• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 122
管理番号 1081775 
審判番号 審判1998-35465 
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-09-30 
確定日 2003-08-09 
事件の表示 上記当事者間の登録第2582891号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2582891号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第2582891号商標(以下「本件商標」という。)は、平成1年9月12日登録出願、商標の構成を別掲(1)に示すとおり、上下二段に表した「valentino」、「orlandi」の各欧文字とし、指定商品を第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」として、平成5年9月30日に設定の登録がされたものである。

2 引用商標
請求人が本件商標の商標法第4条第1項第11号該当の理由に引用する登録第1786820号商標(以下「引用A商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、昭和60年6月25日に設定登録、その後、平成7年8月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
また、請求人が本件商標の商標法第4条第1項第15号該当の理由に引用する登録第852071号商標(以下「引用B商標」という。)は、別掲(3)に表示したとおり、「VALENTINO」の文字を肉太に横書きしてなり、昭和43年6月5日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和45年4月8日に設定登録、その後、同56年3月31日、平成2年6月27日及び同12年4月4日の三回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第1415314号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)布製身回品(他の類に属するものを除く)寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、昭和55年4月30日に設定登録、その後、平成2年5月23日及び同12年4月4日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第972813号商標(以下「引用D商標」という。)は、別掲(4)に表示したとおり、「VALENTINO」の文字を横書きしてなり、オランダ国への1969(昭和44)年10月16日付出願に基づく優先権を主張して、昭和45年4月16日登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録、その後、同57年9月22日及び平成4年12月24日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものであり、当該指定商品中の「かばん類、袋物」については、商標登録の一部放棄を原因とする一部抹消登録が平成2年6月25日になされているものである。
同じく、登録第1793465号商標(以下「引用E商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年7月29日に設定登録、その後、平成7年10月30日に商標権存続期間の更新登録がなされているものである。
同じく、登録第1402916号商標(以下「引用F商標」という。)は、別掲(2)に表示したとおり、「VALENTINO GARAVANI」の文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、同54年12月27日に設定登録、その後、平成1年11月21日及び同12年1月25日の二回に亘り商標権存続期間の更新登録がなされているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第56号証(枝番号を含む。)を提出した。
本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号の規定に違反して登録されたものであるから、その登録は商標法第46条第1項の規定により無効とされるべきである。
(1)商標法第4条第1項第8号の規定違反について
請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」或いは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記の各種商品について使用している者であるが、上記の「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名は単に「ヴァレンティノ」(VALENTINO)と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。
そして、ヴァレンティノ・ガラヴァニは世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。
同氏の名前は「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」とフルネームで表示され、このフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されていたことは、例えば、甲第7号証の1ないし同32、甲第8号証ないし甲第12号証(登録異議の申立てについての決定謄本)をはじめとして、甲第13号証の2、甲第15号証の2及び同3、甲第16号証の2、甲第22号証の2、甲第25号証の3、甲第30号証の2、甲第33号証の2、甲第36号証の2、甲第46号証の2・同3及び同5、そして、甲第48号証(報知新聞)によっても明らかである。
しかるところ、本件商標は、その構成が甲第1号証の1に示すとおりのものであって、その構成文字中、「Valentino」の文字が「ヴァレンティノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されていることは明らかである。
したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第8号の規定に違反してされたものである。
(2)商標法第4条第1項第11号の規定違反について
本件商標と引用A商標とを比較検討するに、本件商標の構成は甲第1号証の1に示すとおりであって、「valentino」及び「orlandi」の欧文字は、その全体を称呼するときは、「ヴァレンティノオルランディ」の10音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく、「ヴァレンティノ」と「オルランディ」の間に段落を生ずるものであり、しかも上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、これに接する取引者、需要者は、その構成文字中、取引者、需要者に親しまれている上段の「valentino」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引にあたる場合も決して少なくないとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。したがって、本件商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるといわざるをえない。
一方、引用A商標がその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは請求人提出の各書証によっても明らかなところであって、引用A商標は、「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァーニ」の称呼を生じ、当該称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAVANI」氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称され、著名なものとなっていることとも相挨って、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資される場合も決して少なくないというのが実情である。すなわち、引用A商標は「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるをえない。
してみると、本件商標は引用A商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は引用A商標のそれと抵触すること明らかであるから、結局、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号の規定に違反してされたものである。
(3)商標法第4条第1項第15号の規定違反について
請求人は上記の引用A商標以外にも、多数の登録商標を使用しており、それら商標、すなわち、引用B商標ないし引用F商標はそれぞれ前述2に示すとおりのものである。
しかして、引用B商標及び引用C商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること、引用D商標及び引用E商標がべルト、その他の身飾品に使用されていること及び引用F商標がライターについて使用されていることは甲第9号証ないし甲第56号証によって明らかであり、しかも、これらの登録商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは甲第9号証(登録異議の申立てについての決定謄本写)ないし甲第56号証によって明らかである。
そして、本件商標と引用A商標が称呼上類似することは上述のとおりであり、引用B商標ないし引用F商標と本件商標もまた称呼上類似する商標であるといわざるを得ない。また、本件商標の指定商品と引用各商標に係る上記商品は何れも服飾品の範疇と密接な関係にある。したがって、本件商標を被請求人(商標権者)が、その指定商品に使用した場合には、当該商品が恰も請求人の製造・販売に係る商品であるか又は同人と経済的あるいは組織的に何等かの関係にある者、すなわち、姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標の登録は商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものである。

4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない(被請求人は、答弁書において答弁の趣旨を「本件登録を維持する」旨記載したものであるが、その答弁の全趣旨よりして標記記載の明瞭な誤りと認め、事実上治癒のあったものと判断し、以下、審理する。)、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)請求人は、本件商標は商標法第4条第1項第8号、同第11号及び同第15号の各規定に違反して登録されたものであるから、商標法第46条の規定により無効とされるべきものであると述べ、その理由として甲第2号証ないし甲第6号証、甲第7号証ないし甲第56号証を挙げている。
しかしながら、請求人の理由には根拠がなく、以下のとおり反論する。
(2)本件商標に関する事情説明
(ア)本件商標の構成
本件商標は、「valentino」の文字と「orlandi」の文字とを横書きにして上下2段に書してなる。構成各文字は同じ大きさで、同じ字体であり、全体としてまとまりよく一体的に表されている。従って、ことさら、構成中の「valentino」の文字部分のみを分離・独立して称呼、観念しなければならないとする特段の事由も認められない。そして、「valentino」の文字は、イタリアのありふれた名前を表し、また、これらの文字を含むイタリアファッション界の著名な「MARIO VALENTINO」等も特定人の氏名を表すものとして、一連に称呼・観念されていることはよく知られている(乙第1号証)。従って、本件商標は「ヴァレンチノオルランディ」とのみ、称呼され、イタリアの特定人の氏名を表しているとの観念を生じさせるものである。
(イ)引用商標の構成
これに対して、請求人は、引用商標として、「VALENTINO GARAVANI」(引用A商標)(甲第2号証、旧第22類)等、「VALENTINO」(引用B商標)(甲第3号証の1、旧第17類)等を挙げているが、引用A商標からは、「バレンチノガラバーニ」の称呼を生じ、引用B商標からは「バレンチノ」の称呼を生ずる。そして「VALENTINO」は、イタリアのありふれた名前を、「VALENTINO GARAVANI」の文字よりは、請求人の述べる様にイタリアの特定人の氏名「バレンチノガラバーニ」或いは、請求人の述べるように「バレンチノ ガラヴァニ」(ただし、日本人には「ヴァ」と「バ」とは区別されない場合が多い)を観念させるというのが相当である。
(ウ)対比
そして、「バレンチノオルランディ」の称呼と「バレンチノガラバーニ」、「バレンチノ」の称呼とは、その構成配列音を著しく異にするものであるから、両商標を称呼上十分に区別して聴取し得るものであり、また、観念においても、いずれも別個の特定人を表すのであり、相紛れることはない。
さらに、本件商標と引用各商標とは、外観においてもその文字構成よりみて、明らかに相違するものである。
従って、本件商標と引用各商標とは、称呼、観念、外観のいずれにおいても相紛れることのない非類似商標である。
(エ)”VALENTINO”を含む多数の他の登録商標の存在
更に、特許庁において「VALENTINO」を含む商標は旧第22類において多数登録されている。例えば、「MARIO VALENTINO」(登録第1663854号)(乙第1号証)、「GIANNI VALENTINO」(登録第2614322号)(乙第2号証)、「valentinouniversale」(登録第2706790号)(乙第3号証)、「GIOVANNI VALENTINO」(登録第2714603号)(乙第4号証)、「Valentino Rudy」(登録第2616566号)(乙第5号証)、「VALENTINOARDINO」(登録第2625125号)(乙第6号証)、「VALENTINOPIA」(登録第2625126号)(乙第7号証)、「RUDOLPH VALENTINO」(登録第1504659号)(乙第8号証)等である。これらは、いずれも特許庁において、それぞれが互いに非類似であると認定された上で、登録となったものである。各々が「VALENTINO」をその商標の構成中に含むが、これらが互いに非類似であるのと同様、本件および審判請求人が所有し引用する「VALENTINO」或いは「VALENTINO GARAVANI」と相紛れることはない。
(オ)第三者の「VALENTINO」単独商標の存在
さらに、本件商標の指定商品は旧第22類(昭和34年法)「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」であるが、この類において本件請求人は「VALENTINO」単独の登録商標を所有しているとは認められず、引用されている甲第3号証は類を異にするものである。「VALENTINO」単独の登録商標で、指定商品を本件商標と同じにするのは第1970394号登録商標(乙第9号証)であり、その登録権利者はマリオ バレンチーノ エス ピー エイである。従って、本件審判請求人のする如く、「VALENTINO GARAVANI」が新聞等の記事や見出しに略称「VALENTINO」をもって報道されることが時折りあるからと言って、それが直ちに「VALENTINO GARAVANI」を一義的に示すものとは認められず、また本件商標「valentino orlandi」と相紛れるものとも認められない。
そして、請求人の本類における登録商標は略称とされることなく「VALENTINO GARAVANI」であり、本件商標「valentino orlandi」とは非類似であり、当然区別しうるものである。
(カ)本件登録権利者所有の各国における登録商標
本件商標は添付リスト(乙第10号証)に示す通り、イタリア本国を初め各国においても登録されており、日本のみならず、欧米を含め各国においても認められている商標である。また、本件商標と同一又は類似の商標は、日本においても本類のみならず、他のいくつかの類でも登録されている(乙第10号証)。「valentino orlandi」は我国ファッション業界でも周知の商標である(乙第11号証)。
(3)商標法第4条第1項第8号に基づく理由に対して
(ア)請求人は、「ヴァレンティノ・ガラヴァニ」氏は世界のトップデザイナーとして、本件商標が出願された当時には、既に我国においても著名であった。しかるに、本件商標は「valentino orlandi」と2段に書してなり、上段の「valentino」の文字が「ヴァレンチノ」と称呼されるので、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンチノ ガラヴァニ)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願している。故に、本件商標の登録は商標法第4条第1項第8号の規定に違反してされたものであると主張する。
(イ)請求人がその理由とする第4条第1項8号は、他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標についての不登録理由である。
(ウ)しかし、本件商標は、初め、「Valentino Orlandi」氏個人の所有であったものを氏の会社に譲渡したものであり、商標権移転登録時の委任状(乙第12号証の1および同2)に見られるように、登録権利者ペレッテリア バレンチノ オルランディ社の代表者である「バレンチノ オルランディ」という特定人の氏名であり、本件はそれを登録した商標である。なお、「ペレッテリア」(Pelletteria)は「毛皮商」の意味であり氏の業を冠したものである。
(エ)我が国においても、「VALENTINO」は、イタリアのありふれた名前を表すものであることは周知である。「バレンチノ」を名乗る有名人としては、すでに、イタリア生まれの映画俳優「Rudolph Valentino」(乙第13号証)が我国の百科事典にもスペースをさいて記載されており、1895年から1926年の間存命、「Valentino Garavani」氏の活躍より、はるか以前より「Valentino」の名は世界中に知れ渡っている。後には、この映画俳優の名をとって「78年にはハリウッドのアービング大通りの一区画がルドルフ・バレンチノ街と命名された」との記載もある。
(オ)「Valentino」の名を含むイタリアファッションブランドとしては、本件登録権利者のみならず、「MARIO VALENTINO」「GIANNI VALENTINO」(乙第14号証の1及び同2)等も著名である。更に、これら以外にもいくつか見られる(乙第15号証1ないし同3)。イタリア第1の高級ブティック通りには、「MARIO VALENTINO」と「VALENTINO GARAVANI」とは店を構え互いに混同されることなく、何の問題もなく営業している(乙第16号証)。
また、「VALENTINO」はありふれたイタリアの名前であるので、各々に「MARIO」、「GIANNI」、「GARAVANI」、「orlandi」等を付加することにより、十分区別されており、「Valentino Garavani」のみが、「Valentino」を名乗り、他を排除すべきであるとの理由はどこにもない。むしろ、「Valentino」は「イタリア」を示す共通代名詞の役割をも果たしており、仮に、請求人が述べるように、「VALENTINO GARAVANI」氏が著名人であったとしても、「VALENTINO」の名を含む商標すべてを彼の独占とすべき謂れは全くなく、氏以外の人の登録はすべて無効であるとの論は成り立たない。
(カ)更に、「Valentino」は聖ヴァレンティーノという3世紀ローマのキリスト教殉教者としても名高い名前である(乙第17号証)。このように古来から周知の名前に基づき、他人を排除しようとすることは、許されない。
(キ)以上のとおり、商標法第4条第1項第8号に基づき本件商標の無効を述べる請求人の理由は全く根拠がない。
(4)商標法第4条第1項第11号に基づく理由に対して
(ア)請求人はその所有する登録商標第1786820号「VALENTINO GARAVANI」(引用A商標)(甲第2号証)について、氏の氏名が「VALENTINO」と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、取引者、需要者が「ヴァレンチノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が少なくないし、請求人の商標は「ヴァレンチノ」の称呼をも生ずるとしている。そして請求人は、本件商標と請求人所有の登録第1786820号商標とが類似であるとして本件の登録無効を申し立てている。
(イ)しかしながら、前記したように、第一に請求人は本類における「VALENTINO」の商標の所有者ではない。「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」を指定商品とする本類において、請求人所有の商標「VALENTINO GARAVANI」と「valentino orlandi」とは、称呼、外観、観念のいずれについても非類似であり、本件商標と請求人所有の引用A商標とが非類似であることは明かである。故に、請求人の理由は成り立たない。
(ウ)第二に、他類(旧第17類)の「VALENTINO」(引用B商標)(甲第3号証の1)は確かに請求人の登録に係るが、本類においては、既述の通り、「VALENTINO」が請求人に係る「バレンチノ」「バレンチノガラヴァニ」を一義的に指すものとは直ちに認めることができない。既に、本類において第三者の登録に係る「VALENTINO」商標が存在する上、「VALENTINO」を含む多数の登録商標の存在、「VALENTINO」自体、イタリアにおいてありふれた名前であること、更に、本件商標は「valentino orlandi」であり、これを「Valentino」と略称して称することは一般的ではないこと、これらを総合して、請求人の主張には根拠がない。
(5)商標法第4条第1項第15号に基づく理由について
(ア)請求人の主張
請求人は、上記引用A商標(登録第1786820号)以外の商品についても、引用Bないし同F商標として挙げる多数の登録商標を使用しており、それらは本件商標の登録出願日前より全世界に著名なものである。そして、本件商標と引用A商標は称呼上類似するので、その他の請求人所有の商標とも類似し、また、本件商標の指定商品と請求人所有の引用商標が使用されている商品は何れも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品であるから、本件商標は、他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがあるとして、その登録の無効を主張している。
(イ)しかし、本件登録権利者は、請求人の無効理由は既述の通り根拠がないと確信する。即ち、請求人所有の商標は、いずれも、「VALENTINO」あるいは「VALENTINO GARAVANI」をその商標とする。しかるに、上記にも述べたように、本件商標「valentino orlandi」は請求人所有の「VALENTINO GARAVANI」商標或いは「VALENTINO」商標とは、非類似であることが明かであるので、本件商標が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれはない。
(ウ)本件商標は「valentino orlandi」であるところ、請求人は、本類に第三者登録に係る「VALENTINO」(乙第9号証)があることを看過している。即ち、請求人の登録に係る他類の「VALENTINO」(引用B商標)よりも近い、同じ類の「VALENTINO」商標に対し、「valentino orlandi」は非類似であるとの判断に基づいて、本件商標は登録されている。更に、付言するならば、請求人登録に係る「VALENTINO」(引用B商標)に対し、第三者に係る本類「VALENTINO」登録(乙第9号証)は、商品において互いに非類似であるとの判断に基づき、なされたものである。
以上の事実に鑑みれば、本件商標「valentino orlandi」が、引用B商標に対し、請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがあるものとは認められないことが明らかである。
(エ)「VALENTINO」単独略称論について
請求人に係る「VALENTINO GARAVANI」と、本件商標「valentino orlandi」とが非類似であることは、再度論ずるまでもない。そこで、請求人の主張する「VALENTINO」との略称についてであるが、一般的な新聞記事等において略称が用いられ仮に紛らわしいことが偶々あったとしてもその責任は、当該記事の不正確さに因るものであって、それは商標の使用とは無関係のことである。
また、仮に、取引者相互間で「VALENTINO」と互いに略称し合うことがあったとしても、その場合、両者間には、「いずれかのVALENTINO」を指すかについて暗黙の了解の下になされるに違いない(営業主体も判ってのことと解される)。かくて、「VALENTINO」と略称されることがありえるということから、本件商標が請求人の商品と出所混同を生ずるおそれがあるなどと主張することには論理の飛躍がある。
(オ)以上により、本件商標の登録が商標法第4条第1項第15号の規定に違反してされたものということはできない。
(6)以上、本件商標と引用各商標とは商標において別異なものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が請求人または、請求人と関係のある者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所につ
いて、取引者・需要者に誤認混同を生じさせるおそれがあるものとは認められず、かつ、本件商標は構成全体をもって一つの商標とみるのが相当と考えられる。従って、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第11号又は同第15号の規定に違反して登録されたものではなく、本件商標が商標法第46条の規定により無効とされるべきであるとする請求人の理由は成り立たない。

5 当審の判断
(1)請求人商標の著名性
請求人は、自己の商標の周知・著名性を理由に、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当違反を述べているので、先ず、この点について判断する。
請求人提出の甲第7号証及び甲第13号証ないし甲第56号証(いずれも枝番号を含む。)によれば、次の事実が認められる。
(ア)「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)は1932(昭和7)年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後、フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959(昭和34)年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967(昭和42)年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッションの第一人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで、国際的なトップデザイナーとして知られるに至っていること。
(イ)我が国において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」の名前は、前記「ファッションオスカー」受賞以来知られるようになり、その作品は「Vogue(ヴォーグ)」誌などにより継続的に日本国内にも紹介されていたこと。昭和49年には三井物産株式会社の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として「株式会社ヴァレンティノ ヴティック ジャパン」が設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファッション雑誌や業界紙、一般新聞にも数多く掲載されるに至り、同氏は我が国において著名なデザイナーとして一層注目されるに至ったこと。また、請求人主張の全趣旨よりして、請求人会社は前記デザイナーのデザインに係る各種製品の製作・販売に携わる者であること。
(ウ)同氏の名前は、「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」とフルネームで表示される一方、同時に雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられており、この点は、例えば、甲第7号証(「VALENTINO GARAVANI」「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」に関するいずれも昭和51年発行の各種ファッション関連雑誌・同新聞広告のスクラップ記事)、甲第13号証(「世界の一流品大図鑑」1981年版)、甲第15号証(「世界の一流品大図鑑」1985年版)、甲第16号証(「男の一流品大図鑑」1985年版)、甲第22号証(「25ans,ヴァンサンカン」1987年10月号)等の記載に照らし、その状況を十分窺うことができる。そして、ファッションに関して、「VALENTINO」「ヴァレンティノ」といえば、容易に前記デザイナーを指し又はそのデザイナーブランドないしはその作品群を想起し得る状況が窺われること。
(エ)そして、我が国において、「ヴァレンティノ ガラヴァーニ」「VALENTINO GARAVANI」は、「ヴァレンチノ」、「ヴァレンティーノ」あるいは「VALENTINO」とも略されて表示されている(以下、「略記商標」という。)状況は、田中千代著同文書院1981年発行「服飾辞典」及び山田政美著株式会社研究社1990年発行「英和商品辞典」の当該記載箇所、或いは、雑誌等において、例えば、株式会社集英社1989年12月5日発行「non―no」の当該記事(173頁)等からみて、すでに顕著であったといい得るところ、この略記商標について、前記時日以降も引き続き各種ファッション関連雑誌等において屡々見受けられるものであり、かつ、現在も特にその状況に変化がないであろうことは、例えば、甲第30号証(「ミス家庭画報」1990年5月号)、甲第33号証(「ミス家庭画報」1994年6月号」)、甲第48号証(平成3年7月29日付「報知新聞」の取材記事)、甲第55号証(「エル・ジャポン」1997年8月号)、甲第56号証(「ドンナジャポーネ」1998年4月号)ほか請求人提出の各証拠に照らし十分推認し得ること。
以上の各点よりすると、「VALENTINO GARAVANI」「valentino garavani」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)の文字よりなる標章又は「VALENTINO」「Valentino」(ヴァレンチノ又はヴァレンティーノ)の略記標章(以下、これら標章又は前記2において引用した登録商標を一括して、「請求人商標」ともいう。)は、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)氏がデザインした婦人服、アクセサリー、バッグ、靴等のファッション関連商品におけるデザイナーブランドとして、少なくとも本件商標の登録出願時である1989年(平成1年)9月12日前においてすでに我が国の取引者、需要者間に広く認識せられていたものであり、また、その状況は本件商標の登録査定時である平成5年2月23日を含む現在に至るまでの間も引き続き同様とみて差し支えないものである。
(2)本件商標の構成並びに指定商品について
本件商標は、その構成後掲(1)に示すとおり、「valentino orlandi」の欧文字を上下二段に横書きしてなるものであって、視覚上、自ずと上下に分離して看取し得るものであり、かつ、全体をもって特定の意味合いの熟語的文字として把握し得るような事情はなく、また、その証拠も見出せないから、視覚上又は意味上においてこれらを常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由は存しないから、該構成は、「valentino」と「orlandi」の文字(語)を結合してなるものと容易に認識し把握されるとみるのが相当である。
そして、本件商標に係る指定商品は、旧類別第22類「はき物、かさ、つえ、これらの部品および附属品」とするものであって、前記請求人の取扱いに係る商品「婦人服、その他の衣料品、かばん類、靴」等と同様に、いずれも人が身に着け或いは携行するという点で、その用途又は需要者層を共通にする場合が多いといえるものであり、かつ、両者の商品は、共にファッション性を有する点でその性格を共通にするものである。
(3)出所混同のおそれについて
以上の(1)(2)の点よりして、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する需要者は、前記各事情よりして、その構成上段にあって、請求人商標又は略記商標と綴り字を同じくする「valentino」の文字部分に着目し、容易に請求人商標又は略記商標を連想・想起するとともに、これをデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)又は請求人会社に係る一連のデザイナーブランド又はその兄弟ブランドないしはファミリーブランドであるかの如く誤認し、或いはこれら者と事業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、商品の出所について混同を生ずるおそれが少なからずあるといわなければならない。
してみれば、本件商標は、他人の業務に係る商品とその出所について混同を生ずるものというべきであるから、その登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものといわざるを得ない。
(4)被請求人の主張について
(ア)被請求人は、本件商標は、構成中の「valentino」の文字部分のみを分離・独立して称呼、観念しなければならないとする特段の事由はなく全体として一体のものであり、また、本件商標は採択者の氏名に由来する旨述べているが、同氏が我が国において広く知られている等の特段の事情があれば格別、本件においてそのような事情はなく、証拠もないから、その採択事情をもって本件商標の不可分性の根拠とすることはできない。そして、本件商標は視覚上又は意味上において必ずしも常に一体のものとして把握されないこと前記認定のとおりである。したがって、これらの点を述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(イ)被請求人は、「VALENTINO」を含む商標は旧第22類において多数登録されており、むしろ、この類においては本件請求人でない者により「VALENTINO」商標(登録第1970394号商標:乙第9号証)が登録されているから、「VALENTINO」は必ずしも「VALENTINO GARAVANI」を示すものでなく、また、本件商標と相紛れることはない旨述べているが、その登録事例の存在は認めるとしても、それらが請求人商標又は略記商標との関係で混同を惹起させるものかどうかは、個別・具体的に決せられるものであって、本件事案とは直接関係がないから、当該商品分野における登録事情をもって本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、前記認定を左右するに足りない。
(ウ)被請求人は、イタリア本国を初め各国においても商標登録されており、また、本件商標と同一又は類似の商標は日本においても本類のほか他のいくつかの類でも登録されている(乙第10号証)とし、「valentino orlandi」は我国ファッション業界でも周知の商標である(乙第11号証)旨述べているが、被請求人提出の証拠(乙号証)によれば、本件商標は僅かに平成10年7月30日発行繊研新聞の広告記事中の件外「藤井株式会社」に係る取り扱い商品の一として他の10数種の商標と共に掲載されているのみであって、その数量的・時期的・地域的販売事情は不明というほかはなく、そのほか、本件商標に係る使用事情又はその取引事情を窺い得るものは皆無であるから、それら乙号証をもってしては、本件商標(「valentino orlandi」)の我が国における周知事情(特に、その登録出願時ないし登録査定時における周知事情)は客観的に明らかでない。また、本件商標に関する諸外国及び我が国における他類の登録事情をもって直ちに本件審判の判断基準とするのは適切でなく、さらに、本件商標より請求人商標又は略記商標を連想・想起させ、或いは、混同惹起の可能性を否定するに足りるものとはいい難い。
したがって、これらの点について述べる被請求人の主張は、前記判断を左右するに足りない。
(エ)被請求人は、「Valentino」の名を含むイタリアファッションブランドとしては、ほかに「MARIO VALENTINO」、「GIANNI VALENTINO」等もあり(乙第14号証の1および2、乙第15号証の1ないし同3)、イタリア第一の高級ブティック通りには、「MARIO VALENTINO」と「VALENTINO GARAVANI」とは店を構え互いに混同されることなく営業している(乙第16号証)旨述べているが、被請求人摘示のイタリアファッションブランドについては、前記のとおり、それらが請求人商標又は略記商標との関係で混同を惹起させるものかどうかは別問題であって、本件事案とは直接関係がないから、本件における混同可能性を否定する根拠とするのは適切でなく、また、イタリアの高級ブティック通りでそれらブランド店が並存する事情は、本件の審理・判断に直接関係を有しないから、これらの理由を述べる被請求人の主張は妥当でなく、前記認定を覆すことはできない。
(オ)被請求人は、本件商標は請求人所有の「VALENTINO GARAVANI」商標或いは第三者所有の「VALENTINO」商標とは非類似のものとして登録されたものであるとして、本件商標の請求人業務との混同可能性を否定する旨述べているが、元より、前記認定・判断が商標の類似に基づくものでないことは前記判断の過程よりして明らかであり、また、そもそも、商品の出所混同のおそれの有無の判断に当たっては、商標自体とそのほか諸般の事情、すなわち、当該他人の商標の著名性、この種の商品分野における需要者一般の注意力の程度及び当該商品相互の関係等を併せ考慮の上、取引の実情に照らし総合判断することが至当と解される。そして、本件にあっては、前記認定を相当とするから、この点について述べる被請求人の主張は妥当でなく、採用の限りでない。
(カ)このほか述べる被請求人の主張及びその提出に係る乙号証をもってしては、前記認定を覆すことはできない。
(5)結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ないから、同法第46条第1項により、その登録は、これを無効とすべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標


(2)引用A,C,E,F商標


(3)引用B商標


(4)引用D商標


審理終結日 2002-03-04 
結審通知日 2002-03-07 
審決日 2002-04-09 
出願番号 商願平1-103899 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (122)
最終処分 成立 
前審関与審査官 関口 博三澤 惠美子 
特許庁審判長 原 隆
特許庁審判官 鈴木 新五
泉田 智宏
登録日 1993-09-30 
登録番号 商標登録第2582891号(T2582891) 
商標の称呼 バレンチノオルランディ 
代理人 杉村 暁秀 
代理人 末野 徳郎 
代理人 杉村 興作 
代理人 加藤 朝道 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ