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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z25
管理番号 1078255 
審判番号 無効2002-35119 
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-03-29 
確定日 2003-05-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4370503号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4370503号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4370503号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成10年5月28日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同12年3月24日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第2693722号商標(以下「引用商標1」という。)、登録第2671514号商標(以下「引用商標2」という。)、登録第2708505号商標(以下「引用商標3」という。)、登録第2593080号商標(以下「引用商標4」という。)、登録第4025668号商標(以下「引用商標5」という。)、登録第4180654号商標(以下「引用商標6」という。)、登録第3324363号商標(以下「引用商標7」という。)、登録第4376378号商標(以下「引用商標8」という。)、登録第4378318号商標(以下「引用商標9」という。)、登録第4376377号商標(以下「引用商標10」という。)、登録第4399811号商標(以下「引用商標11」という。)、登録第1587778商標(以下「引用商標12」という。)、登録第2609079号商標(以下「引用商標13」という。)、登録第1423465号商標(以下「引用商標14」という。)、登録第2693723号商標(以下「引用商標15」という。)、登録第2704525号商標(以下「引用商標16」という。)、登録第2693724号商標(以下「引用商標17」という。)、登録第2671515号商標(以下「引用商標18」という。)、登録第2528490号商標(以下「引用商標19」という。)、登録第2160863号商標(以下「引用商標20」という。)、登録第2190105号商標(以下「引用商標21」という。)、登録第2147023号商標(以下「引用商標22」という。)、登録第2199877号商標(以下「引用商標23」という。)及び登録第4522864号商標(以下「引用商標24」という。)は、別掲のとおりの構成よりなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第94号証(枝番を含む。)を提出した。
1.商標法第4条第1項第15号について
(1)請求人及び引用商標の沿革と使用実績
請求人、アディダス サロモン アーゲ-(adidas‐Salomon AG)は、世界的に有名なスポーツ用品メーカーであり、その歴史は1920年に創始者アディ・ダスラ-(Adi Dassler)がスポーツシューズを開発したことに始まる(甲第26号証の1ないし10)。
引用商標1ないし引用商標19及び引用商標24に共通する概念であるところの3本線(Three Stripes)が請求人の商標として採択使用されたのは1949年のことである。以後、「3本線」は50年を超える長期にわたり今日まで請求人の業務に係る商品及び役務の識別標識として世界各国で使用され親しまれている。
上記「3本線」からなる引用商標は、請求人の製造するスポーツシューズの品質と性能への高い評価と相侯って「勝利を呼ぶ3本線」の愛称で急速に需要者に広く知られることになった。引用商標を使用したスポーツシューズは、1952年のオリンピック・ヘルシンキ大会で西ドイツ選手が着用したことにより世界の舞台に初登場した。その後のオリンピック、世界選手権、欧州選手権等の国際試合における請求人のスポーツシュ一ズを着用した選手の活躍によって、請求人のスポーツシューズの優れた性能が世界の需要者に証明され、これと同時に請求人のスポーツシューズに採用される引用商標の名声も不動のものとなった。
例えば、請求人の商品カタログ(甲第31号証)は、1932年のロサンゼルス大会から1976年のモントリオール大会までのオリンピックにおいて、請求人のスポーツシューズを着用した選手の比率及びメダル獲得数のデータ並びにメダリスト達が着用した請求人のシューズの写真を示すものである。
1970年に初めて請求人のサッカーボールがサッカーのワールドカップ大会の公式ボールとされ、これ以降今日まで連続して請求人のボールが公式ボールに採用されている(甲第26号証の7)。
請求人の製造販売に係るサッカーユニフォームは、請求人の本国ドイツ国をはじめとする世界各国の代表チームやプロリーグチームが採用している(甲第53号証)。
加えて、日本サッカー協会は、1999年4月1日から5年契約で「3本線」の商標を使用した請求人の製造販売に係るユニフォームを日本代表チームユニフォームに採用を決定した(甲第65号証ないし甲第67号証)。
請求人のサッカーシューズについて専属契約を結んだ世界的なプロサッカー選手としては、古くはドイツのブンデスリーガの「Bayern Munchen」(「Munchen」の「u」は、ウムラウトがある。)所属のFranz Beckenbauer(フランツ・べッケンバウは、アー)、現代では、スペインのリガ・エスバーニャーラの「Real Madrid」所属のRaul Gonzalez Blanco(ラウール・ゴンサーレス・ブランコ)等を挙げることができる。
サッカー以外のスポーツ用品についても、請求人の商品は著名である。請求人は、世界一流のテニスプレーヤーらと専属契約を結び、請求人の商品を供与して自社商品の広告に起用するとともに、彼らの名前を冠した商品シリーズを一般需要者向けに製造販売している(甲第63号証及び甲第64号証)。
(2)「3本線」に関する広告活動
請求人は、3本線を同社の商標として最も重要なものと認識し、引用商標に示すとおり様々な態様について商標登録を取得している。3本線の重要性は、1972年に採用され(甲第26号証の7)、引用商標と共に請求人の商標として著名な三つ葉を象った商標が3本線を構成要素として採用している点にも見出すことができる(甲第68号証ないし甲第82号証)。
請求人は、3本線が請求人の業務に係る商品の識別標識であるという認識を需要者に広く深く浸透させるための広告宣伝活動にも力を注いでいる。請求人は「3本線のブランド」を意味する、引用商標20ないし引用商標23を取得している。また、需要者の間で広く認知されている「3本線=請求人」というイメージの保持と徹底を図るべく、「3本線」又は「Three Stripes」というフレーズを自己の業務に係る商品と常に結びつけた形で商品カタログや広告等に使用している(甲第32号証及び甲第48号証)。
少なくとも1989年から1996年までの7年間、商品カタログの裏表紙(甲第35号証ないし甲第40号証、甲第43号証ないし甲第48号証及び甲第62号証)や雑誌掲載広告(甲第56号証及び甲第62号証)には、引用商標(甲第2号証、甲第3号証及び甲第13号証ないし甲第15号証)又はこれに類似する「3本線」の商標の表示と共に「3本線はアディダスの登録商標です」なる表示が継続的に記載されたことが認められる。
(3)日本における使用実績
我が国における請求人の営業活動は、遅くとも1971年ころに当時の請求人商標の日本における使用権者であった株式会社デサントによって開始された(甲第27号証)。
これ以降1998年までは株式会社デサントを介して請求人の製造に係るポロシャツ、ティーシャツ、スウェットスーツ、帽子等の被服、運動靴、サンダル等の履物、運動用特殊衣服、運動用特殊靴、ベルト、かばん類、布製身回品等について引用商標が使用された(甲第27号証ないし甲第48号証及び甲第54号証ないし甲第64号証)。
続く1999年1月から現在に至るまでは、アディダスジャパン株式会社によって営業活動が継続されている(甲第49号証ないし甲第53号証、甲第83号証及び甲第84号証)。
(4)引用商標の使用態様と著名性
請求人による引用商標の使用態様は1949年の採択時から50年以上経過した今日でも本質的に変わっていない。例えば、引用商標1、引用商標2及び引用商標12ないし引用商標18は、1949年に採択された「3本線」を使用した靴(甲第26号証の8及び9並びに甲第31号証)と同様に運動靴等や運動用特殊靴の甲のひも部分と靴底を直線で斜めに結ぶサイドラインとして靴の両側面に左右対称に使用されている(甲第31号証、甲第34号証ないし甲第39号証、甲第44号証、甲第45号証、甲第49号証、甲第83号証及び甲第84号証)。
このようなサイドラインとして用いる3本線は、請求人による長期的かつ継続的な使用実績によって同社の取扱いに係る商品の出所表示として広く知られており、例えば靴に関しては、引用商標24に示す立体商標として商標登録されている。
50年以上にわたる引用商標の継続的使用と広告宣伝の結果、引用商標1ないし引用商標19及び引用商標24は、本件商標の登録出願時には既に本件商標の指定商品の分野の需要者において広く知られていたものである。
(5)本件商標と出所混同のおそれ
ア.本件商標は引用商標と構成の軌を一にし同じ外観印象を与える。
本件商標は、輪郭線で描いた4本の長さの異なる細長い短冊状四角形(以下「短冊状四角形」という。)を斜め右下がりに平行かつ等間隔に配列してなる商標である。各短冊状四角形の幅は均等である。これらの短冊状四角形が纏まって全体として構成する外郭の形状は厳密には台形でも三角形でもないが、全体から受ける外観印象は台形又は三角形である。
イ.引用商標1及び引用商標2の図形部分は、3本の長さの異なる細長い短冊状四角形を斜め右下がりに平行かつ等間隔に配列してなる商標であり、各短冊状四角形の幅は均等である。これらの短冊状四角形が纏まって全体として構成する外郭の形状は台形である。
引用商標3ないし引用商標7の図形部分及び引用商標8ないし引用商標11は、3本の長さの異なる細長い短冊状四角形を斜め右下がりに平行かつ等間隔に配列した商標であり、各短冊状四角形の幅は均等である。これらの各短冊状四角形が構成する外郭の形状は厳密には三角形ではないが全体から受ける外観印象は三角形である。
引用商標12ないし引用商標14は、輪郭線で描いた3本の長さの異なる細長い短冊状四角形を斜め右下がりに平行かつ等間隔に配列してなる商標であり、各短冊状四角形の幅は均等である。これらの短冊状四角形が纏まって全体として構成する外郭の形状は台形である。
引用商標24の靴に立体に表示された模様部分は、3本の長さの異なる細長い短冊状四角形を斜め右下がりに平行かつ等間隔に配列してなる商標であり、各短冊状四角形の幅は均等である。これらの短冊状四角形が纏まって全体として構成する外郭の形状はほぼ台形である。
ウ.したがって、本件商標と引用商標の相違点は、短冊状四角形の数が4本(本件商標)か3本(上記の引用商標)かという点のみであり、短冊状四角形の形状やその配列の仕方を含めた図形構成の発想は全く同じであり、全体から受ける外観印象が台形又は三角形である点でも全く同じである。
このように、本件商標と引用商標は全体としての着想、構図等が共通するから、明らかに構成の軌を一にする。
よって、本件商標が指定商品に使用されるときには、引用商標と極めて紛らわしいものとなる。
エ.本件商標は、靴のサイドラインとして使用される場合以外においても引用商標と相紛らわしいものである。
引用商標3ないし引用商標7の図形部分及び引用商標8ないし引用商標11は、靴の甲のつま先周辺や紐部分のベロ又は靴底等に表示されている(甲第49号証)。
引用商標3ないし引用商標7の図形部分及び引用商標8ないし引用商標11が、被服、運動用特殊衣服等においては、背中・脇・裾等の部分に直接あるいは布製の小さなタグに表示されている(甲第50号証及び甲第51号証)。かばん類では、商品本体の隅、肩紐や手提げ部分の付け根又はネームカード入れに直接又は布製の小さなタグに表示されている(甲第52号証)。
さらにまた、商品カタログの裏表紙には、引用商標1、引用商標2及び引用商標12ないし引用商標14あるいはこれらに類似する「3本線」の商標が表示されている(甲第35号証ないし甲第40号証及び甲第43号証ないし甲第48号証)。
上記使用態様においては、引用商標は極めて小さく表示されることになるから「三角形風」又は「台形風」の外観印象が圧倒的である。
オ.したがって、本件商標が現実に指定商品に使用されるときには、引用商標との細部における相違点は捨象され、引用商標との共通点である「長さの異なる細長い短冊状四角形が纏まって全体として構成する台形風又は三角形風の図形」のイメージのみが圧倒的な外観印象として抽出され、需要者に対してほぼ同一の商標として記憶される。
よって、本件商標と上記引用商標とを時と場所を異にして観察したときには相紛らわしく誤認混同される可能性が高い。
カ.本件商標は「3本線」の商標として認識理解される。
本件商標は、指定商品に使用されるときの態様によって「3本線」の商標として認識理解されるおそれがある。
本件商標において、輪郭線で描いた4本の短冊状四角形で区切られた余白部分は、3本の長さの異なる細長い短冊状四角形を斜め右下がりに互いに平行かつ等間隔に配列した図形を形成している。この3本の余白の短冊状四角形の幅は互いに均等である。また、3本の余白の短冊状四角形は、4本の短冊状四角形より約2倍幅広である。
したがって、本件商標を指定商品に直接表示する場合には、着色と地色との組合せ方によっては3本の余白の短冊状四角形の方が強調され、需要者に対して「3本線」の印象を与える可能性を否定できない。
例えば、本件商標において輪郭線で囲まれた4本の短冊状四角形とこれよりも幅広の余白部分(3本の短冊状四角形)を互いに異なる色彩で着色したときには、3本の短冊状四角形の方が強調され需要者の視覚に訴える可能性が高い。
上記理由より、本件商標が指定商品について使用されるときには、請求人が同種の商品について使用して著名に至っている引用商標と外観印象が同一であって相紛らわしい。また、本件商標はその使用態様により、3本線から構成される商標として認識理解されるから、請求人の商標の出所表示として著名な「3本線」の商標と誤認混同されるおそれがある。
したがって、本件商標は請求人の業務に係る商品と出所混同を生ずるおそれがあることが明らかである。
2.商標法第4条第1項第7号について
本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして指定商品について著名な引用商標1ないし引用商標14及び引用商標24と構成の軌を一にするものであり、商標全体から受ける台形風又は三角形風の印象が共通するから外観印象が極めて紛らわしい。
また、被請求人が本件商標を使用する態様(甲第93号証及び甲第94号証)は、請求人が50年を超える長期にわたり引用商標を使用してきた周知な態様(サイドライン)をそっくり模倣するものである。
さらに、本件商標が実際にその指定商品について使用されるときには、引用商標1ないし引用商標19及び引用商標24に共通する構成要素及び観念であり、かつ、請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名な「3本線」と紛らわしい。すなわち、本件商標が指定商品に使用されるときの着色の仕方によって、本件商標は「3本線」の商標として需要者に認識理解される可能性が高い。
したがって、本件商標が指定商品について使用されたときには、請求人の長年の企業努力及び宣伝活動によって請求人の業務に係る商品を表示するものとして著名性を獲得した引用商標及び「3本線」の商標が有する強力な出所表示機能を稀釈化する。
また、指定商品について使用される本件商標は、引用商標および請求人の商品の出所表示として著名な引用商標及び「3本線」の商標の信用力に便乗するものであり、不正目的による採択使用が推認される。
本件商標の登録及び使用が請求人に経済的及び精神的損害を与えることは疑いない。
よって、本件商標は社会一般道徳及び国際信義に反するものであり、公の秩序を害するおそれがある。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1.請求人の取扱いに係るスポーツシューズ等に使用される3本線について
(1)本件商標の登録出願日(平成10年5月28日)前に発行したと認められる甲第26号証(枝番を含む。)ないし甲第48号証、甲第54号証ないし甲第64号証及び請求の理由によれば、請求人は、スポーツ用品の製造、販売をするメーカーとして1920年に創設されたこと、請求人は、1948年(昭和23年)のオリンピックロンドン大会より、自己の取扱いに係るスポーツシューズに、その左右側面に3本線の入ったものを使用し始めたこと、それ以来、3本線の入ったスポーツシューズは、4年ごとのオリンピック開催時には出場する様々な種目の選手に使用され続けてきたことが認められ、また、請求人の取扱いに係るスポーツシューズ、スポーツウエア等スポーツ用品は、サッカーワールド大会などの国際的競技大会等において使用され、これら商品には3本線を基調としたマークが使用された。
さらに、請求人の取扱いに係る商品は、遅くとも1971年(昭和46年)ころから、請求人の日本における使用権者であったデサント株式会社を通じて、わが国で販売されたことが認められる。
請求人の取扱いに係る各種スポーツ関連商品には、上記のとおり、3本線を基調としたマークが使用されているところ、請求人の取扱いに係る商品中、特に、スポーツシューズについては、引用商標1及び引用商標2の構成中の図形部分、引用商標12ないし引用商標14と同一の構成よりなるもの及びこれに色彩を施したもの並びに引用商標24と同一の構成よりなるもの及びその構成中の靴の側面に描かれた図形部分が使用されてきた。
そして、請求人は、3本線の入ったスポーツシューズ等とともに、「adidas」の文字と3本線の入った三つ葉の図形とを組み合わせた商標、あるいは引用商標3ないし引用商標7と同一の構成よりなる商標を表示して、スポーツ関連の雑誌等に継続して宣伝広告したことが認められる。
また、請求人の発行に係る商品カタログには、引用商標1及び引用商標2の構成中の図形部分と同一の構成よりなる図形とともに、「3本線はアディダスの登録商標です。」との記載が認められる。
(2)上記(1)で認定した事実を総合すれば、請求人の取扱いに係るスポーツシューズをはじめとする各種スポーツ関連商品は、3本線を基調としたマークが使用されるものとして、本件商標の登録出願前より、その需要者の間に広く認識されていたと認め得るところである。
2.本件商標について
本件商標は、別掲のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた細長の台形様輪郭図形を、該輪郭図形の幅より広い間隔をもって4本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
3.引用各商標について
(1)引用商標1及び引用商標2の構成中の図形部分並びに引用商標24の構成中の靴の側面に描かれた図形部分は、別掲のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた細長の黒塗り台形様図形を、該図形の幅より狭い間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
(2)引用商標3ないし引用商標7の構成中の図形部分及び引用商標8ないし引用商標11は、別掲のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾けた黒塗り台形様図形を、該図形の幅の3分の1程度の間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものは最も短く、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなるものである。
(3)引用商標12ないし引用商標14は、別掲のとおり、仮想垂直線に対し、左方向にわずかに傾けたやや幅広で、かつ、左右の縦線を波形にした縦長長方形の輪郭図形を3本描いてなるところ、3本の輪郭図形はいずれも同じ長さで、その間隔は輪郭図形の幅とほぼ同じ程度である。
(4)引用商標15及び引用商標16並びに引用商標17及び引用商標18の構成中の図形部分は、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、かつ、左右の縦線を波形にした黒塗り縦長長方形の図形を3本描いてなるところ、3本の図形はいずれも同じ長さで、その間隔は輪郭図形の幅の3分の1程度である。
(5)引用商標19は、別掲のとおり、仮想垂直線に対し、右方向に約45度傾けた細長の台形輪郭図形を、極めて狭い間隔をもって3本並べ、そのうちの左端に位置するものを最も長くし、右方向に向かって順次短くしていき、右端に位置するものを最も短くした図形よりなるものである。また、3本の台形輪郭図形の上底部と下底部の内側には、それぞれ輪郭に沿って線が引かれているものである。
(6)引用商標20ないし引用商標23は、別掲のとおり、「THE BRAND WITH 3 STRIPES」の文字よりなるものであるから、「ザブランドウイズスリーストライプス」の称呼及び「3本線ブランド」の観念が生ずるものである。
4.出所の混同について
本件商標と引用各商標は、前記2.及び3.の認定のとおり、これらを構成する台形様図形等において、4本と3本の違いがあるが、本件商標は、引用各商標中の特に、引用商標1ないし引用商標7の構成中の図形部分、引用商標8ないし引用商標11及び引用商標24の構成中の靴の側面に描かれた図形部分と、いずれも台形様図形を、仮想垂直線に対し、左方向にやや傾け、そのうちの左端に位置するものを最も短くし、右方向に向かって順次長くしていき、右端に位置するものを最も長くした図形よりなる点において、構成の軌を一にするものであって、この特徴は、看者に強く印象付けられるものということができる。
また、本件商標は、引用各商標中、引用商標1ないし引用商標7の構成中の図形部分、引用商標8ないし引用商標11及び引用商標24の構成中の靴の側面に描かれた図形部分と輪郭図形と黒塗り図形との差異があるとしても、該輪郭図形と黒塗り図形は、本件商標及び引用各商標が使用されるスポーツウエアを含む被服、スポーツシューズを含む靴類等にあっては、実際の使用において、商品の地色により色彩を施したり、色彩を変更したりすることも考えられ、色彩によっては、本件商標を構成する4本の台形様図形が明確には看取されない場合があり、また、被服等のワンポイントマークとして用いられる場合は、本件商標の構成中の左端に位置する図形部分は目立たないということができる。
上記認定のとおり、本件商標と引用各商標との構成態様より受ける印象、及び両商標が使用される指定商品の取引の実情等を総合勘案すると、本件商標をその指定商品について使用した場合は、これに接する取引者、需要者は、著名な請求人の使用に係る引用各商標を連想、想起し、該商品が請求人若しくは請求人と何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあるといわざるを得ない。
5.むすび
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標



引用商標1、引用商標2



引用商標3、引用商標4、引用商標5、引用商標6、引用商標7



引用商標8、引用商標9、引用商標10、引用商標11



引用商標12、引用商標13、引用商標14



引用商標15、引用商標16



引用商標17、引用商標18



引用商標19



引用商標20、引用商標21、引用商標22、引用商標23



引用商標24(立体商標)





審理終結日 2002-12-13 
結審通知日 2002-12-18 
審決日 2003-01-07 
出願番号 商願平10-44915 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z25)
最終処分 成立  
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 中嶋 容伸
茂木 静代
登録日 2000-03-24 
登録番号 商標登録第4370503号(T4370503) 
代理人 佐久間 剛 
代理人 柳生 征男 
代理人 柳田 征史 

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