• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
取消200130013 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 025
審判 一部無効 観念類似 無効としない 025
審判 一部無効 称呼類似 無効としない 025
管理番号 1086910 
審判番号 無効2002-35176 
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-12-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-05-08 
確定日 2003-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第3302571号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3302571号商標(以下「本件商標」という。)は、「TokyoWalker」の欧文字を横書きしてなり、平成6年9月1日に登録出願、第25類「被服、ガター、靴下止め、ズボンつり、バンド、ベルト、履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴」を指定商品として、同9年5月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、その指定商品中『被服』についての登録を無効とするとの審決を求める。」と申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア)引用商標
請求人が本件商標の無効の理由として引用する登録第765171号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「ウォーカー」の片仮名文字を横書きしてなり、昭和41年6月25日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、同42年12月22日に設定登録され、その後、同53年6月7日、同63年5月25日及び平成9年12月16日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、同じく、登録第0853981号商標(以下、「引用B商標」という。)は、「WALKER」の欧文字を横書きしてなり、昭和43年4月12日に登録出願、第17類「被服、布製身回品、寝具類」を指定商品として、昭和45年4月21日に設定登録され、その後、同56年4月30日、平成2年5月23日及び同12年6月13日の3回にわたり商標権の存続期間の更新登録がなされ、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
イ)本件商標の要部は、その構成中の「Tokyo」の文字が、我が国の首都「東京」の英表示で、単に商品の産地又は販売地を示すにすぎないものと認識され、自他商品の識別機能を発揮し得る部分ではないことからすれば、自他商品の識別標識としての機能は、該「Tokyo」の文字部分を除いた「Walker」の文字部分にあるというべきである。
特に、商品「被服」に関していえば、首都「東京」は、世界を代表する産地又は販売地のみならず、ファッション情報の発信地としても著名であり、商標構成中の「Tokyo」の文字部分が、少なくとも「被服」の識別標識としての要部となり得ないことは、多くの前例を挙げるまでもなく明白なところである。
してみると、本件商標からは、その全体構成から「トーキョーウォーカー」の称呼が生ずるほか、要部「Walker」から、単に「ウォーカー」の称呼及び「歩行者」の観念をも生じるというべきである。
これに対して、引用商標からは、共に「ウォーカー」の称呼及び「歩行者」の観念が生ずるものである。
したがって、本件商標と引用商標とは、「ウォーカー」の称呼と「歩行者」の観念とを共通にする類似の商標ということができる。
そして、本件商標に係る指定商品中の「被服」は、引用商標に係る指定商品中の「被服」と同一又は類似である。
よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反するものである。
(2)商標法第4条第1項第10号について
引用C商標ないし引用G商標は、別掲(a)ないし(e)のとおり欧文字「WALKER」、「Walker」及び片仮名文字「ウォーカー」からなる商標であるところ、請求人及び通常使用権者(グンゼ株式会社)の使用により、本件商標の出願当時、既に被服に関する請求人会社又は上記通常使用権者の商標として周知であった。そして、本件商標と引用C商標ないし引用G商標とは、「ウォーカー」の称呼と「歩行者」の観念を共通にする類似の商標であり、また、本件商標に係る指定商品中の「被服」は、引用C商標ないしG商標の使用商品と同一又は類似である。よって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号の規定に違反するものである。
(3)被請求人の答弁書に対する弁駁
ア)請求人適格について
被請求人は、「本件審判の請求は権利の乱用に相当する。」と主張する。 しかしながら、請求人は、引用商標の商標権者であり、本件商標と引用A、B商標との関係において重大な利害関係がある。
したがって、請求人は、本件審判請求に正当な理由があることは明白である。
イ)著名性について
被請求人は、「本件商標は著名商標である。」と主張しているが、本件審判審理において著名性が如何なる関係を有するのか、前記請求人適格との関係以外明らかにされておらず、その論旨が全く理解できない。仮に、「著名性は商標及び類否の認定に何等かの影響を与えるものである。」との主張意図であるとしても、この場合の著名性の認定は、本件商標の出願日又は登録査定日を基準日としてなされるべきもので、当該基準日において、本件商標が「雑誌」とは全く無関係な「被服」に付いての商標類否の認定判断に影響を与えるほどの著名性を既に獲得していたとは到底認められず、また、その立証も一切されていない(被請求人提出の全ての書証は、当該基準日以降の資料である。)。
ウ)商標法第4条第1項第11号について
a)称呼について
被請求人は、「本件商標からは『トーキョーウォーカー』の称呼のみが生ずる。」と主張する。しかしながら、被請求人も認めるとおり、「Tokyo」の文字は首都「東京」の英語表記であり、特に「被服」に関して言えば、「パリコレクション」や「ミラノコレクション」とともに「東京コレクション」と称せられるほど世界を代表する著名なファッション情報発信地名であり、また、被服業界において、商標の使用に際し産地又は販売地名としての「Tokyo/東京」の文字を併記することが多いのも顕著な事実である。
してみると、本件商標中の「Tokyo」の文字は、少なくとも商品「被服」について使用された場合、当業界における取引者、需要者が当該商品の産地又は販売地を示したもの、或いは東京発信のデザインに係る商品であることを示したものであると理解することが少なからずあることは容易に推測できることで、自他商品の識別機能を発揮し得ない部分と言うべきである。
したがって、本件商標からは、構成中の要部「Walker」の文字に相応して「ウォーカー」の称呼をも生じることは明らかである。
被請求人にあっても、乙第5号証の1において「債権者商標では『Tokyo』の部分が…要部ではない。債権者商標『Tokyo』の部分は『東京』を示す地名…の意味を表したにすぎないものであり、これらの部分が『Walker』部分に比し強い自他商品識別機能を果たす部分と言えないことは明らかである(債権者主張書面(一)3頁)。」ことを認めている。
従来より、商品「雑誌・新聞」の印刷物にあっては、他の文字と結合することにより地名が識別力ある商標構成要素として認められている登録例は多く、「雑誌」に関して争われた乙第5号証仮処分事件が、商品「被服」に関する本事案に付いて参考となるものでは全くないが、商品「雑誌」に関する当該仮処分事件での類否判断においてですら、「Tokyo」の部分の識別力を自ら否定しているとともに、一連の雑誌を「ウォーカーシリーズ」と総称している(乙第5号証の5:2頁外)ことからしても、本件商標からは、「トーキョーウォーカー」の称呼のみならず、単に「ウォーカー」の称呼を
も生じることは明らかである。
b)観念について
被請求人は、「本件商標からは『東京歩行者』又は『東京を散歩する人』の観念のみが生ずる。」と主張する。しかしながら、前記の如く「Tokyo」の文字は、識別力の無いか或いは極めて稀弱な部分であるから、本件商標からは、「Walker」の文字に相応して「歩行者」の観念が生ずるものである。記述的文字(地名、品質、形状、色彩等)と他の文字とが結合した商標にあっては、それが成語、熟語、或いは固有の意味合いを有する合成語(東京タワー、東京音頭、東京物語等)である場合には、全体としての識別力を認めるとともに一連一体での観念のみが認定され得るが、「東京歩行者」などと言った結合語は、成語とも熟語とも言えず、また、意味不明瞭で一般的に通用する合成語でもない(なお、「TokyoWalker」の英綴りからは「東京を散歩する人」などと言った意味は生じない。)。仮に、本件商標を看取又は聴取した取引者、需要者が「東京歩行者」又は「東京を散歩する人」の意味合いを認識する場合があるとしても、被請求人が使用する「タウン情報誌」の商標であればともかく、少なくとも「被服」について使用された場合、被服業界における「Tokyo/東京」の文字の前記諸事情を考慮すれば、当業界における取引者、需要者が必ず「東京歩行者」又は「東京を散歩する人」と認識するとは到底言えず、寧ろ構成中の「Walker」の文字部分より「歩行者」を観念することの方が多いであろうことは容易に推認されるところである。
なお、被請求人は、「東京」「Tokyo」を付することによって非類似と認定された先例の存在を根拠に、本件商標と引用商標との非類似性を主張するものであるが、これら先例と本事案とでは、商標の構成、態様、商品、業界事情等々の具体的な諸事情が異なり、直ちに参考となるものではない。被請求人の論拠によれば、「『被服』を指定商品とする場合であっても、比較する両商標は地名である『東京』又は『Tokyo』の文字の有無によって非類似となる。」と言うこととなるのであるが、少なくとも指定商品が「被服」である場合にはこれとは逆の原則が採られており、このことは、請求人関係者の出願「TokyoWalker:第25類」に対し、引用A商標「ウォーカー」及び引用B商標「WALKER」が類似商標として引用されていることからも明らかである。
そして、個別具体的な事情の相違によって類否の結論が異なることは、被請求人自身も乙第5号証の3において、「商標『NightWalker』が登録されていることと、本件商標『TokyoWalker』と『投稿ウォーカー/Walker』とが類似するか否かということとは関係しない(債権者主張書面(二)2頁)。」と認めるところである。
上述のとおり、本件商標と引用商標とは、「ウォーカー」の称呼及び「歩行者」観念を共通にする類似の商標で、指定商品「被服」も相抵触するものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第11号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。
(4)商標法第4条第1項第10号について
ア)請求理由の要旨変更について
被請求人は、「無効審判請求の審理においては、証拠の追加は要旨を変更するものとして認められていない。」と主張する。
しかしながら、請求人は無効事由及び引用C商標乃至引用G商標を審判請求時に特定しているのであって、これらの変更又は追加ではなく、単に引用商標の周知性を裏付けるための証拠の追加、或いは証拠の信憑性を高めるための間接証拠の追加が要旨の変更に当たらないことは定説であって、上記被請求人の主張は誤りである。
イ)インターネット情報について
被請求人は、インターネット上での取引の有無を殊更問題としているが、周知性の認定にあっては、使用開始時期、使用期間、使用地域、販売数量等の諸事情を総合的に勘案して判断すべきであり、インターネット上での宣伝や販売実績は、参考とすべき単なる一事実にすぎない。インターネット利用に適するか否かは、使用者の業態(小売業・卸売業・製造業の別、等)、商品の種別や特質、或いはターゲットユーザー等々の条件によって異なり、インターネット上で使用されていない商標は、周知商標と認めることはできないとする被請求人主張は暴論と言うほかない。
しかも、周知性の認定は、本件商標の出願日又は査定日を基準としてなされるべきもので、今ほどにインターネット取引が普及していなかった当時にあって、インターネット上で該商標が使用されていたか否かなどと言うことは、本事案における周知性の認定に当たって参考の足しにもならない事情である。
ウ)周知の程度について
商標法第4条第1項第10号でいう「需要者の間に広く認識されている商標」とは、最終消費者まで広く認識されている必要も全国的に認識されている必要もなく、取引者の間で広く認識されている商標、一地方で広く認識されている商標であってもよい。
別掲に示した引用C商標ないし引用G商標は、請求人が昭和43年から現在に至るまで紳士用衣料品に永年使用継続している主力商標で、請求人とこれら引用C商標ないし引用G商標の関係は、本社ビルや関連施設等に社名代わりに表示していること等と相まって、昭和50年代には、繊維衣料品業者の集中する神田岩本町、横山町、馬喰町界隈では極めて著名となっており、また、全国的にも既に多くの量販店(高島屋、イトーヨーカ堂、長崎屋、伊勢丹、ジャスコ等)及び専門店(約750店)に対する納品実績から当業界では広く認識されるに至っていた。
更に、1996年からは、グンゼ株式会社が請求人とのライセンス契約に基づき「ストッキング、タイツ、ソックス」について使用を開始し、全国の取引者、需要者間により一層広く認識されるに至った。
被請求人は、被請求人発行の「雑誌」はファッション、エンターテイメント等の幅広い分野の情報誌であるとし、殊更「ファッション/被服」を強調するが、ファッション情報が全く掲載されていないとは言わないが、所謂「ファッション情報誌」ではなく所謂「タウン情報誌」であって、被請求人提出の乙第5号証の5においても「(ウォーカーシリーズ)はいずれも、花見、花火、海、プール、レストランなど若者の外出先となるものを各号ごとに特集を組むほか、『イベント&タウン情報』『ビデオ情報』『ゲーム情報』『音楽情報』『演劇情報』『アート情報』『スポーツ情報』『TVエアチェック情報』など、若者に感心を持つテーマ毎に情報を収集して読者に提供するものである(債権者主張書面(四)3頁)」と、被請求人自身が自認するところである。
現在、「TokyoWalker」が被請求人発行の「タウン情報誌」の商標としてある程度の著名性を獲得していることを否定するものではないが、商品「被服」に関し全く関係も実績もない被請求人と、大正6年(1917年)以来一貫して繊維被服業界において事業展開してきた請求人との当業界での関わり合いの圧倒的な差を考えれば、少なくとも、当業界取引者間においては、請求人が商品「被服」について使用する商標「Walker/ウォーカー」の方がより周知であることは確かであり、まして、判断基準日である出願(平成6年)又は査定(平成9年)当時にあっては、疑問の余地のないところである。
上述のとおり、本件商標は、引用C商標乃至引用G商標と類似するもので、商品「被服」を共通するものであるから、商標法第4条第1項第10号の規定に違反して登録されたものであることは明らかである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「結論同旨の審決を求める。」と答弁し、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標「TokyoWalker」の著名性について
本件商標「TokyoWalker」は、雑誌「TokyoWalker」の商標と同一である。雑誌「TokyoWalker」は、ファッションから工ン一タテイメントまでの各情報を紹介する総合情報誌として被請求人が全国規模で発行する雑誌である。被請求人は、雑誌「TokyoWalker」を、「東京ウォーカー」、「TokyoWalker」又は「東京ウォーカー/TokyoWaker」の態様により、1990年から発行を開始し、現在に至るまで継続し発行している。その結果、新聞、雑誌、インターネット及び公的機関の調査レポート等の媒体で多数紹介されているように、商標「TokyoWalker」は、被請求人が発行する雑誌の商標として全国的に周知著名に至っている(乙第1証の1ないし乙第3号証の3及び乙第6号証の1ないし乙第8号証の2)。
被請求人は「TokyoWalker」の他にもその姉妹品として「KansaiWalker」「YokohamaWalker」等の「地名+Walker」(以下「TokyoWalker」等という。)の雑誌を発行しており、雑誌「TokyoWalker」にとどまらず雑誌「地名+Wa lker」として全国的に周知著名に至っている(乙第1号証の1ないし乙第3号証の3及び乙第6号証の1ないし乙第8号証の2)。また、雑誌「TokyoWalker」等が著名であること、すなわち商標「TokyoWalker」等が被請求人が商品「雑誌」に使用する商標として全国的に著名であることは、過去になされた特許庁及び裁判所の判断からも裏付けられている(乙第4号証の1ないし乙第5号証の7)。
なお、「TokyoWalker」等が総合情報誌として提供する情報の対象には、ファッション、エンターテイメント等の幅広い分野が含まれている。そのため、その著名性は「雑誌」にとどまらず「被服」「趣向品」等の幅広い商品・役務に及ぶ「TokyoWalker」等ブランドとして認められているものと思料する。したがって、「TokyoWalker」等ブランドは、「雑誌」「被服」等の幅広い分野の商品及び役務について、その著名性に基づく高い業務上の信用が化体し高い顧客吸引力が発生している。このような状況のもと、被請求人以外の第三者が「TokyoWalker」等ブランドを使用する行為は、商品・役務の出所の混同を生じるだけでなく、「TokyoWalker」等ブランドの著名性に基づく信用及び顧客吸引力をフリーライドする不正競争行為を構成する。したがって、被請求人以外の第三者が商標「TokyoWalker」等を出願すれば、その出願は商標法第4条第1項第15号及び第19号等に該当し拒絶されなければならい。
(2)本件審判請求を含む請求人の諸手続について
上記(1)に示した状況下において、請求人は本件無効審判を請求する前に、本件商標に対して商標登録の不使用取消審判(乙第14号証の1)を請求し、これに対応するように本件商標と同一の商標「TokyoWalker」を本件指定商品と同一の範囲で商標出願(乙第15号証)をしている。 このうち審判請求は.その答弁書及び弁駁書の内容からも明らかなように、被請求人が所有する「TokyoWalker」等ブランドの著名性及びこの著名性に基づく顧客吸引力をフリーライドする意図が明らかであり、被請求人の利益を害する目的でなされたものである(乙第14号証の1ないし乙第14号証の4)。
したがって、この取消審判の請求は権利の濫用に相当するものであって、審判請求をする正当な理由がない。そして、この取消審判に対応してなされた商標登録出願は、このような権利の濫用に相当する審判請求と密接な関係にあり、しかも、出願人(請求人)自らが認めるとおり出願人(請求人)は本願商標を使用する意志がなく、本出願は当初から出願人名義を変更することを前提になされたいわゆるダミーの出願である(乙第17号証の1ないし乙第18号証の3参照)。したがって、本出願には、上記審判請求と併せて、悪意の意図が介在していることは明らかであり、このような商標法の目的に著しく反する出願は即刻拒絶されなければならない。なお、上記審判請求及びこれと密接に関連する上記出願が悪意の目的でなされたことの詳細は、上記取消審判の提出書類及び本出願の提出書類に記載したとおりである(乙第14号証の1ないし乙第15号証)。
被請求人は、上記取消審判請求がなされるはるか前から現在に至るまで、商標「TokyoWalker」等を「雑誌」について継続的に使用している(乙第9号証の1ないし乙第11号証の7)。また、「TokyoWalker」等ブランドの著名性及び顧客吸引力に基づくライセンス事業を展開するため、その他の「被服」等については継続的に使用の準備をしている(乙第12号証の1ないし乙第13号証の8)。なお、被請求人が商標「TokyoWalker」等ブランドを正当に使用ないし使用の準備をしていることは、「TokyoWalker」等ブランドに関する使用状況を示す書面(乙第9号証の1ないし乙第11号証の7)及びライセンス契約に関する書面(乙第12号証の1ないし乙第13号証の8)に明示されているとおりである。
しかしながら、上述の悪意の審判請求及び出願が係属しているため、「TokyoWalker」等ブランドの正当なライセンス事業が延期を余儀なくされている。このような状況下において新たに本件無効審判が請求されたものであり、本件無効審判請求も上記取消審判及び商標登録出願と同じく悪意の目的でなされたものであることは明らかである。
次に、本件審判請求がなされたことによって被請求人側に発生した損害について説明する。上述の取消審判の答弁書において説明するように「TokyoWalker」等ブランドのライセンス事業については、本件審判請求が未確定であることを原因としてその実行が延期された。この延期による損害は億単位のものであって甚大なものである。被請求人としてはライセンシーに対して商標の使用を保証する責務があることから、ライセンシー側からの延期要請に同意せざるを得ない状況が続いている。このような状況下でも、後に説明するように他の事業者からの商標の使用申し込みは続いている。 しかしながら、本件審判請求の存在と商標の使用保証をすることができないことが原因となって、新たな事業展開も差し控えざるを得ない状況になっており、著しい損害が発生しているのが実状である。
なお、請求人は、本件商標登録を無効にすることが真の目的であって、本件商標を使用する意思がないと主張しているように窺える。しかしながらダミー出願(乙第15号証)の名義変更の意思を考えれば、請求人が著名商標「TokyoWalker」等を使用する意思があることは明白である。後述のとおり本件商標とは非類似の引用商標を所有している請求人が、あわよくば「TokyoWalker」等を自分のブランドとし、最悪の場合でも本件商標登録を取り消すことによって、「TokyoWalker」を自由に使用できるようにしようとする悪意の意思が存在していることは明らかである。本件商標登録の無効請求は、このような悪意の請求人に著名商標のフリーライドを認めることになるので、商標法の精神からしても到底認められるものではない。
なお、帝国データバンクの企業情報の売上高(乙第19号証の1及び乙第19号証の2)見ても明らかなように、請求人の行為は被請求人の売上げないし集客力をフリーライドするものであることは明らかであり、商標法の適用を待つまでもなく、公序良俗に反するものであると言わなければならない。
(3)商標法第4条第1項第11号について
請求人は、「本件商標の登録は、先願先登録に係る引用商標と類似し、指定商品においても相抵触するものであるにもかかわらずなされたものであるから、商標法第4条第1項第11号の規定に違反する」と主張している。しかしながら、この請求人の主張には誤りがある。本件商標は、やや大字のアルファベットが一連一体に表記された「TokyoWalker」を外観とする商標である。また、「TokyoWalker」を音読すると「トーキョーウォーカー」となるため、本件商標からは「トーキョーウォーカー」の称呼が発生する。また、「Tokyo」は、日本の首都である「東京」を英語で表記したものであり「Walker」は「歩行者」「散歩する人」等を意味する英単語であるため、本件商標「TokyoWalker」からは「東京歩行者」「東京を散歩する人」等の観念が生じる。
これに対して引用A商標はカタ力ナの「ウォーカー」を外観とし、引用B商標はアルファベットの「WALKER」を外観とする商標である。また、引用商標ともに音読すると「ウォーカー」となるため、引用商標からはいずれも「ウォーカー」の称呼が発生する。さらに、「WALKER」は「歩行者」等を意味する英単語であり、「ウォーカー」は「WALKER」を音読したものを片仮名で表記したものであるため、引用商標からは、いずれも「歩行者」「散歩する人」等の観念が発生する。
本件商標と引用商標とを対比すると、まず外観については、本件商標がアルファベットの「TokyoWalker」を商標の要部として一連一体に構成されているのに対して、引用A商標はアルファベットの「WALKER」を商標の要部として構成され、引用B商標は片仮名の「ウォーカー」を商標の要部として構成されている。したがって、本件商標と引用商標とは外観において全く異なるものである。
また、称呼について対比すると、本件商標からは「トーキョーウォーカー」の称呼のみが発生するのに対して、引用商標からはいずれも「ウォーカー」の称呼が発生する。しかし「トーキョーウォーカー」の称呼と「ウォーカー」の称呼とは、「トーキョー」の音の有無という明確な相違があり、またこれらの称呼は需要者に全く異なる印象を与えるものである。したがって、本件商標の称呼と引用商標の称呼とは需要者が混同することのない別異のものである。
また、観念について対比すると、本件商標からは「東京歩行者」「東京を散歩する人」等の観念が生じるのに対して、引用商標は、いずれも「歩行者」「散歩する人」等の観念が生じる。しかし、両商標の観念は需要者に異なる観念を想起させるものである。
したがって、本件商標の観念と引用商標の観念とは全く別異のものとなる。
よって、本件商標と引用商標とは、類否判断の要素である外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違するものであり、本件商標と引用商標とは客観的に非類似である。
本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものでないことは、既登録商標の併存及び確定審決等の存在からも裏付けられている。
乙第20号証の1ないし乙第24号証の9は登録商標の書誌情報の写しである。このうち、登録商標「東京ミュウミュウ」「TOKYO ISM」「TOKYOLION」等はいずれも前方に「東京」「TOKYO」等の「トーキョー」の称呼を生じる登録商標「東京***」「TOKYO***」である(乙第20号証の1ないし乙第20号証の9)。これに対して登録商標「MEAW‐MEAW」「ISM/イズム」「LION」等は、登録商標「東京***」「TOKYO***」の後方を構成する文字からなる登録商標***」(乙第21号証の1ないし乙第21号証の9)である。これらの事実は、登録商標「TOKYO***」と登録商標「***」とは相互に非類似の商標として現在も有効に併存していることを示すものである。
また、登録商標「ウォーカー」「WALKER」「ウォーカー/WALKER」等(乙第24号証の1ないし乙第24号証の9)に対して、被請求人名義の登録商標「TokyoWalker」「東京ウォーカー/TokyoWalker」(乙第22号証の1ないし乙第23号証)が、同一又は類似の商品又は役務について相互に非類似の商標として有効に併存している。
さらに、被請求人名義の登録第4446393号商標「東京ウォーカー/Tokyo Walker」(乙第22号証の3)の異議申立事件において、登録商標「東京ウォーカー/Tokyo Walker」と引用登録商標「WALKER」とが非類似であることを理由に、乙第号証の商標登録の維持決定が確定している(乙第25号証)。この他にも、商標「地名***」と商標「***」とが相互に非類似であるとの審決及び異議決定が確定していること証明する審決公報及び異議決定公報が存在する(乙第26号証の1ないし乙第26号証の3)。
なお、商標「TokyoWalker」「東京ウォーカー」と商標「ウォーカー」「WALKER」との類否判断ないし商標「地名Walker」「地名ウォーカー」と商標「ウォーカー」「WALKER」との類否判断において、商品又は役務を区別する特段の理由はないと思料する。
以上のとおり、本件商標と引用商標とは客観的に非類似であり、本件商標と引用商標とが非類似であることは過去になされた特許庁の審査、審判等からも裏付けられている。よって、本件商標が商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたとの請求人の主張には誤りがある。
(4)商標法第4条第1項第10号について
請求人は、「本件登録商標の登録は、他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似し、その商品と同一又は類似する商品を指定商品としてなされたものであるから、商標法第4条第1項第10号の規定に違反する。」と主張している。
しかしながら、この無効審判請求書には、商標法第4条第1項第10号に関する証拠は何ら添付されておらず、無効審判請求の審理においては証拠の追加は要旨を変更するものとして認められていないため、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当しないことは明らかである。
被請求人は、請求人が主張するような引用商標の周知性を確認するため、「福岡繊維工業株式会社」が「ウォーカー」「WALKER」をどの程度使用しているかをインターネット及び新聞記事検索データベースを用いて検索した。その結果、インターネット上でヒットしたのはわずか1件であり、しかもこの1件は本人のホームページ上ではなく第三者のホームページ上で紹介されているものであった(乙第27号証)。また、新聞記事検索データーベース上では全くヒットしなかった(乙第28号証及び乙第29号証)。これらの事実は、商標「TokyoWalker」等ブランドが被請求人「株式会社角川書店」の商標としてインターネット上及び新聞記事上で多数紹介されている事実(乙第6号証の1ないし乙第8号証の2)と極めて対照的である。もし、引用商標が周知であれば、新聞及びインターネットが一般に普及した現在においては、被請求人の「TokyoWalker」等のブランド件数がある程度新聞及びインターネット紹介されているはずである。にもかかわらず、引用商標は、新聞記事上及びインターネット上で紹介された事実は全くないに等しい。このように、新聞記事はおろかインターネット上でも使用されていないに等しい商標が周知であるとは到底認めることはできない。したがって、引用商標が「需要者の間に広く認識さている商標」でないことは明らかである。
また、上述のとおり、商標「Walker」「ウォーカー」と商標「TokyoWalker」とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても相違することは過去になされた特許庁の審査及び審判等でも支持されている。したがって、本件商標と引用商標とは明らかに非類似である。
以上の理由から、引用商標は周知ではなく、かつ引用商標と本件商標とは非類似であるため、本件商標が商標第4条第1項第10号に違反して登録されたとの請求人の主張は誤りである。

5 当審の判断
本件商標は、「TokyoWalker」の欧文字を横書きしてなるところ、書された文字は、同じ書体、同じ間隔で、まとまりよく一体的に表されているものであるから、外観上一体として把握し得るものである。
また、「TokyoWalker」より生ずる「トーキョーウォーカー」の称呼も、よどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに、殊更、これを「Tokyo」と「Walker」の文字部分に分離して、称呼、観念しなければならないとする特段の事情が存するとも認められないものである。
そうとすれば、本件商標構成中の「Tokyo」の文字部分が我が国の首都名及び産地・販売地名を表す語として使用される場合があるとしても、かかる構成においては、商品の生産地、販売地等を表示したというよりは、需要者間に、全体をもって一体不可分の構成の商標と認識し、把握されるものとみるのが自然である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体に相応して「トーキョーウォーカー」の一連の称呼と「東京を散歩する人」の如き観念を生ずる商標であると判断するのが相当である。
他方、引用A商標ないし引用G商標は、「ウォーカー」及び「WALKER」の各文字よりなるものであるから、これよりは、いずれも「ウォーカー」の称呼と「歩行者」の観念を生じさせるものである。
そして、本件商標より生ずる「トーキョーウォーカー」の称呼と引用A商標ないし引用G商標より生ずる「ウォーカー」の称呼とは、語頭部において「トーキョー」の音の有無という顕著な差異を有するものであるから、称呼上十分聴別し得るものである。
また、本件商標と引用A商標ないし引用G商標とは、それぞれ上記したとおりの構成よりなるものであるから、外観上判然と区別し得る差異を有し、観念上も明らかに相違するものである。
してみれば、本件商標と引用A商標ないし引用G商標とは、称呼、外観及び観念のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標と認められるものである。
(なお、平成14年9月9日付け提出の弁駁書は、請求の要旨を変更するものであるから、商標法第56条で準用する特許法第131条第2項により証拠として採用することができないが、当該書面に記載の請求人の主張を参酌しても、引用C商標ないし引用G商標の周知事実を認定することはできない。)
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第10号の規定に該当するものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効にすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(a)引用C商標

(b)引用D商標

(c)引用E商標

(d)引用F商標

(e)引用G商標

審理終結日 2003-02-28 
結審通知日 2003-03-05 
審決日 2003-03-18 
出願番号 商願平6-88794 
審決分類 T 1 12・ 262- Y (025)
T 1 12・ 25- Y (025)
T 1 12・ 263- Y (025)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 岩浅 三彦箕輪 秀人 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 井岡 賢一
柳原 雪身
登録日 1997-05-09 
登録番号 商標登録第3302571号(T3302571) 
商標の称呼 トーキョーウオーカー 
代理人 野原 利雄 
代理人 西浦 嗣晴 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ