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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 119
管理番号 1091848 
審判番号 審判1995-7234 
総通号数 51 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-03-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1995-04-05 
確定日 2004-02-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第2699605号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2699605号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2699605号商標(以下「本件商標」という。)は、「GIANNI VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第19類「台所用品、日用品」を指定商品として、平成1年3月30日登録出願、同6年11月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が引用する商標は、以下のとおりである。
1.登録第1276291号商標(以下「引用A商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第19類「台所用品(電気機械器具、手動利器及び手動工具に属するものを除く)日用品(他の類に属するものを除く)」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同52年6月14日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2.登録第1415314号商標(以下「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同55年4月30日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3.登録第972813号商標(以下「引用C商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和45年4月16日登録出願、同47年7月20日に設定登録されたものであるが、指定商品中の「かばん類、袋物」についての登録は、放棄により抹消され、その登録は、平成2年6月25日になされている。
4.登録第1793465号商標(以下「引用D商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同60年7月29日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
5.登録第1786820号商標(以下「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同60年6月25日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
6.登録第1402916号商標(以下「引用F商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、昭和49年10月1日登録出願、同54年12月27日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申したて、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第8号について
(1)請求人は、イタリアの服飾デザイナーとして全世界に著名な「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売し.これらの商品に「VALENTINO GARAVANI」、あるいは「VALENTINO」の欧文字からなる商標を使用している者である。
(2)上記「VALENTINO GARAVANI」の氏名は単に「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と略称され、本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっている。
この略称が著名であることについては、甲第8号証(登録異議の決定)をはじめとして、甲第10号証の2、甲第13号証の2、甲第33号証の2、甲第43号証の2、甲第43号証の3、甲第43号証の5及び甲第45号証(報知新聞)によって立証されている。
(3)本件商標を構成する「GIANNI VALENTINO」の文字は、「ジオルジオ ヴァレンティノ」と呼ばれているイタリアの著名なデザイナーの氏名を表すものであると同時に、その文字の後半部の文字は上記「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名の著名な略称を含む商標であることは明らかであり、その他人の承諾を得ずに登録出願されたものであることが明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4案第1項第8号に違反して登録されたものである。
2.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、構成文字全体を称呼するときは「ジアンニヴァレンチノ」の9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「ジアンニ」と「ヴァレンティノ」の間に段落を生ずるものである。しかも、前記1.のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」の氏名が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、本件商標は、単に「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資される場合が決して少なくないものである。
したがって、本件商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものである。
(2)引用A商標は、イタリアの著名なデザイナー「VALENTINO GARAVANI」の氏名を表すものであるが、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服、バック、ベルト、靴、ライター等に使用された結果、全世界に著名な商標となっている。このことは、甲第9号証(登録異議の決定)によっても明らかであり、その構成文字全体から生ずる「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼のほか、構成文字前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくない。
そうとすれば、引用A商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものである。
(3)したがって、本件商標と引用A商標は、「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標と引用A商標の指定商品が同一のものであることも明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3.商標法第4条第1項第15号について
請求人は、引用A商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用している。これらのうち、引用BないしF商標を引用する。
そして、請求人の「VALENTINO」、あるいは「VALENTINO GARAVANI」の文字からなる商標は、これが「被服、ネクタイ、バッグ、ベルト、靴、ライター」等に使用され、本件商標の登録出願日(平成1年3月30日)前から周知、著名であることは特許庁においても明らかである(甲第9ないし50号証)。
また、本件商標と引用AないしF商標が称呼上類似する商標であることは上記2.で述べたとおりであり、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている商品はいずれも販売店等を同じくする場合が多いばかりでなく、日常生活上、密接な関係にある商品である。
したがって、本件商標は、これを被請求人がその指定商品に使用するときは、その商品があたかも請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか、または請求人と経済的、組織的に何等かの関係にある者、すなわち、姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものといわざるをえない。

第4 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は、これを却下する、又は本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第30号証(枝番を含む。)及び資料1ないし28を提出した。
1.利害関係の有無について
本件審判の請求は利害関係人によるべきところ、請求人は本件審判の請求について利益を有するものであるのか何ら説明をしていない。
したがって、本件審判の請求は利害関係を有しないものによってなされた不適法なものであるから、商標法第56条において準用する特許法第135条の規定により、その請求は却下されるべきである。
2.商標法第4条第1項第8号について
(1)請求人は、「VALENTINO」の文字がイタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノガラヴァーニ)」の氏名の著名な略称であると主張しているが、同氏の略称としてのみ著名であるとの事実は全くなく、著名であるとする証拠も本件に関してはなんら提出されていないものである。
甲第8号証の2(登録異議の決定)においては、「『VALENTINO』の文字が・・『VALENTINO GARAVANI』の著名な略称でもある・・」とあるが、「『VALENTINO GARAVANI』のみの著名な略称である・・」とは記載されていない。このことは、請求人が提出した甲号証からも裏付けられるものである。
すなわち、甲第10号証の2、甲第13号証の2、甲第33号証の2、甲第43号証の2、甲第43号証の3及び甲第43号証の5(商品カタログ)には、被服について、「valentino」「ヴァレンティノ」の文字とともに、「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」「valentino garavani」「VALENTINO GARAVANI」等の文字が使用されており、デザイナー「VALENTINO GARAVANI(バレンティノ ガラバーニ)」に係る商標の識別性を担保せんとする請求人の意思が窺える。
また、甲第44号証(新聞広告)には、皮革製品(バンド、バッグ)について、「valentino garavani」「Mario Valentino」の各商標が同一紙面上に掲載されており、請求人自身も別異の商標として認識するところである。
(2)ところで、わが国に世界の一流品、世界のブランドを紹介する雑誌には、請求人の「VALENTINO GARAVANI」商標と前記「Mario Valentino」商標、さらには「Valentino Rudy」商標などが掲載されている(乙第1、2号証)が、いずれの商標も「VALENTINO」とのみ略称して使用されてはおらず、それが請求人の商標として著名であるとの事実もない。
それ故、「VALENTINO」の文字を含む商標所有者が「VALENTINO」とのみ省略して使用するときには、どのデザイナーに係る商品なのか識別し得ず、「VALENTINO」の文字自体が特定のデザイナーに係るものとして需要者一般に親しまれているとする理由にはならない。
このように、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーが他にも存在し、それぞれ自らの氏名を商標として使用しているという取引の実情がある以上、略称をもって取引するときは、かえって他のデザイナーとの区別がつかなくなり、需要者・取引者をしてそれらの者の業務に係る商品を表示するものとして識別することを困難にせしめ、商取引を混乱に陥れることになり兼ねないと考えられる。
甲第45号証(新聞記事)には、単に「バレンチノ」と記載され、「イタリアの有名デザイナー」である旨付記されているが、前記の「マリオ・バレンティノ」等も「イタリアの有名デザイナー」であり、かかる記載のみからはどのデザイナーなのか特定することは極めて困難であるといえる。
(3)よって、「VALENTINO」の文字は、「VALENTINO GARAVANI」の氏名の略称として著名であるとの事実は認められず、本願商標は一連に表示したものとして認識されるのであるから、商標法第4条第1項第8号に該当しないものである。
(4)なお、本件商標は、イタリアの著名なデザイナー「GIANNI VALENTINO」の文字を書してなるものであるが、被請求人は、同氏との間において、本件商標をその指定商品について使用することにつき、本件商標の登録出願前にすでに承諾を得ている(乙第3号証)。
しかるに、わが国には、「GIANNI VALENTINO」商標の使用に関して19社のライセンシーと4社のサブライセンシーがあり、被請求人が版権管理者として、上記承諾に基づき、本件商標の出願をしているものである(乙第4ないし9号証)。
3.商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用A商標とは、その構成において顕著に相違しているから、外観において相紛れるおそれのない非類似の商標である。
(2)本件商標は、その構成文字に相応して「ジアンニ バレンティノ」の称呼が生ずるものであるのに対し、引用A商標は、その構成文字に相応して「バレンティノ ガラバーニ」の称呼が生ずるものの、本件商標から生ずる称呼とは「ジアンニ」「ガラバーニ」の有無という明確な差異があるから、両商標は、明瞭に区別して聴取することができるものである。
(3)請求人は、本件商標及び引用A商標より生ずる称呼について、いずれも「ヴァレンティノ」の称呼が生ずるから、類似すると主張する。
しかしながら、本件指定商品である第19類のみをみても、引用A商標、「MARIO VALENTINO」(乙第10号証)、「RUDOLPHVALENTINO」(乙第11号証)は、「VALENTINO/ヴァレンティノ」のみの商標(乙第12号証)とは別異の商標として登録を得ている。
また、乙第12号証の商標が存在するにもかかわらず、「Valentino」の文字を含む登録商標「Valentino Rudy」(乙第13号証)が存在する。乙第13号証に関して、審決は、「Valentino Rudy」の文字全体で外国の人名を表わしたものであるから、一連の商標として認識され、「VALENTINO/ヴァレンティノ」のみの商標とは類似するものではないと判断している(乙第14号証)。
(4)取引の実際においては、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーが他にも存在し、それぞれ自らの氏名を商標として使用している。商品取引の実際において、「VALENTINO」の文字を含む一連の商標と「VALENTINO」のみの商標、「VALENTINO」の文字を含む一連の商標とその他の「VALENTINO」の文字を含む一連の商標とは、別異の商標として認識され取引に資されているのであり、需要者をして商品の出所につき混同を生ぜしめるおそれはないものである。
(5)したがって、本件商標と引用商標とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
4.商標法第4条第1項第15号について
(1)被請求人は、「VALENTINO GARAVANI」の商標が著名なものであることを否定するものでは決してない。
しかしながら、「VALENTINO」の商標、「VALENTINO」の略称は、たとえ請求人が使用していても請求人の商標として著名であるとの事実は全くない。
すなわち、被服、ハンドバック、くつ等の商品分野では、請求人と同等あるいはそれ以上に著名なイタリーのデザイナー「マリオ・バレンティノ」があり、同人が使用する「MARIO VALENTINO」の商標は著名商標として認識されている。そして、乙第1、2号証(雑誌)においては、請求人の「VALENTINO GARAVANI」商標と前記「MARIO VALENTINO」商標などが掲載されているが、いずれの商標も「VALENTINO」とのみ略称して使用されているものではない。
(2)「VALENTINO」の商標、略称が請求人の商標として周知著名ではないことは、他の商品区分での審査における判断でも支持されているものである。
すなわち、被請求人は、「VALENTINO」の商標、「GIANNIVALENTINO」の文字を含む商標について、多くの商品区分で登録を得ており、出願公告後に本件請求人から登録異議申立てを受けたが、いずれの商品区分においても、申立てに理由はないとの決定がなされている(乙第15ないし28号証)。
(3)このことは、過去の審判事件における審決例によっても裏付けることができるものである。
まず、商品区分第21類における「Valentino Franchini」の商標に対して、出願公告後、本件請求人により登録異議申立てがなされたが、決定においては、「Valentino Franchini」の文字は、イタリアなどにおいてしばしばみられる男子の姓名を表したものと容易に理解し得るところであり、そして、姓と名のいずれか一方によってもなお、当該人を明らかに認識し得るが如き格別の事情があればともかく、通常かかる姓名の場合には、これを一体のものとして把握し観察するのが自然であって、いかに簡易迅速を尊ぶ商取引の実際を考慮しても「Valentino」と「Franchini」とを分離して、単に「ヴァレンティノ」と称呼されるとはみられないとされた(乙第29号証)。
また、商品区分第17類における「Valent ino Rudy」の文字を含む商標に対して、出願公告後、本件請求人により登録異議申立てがなされたが、決定においては、「Valentino Rudy」の文字部分は欧米人の氏名を表すものであって、通常は構成全体の文字より生ずる一連の称呼をもって、取引に資されるとみるのが相当であるとされた(乙第30号証)。
(4)以上のように、「VALENTINO」の文字を含む商標は、請求人一人のものではなく、他にも著名商標が存在し取引市場を同じくしている以上、「VALENTINO」とのみ略称して使用するのは、かえって取引者・需要者をして混乱せしめることにならざるを得ない。
よって、「VALENTINO」のみの商標、「VALENTINO」の略称は、請求人の使用に係るものとして周知著名なものではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。
5.以上に述べたように、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号に該当するものではないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とされるべき理由は全く存在しない。

第5 当審の判断
1.本件審判の請求につき、請求人は、利害関係を有しない者によってなされた不適当なものであるから、その請求は却下されるべきである旨主張するので、この点について検討するに、ある商標の登録の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。
本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、ないし請求人の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の登録を無効にし、排除せんとすることは、商標権の本質に照らして当然の権利というべきものである。
したがって、請求人は、本件商標の存在によって、直接不利益を受ける者であるから、本件審判の請求をするにつき、利害関係を有するというべきである。
2.イタリアのデザイナーである「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」に関して行った職権による証拠調べによれば、以下の事実が認められる。
(1)「服飾辞典」(文化出版局、昭和63年9月5日第10刷発行)には、「イタリア北部の都市に生まれる。・・・スチリストになるため、パリのサンジカ(パリ高級衣装店組合の学校)で技術を身につける。・・・1958年独立、ヴァレンティーノ・クチュールの名でローマに店を開いた。このころ、イタリアのモードは世界的に有名になりつつあった。彼の最初の仕事は、フィレンツェのピッティ宮殿でのコレクションである。このコレクションは、〈白だけの服〉という珍しい演出であったが、その美しさはジャーナリストの間で評判になり、「ニューズ・ウィーク」「ライフ」「タイム」「ウィメンズ・ウェア・デイリー」各誌紙で取材、モードのオスカー賞を獲得した。1967年、ヴァレンティーノの名は世界に知れわたった。1972年には紳士物も始め、その他アクセサリー、バッグ、宝石類、香水、化粧品、家具、布地、インテリアと、その仕事の幅はたいへん広いが、すべてヴァレンティーノ独特のセンスを保っているのはみごとである。」の記載がある。
(2)「英和商品名辞典」(株式会社研究社、1991年第3刷発行)には、「イタリアRomaのデザイナーValentino Garavani(1932- )のデザインした婦人・紳士物の衣料品・毛皮・革製バッグ・革小物・ベルト・ネクタイ・アクセサリー婦人靴・香水・ライター・インテリア用品など.・・・1967年にFirenzeで白一色のコレクションを発表してマスコミに大きく取り上げられ、一躍その名を高めた.」の記載がある。
3.本件商標の登録出願前に発行されたものと認められる甲第10号証の1及び2(世界の一流品大図鑑’81年版)、甲第11号証の1及び2(世界の一流品大図鑑’83年版)、甲第12号証の1及び2(世界の一流品大図鑑’85年版)、甲第13号証の1及び2(男の一流品大図鑑’85年版)、甲第14号証の1ないし8(世界の一流品大図鑑’88年版)、甲第15号証の1及び2(男の一流品大図鑑’88年版)、甲第19号証の1及び2(25ans 1987年10月)、甲第36号証の1ないし5(1988 SPRING & SUMMER COLLECTION)、甲第37号証の1及び2(1988 AUTUMN & WINTER COLLECTION)、甲第38号証の1ないし4(’89 SPRING & SUMMER COLLECTION)、甲第44号証(昭和57年12月24日付け日本経済新聞)、及び本件商標の登録査定前に発行されたものと認められる甲第16号証の1及び2(世界の一流品大図鑑’90年版)、甲第17号証の1及び2(男の一流品大図鑑’91年版)、甲第20号証の1及び2(25ans 1989年5月号)、甲第22号証の1ないし3(25ans ’94年4月号)、甲第26号証の1及び2(ミス家庭画報 1989年5月号)、甲第27号証の1及び2(ミス家庭画報 1990年5月号)、甲第28号証の1ないし4(ミス家庭画報 1990年7月号)、甲第29号証の1及び2(ミス家庭画報 1994年4月号)、甲第30号証の1ないし5(ミス家庭画報 1994年6月号)、甲第31号証の1ないし3(ミセス 1994年5月号)、甲第32号証の1及び2(Vingtaine/ヴァンテーヌ 1994年10月号)、甲第34号証の1及び2(JJ/ジェイジェイ 1990年6月号)、甲第35号証の1ないし3(’90 SPRING & SUMMER COLLECTION)、甲第45号証(1991年(平成3年)7月29日付け報知新聞)、甲第47号証の1及び2(Oggi 1993年10月号)、甲第48号証の1及び2(CLASSY 1993年10月号)、甲第49号証の1及び2(marie claire 1993年10月号)、甲第50号証の1及び2(lecoeur 1993年10月号)によれば、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係るバッグ、ベルト、婦人服、紳士服、ネクタイ、靴、装身具、手袋、ボールペン、万年筆、シャープペン、靴下、眼鏡フレーム、ライター、傘、ハンカチ、下着、小物入れ、シガレットケース等は、我が国において、「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」、「valentino garavani」、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」などの表示をもって、または「valentino garavani」若しくは「VALENTINO GARAVANI」と「V」を図案化した図形を組み合わせた表示をもって紹介されている。(「VALENTINO GARAVANI/ヴァレンティノ ガラヴァーニ」、「valentino garavani」、「VALENTINO GARAVANI」、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の各表示、「valentino garavani」または「VALENTINO GARAVANI」と「V」を図案化した図形を組み合わせた表示について、以下「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」という。)
4.甲第10号証の2、甲第13号証の2、甲第19号証の2、甲第33号証の2、乙第1号証(世界の一流品大図鑑’85年版;27頁、151頁)及び乙第2号証(世界の特選品’86;136頁、175頁、191頁)によれば、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品について、単に「ヴァレンティノ」の表示のみで紹介されている。
5.また、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品群が、我が国において単に「ヴァレンティノ」と表示されていることに関して行った職権による証拠調べによれば、以下のとおりである。
(1)「婦人画報」(昭和51年11月号)には、「資生堂ザ・ギンザ・秋冬のファッション」と題する記事中に「イタリア・ファッションの第一人者ヴァレンティノも日本に登場して2年、人気も急上昇といった昨今ですが、今回紹介されたコレクションでも、セーターからコートまで洗練されたヨーロッパ感覚を見せています。」なる記載がある。
(2)「an an臨時増刊号 FALL&WiNTER1976-’77 ブランド別CATALOGUE」には、「ヴァレンティノはイタリアのオートクチュール出身のメーカー。・・・いいものがわかる人なら誰でもがヴァレンティノを愛してしまう・・・」、「ヴァレンティノのオリジナルジャガードのセカンドバッグ」の記載がある。
(3)「JJ 1976-10」には、「ヴァレンティノのオリジナルジャガードのベルト」、「・・ベージュの傘。ヴァレンティノのV文字が小さく全面にプリントされて・・」の記載がある。
(4)「アイリスマガジン」(第71号、1977年1月1日発行)には、「ヴァレンティノ」の表題の下、商品「ベルト」が紹介されている。
(5)「non-no」(12-5 ’89 No,23)には、「ヴァレンティノ、ソニア・リキエルから・・・」の表題の下、「この秋デビューしたヴァレンティノの『オリバー・ドンナ』・・・」の記載がある。
(6)昭和51年9月28日付け繊研新聞には、「ヴァレンティノ秋冬ショー」の見出しの下、「白一色のコレクションを発表してデビューしたヴァレンティノ、・・」の記載がある。
(7)昭和51年9月30日付け読売新聞には、「ヴァレンティノのショーから」との小見出しの下、「イタリア服飾界の鬼才といわれるヴァレンティノ・ガラバーニの’76秋冬コレクションが、このほど大阪ロイヤルホテルで開かれた。」旨の記事が掲載されている。
(8)昭和51年10月1日付け河北新聞には、「バレンチノのトータルファッション」との小見出しの下、ヴァレンティノのデザインした被服の紹介記事が掲載されている。
(9)昭和51年10月2日付け日刊ゲンダイには、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表」との見出しの下、ヴァレンティノのデザインした被服の紹介記事が掲載されている。
(10)昭和51年10月5日付け朝日新聞には、「バレンティノ・ショー」との見出しの下、ヴァレンティノのデザインした被服の紹介記事が掲載されている。
(11)昭和51年10月5日付け宮崎日日新聞には、「見事なバレンチノ作品」との見出しの下、ヴァレンティノのデザインした被服の紹介記事が掲載されている。
(12)昭和51年10月6日付け日経産業新聞には、「伊の鬼才ヴァレンティノ」との見出しの下、ヴァレンティノのデザインした1976年秋冬物の被服の紹介記事が掲載されている。
(13)昭和52年3月18日付け朝日新聞には、「77年春夏のコレクション」の見出しの下、ウンガロやカルダンと並んで、ヴァレンティノ ガラヴァーニは「ヴァレンティノ」との表示で、そのデザインした被服の紹介記事が掲載されている。
6.前記2.ないし5.で認定した事実によれば、「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係る商品群を表示するブランドとして、本件商標の登録出願日前より、我が国のファッション関連商品の分野において広く認識されていたものと認め得るところであり、その著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたということができる。
そして、「ヴァレンティノ」(若しくは「バレンチノ」)の表示は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の氏名、またはそのデザインに係る商品群に使用されるブランド(「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」)の略称を表すものとして、本件商標の登録出願前より、我が国のファッション関連の商品分野の取引者及び需要者の間で広く認識されていたものというのが相当である。
7.出所の混同について
(1)本件商標及びその指定商品について
ア.本件商標は、前記構成よりなるものであるところ、その構成中に、前記5.で認定した「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係るバッグ、ベルト、婦人服、紳士服、ネクタイ、靴、装身具、手袋、ボールペン、万年筆、シャープペン、靴下、眼鏡フレーム、ライター、傘、ハンカチ、下着、小物入れ、シガレットケース等について使用され、本件商標の登録出願前より、我が国においても取引者及び需要者の間に広く認識されている「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」の略称として、我が国において著名な「ヴァレンティノ」と同一の称呼を生ずる「VALENTINO」の文字を含むものである。
イ.本件商標の指定商品は、前記のとおり、「台所用品、日用品」とするものであるところ、該商品の主たる需要者は、一般の消費者であると認められる。一方、「ヴァレンティノ」と略称され、著名な「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」が使用される上記ア.の商品についても、その主たる需要者は、一般の消費者と認められる。
また、食器類等の台所用品にあっては、近時、一種ファッション性を持たせ、被服等で著名なデザイナーがデザインし、そのデザイナーの名前をブランドとした商品が市場に多数出回っている実情にある。
(2)上記(1)ア.イ.で認定した、本件商標の構成態様及び取引の実情よりすれば、本件商標をその指定商品について使用した場合は、これに接する取引者及び需要者は、その構成中の「VALENTINO」の文字部分に強く印象付けられ、「ヴァレンティノ」とも呼ばれる「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のブランドを連想、想起することは明らかであり、該商品が「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のブランドの一種、ないし兄弟ブランドであるとの誤解を生ずるか、あるいは「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」、もしくはその関連会社と組織的、経済的に何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのように認識する蓋然性が極めて高いというべきである。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」を使用した商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
8.商標法第4条第1項第15号に関する被請求人の主張について
(1)弁駁について
被請求人は、「VALENTINO」が「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」の略称として、著名ではない旨主張し、19類、17類、21類等の登録例、審査・審判例を挙げている。
しかしながら、前記2.及び5.で認定したように、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」は、1967年に、白だけの服のファッションショーを開いて、ファッション界にセンセーションを巻き起こし、その名声を確立した。我が国においても、昭和50年代はじめには、同デザイナーが手がけた被服等が新聞雑誌等を通じて紹介され、商品のデザインがエレガントであることなどの理由により、その名前は、ファッション関連の業界にとどまらず、一般の消費者の間にも広く知られるようになったということができる。そして、我が国においては、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」、ないし同デザイナーのデザインに係る商品群について使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」が、単に「ヴァレンティノ」と表示されている事実があることからすると、「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」との表記から、一般の消費者は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」を想起、連想するというのが相当である。
そして、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーに係る商品のブランドが、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称されている事実は存在しない。
また、本件商標の指定商品を含めた他の商品の区分において、「VALENTINO」の文字を含む商標が登録されている事実が存在するとしても、本件商標をその指定商品に使用した場合に、その登録出願時から査定時において、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」を使用した商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがあったか否かの問題であるから、被請求人が挙げる登録商標等の存在に、前記認定が左右されるものではない。
(2)職権でした証拠調べに対する意見について
ア.被請求人は、各証拠とも、記事中の「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」との関係で簡略的に用いられているにすぎず、これをもって「ヴァレンティノ」が著名な略称とすることはできない旨主張する。
しかしながら、上記8.(1)で認定したとおり、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」、ないし同デザイナーのデザインに係る商品群について使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」が、ファッション関連商品の分野の取引者及び需要者の間に極めて著名であること、これらが単に「ヴァレンティノ」と略称されている事実が存在すること、及び「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーに係る商品のブランドが、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称されている事実は存在しないことからすると、「ヴァレンティノ」の表示から、取引者及び需要者は、直ちに「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」、ないし同デザイナーのデザインに係る商品群について使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」を想起することは明らかであり、このように、「ヴァレンティノ」の表示は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」の略称として広く知られているといえる。
イ.被請求人は、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーは、その使用するブランドについて、他のデザイナーに係る商品と混同を避けるため、一連で使用し、棲み分けを図っている。このような取引の実情からみても、「VALENTINO」の文字を含む商標は一体のものとしてみるべきであり、過去の登録異議の決定においても一体の商標であるとの判断をしている旨主張する。
しかしながら、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」以外の、「VALENTINO」の文字を含むデザイナーがその商品に「VALENTINO」の文字を含めた商標を一連で使用しているのは、単に「ヴァレンティノ」若しくは「VALENTINO」と略称され、著名であるという事実がなく、「VALENTINO」の文字のみを使用すれば、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」のデザインに係る商品と誤認される場合があるからである。
また、一般の消費者が、「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」以外の「VALENTINO」の文字を含むブランドについて、「Valentino Garavani(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の取り扱いに係る商品群に使用される「VALENTINO(ヴァレンティノ)商標」と誤認混同を生じていないとする証拠もないことから、被請求人主張の「棲み分け」ができていると断ずることもできない。
(3)したがって、被請求人の上記主張は採用できない。
9.むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ず、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2001-11-26 
結審通知日 2001-11-29 
審決日 2002-03-19 
出願番号 商願平1-35153 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (119)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹内 弘昌中村 欽五飯塚 隆 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 茂木 静代
野本 登美男
登録日 1994-11-30 
登録番号 商標登録第2699605号(T2699605) 
商標の称呼 ギアンニバレンチノ、ジャイアンニバレンチノ、ギアンニ、ジャイアンニ、バレンチノ、ジアンニバレンチノ 
代理人 杉村 興作 
代理人 佐々木 功 
代理人 川村 恭子 
代理人 杉村 暁秀 

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