力王」の漢字2文字とその上部に小さく同一書体により振り仮名風に表示した「りきおう」の仮名文字より構成されている。
一方、請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する商標(以下「請求人商標」という。)は、後掲(2)(ア)(毛筆かい書体で縦書きした「力王」の文字(漢字)からなるもの)及び同(イ)(ゴシック書体により左横書きした「力王」「力王たび」の文字と地下たびの図形からなるもの)のとおりであり、これを本件商標と対比すれば、少なくとも(ア)のものは、本件商標と社会通念上同一と認められる商標であることは明らかである。
また、請求人商標は、それ自体ありふれた「力」と「王」の漢字2文字を結合してなる造語であるが、昭和26年、請求人の新製品である「跣たび」の販売開始時にその使用を始め、昭和27年に商標登録されたものであって、その構成文字は、スマートさに欠け使い勝手も悪かった従来の地下たびを軽快で利用者の足になじむように改良した新製品の販売開始を機に、イメージチェンジを力強く世に問う趣旨で採択されたものであることが認められるから、請求人商標は独創性の程度が低いとはいえない。
(2)請求人商標の周知著名性及び取引の実情について
(ア)請求人は、昭和23年10月に創業後、地下たびの生産を開始し、昭和26年に、従来の地下たびを改良した新製品を開発して、これを「力王跣たび」として販売を始め、昭和27年には請求人商標の商標登録出願を行い、その登録がされた。さらに、請求人は、昭和39年に貼縫式地下たびの新製品「力王たび」を、その後、高所作業用の新製品「力王ファイター」を開発するなどし、これらを主力商品として生産を増強するとともに、請求人商標を自社商品に使用してきた。
(イ)請求人は、昭和43年に台湾に合弁企業を設立したのを始め、昭和48年韓国に現地法人、昭和54年フィリピンに現地法人、昭和58年中国に合弁企業を相次いで設け(台湾及び韓国からは撤退)、専ら海外生産とその輸入、国内販売により業績を拡大した。
(ウ)請求人の地下たびの国内販売シェアは、昭和60年頃〜平成7年頃に60%〜70%台にあり、その後、本件商標の登録査定時(平成10年7月22日)までの間に、上記シェアが低下した事情はうかがわれず、地下たびのトップメーカーの地位を維持している。
(エ)請求人商品に係る地下たびの購入者は、高所作業者、建築・土木従事者、農園芸従事者等のほか、登山や魚釣りなどのレジャー用にも用いられるところから、履物の小売店やホームセンターなど一般大衆が商品を購入する店舗でも販売されるものであり、請求人は、全国150社の販売代理店と1万店以上の特約販売店を有して販売活動を展開している。
(オ)請求人は、昭和33年7月から現在に至るまで日本経済新聞の夕刊一面に「力王たび」「力王跣たび」などの自社商品名を明瞭に大書した題字下広告を1か月に1回の割合で継続的に掲載しているほか、一般紙を含む新聞、雑誌、ラジオ、テレビ、全国の道路脇に設置された看板広告等により自社商品の宣伝広告を展開し、また、新聞、雑誌等において、海外生産で成功した企業などとして紹介されたこともあり、平成10年5月12日付け西日本新聞には、「地下足袋発明から七十年以上。『いまや地下足袋といえば力王(東京)でしょう』」との記事が掲載されている。
(3)以上の認定事実を総合すれば、本件商標の出願時(平成9年2月17日)及び登録査定時(平成10年7月22日)において、請求人商標に係る地下たびという商品の性質上、その取引者、需要者が、高所作業、建築・土木従事、農園芸従事者及びその取引関係者など、一定の分野の者に限定されてはいるが、少なくとも、被請求人も認めるように、地下たびを含む履物類又はその関連商品ないしは作業品類の分野において、取引者、需要者の間に請求人商標は広く認識されていたものと認めるのが相当である。
一方、本件商標の指定役務に係る「飲食物の提供」は、それ自体としては、被請求人の主張するように、請求人商標に係る上記商品と取引事情を著しく異にする異種、別個の産業分野に属するが、上記指定役務の需要者は、当該役務の性質上、年齢、性別、職種等を問わず、あらゆる分野の広汎な一般消費者であり、その中には、請求人商標に係る上記取引者、需要者も当然含まれている。これらの者が、野外で作業をして昼食時を中心に外食する機会も多く、本件商標の指定役務の需要者となりやすいとする請求人の主張は、その趣旨を具体的に述べたものにほかならない。
そうとすれば、本件商標の指定役務の需要者と請求人商標に係る地下たびの需要者とは、相当程度共通する。
そして、このような共通の需要者が本件商標に接して、その指定役務の提供を受ける際に普通に払う注意力の程度について見るに、飲食物の種類や内容、役務提供の場所等いかんによっては、当該役務の出所について子細に吟味、選択する場合のあることはもとより当然であるが、それが通常の事態であるとは考えられず、むしろ、取引上の経験則に照らせば、一般消費者として、そのような高度の注意を払う行動には出ないのが通常であるといわなければならない。
そうすると、請求人商標の周知性の範囲内において、請求人商標と社会通念上同一の本件商標をその指定役務に使用したときに、これに接する需要者において、請求人商標を連想、想起し、当該役務が請求人の業務に係る役務であると誤信するか、あるいは、そうでなくとも、請求人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る役務であると誤信し、その出所について広義の混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標


(2)請求人商標
(ア)


(イ)


審理終結日 2002-04-10 
結審通知日 2002-04-15 
審決日 2002-04-26 
出願番号 商願平9-16285 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (042)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田口 善久 
特許庁審判長 小池 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
柴田 昭夫
登録日 1998-10-16 
登録番号 商標登録第4198489号(T4198489) 
商標の称呼 リキオウ 
代理人 石田 敬 
代理人 青木 篤 
代理人 勝部 哲雄 
代理人 田島 壽 
代理人 丸岡 裕作 
代理人 宇井 正一 

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