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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z30 |
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管理番号 | 1090280 |
審判番号 | 不服2001-10326 |
総通号数 | 50 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2004-02-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-06-19 |
確定日 | 2003-12-15 |
事件の表示 | 平成11年商標登録願第113343号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は、後掲のとおりの構成よりなり、第30類「あめ,キャンデー」を指定商品として、平成11年12月13日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶理由 原査定は、「本願商標は、多少デザインが施されてはいるが、指定商品との関係では、これらの商品がその容器の形状として通常採用し得る立体的形状からなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、全体として、単に商品の容器の形状を表示してなるものと認識するにとどまり、自他商品の識別標識としての機能を有しないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。 3 当審の判断 (1)本願商標は、後掲のとおり、筆記具のキャップのクリップを想わせる同様のクリップの付いた蓋を有する全体として円筒形の容器の形状を容易に理解させるものであって、本願の指定商品との関係においては、「あめ,キャンデー」を収納する容器の一形態を表したと認められるものであるから、これをその指定商品に使用しても、取引者、需要者は、単に商品の収納容器と認識するにすぎないものと判断するのが相当である。 (2)請求人は、要旨、以下のとおり、主張している。 1.「原審の拒絶理由は要するに、『本願商標は指定商品の容器の形状を表わしてなるものであるから、如何に形状が特異であっても、自他識別力があるとは認められず、したがって、商標法第3条第1項第3号に該当する。』との趣旨であると認められる。然しながら、この拒絶査定は、商標法第2条第1項において立体商標の登録を認め、更に、法第4条第1項において、『次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。』とし、その第18号において『商品又は商品の包装の形状であって、その商品又は商品の包装の機能を確保するため不可欠な立体的形状のみからなる商標』とされた規定を全く無視してなされた違法なものであり取消しを免れない。本願商標は、『商品の包装の機能を確保するため不可欠な立体的形状』に該当しない形状要素を具備するものである。」 2.「審査官の説示に依れば、商品の容器の形状を表示してなる立体商標は、その商品の容器として通常採用し得ない立体的形状でない限り登録を拒絶されることになる。然しながらその様な立体的形状の容器は実用に供することができない。結局事業者は容器を表わす商標については全く保護を受け得ないこととなる。これはハーモニゼーションの趣旨から、欧米諸国で広く認められていた立体商標の登録を我が国においても認めることとした立法趣旨に反するものと思料する。欧米諸国で登録される立体商標の大半は容器を表わす商標である。」 3.「本願商標は、原審審査官も指摘の如く、単にあめ、キャンデーの容器として広く用いられている単純円筒状の蓋付容器ではなく、『デザインが施されている』ものである。商品、特に食品の容器であればデザインにも様々な制約があり、奇想天外なデザインは採用できない。本願商標に施されたデザインが『多少』と言う程度のものか否かは本質的な問題ではなく、そのデザインが商品との関連において、顕著性、自他識別力を有するか否かが問題である。商品の識別力の有無は、類似のデザインが多用されているか否かで判断すべきと思料する。このような容器商標に就いては、それに施されたデザインに就いて、先行商標との類否を審査し、その顕著性、自他識別力を判断し登録の可否を論ずべきであり、容器からなる立体商標を、それが単に容器であるからとして拒絶することは失当と考える。本願商標は、筆記具のイメージであるが、このような形の筆記具は存在せず、又、通常の円筒状の菓子容器では、蓋と身の外径が等しくなっているが、本願商標では、蓋の外径の方が大きく、又、特徴的なデザインとして人目を引くクリップが設けられている。このような形状は、『商品の包装の機能を確保するため不可欠な立体的形状』に該当しない形状要素である。従って、本願商標は、商標法第4条第1項第18号に規定の『商品又は商品の包装の形状であって、その商品又は商品の包装の機能を確保するため不可欠な立体的形状のみからなる商標』に該当せず、登録されるべきものである。」 (3)しかしながら、立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物の形状も含むものであるところ、商品の容器の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品の容器の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)には商品・役務の出所を表示し、自他商品・自他役務(以下、「自他商品等」という。)を識別する標識として採択されるものではない。 そして、商品の容器の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは前記したように商品の容器の機能又は美感をより発揮させるために施されたものであって、本来的には、自他商品等を識別するための標識として採択されるのではなく、全体としてみた場合、商品の容器の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品の容器の形状を表示したものであると認識するに止まり、このような商品の容器の機能又は美感と関わる形状は、多少特異なものであっても、いまだ商品の容器の形状を普通に用いられる方法で表示するものの域を出ないと解するのが相当である。 ところで、本願の指定商品「あめ,キャンデー」においては、商品や商品の包装の形状等の外観上の特徴が需要者の購買心理、選択意欲、消費行動等に重要な影響を与えるものといえるから、商品や商品の包装の形状において、特に、美感や装飾等のデザイン性が強く追求されるのに対し、商品との機能、効果等の面から特定の形状にしなければならない必要性は比較的薄いといえる。 そうすると、上記商品や商品の容器の形状は、市場の流行や需要者の用途、嗜好等に合わせ、美感や装飾等のデザイン性を強く意識した各種の特徴的な変更、装飾等が施される実情にあるものと認められ、その場合、立体的形状に施されたその種の変更、装飾等は、外観上同種の商品や商品の容器の形状と比較し特徴的なものと認められるとしても、それらは専ら需要者が商品を選択するに際して、外観上の美感、若しくは魅力的な形状という嗜好上の意味合いを与えているにすぎず、それは未だその商品や商品の容器の形状の範囲内のものと認識するに止まるものである。 したがって、上記の商品や商品の容器の形状における変更、装飾等は、自他商品の出所を表示する識別標識として機能しているものではなく、その立体商標の形状の全体を観察しても識別力を有するものとは認められない。 そして、本願商標は、前記認定のとおり、その形状が特徴的なものであっても、それは商品や商品の容器の、主として美感、若しくは魅力的な形状をより発揮させるために施されたものというのが相当であり、商品や商品の容器の形状を普通に用いられる方法の範ちゅうで表示する標章のみからなる商標というべきであるから、その形状に特徴をもたせたことをもって自他商品の識別力を有するものとは認められないことは、前記のとおりである。 なお、請求人は、商標法第4条第1項第18号の規定に関しるる述べているが、本号は、同法第3条第1項第3号に該当する識別性のない立体商標であって、同法第3条第2項の規定の適用により登録されるような商標が、その商品又は商品の包装の機能を確保するために必ず採らざるを得ない不可避的な立体的形状のみからなる商標である場合については、商標登録を受けることができないこととしたものである。また、欧米諸国で登録される立体商標の登録制度に関しても述べているが、我が国の立体商標の登録制度が欧米諸国と同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認めることができない。 したがって、請求人のこれらの点に関する主張は採用することができない。 (4)さらに、請求人は、「本願のこのような菓子容器は斬新なもので、世界の何れの地においてもかつて用いられたことがないと信じられており、それゆえ、本願商標は、以下の如くヨーロッパ諸国で登録されている。キャンデー及びこのような洋式デザインの容器については、欧州諸国は我が国より遥かに長い歴史を有しており、そのヨーロッパにおいても、先行例はなく、この容器商標は顕著性、自他識別力のある立体商標と認められ、登録されている。又、我が国においても、このような菓子容器は今まで使用されたことがない。」と述べているが、我が国商標法において、本願商標が自他商品の識別力を有するものと認められないことは上記(3)のとおりであるから、請求人のこの点に関する主張は採用することができない。 (5)また、請求人は、「本願商標を使用した製品は昨年より我が国にも大量に輸入され、販売されており、大変好評であり、この容器の形状は需要者の間で広く認知されるに到っている。」と商標法第3条第2項に該当する旨主張しているが、これを証明する証拠の提出はなく、本願商標が、取引者、需要者に広く知られるに至ったものとは認められず、この点に関する請求人の主張は、採用をすることができない。 (6)したがって、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとした原査定の認定、判断は、妥当なものであって、取り消すべき理由はない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
本願商標 |
審理終結日 | 2003-07-24 |
結審通知日 | 2003-07-25 |
審決日 | 2003-08-05 |
出願番号 | 商願平11-113343 |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(Z30)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小松 里美 |
特許庁審判長 |
田辺 秀三 |
特許庁審判官 |
柳原 雪身 井出 英一郎 |
代理人 | 宮城 和浩 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 高原 千鶴子 |