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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 024
管理番号 1088766 
異議申立番号 異議1998-92212 
総通号数 49 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2004-01-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-12-04 
確定日 2002-05-15 
異議申立件数
事件の表示 登録第4185637号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4185637号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4185637号商標(以下「本件商標」という。)は、「Polo」の文字を筆記体で表した構成よりなり、平成5年2月15日に登録出願、第24類「布製身の回り品,かや,敷き布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」を指定商品として、同10年9月4日に設定登録されたものである。

2 登録異議の申立理由
本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は取り消されるべきである。

3 本件商標に対する取消理由の要点
登録異議申立人の提出した証拠及び職権調査によれば(取消理由通知書に明示)、「POLO」及び「Polo」の商標は、遅くとも1974年頃にはラルフ・ローレンのデザインに係る被服等を表示するものとして広く知られるようになり、我が国においても昭和52年から53年にかけてラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、婦人服、紳士靴、サングラス等の販売が始められた。
また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品については、「dansen 男子専科」((株)スタイル社 1971年7月発行)、「世界の一流品大図鑑’79年版」((株)講談社 昭和54年5月発行)等の書籍に「POLO」、「Polo」、「ポロ」等の商標(以下「引用商標」という。)と共に紹介されていることが認められる。
以上の事実を総合すると、引用商標は、著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして、本件商標の出願前には我が国においても衣料品、靴、かばん、眼鏡等ファッション関連の商品分野の取引者、需要者の間に広く知られていたものと認め得るものである。
そして、本件商標は、前記のとおり、引用商標「Polo」と同一綴りの筆記体文字よりなり、また、その指定商品は、引用商標の使用に係る商品と需要者を共通にする場合が多いものと認められる。
してみれば、本件商標は、これをその指定商品に使用した場合、ラルフ・ローレン若しくはこれと何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その商品の出所について混同を生ずるおそれがあるものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

4 商標権者の意見要旨
商標権者は、要旨、次のように主張し、乙第1号証ないし同第13号証を提出した。
(1)商標権者と申立人との関係
申立人であるザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップは、公冠販売株式会社所有の登録第1447449号商標(乙第2号証)及び登録第1434359号商標(乙第3号証)について、昭和62年1月1日発効のライセンス契約によって通常使用権者となったが、この契約を引継いだ本件商標権者が現在は商標権者となり、申立人が通常使用権者となっている。
よって、このライセンス契約発効後は、申立人と商標権者は、通常使用権者と権利者の関係にあり、申立人と本商標権者は相互に、昭和62年1月1日以後は、「POLO」商標に関して出所源が同じであり、商標法第4条第1項第15号に規定する「他人」には該当しない。
さらに、商標法での使用許諾制度は、権利者と使用権者との間で出所混同が生じることを、はじめから予定していることであり、使用許諾者である本商標権者と使用権者である申立人との間で商品の出所について混同が生じても問題になることはない。
(2)商標権者こそが著名商標「POLO」、「ポロ」の所有権者であることについて
我が国において、昭和50年代初頭頃、本件「ポロ」の商標を使用して営業を行っていたものは、公冠販売株式会社(丸永久衣料株式会社)以外は皆無といってよい状態であった。その後、昭和50年中葉に入り、米国ニューヨーク市に本拠を置く申立人が、昭和54年頃に我が国において、西武百貨店をマスターライセンシー(基本使用権者)に指名し、各商品分野毎に、その商品分野の有力な製造業者の中から、我が国一流の企業を選別して、同社らに再使用権(サブライセンス)を許諾する方式により、衣料品分野全体を網羅することを目標として、特に有名百貨店の店舗内専門店方式による高級商品群として、ポロ商品の展開をはかることとなった。
しかるに、申立人会社(米国ポロ社)が、日本において、上記ライセンス事業を昭和55年頃より本格展開する当初にあたり、本商標権者の乙第2号証、乙第3号証の登録商標の存在が、重要な法的障害として顕在化した。
公冠販売株式会社は、当時すでに自社製品として前記ポロ商品群を開発販売展開(昭和55年度で9.8億円程度の売上)していた為、本商標権者と申立人の両者にとっても、この商標問題の解決は、非常に重要な問題となった。両社は、昭和56年2月頃より、乙第4号証、乙第5号証に示す如く、交渉を重ね、両者間において、昭和61年7月基本合意が成立し、昭和62年1月1日発効の乙第2号証・乙第3号証の登録商標及び「POLO」のコンセプトを具体化した他の商標について、乙第6号証に示す通常使用権設定契約が締結された。公冠販売株式会社が使用許諾者となり、申立人が通常使用権者となり、その対価として申立人は、本商標権者に一定の使用料(ロイヤルティー)を支払う旨の合意が成立し、今日に至っている。
そして、申立人の標章「ポロ」は、米国はもとより、我が国においても、以後、爆発的な成功を収め、巨大な市場を確立していったのである。
この過程で、わが国において「Polo by RALPH LAUREN」等の結合商標のほか「Polo」「POLO」「ポロ」も著名商標となったものと考える。
その著名性の確立時期は、通常使用権設定契約発効日の昭和62年1月1日以後と考えられ、決してそれ以前ではない。
即ちこの間、一貫してマーケティング政策の根幹をなす商標政策の中心は、「POLO」「Polo」にあり、この商標は、本商標権者と申立人の間の乙第2号証登録商標、乙第3号証登録商標のライセンス契約の契約上の義務の履行、許諾された権利の行使の結果である。その事業活動の成果は、乙第2号証登録商標、乙第3号証登録商標に凝集されているのである。
確かに現在、本商標権者の登録商標である「POLO」が著名であるのは、申立人の「ポロ」事業の成功を媒介とするものであるが、その著名性獲得の過程において本商標権者は、自らの商品展開及び前記サブライセンシーとして一定の役割を果たしており、申立人のみならず、西武百貨店を始め、我が国の多くの優良メーカー(サブライセンシー)の参画によるものであって、その過程で獲得された「信用」は、正に乙第2号証登録商標、乙第3号証登録商標に化体されているのである。そして、乙第2号証登録商標、乙第3号証登録商標の属性となった「信用」や「著名性」の恩恵を享受し得るのは、申立人と共に、現行の商標法の基本原則として、乙第2号証登録商標、乙第3号証登録商標の所有者である本商標権者も同様に享受し得ると解すべきである。
(3)申立人提示の甲各号証について
甲第2号証ないし同第5号証において使用されているのは、「Polo 図形 Ralph Lauren」又は「Polo」と「by Ralph Lauren」等の結合商標としての使用であり、要部である「POLO」は、あくまでも本件商標権者所有の商標である。しかも、甲第2号証は、アメリカ用のカタログであって、日本国内での使用を示すものではない。
甲第6号証は、タイトルにあるように、1997年製のものであり、本件商標登録出願時のものではなく、1997年時において、被服のほか、クッション、バッグ等の商品を取扱っている事実が推察できるだけであって、「POLO」「Polo」の著名性の確立時を立証するものではない。
甲第7号証は、引用標章がラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品を表す標章であるとする認識が広く需要者及び取引関係者の間で確立した日を「我が国において、遅くとも本件商標の登録出願がされた昭和59年までには既に…」と認定されているが、申立人が大々的に「Polo」を主体的に被服等に使用できるようになったのは、前記ライセンス契約書の発効日の昭和62年1月1日からであり、その後かなり経ってから「POLO」「ポロ」の著名性が確立したものと推定できるのであり、又、甲第7号証にも「POLO」4文字のみの使用事実はどこにもない。
甲第9号証の1ないし7は、商標「POLO」「Polo」「ポロ」等の商標が、取引者、需要者間で周知著名になった時期の認定がバラバラで一定していない。上述したように、昭和62年1月1日以降、「Polo by RALPH LAUREN」等が「POLO」「Polo」「ポロ」として略称され、著名化したものと考えられる。
甲第10号証及び同第11号証は、それぞれ昭和64年と昭和63年に掲載されたものであり、各記事ともにライセンス契約締結日(昭和62年1月1日)の以後に掲載された新聞記事であり、この新聞から、ライセンス契約締結により商標「POLO」「ポロ」の合法的な使用が可能になったので、日本国における本格的使用を計画したことが窺えるだけであって、本件商標に対して商標法第4条第1項第15号を適用するための証拠とはならない。
(4)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反して登録されたものではなく、本商標権の登録は維持されるべきものである。

5 当審の判断
(1)登録異議申立人 ザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップ(以下、「申立人」という場合はザ ポロ/ローレン カンパニー リミテッド パートナーシップを指称する。)の提出に係る甲第2号証ないし同第7号証、同第10号証及び同第11号証並びにこれらに関連した以下にあげる各種雑誌、新聞等によれば、以下の事実が認められる。
(a)株式会社講談社(昭和53年7月20日)発行「男の一流品大図鑑」、サンケイマーケティング(昭和58年9月28日)発行「舶来ブランド事典『’84 ザ・ブランド』」の記載によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナーであるラルフ・ローレンは、1967年に幅広ネクタイをデザインして注目され、翌1968年にポロ・ファッションズ社(以下「ポロ社」という。)を設立、ネクタイ、シャツ、セーター、靴、かばんなどのデザインをはじめ、紳士物全般に拡大し、1971年には婦人服の分野にも進出した。1970年と1973年に服飾業界で最も名誉とされる「コティ賞」を受賞し、1974年に、映画「華麗なるギャツビー」の主演俳優ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したことからアメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。この頃から、その名前は我が国の服飾業界においても広く知られるようになり、そのデザインに係る一群の商品には、横長四角形中に記載された「Polo」の文字とともに「by Ralph Lauren」、「by RALPH LAUREN」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形」の各標章が使用され、これらは「Polo(ポロ)」の略称で呼ばれるようになった。
(b)株式会社洋品界(昭和55年4月15日)発行「月刊『アパレルファッション店』別冊、1980年版『海外ファッション・ブランド総覧』」、ボイス情報株式会社(昭和59年9月25日)発行「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」、昭和63年10月29日付日経流通新聞の記事及び株式会社チャネラー(昭和54年9月)発行「別冊チャネラーファッション・ブランド年鑑’80年版」等によれば、我が国においては、西武百貨店等が昭和51年にポロ社から使用許諾を受け、同52年からラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士靴、サングラス等、同53年から婦人服の輸入、販売を開始したことが認められる。
(c)また、ラルフ・ローレンのデザインに係る紳士服、紳士用品等については、前出「男の一流品大図鑑」、「舶来ブランド事典『’84 ザ・ブランド』」をはじめ、株式会社スタイル社(1971(昭和46)年7月10日発行)「dansen男子専科」、株式会社講談社(昭和54年5月20日)発行「世界の一流品大図鑑’79年版」、同社(昭和55年6月)発行「世界の一流品大図鑑’80年版」、同社(昭和55年11月20日)発行「男の一流品大図鑑’81年版」、同社(昭和56年6月)発行「世界の一流品大図鑑’81年版」、婦人画報社「MENS’CLUB」1980(昭和55年)年12月号及び株式会社講談社(昭和60年5月)発行「FASHION SHOPPING BIBLE’85 流行ブランド図鑑」などの書籍において、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題のもとに広告又は紹介されていることが認められる。
(d)さらに、引用商標を模倣した偽ブランド商品が市場に出回り刑事摘発を受けた旨が、例えば、平成1年5月19日付朝日新聞夕刊(甲第10号証)において報道され、この記事中では引用商標が「ポロ」、「POLO」、「Polo」等と称されている。
(e)なお、ラルフローレンの「POLO」・「Polo」・「ポロ」の標章について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定し、その周知性を認めた判決として、甲第7号証の判決を始め、東京高等裁判所平成11年(行ケ)第250号、同第251号、同第252号、同第267号、同第290号(以上平成11年12月16日言渡)、同第268号、同第289号(以上平成11年12月21日言渡)、同第288号(平成12年1月25日言渡)、同第298号、同第299号(以上平成12年2月1日言渡)、同第192号(平成12年2月29日言渡)、同第333号、同第334号(以上平成12年3月29日言渡)等の一連の判決がある。
(2)以上の事実を総合し、上記判決をも併せ考慮すると、引用商標は、ラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する標章として、遅くとも本件商標の登録出願時までには、既に我が国において取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
(3)しかして、本件商標は、前記のとおり、引用商標「Polo」と同一綴りの筆記体文字よりなるものであり、その指定商品も引用商標の使用に係る商品と需要者を共通にする場合が多いものと認められる。
このような事情の下において、本件商標をその指定商品に使用した場合には、これに接する取引者・需要者は、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る引用商標の「Polo」を連想、想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的・経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
(4)この点について、商標権者は、乙第2号証及び同第3号証に係る登録商標を所有していたこと及びこれらについて申立人に対するライセンスを許諾しており、商標権者と申立人は権利者と通常使用権者の関係にあったことを挙げて、種々主張しているが、ライセンス契約については、申立人が我が国への進出に伴い、法的障害を取り除くべく先登録を有する前商標権者とライセンス契約に至ったものとみるのが相当であり、積極的に両者において乙第2号証及び同第3号証に係る登録商標を使用したとの証拠もなく、乙第2号証及び同第3号証に係る登録商標が本件商標権者又は前商標権者に係るものとして、その指定商品について、著名性を取得したものと認めることはできない。
そして、本件商標は、乙第2号証及び同第3号証に係る登録商標とは別件の商標であり、申立人の使用に係る引用商標が前記のとおりに判断されるものであるから、商標権者の主張しているような事情があったとしても、そのことは、本件商標について商標法所定の不登録事由等の適用について妨げとなるものとはいえない。
また、商標権者は、申立人の使用している商標の態様について主張しているが、「POLO」「Polo」「ポロ」ばかりでなく、「Polo 図形 Ralph Lauren」、「Polo by Ralph Lauren」、「馬の絵」、「Polo」と「by Ralph Lauren」として「POLO」、「Polo」を中心とする結合商標が広範囲に使用された結果、これらが我が国の取引者、需要者の間においては、「POLO」、「ポロ」として特定ないしは略称され、周知、著名な商標として認識されるに至ったものと認めるのが相当である。
更に、商標権者は、引用商標が我が国において著名性を確立した時期について言及しているが、本件商標の判断においては、本件商標に係る登録出願時(平成5年2月15日)及び査定時(平成10年7月17日)に引用商標が著名であることを要するところ(商標法第4条3項)、引用商標は、いずれの時においても著名性を取得していたものと認められるものである。
そして、商標権者自身も昭和62年以降は、引用商標の著名性を認めているところであり、商標権者の主張はいずれも採用することができない。
なお、異議申立の証拠方法のなかには、本件商標の出願後の発行に係る証拠も存在するが、その記載内容は出願前における実情の把握にも参酌し得ると認められるものである。
(5)結論
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2001-12-18 
出願番号 商願平5-14372 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (024)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 正雄 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1998-09-04 
登録番号 商標登録第4185637号(T4185637) 
権利者 ポロ・ビーシーエス株式会社
商標の称呼 ポロ 
代理人 黒岩 徹夫 
代理人 岡田 稔 
代理人 曾我 道照 
代理人 江原 省吾 

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