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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 029
管理番号 1081724 
審判番号 取消2002-31215 
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2002-10-16 
確定日 2003-07-28 
事件の表示 上記当事者間における登録第4178190号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4178190号商標の指定商品中、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4178190号商標(以下「本件商標」という。)は、後掲のとおりの構成よりなり、平成8年7月2日に登録出願され、第29類「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり, 干しひじき,干しわかめ,焼きのり,豆,加工野菜及び加工果実,卵,加工卵,乳製品,食用油脂,カレー・シチュー又はスープのもと,なめ物,お茶漬けのり,ふりかけ,油揚げ,凍り豆腐,こんにゃく,豆乳,豆腐,納豆,食用たんぱく」を指定商品として、平成10年8月14日に商標権の設定登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べている。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」について、継続して3年以上日本国内において使用した事実がないので、商標法第50条第1項の規定によりその登録は取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1) 被請求人は、本件商標が「チキンフィンガー」等について使用されているとして、乙第1号証ないし乙第3号証を提出しているが、これが商標権者による本件商標の使用には該当しない。
本件商標は、中央に黒塗りの欧文字の「B」を配し、その周囲を細い線で円形に囲み、該欧文字 「B」の右上部で、かつ、前記円形線上に黒い小円を配し、その内部に白抜きで欧文字の「W」を配してなる図形の下部に小さい欧文字で「BLUE WAVE」を左横書きしてなる比較的に特異な図形商標である。
しかるに、乙第1号証ないし乙第3号証には、どこを見てもこのような特異な図形商標は表示されていない。例えば、乙第1号証(第1頁の上下および第2頁の上欄)に添付されている商品の写真によれば、「BALL」および「PARK」の欧文字を二段に左横書きしてなる商標の下部に、これに対して数10分の1の大きさで「Blue Wave」の欧文字が記載されているにすぎず、前記した後掲のごとき特異な図形商標である本件商標はなんら画かれていない。また、乙第1号証(第2真下欄及び第3真上下欄)に添付されている写真にも本件商標は全く記載されていない。
そして、乙第2号証は、オリックス野球クラブ株式会社発行の「YEAR BOOK 2002」の一部分であるが、同証にも、前記したごとき本件商標はなんら記載されていない。
さらに、乙第3号証の1には、2002年度の唐揚げ及びエビ串だんごの売上げが80日間で僅かに4,097,750円、1日当たりの平均がたったの51,222円にすぎないことを示しているにすぎない。
したがって、上記のごとき特異な図形商標である本件商標が商標権者(被請求人)により使用されているという証拠は、全く存在しない。
(2) 被請求人(商標権者)は、東京都港区浜松町2丁目4番1号所在のオリックス株式会社であり、主として総合リース業を営む企業である。
しかるに、このような総合リース業を営む企業である商標権者(被請求人)がチキンフィンガーや串だんご等を販売することはあり得ず、事実乙第1号証ないし乙第3号証にも、商標権者による使用の事実は全く記載されていない。
したがって、乙第1号証ないし乙第3号証には、本件商標はもちろんのこと、商標権者(被請求人)の名前さえ全く欠いている。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。
1 使用の事実について
被請求人(商標権者)は、本件商標を「チキンフィンガー」「ビーフコロッケ」「フライドチキン」「鶏の唐揚」「エビ串だんご(甘海老のすり身を串にし衣をつけて揚げた物)」等々に使用している。使用の事実を示す資料として、グリーンスタジアム神戸の球場内の売店における商品の販売状況を示す写真を提出する(乙第1号証)。また、スタジアム内の売店を紹介するパンフレットを提出する(乙第2号証)。商標権者のパンフレット「YEAR BOOK 2002」では、18頁及び19頁において、スタジアム内の売店の紹介をしており、各種の飲食物を写真で紹介している。
これらの商品の内、串にした鶏の唐揚及びエビ串だんごの2品だけで、年間400万円強を売り上げている。なお、球場売店における週間販売報告(4月29日ないし5月7日、8月19日ないし29日)を提出する(乙第3号証)。
上記の資料により、本件商標の「食肉,食用魚介類,肉製品,加工水産物,かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」についての使用は十分に証明されたものと思料する。
2 不使用取消審判の法制定趣旨について
(1) 不使用商標の整理
不使用取消審判は、使用をしない結果、保護すべき信用が蓄積されていない商標の整理を行い、商標使用希望者の商標の選択の余地を拡げることを目的としている(乙第4号証、特許庁編「工業所有権法逐条解説」)1208頁〜、参照)。
本件商標は、商標権者の100%出資子会社が運営するプロ野球球団の名称の商標であり、商標自体が商標権者を表示するものであり、保護すべき信用が既に著名な球団名ということで化体していることは明らかである。したがって、単なる個別商品の商標が使用されていないことと同列に論じられるべきものではない。つまり、商号的商標が個別商品について使用がないからという理由で直ちに不使用取消審判により個別商品ごとに取消整理されるべきものではない。
ハウスマークのような商標についての防衛的な登録までも、不使用取消審判により取消すことは、不使用取消審判制度の法制定の趣旨に反する。
(2) 新規出願者の商標選択の自由の確保
不使用取消審判の法目的の一つに、商標使用希望者の商標の選択の余地を創設することがあるが、第三者の商標選択の自由には自ずと限界がある。他者の商号的商標の使用は、例えその指定商品が異なるとしても、認められるべきものではない。また、他者の商号と類似する商標についても、同様に使用を認めるべきものではない。
したがって、他者の商号的商標を取消してまで、商標使用希望者の商標の選択の余地を拡げる必要があるとはいえない。
さらに、商号的商標である本件商標を取消しても、本件商標は、権利者を表示するものとしてすでに著名性を獲得しているものであり、同一または類似する商標は、商標法第4条第1項第15号の規定により登録が排除され、また、同時に商標権者の球団名称として商標法第4条第1項第8号の規定により登録が排除されるべきものでもある。
したがって、本件商標を取消しても、第三者に登録の余地を開くことにはならず、取消しても利益がなく、審判請求の利益のない審判請求である。
(3) 審判請求の実質的利益の欠如
平成8年の法改正により、不使用取消審判については、利害関係人であることを要しない旨の改正が行われた。その理由として、不使用取消審判が、公益的なものであることが挙げられている(乙第4号証、1211頁)。しかしながら、個別商品商標についての不使用取消審判については、この法理が妥当するとしても、商号的商標については同一の法理が妥当するものではない。何より、商標自体が、商標権利者を表すものとして広く知られているものであり、業務上の信用が化体されているからである。
単に、不使用商標を整理するだけであれば、制度は純粋に公益的なものであり、利害関係を要求する必要はないが、本件のような場合についても一律に利害関係を要求しないとすることに妥当性があるとは考えられない。
この点については、「請求人適格を『何人』としても、当該審判の請求が被請求人を害することを目的としていると認められるような場合には、その請求は権利濫用として認められない」ものである。この法理は「工業所有権逐条解説」においても明確に述べられている(乙第4号証、1212頁)。
本件審判請求は、被請求人(商標権者)を害することを目的とするとまではいえないとしても、他人の名称を使用する予定の審判請求は訴えの利益がないことにおいて同一であるので、このような審判請求は請求の利益なしとして退けられるべきものである。
(4) 審判請求の実質的理由
請求人の実質的な目的が本件審判請求書類だけからは計り知ることはできないが、請求人は第29類において、商標「Blue Wave」の出願(商願2001-100289)をし、平成14年6月13日付の拒絶理由通知書により、商標法第4条第1項第11号を理由として本件商標を引例された者と関係する者と思われる(乙第5号証)。
しかしながら、上記出願は、商標法第4条第1項第11号の他にも商標法第4条第1項第8号及び同第15号の拒絶理由を含むものである。本件商標「Blue Wave」が商標権者の球団の名称として広く知られている現状において、請求人の関連会社の「BlueWave」商標の登録出願は登録を拒絶されるべきことは明らかである。
なお、第三者が第42類の役務を指定して出願した商標「BlueWave」(商願2000-65178)が商標法第4条第1項第15号及び同第8号を理由に拒絶査定を受けている(乙第6号証)。
3 結語
上記のとおり、本件商標は、本件審判の取消請求に係る指定商品に現実に使用されているので、本件商標が取り消されるべきでないことは明らかである。また、本件審判請求は、不使用取消審判の法目的に反するものであり、本件商標は、商標法第50条の規定に該当するものではない。

第4 当審の判断
商標法第50条による商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、被請求人において、本件審判の請求の登録前3年以内に、我が国において、請求に係る指定商品のいずれかについて商標権者等が登録商標の使用をしていることを証明し、又は使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしない限り、その登録は取消しを免れない。
1 使用の事実について
(1) 商標法第50条で規定するところの「登録商標の使用」とは、その請求に係る指定商品についての登録商標(書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生じる商標、外観において同視される図形からなる商標その他の当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。)ほか、同一と認められる範囲(例えば、商標の要部でない附記的な部分を多少変更して用いるとか、横書きの文字部分を縦書きにして用いるとかの場合)にあると解される。
(2) これを本件についてみるに、本件商標は、構成後掲のとおり「顕著に、ゴシック風字体による欧文字『B』を真円線で囲繞し、その右上部の線に重ねるように欧文字『W』を黒塗り円形内に白抜きする如く描いてなる図形」(以下「図形部分」という。)と、その下段部に「ゴシック風字体による『BLUE WAVE』の欧文字」(以下「文字部分」という。)とを結合した商標である。そして、図形部分が特定の称呼、観念を生じ得ない特異なものであって、これのみでも独立して自他商品の識別力を有するといえるものである。
(3) 被請求人が、本件商標を本件審判の取消請求に係る指定商品について使用していた事実を証明するものとして提出した乙第1号証ないし乙第3号証を徴するに、グリーンスタジアム神戸の球場内の売店における商品(チキンフィンガー、ビーフコロッケ、フライドチキン、鶏の唐揚、及びエビ串だんご等々)の販売状況を示す写真(乙第1号証)に写された紙製の各容器に、かご字風に印刷された「BlueWave」の欧文字が使用されていること、商標権者に関連するプロ野球球団のパンフレット「YEAR BOOK 2002」に球団名を表示したものとはいえ「BlueWave」の欧文字が使用され、スタジアム内の売店と各種の飲食物を紹介(18頁及び19頁)していること、及び串にした鶏の唐揚及びエビ串だんごについての週間販売報告(4月29日ないし5月7日、8月19日ないし29日)(乙第3号証)は認めることができる。しかしながら、これら乙第1号証ないし乙第3号証には、図形部分の使用は確認できない。
(4) してみると、乙第1号証ないし乙第3号証には、たとえ本件商標の構成中の文字部分と社会通念上同一と認められる「BlueWave」の欧文字が使用されているとしても、それら使用は図形部分を欠落しているものであって、これら使用の商標と本件商標とは、図形部分の有無という点で明かな構成態様上の差異を有する別異の商標というのが相当であり、商取引の社会通念上、同一と認められる範囲を著しく逸脱したものといわざるを得ない。そうすると、該販売状況を示す写真(乙第1号証)及び該パンフレット(乙第2号証)における当該商標の使用は、本件商標の使用ということができない。
したがって、これらの証拠によっては、本件商標が本件審判の取消請求に係る指定商品について使用されていたものとは認められない。
その他、本件商標がその指定商品について使用されていることを示す証拠はない。
2 不使用取消審判の法制定趣旨について
被請求人は、本件審判請求について不使用取消審判の法制定の目的に反し、請求の利益のない審判である旨主張しているが、請求人のこれら主張は、独自の見解ないしは自己都合による事情を述べるに止まり、これをもって、商標法第50条第2項の規定による本件商標の使用事実についての挙証責任を免れるものということはできない。
そして、請求人の主張する本件審判の請求の理由及び被請求人の答弁に対する弁駁をみるに、当該審判は、被請求人を害することを目的とするものといい難いものであって、その請求は、権利の濫用と認められるものでなく、かつ、商標制度の目的に反するものといい得ないから、請求の利益を有する正当な審判請求であるということができる。そうすると、被請求人の前記主張は採用できない。
3 結語
本件商標は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者等により本件審判の取消請求に係る指定商品「食肉,食用魚介類(生きているものを除く。),肉製品,加工水産物(「かつお節・寒天・削り節・とろろ昆布・干しのり・干しひじき・干しわかめ・焼きのり」を除く。),かつお節,寒天,削り節,とろろ昆布,干しのり,干しひじき,干しわかめ,焼きのり」について使用されていたものとは認めることはできず、かつ、使用をしていないことについて正当な理由があったものとは認められない。
このほか被請求人の主張をもって、本件審判の取消請求に係る指定商品についての使用は証明されない。その他前記認定を覆すに足りる証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中の結論掲記の商品について、その登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 < 後 掲 >
本件商標


審理終結日 2003-05-30 
結審通知日 2003-06-04 
審決日 2003-06-17 
出願番号 商願平8-72291 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (029)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 山下 孝子
高野 義三
登録日 1998-08-14 
登録番号 商標登録第4178190号(T4178190) 
商標の称呼 ビイダブリュウブルーウエーブ、ブルーウエーブ 
代理人 広瀬 文彦 

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