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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) Z164142
管理番号 1087027 
異議申立番号 異議2002-90033 
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2003-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-01-21 
確定日 2003-11-11 
異議申立件数
事件の表示 登録第4516103号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4516103号商標の商標登録を取り消す。
理由 1 本件商標
本件登録第4516103号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本刀剣保存会」の文字を標準文字により書してなり、第16類「印刷物」、第41類「刀剣に関する知識の教授、刀剣に関する研修会の企画・運営又は開催、刀剣の展示」、第42類「刀剣の鑑定又はこれに関する情報の提供」を指定商品又は指定役務として、平成12年6月2日に登録出願(商願2000-61026)、同13年10月19日に設定登録されたものである。
本件商標は、江口綜瞋(以下「江口」という。)が登録出願をし、同人を商標権者として設定登録されたが、その後、該商標権は、平成14年10月8日に特定非営利活動法人日本刀剣保存会に移転登録されたものである。

2 登録異議の申立ての理由
申立人の主張要旨は、次のとおりである。
(1)本件商標は、明治43年に日本刀の保存及びその研究を目的として発足した任意団体名である申立人の団体名である(法4条1項8号)。
(2)本件商標は、申立人及びその役務を表示するものとして、全国の愛刀家や刀剣業者等の間で広く認識されているいわゆる周知商標である(法4条1項10号)。
(3)本件商標の登録出願を行った江口は、平成12年6月ころから申立人と袂を分かって全く別個の活動を営んでいるところ、江口が本件商標を活動に際して用いることとなれば、江口の活動と申立人の役務との間に混同を生じるおそれがある(法4条1項15号)。
(4)本件商標は、申立人及びその役務を表示するものとして日本全国及び海外の需要者の間で広く認識されており、江口は、不正の利益を得る目的、及び申立人に損害を加える目的をもって、本件商標を使用しようとするものである(法4条1項19号)。
(5)江口は、かって申立人の活動に参加していた者であるが、代表者ではなく、一会員に過ぎなかった。そして、江口は、平成12年5月から申立人の会員としての活動を休止し、同年6月ころからは申立人と全く別個の活動を営んでいる。したがつて、「日本刀剣保存会」名義で申立人の営む活動は、江口個人の業務ではありえない(法3条1項)。
(6)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び第10号、ないし第15号又は第19号に該当し、又は同法第3条第1項柱書きの要件を欠くものであるから、本件商標登録は、同法第43条の3第2項の規定及び第43条の2第1号により取り消されるべきである。
申立人は、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。)を提出した。

3 取消理由の通知
当審は、商標権者に対し、平成14年7月30日付けで商標登録の取消しの理由を通知した(通知書発送日同年8月9日)。
その要旨は次のとおりである。
申立人は、「日本刀剣保存会」と称し、東京都世田谷区粕谷4丁目9番14号に事務所を置き、日本刀の保存及びその研究を目的とする権利能力なき社団である(甲第2号証)。申立人は、明治43年ころ「羽澤文庫」と称して発足し、遅くとも昭和45年1月ころから「日本刀剣保存会」と称するようになったと認められる(甲第5号証の1ないし11、甲第7号証の1ないし78)。そして、申立人は、毎月開催の日本刀研究会及び刀剣鑑定会並びに「刀剣と歴史」と題する雑誌を隔月に発行するなどの活動を行っており(甲第6号証の1ないし2、甲第7号証の1ないし78)、平成13年4月1日現在日本会員428名と海外会員66名とで総計494名の会員を有している(甲第8号証)。
ところで、商標権者江口は、もともと申立人団体「日本刀剣保存会」の会員であり、平成12年1月頃には常任幹事としてその役員を務めていたが(甲第3号証の1)、同年5月に開催された幹事会において常任幹事の大橋博及び山崎昭が常任幹事を辞任すること及び同会を退会する旨を表明したのとともに、同会を当分の間休会する旨を表明したことが認められるが、その後、同会の活動に参加したり、同会に復帰したとの事実は認められない(甲第13号証)。むしろ、それ以後江口は、同年6月2日に本件商標の登録出願をしたばかりでなく、申立人の使用していた商標「刀剣と歴史」を第16類「新聞、雑誌」を指定商品として登録出願をし(商標を毛筆体で書してなる商願2000-61027、商標を標準文字で書してなる商願2000-61996)(甲第4号証の1及び2)、さらに同年9月には、「刀剣と歴史」と題する雑誌第636号(特別号)をその表紙に「日本刀剣保存会」奥付に「発行 日本刀剣保存会本部 機関誌編集部」「発行所 日本刀剣保存会本部 東京都品川区上大崎1-23-1」などと表示して発行するなど申立人とは別個の活動を開始したことが認められる(甲第11号証の1ないし4)。
江口は、本件商標の登録出願を個人名でしたが、本件商標は東京都所在の「日本刀剣保存会」の他人の名称と同一であり、かつ、その承諾を受けているとは認められないとして、商標法第4条第1項第8号に該当する旨の平成13年6月29日発送の拒絶理由通知を受けたのに対し、同会は法人格を有さないため、出願人が、その代表者の資格で同会のために出願したものである旨同年7月19日提出の意見書で述べ、同日付けの手続補足書で、これを証するため、平成13年度の役員の一覧表及び現在の会則が掲載されている同会の機関誌平成13年1月号「刀剣と歴史」第638号及び日本刀剣保存会常任理事の肩書きにより大橋博及び同山崎昭が平成13年7月15日付けで作成したものであって、本件商標の登録出願は、同会がいわゆる法人格なき社団であり、出願人適格が無いため、江口が同会の常任理事として、同会のために手続きをしたものであることを確認する旨を内容とする「確認証」と題する書面を特許庁に提出し、本件商標の登録を受けたものである。もっとも、前記平成13年1月号「刀剣と歴史」第638号は発行通巻号数が連続しており、また同誌2頁ないし4頁には、平成12年1月1日施行の「日本刀剣保存会会則」が記載され、本会を日本刀剣保存会と称すること、本部を東京都品川区上大崎1-23-1に置くことなどが定められている他、会長が本会を代表すること、副会長は会長の欠けるときは会長があらかじめ定めた順位に従い職務を行うこと、常任幹事は副会長が欠けるときはその職務を行うことなどが定められており、同誌5頁には、平成13年度の日本刀剣保存会役員名簿が記載されいるが、会長及び副会長の記載はなく、常任幹事として江口、大橋博及び同山崎昭が記載されており、この限りにおいては江口が申立人を代表する資格を有し、他の常任幹事である大橋博及び同山崎昭が申立人について商標法第4条第1項第8号所定の同意をする権原を有しており、申立人が前記「刀剣と歴史」第638号を発行したようにも思われるが、先の認定事実に照らせば、江口らの主宰する日本刀剣保存会及びその活動は、申立人と一体性を有するものではなく、申立人の名称や事業と偶然一致した団体を新たに設立したものとも到底解することはできず、申立人の名称や事業活動に関する利益を違法に侵害する行為といって差し支えないものである。このように江口による本件商標の登録出願手続きは、申立人とは関係なくなされたものである。
これらのことからすれば、本件商標の登録出願当時、江口は、申立人である「日本刀剣保存会」の代表権を有していたとはいえず、また、江口が本件商標を登録出願したことにつき、同会が権利能力無き社団のため商標法第4条第1項第8号所定の同意をする権原を大橋博及び同山崎昭が有していたともいえない。江口らは、申立人の常任幹事を務めていたが、その常任幹事の辞任及び退会の表明又は当分の間休会する旨を表明して、申立人との関係を自ら絶った後に、江口が、本件商標の登録出願をし、大橋博及び同山崎昭に同人らが申立人について商標法第4条第1項第8号所定の同意をする権原を有しないことを知りながら虚偽の確認証を作成させたうえ、同書面を特許庁に提出して、本件商標の登録を受けた行為は、申立人の名称や事業活動に関する利益を違法に侵害するものであって、社会一般の道徳観念に反し、公正な取引秩序を乱す行為といわざるをえない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものである。

4 商標権者の意見
前記平成14年7月30日付け取消理由通知に対し、商標権者は、平成14年9月11日付け及び同年10月29日付け意見書において、意見の要旨を次のとおり主張し、証拠方法として、本件商標の登録出願(商願2000-061026)について平成13年7月19日に提出した意見書添付の資料を援用するほか、乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
(1)本件商標「日本刀剣保存会」は、明治43年に設立された東京都に所在する日本刀剣の愛好家の団体の名称である。
本件商標は、日本刀剣保存会が公益も営利も目的にするものでもなく、法人格を取得することが困難であったため、代表権者であった江口が本件商標の出願をし、登録を得たものである。そして、日本刀剣保存会が東京都より特定非営利活動法人(NPO法人)として設立認可され、平成14年9月に設立登記されたので、同法人に本件商標登録の移転登録をしたものである。
(2)団体が「法人格なき社団」として保護されるには、学説、判例上、団体としての組織を備え、多数決の原則が行なわれ、構成員の変更にかかわらず団体が存続し、その組織において、代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることが要件とされている(最判昭和39年10月15日判決)ところ、「日本刀剣保存会」は、平成11年6月24日に40年間第3代の代表幹事を努め同会の中心的存在であった吉川賢太郎が亡くなったが、同人が会を運営していた当時は、不備な会則しか存在しないばかりか、これも無視され、会の人事・運営も同人の独断で行なわれ、会の財産と同人の財産の混交が行われる等しており、東京地裁平成12年(ワ)第24688号占有物等返還請求事件について平成14年6月19日に言渡された判決の理由中に示すとおり法人格なき社団として保護される適格を備えていなかったものである。
してみると、当時は、「日本刀剣保存会」なる社団は存在していなかったと言わさるを得ず、社団の名称である「日本刀剣保存会」を個人である吉川賢太郎が使用し、「日本刀剣保存会」の名で「刀剣と歴史」を発行していたのは実体に反していたものである。
「日本刀剣保存会」なる団体は過去にその実体が存在したかもしれないものの、故吉川賢太郎が代表幹事を勤めていた間にその実体はなし崩しに失われ、少なくとも、平成11年に物故した当時においては、団体としての実体は存在しなかったものと解すべきである。
(3)我が「日本刀剣保存会」が、由緒ある「日本刀剣保存会」をあるべき姿で復活・存続させるため、その商標を出願し、登録することが公序良俗に反するとする根拠がどこにあろうか。「日本刀剣保存会」の正当な後継者が存在しないのであれば、本件商標が商標法第4条第1項案7号に違反して登録されたものであるとする取り消し理由は成り立たない。

5 当審の判断
商標権者は、本件商標を出願した当時、申立人は「権利能力なき社団」として実在しておらず、「日本刀剣保存会」の代表者であった江口が、同団体のために個人名義で本件商標の登録出願をし、登録を得たものであるから、本件商標は公序良俗に反しない旨主張しているので、この点について検討する。
甲各号証及び乙各証等によれば、「日本刀剣保存会」は、明治43年ころ「羽澤文庫」と称して発足し、遅くとも昭和45年1月ころから「日本刀剣保存会」と称するようになり、日本刀研究、刀剣鑑定及び「刀剣と歴史」と題する機関誌の発行(主に会員に頒布していたが、会員以外の者に有償販売していた外、刀剣店や図書館などに寄贈していた。)を主な活動としてきたが、平成11年6月24日に代表幹事であった吉川賢太郎が死亡し、その後、同年7月24日に開催された会合では会の存続の是非が議論され、同年11月13日に開催された「平成11年度日本刀剣保存会新評議委員会」において新人事体制の承認、会の存続及び新会則の制定が決議されたが、新会則の制定については、構成員のうち相当数の者が関与しておらず、賛同していなかったこと、同12年5月14日に開催された幹事会(役員会)において常任幹事の江口、大橋博及び山崎昭が退会又は休会する旨の表明をしたことが認められる。また、申立人は「刀剣と歴史」第636号を同年7月20日、第637号を同年9月10日、第638号を同年11月20日、第639号を同13年1月20日にいずれも「日本刀剣保存会」として発行を継続していることが認められる一方、江口らも「刀剣と歴史」第636号特別号を同年9月7日、第638号を同13年2月12日にいずれも「日本刀剣保存会」として発行していることが認められる。そして、同12年6月4日に開催された日本刀剣保存会役員緊急会議において苫野敬史及び岡田守可の役員除名決議をしたこと、同月6日付けで日本刀剣保存会事務局長大橋博名をもって岡田守可に対し日本刀剣保存会役員除名決定の通知をしたこと及び同年7月1日付けで(発信日同月4日)日本刀剣保存会常任幹事江口名をもって岡田守可に対し「日本刀剣保存会」による審査、機関誌「刀剣と歴史」発行を停止すべき旨通告したこと、同13年2月20日付けで(発信日同日)日本刀剣保存会本部代表常任幹事江口名をもって岡田守可に対し「刀剣と歴史」の商標登録がなされたこと及び機関誌「刀剣と歴史」発行を停止すべきことなどを内容とする通知をしたことなどが認められる。
これらの認定事実からすれば、吉川賢太郎死亡後、明治43年ころより続いてきた「日本刀剣保存会」は、会の運営を巡って構成員の意見が対立し始め、遅くとも平成12年6月4日ころには二派に分裂し、事実上、東京都世田谷区粕谷4丁目9番14号に事務所を置く「日本刀剣保存会」(申立人)と東京都品川区上大崎1-23-1に事務局を置く「日本刀剣保存会」(以下「江口保存会」という。)の二つの「日本刀剣保存会」が存在するに至ったというのが相当である。申立人の構成員には苫野敬史及び岡田守可などが属し、江口保存会の構成員には江口、大橋博及び山崎昭などが属している。
甲第2号証によれば、申立人は、日本刀剣保存会会則において、総会及び構成員の資格の得喪について直接明文をもって定めていないが、「日本刀剣保存会」と称し、日本刀の保存及びその研究を目的とする団体であること、特別終身会員、特別会員及び通常会員の入会金及び会費、資産の運用、役員、幹事会、評議員会について定めているほか、代表については「第6条(一)会長は本会を代表し会務を統括し、副会長は会長に事故ある時これを代行する。(四)代表幹事は会長を補佐し常務を処理して、会長、副会長に事故ある時はその職務を代行する。」と定めているものであるから、少なくとも団体としての最低限の組織をそなえており、明治43年ころより構成員の変更にも係わらず存続しており、団体の運営は役員、幹事会、評議員会を通じて基本的には多数決の原則により行われてきていると推認されるから、団体としての主要な点は確定しているというのが相当であり、権利能力なき社団といって差し支えないものである。本件商標の出願当時、申立人が権利能力なき社団として実在していなかったとの商標権者の主張事実については、これを認めるに足りる証拠がない。
なお、前記認定は東京地方裁判所平成12年(ワ)第24688号占有物返還等請求事件の判決の理由における認定と相違するが、同訴訟事件と本件登録異議の申立て事件とは当事者を異にするばかりでなく、同訴訟事件は申立人が権利能力なき社団か否かを争点としたものではないから、同判決の存在が前記認定の妨げとなるものではないと解される。
他方、本件全証拠によっても、江口保存会が何時から権利能力なき社団となったのか及び江口が何時、どのようにして権利能力なき社団としての江口保存会の代表者になったのか定かでない。江口は、前記認定のとおり、平成12年5月14日に開催された申立人の幹事会に常任幹事として出席し、この席上において常任幹事の大橋博及び山崎昭が常任幹事を辞任すること及び同会を退会する旨を表明したのとともに、同会を当分の間休会する旨表明し、その後同年6月2日に江口個人名で本件商標の登録出願したものである。本件商標の登録出願について、大橋博及び同山崎昭が日本刀剣保存会常任幹事の肩書きをもって平成13年7月15日付けで作成した「確認証」は、江口保存会のために作成されたものであって、申立人のために作成されたものとは認められない。
以上のことからすれば、江口は、申立人の常任幹事を務めていたが、自ら当分の間休会する旨を表明して事実上申立人との関係を絶った後に、申立人又はその構成員の許諾を受けずに、江口個人又は江口保存会のために、江口個人名で本件商標の登録出願をし、その登録を受けた行為は、申立人の名称や事業活動に関する利益を違法に侵害するものであって、社会一般の道徳観念に反し、公正な取引秩序を乱す行為といわざるをえない。
したがって、商標権者の意見は、本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるとして通知した取消理由を覆すに足りない。
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたと認められるから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2002-12-06 
出願番号 商願2000-61026(T2000-61026) 
審決分類 T 1 651・ 22- Z (Z164142)
最終処分 取消 
前審関与審査官 今田 尊恵 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 2001-10-19 
登録番号 商標登録第4516103号(T4516103) 
権利者 特定非営利活動法人日本刀剣保存会
商標の称呼 ニッポントーケンホゾンカイ、トーケンホゾンカイ、ニッポントーケンホゾン、トーケンホゾン 
代理人 安富 真人 
代理人 三好 秀和 
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