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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z02
管理番号 1078249 
審判番号 無効2001-35464 
総通号数 43 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-07-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-10-22 
確定日 2003-05-19 
事件の表示 上記当事者間の登録第4446742号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4446742号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4446742号商標(以下「本件商標」という。)は、「CONICA」の欧文字(標準文字)を横書きしてなり、第2類「塗料」を指定商品として、平成10年8月14日登録出願、同13年1月19日に設定登録されたものである。

第2 請求人が引用する商標
請求人が引用する商標は、以下のとおりである。
1.登録第369101号商標(以下「引用A商標」という。)は、「KONICA」の欧文字を横書きしてなり、第18類「写真器械、其ノ他本類ニ属スル商品」を指定商品として、昭和21年7月22日登録出願、同22年8月9日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
2.登録第2145689号商標(以下「引用B商標」という。)は、「コニカ」の片仮名文字を横書きしてなり、第10類「写真機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和59年11月22日登録出願、平成1年6月23日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。
3.登録第1925178号商標(以下「引用C商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、第10類「写真機械器具、その他本類に属する商品」を指定商品として、昭和59年3月15日登録出願、同62年1月28日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第277号証を提出した。
1.請求人は、第2類に「コニカ」商標を登録出願(商願2000-65765)したところ、本件商標を引用した拒絶理由通知が送付され、上記商標登録出願は、現在審判に係属している。
したがって、請求人は、本件無効審判事件に関して利害関係を有する。
2.本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当することについて
本件商標は、引用A商標、引用B商標及び引用C商標が、その出願日である平成10年8月14日以前に日本国内において周知・著名であるために、被請求人がこれを商品「塗料」について使用した場合には、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがあるため無効とされるべきである。
(1)請求人の所有商標について
ア.引用A商標(「KONICA」)について
引用A商標は、ほぼ40年にわたる使用の結果、日本国内において広く知られるに至ったために、旧第1類ないし旧第9類、旧第11類ないし旧第34類、第35類ないし第42類に防護標章として設定登録を受け、かつ更新登録もされ現在に至っている。特に、防護標章登録番号の第31号では、旧第3類の指定商品「染料、その他本類に属する商品」に他人が登録商標を使用することによりその商品と自己の業務に係る指定商品とが混同のおそれがあるとして、指定商品「塗料」を含んだ状態で防護標章登録されている(甲第1号証ないし甲第43号証)。
イ.商標「コニカ」について
請求人は、引用B商標をはじめ、「コニカ」の文字よりなる商標を旧第1類、旧第3類(塗料が取消)、旧第7類、旧第9類、旧第11類、旧第25類、旧第34類、第35類ないし第42類に所有している(甲第44号証ないし甲第58号証)。
ウ.商標「Konica」について
請求人は、引用C商標をはじめ、「Konica」の文字よりなる商標を旧第1類、旧第3類(塗料は取消)、旧第9類、旧第11類、旧第18類、旧第25類、旧第26類、旧第34類、第35類ないし第42類に登録商標を有している(甲第59号証ないし甲第77号証)。
また、引用C商標と図形との結合商標は、旧第1類、旧第9類ないし旧第11類、旧第26類に登録商標を有している(甲第78号証ないし甲第82号証)。
エ.引用B商標と引用C商標との結合商標は、旧第17類、旧第20類、旧第21類、旧第23類、旧第26類、旧第27類に登録商標を有している(甲第83号証ないし甲第88号証)。
(2)上記した引用A商標ないし引用C商標及び引用C商標と図形との結合商標は、その態様より生ずる称呼は全て「コニカ」のみであって、本件商標から生じる称呼「コニカ」と同一の関係にある。
(3)「Konica」商標及び「コニカ」商標の使用実績について
ア.請求人は、甲第89号証ないし甲第267号証に示すように、雑誌及び全国紙・地方紙・業界紙等の新聞の広告に商標「コニカ」、「Konica」を、商品「カメラ、フィルム、フィルムスキャナー、デジタルカメラ、レンズ付きフィルム、プリント用紙」等に使用している。
イ.上記の証拠により引用A商標は、既に旧第3類の指定商品に関して防護標章登録を受け、さらに旧第10類を除く全ての分類に関して防護標章登録を受けている事実から、引用A商標が日本国内において周知・著名となっていることは明らかであると共に、上記(3)ア.に示した雑誌広告及び新聞広告により引用B商標及び引用C商標登録がそれぞれ防護標章登録されていないが日本国内において周知・著名となっていることが判る。
(4)請求人は、その子会社も含め取扱品目は、「一般用:カラーフィルム、カラーペーパー、写真機材、白黒フィルム、白黒印画紙、自動現像機、写真用薬品、カメラ:コンパクトカメラ、スチールビデオシステムなど、情報機器:複写機、フルカラー複写機、ファクシミリ、プリンターなど、医用機材:X線フィルム、自動現像機、レーザーイメージャー、イメージングカメラなど、印刷機材:印刷製版用フィルム、電算写植ペーパー、PS版、カラー検査システム、トータル画像処理システム、自動現像機など、磁気製品:ビデオテープ、フロッピーディスク、光磁気ディスクなど」広範囲にわたる(甲第268号証;請求人パンフレット、1998年3月発行、19頁)。
また、「Konica」商標は、第2類の「トナー」(顔料)に関して使用されている事実がある(甲第269号証;「アスクル2001秋・冬」、335頁)。このことは、販売業者のホームページ写し(甲第270号証)にコニカ複写機に関するトナーの価格表が掲載されていることからも明らかである。請求人は、印刷関連商品を製品名「Color-Decision 2(「2」はローマ数字)」で製造販売しており(甲第271号証)、その中に「印刷と同じ顔料を使用する」と記載されているように印刷用の顔料も取扱商品に含まれている。
さらに、コニカ生産システム部のホームページ写し(甲第272号証)に「化学薬品」、「無機フォトグレード化学材料」、「有機フォトグレード化学材料」、「フォトグレード高分子ベース」等を製造販売している旨記記載があり、「無機フォトグレード化学材料」中の「硝酸銀」に関して詳述したホームページ写し(甲第273号証)の2頁「3.用途」欄には、「導電塗料」、「高温焼成塗料」、「塗料」等と記載されている。このことは請求人の業務に係る商品は、本件商標の指定商品である「塗料」と非常に密接な関係を有していることが判る。
3.答弁に対する弁駁
(1)答弁1.(1)について
工業所有権法逐条解説(1261頁;甲第274号証)における「特定のどの指定商品又は指定役務について防護標章登録があった」の意味は、原登録商標の指定商品が複数ある場合に、原登録商標のどの指定商品について登録商標が日本国内において広く知られていたかは判らないという意味である。審査では全ての防護標章登録された指定商品又は指定役務と原登録商標の指定商品のいずれかとの関係について混同を生じるおそれがあると判断されている。
防護標章登録が「塗料」についてされているという事実は、本件商標の指定商品「塗料」と、引用A商標の指定商品との関係における混同のおそれに関する一つの証左といえる。したがって、被請求人は法解釈を誤って主張しているにすぎない。
(2)答弁1.(2)について
甲第268号証ないし甲第271号証に示すように、請求人の取扱商品は「複写機、スキャナー、トナー」に及ぶものである。
そして、「日本標準商品分類」(177頁ないし178頁;甲第275号証)に示すように、「塗料」には「静電吹付用粉体塗料」が含まれる。この「静電吹付用粉体塗料」に関しては、総合塗装技術センター発行の「粉体塗装技術」(21頁ないし41頁;甲第276号証)に示すように技術が、電子応用機械器具の静電複写機のものと同様の仕組みであると共に、これに使用する「粉体塗料」は、正に静電複写機のトナーとは製法などにおいて近似する。
したがって、請求人が取り扱う商品「トナー」と、被請求人が登録した商品「塗料」とは密接な関係を有する。
特に多角経営化が進む今日、請求人は、甲第271号証を補強する証拠甲第277号証に示すように静電塗料の原材料として使用する硝酸銀を製造販売していることは事実である。この静電塗料の原材料について、請求人が取り扱っている事実からすれば、一般需要者・取引者は、本件商標が「コニカ」と称呼された時に、請求人の製造又は販売に係る商品であるかのごとく誤認を生じることは明かである。
(3)被請求人は、引用A商標の指定商品に「写真機」が含まれることを理由に「カメラ等について周知・著名であるとしても」と主張して、請求人の取扱商品が「カメラ」のみのごとく述べ、無効理由をすり替えている。
しかし、請求人の取扱い商品は「カメラ、フィルム、スキャナー、電子カメラ、静電複写機、トナー、硝酸銀等」に及び(甲第1号証ないし甲第271号証)、静電複写機については、請求人パンフレット(甲第268号証)の最終頁の「歴史」におけるコニカの歩みとコニカ製品のタイムチャートに記載されているように、30年の長きにわたり電子複写機及びその附属品である「トナー」を販売していることが示されている(甲第241号証、甲第268号証ないし甲第270号証)。
べきでる。
4.むすび
以上のことから、引用A商標ないし引用C商標の指定商品と、本件商標の指定商品とは同一又は類似の関係にはないが、いずれも称呼が「コニカ」で同一であるため、被請求人が日本国内で商品「塗料」に本件商標を使用した場合には、需要者は、請求人に係る商品を表示するものとして混同を生じるおそれが非常に高く、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第46条第1項第1号により無効にされるべきである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第5号証を提出した。
1.請求人は、「引用A商標、引用B商標及び引用C商標が、本件商標の出願日で以前に日本国内において周知・著名であるために、被請求人が本件商標をその指定商品について使用した場合には、請求人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある。」ため無効とされるべきである旨主張し、証拠を提出しているが以下反論する。
(1)引用A商標が、防護標章登録を第3類「染料、その他本類に属する商品」を指定商品として取得している事実は認める。
しかし、「防護標章登録は、当該商標権に係る指定商品又は指定役務が二以上ある場合であってそのうちいずれかが非類似商品又は非類似役務と出所の混同を生ずるおそれがあれば受けられるのであり、これを逆にいえば指定商品又は指定役務が二以上のときは、特定のどの指定商品又は指定役務について防護標章登録があったかということは判らないのである。」(特許庁編工業所有権法逐条解説第16版、1261頁)。したがって、請求人の上記防護標章登録もまた引用A商標が著名であるがために指定商品の中の一商品である「塗料」との間に具体的に商品の出所の混同があったから登録されたとはいえず、又これを証する書面の提出もない。
防護標章についての被請求人の主張は、商標法第64条第2項で「混同のおそれがある商品について登録を受けることができる」としているが、実務上指定商品が複数あるときはその中の一つの商品について出所の混同を生ずるおそれがあれば他の商品についても登録が認められており、したがって、防護第31号の登録において、著名な「カメラ」と「塗料」との間で出所の混同が生ずるから登録が認められたと断定することは出来ない、とするものである。
そこで防護第31号について述べるに、請求人の出願(商願昭62-29453)は平成2年の時点で商標法第64条の要件を具備しない(著名性の否定)との理由で拒絶されており(乙第2号証)、意見書の提出により著名性を認めた上で、具体的に出所混同が生ずる商品を明確にすることなく、「染料、その他本類に属する商品」に登録が認められ、このような審査は第3類の他に第12類(第2号)、第7類(第3号)、第16類(第7号)、第17類(第8号)等多数みられ、上述のように全部の商品につき出所の混同が生ずると考えることは出来ない(審査上個々の商品につき混同の有無を検討することには無理がある)。
次に本件商標であるが、その出願に対し、請求人所有の登録第794967号、同第1842795号、同第2393802号商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に該当するとされた。そこで被請求人は、引用された3件の登録商標の指定商品中「塗料」につき取消審判を請求し、不使用により取り消されたことことにより、その他拒絶の理由を発見しないとして登録査定を受けたものであり、その結果から判断して「カメラ」と「塗料」との間の出所の混同は完全に否定されている(乙第3、4号証)。
(2)請求人が提出した雑誌広告及び新聞広告の使用実績は、引用B商標(コニカ)及び引用C商標(Konica)がカメラ、フィルム等の商標として周知・著名であることを証明することにはなるが、取引系統等を全く異にする本件商標の指定商品「塗料」との関係において、これらの商標が具体的に出所の混同を生じさせることを立証するものではない。
(3)さらに、たった一つのホームページに「硝酸銀」の用途として「塗料」等の記載があったとしても、塗料業界において請求人の「硝酸銀」が広く知られている事実はなく、又これを立証する書面の提出もない。
(4)請求人の第3類防護標章出願は一旦拒絶されているが、トナー(顔料)との関連で登録が認められたものと思われる(乙第1号証)。
一方、本件商標は、商標法第4条第1項第11号で拒絶されたものの、引用された登録第1842795号商標が「塗料」に使用されていなかったため、その取り消しにより登録を認められたもので、これらの事実は「カメラ」と「塗料」は常識的に関連性がなく、たとえ引用A商標が「カメラ」等について周知・著名であるとしても、両商品間で出所の混同は生じないとする明確な根拠となるものである。
(5)ところで、被請求人の前身は「Conica Handels und Productions AG」といい、その設立は1977(昭和52)年5月9日である(乙第4号証)。
一方、請求人はその商号を「小西六写真工業(株)」から「コニカ(株)」へ1987(昭和62)年10月に改称しており、商標「KONICA」等の強力な宣伝広告はその前後からであり、少なくとも1977(昭和52)年以前に欧州(特にドイツ)において著名であったかどうか不知であり、商号「CONICA」の選択におけるフリーライドを否定する。なお、スイス本国での登録(第321548号)は1982年9月20日、国際登録(第475925号)は1983年3月9日である(乙第5号証)。
(6)商標法第4条第1項第15号は、商品の出所の混同を規定したもので、これは広義の混同、すなわち企業の混同も含まれるとされている。したがって、請求人において塗料メーカーを系列会社に有している場合はこれに該当すると思われるが、この点についての証左はなく、「トナー」や「硝酸銀」を扱っているから塗料について出所混同を生ずるとするのは混同の概念の拡大解釈といわざるを得ない。故に請求人は、「カメラ」と「塗料」との関係について立証すべきであり、請求人の販売している商品についてすべて著名であるかの如き前提とした出所混同に対する見解は独断といわざるを得ない。
請求人は、複写機との問題で「トナー」を、又「硝酸銀」についてはその用途として「導伝塗料」等の記載があると述べているが、引用A商標は、旧第18類を指定商品とするものであり、その中のおそらく「写真機械器具」についての著名性が認められたものであって、「複写機」、「トナー」、「硝酸銀」について著名性が認められたわけではない。甲第89号証ないし甲第267号証は、カメラ、フィルム、フィルムスキャナー、デジタルカメラ、レンズ付フィルム等についての広告媒体で、しかも1987(昭和62)年以降のものである。
2.以上により、本件商標をその指定商品に使用しても互いに品質、用途はもとより、それを取扱う販売系統等を著しく異にし、スイス国法人である被請求人が請求人と経済的、組織的に何等かの関連があると誤認されるおそれは考えられず、さらに一般的にカメラメーカ(広く電気メーカーにしても)が塗料を製造・販売している事例はほとんど関知しないことからも、商品の出所について混同を生じさせるおそれはない。

第4 当審の判断
1.商標法第4条第1項第15号にいう「『混同を生ずるおそれ』の有無は、当該商標と他人の表示との類似性の程度、他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や、当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質、用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などの照らし、当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意を基準として、総合的に判断されるべきである。」(平成12年7月11日、最高裁第3小法廷判決)
2.上記1.を前提にして本件についてみるに、
(1)甲第268号証(請求人の会社案内)によれば、請求人は、1873年(明治6年)に創業し、1936年(昭和11年)に株式会社小西六を設立した(1943年に社名を「小西六写真工業株式会社」に変更。)。1948年(昭和23年)に「コニカ」ブランドのカメラを発売し、1963年(昭和38年)にはAE(自動露出調整)カメラ「コニカオートS」を、1968年(昭和43年)にはTTL方式のAE一眼レフカメラ「コニカFTA」、35mmコンパクトカメラ「コニカC35」(じゃーにーコニカ)を、1975年(昭和50年)には連動ストロボ内蔵カメラ「コニカC35EF」(ピッカリコニカ)を、1977年(昭和52年)には自動焦点カメラ「コニカC35AF」(ジャスピンコニカ)を、1978年(昭和53年)にはオートデート機構内蔵カメラ「コニカC35EFD」を発売し、1948年以来請求人が製造販売するカメラに「コニカ」ブランドを使用してきたこと、1987年(昭和62年)には社名を「コニカ株式会社」に変更し、請求人が取り扱う製品について「コニカ」ブランドに統一したこと、請求人は、1948年に「コニカ」ブランドのカメラを発売する以前より、「さくら」ブランドで写真用フィルムを製造、販売していたが、写真用フィルムやカメラ以外にも、1971年(昭和46年)以来電子複写機等の製造販売も手掛けてきたことなどが認められる。
(2)甲第89号証ないし甲第267号証によれば、請求人は、様々なジャンルの雑誌に、1989年(平成元年)ころから請求人の取扱いに係る商品「カメラ、写真用フィルム、フィルムスキャナー、デジタルカメラ、レンズ付きフィルム、プリント用紙」等に、「Konica」商標及び「コニカ」商標を表示して盛んに宣伝広告したこと、全国紙、地方紙及びスポーツ新聞に、1987年(昭和62年)ころから請求人の取扱いに係る商品「カメラ、写真用フィルム、レンズ付きフィルム、デジタルカメラ」等に「Konica」商標及び「コニカ」商標を表示して宣伝広告したことが認められる。
(3)上記(1)及び(2)を総合すると、請求人は、引用B商標(コニカ)及び引用C商標(Konica)について、幅広い需要者層を対象とした宣伝広告をした結果、引用B商標及び引用C商標は、「コニカ」の称呼をもって、請求人の取扱いに係る商品「カメラ、写真用フィルム、レンズ付きフィルム」等を表示するためのものとして、本件商標の登録出願日である平成10年8月14日前より、わが国の一般の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。
(4)引用B商標及び引用C商標並びにこれら商標より生ずる「コニカ」の称呼からは、わが国においては、請求人の取扱いに係る商品「カメラ、写真用フィルム」等について使用される周知著名な商標、及び請求人の略称を想起させる以外に、他の語義が想起されないものであり、独創性を有する語であるといえる。そして、引用B商標及び引用C商標を構成する「コニカ」及び「Konica」がこのように独創的な語であるが故に、需要者は、「コニカ」及び「Konica」の各商標並びにこれら商標より生ずる「コニカ」の称呼に印象付けられ、記憶し、これらより請求人の取扱いに係る「カメラ、フィルム」等を表示する商標、あるいは請求人の略称を想起するものというのが相当である。
(5)本件商標は、前記したとおり、「CONICA」の文字よりなるものであるところ、これより「コニカ」の称呼を生ずるものである。
また、本件商標を構成する「CONICA」の文字は、引用A商標と語頭の「C」と「K」の文字の差異を有するにすぎないものであり、引用C商標(「Konica」)とは、語頭の「C」と「K」の差異及び語頭以外の他の文字が大文字と小文字との差異を有するものの、語頭の文字以外の綴りは同一である。
してみると、本件商標は、引用各商標と「コニカ」の称呼を共通にするのみならず、引用A商標及び引用C商標と外観上も相紛らわしいものというべきである。
(6)本件商標は、その指定商品を「塗料」とするものであるところ、該「塗料」と引用B商標及び引用C商標が使用される、例えば「写真用フィルム」は、いずれも化学的な製品という点で共通するばかりでなく、甲第273号証及び甲第277号証によれば、請求人は、写真フィルムの感光材料、あるいは塗料の原材料として使用される硝酸銀の販売を行っていることが認められる。また、甲第269号証及び甲第270号証によれば、請求人は、FAX用トナー、コピー機用トナーを販売していることが認められ、これらのトナーは、物体に着色をするという点において塗料と共通する商品であるといえる。
さらに、甲第268号証によれば、請求人は、「一般用」として「カラーフィルム、カラーペーパー、写真機材、白黒フィルム、白黒印画紙、自動現像機、写真用薬品など」、「カメラ」として「コンパクトカメラ、スチールビデオシステムなど、「情報機器」として「複写機、フルカラー複写機、ファクシミリ、プリンターなど」、「医用機材」として「X線フィルム、自動現像機、レーザーイメージャー、イメージングカメラなど」、「印刷機材」として「印刷製版用フィルム、電算写植ペーパー、PS版、カラー検査システム、トータル画像処理システム、自動現像機など」、「磁気製品」として「ビデオテープ、フロッピーディスク、光磁気ディスクなど」広範囲にわたる商品を取り扱っていることが認められる。
(7)前記(3)ないし(6)で認定した事実に照らせば、本件商標をその指定商品である「塗料」について使用した場合、これに接する取引者及び需要者は、該商品が請求人の取扱いに係る商品であると誤信するか、あるいは請求人の系列会社等、請求人と緊密な営業上の関係を有する営業主の業務に係る商品であると誤信するおそれがあるといわなければならない。
したがって、本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、引用各商標を使用した商品との間に、出所の混同を生ずるおそれがある。
3.被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人が提出した雑誌広告及び新聞広告の使用実績は、引用B商標及び引用C商標がカメラ、フィルム等の商標として周知・著名であることを証明することにはなるが、取引系統等を全く異にする本件商標の指定商品「塗料」との関係において、これらの商標が具体的に出所の混同を生じさせることを立証するものではない旨主張する。
しかしながら、前記2.で認定したように、引用B商標及び引用C商標を構成する「Konica」及び「コニカ」は、極めて独創的な商標であることに加え、請求人は、これら商標を表示してその取扱いに係る「カメラ、写真用フィルム」等について盛大に宣伝広告した結果、引用B商標及び引用C商標並びにこれらより生ずる「コニカ」の称呼は、本件商標の登録出願前より、わが国の取引者、需要者の間に広く認識されるに至っていたのである。そして、本件商標は、引用B商標及び引用C商標より生ずる称呼と同一であることも併せ考えると、これをその指定商品である「塗料」について使用した場合は、請求人の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあると判断するに十分な要因があるというべきである。
(2)本件商標は、その審査の段階で、請求人所有の登録第794967号ほか2件の登録商標が引用され、商標法第4条第1項第11号に該当するとされたが、被請求人は、引用された3件の登録商標の指定商品中「塗料」につき不使用取消審判を請求し、該「塗料」が取り消されたことことにより、その他拒絶の理由を発見しないとして登録査定を受けたものであり、その結果から判断して「カメラ」と「塗料」との間の出所の混同は完全に否定されている旨主張する。
しかしながら、本件商標の審査段階においては、単に本件商標と引用した登録商標が商標及びその指定商品において類似するといった、一般的な商品の出所の混同を判断したにすぎないものであったのに対し、本件においては、請求人により提出された証拠により、引用B商標及び引用C商標を構成する「Konica」及び「コニカ」並びにこれら商標より生ずる「コニカ」の称呼が、請求人の取扱いに係るカメラ、フィルム等を表示するものとして、本件商標の登録出願前より周知、著名であったことが立証された結果、本件商標をその指定商品である「塗料」について使用した場合は、請求人の取扱いに係る商品との間に出所について混同を生じさせるおそれがあるといった個別具体的な取引の実情を考慮し、前記のとおり、認定、判断し得たものであるから、審査段階における本件商標についての拒絶の理由及びその解消をもって、本件商標が使用される「塗料」と「Konica」及び「コニカ」の各商標が使用される商品との間に出所の混同がないとすることはできない。
(3)被請求人は、被請求人の設立を1977(昭和52)年5月9日とするのに対し、請求人の商号である「コニカ(株)」は、1987(昭和62)年10月に改称しており、また、商標「KONICA」等の強力な宣伝広告はその前後からであり、少なくとも1977(昭和52)年以前に欧州(特にドイツ)において著名であったかどうか不知であり、商号「CONICA」の選択におけるフリーライドを否定する旨主張する。
本件審判は、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かについて検討すべきものであるところ、上記規定は、周知表示又は著名表示へのただ乗り(フリーライド)及び当該表示の希釈化(ダイリューション)を防止するなど私益保護を目的としていることは否定し得ないが、周知・著名商標を保護することによって、商品の出所の混同を防止し、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護することを目的とするといった公益的な性格をも有しているものと解される。
そして、被請求人が引用各商標へのフリーライドの意図を有するか否かにかかわらず、本件商標は、これをその指定商品について使用した場合は、取引者、需要者をして、該商品が請求人の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれがあることは前記したとおりであるから、被請求人の設立年月日が請求人の商号改称より早かったことをもって、フリーライドの意図がなく、本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性を否定する旨の被請求人の主張は採用できない。
なお、前記認定のとおり、請求人が「コニカ」ブランドのカメラを発売したのは、1948年(昭和23年)である。
(4)したがって、被請求人の上記(1)ないし(3)の主張は、いずれも失当である。
4.むすび
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものといわざるを得ず、同法第46条第1項の規定により、その登録は無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 引用C商標


審理終結日 2002-12-18 
結審通知日 2002-12-24 
審決日 2003-01-07 
出願番号 商願平10-69221 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (Z02)
最終処分 成立  
前審関与審査官 大橋 信彦 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 中嶋 容伸
茂木 静代
登録日 2001-01-19 
登録番号 商標登録第4446742号(T4446742) 
商標の称呼 コニカ 
代理人 近藤 美帆 
代理人 押本 泰彦 
代理人 加藤 義明 

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