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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 111
管理番号 1081662 
審判番号 審判1998-31186 
総通号数 45 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-09-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1998-11-13 
確定日 2003-07-23 
事件の表示 上記当事者間の登録第2707050号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成12年4月10日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成12年(行ケ)第171号、平成12年12月14日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2707050号商標(以下「本件商標」という。)は、「パートナー」の片仮名文字を横書きしてなり、平成2年4月2日登録出願、平成3年9月25日政令第299号による改正前の商標法施行令第1条所定の商品の区分(以下「旧類別」という。)第11類「電気機械器具、電気通信機械器具、電子応用機械器具(医療機械器具に属するものを除く)、電気材料」を指定商品として、同7年5月31日に登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条の規定により本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べた。
1.本件商標は、その指定商品について継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者、通常使用権者のいずれかによって使用された事実は存在せず、また現在においても使用されていない。したがって、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである。

2.弁駁の理由
被請求人は、平成11年1月28日付け提出の答弁書に添付した資料1に示された「天井走行式リフトシステム」に使用される「制御装置本体」及び資料2に示された「段差解消機」に使用される「制御装置本体」、「リモートスイッチ」に、それぞれ付された「PARTNER」なる商標の使用をもって、本件商標は日本国内において継続して3年以上使用されていることから、商標法第50条第1項の規定に該当するものではなく、故に、本件審判請求は成り立たない旨主張しているが、被請求人が「PARTNER」なる商標を使用しているという商品は本件審判の取消請求に係る商品ではないことは明らかであり、したがって、被請求人の答弁書における主張は到底容認されるべきものではないので、以下に弁駁する。
(1)被請求人が提出した答弁書に添付の資料1に示された「天井走行式リフトシステム」は、要介護者をリフトで吊し上げて、天井に備えつけたレールに沿って浴室やトイレ等への移動を容易にするという機能を有していることにかんがみると、該「天井走行式リフトシステム」は「介護用の天井走行式電動リフト」を指すと容易に認識されるものである。
また、答弁書に添付の資料2に示された「段差解消機」は、車椅子使用者のために、これを一定の場所に据え置いて、ある高さから別の高さへの移動を容易にするという機能を有することにかんがみると、該「段差解消機」は「介護用の据置式電動リフト」と指すと容易に認識されるものである。
したがって、答弁書に添付の資料1及び資料2に示されている商品は、いずれも要介護者向けの「電動昇降機(電動リフト)」として位置付けられるものであり、これらの商品自体は現行分類第7類(旧類別第9類)の「荷役機械器具」等の範疇に属すると考えられるものである。
(2)次に、被請求人が「PARTNER」なる商標を使用していると主張する「制御装置本体」及び「リモートスイッチ」について検討すると、これらはいずれも「介護用の天井走行式・据置式電動リフト」との関係において用いられるものであり、商品の使用の用途が限定されていることに鑑みると、これらの商品は「介護用の天井走行式・据置式電動リフトの部品又は附属品」として位置付けられるにすぎず、故にこれらの商品についての商標の使用は、現行分類第7類(旧類別第9類)の「荷役機械器具」等について商標が使用されていることを単に示しているにすぎないといわざるを得ないものである。
したがって、被請求人が使用していると主張する商標「PARTNER」と片仮名文字をもって横書きしてなる本件商標「パートナー」とが、社会通念上同一の商標として認識されるか否か、という問題もあるが、この点を争うまでもなく、被請求人により提出された各書証をもってしては、本件商標が取消請求に係る商品について使用されているという被請求人の主張は到底容認し得ないものであることは明白である。
(3)以上詳述したように、被請求人により提出された各書証は、被請求人が本件商標を本件審判の請求登録前3年以内に日本国内において請求に係るいずれかの指定商品について使用しているという事実を何ら立証し得るものではなく、したがって、本件商標については、その登録を取り消されてしかるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、資料1ないし資料10を提出した(平成11年12月24日付答弁書添付の資料1ないし同4をそれぞれ資料7ないし資料10とした。)。
1.請求人の請求は、以下のように理由がないので、答弁の趣旨どおりの審決を求める。
2.資料1は、被請求人が製造し、被請求人の100%出資子会社である明電興産株式会社に販売を委託している、天井走行式リフトシステム「パートナー」の宣伝用カタログである。また、資料2は、同じく明電興産株式会社に販売を委託している段差解消機「アクセス式パートナー」の宣伝用カタログである。
両者とも、明電興産株式会社の表示がされているが、被請求人は、販売を同社に委託するにあたり、同社に対し無償で本件商標の通常使用権を許諾している。両商品は電気を利用し動作を制御する仕組みになっており、利用する者の負担を軽くしたことに特徴を持たせた商品である。操作はともに制御装置本体と直結したスイッチによる場合と、リモートスイッチによる場合がある。
資料1の中に掲載されている写真には、制御装置本体に本件商標を欧文字で表現した形である「PARTNER」の標章が表示されている様子が写し出されている。また、資料2の裏面部分には、制御装置本体及びオプションとして単体で販売するリモートスイッチに、上記制御装置同様「PARTNER」の標章が表示されているのが写し出されている。
したがって、需要者が制御装置本体を見て当社商品であることを識別できるのは当然のことながら、リモートスイッチを見ただけでも、「パートナー」であることを識別することができる。このように、本件商標は制御装置及びリモートスイッチについて使用されている。
上記資料1のカタログは最終ページに表示されているとおり、1997年11月に発行されたものであり、また、資料2のカタログは、裏面に1998年11月発行の表示がされている。資料1のカタログは1993年7月に初版が発行され(資料3最終ページ参照)、また、資料2のカタログは1995年3月に初版が発行されており(資料4裏面参照)、それぞれ増刷を繰り返し現在に至っている。資料5、資料6はいずれも最新版カタログの増刷を、1998年に印刷会社へ依頼した際の依頼票である。資料5では資料1のカタログの4000部の増刷を、資料6では資料2のカタログの3000部の増刷をそれぞれ依頼している。このように、1998年だけでも合計7000部のカタログを増刷し、営業活動のために使用している。
さらに、本件商標を使用した「パートナー」シリーズ商品は、発売以来、5000台を超える販売実績があり、順調な売り上げを記録している。したがって、本件商標は病院またはそれに類する施設、一般家庭等の需要者間において、広く認知されている。
3.請求人の弁駁に対する再答弁
(1)請求人は、本件商標を欧文字で表記した商標を使用している商品である「制御装置本体」と「リモートスイッチ」は、「介護用の天井走行式・据置式リフトの部品又は付属品」であるため、同商標は第7類の荷役機械器具に使用されているにすぎないと主張しているが、被請求人の思料するところ、一般的に「部品・付属品」というものは、商品内部に組み込んで販売するものや、単独で市場におかれることが全くないもの等、独立して商取引の対象となり得ないものを指すと考える。この場合、たとえ商標が付されていても取引の際に取引者、需要者の目に触れることがなく、自他商品識別の機能を発揮できないため、商標を使用しているとはいえない場合もあると考える。
しかし、前述の「制御装置本体」及び「リモートスイッチ」は、システム商品を構成する商品の一つであり、請求人の主張する「部品・付属品」とは異なる。
通常、システム商品の販売形態には二つの場合があり、一つは個々の商品を組み合わせて一つの商品として販売する場合、もう一つはシステムを構成する商品を個別に販売する場合である。システムに商標を付した場合、その商標がシステム全体の商標として自他商品識別機能を有するのは勿論のこと、後者の販売形態の場合のように、システムを構成する商品を個々の独立した別個の商品として扱う場合においては、システム商品の商標としてだけではなく、その一つ一つの商品について自他商品識別機能を発揮するため、一つ一つの商品について使用する商標ともなり得るものと思料する。
(2)そこで、本件商標を欧文字で表記した商標を使用する商品である、「制御装置本体」及び「リモートスイッチ」について考察すると、これらは、すべてをまとめて「介護用リフトシステム」として販売することもあれば、個別に独立して販売することもあるため、単独で市場におかれ取り引きされる商品であるといえる。このことから、請求人の弁駁にある「部品・付属品に使用されているにすぎない」との主張は理由がないものと考える。
以上のとおり、本件商標は日本国内において、過去3年以内に継続して使用されているので、答弁の趣旨どおりの審決を求める。

第4 当審の判断
資料2、資料4(いずれも明電段差解消機アクセス「パートナー」カタログ。前者は1998年(平成10年)に作成したもの、後者は1995年(平成7年)に作成したものと認められる。)及び被請求人の答弁によれば、資料2及び資料4のカタログに係る商品(以下「本件使用商品」という場合がある。)は、被介護者が車椅子で屋内から屋外へ、あるいは、屋外から屋内へ移動する際に、屋内の床面と屋外の地面との高低差を解消して安全に屋内外の出入りを可能にする目的で、あらかじめ屋内と屋外の境となる位置に据えて使用する電動式昇降機であり、資料2及び資料4のカタログには、「車椅子での行動範囲が広くなります」、「荷重によるスピード変化がなく、乗り心地も快適です。」、「電源は家庭用コンセントが使えます」「非常用スローダウン装置を付けていますので、停電しても降りることができます。」、「希望の高さで自動停止できる「高さ設定機構」を採用しています。」、「日常操作は簡単なワンタッチ式」との記載があり、また、車椅子に乗った人物が介護者に伴われて、家庭の縁側と敷地の地面の境に設置された本件使用商品を用いている図が示されていることが認められる。
上記認定の事実によれば、本件使用商品は、単に電気を動力源としているだけでなく、安定かつ安全な操作のため、昇降時に電動機の速度制御を行っていることが認められ、したがって、この商品において、電気の作用は、介護用の電気機械器具として重要な役割を果たしているものであり、補助的な役割を果たしているにすぎないとはいえないものであるから、この商品が主として家庭において使用される電気機械器具であることは明らかというべきである。
この点について、請求人は、本件使用商品は旧類別第9類「荷役機械器具」等の範疇に属すると考えられる旨主張する。
しかし、「荷役」の語は、「船荷のあげおろしをすること。また、それをする人。」(広辞苑)あるいは「貨物を積んだり降ろしたりすること。また、そうするひと。」(大辞林)といった意味を有するものであり、この語本来の意味からして、「荷役」の対象は「人」ではなく「物」であることは、明らかである。
また、平成3年10月31日通商産業省令第70号による改正前の商標法施行規則第3条に所定の別表(以下「旧別表」という。)には、類別第9類の「荷役機械器具」に属する商品として、「クレーン」「コンベヤー」「巻き上げ機」「索道」「エレベーター」「エスカレーター」「その他の荷役機械器具」が例示されており、「エレベーター」「エスカレーター」を除いて、専ら物を搬送、移動する目的で使用される商品であると認められるところ、「エレベーター」、「エスカレーター」は、人及び物のいずれの搬送にも用いられる商品であるものの、専らあるいは多くは産業用に使用される商品であり、搬送する対象が何であるかにかかわらず大量に搬送するという機能に重点があるものであり、しかも、「クレーン」「コンベヤー」「巻き上げ機」と同様に大型の機械器具であるために、旧類別第9類の「荷役機械器具」中に挙げられているものということができる。
これに対し、本件使用商品は、主として家庭において使用される電気機械器具であり、介護という特殊な用途、目的のためにのみ使用され、特別に安定しかつ特別に安全な操作が要求されているものであるから、「荷役」用という概念に当てはまらないことは明らかである。そして、旧類別第9類の「荷役機械器具」に属する商品として例示されている商品とは、用途、目的において明白に相違している。
そうすると、本件使用商品は旧類別第9類「荷役機械器具」の範疇に属する旨の請求人の主張は、理由がないものであり、採用できない。
そして、本件使用商品は、前記認定のとおり、主として家庭において介護という特殊な用途、目的のためにのみ使用される電気機械器具であり、旧別表の旧類別第11類「電気機械器具」に属する商品であって、本件商標の指定商品に含まれている商品というべきであるが、旧別表の旧類別第11類中に例示されている「電気機械器具」に属する商品とはその趣が異なっており、強いていえば「電気機械器具」のうちの広い意味の「民生用電気機械器具」に属するものというのが相当である。
また、資料2及び資料4のカタログに係る商品である本件使用商品について「パートナー」の片仮名文字よりなる商標が使用されており、同商標は、本件商標を片仮名文字で表記するものということができ、本件商標と同一の称呼、観念を生ずるものであって、社会通念上本件商標と同一の商標と認めることができる。
そしてまた、資料2、資料4及び被請求人の答弁によれば、資料2及び資料4のカタログに係る商品である本件使用商品は、被請求人が製造して、その子会社である明電興産株式会社に販売を委託したものであり、明電興産株式会社は、本件審判の請求の登録(平成10年12月9日予告登録)前3年以内に日本国内において資料2及び資料4のカタログを頒布して、これを販売した事実が認められる。
以上によれば、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において明電興産株式会社が通常使用権者として本件商標の指定商品に含まれている本件使用商品について本件商標を使用したものということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2000-03-01 
結審通知日 2000-03-14 
審決日 2000-04-10 
出願番号 商願平2-37269 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (111)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田代 茂夫山内 周二鈴木 雅也 
特許庁審判長 上村 勉
特許庁審判官 鈴木 新五
小池 隆
登録日 1995-05-31 
登録番号 商標登録第2707050号(T2707050) 
商標の称呼 パートナー 
代理人 越智 隆夫 
代理人 岡部 讓 
代理人 臼井 伸一 
代理人 本宮 照久 
代理人 岡部 正夫 
代理人 産形 和央 
代理人 藤野 育男 
代理人 高梨 憲通 
代理人 加藤 伸晃 
代理人 朝日 伸光 

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