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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 Z42 審判 全部申立て 登録を維持 Z42 |
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管理番号 | 1080420 |
異議申立番号 | 異議2001-90903 |
総通号数 | 44 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2003-08-29 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-26 |
確定日 | 2003-07-09 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第4501098号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、平成14年10月30日にした決定に対し、東京高等裁判所において決定取消の判決(平成14年(行ケ)第616号、平成15年5月8日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第4501098号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第4501098号商標(以下「本件商標」という。)は、「ハイパーホテル」の片仮名文字を標準文字により書してなり、第42類「宿泊施設の提供、宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ、入浴施設の提供」を指定役務として、平成12年4月24日に登録出願、同13年8月24日に設定登録されたものである。 2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)の主張要旨は、次のとおりである。 (1)第4条第1項第7号について (ア)申立人は、平成9年3月、主にホテル、旅館等の宿泊施設の企画・コンサルティング業務及び経営を目的として福岡市城南区茶山4丁目9番15号において会社を設立(甲第2号証)、同年9月に福岡市博多区博多駅東3丁目10-15に福岡事務所を開設し(甲第3号証)、以後福岡事務所を拠点として活動し現在に至っている。 申立人の代表者である稲原茂延は、会社設立以前から低価格で、高機能の宿泊施設の提供を研究、いわゆる「ローコストオぺレーションシステム」を開発した。 申立人は会社設立後、自らが総本部として、パートナーシップ方式(一種のフランチャイズ方式で、所有権、経営権、運営権はオーナーが有し、同一商標を使用して営業展開し、共同で宣伝、集客を進めていく。総本部はホテルの建築施工、商標使用、運営・営業・企画等のノウハウを提供する。)の各地区の本部としてのエリアパートナーを全国に募集し、現在10社の企業がエリアパートナーとして加盟店の募集にあたっている。パートナーシップ方式のホテルは平成11年4月青森と福岡の赤坂、平成12年3月大阪の天王寺、同年7月小松、同年12月那覇、平成13年2月福山に次々と開業し、平成14年には石垣島(沖縄)と掛川(静岡)の開業を予定している。 従来の業界の慣習を覆すユニークな料金システムや運営方式でマスコミ等にも取り上げられ紹介された(甲第4号証の1〜甲第4号証の4)。 (イ)募集時点から各加盟店のホテル名を「ハイパーホテル」で統一し、「HYPER HOTEL○○」、「ハイパーホテル○○」(○○は各エリアの地名)で展開していくことを決め、また加盟ホテルをハイパーグループホテルとして、上記開業のホテルにそれぞれ「ハイパーホテル青森」、「ハイパーホテル赤坂」、「ハイパーホテル天王寺」、「ハイパーホテル小松」、「ハイパーホテル那覇」、「ハイパーホテル1-2-3福山」の各名称を使用している(甲第5号証)。開業時は新聞に大きく広告を出したり、いくつかは新聞に記事としても取り上げられ、また広告を出す際は常にハイパーグループホテルとして既存のハイパーホテルの名称も記載してきている。なお、ハイパーグループホテルには温泉旅館も含まれているが、性質上「ハイパーホテル」の名称は使用せず「筑水荘」等の独自の名称を使用している(甲第6号証の1〜甲第6号証の10)。上記のように申立人は各加盟店のホテル名を「HYPER HOTEL十地名」「ハイパーホテル+地名」で統一することとし、パートナーシップ契約の第3条に、商標の使用を許諾する旨を契約条項に入れている(甲第11号証)。 これに先立ち、申立人は商標権取得のため平成9年4月8日付けで「ハイパーホテル」と「HYPERHOTEL」を2段に連記した商標を、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,入浴施設の提供」を指定役務として出願した(商願平9-104762号)。この出願は平成9年10月27日付けで申立人の代表者である稲原茂延に名義変更され、平成11年2月5日商標法第4条第1項第11号(引用商標 商標登録第3192292号)により拒絶された(甲第7号証)。 (ウ)本件登録商標権者(以下「商標権者」という。)であるナサコーポレーション株式会社は、先述のエリアパートナーの募集に応じて、平成9年6月20日「エコノミーホテル企画運営申込書」の申込書をなし、申立人はこれを受諾した(甲第8号証)。 その後、申立人と商標権者の間で平成10年2月3日にコンサルタント契約書及び工事請負契約書を、同年5月25日にパートナーシップ契約書を取り交わしている(甲第9号証〜甲第11号証)。 パートナーシップ契約については、期限は平成15年5月25日(解約の申し入れのない場合は自動的に更新)で、現在も存続しており、定期的に商標権者より申立人に業績報告もなされている。 なお、パートナーシップ方式による開発では、総本部である申立人は、ホテルオープンまでの指導とオープン後の経営指導は別のプログラムとして考え、契約も別個のものとしオーナー側からの相談、要望に別個に応えていく形をとるため、コンサルタント契約書とパートナーシップ契約書を別々に取り交わしている。 申立人と商標権者との関係は以上の通り、パートナーシップ方式の総本部とエリアパートナーの関係で、一種のフランチャイザーとフランチャイジーの関係にある。また、商標権者が経営する「ハイパーホテル青森」はハイパーグループホテルの一員であり、上述の各ホテルの広告にも名を連ね、インターネット上でもグループに参画している(甲第6号証の1,2,3,6、甲第12号証)。 また、申立人はパートナーシップ方式のエリアパートナーを募る時点で既に各加盟店のホテルを「HYPER HOTEL+地名」、「ハイパーホテル+地名」で統一することを決めており、商標権者との契約書の中でも仮称としてはいるが、「ハイパーホテル青森」(甲第9号証、甲第10号証)及び「エコノミー(ハイパー)ホテル」(甲第11号証)の名称で記載している。 (エ)以上述べてきたように申立人と商標権者の関係は一種のフランチャイザーとフランチャイジーの関係にあることは明白である。今回の商標出願は、上記関係にありながら、フランチャイザーの各加盟店が使用している商標を、一フランチャイジーである商標権者がフランチャイザーである申立人の承諾を得ず商標出願し、先に拒絶理由に引用された商標を不便用取消審判で取消し、登録したものである。これは他人の商標と知りつつ瓢窃的に出願されたもので、社会の一般的倫理的観念に反するものである。 また、商標権者は現在取得した商標権を盾に、申立人に対し通常使用権設定の契約を、仮に申立人が契約に応じない場合は加盟店に直接通常使用権設定の契約をさせる旨を通告してきている。この契約内容も、客室1室につき1ヶ月3,000円という法外な使用料を要求する内容のものである(甲第13号証)。 このような行為は不正な利益を得るために、不正な意図をもって出願されたことを裏付けるものであり、ひいては商取引の秩序をも乱すものである。 したがって、本件商標は、社会の一般的道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものであり、公の秩序を害するおそれのある商標といわざるをえない。 (2)第4条第1項第10号について 申立人は平成9年3月会社設立後、(1)でも述べているように一種のフランチャイズ方式でホテルを開業してきている。平成11年4月、本件商標に類似する「ハイパーホテル赤坂」を福岡市中央区赤坂1丁目15-31に開業し、自ら運営して今日に至っている。 この間の不断の努力によって、本件商標の登録出願時である平成12年4月24日時点では、福岡を中心に九州の需要者の間では、「ハイパーホテル赤坂」、「ハイパーホテル」の名称は広く認識されていた。 そのことを立証するものとして甲第4号証の1、甲第6号証の1ないし4を提出する。 なお、これら以外にもテレビでも紹介され話題になっている(平成11年12月TVQ九州放送、平成12年3月RKB毎日放送「探検九州」でテレビ放映)。 以上、本件商標は、証拠資料より明らかなように、他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その役務又はこれらに類似する役務について使用するものである。 (3)むすび したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び第10号に該当し商標登録を受けることができないものであり、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである。 3 当審の判断 (1)本件商標の第4条第1項第7号該当性について 商標権者が本件商標の登録出願をしたのは、申立人ハイパーホテル商標の登録出願(商願平9-104762)が麒麟ハイパー商標(登録第3192292号商標)と類似するとの理由により拒絶査定を受け、これに対し申立人から不服申立てがなされることもなく、拒絶査定が確定した後、1年以上を経過した時期(平成12年4月)のことであり、当時、商標権者は、既に「ハイパーホテル青森」の名で商標権者のホテルを開業し、営業していたのである。他方、上記拒絶査定後、申立人が片仮名文字の「ハイパーホテル」又は欧文字の「HYPER HOTEL」からなる商標(以下、一括して「ハイパーホテル商標」という。)の商標権取得に向けて何らかの方策を講じたことを窺わせる事実はない(かえって、申立人は、平成12年8月には、商標「HOTEL1-2-3 ホテルワン.ツー.スリー」の登録出願をし、平成13年以降は、申立人グループの新たに開業するホテルに「1-2-3」の表示を付加した名称を使用するようになっている。)。 このような事情の下で、商標権者が本件商標を登録出願し、商標登録を取得(平成13年8月)したことは、既に営業を開始していた商標権者のホテル営業について、ハイパーホテル商標を安定して使用し得る地位を確保するための安全策という要素を持つものであって、商標権者自らが商標登録出願することが当時の状況の下で最善の選択であったかどうかはともかく、その商標登録出願から商標権取得に至る行為をあながち不当、不徳義と評価することはできない。また、上記の経緯からすれば、商標権者の本件商標登録出願が不正の目的でなされたと断定することもできない。 したがって、本件商標の登録は、社会の一般的道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものであり、公の秩序を害するおそれのある商標である旨の申立人の主張は、採用することができない。 (2)本件商標の第4条第1項第10号該当性について 申立人は、本件商標の登録出願がなされた平成12年4月24日当時、「ハイパーホテル」の名称が九州の需要者の間で広く認識されていたことを立証するものとして、甲第4号証の1及び甲第6号証の1ないし4を提出している。 甲第4号証の1は、平成11年8月6日付け日本経済新聞に申立人が新参の柔軟さで格安ホテル運営を提案していること、格安ホテルとしてハイパーホテル赤坂の運営管理を受託していること等が掲載された記事である。甲第6号証の1は、平成11年4月28日付け朝日新聞(福岡)に掲載されたハイパーホテル赤坂の広告であり、甲第6号証の2及び3は、平成12年1月12日及び同月21日付け朝日新聞(筑紫又は福岡)に掲載された吉井温泉ニュー筑水荘オープンの広告とともに掲載されたハイパーホテルの広告である。そして、甲第6号証の4は、平成12年3月15日付け沖縄タイムスにハイパーホテルが同年12月から翌年3月にかけて那覇、平良、石垣市にオープンする旨掲載された記事である。そうすると、申立人の提出した前記各甲号証によっては、「ハイパーホテル」に関する新聞記事の掲載が2回あるが、その中1回は沖縄で発行されたものであり、また「ハイパーホテル」の広告は、朝日新聞一紙であり、しかも筑紫及び福岡の地方版に各1回掲載されたにすぎないものであるから、本件商標の登録出願当時、「ハイパーホテル」が申立人の「宿泊施設の提供」等の役務を表示する商標として九州の需要者の間で広く認識されていたとは、認められない。また、申立人主張のテレビ放映及び申立人提出の前記以外の甲各号証を考慮したとしても、申立人の使用する「ハイパーホテル」商標が周知であったとするには証左が足らないといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、その登録出願時以前に、申立人が「宿泊施設の提供」等に使用する商標として需要者の間に広く認識されている「ハイパーホテル」に類似するものである旨の申立人の主張は、採用することができない。 (3)結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号及び第10号に違反してされたものと認められないから、商標法第43条の3第4項により、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2002-10-30 |
出願番号 | 商願2000-43689(T2000-43689) |
審決分類 |
T
1
651・
22-
Y
(Z42)
T 1 651・ 25- Y (Z42) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 水落 洋 |
特許庁審判長 |
田辺 秀三 |
特許庁審判官 |
小林 薫 岩崎 良子 |
登録日 | 2001-08-24 |
登録番号 | 商標登録第4501098号(T4501098) |
権利者 | ナサコーポレーション株式会社 |
商標の称呼 | ハイパーホテル、ハイパー |
代理人 | 伊藤 哲夫 |
代理人 | 加藤 久 |