• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z353842
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z353842
管理番号 1085223 
審判番号 無効2002-35416 
総通号数 47 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-11-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-10-01 
確定日 2003-09-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4554391号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4554391号商標(以下「本件商標」という。)は、標準文字による「e-mama」とする構成からなり、指定役務を第42類「飲食物の提供」ほか、第35類、第38類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の役務を指定役務として、平成12年8月30日に登録出願、平成14年3月22日に商標権の設定登録がされたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第3037670号商標(以下「引用商標」という。)は、後掲のとおり、赤で彩色し影を付けて立体的に描いた「マ・マー」とする構成からなり、第42類「スパゲッティその他のイタリア料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として、平成4年9月23日に登録出願、平成7年4月28日に商標権の設定登録がされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標は、指定役務中『飲食物の提供』についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番を含む。)を提出している。
<請求の理由>
本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号に該当し、同法第46条第1項第1号により、指定役務中「飲食物の提供」についてその登録を無効にすべきものである。
1.商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標は、請求人所有に係る引用商標と類似しており、その指定役務も類似するものである。
(1) 称呼上の類似
本件商標は、上記のとおり「e-mama」と横書きしてなるが、「e」と「mama」のとの間にはハイフン記号「-」を有する関係から、外観上「e」と「mama」とに容易に分離されるものである。さらには、「e-mama」全体で一体の熟語を形成するものでないから、「e」と「mama」の観念上の結びつきも貧弱であるといわざるを得ない。その他、「e-mama」が常に一体不可分に称呼、観念されるべき特段の事情も見当たらない。
したがって、簡易迅速を尊ぶ取引業界においては、「e-mama」の文字部分に照応した「イーママ」「イーママー」「イーマーマ」の称呼の他、単に「mama」の文字部分に照応した「ママ」「ママー」「マーマ」の称呼をもって実際の取引きに当たることも少なくないものと認められる。
なお、「mama」から「ママー」「マーマ」の称呼が生じることは明らかである(株式会社研究社発行「新英和・和英中辞典」)。
よって、本件商標からは単に「ママ」「ママー」「マーマ」の称呼をも生じるものである。
一方、引用商標は、後掲のとおり、図案化した片仮名により「マ・マー」と横書きしてなるものであり、該文字に照応した「ママー」の称呼が生じること明らかである。
したがって、本件商標及び引用商標からは共に「ママー」の称呼が生じるものであるから、両商標は称呼上類似の商標である。
さらには、仮に本件商標中の「mama」の文字部分からは「ママ」の称呼のみが生じるとしても、引用商標から生じる「ママー」の称呼とは「ママ」の2音を共通にし、両者の差異は語尾における長音「一」の有無といった微差にすぎないものである。そして長音は前音「マ」の母音(a)の余韻として残る程度の弱い音であるから、両者をそれぞれ一連に称呼するときには、全体の語調語感が近似したものとなり、両者は相紛れるおそれがあるものといわざるを得ない。
(2) 観念上の類似
本件商標「e-mama」は全体で一体の熟語を形成するものでなく、「e」と「mama」とに容易に分離されうるものであること上述(1)のとおりである。したがって、本件商標からは「mama」の文字部分に照応して、「ママ、お母さん」の観念が生じるものである。
一方、引用商標「マ・マー」からも「ママ、お母さん」の観念が生じるものであり、よって、本件商標と引用商標とは観念を共通にする類似の商標である。
(3) さらには、引用商標「マ・マー」は家庭の中心で台所の主役「ママ」を子供が呼ぶときの呼称から採択されたものであり、請求人による永年の使用、強力な広告、宣伝等による使用の事実の結果、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして取引者・需要者間に広く認識されているものである。
本件においては、上記のような事情をも十分考慮した上で類否判断がなされるべきであって、その場合には、称呼上類似であり、観念上も「ママ、お母さん」の観念を共通にする本件商標と引用商標とは互いに相紛れるおそれが多分に存するものといわなければならない。
(4) 指定役務の類似
引用商標は、上記のとおり「スパゲッティその他のイタリア料理を主とする飲食物の提供」を指定役務とするものである。
一方、本件商標の指定役務は、上記のとおりであるから、その指定役務中「飲食物の提供」は引用商標の指定役務と同一又は類似の役務である。
2.商標法第4条第1項第15号該当について
本件商標がその指定役務中「飲食物の提供」に使用されるときは、あたかもこれが請求人の業務に係る役務であると、或いはまた請求人と何らかの関係を有するものの業務に係る役務であると誤認混同を生ぜしめるおそれがあるから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(1) 商標「マ・マー」の生い立ち並びに使用商品等
請求人は、昭和30年1月14日に「日本マカロニ株式会社」として発足し、マカロニ、スパゲティ等の製造・販売を開始したものである(甲第5号証)。商標「マ・マー」は請求人会社設立当初より採択された請求人の基本商標であり、デザインに多少の変化はあるが、請求人製造・販売に係る商品について現在まで継続して使用しているものである。
請求人は、昭和39年8月28日に社名を現在の「マ・マーマカロニ株式会社」に変更したが、これはいうまでもなく請求人の基本商標である「マ・マー」に社名を一致させたことによるものである。
以来、商標「マ・マー」は請求人製造・販売に係る商品には必ず表示されている(甲第5号証中、「主要製品」の頁(昭和60年当時)、甲第6号証中第17頁)。
また、請求人は、商標「マ・マー」について、「マカロニ、スパゲティ」が含まれる「穀物の加工品」等を指定商品として複数登録を得ている(甲第7号証ないし甲第9号証)
(2) 商標「マ・マー」の著名性
請求人及び商標「マ・マー」が商品「マカロニ、スパゲティ」について著名であることは顕著な事実と思料するが、例えば、平成9年10月11日付日経流通新聞1面には「ブランド力は『マ・マー』」との記事が掲載されている(甲第19号証)。
また、甲第20号証は、シェア調査専門機関であるSCI(株式会社社会調査研究所)による、1995年から1999年においての「マ・マー」ブランド単品容量シェアの一覧であるが、ここから「マ・マー」ブランド商品は1995年及び1996年のパスタソースを除いて、ロングパスタ、ショートパスタ(マカロニ)、パスタソースのいずれにおいても競合他社をしのぎトップのシェアを誇っている。
甲第21号証は、株式会社インテージ(旧社名:株式会社社会調査研究所)による2000年度及び2001年度におけるマカロニ、スパゲティ、マカロニとスパゲティの合計、パスタソース、グラタン、ゆでスパゲティの6部門についての企業別シェア調査結果であって、「マ・マー」ブランド商品はグラタンを除く全ての部門においてトップのシェアを誇っていることが明らかである。
このように、請求人はパスタ業界一位のシェア率を有し、商標「マ・マー」も業界一位の認知率を誇っているものである。
甲第22号証は、商標「マ・マー」が実際に表示されたテレビCM放送を対象とした、2002年5月分のテレビスポット放送確認書である。このように、商標「マ・マー」は日本全国において盛大に宣伝広告されているのである。なお、今回提出した甲第22号証は2002年5月分のみであるが、商標「マ・マー」に関する宣伝広告活動はテレビCMなどにより長年に亘り継続してなされているものである。
以上のとおり、「マ・マー」は商品「マカロニ、スパゲティ」について著名となっているものである。
商品「マカロニ、スパゲティ」における請求人及び商標「マ・マー」の著名性はそのまま役務「飲食物の提供」等の、飲食物に関連した役務との関係においても直結する。
(3) 「飲食物の提供」についての商標「マ・マー」の使用状況・実績等
請求人の関連会社である「マ・マーフーズ株式会社」は請求人商品のアンテナショップとして、昭和41年にスパゲティ料理店「サンレモ」を出店している(甲第10号証)。以来、計11店舗を出店、平成14年現在で5店舗存在するが(甲第11号証)、各店舗においても商標「マ・マー」が実際に使用されている。
上述のとおり、請求人及び商標「マ・マー」は商品「マカロニ、スパゲティ」との関係において著名であって、この著名性は「飲食物の提供」との関係においても直結するものであるが、さらにスパゲティ料理店「サンレモ」による商標「マ・マー」の使用により、「飲食物の提供」との関係における商標「マ・マー」の著名性はより強化されているということができる。
甲第12号証は、スパゲティ料理店「サンレモ」の店舗の写真である。古くは昭和60年(1985年)4月に撮影されたものから、最近では平成14年(2002年)5月17日に撮影されたものがあり、ここから、店舗の看板に商標「マ・マー」が継続して使用されていることが明らかである。
甲第13号証は、スパゲティ料理店「サンレモ」のメニューである。古いものから現在使用しているものまで数種類存在するが、すべてに商標「マ・マー」が使用されていることから、「マ・マー」が継続して使用されていることが明らかである。
甲第14号証は、スパゲティ料理店「サンレモ」のパンフレットである。同パンフレットに商標「マ・マー」が使用されており、また、サンレモ各店舗の場所等が記載されている。
甲第15号証は、スパゲティ料理店「サンレモ」各店舗で現在使用されているレシートの写し、甲第16号証は伝票の写しである。ここにも商標「マ・マー」が使用されている。
甲第17号証は、平成8年(1996年)にスパゲティ料理店「サンレモ」出店30周年記念として実施された、スタンプラリー広告用のパンフレットの写しであり、甲第18号証は、インターネット上のウェブサイトにおける「サンレモ」池袋店のサイトページの打ち出しである。
スパゲティ料理店「サンレモ」はこのような宣伝広告を行っていると共に、「マ・マースパゲテイーの店」「マ・マーパスタ」といった形で商標「マ・マー」を実際に使用している。
以上のとおり、商標「マ・マー」は「飲食物の提供」について実際に使用されている商標であって、取引者・需要者間に広く認識されているものである。
このような状況において引用商標並びに商標「マ・マー」に類似する本件商標がその指定役務中「飲食物の提供」について使用されるときは、これに接する需要者、取引者は当該役務を請求人の業務に係る役務であると、或いはまた請求人と何らかの関係のある者の業務に係る役務であると誤認混同するおそれが多分に存し、請求人の長年に亘る営業努力の結果、商標「マ・マー」に化体した信用・顧客吸引力を容易に損なうことは明白である。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、答弁するところがない。

第5 当審の判断
本件審判において、請求人の概ね述べ主張するところは、本件商標の構成中、「mama」の文字部分をもって取引に当たる場合も少なくない。したがって、本件商標は、該文字に照応して、単に「ママ」「ママー」「マーマ」の称呼、及び「ママ、お母さん」の観念が生じ、引用商標とは類似するものであって、また、請求人にかかる商標「マ・マー」は著名なものであり、これと誤認混同するおそれがあるとして、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に該当する無効理由が存在するというものであるから、その当否について判断する。
1.商標法第4条第1項第11号該当について
本件商標は、その構成前記のとおり「e-mama」の文字よりなるところ、構成中にハイフン記号を含むものとはいえ、標準文字(同じ書体、同じ大きさ)で等間隔に表されていて、外観上纏まりよく一体的に看取し得るばかりでなく、これより生ずる「イーママ」の称呼も一気一連に称呼し得るものであり、かつ、これよりは、何らの特定の意味合いを看取し得ない一種の造語と認識し把握されるものというべく、常に、構成文字を一体的に看取し、前記一連の称呼のみをもって取引に資される固有の商標とみるのが自然である。
一方、引用商標は、その構成後掲のとおり「マ・マー」の文字よりなるから、「マ」と「マー」の間に僅かな段落をもって「マ マー」の称呼が生ずるものである。また、商標「マ・マー」は、パスタ類の製造販売会社のブランドないし略称として著名なものであって、その観念を認識させるものであり、さらに、お母さんをイメージさせるパッケージの図形や宣伝広告などより、その採択・使用の意図が「ママ、お母さん」にあるとみて差し支えないから、その観念をも生ずるといえる。
そこで、本件商標から生ずる「イーママ」の称呼と、引用商標より生ずる「マ マー」の称呼とを比較するに、両者はその構成音数、音の配列等を著しく異にするものであるから、それぞれを一連に称呼したとしても、全体の語調、語感が異なり、互いに聞き誤るおそれはないものである。
また、本件商標と引用商標は、前記ないし後掲のとおりの構成文字よりなるものであって、その外観において判然と区別し得るものであり、そして、本件商標は特定の意味合いを有しないものであるから、観念においては比較すべくもない。そのほか、引用商標の著名性を考慮した上で類否判断しても、両商標を類似のものとすべき事由は見出せない。
そうすると、本件商標は、引用商標とその外観、称呼及び観念のいずれの点よりみても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であるから、その指定役務の類否について判断するまでもなく、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとはいえない。
請求人は、本件商標の構成におけるハイフン記号「-」の介在等の理由によって、本件商標からは、単に「ママ」「ママー」「マーマ」の称呼、及び「ママ、お母さん」の観念が生じるとし、その上で両者の類似を述べている。しかしながら、「e-mama」の文字よりなる本件商標をその指定役務中の「飲食物の提供」に使用した場合について想定し考察するも、本件商標のかかる構成にあっては、直ちに該称呼及び観念を生ずるとする合理的な理由とはいい難いものであり、他にこれを認め得る事由は見出せないから、その主張は妥当でなく、採用できない。その他、前記認定を覆すに足りる証拠はない。
2.商標法第4条第1項第15号該当について
請求人は、商標「マ・マー」について、請求人が商品「マカロニ、スパゲティ」について、長年継続使用し、かつ、広く宣伝、広告した結果、著名となっているものであって、その著名性はそのまま役務「飲食物の提供」等の、飲食物に関連した役務との関係においても直結するものであり、さらに、請求人の関連会社である「マ・マーフーズ株式会社」が請求人商品のアンテナショップとして、スパゲッティ料理店「サンレモ」を出店し、その料理店の使用により、商標「マ・マー」の著名性はより強化されているとし、商標「マ・マー」は、請求人の業務に係るものであることが取引者、需要者間で広く認識されているものであるから、引用商標並びに商標「マ・マー」に類似する本件商標がその指定役務中「飲食物の提供」について使用される場合、請求人等の業務に係る役務であると誤認混同するおそれがある旨主張している。
しかしながら、本件商標と商標「マ・マー」とは、前示認定のとおりその外観、称呼及び観念のいずれよりしても判然と区別し得る非類似の商標というべきであって、ほかに両者を誤認混同し相紛れ得るとする事由は見出せない別個の商標であること、すなわち、本件商標は、構成上一体的に看取され、これより「mama」の文字部分を捉えて、単に「ママ」の称呼をもって取引に資されないこと、さらに、本件商標の係る構成中の「mama」の文字部分がパスタ類の製造販売会社の著名な商標として使用される「マ・マー」とその態様を異にすることを合わせみれば、本件商標をその指定役務について使用しても、たとい請求人に係る商標「マ・マー」が我が国の需要者等において「マカロニ、スパゲティ」の商標として、また、パスタ類を主力製品とする我が国における著名な製造販売会社である請求人を表示するものとして広く認識されることが認められるとしても、これに接する需要者等の商取引における一般の注意力をして、引用商標並びに商標「マ・マー」ないし請求人であるパスタ類の製造販売会社を想起するものといえないから、結局、本件商標は、請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、その指定役務中「飲食物の提供」について使用しても、請求人又は請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、その役務について混同を生ずるおそれは認められない。
3.結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものではなく、その登録は同法第46条第1項第1号により無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 <後 掲>
引用商標


審理終結日 2003-07-31 
結審通知日 2003-08-05 
審決日 2003-08-18 
出願番号 商願2000-95297(T2000-95297) 
審決分類 T 1 12・ 271- Y (Z353842)
T 1 12・ 26- Y (Z353842)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内藤 順子 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 高野 義三
和田 恵美
登録日 2002-03-22 
登録番号 商標登録第4554391号(T4554391) 
商標の称呼 イイママ、イーママ、エママ、ママ 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 岸田 正行 
代理人 水野 勝文 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ