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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(一部取消、一部維持) Z25
管理番号 1080395 
異議申立番号 異議2002-90167 
総通号数 44 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2003-08-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-03-18 
確定日 2003-07-01 
異議申立件数
事件の表示 登録第4528529号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第4528529号商標の指定商品中「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」についての商標登録を取り消す。 本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品についての商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第4528529号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成よりなり、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,帽子,ズボンつり,バンド,ベルト,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、平成13年1月24日登録出願、同13年12月14日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、以下のとおりの登録第4378078号商標(以下「引用商標」という。)を引用し、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念において類似し、かつ、その指定商品も引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。したがって、本件商標の登録は取り消されるべきである旨申し立てた。
引用商標は、別掲(2)のとおりの構成よりなり、第25類「被服,履物,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、平成7年7月12日登録出願、同12年4月21日に設定登録されたものである。

第3 取消理由通知の要旨
本件商標は、別掲(1)のとおりであるところ、その図形は、オーストラリア特産の哺乳動物で、雌は袋状の腹部に子を入れて育てる動物として広く知られているカンガルーを写実的に描いたものと容易に認識できるものであるから、これよりは「カンガルー」の称呼及び観念を生ずること明らかである。
他方、引用商標は、別掲(2)のとおり文字と図形の結合よりなるところ、その構成中の図形部分は、少し図案化されているもののカンガルーの特徴をよく捉えて描かれており、加えて、文字部分はカンガルーを欧文字で表記したと認められる「KangaROOS」の文字よりなるから、この構成からは「カンガルー」の称呼及び観念を生ずること明らかなものである。
してみれば、本件商標と引用商標は、「カンガルー」の称呼、観念を共通にする類似する商標であり、また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は同一又は類似の商品と認められるものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならない。

第4 商標権者の意見
1.「カンガルー」の称呼及び観念を生ずる登録商標が併存している事実
引用商標の出願以前にも「カンガルー」の称呼及び観念を生ずる先登録商標が存在したにもかかわらず、「カンガルー」の称呼及び観念を生ずる引用商標がこれら先願登録商標に拒絶されることなく登録され、かつ、引用商標の後にも「カンガルー」の称呼及び観念を生ずる商標が登録され併存している事実がある(乙第3号証ないし乙第5号証、乙第7号証ないし乙第9号証)。すなわち、本件商標の指定商品である衣類等の分野の取引者、需要者は、単に図形から生じる「カンガルー」の称呼及び観念のみで、一つの商標を他の商標と識別しているのではなく、カンガルー図形の各構成部位の態様や描き方の相違、全体的な印象を総合的にみて識別しているのである。
したがって、乙第3号証ないし乙第5号証、乙第7号証ないし乙第9号証が併存している事実からは、たとえ、カンガルー図形を構成要素としているために「カンガルー」という称呼、観念を共通にする商標であっても、需要者が全体観察した場合に、出所の混同を生じないものであれば登録されていることが明らかである。
2.外観の非類似について
引用商標は、文字と図形の結合商標であり、その構成中の大部分を「KangaROOS」の文字が占めており、その右上方にカンガルーが右向きに耳を寝かせて疾走している構図である。さらに、文字部分の表記方法も単なる「Kangaroos」とは異なり、後ろの4文字を「ROOS」と大文字である。
これに対して、本件商標は、カンガルーの図形のみの商標であって、該カンガルーは、左向きで耳を立てて着地している構図において、一見しただけで引用商標とは如実に区別されるものである。
カンガルー図形のみをとって比較した場合でも、引用商標のカンガルー図形が黒一色のシルエット図形で平面的に描かれており、目や鼻も特定できない描き方をしているのに対し、本件商標は、カンガルーの体全体が茶色の濃淡で写実的に描かれており、顔や体の各部が立体的に描かれていおり、引用商標とはその各部の描き方において全く共通するものがない。
したがって、両商標は、需要者が一見したときに混同するおそれはない。
3.称呼及び観念の非類似について
引用商標は、その構成文字が後ろの4文字を「ROOS」と大文字にして強調する特殊な表記方法であるから、これより「カンガルーズ」の称呼のみが生ずるのであって、取消理由にあるような「カンガルー」の称呼は生じない。
これに対し、本件商標は、文字を構成要素としないため特定の称呼は生じない。
また、引用商標はその構成文字から「複数のカンガルー」という観念を生ずるのに対し、本件商標は文字を有しないため特定の観念は生ぜず、両者は観念上非類似である。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼及び観念上も相紛れるおそれはない。
4.引用商標が登録された経緯について
引用商標は、審査段階で3件の登録商標が引用され、その拒絶理由により拒絶査定となったが、本件申立人は、拒絶査定に対する不服審判を請求した。同審判事件において、本件申立人は、審判請求理由補充書(乙第10号証)の中で、カンガルーの図形商標が併存している登録例(乙第10号証の第4号証ないし第10号証)を挙げ、「特許庁における審査においては、『カンガルー』なる動物をモチーフとした図形商標については、称呼・観念について類似性を見ない」旨の主張をしたところ、拒絶査定が覆り登録に至ったものである。
5.むすび
以上のように、単にカンガルー図形であるという一点における称呼、観念のみをもって本件商標を引用商標と類似であるとすることはできない上に、両商標を全体的に観察するとき、各構成要素の態様、その描き方において両者に共通するものがなく、全体の印象を全く異にする。しかも、引用商標からはその構成文字から「カンガルーズ」の称呼及び「複数のカンガルー」という観念が生じるの対し、本件商標は特定の称呼、観念は生ぜず、両商標の間で互いに相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号の規定には該当しないものであり、登録を維持されるべきである。

第5 当審の判断
1.本件商標及び引用商標が使用される商品の取引の実情等について
本件商標及び引用商標が使用される商品「被服、履物類」等の商品の主たる需要者は、老人から若者までを含む一般的な消費者であり、また、「運動用特殊衣服、運動用特殊靴」にあっても、その需要者の多くが一般的な消費者であることに何ら変わりない。
一方、この種商品における商標の表示方法は、例えば、被服の場合は、衿吊り(洋服をつるすために、後ろ中央の襟付けの所につけたテープ)に、刺繍などにより表示する方法、あるいはタグやシール等に表示する方法、ワンポイントマークとして表示する方法などが採られているのが一般的であり、また、靴などにあっても、靴底や中敷き等に表示され、商標自体比較的目立たない箇所に小さく表示される場合が少なくないのが実情である。
したがって、本件商標及び引用商標の類否の判断に当たっては、上記取引の実情及び両商標が使用される商品における需要者の注意力を考慮して判断すべきである。
2.称呼及び観念について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲(1)のとおり、図形よりなるものであるところ、該図形が「カンガルー」であることについては、商標権者は何ら争うところはない。
ところで、本件商標は、商標権者も述べているように、「カンガルーの体全体が茶色の濃淡で写実的に描かれており、顔や体の各部が立体的に描かれている」ものであって、本件商標の指定商品の分野における需要者が、カンガルーの特徴を端的に表した図形よりなる本件商標に接した場合、カンガルーを観念することは何ら疑いをはさむ余地はないというべきである。
してみると、本件商標は、その指定商品の需要者が「カンガルー」と観念して取引に当たるとみるべきであり、該観念から「カンガルー」の称呼が生ずることは明らかである。
(2)引用商標について
引用商標は、別掲(2)のとおり、図形と文字との組合せよりなるものであるところ、その構成中の図形部分が「カンガルー」であることについては、商標権者は何ら争うところはない。そして、引用商標中の文字部分は、「KangaROOS」の文字を書してなるものであるから、これより「カンガルーズ」の称呼を生ずるものであり、「kangaroo」の複数形を表すものであることは、商標権者の主張のとおりである。
しかしながら、わが国の一般の消費者の間でも、英語が比較的親しまれているとはいえ、英語圏の国ほどに名詞の単数形、複数形の差異にこだわることは極めて少なく、たとえ、単数形であるか、複数形であるかの違いが分かる場合であったとしても、複数形を表す「s」の文字部分を除いた英単語より生ずる意味をもって観念する場合が多いとみるのが相当である。
してみれば、引用商標は、これを構成する「KangaROOS」の文字及びカンガルーの図形とが相俟って、その需要者は、「カンガルー」と観念して取引に当たるとみるべきであり、該観念から「カンガルー」の称呼をも生ずるということができる。
(3)したがって、本件商標と引用商標は、「カンガルー」の称呼、観念において類似するものである。
3.外観について
本件商標は、カンガルーの図形よりなるものであるのに対し、引用商標は、カンガルーの図形に加え、「KangaROOS」の文字を結合してなるものであるから、両者は、構成全体をみれば、確かに外観上区別し得る差異を有するものである。
また、両商標のカンガルーの図形をみた場合においても、本件商標のカンガルーの図形は、茶色の濃淡を用い写実的に描き、左向きであるのに対し、引用商標のそれは黒塗りのシルエット風で右向きであるから、異なるものであるといえる。
しかしながら、両商標のカンガルーの図形において、上記した差異があるとしても、いずれのカンガルーも、顔を前に向け、尾をほぼ水平にまっすぐ伸ばし、前足を胸の前で小さく折り曲げ、後ろ足は大地を蹴ったあとのように両足を揃えて前に大きく出しており、全体の姿勢が跳躍しているという点で構成の軌を一にするものである。
一方、前記したとおり、本件商標及び引用商標が使用される被服などの商標の表示方法は、衿吊りやワンポイントマークとして、刺繍などにより表示する場合も少なくなく、商標自体比較的目立たない箇所に小さく表示されたり、被服等の地色によっては、本件商標のように色彩が施されている商標であっても、その色彩が目立たなくなる場合もあるというのが実情である。また、靴などにあっても、靴底に表示される場合には、商標の色彩は施されない場合が多いといえる。
さらに、電話等の取引においては、本件商標及び引用商標より生ずる称呼、観念をもって取引がなされることはいうまでもない。
上記取引の実情からすると、共に「カンガルー」の称呼、観念を生ずる本件商標と引用商標とを外観上対比した場合、本件商標中の「KangaROOS」の文字部分の有無の差異が外観上の差異に大きな影響を及すことはないというのが相当である。
したがって、本件商標と引用商標とは、これらが使用される商品の取引の実際においては、外観上相紛らわしい商標といわざるを得ない。
4.商標権者の主張について
商標権者は、乙第3号証ないし乙第5号証、乙第7号証ないし乙第9号証及び乙第10号証に添付の第4号証ないし第10号証の登録例を挙げ、「カンガルー」の称呼及び観念を共通にする商標であっても、需要者が全体観察した場合に、出所の混同を生じないものであれば登録されている事実があるから、本件商標と引用商標とは類似するものではない旨主張する。
しかしながら、乙第3号証ないし乙第5号証は、シルエット図形に、それぞれ「WALLABY」、「WALLABY SPORT」、「CLASSIC」の文字を結合してなる商標であり、乙第7号証は、子供を腹の袋に入れ正面を向いて立ち止まっているカンガルー図形であり、乙第8号証は、斑点模様のあるカンガルー図形、乙第9号証は、菱形と矢尻型の図形とシルエット図形を結合してなる商標、乙第10号証の第4、5、7ないし10号証は、漫画風のカンガルー図形よりなる商標であるか、漫画風のカンガルー図形に他の文字ないし他の図形を結合してなる商標であり、また、乙第10号証の第6号証は、半円とシルエット図形を結合してなる商標であって、これらの商標は、それぞれの構成上の特徴に基づいて他の商標と識別し得ると判断されて登録されたものであるから、これらの商標が登録され、併存している事実があるとしても、カンガルーを写実的に表し、これより「カンガルー」の称呼、観念を生ずる本件商標と、カンガルーの図形及び「KangaROOS」の文字を結合し、これより「カンガルー」の称呼、観念を生ずる引用商標とが類似するとの前記判断に影響を及ぼすものとはいえない。
5.むすび
以上のとおり、本件商標は、引用商標と称呼、観念及び外観のいずれも点においても類似する商標であり、その指定商品中の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、上記指定商品についての登録は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものといわなければならなず、商標法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものとする。
また、本件登録異議の申立てに係るその余の指定商品については、引用商標に係る指定商品と商品の品質等において相違し、類似する商品と認めることはできない。したがって、本件登録異議の申立てに係る指定商品中の「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,えり巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,布製幼児用おしめ,ネクタイ,ネッカチーフ,マフラー,耳覆い,帽子,靴類(「靴合わせくぎ・靴くぎ・靴の引き手・靴びょう・靴保護金具」を除く。),草履類,運動用特殊衣服,運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」以外の商品については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではなく、取り消すべき理由がないものであるから、同第4項の規定により登録を維持する。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 (1)本件商標


(色彩は原本参照)

(2)引用商標


異議決定日 2003-02-12 
出願番号 商願2001-4776(T2001-4776) 
審決分類 T 1 651・ 26- ZC (Z25)
最終処分 一部取消  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
中嶋 容伸
登録日 2001-12-14 
登録番号 商標登録第4528529号(T4528529) 
権利者 パラス ホールディングズ インコーポレイテッド
代理人 鈴木 守三郎 
代理人 鈴木 弘男 

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