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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 021
管理番号 1090130 
審判番号 無効2002-35039 
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2004-02-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-02-01 
確定日 2003-08-11 
事件の表示 上記当事者間の登録第4434652号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4434652号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4434652号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、平成7年3月2日に登録出願され、第21類「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん,食器類(貴金属製のものを除く。),アイスペール,泡立て器,こし器,こしょう入れ(貴金属製のものを除く。),砂糖入れ及び塩振り出し容器(貴金属製のものを除く。),卵立て(貴金属製のものを除く。),ナプキンホルダー及びナプキンリング(貴金属製のものを除く。),盆(貴金属製のものを除く。),ようじ入れ(貴金属製のものを除く。),ざる,シェーカー,しゃもじ,手動式のコーヒー豆ひき器及びこしょうひき,じょうご,すりこぎ,すりばち,ぜん,栓抜き,大根卸し,タルト取分け用へら,なべ敷き,はし,はし箱,ひしゃく,ふるい,まな板,麺棒,焼き網,ようじ,レモン絞り器,ワッフル焼き型(電気式のものを除く。),清掃用具及び洗濯用具,携帯用アイスボックス,米びつ,食品保存用ガラス瓶,水筒,魔法瓶,ガラス製包装用容器」を指定商品として、平成12年11月24日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第167号証(枝番を含む。)を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第15号、同第19号の各規定に該当する商標であり、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とされるべきものである。
(1) 利害関係について
本件商標は、阪神タイガースの著名な略称「Tigers」と同一の欧文字の綴りから成る社会通念上同一の商標であるので、本件商標の登録は請求人(のプロ野球球団)の人格権を侵害するものであり、更に本件商標がその指定商品に使用された場合は、「Tigers」、「タイガース」の語の出所表示機能が弱められ、請求人が長年月にわたって築き上げてきた「Tigers」、「タイガース」の語の財産的価値等が稀釈化する等のおそれが充分にある。したがって、請求人は、本件商標の登録に対する本無効審判請求について利害関係を有する。
(2) 請求人のプロ野球球団について
我が国のプロ野球は、人々に馴染みが深く、且つ最も人気のあるスポーツであり、「国民的スポーツ」といい得るものである(甲第3号証ないし甲第7号証)。そして、請求人が所有しているプロ野球球団「阪神タイガース」(以下「阪神タイガース」という。)は、プロ野球創設当時からその連盟の構成球団の一つである。
請求人のプロ野球球団の名称は、昭和11年2月11日の結成後、同15年9月24日までは「大阪タイガース」(欧文字表記の場合は、「OSAKA Tigers」)、同15年9月25日から同21年3月24日までは「阪神」、同21年3月25日から同36年3月31日までは「大阪タイガース」(欧文字表記の場合は、「OSAKA Tigers」)、同36年4月1日以降は「阪神タイガース」(欧文字表記の場合は、「HANSHIN Tigers」)である(甲第8号証ないし甲第10号証)。そして、請求人のプロ野球球団は、結成直後から、「タイガース」と略称されていた(甲第11号証)。阪神タイガースは、昭和11年2月11日の結成後現在に至るまでの約65年(本件商標の出願当時においては約59年)にわたり、1リーグ時代及び2リーグ時代を通じて、継続して活躍してきた。1リーグ時代において、4度のリーグ優勝及び2度の選手権試合での優勝、2リーグ時代は、3度のリーグ優勝及び1度の日本シリーズでの優勝を果たしている(甲第12号証)。
(3) 「Tigers」「タイガース」の使用について
請求人は、阪神タイガースの結成当時から現在まで、戦中・戦後の一時期を除き、継続して「Tigers」の文字を使用している。特に、請求人が主催する試合、所謂ホームゲーム用のユニフォームに、前述の一時期を除き、別掲(2)のとおりの文字を胸部分に大きく表示してきている(甲第13号証ないし甲第15号証、甲第27号証及び甲第29号証:以下この標章の態様を表す場合は、「Tigers」と記す)。
なお、昭和50年6月には、当時、阪神タイガースの所属選手で、ミスタータイガースと呼ばれた「田淵幸一」が、上島珈琲株式会社(現在は、ユーシーシー上島珈琲株式会社)のテレビでの缶コーヒーの宣伝広告に、胸部分に大きく「Tigers」と表示されたユニフォームを着て出演している(甲第16号証)。
(ア) 阪神タイガースの主催試合入場者数について
請求人が主催した公式戦が行われた球場(阪神甲子園球場及び地方球場)への入場者数をみると、その数(概数)は、その集計がなされ始めた昭和27年から、例えば平成6年までの間では、計延べ約57,599,315人である(甲第17号証)。また、特に、伝統的な試合として人気のある請求人のプロ野球球団とジャイアンツとの試合のうち請求人の主催試合での入場者数(概数)は、本件商標の出願前20年間(昭和50年ないし平成6年)に限ってみても、計延べ約12,951,000人に上る(甲第18号証ないし甲第21号証)。
(イ) 雑誌「月刊Tigers」について
請求人は、昭和53年3月1日より、プロ野球球団の発行誌としては初めての、雑誌「月刊Tigers」を発行し、その紙上において請求人のプロ野球球団及びその所属選手、その他プロ野球に関する事項を掲載している。
この「月刊Tigers」の同53年の発刊後平成6年12月までの総発行(生産)部数は、計約8,826,500冊である(甲第22号証ないし甲第29号証)。
(ウ) 「Tigers」の語を使用した広告について
請求人の親会社の阪神電気鉄道株式会社(以下「阪神電鉄」という。)は、同社の施設である阪神甲子園球場に関する広告として、例えば、平成6年度において、阪神タイガースに所属する選手の写真とセントラル・リーグの公式戦の各月の日程等を表示し、そこに阪神タイガースを表す語として「Tigers」の語を使用したポスターを、阪神電鉄及び同社と相互乗り入れしている山陽電気鉄道株式会社の駅構内や電車内等に掲示した(甲第30号証ないし甲第35号証)。
(エ) テレビ番組「週刊トラトラタイガース」について
大阪市中央区に所在の讀賣テレビ放送株式会社は、昭和58年10月8日より現在まで、「週刊トラトラタイガース」と題したテレビ番組を、毎週1回放送してきている(甲第38号証ないし甲第42号証)。
(オ) 阪神タイガースを「タイガース」と呼んでいる書籍、新聞記事等について
請求人(及び請求人の関係者)以外の者が、阪神タイガースを指し示す語として「タイガース」の語を使用して、阪神タイガースに関する種々の書籍を出版している(甲第36号証及び甲第43号証ないし甲第46号証)。また、各種の新聞の記事において、阪神タイガースを指し示す語として「タイガース」の語が使われている(甲第47号証ないし甲第86号証)。
更に、辞書類においては、「タイガース」の項目を設け、「Tigers」及び「タイガース」の語は、阪神タイガースの略称(愛称)であると紹介している(甲第87号証及び甲第88号証)。
(カ) 登録商標について
現在、「TIGERS」、「Tigers」、あるいは「タイガース」の文字のみから成る商標は、全ての分類を通じて、請求人及び請求人の親会社である阪神電鉄以外の名義では、最近登録された本件商標(平成12年11月24日登録)及び本件無効審判と同時に請求人が無効審判を請求した被請求人外一名の名義の登録第4091187号商標(平成9年12月12日登録)の2件以外には、登録されていない(甲第89号証の1ないし7)。
(キ) 「TIGERS」等の不存在について
本件商標の出願の日である平成7年3月2日頃において、日本国内で、阪神タイガースを指し示す語として多くの人達によって認識されていた「Tigers」、「タイガース」の語以外に、前後に何も付加せずにその語単独でもって、阪神タイガース以外のある特定の者・団体等を指し示す語として或いは商標として著名になっていた「TIGERS」、「Tigers」あるいは「タイガース」の標章はみあたらない。
(ク) アンケート調査について
「Tigers」が阪神タイガースの略称として著名になっていることを裏付ける資料として、請求人が大阪市西区に所在の「株式会社市場調査社 大阪」に依頼して行ったアンケート調査の結果(「ロゴマークの調査報告書」の写し)からしても、本件商標の出願日前において、「Tigers」といえば「阪神タイガース」のことであると認識していた者の割合は極めて高く、したがって、「Tigers」は請求人のプロ野球球団の略称として著名になっていたことは明らかである(甲第90号証)。
(ケ) 球団グッズについて
セントラルリーグ及びパシフィックリーグ加盟の12球団の関連会社が、自球団の「球団名」や「マスコットの図」等の標章が表示された商品(所謂「球団グッズ」、請求人の場合では「タイガースグッズ」)を販売している(甲第91号証ないし甲第93号証)。請求人は、本件商標の出願前から現在に至るまで、種々の「タイガースグッズ」を、請求人自らあるいは第三者を通じて「Tigers」の標章あるいは「Tigers」の語を含む標章、又は「タイガース」の標章あるいは「タイガース」の語を含む標章が付された多種多様な商品、例えば、ばんそうこう、石鹸、爪切り、キーホルダー、ウィンドブレーカー、ジャンバー、ショートパンツ、ロングパンツ、スウェットシャツ、ポンチョ、パジャマ、ポロシャツ、セーター、ベスト、くつ下、エプロン、ランニングシャツ、ネクタイ、バンダナ、ヘアバンド、帽子、タオル、バスタオル、ハンカチ、クッション、徳利、さかずき、タンブラー、テーブルセンター、ビールジョッキ、マグカップ、湯のみ、茶わん、栓抜き、箸、箸箱、ペナント、うちわ、扇子、貯金箱、のれん、弁当箱、調味料入れ、スプーン、フォーク、マット、シガレットケース、ベルト、ワッペン、ネクタイピン、カフスボタン、ポーチ、財布、小銭入れ、札入れ、定期入れ、ボストンバック、リュックサック、傘、靴、掛時計、目覚し時計、腕時計、ぬいぐるみ、人形、メガホン、ゴルフのクラブ、ゴルフポール、ヘルメット、ティッシュペーパー、鉛筆、筆箱、けしゴム、定規、書類挟み、シール、ノート、メモ帳、下敷、ボールペン、シャープペンシル、デスクカレンダー、ポストカード、ライター、灰皿、芳香剤、オルゴール、せんべい、清酒、缶コーヒー、缶ビール、ウイスキー、即席ラーメン、うちわ機能付きおもちゃ、ラジオ付オペラグラス、ラジオ、電気スタンド、ポケットベル、テレホンカードを、本件商標の出願前において販売してきた(甲第94号証ないし甲第116号証)。そして、請求人自らによる「タイガースグッズ」の販売の、例えば、昭和58年から平成6年までの年間売上高(概算)は、昭和58年度 478,855,000円、同59年度 576,742,000円、同60年度 2,106,797,000円、同61年度 607,314,000円、同62年度 364,483,000円、同63年度 402,019,000円、平成元年度 329,771,000円、平成2年度 315,587,000円、平成3年度 324,112,000円、平成4年度 1,373,056,000円、平成5年度 1,012,788,000円、平成6年度 755,722,000円である。
以上のとおり、請求人は、阪神タイガースの各種標章を付した種々多岐にわたる商品を、遅くとも昭和53年3月頃より、請求人自ら或いは第三者を通して継続して販売してきている。そして、これらの商品は、請求人(及びその関係者)以外の者においても、「タイガースグッズ」と総称され、広く知られている。例えば、新聞記事においては、「タイガースグッズ」の語が使用されている(甲第117号証ないし甲第128号証)。
また、請求人は、平成2年3月16日に株式会社ジェーシービーと「提携カード契約」を締結し、平成2年度からは「JCBタイガースカード」を発行してきている(甲第129号証)。
(4) 商標法第4条第1項第8号該当性について
以上の(2)(3)の各事実からは、一般の人々において、「Tigers」及び「タイガース」の語は阪神タイガースと強く結びついていること、その結果、「Tigers」及び「タイガース」の語は阪神タイガースの略称として通用していること、そして同時に、本件商標の出願日である平成7年3月2日以前より、その略称「Tigers」及び「タイガース」は、阪神タイガースのことであると多くの人によって直ちに認識される状況にあったといい得る程に、著名になっていたことが判る。
したがって、阪神タイガースの著名な略称「Tigers」と、全く同一の欧文字の綴りから成る、社会通念上同一の商標である本件商標は、それを出願し登録することについて請求人は、被請求人に対して承諾を与えていないのであるから、商標法第4条第1項第8号に該当する商標である。
(5) 商標法第4条第1項第15号該当性について
上記の(3)(ケ)(甲第91号証ないし甲第129号証)の各事実からは、請求人は、チームの球団名、その略称、マスコットの図等を付した商品「タイガースグッズ」を販売し、クレジットカードを発行してきていること、請求人は第三者に対し、阪神タイガースの標章を付して「タイガースグッズ」を販売することを許諾していること、請求人(及びその関係者)以外の者においても、これら商品は「タイガースグッズ」と総称され、且つ「タイガースグッズ」は請求人及び請求人から許諾された者の販売に係る商品のことであると広く認識されていること、等が判る。
そして、上記(4)のとおり、阪神タイガースの略称として「Tigers」及び「タイガース」の語が著名になっている状況に、上記の各事実が加わった状態で、本件商標がその指定商品について使用された場合、一般需要者は、当該商品を恰も請求人の業務に係るもの、あるいは請求人と経済的・組織的に何らかの関係のある者の業務に係るもの、あるいは請求人の「Tigers」及び「タイガース」の標章及びそれらの語を含む標章による商品化事業を営むグループに属する者の業務に係るものであるかのごとく誤認混同するおそれが大きく、当該商品の出所について混同するおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定にも該当する商標である。
(6) 「HANSHIN Tigers」の使用について
念のために付け加えると、請求人は、「Tigers」の他に、「HANSHIN Tigers」、「阪神タイガース」の商標も、当然のことであるが、自己の業務及び上記「タイガースグッズ」において、長年使用してきている。仮に該商品の商標としては「Tigers」、「タイガース」が著名になっていないと仮定した場合でも、他方で、「Tigers」及び「タイガース」の語は阪神タイガースの略称として著名であるので、商品に付された「HANSHIN Tigers」あるいは「阪神タイガース」の表示をみた需要者の多くの者が、それから直ちに請求人のプロ野球球団を直感し、そしてそれを「Tigers」、「タイガース」と省略あるいは略称することがある。
このような状況において、これまでに「HANSHIN Tigers」あるいは「阪神タイガース」の表示が付されていた商品と同種又は類似の商品、あるいは関連する商品において、商標「TIGERS」が付されれば、その商標をみた需要者は、その商品は請求人と何らかの関係があるのではないかと混同するおそれがあるのは明らかである。
(7) 商標法第4条第1項第7号、同第19号該当性について
被請求人は、覚書(請求人と被請求人との間で、昭和61年12月25日に締結され、以後4回更新されている。以下「覚書」という。:甲第138号証)の趣旨に反し、阪神タイガースの著名な略称である「Tigers」及び「タイガース」の標章を不当にその管理下に収めようとしているものであり、被請求人の本件商標の取得は、公序良俗に反するものである。
被請求人と請求人は、被請求人が有する「TIGER」の標章と、阪神タイガースの著名な略称である「Tigers」及び「タイガース」の標章との抵触、紛争問題を未然に防止し、両者の相互の利益を調整する目的のために覚書を締結した。
しかるに、被請求人は、覚書の趣旨に反し、請求人のプロ野球球団の著名な略称である「Tigers」と同じ欧文字の綴りから成る本件商標(「TIGERS」)や、登録第4091187号商標(「TIGERS」)或いは商願2000-134845、商願2000-134846、商願2000-134847、商願2000-134848を出願・登録した(甲第139号証ないし甲第142号証)。なお、被請求人に対し、平成13年3月末日付をもって覚書を終了させる旨通知し、覚書は現在失効している(甲第144号証)。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標と類似の商標を不正の目的をもって使用するものにも該当するから、商標法第4条第1項第7号或いは同第19号にも該当することは明らかである。
2 答弁に対する弁駁
(1) 阪神タイガースを継続して「タイガース」としていることについて
本件商標の出願の日である平成7年3月2日頃において、日本国内で、請求人のプロ野球球団を指し示す語として多くの人達に認識されていた「Tigers」、「タイガース」以外に、前後に他の文字を付加せずにその語単独でもって、請求人のプロ野球球団以外のある特定の者・団体等を指し示す語として著名になっていた「TIGERS」、「Tigers」或いは「タイガース」の標章はみあたらなかった。だからこそ、例えば、「日本語になった外国語辞典」(昭和60年12月10日発行:甲第87号証)、「コンサイス外来語辞典」(平成4年12月5日発行:甲第88号証)に続き、その後に出版された、「カタカナ・外来語/略語 辞典[全訂版]」(株式会社自由国民社 平成11年10月1日発行:甲第149号証)、「コンサイスカタカナ語辞典/第2版」(株式会社三省堂 平成12年9月10日発行:甲第150号証)においても、「タイガース」や「Tigers」の語は、請求人のプロ野球球団を指し示す語として、継続して理解されてきたのである。
(2) 「タイガースグッズ」の販売実績について
審判請求書の(15)(第47頁から第48頁)に記載の「『タイガースグッズ』の販売の請求人自身の実績」の「請求人自身」の部分及び「請求人自らによる『タイガースグッズ』の販売、」のうち「請求人自ら」の部分を、今般、売上実績の裏付資料を確認したため、「請求人及び株式会社阪神百貨店等」に訂正する(目次の当該記載も訂正する)。
ただし、「Tigers」及び「タイガース」の標章を管理すべき請求人から請求人と同一の企業集団に属する会社である株式会社阪神百貨店等にその使用をライセンスしてこれを行っているものであり、主張の内容に変更はない。
(3) 「タイガースグッズ」の製造・販売許諾について
「タイガースグッズ製造・販売許諾業者リスト」については、それを裏付ける資料の例として、請求人のプロ野球球団の各種標章を使用して商品を販売することを希望する業者が、その許諾を求める際に、請求人に対し提出する「商品化権使用許諾申請書」の写しを提出する(甲第151号証の1ないし32)。
被請求人は、「・・・請求人が主張する許諾実績は、何ら本件商標の登録性についての判断資料となり得ない。」旨主張しているが、当該主張が事実面においても、評価面においても、明らかに誤りである。
(4) 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人は、阪神タイガースを結成するために設立され存続し、仮に阪神タイガースが消滅すれば請求人も消滅するという関係にある。即ち、請求人は、阪神タイガースと離れて存在するものではなく、請求人とそのプロ野球球団とは一体の関係にあるのである。そして、実際に活動するのは阪神タイガースであり、それを支え管理するのが請求人である。なお、阪神タイガースは、構成員である選手、監督、コーチに入退団等で変更があっても、それ自体は存続する。
プロ野球の球団(チーム)の名称は、他の一般企業が行う一つの営業活動に付したサービスマークとは異なるものであり、プロ野球の球団(チーム)には法人格が認められていないとはいえ、社会的実体として実在する団体としての名称及び略称を当然に有することになる。
それ故に、プロ野球の球団(チーム)の名称や略称は、それが著名になっている場合には、商標法第4条第1項第8号での保護の対象である、権利能力なき社団として、「他人の名称(又はその略称)」の保護が求められるものと理解されるところである。
したがって、プロ野球の球団(チーム)の名称は、被請求人が主張するような単なる「営業主体の名称とは区別される営業たるサービスを示す表示」ではない。そして、被請求人は、本件商標を出願・登録するにつき、請求人からそのプロ野球球団の著名な略称と類似した「TIGERS」を使用することの承諾を受けておらず、且つ本件商標の出願当時の請求人のプロ野球の球団(チーム)の構成員(選手、監督、コーチ)の何れからもその承諾を受けていない。
(5) 商標法第4条第1項第15号該当性について
商標「TIGER」 が著名であるか否かということと、本件商標「TIGERS」 が商標法4条1項15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当するか否かということと直接には関係のないことである。
仮に、「本件商標『TIGERS』が使用された場合、本件商標は、被請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者、取引者間で認識される」 ことがあると仮定した場合でも、他方で、請求人の「Tigers」の極めて高い著名性並びに請求人等による種々の「タイガースグッズ」の販売及びその「タイガースグッズ」の語自体が広く知られていること、また、請求人等によるシャツ、ウインドブレーカー、タオル、バッグ等種々の「タイガースグッズ」の販売において、「Tigers」の語も使用されていることもあり、更に、日常生活において、一般需要者は商標の称呼によって当該商品を記憶することも多く、商標の称呼で商品を区別して取引が行われることも多いこと等とも相俟って、本件商標 「TIGERS」がその指定商品又はその類似商品について使用された場合には、当該商品の出所の誤認混同が生じるおそれがあることは明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証(枝番を含む。)を提出している。
1 覚書について
本件無効審判事件において、最初に留意しておかねばならない点として、本件商標に関しては、請求人と被請求人との間には、覚書(甲第138号証)が、平成12年12月26日付けの内容証明郵便(甲第144号証)により請求人が被請求人に通知した更新拒絶の意思表示によって平成13年(2001年)3月末日に終了するまでの間、実に15年間もの長い期間、継続的且つ有効に存続していた事実がある。
この覚書は、請求人が自ら「球団標章・ロゴ」を商品(包装紙、パッケージ、付帯物等を含む。)に使用し、又は請求人が第三者にこれを使用許諾するについて、被請求人の有する商標権との間における抵触、紛争問題を未然に防止し、かつ両者の相互の利益を調整することを目的として締結されたものである。
2 利害関係について
覚書第1条第2項には「互いの登録商標の有効性を争わないものとする。」との条項がある。請求人はこの条項に違反して、この有効期間中に本件商標の登録に対し異議申立をしたのである。これに対し、本件無効審判請求は、覚書が効力を終了した日(平成13年3月31日)より後である平成14年1月30日に請求されているから、形式的には、覚書第1条第2項の適用は受けないかの如く見受けられる。
しかし、覚書は、請求人と被請求人との商標使用に関する紛争を未然に予防しようという、それこそ正しい目的のために両者が合意して締結するに至ったものであり、その目的、精神及び紛争解決基準の内容は何ら問題のないものだったのである。覚書を一方的に更新拒絶をしたのは請求人であるが、請求人が更新拒絶にあたって述べた理由は、「年月の経過により双方の解釈においてかなりの乖離が生じてまいりました。」ということだけであって(甲第144号証)、覚書の目的、精神及び将来の紛争は特許庁の判断に従うという第1条の解決基準そのものには些かの問題もありはしない。それだからこそ、請求人は甲第144号証の末尾で、「なお、実態に即した内容に基づく新たなる覚書の締結については、今後改めて貴社とご協議させて頂きたく存じております。」と述べているのである。
そうだとすれば、覚書の更新拒絶をした請求人に対しては、更新拒絶後といえども、被請求人との間で覚書を締結して以来15年間もの間、覚書の目的・精神を是として契約関係を継続してきた両者の関係、及び同様の目的・精神に基づき新たなる覚書締結のための協議を依然として望んでいること等を斟酌すれば、本件商標についての有効性を争う本件無効審判の請求は、上記の新たな覚書締結の可能性を根底から失わせる自己矛盾を孕んだ行為であるから、信義則上、本件無効審判の請求をする法律上の正当な利益はなく、むしろ本件の紛争も協議により解決すべきものとして取り扱われるべきである、と確信する次第である。
3 請求の理由に対する認否について
(1) 登録商標について
請求の理由「(3)(カ)登録商標」については、甲第89号証の3、同5及び同6が、いずれも「TIGERS」、「Tigers」、あるいは「タイガース」の文字のみから成る登録商標であるとの請求人主張を否認する。これらは一部に文字を含む図形商標である。
(2) 「TIGERS」等の不存在について
同、「(3)(キ)」の阪神タイガース以外の「TIGERS」等の不存在についての請求人主張は否認する。我が国において、音楽関係で「タイガース」といえば同名の著名なグループサウンズが一世を風靡していた事実がある。また、前後に他の文字を付加した標章としては、アメリカ大リーグの野球チーム名として著名な「デトロイト タイガース」があり、その他にも、「THREE TIGERS」、「ホワイトタイガース」、「FLYING TIGERS」、「BALMAIN TIGERS」、「タイガースパワー」、「ザ・タイガース」等が商標として登録されている(乙第1号証)。
(3) アンケート調査について
同、「(3)(ク)アンケート調査」については、請求人が主張する如きアンケート調査が行われ、同主張の如き結果がアンケート実施企業から報告された事実のみを認める。このアンケート調査は本件商標が出願された平成7年(1995年)3月2日より約6年も経過した2001年8月に実施されており、本件商標の出願時の状況を示すものでないのみならず、「このマークは何のマークだと思いますか」との問いと共に示したマークは、請求人の会社で正規に形状、大きさ等を規定した通りの、阪神タイガース球団が正に使用している「特徴あるロゴ」そのものであって、本件商標とは外観が異なるから、仮にこのアンケート調査の結果、「阪神タイガース」と答えた者の数が多数であったとの報告内容が正しいと仮定しても、本件商標の登録性についての判断資料となり得ないことは明らかである。
請求人は、本件商標の出願前の阪神タイガースが出た試合の入場者数を元に、同ロゴの本件商標出願前の認知度も同程度であると主張しているが、試合の入場者数がアンケート時と同程度であるからというだけの理由でそのような推定が成り立つ(誤りでない)ということの証明になる筈もないから、甲第90号証のアンケート調査結果の報告書が本件商標の登録性についての判断資料となり得ないという上記の判断は、何ら影響を受けない。
(4) 球団グッズについて
同、「(3)(ケ)球団グッズ」のいわゆる「タイガースグッズ」の販売は認める。但し、請求人が証拠として「月刊Tigers」の写しを提出している昭和53年ないし平成6年のうち、その後半期に相当する昭和62年ないし平成6年の期間に販売された商品(タイガースグッズ)は、後に述べる請求人と被請求人との間の覚書(甲第138号証)に基づき、すべて、被請求人が認めた範囲で、且つその大部分は請求人が被請求人に商標使用料を支払った上で販売が行われていたというのが実情である。したがって、ここで請求人が主張している販売商品の多種類性は、何ら本件商標の登録性についての判断資料となり得るものではない。
また、ここに示されている昭和58年ないし平成6年度の年間売上高(概算)について、これを裏付ける資料が何も提出されていないし、被請求人は請求人から売上高ではなく売上数量の報告しか受けていないので、認否を留保する。しかしながら、仮にこの販売実績が請求人の主張のとおりであると仮定しても、前述のようにそのほぼ全期間に相当する昭和62年ないし平成6年の期間における「タイガースグッズ」の販売は、請求人と被請求人との間の覚書に基づき、すべて、被請求人が認めた範囲で、且つその大部分は請求人が被請求人に商標使用料を支払った上で販売が行われていたというのが実情であるから、ここで請求人が主張している販売実績は、何ら本件商標の登録性についての判断資料となり得るものではない。
そして、「タイガースグッズ」の製造・販売許諾は、請求人の作成したリストのみであって、その記載内容が真実であることを示す資料は何ら提出されていない。
しかして、「タイガースグッズ」の語の著名性は、ここで提出された証拠(新聞記事)は、すべて昭和60年ないし平成6年の新聞記事にすぎない。したがって、そのほぼ全期間にわたりこれら「タイガースグッズ」の販売は覚書に基づく範囲で、且つその大部分は請求人が被請求人に商標使用料を支払った上で販売が行われていたというのが実情であるから、ここで請求人が主張している「タイガースグッズ」の語の著名性なるものも、何ら本件商標の登録性についての判断資料となり得るものではない。
同様に、請求人が主張立証している平成2年ないし平成9年の間の「JCBタイガースカード」の発行もまた、何ら本件商標の登録性についての判断資料となり得るものでないことは明らかである。
4 「TIGER」は、被請求人の著名商標であることについて
乙第2号証の1ないし8は、1992年ないし2001年の各年度(但し、1996年度及び1999年度を除く。)に発行されたAIPPI(Japan)の機関誌「A.I.P.P.I.」であるが、本件指定商品を含む商品群に係る被請求人の商標「TIGER」は、これら各乙号証に日本の著名商標(FAMOUS TRADEMARK IN JAPAN)として掲載されている。このことからも明らかなように本件商標の指定商品を含む商品群に係る商標「TIGER」(別掲(3))は我が国における著名商標であり、これに類似する商標はたとえ請求人が商標登録出願をしたとしても登録になることはあり得ない。したがって、請求人が新たに商標の登録出願をなし、それが特許庁において被請求人の商標「TIGER」と非類似であるとして登録になった場合には、被請求人としては特許庁の判断を尊重し、請求人による当該商標の使用に一切異議を唱えないことにしたわけである。逆に、請求人の方からも、被請求人の出願した商標が登録になった場合は、同じく特許庁の判断を尊重し、被請求人による当該商標の使用に一切異議を唱えないことにする、というのが覚書第1条第2項の趣旨である。
この覚書締結の後、平成13年3月末日に覚書が請求人の更新拒絶により失効するまで、請求人は、覚書第7条に基づく商標使用料の報告を半年毎に被請求人に行い、被請求人は請求人から報告に係る商標使用料の支払いを受けてきた(乙第3号証の1ないし13)。
しかるに、請求人は、覚書第1条第2項に違反して、覚書の有効期間中である平成10年4月20日、本件商標と同一文字からなる登録第4091187号商標の登録に対し異議申立を強行した。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
これに規定する「他人の名称」とは、自然人、法人又は権利能力無き社団、民法上の組合等の法的活動主体の名称を指すものである。本件の場合は、法人たる請求人の名称「阪神タイガース株式会社」がこれであることは明らかである。
しかるに、請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当すると主張するに際して、本件商標が請求人の名称「阪神タイガース株式会社」の略称であるとの主張は一切していない。請求人が主張しているのは、請求人の所有するプロ野球チームの名称「阪神タイガース」(このようなチーム名称は、請求人の行う営業たるプロ野球興業に係る「サービスマーク」であって、その「営業主体」たる請求人自身の名称とは厳格に区別されるべきである。)の略称と本件商標とが同一であるという事実だけである。
このような「営業主体」の名称とは区別されるべき、「営業」たるサービスを示す表示(サービスマーク)は、商標法第4条第1項第8号本文に規定する「他人の名称」(又はその略称)に該当する事実主張でないことは明らかである。したがって、そもそも同号但し書きの「その他人の承諾」は最初から、問題になり得ない。
6 商標法第4条第1項第15号該当性について
この規定に関する請求人の主張はすべて失当である。
(1) 仮に、「『HANSHIN』の文字を冠しない『タイガース』及び『Tigers』の文字だけでなる標章が、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係る役務を表すものとして、取引者、需要者間に著名であった」と仮定してみても、それはいわゆる「タイガースグッズ」としての商品商標ではないのであるから、請求人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者間に著名であったことにはならない。
(2) 「タイガースグッズ」と総称される商品が販売されていて、仮に「タイガースグッズ」なる語が請求人及び請求人から許諾された者の販売に係る商品のことであると広く認識されていたと仮定しても、覚書を被請求人との間で締結し、平成13年3月末日まで15年もの長期間にわたり継続的且つ有効に存続したのであるから、覚書第4条の規定により請求人が覚書の別紙2の2枚目及び3枚目にある(イ)の標章(以下「(イ)標章」という。)を自ら使用し、又は第三者に使用許諾する場合は、請求人は、「当該標章に付記・変更を加えないこと」と定められていた(覚書第6条本文及び(1)号参照)。
したがって、商品商標として使用されていたのは(イ)標章を改変無しにそのまま標識として用いた商標のみが15年間継続的に使用されていたのであって、「Tigers」単独のロゴの使用が許されていなかったことは勿論のこと、たとえ「阪神」又は「HANSHIN」の文字を伴うものであっても上記ロゴとは異なる、大文字のみから成る「TIGERS」の文字の使用は前掲第6条の規定により許されていなかったわけである。
他方で、前述の如く本件指定商品を含む商品群に係る商標「TIGER」は、我が国において本件商標の出願前から日本における著名商標の一つに挙げられるほど著名であったことに鑑みるならば、「HANSHIN」の文字を冠しない「タイガース」及び「TIGERS」の文字だけでなる商標が、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係る商品を表すものとして、取引者、需要者間に著名であったといい得ないことは明らかである。
(3) 請求人は、「なお、商標法第4条第1項第15号の規定の混同を生じさせるおそれがあるかどうかという点については、請求人のプロ野球球団の著名な略称と同一の標章が、本件商標の指定商品又はその類似商品について具体的に使用されたかどうかが問題となるものではないことはいうまでもない。」と主張しているので、この点につき反論を加えておく。
確かに、一般論としては概ね請求人の主張するとおりであるかもしれない。しかし、本件との関係では、決してそのような一般論の適用はない。なぜなら、乙第2号証の1ないし8に示す如く、本件商標の指定商品又はその類似商品に係る商標「TIGER」が、被請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者・取引者間で既に周知・著名になっていたからである。本件商標「TIGERS」が被請求人の上記著名商標「TIGER」に類似することは何人にも異論のないところである。したがって、本件商標の指定商品又はその類似商品について本件商標が使用された場合、その字体が請求人に許されていた「阪神」又は「HANSHIN」の文字を伴う「Tigers」のロゴと全く異なることと相俟って、本件商標は、被請求人の業務に係る商品を表すものとして需要者・取引者間で明確に認識され、取扱われるから、決して請求人の業務に係る商品を表すものと混同されるおそれはない、というべきである。
7 「HANSHIN Tigers」商標の使用について
請求人は、「請求人は、『Tigers』の他に、『HANSHIN Tigers』、『阪神タイガース』の商標も、当然のことであるが、自己の業務及び上記『タイガースグッズ』において、長年使用してきている。・・・このことからしても、本件商標は、それがその指定商品に付されれば、需要者において、当該商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。」とも述べている。
しかし、商標法の問題としては、単に、これまでに極めて特徴的なロゴから成る「HANSHIN Tigers」又は「阪神タイガース」の表示が付されていたり、或いは被請求人の著名な商標「TIGER」の表示が付されていた商品と同種又は類似の商品、あるいは関連する商品に本件商標「TIGERS」が付された場合に、請求人の上記ロゴとは異なる態様の本件商標をみた需要者は、その商品は被請求人の業務に係るものと認識するに違いないから、混同のおそれを生じることはないというべきである。
8 商標法第4条第1項第7号及び同第19号該当性について
(1) 本件商標の出願日である平成7年(1995年)3月2日当時においては、既に乙第2号証の4に示す如く、被請求人の有する商標「TIGER」は、本件商標の指定商品を含む商品群に係る著名商標として我が国全体に広く知れわたっていた。また、図形商標として優しいソフトな虎の顔の図形のみの商標も、乙第2号証の4に示す如く、平成7年(1995年)当時には既に著名商標となっていた。そして、被請求人は、本件商標の指定商品を含む商品群についてのテレビコマーシャルとして、将来的には、優しいソフトな虎のキャラクターを複数匹登場させる動画を用いる企画をなすことを念頭において、自己の有するこれら著名商標に類似し、且つ、複数の優しいソフトな虎をイメージできる本件「TIGERS」商標の出願を決定した次第である。したがって、本件商標につき、「自ら使用する意思がなく、また使用する必要もないにもかかわらず、出願・登録した。」との請求人主張は、何らこれを裏付ける証拠のない、全くのいいがかりにすぎない。
(2) 甲第143号証の写真に示す商品は、被請求人の主力商品たる魔法瓶と同種の子供向け「水筒」であって、たとえ請求人の所有する阪神タイガースのユニフォームのミニチュア版を着せた「キティーちゃん人形」を採用しても、このような主力商品につき覚書の第4条に違反する内容の、「阪神」又は「HANSHIN」の文字を伴わない「Tigers」標識の使用である以上、被請求人がこれを見過ごすことのできないことは当然である。請求人は、覚書締結当時の事情を忘れ、契約相手方である被請求人の主力商品に属するものであることを知りながら、敢えてこの例に示す如き「タイガースグッズ」を開発して自己の利益のみを追求する営業姿勢を取るに至ったことが、両者間の紛争の始まりであることを認識すべきである。
以上の次第であるから、本件商標が商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するとの請求人主張は、何ら根拠のないいいがかりにすぎないというべきである。
9 弁駁に対する答弁
(1) 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人は、商標法第4条第1項第8号の「他人」とは、本号が人格権保護を趣旨として規定されているという立法の沿革からみて法律上の人格(すなわち法人格)を有する自然人又は団体のみを指すものであることは、明らかである。
したがって、本件においては請求人である「株式会社阪神タイガース」なる法人は同号にいう「他人」に該当し得ることは明らかであるが、この請求人が運営しているプロ野球球団(チーム)たる「阪神タイガース」そのものは法律上の人格を有していないのであるから、同号にいう「他人」に該当しない。
仮に、「TIGERS」がプロ野球チーム阪神タイガースの球団名の著名な略称であると仮定しても、本件商標権者(被請求人)は、覚書の第1条第2項によりこの略称を含む本件商標の登録出願につき、予め請求人から事前の承諾を得ている。それゆえ、本件商標は商標法第4条第1項第8号の括弧書きの承諾を得ているものとして、これに該当しない。
(2) 商標法4条1項15号該当性について
商標法第4条第1項第15号の該当性に関する最大の問題は、「混同を生ずるおそれ」の有無である。したがって、「Tigers」及び「タイガース」の語が仮にプロ野球チーム名の略称としてはある程度の知名度があるとしても、本件商標の指定商品である個々の商品に文字のみからなる本件商標「TIGERS」が付された場合に、その商品に接した取引者、需要者において、それが請求人又は請求人と何らかの組織的又は経済的関連を有する者の販売に係る商品であるものと誤認するおそれがあるかどうかとは、知名度のレベルに留意しなければならない。本件商標の指定商品について、被請求人の商標「TIGER」が既に著名になっている状況下においては(乙第2号証の1ないし8)なおさらである。
(3) 商標法4条第1項第7号及び同第19号該当性について
本件商標の出願日は、平成7年3月2日である。当時は、請求人と被請求人との間に、覚書が有効に存続しており、この覚書の規定上、被請求人は、「Tigers」標識を単独でその販売する覚書の別紙3の商品に付することはできないことになっていた。
したがって、被請求人が、自己の有する登録商標「TIGER」の類似範囲を確認する目的を兼ねて、新規に本件商標の登録出願を平成7年3月2日になしたことは、何ら請求人に損害を与えることを目的にしたことにも、不法な利益を得ることを目的としたことにも当たるものでない。

第4 当審の判断
1 利害関係について
請求人が本件審判の請求をするについて当事者間に利害関係の争いがあるので、この点について検討する。
被請求人は、覚書ないし新たな覚書締結を前提として、信義則上、本件無効審判の請求をする法律上の正当な利益はなく、むしろ本件の紛争も協議により解決すべきものとして取り扱われるべきである旨述べている。
しかしながら、登録商標の存在によって直接不利益を被る関係にある者は、それだけで利害関係人として当該商標の登録を無効にする審判を請求することにつき、利害関係を有する者に該当すると解するのが相当である。
そして、本件においては、請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標を使用した商品との間に、出所の誤認混同を生じさせるおそれがある、ないし請求人の人格権が害されると主張しているのであるから、本件商標の登録を無効にし、排除せんとすることは、商標権の本質に照らして当然の権利というべきものである。
したがって、請求人は、本件無効審判を請求することについて法律上の利益を有するものというべきである。
2 「Tigers」「タイガース」の著名性について
請求人の提出に係る甲第10号証、甲第11号証及び甲第13号証の「阪神タイガース 昭和のあゆみ」(平成3年3月31日株式会社阪神タイガース発行)、甲第14号証の「HANSHIN Tigers 創立50周年記念50年のあゆみ」(株式会社阪神タイガース発行)、甲第19号証の「週刊ベースボール別冊陽春号阪神タイガース60年史」(平成7年5月1日株式会社ベースボール・マガジン社発行)、甲第22号証ないし甲第29号証の「月刊Tigers」(昭和53年3月1日ないし平成6年4月1日株式会社阪神タイガース発行)、甲第30号証ないし甲第34号証の阪神電鉄のポスター(平成6年)、甲第43号証の「タイガース史」(昭和39年9月20日株式会社ベースボール・マガジン社発行)、甲第44号証の「道上洋三のなんでもかんでもタイガース」(1985年10月25日株式会社桐原書店発行)、甲第45号証の「タイガースへの鎮魂歌」(1988年12月30日朝日新聞社発行)、甲第46号証の「タイガース 優勝したらどうしよう」(1992年9月30日株式会社徳間書店発行)、甲第47号証ないし甲第86号証の朝日新聞(昭和60年1月25日発行)、讀賣新聞(平成1年3月31日発行)及び毎日新聞(平成4年3月19日発行)等の各紙新聞記事、甲第87号証の「日本語になった外国語辞典」(昭和60年12月10日株式会社集英社発行)、甲第88号証の「コンサイス外来語辞典」(1992年12月5日株式会社三省堂発行)、甲第149号証の「カタカナ・外来語/略語 辞典[全訂版]」(株式会社自由国民社 平成11年10月1日発行)、甲第150号証の「コンサイスカタカナ語辞典/第2版」(株式会社三省堂 平成12年9月10日発行)、甲第94号証ないし甲第110号証の「月刊Tigers」(昭和53年3月1日ないし平成6年4月1日株式会社阪神タイガース発行)等によれば、「Tigers」及び「タイガース」の語は、プロ野球球団である「阪神タイガース」の略称或いは商標としても著名なものとなっていたことが認められる。そして、上記証拠及びその他の甲各号証を総合勘案すれば、請求人(株式会社阪神タイガース)とプロ野球球団である「阪神タイガース」とは実体が一緒であるとみるのが自然であるから、別掲(2)の標章はもとより、単に「Tigers」及び「タイガース」の語が本件商標の登録出願時には請求人の業務に係る役務ないしは商品の商標として取引者、需要者の間において広く認識されていたものとみるのが相当である。
3 出所の混同について
本件商標は、別掲(1)のとおりの構成よりなるものであって、その構成は、容易に「TIGERS」の欧文字よりなるものと認められ、これに相応して「タイガース」の称呼を生ずること明らかであり、上記2の認定のとおりのプロ野球球団である「阪神タイガース」の略称或いは商標としても著名なものとなっていた「Tigers」及び「タイガース」の語よりなる商標と欧文字綴り、及びその称呼を共通にするものである。
してみれば、阪神タイガースを指称するものとしての「Tigers」標章あるいは「Tigers」又は「タイガース」の語を含む標章が付された多種多様な商品、例えば、キーホルダー、ウィンドブレーカー、ジャンバー、ショートパンツ、ロングパンツ、スウェットシャツ、帽子、タオル、バスタオル、タンブラー、テーブルセンター、ビールジョッキ、マグカップ、湯のみ、茶わん、栓抜き、箸、箸箱、ペナント、うちわ、扇子、貯金箱、のれん、弁当箱、調味料入れ、スプーン、フォーク、ワッペン、ネクタイピン、カフスボタン、ポーチ、財布、小銭入れ、札入れ、定期入れ、ボストンバック、リュックサック、傘、靴、掛時計、ぬいぐるみ、人形、メガホン、鉛筆、筆箱、けしゴム、定規、書類挟み、シール、ノート、メモ帳、下敷、ボールペン、シャープペンシル、デスクカレンダー、ポストカード、ライター、灰皿等が請求人自らあるいは第三者を通じて発売されているほか、「阪神タイガース」を指称するものとして「Tigers」及び「タイガース」の語を標題の一部に用いた刊行物が数多く刊行されてきたものであるから、これら事情よりして、本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する需要者は、請求人の使用に係る商標を連想、想起するものと認められ、それが前示の「Tigers」又は「タイガース」の語等の標章を付した多種多様な商品と同様に、請求人ないしプロ野球球団である「阪神タイガース」の取扱いに係る商品、又は請求人ないし「阪神タイガース」と何らかの組織的又は経済的関連を有する者の取扱いに係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
4 覚書について
なお、被請求人は、請求人と被請求人との間には、覚書が15年間もの長い期間、継続的且つ有効に存続していた事実があるとして、種々主張しているが、覚書が両者間に、いわゆる「タイガースグッズ」に関して覚書の締結がされていた事実は認め得るとしても、当該締約条項の内容をもって本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かの判断に考慮される余地はなく、且つ、「Tigers」及び「タイガース」の語は、「阪神タイガース」の略称或いは商標として著名なものであることは上記認定のとおりであるから、この点に関する被請求人の主張は採用の限りでない。
5 まとめ
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <別掲>
(1)本件商標




(2)阪神タイガースのロゴ



(3)被請求人の商標


審理終結日 2003-06-17 
結審通知日 2003-06-20 
審決日 2003-07-01 
出願番号 商願平7-20977 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (021)
最終処分 成立 
前審関与審査官 岡田 美加 
特許庁審判長 大橋 良三
特許庁審判官 小川 有三
高野 義三
登録日 2000-11-24 
登録番号 商標登録第4434652号(T4434652) 
商標の称呼 タイガース 
代理人 内田 敏彦 
代理人 内田 修 
代理人 森 博之 
代理人 岡田 春夫 
代理人 北村 修一郎 
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