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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) 017
管理番号 1087024 
異議申立番号 異議1998-90297 
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2003-12-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-02-04 
確定日 2003-11-13 
異議申立件数
事件の表示 登録第4062676号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4062676号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第4062676号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成2年10月8日に登録出願され、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同9年10月3日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立の理由
1 商標法第4条第1項第8号について
本件商標は、甲第1号証に示すとおり、その一部に「Polo」の文字を有してなるものである。
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の商号は、「The Polo/Lauren Company,L.P.」であり、米国ニューヨーク州のリミテッドパートナーシップである。申立人は、被服類やメガネやフレグランス及びその他のファッション関連商品について、申立人の関連会社やライセンシー及び販売店を通じて世界的な規模でその製造販売に携わっている。
申立人がライセンシーや販売店等を通じて製造販売している上記いわゆるアパレル商品は、申立人の主な構成員の一人であり世界的に著名なデザイナーであるラルフ・ローレン氏によって主にデザインされたものである。その英国の伝統を基調としそれに機能性を加えたデザインと、卓越した製造技術並びに一貫した品質管理による良質の製品は、本拠地である米国のみならず日本を含む数十カ国に及ぶ世界の国々において多くの消費者から高い評価を得て、現在では世界的規模で事業を展開している。このように世界的規模で事業を行っている申立人の商号は、「Polo」「ポロ」「ポロ社」等と略称されており、この略称は本件商標の出願前から既に著名となっていたものである(甲第2号証ないし同第3号証の3)。
本件商標は、上述の申立人商号の著名な略称である「Polo」と同綴の文字をその一部に有してなるものである。かつ、申立人は、商標権者に対し、申立人の著名な略称を含む本件商標の登録について承諾を与えた事実はない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標は、甲第1号証に示すとおり、疾走する馬に騎乗しポロ競技に使用するマレットを振り上げている人の図形とその図形を挟んで左右に「Polo」と「Club」の欧文字を配してなるものである。しかして、上記構成及び態様に徴すると、その構成文字「Polo」と「Club」は、一体として特定の観念を有するものでなく、また「Polo」の文字は後述するとおり著名な商標であるところから、それぞれの文字に相応して称呼、観念され得るものである。したがって、本件商標は、全体として「騎乗している人がポロ競技を行っている図形と著名な商標『Polo』とを表示してなる商標」と認識、把握されるものである。
(2)申立人は、甲第4号証及び甲第5号証に示す騎乗してポロ競技を行っているポロプレーヤーの図形と「Polo」の欧文字を組合せた商標(以下「引用商標」という。)を被服類や眼鏡、その他のファッション関連商品等の商標として本件商標の登録出願前より使用しており、該商標は既に周知、著名となっているものである。
引用商標は、「Polo」と「Ralph Lauren」又は「by RALPH LAUREN」の文字及びそれぞれ馬に騎乗するポロプレーヤーの図形とを組み合わせて表わしてなるものであるが、文字の部分は、ロゴ態様、文字の大きさの相違及び図形の配置等によって構成文字全体が一体のものと認識される概然性はなく、他の文字と分離して表示されている「Polo」の文字が独立して認識され商品の取引に使用されているといい得るものである。また、上記したとおりの構成及び態様よりなるから、全体として、ポロプレーヤーの図形と「Polo」の文字を有する商標と認識、把握されるものである。
(3)申立人は、引用商標又は「Polo」の欧文字のみの商標又は馬に騎乗しマレットを振り上げたポロプレーヤーの図形のみの商標を、被服類、眼鏡、その他のファッション関連の商品の商標として本件商標の登録出願前より使用しており、それらの商標は既に周知、著名となっているものである。特に、引用商標とほぼ同一の標章及び「POLO」の欧文字及び馬に騎乗しマレットを振り上げたポロプレーヤーの図形の標章が、申立人の製造販売に係わる商品を表彰する商標として眼鏡及び被服類の取引関係者、需要者において広く認識されていたことは、東京高等裁判所の判決(「Polo Club」事件)及び特許庁における審決において既に認定されているところである(甲第8号証及び甲第9号証)。
(4)引用商標の著名性を立証する証左としてさらに以下を挙げる。これらの事実からしても申立人の使用する引用商標が、本件商標の登録出願日以前からその指定商品について周知、著名であったことは疑いのない事実である。カタログ誌「男の一流品大図鑑」(’78年版)における特集記事『一流ブランド物語』の中で、引用商標が著名服飾デザイナーであるラルフ・ローレンによってデザインされた商品を表彰するブランドであり、ポロ創立(’68年)してわずか10年で世界的著名なブランドになったことが明記されている。このことは特集記事に同時に掲載されている陶磁器や家具等の他の分野における著名ブランドに互して、引用商標が衣服の分野において既にこの時代(遅くとも’78年)に著名であった事を証明しているものである(甲第5号証)。因に、このカタログ誌は年刊で発行され、世界的に信用の確立している商品を掲載しており、また、『一流ブランド物語』のタイトルのもと各分野における特に著名なブランドを厳選し、そのブランド商品の特色やデザイナー、ブランドの歴史等を特集して紹介している。
日本においてラルフ・ローレン(ポロ)の商品は、西武百貨店が昭和52年(’77年)からライセンシーの権利を取得してその製造、販売を行ってきた。当初は西武百貨店内においてショップ展開したが、その後松屋、東急、大丸、阪急等のデパートへ出店し、また昭和62年から鎌倉、東京の銀座、原宿に相次いで大型専門店を開設している(甲第2号証)。なお、このような申立人の商品だけを扱うデパートのインショップや専門店は「ポロ・ショップ」と呼ばれ現在日本に約300店舗存在する。また、多くの商品分野に関する異議決定においても申立人の主張が是認され引用商標の著名性が認められている。
甲第11号証は平成元年5月にラルフ・ローレンブランドの偽ポロンャツについて、警視庁が不正競争防止法違反容疑で捜査を行ったことを報じた新聞記事であるが、その記事中で「Polo」(ポロ)の商標が申立人の著名な商標であることを報じている。わが国において不正競争防止法に基づく刑事事件は、著名性の立証が困難などの理由により立件されるのは希であるが、上記事件が立件されたことは、申立人の商標である「Polo」(ポロ)が不正競争防止法の下で刑事事件として保護されるほど著名であることを証明しているに外ならないものである。
(5)以上のとおり、引用商標は、ラルフ・ローレンによってデザインされ申立人の製造販売に係る被服類等の商品を表すものとして、その著名性が本件商標の登録出願前既に取引関係者、需要者の間で確立されていたものであるところ、本件商標は疾走する馬に騎乗するポロプレーヤーの図形と「Polo」の文字を表示しその構成が酷似してなるものであり、しかも、本件商標の指定商品と引用商標を付して使用しているスーツその他の被服類とは同一又は類似する商品であること明らかであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合は、それに接する取引関係者、需要者をしてラルフ・ローレンによりデザインされ申立人によって製造販売されて「ポロ」と称されている一連の商品であると観念するものというのが相当な商標である。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。
3 商標法第4条第1項第19号について
上示した「Polo」の文字と馬に騎乗しマレットを振り上げたポロプレーヤーの図形を組合せた引用商標が、申立人の業務に係る被服類、眼鏡、その他のファッション関連商品を表彰し、また、申立人の信用力を表彰するものとして世界的な著名性を確立していること、及び、さらに「Polo」、「ポロ」又は「ポロ社」と称され申立人の商号の略称としても著名となっていることは上述したとおりである。
しかるに、本件商標は、疾走する馬に騎乗しポロ競技に使用するマレットを振り上げポロ競技を行っている人の図形とその図形を挟んで左右に「Polo」と「Club」の欧文字を表してなるものである。
したがって、両者は「Polo」の文字を含む欧文字とポロプレーヤーの図形を組合せてなり、しかも、「Polo」の文字が独立して表されていること、また、図形部分が疾走する馬に騎乗してポロ競技に使用するマレットを振り上げているポロプレーヤーの所作を表しているなどその構成の軌を全く同じくするものである。そして、その指定商品が申立人の業務に係る商品中主要となっている被服等の商品である。
このように本件商標は、著名な引用商標と酷似し同一の商品に使用するものであるところから、これを偶然の一致などということは到底できず、本件商標をその指定商品に使用する行為は、申立人が多大の努力と費用を費やし長年かけて築いた引用商標のグッドウイルを窃盗し不当の利益を得る目的で出願されたものといわざるを得ない。さらに、結果として引用商標に化体されたグッドウイルが希釈化されその名声が棄損されることになるところから国際信義にも反するものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してなされたものであるから、取り消されるべきである。

第3 本件商標の取消理由
本件登録異議の申立てがあった結果、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして通知した取消理由は、要旨以下のとおりである。
<取消理由>
申立人の提出に係る各証拠及び職権により調査したところによれば、引用商標は、「Polo(ポロ)」と称呼されて著名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品に使用する商標として、また、紳士服、紳士用品について、「POLO」、「polo」「ポロ」「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフ・ローレン(アメリカ)」等の表題の下に紹介されていることが認められる。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」「polo」「ポロ」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した判決(東京高裁平2(行ケ)183,平成3.7.11)がある。
以上の事実を勘案し、上記判決をも併せ考慮すると、わが国においては、遅くとも昭和55年頃までには既にラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして「Polo」及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形の商標が取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたものと認められ、その状態は現在においても継続しているというのが相当である。
そうとすると、本件商標をその指定商品である「被服」等に使用するときは、前記した事情からして、これに接する取引者、需要者はその構成中の「Polo」の文字及び「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」の図形に注目し、前記周知になっているラルフ・ローレンに係る「Polo」又は「馬に乗ったポロ競技のプレーヤー」標章を想起し、該商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く出所の混同を生ずるおそれがあるものと認められる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 商標権者の意見
1 はじめに
(1)商標権者は昭和46年から今日まで「Polo Club」商標の使用を継続しており、商標権者の使用開始は異議申立人より早いこと、
(2)本件商標は「Polo Club」商標のモチーフであるポロ競技の典型かつ代表的なスポーツ姿態の図形を一体に結合した結合商標であって、「Polo Club」のバリエーションの商標であること、
(3)本件商標、「Polo Club」、「ポロクラブ」は極めて高率の知名率を有する周知著名商標として人気ブランドの地位を有しており、高度に確立した識別力を発揮していること、
(4)仮に引用商標が周知著名であるとするならば、同一業界において優劣を付けられない(現実には本件商標が知名率において優位にある)2つの周知著名商標が並立している状況にあり、周知著名商標の並立はそれぞれがその各高度の識別力によって取引者、需要者はそれぞれを容易かつ確実に双方を識別する結果、その間に広義、狭義の混同を生じることはないこと
(5)「POLO」は申立人の創造商標とはいえず、また申立人は第3者の「POLO」商標帰属を認めていること等の事情があるから、本件商標は異議申立人の商標と混同を生じたりする可能性はなく、本件商標はわが国の周知著名のオリジナルブランドとして商標法上の充分な保護が与えられるべきものであって、その登録が維持されるべきである。
2 本件商標について
商標権者は第1090129号登録商標(「Polo Club/ポロクラブ」)、第1533085号登録商標(「ポロクラブ」)、登録第1617024号登録商標(「Polo Club」)等とともに第3商標にポロ競技の典型的姿態図形を一体とした結合商標の本件商標を保有しており、登録第1090129号商標の当時の出願人日本綜合株式会社(商品企画会社)から許諾を受けて、昭和46年から商標「Polo Club」、「ポロクラブ」を被服(当時は主に背広、コート等の重衣料)に使用して今日に至っている(乙第141号証参照)。
すなわち商標権者は当時「AX」、「1928」等の商標を使用して主に重衣料を製造販売していたが、日本綜合から「Polo Club」、「ポロクラブ」ブランドを使用した背広等の商品企画(ポロ競技をモチーフとした英国調トラデイショナルイメージの商品)の提案を受けて直ちにこれを採用して、昭和46年に該ブランドによる商品(背広等)を販売した。日本綜合は第1090129号商標を出願していたので、採用とともにその使用許諾を受けた。商標権者はこのブランドを戦略ブランドとして位置付けていたから、出願商標の譲渡を申し入れたが、日本綜合は時期尚早であるとしてこれを断り、時期がきたら商標権者に譲渡することを誓約したので、使用許諾を受けることでその採用を行なった。昭和55年に日本綜合が商品企画業務を中止することになったので、譲渡を再度申し入れた結果、第1090129号登録商標(及び当時出願中の1533085号登録商標、第1617024号登録商標)の同社から商標権者への譲り受けが実現し、今日に至っている。
認定によれば、引用商標が米国において使用されたのは1968年(昭和43年)であり、引用商標が米国における地位を確立し、わが国において知られるようになったのは1974年(昭和49年)であるとされ、その周知著名性の確立は昭和55年頃とされるが、商標権者による「Polo Club」、「ポロクラブ」商標の使用は、昭和46年であり、わが国において引用商標が知られるようになったとする時期より数年早いし、その周知著名性が確立されたとする時期より10年近く早い。
本件商標の使用開始は平成元年に入ってからであるが、ブランドブームともいうべき市場環境となり、商標権者にライセンスを求める要請が多く寄せられる状況になったので、商標権者はこれに応じる形で、株式会社ポロクラブジャパンをグループ会社として設立し、商標管理を行なうこととする一方、「Polo Club」ブランドのバリエーションとして本件商標を設定し、その出願を行なうとともに、同社が専用使用権者となってライセンスを開始した。ライセンシーは平成5年当時商標権者を含めて合計13社であり、その百貨店、専門店、量販店による本件商標商品の総売上は小売ベースで平成元年100億円、平成4年280億円であった(乙第141号証参照)。すなわち「Polo Club」は、引用商標より早い昭和46年に選定され、今日まで間断なく継続して使用されている、複数の商標権によって保護されている商標であり、引用商標「POLO」がわが国においてその後に周知著名性を確立したからといって、そして「Polo」を含むからといって「Polo Club」の使用や登録に遡及的に優先するとする法的根拠はない。
また、「Polo Club」は、ポロ競技のクラブの意味を有するものであるとおり、ポロ競技をモチーフとしており、本件商標はこの「Polo Club」を共通にした結合商標として、そのモチーフにおける典型かつ代表的なスポーツ姿態の具象的な図形を「Polo Club」の文字スペース間に一体的に配置している。これは例えば相撲をモチーフとするものに横網の土俵入りや相撲取りが四つに組んだ姿態の図形を使用し、釣りをモチーフとするものに磯釣りの姿態の図形を使用する如くに、世間一般において常識的になされている程度に自然のことである。
本件商標が配置する「Polo Club」のモチーフ図形は、疾走している馬上で、前かがみになった競技者が撓ったマレツトを振り下ろしかけている形態にして、疾走感、躍動感に溢れたものである。これはポロ競技の代表的にして典型的な姿態である。
これに対して引用商標は、馬の歩法にいう遠歩(はやあし)ないし駆歩(かけあし)の状態で背筋を延ばした競技者が直線のマレットを斜め上方に掲げている形態にして、安定感、のんびり感に溢れたものである。モチーフを共通とするも非類似の商標は多いが、本件商標の図形と引用商標の図形は、その形態、印象を異にしている非類似のものであるが、本件商標は、「Polo Club」がポロ競技をモチーフとすることによって、その典型的かつ代表的な姿態を表現したものであるから、これが引用商標との形態及び印象の明確な相違となって現れているのである。
更に同じく後述のように「Polo Club」、「ポロクラブ」とともに結合商標である本件商標の周知著名性が確立しているから、本件商標のうちから上記ポロ競技の典型的かつ代表的なスポーツ姿態のみが独立して認識されることもないから、これが第三者の商標を想起させたりする可能性もない。
3 本件商標の周知著名性
本件商標は、「Polo Club」、「ポロクラブ」等の商標とともに、以下のとおり周知著名性を確立している周知著名商標である。
乙第521証証は、平成10年10月発行のAIPPI日本部会発行の「日本有名商標集」(英語版)であるところ、その183頁に「Polo Club」が、363頁に本件商標がそれぞれ掲載されている(なお362頁には商標権者の登録第2608687号商標が併せて掲載される)。乙第522号証は、最近(平成10年2月〜3月、同「消費者調査概要」欄参照)の各ブランドの知名度を示す、ボイス情報株式会社発行の「’98ブランド&キャラクター調査」であるが、その32頁に、本件商標(「ポロクラブ」とされているが、ライセンシーの商品には本件商標が使用されていること、後述の広告宣伝資料に示されるとおり広告宣伝には同じく本件商標が使用されていることに明らかなように、ここに「ポロクラブ」とは本件商標を示している)の知名率は、総合で平成6年78.6%(引用商標81.8%)、平成8年80.6%(引用商標81.6%)、平成10年69.8%(引用商標56.7%)であり、126頁「総合ブランド知名率ランキング」で本件商標は10位(「力ルバンクレイン」,「イブサンローラン」と並ぶ)、引用商標は34位である(平成10年のデータが、平成6〜平成8年より下がっているのは、調査範囲等の変更によるものと見られる)。
個別的にみても、本件商標は、中学生女子(37頁)で57.0%(引用商標42.0%)、中学生男子(42頁)で38.0%(引用商標30.0%)、高校生女子(47頁)で91.0%(引用商標78.0%)、高校生男子(52頁)で52.0%(引用商標45.0%)、大学生女子(57頁)で82.0%(引用商標80.0%)、大学生男子(62頁)で76.0%(引用商標68.0%)、社会人女子(67頁)で72.0%(引用商標70.0%)、社会人男子(72頁)で86.0%(引用商標50.0%)、主婦(77頁)で74.0%(引用商標47.0%)の知名率である。すべての年令層において本件商標の知名率が、引用商標の知名率を上回る結果である。
この「ブランド&キャラクター調査」のバックナンバーとして乙第231号証に94年(平成6年)版、乙第363号証に96年(平成8年)版を提出しているが、前者によれば平成6年(5月)の知名率は、総合で78.6%(引用商標81.8%)、後者によれば平成8年(4月)の知名率は、その134頁のとおり同じく総合で80.6%(引用商標81.6%)であり、また平成8年の売上高は280億円(引用商標320億円、40頁参照)とされ、既に平成6年には本件商標は、引用商標がやや上回るとはいえ、引用商標と桔抗する略同等の知名率のものとなっていたことが分かる。
乙第142号証は、日本経済新聞社の「日経金融新聞掲載広告への応募ハガキ集計結果 1992年8月21日付」であるが、これによれば認知度(知名率)はメンズカジュアルで「『Polo Club』が知名率(80.4%)、一流評価率(26.1%)、所有率(30.4%)の3項目においてトップ」(71頁)とされる。因にその下位には「Mr.JUNKO」、「Jantzen」等がある。
乙第143号証はその一年後の「1993年8月23日付」のものであるが、「メンズカジュアル10ブランドの中では、『Polo Club』がすべての項目でトップとなった」(117頁)とされる。知名度は90.4%である。下位に「Jantzen」、「Crocodile」等がある。
乙第70号証は、同じく日本経済新聞社の「あなたはいくつご存じですか ’92ファッション・ブランドアンケート」の「日本経済新聞掲載広告への応募ハガキ集計結果 1992年8月24日付(朝刊)」であるが、同じく「メンズカジュアルでは『Polo Club』が知名率(69.3%)、一流評価率(20.7%)、所有率(29.2%)、購買意向率(11.4%)でトップ」(5頁)とされており、乙第144号証は、その「’93」版(1993年8月23日)であるが、上記日経金融新聞と同様な評価がなされている(7頁)。
乙第230号証は更にその「’94」版(1994年8月24日)であるが、「メンズ・レディースカジュアルでの認知度トップは、『Polo Club』(90.6%)で9割以上の認知度となっており、他を大きく上回っている」(8頁)とされる。以下に「Crocodile 」(66.5%)、「McGREGOR」(56.9%)等がある。
乙第145号証は、同じく日本経済新聞社の「FASHION BRAND SURVEY」であるが、1993年12月において、メンズカジュアルの知名率は、全体で56.8%であるが、これはその内訳によると24才以下88.9%、25才〜29才77.8%、30才〜39才68.3%、40才〜49才56.9%、50才以上26.9%の合計である。
乙第362号証は、矢野経済研究所の「1996年版ライセンスブランド全調査」であるが、これによれば当時の年間売上高は全ブランド中19位の176億円(引用商標は10位の215.5億円)、ライセンシー数は20社(引用商標は10社、双方衣料品以外の商品を含む)である。因に本件商標の主力販路は「専門店を主体、他量販店、百貨店平場等」であるのに対して、引用商標は「百貨店インショツプ、オンリーショップ」であり、本件商標と引用商標とは販路が異なることが示され、また引用商標のライセンシーには、後述の乙第524号証「POLO」商標の商標権者である「公冠販売株式会社」が含まれている。
平成11年4月26日に吉祥寺、27日に銀座、28日に渋谷でそれぞれ申立人が博報堂に依頼して調査した結果を示す資料を商標権者は別件で申立人から受領しているが、これによれば本件商標の認知率は94.6%、引用商標は97.1%とされている。商標権者が関知しない申立人調査によるも、この程度である。
乙第1号証〜乙第11号証は日本テレビ、毎日放送、朝日放送、テレビ東京等のTVCMの放送実績を示す証明書であり、乙第12号証〜乙第14号証は東京ドーム、新幹線新大阪駅、大阪地下鉄梅田駅等の看板広告に実績を示す写真であり、乙第15号証は、平成4年6月の商標権者への本件商標無断使用の謝罪文を掲載した記事であり、乙第16号証〜乙第69号証、乙第71号証〜乙第141号証、乙第146号証〜乙第229号証、乙第232号証〜乙第301号証、乙第303号証〜乙第361号証、乙第364号証〜乙第517号証は、平成元年から平成9年までの新聞(織研新聞、日本経済新聞、日経流通新聞、朝日新聞、メンズ・デイリー、アサヒイブニングニュース等)、雑誌(メンズ・クラブ、ファインボーイズ、レイ、グラン・マガザン、ナンバー、ジィーキュージャパン、ファイン、婦人画報、わたしの赤ちゃん等)、イベントプログラム(アサヒビールゴルフダイジェストトーナメント、サントリーオープン等)の広告実績を示すものである。
本件商標の各種媒体を使用した宣伝広告を平成元年から開始し、特に平成3年からは大量かつ継続的な広告を行なっていることが明らかである(平成10年、11年も同様に大量な広告を継続している)。
本件商標の広告宣伝に使用した広告宣伝費の累計(平成10年末まで)は約18億円である。商標権者は、本件商標が、引用商標とは関係のない独自のブランドであるが故に、自らそのブランドを市場に確立するために18億円の費用を掛けている(因に乙第141号証に示されるとおり会社設立後50年となるが、商標権者はグループ企業を含めても然程大きな企業ではない。この宣伝広告費は商標権者の資本金の6千倍である)。
本件商標を付した商品の売上は、乙第141号証(25頁上段表)にあるとおり、平成元年100億円、平成2年150億円、平成3年220億円、平成4年280億円、平成5年308億円(平成5年は予測)、乙第362号証にあるとおり平成8年176.5億円といった規模であり、バブル経済崩壊後に売上の低下を来したが、累計売上は2000億円ないしそれ以上であり、乙第522号証によればその商品の所有率は、平成8年に31.4%、平成10年に24.7%であるから、3人に1人、4人に1人が本件商標の商品を保有している程度に全国に普く普及している。
乙第533号証ないし乙第536号証は、「Polo Club」といった商標登録出願に対して平成4年9月に出された拒絶査定を示すが、「Polo Club」「ポロクラブ」を商標権者の「この種業界で周知になっている商標」であるとして引用している。
してみれば本件商標は、少なくとも平成2年ないし同3年にはその周知著名性を確立していた商標であること、今日その周知著名性は引用商標を超える程度であり、特に数あるブランドの中でもトップクラスの人気ブランドであることが明らかである。
4 本件商標が周知著名であることの意味
以上のとおり本件商標は「Polo Club」、「ポロクラブ」とともに極めて高い知名率を呈する周知著名商標である。引用商標が相当程度知られていることは否定しないが、仮に認定のようにこれを周知著名であるとすると、被服の同一業界において複数の周知著名商標が並立していることになる。このような例は然程多くはみられないが、例えば「浄土宗」と「浄土真宗」或いは「明治大学」と「明治学院大学」、「東京大学」と「東京経済大学」や「東京電気大学」、「丸井」と「丸井今井」、図形でいえば「イトーヨーカドー」と「HEIWADO」の鳩のマークといった例が挙げられよう。これらは共通のモチーフ、元号、地名等を用いて、一方が、他方の商標と他の文字を結合した商標の関係にあり、それぞれが同一業界において周知著名性を確立して並立している関係にある。しかし乍らこれらに混同の可能性はない。それはそれぞれがその確立した周知著名性に基づいて高度の識別力を発揮しているからである。取引者、需要者を含めて社会一般は、周知著名商標が並立している事実及びその識別するに必要な相違を含めた商標の構成形態を充分に認識しているから、並立する周知著名商標間にあっては、各商標を容易かつ正確に見分けて認識し、その識別をすることができる状態にある。周知著名商標が単一に存在する場合、取引者、需要者の認識はこの商標だけであるから、他の商標が出現すれば、これを周知著名商標と誤認したり、誤認しないまでも、組織的、経済的関係があるものと誤認する結果、狭義又は広義の混同を生じるおそれがあるとしても、また周知著名商標が並立する場合でも、その余の商標が出現すれば、そのいずれか一方又は双方と同様に混同を生じるおそれがあるとしても、並立する周知著名商標間では、それぞれの高度の識別力によって混同可能性は生じない。
認定は、取引者、需要者は本件商標の構成中の「Polo」及び図形に注目する結果、引用商標と混同を生じるとするが、本件商標が引用商標を超える程度にその周知著名性を確立しているから、本件商標をみれば、取引者、需要者は、これを見慣れた人気ブランド「ポロクラブ」の商標であるとして素直にそのまま識別し、これを分解してその一部の文字や図形が一人歩きするかの如くに、取引者、需要者が注目したり、認識したりすることはない。 引用商標を保護すべきかどうかについて商標権者は関知しないが、本件商標が、この引用商標を超える程度に周知著名である以上、本件商標は商標法による保護が当然になされるべきであって、引用商標の周知著名性を認定するとしても、これによって、本件商標の保護が減衰されたり、否定されたりすべきものではない。
5 その余の事情
商標「POLO」については、乙第542号証、乙第543号証に示されるとおり登録第509040号(旧第43類)及び乙第540号証、乙第541号証に示されるとおり登録第600030号(旧第12類)の登録が、商標権者による第1090129号登録商標以前の昭和32年、昭和37年になされており、現実に前者の商品として明治製菓のミント菓子、後者の商品としてフォルクスワーゲンの自動車が販売されていて、いずれも周知である。これらは本件商標と関係なく、認定の引用商標使用開始前のものであるから、引用商標「POLO」をもって、申立人の創造商標とすることはできない。
また乙第538号証のように「POLO」は、シャツ、特にポロシャツを示すものとして、日本、米国において使用されている。特許庁も長年に亘って「ポロ」を品質表示として、その登録を拒否する扱いを行なってきたのも事実である。乙第524号証、乙第525号証のとおり、「POLO」は第三者(引用商標のライセンシーの公冠販売株式会社)の登録商標である。商標権者の「Polo Club」より1年後にして、引用商標の周知性認定時期より早い昭和47年に出願された登録商標の連合商標として、該第三者が商標登録を受けた。
甲第537号証は、その第三者がインターネットで公表している新聞記事(平成10年5月28日日経流通新聞記事)転載のホームページの一部であるが、「日本では大阪の衣料品販売会社、公冠販売が『POLO』の商標を、ポロシャツなどのカジュアルウエアやインナーウエアの自社ブランドとして1972年に出願、77年に登録。以来、一連のPOLO関連商標を取得し、その使用に関してポロ・ラルフローレン社と長年にわたり良好な関係を築いている」とし、また「従来、公冠販売では、ポロ・ラルフローレン社と別々に偽造品・類似品対策をとてきた。しかし今年からは情報交換をこれまで以上に密にして、共同で対処していくことを決定した」とある。申立人はこの第三者の登録に対して異議申立を行ない、理由がないとの決定を受けているが、第三者との間にはこのような関係がある。
申立人は別件事件においてこの乙第537号証に関知していないとするが、この第三者が引用商標のライセンシーである関係を考慮すれば、この記事は事実を示したものといわざるを得ない。自らのライセンシーが引用商標の商標権者であることは厳然たる事実である。業界においては、申立人は、わが国において該第三者の商標権を認め、該第三者からそのライセンスを受けていると伝えられている。とすれば認定は商標「POLO」の権利の帰属において誤認を行なっている可能性がある。
引用商標と商標「Polo Club」との関係についての東京高裁判決があるのは事実である。しかし乍らこれは、旧第7類に「BEVERLY HILLS POLO CLUB」(結合商標)なる商標の登録を受け、そのライセンス活動を行なっているヤング産業株式会社なる会社との旧第23類時計、眼鏡を巡る事案である。「Polo Club」に執着した同社が、旧第23類にこれを出願したことによって、申立人との間でなされた判決にすぎない。商標権者のように引用商標の著名性が確立する以前に登録を受けたり、使用したりした事実はないし、そもそも商標権を使用している事実や周知著名性が確立している事実が主張されたり立証されたものでもない。この点は判決理由に明確である。かかる商標権者と関係のない他の商品区分の事案に関する判決をもって、本件商標と引用商標との関係を推認したり、律したりすることはできない。
6 以上に詳述したとおり、本件商標は、引用商標と狭義、広義いずれの混同可能性もない商標であり、商標法第4条第1項第15号に該当するものではないことはもとより、本件商標は、引用商標の有無に拘らず、それ自体商標法による厚い保護がなされるべき商標である。

第5 当審の判断
1 引用商標の著名性について
株式会社講談社昭和53年7月20日発行「男の一流品大図鑑」には、引用商標を掲げた「ラルフローレン」ブランドの紹介として、「一九七四年の映画『華麗なるギャツビー』・・・で主演したロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当したのが、ポロ社の創業者であり、アメリカのファッションデザイン界の旗手ラルフ・ローレンである」、「三〇歳になるかならぬかで一流デザイナーの仲間いりをはたし、わずか一〇年で、ポロ・ブランドを、しかもファッションデザイン後進国アメリカのブランドを、世界に通用させた」との記載が、サンケイマーケッテング昭和58年9月28日発行「舶来ブランド事典’84ザ・ブランド」には、引用商標を掲げた「ポロ」ブランドの紹介として、「今や名実ともにニューヨークのトップデザイナーの代表格として君臨するラルフ・ローレンの商標。ニュートラディショナル・デザイナーの第一人者として高い評価を受け、世界中にファンが多い」、「マークの由来 ヨーロッパ上流階級のスポーツのポロ競技をデザイン化して使っている。彼のファッションイメージとぴったり一致するため彼のトレードマークとして使用しているもの」との記載が、そして、株式会社洋品界昭和55年4月発行「海外ファッション・ブランド総覧1980年版」には、「ポロ・バイ・ラルフローレン」について、「若々しさと格調が微妙な調和を見せるメンズ・ウェア『ポロ』ブランドの創立者。栄誉あるファッション賞“コティ賞”をはじめ彼の得た賞は数知れず、その実力をレディス・ウェアにも発揮。新しい伝統をテーマに一貫しておとなの感覚が目立つ。アメリカ・ファッション界の颯爽とした担い手」との紹介のほか、「〈販路〉西武百貨店、全国展開〈導入企業〉西武百貨店〈発売開始〉五十一年(注、紳士靴につき「五十二年」)」等の記載があることが認められる。そして、これらと同趣旨の記載が、昭和54年から昭和60年までの間に発行された雑誌である昭和54年5月20日株式会社講談社発行の「世界の一流品大図鑑’79年版」、昭和55年11月15日株式会社講談社第2刷発行の「世界の一流品大図鑑’80年版」、昭和55年12月婦人画報社発行の「MENS’CLUB1980年12月号」、昭和57年1月10日株式会社アパレルファッション発行の「月刊アパレルファッション2月号別冊海外ファッション・ブランド総覧」、昭和59年9月25日ボイス情報株式会社発行の「ライセンス・ビジネスの多角的戦略’85」及び昭和60年5月25日株式会社講談社発行の「流行ブランド図鑑」等にもあることが認められ、「POLO」、「ポロ」、「Polo」、「ポロ(アメリカ)」、「ポロ/ラルフローレン(アメリカ)」等の商標の下で紹介されている。
上記事実によれば、アメリカ合衆国在住のデザイナー、ラルフ・ローレンは、1967年ネクタイメーカーのボー・ボランメル社にデザイナーとして入社、幅広ネクタイをデザインし、圧倒的に若者に支持され、世界に広まった。翌1968年独立、社名を「ポロ・ファッションズ」(以下「ポロ社」という。)とし、ネクタイ、スーツ、シャツ、セーター、靴、カバンなどのデザインをはじめ、トータルな展開を図ってきた。1971年には婦人服デザインにも進出、服飾業界の名誉ある賞、「コティ賞」を1970年と1973年の2回受賞するとともに、数々の賞を受賞。1974年の映画「華麗なるギャツビー」の主演ロバート・レッドフォードの衣装デザインを担当、アメリカを代表するデザイナーとしての地位を確立した。
わが国においても、ラルフ・ローレンの名前は服飾業界等において広く知られるようになり、そのデザインに係る商品には「Polo」の文字とともに「by RALPH LAUREN」の文字及び馬に乗ったポロ競技のプレーヤーの図形の引用商標が用いられ、これらの商標は「ポロ」と略称されている。
なお、ラルフ・ローレンの「POLO」、「ポロ」、「Polo」の商標について、上記認定事実とほぼ同様の事実を認定した東京高等裁判所の判決(平成2年(行ケ)183号、平成3年7月11日判決言渡)がある。
以上の認定事実及び上記判決を総合すれば、引用商標は、申立人がアメリカのファッションデザイナーとして世界的に著名なラルフ・ローレンのデザインに係るファッション関連商品に、わが国において昭和51〜52年ころから使用するようになったこと、引用商標は、わが国の取引者、需要者の間で、「Polo by RALPH LAUREN(ポロ・バイ・ラルフローレン)」、あるいは単に「Polo」「ポロ」の略称で、ポロプレーヤーの図形とともに広く知られるようになり、遅くとも本件商標の商標登録出願前にはラルフ・ローレンのデザインに係る商品を示すものとして極めて強い自他商品識別力及び顧客吸引力を発揮する著名な商標となり、本件商標の商標登録出願時(平成2年10月8日)及び登録審決時(平成9年8月4日)はもとより、その後においても著名な商標であることが認められる。
2 出所の混同のおそれについて
本件商標は、別掲(1)に示すとおり、「Polo」と「Club」の各文字の間に、馬に乗った一人のプレーヤーがマレットを振り上げてポロをしている図形を配してなるものである。
一方、引用商標は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなるものであり、ラルフ・ローレンのデザインに係る商品を表示するものとして著名な商標となっていることは前記1の認定のとおりである。
そこで、本件商標と引用商標の類似性について検討する。本件商標構成中の「Polo」の文字部分と、引用商標構成中の「Polo」の文字部分とは同一である。また、本件商標構成中の図形と引用商標構成中の図形とは、人馬の向き、ポロプレーヤーの姿勢、マレットの角度等においてわずかな差異は認められるものの、いずれもポロプレーヤーの図形であって、マレットを振り上げたポロプレーヤーを疾走する馬とともに正面側やや斜め方向から描いたものである点において基本的な構成を共通にしているので、時と所を異にして観察する場合には、酷似しているというべきである。
そうすると、本件商標は、構成中に世界的に有名なデザイナーであるラルフ・ローレンのデザインに係る被服類及び眼鏡製品等のファッションに関連する商品に使用して著名な「Polo」の文字と同一の文字及び同じく著名なポロプレーヤーの図形と酷似するポロプレーヤの図形を有しており、また、その指定商品が前記著名商標の使用をしている商品と同一又は類似する商品であるから、本件商標を指定商品に使用する場合には、これに接する取引者、需要者が「Polo」の文字及びポロプレーヤーの図形に着目してラルフ・ローレンのデザインに係る商品であると連想、想起し、その商品がラルフ・ローレン又は同人と組織的、経済的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるものといわざるを得ない。
なお、商標権者は、本件商標は少なくとも平成2年ないし同3年にはその周知著名性を確立し、今日その周知著名性は引用商標を超える程高度の識別力を有するので、本件商標と引用商標との混同の可能性は生じない旨主張している。
しかしながら、乙各号証からは、本件商標の使用をしていることは認められるとしても、その使用を示す乙各号証中には被請求人又は使用権者を示す記載の全くないものが大多数であり、あるとしてもごく小さな文字で「POLO CLUB JAPAN CO.,LTD.」等と記載されているものであるから、ラルフ・ローレンに係る「Polo」と異なる商標であることを積極的に示していたとはいい難く、引用商標が強い自他商品識別力及び顧客吸引力を発揮している著名な商標であることを合わせ考えれば、本件商標に対する一般需要者の相当数が引用商標と同一の営業者又は同者と組織的、経済的に何等かの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるとその出所について混同を生じていたことを否定できず、本件商標の登録出願(平成2年10月8日)及び登録審決(平成9年8月4日)がなされた当時、本件商標が引用商標と商品の出所の混同を生じさせるおそれがない程その指定商品について著名性を有するに至っていたとは認められないから、この点に関する商標権者の主張は採用することができない。
3 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものであるから、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (1)本件商標



(2)引用商標





異議決定日 2002-08-08 
出願番号 商願平2-113740 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (017)
最終処分 取消  
前審関与審査官 尾原 静夫小林 薫 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 小林 和男
宮下 正之
登録日 1997-10-03 
登録番号 商標登録第4062676号(T4062676) 
権利者 上野衣料株式会社
商標の称呼 ポロクラブ 
代理人 曾我 道照 
代理人 田村 公総 
代理人 岡村 憲佑 
代理人 岡田 稔 
代理人 山内 淳三 
代理人 黒岩 徹夫 

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