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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z42
審判 全部無効 商3条柱書 業務尾記載 無効としない Z42
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない Z42
管理番号 1075350 
審判番号 無効2000-35395 
総通号数 41 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-05-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-07-19 
確定日 2003-03-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4367571号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4367571号商標(以下「本件商標」という。)は、「BLUE FLAG」の欧文字を横書きしてなり、平成10年8月14日登録出願、第42類「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」を指定役務として、同12年3月10日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が本件商標の無効の理由に引用する登録第3368317号商標(以下「引用商標」という。)は、別掲のとおりの構成よりなり、平成4年9月30日登録出願、第42類「飲食物の提供,産業廃棄物の収集及び処分,電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む)の貸与,電子計算機による計算処理,電子計算機へのデータ入力処理,工業所有権の実施許諾」を指定役務として、同10年1月9日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録は無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第94号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標は、「BLUE FLAG」の欧文字を横書きしてなるものであるから、その構成文字より「ブルーフラッグ」の称呼、「青旗」の観念が生ずること明らかである。
これに対し、引用商標は、中央に五陵星の図を配した波打つ青い三角旗とその三角旗を掲揚した青色のポールの図と「アヲハ夕」の片仮名文字を表したものであるから、その片仮名文字及び青色の三角旗の図より、「青旗」の観念が生ずるものである。
次に、引用商標の称呼についてみるに、引用商標は、構成中に「アヲハタ」の片仮名文字を含むものであるから、これより「アオハタ」の称呼が生ずる。また、引用商標には、青色の三角旗が構成中に含まれているところ、青旗を英語に訳した場合、「BLUE FLAG(ブルーフラッグ)」であり、しかも、請求人は、引用商標の指定役務とは直接は関係しないものの、スイートコーンやジャムなどの各種商品類などにおいては、青色の三角旗に「BLUE FLAG」 の文字を組み合わせて同時に使用しているばかりか、「アヲハ夕」、「青色の三角旗の図」及び「BLUE FLAG」 の商標を付した商品は、我が国の需要者に広く知られるに至っているものである。
そうとすると、引用商標の構成中「青色の三角旗の図」からは、「アオハ夕」の称呼のほか、「ブルーフラッグ」の称呼をも生ずる。
したがって、本件商標は、引用商標と「ブルーフラッグ」の称呼及び「青旗」の観念を共通にする類似の商標というべきである。
(2)「BLUE FLAG」 の欧文字よりなる商標は、「アオハ夕」の片仮名文字と中央に五陵星の図を配した波打つ青い三角旗とその三角旗を掲揚した青色のポールの図からなる商標や、「アヲハ夕」の片仮名より成る商標、「青色の三角旗の図形」と類似すると判断され、相互に連合商標として登録された事実がある(甲第2号証ないし甲第65号証)。
(3)更に、本件商標は、第42類の「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」を指定役務としているものであるのに対し、引用商願は、第42類の指定役務中に「工業所有権の実施許諾」が含まれている。
本件商標の指定役務である「その他に関する法律事務」には、工業所有権に係わる契約書の作成や訴訟事件等をも含まれているものであるから、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務「工業所有権の実施許諾」と極めて密接な関連を有している。
そうとすると、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務中「工業所有権の実施許諾」と、同一又は類似の商標を使用した場合、出所の混同を生ずるおそれのある類似の役務である。
したがって、本件商標は、引用商標と「ブルーフラッグ」の称呼及び「青旗」観念を共通にする類似の商標であり、かつ、その指定役務も互いに類似のものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
(1)著名性
請求人は、昭和7年に「アヲハ夕」の文字及び青色の三角旗の図と共に「BLUE FLAG」の文字を同時に使用した商品「いちごジャム、マーマレード」を発売して以来、これと同じ商標を付した農水産缶詰、果実缶詰、果実飲料等の各種加工食料品・飲料を発売してきた(甲第67号証ないし甲第73号証)。
請求人の取り扱う「BLUE FLAG」の商標を付した商品は、着実に売上を伸ばし、これら商品中の「スイートコーン缶詰、ジャム類瓶詰」は、常に我が国におけるシェア第1位を保つ程になっているものである(甲第74号証)。
また、請求人の取り扱う「BLUE FLAG」の商標を付した商品に係るジャム、マーマレードは、常にシェア1位を保ち、日本缶詰協会の品評会において、農林水産大臣賞や日本缶詰協会会長賞などの賞を過去数度も受賞しているばかりでなく、日本食糧新聞社主催の品評会においてロングセラー賞を受賞するなどして新聞にも多く取り上げられ、広く知られるに至っているものである(甲第75号証)。
更に、「BLUE FLAG」と同時に使用している「アヲハタ」の片仮名文字を横書きしてなる商標及び「中央に五陵星の図を配した波打つ青い三角旗とその三角旗を掲揚した青色のポールの図」からなる商標においては、大多数の旧商品区分において防護標章の登録がなされているばかりでなく、本件商標の指定役務と同一又は類似する役務を含む第42類についても、防護標章登録の登録が認められている(甲第76号証及び甲第77号証)。
(2)請求人の業務の多様性
請求人の業務は、上記の商品の製造・販売をしているばかりでなく、電算機によるデータ処理の引受、不動産の売買、賃貸借及び管理、飲食店の経営など多岐にわたるものである(甲第78号証)。
(3)本件商標を使用した場合の混同を生ずるおそれ
請求人が使用する「アヲハタ」及び「青色の三角旗の図」の商標は、周知・著名となった商標であり、「アヲハ夕」及び「青色の三角旗の図」は、大多数の区分及び本件商標の指定役務と同一又は類似する役務である第42類についても防護標章の登録が認められていること、請求人の業務は多岐にわたること、近年、各企業は多角経営により様々な分野の商品、役務に係る業務をも取り扱うことが一般化し、そのことが広く知られていることを総合勘案すれば、本件商標は、請求人の周知・著名である「アヲハタ」及び「青色の三角旗の図」と類似する商標であるばかりか、請求人がそれらと同時に使用してきた「BLUE FLAG」と同一の構成文字よりなる本件商標をその指定役務について被請求人が使用した場合には、あたかも請求人の業務に係る役務であるかのごとく役務の出所について混同を生ずるおそれがある。
3 商標法第3条第1項柱書きについて
本件商標は、第42類「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」を指定役務としているところ、弁護士法第72条において、弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、その他の法律事務を取り扱いを業とすることはできないと規定し、同8条には、弁護士になるには、日本弁護士連合会に備えた弁護士名簿に登録されなければならないと規定されている(甲第79号証)。
しかしながら、本件商標の商標権者である、デイビッド ムラーキイ及びレベッカ ローの両氏の氏名は、日本弁護士連合会の発行する会員名簿に掲載されておらず(甲第80号証)、外国弁護士による弁護士又は外国法事務弁護士としての登録を受けていないものであるから、本件商標の商標権者がその指定役務に係る業務を行うことは弁護士法に違反するものである。
したがって、本件商標は、自己の業務に係る役務について使用をしないこと明らかである。
4 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否
本件商標の指定役務と引用商標の指定役務中「工業所有権の実施許諾」は、提供に関連する物品及び需要者の範囲が一致し、また業種が極めて密接に関連していることから、同一又は類似の商標を使用した場合には、出所の混同を生じること明らかであり、両役務は、類似の役務と判断されるべきである。
特許庁における審査においても、「知的所有権の実施許諾」と「訴訟事件その他の法律事務」は、同じ類似群コード「42R01」として扱っている。
(2)本件商標と引用商標の類否
我が国の英語知識の普及程度からみれば、「青色の旗」に相当する英語は「blue flag」であると容易に認識理解されるというのが妥当なものであり、昭和7年から、スイートコーンやジャムなどの各種商品類において、青色の三角旗に「BLUE FLAG」の文字を組み合わせたものを使用してきており、我が国の需要者には「アヲハ夕」、「青色の三角旗」、「BLUE FLAG」の各文字が三位一体として鮮明に記憶されているものであるから、具体的な取引状況に基づいて判断した場合、「アヲハ夕」の文字と「青色の三角旗の図」の図形からなる引用商標に接した者は、「アヲハ夕」と称呼するほか、「ブルーフラッグ」とも称呼するというのが相当である。
引用商標は、「アヲハ夕」の文字のほか、外観上一見して「青色の三角旗」と容易に看取される図形を有しているものであり、また、青色の三角旗に「BLUE FLAG」の文字を組み合わせたものを長年使用してきており、我が国の需要者に広く知られていることから、むしろ、かかる商標の著名性に鑑みれば、引用商標に接した者は、これから「青旗」の観念を看取するというのが極めて妥当である。
したがって、本件商標は、引用商標と「ブルーフラッグ」の称呼及び「青旗」の観念を共通にする、互いに相紛らわしい類似の商標というべきである。
請求人の主張は、特許庁における過去の審決において、図形部分からも、独立した称呼及び観念が生ずると判断された審決などからみて極めて妥当である(甲第81号証ないし甲第92号証)。
なお、被請求人は、著名な企業名やブランド名を含む結合商標につき、当該著名な企業名やブランド名を表示するものとしてのみ称呼・観念が生ずるとした先例が多数存在するとして、乙第5号証及び乙第6号証を提出しているが、本件商標とは事案を異にするものである。
また、「アヲハ夕」、「青色の三角旗の図」及び「BLUE FLAG」が連合商標として登録されている事実は、多少変化はあるものの、昭和7年から現在に至っても、スイートコーンやジャムなどの各種商品類において、青色の三角旗に「BLUE FLAG」の文字を組み合わせたものを使用しているのであるから(甲第67号証ないし甲第73号証)、連合商標として登録された時はもちろんのこと、現時点においても、商標「アヲハ夕」、「青色の三角旗の図」と商標「BLUE FLAG」の間に類否の判断に変化はないものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人は、商標「BLUE FLAG」を付した果実缶詰、果実飲料等の商品を販売等しており、請求人の業務も、多岐にわたっているものである。
また、商標を商品又は役務に長年使用してきた結果、そのブランド名が需要者に広く知られるに至り、強い顧客吸引力を有するものについては、そのブランドの所有者は、そのブランド名に化体したイメージ、信用を毀損されないよう、細心の注意を払っている状況にあることは、周知の事実であり、そのブランド名を第三者に使用させる場合には、相当の対価を得て品質管理にも十分に注意する一方、無断で使用する者に対しては、法的措置を取ることも頻繁に行われているものである。
そうとすれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、需要者は、請求人が行っているとは認識しないとしても、請求人の著名商標として需要者に広く認識されている「アヲハ夕」、「青色の三角旗の図」、「BLUE FLAG」等のブランドについて、法的事務を含んだブランド名の管理を行っている者であるなどと認識し、請求人と被請求人の間に、業務上、経済上、または組織上なんからの提携関係があるものと誤認するおそれが十分にある。
なお、不正競争防止法事件ではあるが、商品とサービスについて出所の混同を生じさせることがあると判断された事例がある(甲第94号証)。
(3)商標法第3条第1項柱書きについて
被請求人は、外国法事務弁護士として、両氏が現に登録されていることを証明する証拠を提出していないばかりか、現時点での商標権者である「リンクレターズ ビジネス サービスズ」に所属する者が、我が国において弁護士として登録されていることを証明する証拠を一切提出していないものである。
したがって、本件商標は、弁護士法において登録されていない者は法律事務を行えない以上、未だ、自己の業務に係る役務について使用をしないこと明らかである。
5 答弁に対する弁駁(第二回)
(1)被請求人は、「BLUE FLAG」という名称を使用して、インターネットを通じて、法務サービスの提供を、日本においても提供することを検討中である。」として、ホームページの写しを提出している(乙第24号証)。
ところで、インターネットにおいては、需要者である閲覧者は、目的のウェブヘージを見つけようとする場合、キーワードを入力して、目的のホームページを発見するということが通常行われていることは周知の事実である。
そうした場合、請求人の商品に関わるウェブページを閲覧しようと「ブルーフラッグ」などのキーワードを用いた場合には、請求人と被請求人のウェブページが同時に検索されることも当然起こり得るものと予想される。
そして、インターネット上でのサービスの提供は、場所や時間などを問わず、また直接対話することなく、サービスを受けることが可能であることから、便利である反面、需要者とサービス提供者との関係が希薄であり、誤認が生じ易い環境といえるものである。
したがって、本件商標をインターネットのウェブページにおいて使用したときには、請求人のウェブページを閲覧しようとした者が、同時に検索サービスで検索されたことを契機に、請求人と何らかの関係がある者のサービスと誤解し、出所の混同を生じるおそれがある。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第24号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標の商標権は、登録査定時における商標権者であるデイビッド ムラーキイ及びレべッカ ローから、被請求人すなわちリンクレーターズ ビジネス サービスズ(Linklater Business Servivces)に譲渡により移転登録されている。現在の被請求人(商標権者)は、英国を本拠として世界的な規模で法律業務を提供する国際法律事務所リンクレーターズ(Linklaters)(以下「リンクレーターズ法律事務所」という。)の資産等の管理を行うため、リンクレーターズ法律事務所の出資により設立された有限責任会社である。日本においても著名法律事務所である。本件商標の登録査定時における商標権者であるデイビッド ムラーキイは、リンクレーターズ法律事務所の香港事務所のパートナー弁護士であったが、1998年に離籍した。一方、レベッカ ローは、リンクレーターズ法律事務所の香港事務所のパートナー弁護士である。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務との類否
本件商標に係る指定役務である「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」については、当該役務の提供の目的は、法律に関する一定の事務処理、助言等の提供であることは明らかであり、提供の場所は、通常、法律事務所であり、事業者としては、弁護士又はその集団体である法律事務所、需要者としては法律に関する専門性サービスの提供を求める個人及び企業、関連規制法規としては弁護士法が考えられるのに対して、引用商標の役務中「工業所有権の実施許諾」については、提供の目的は、専ら自己の有する工業所有権を第三者に利用させることであり、提供の場所ないし事業者は、少なくとも工業所有権を有する者であれば誰でも可能であり、需要者は、実施許諾の対象である工業所有権の利用を希望する企業、関連規制法規については当該役務を特に規制している法律はないと考えられる。本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とは、類否判断の要素と考えられている事項につき同一性が認められない。したがって、両役務につき同一又は類似の商標が使用されたとしても、出所の混同が起こることは考え難い役務である。
したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務中、「工業所有権の実施許諾」とは、非類似の役務である。
(2)本件商標と引用商標との類否
本件商標は、大文字のアルファベットで横書きした「BLUE FLAG」からなり、一方、引用商標は、「アヲハタ」の片仮名文字及び中央に五陵星の図を配した青色の三角旗の図からなる商標であり、両商標は、外観上、互い共通する部分は全くなく、両商標が外観上類似していないことは明らかである。
まず商標の類否は、同一又は類似の商品(役務)に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべきであり、しかもその商品(役務)の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況に基づいて判断すべきものである(乙第3号証等)。また、特許庁の商標審査基準[改定第7版]においても、商標の類否の判断は、商標が使用される商品又は役務の主たる需要者層その他商品又は役務の取引の実情を考慮して判断しなければならないとしている。
そこで、本件商標と引用商標の称呼及び観念の類否につき、取引の実情も考慮の上、検討すると、まず引用商標は、「アヲハタ」の文字と「青色の三角旗の図」とから構成される結合商標である。
そして、請求人及びその関連会社は、その販売するジャム、野菜缶詰等の加工食品を「アヲハタ」ブランドやアヲハタ印として位置付け(甲第67号証)、また商品名にも「アヲハタ ジャム」「アヲハタ・スイートコーン」「アヲハタ・ピーナッツバター」(甲第69号証ないし甲第72号証)等、請求人らの商品を示すものとして長年親しまれてきた片仮名4文字からなる(「オ」を「ヲ」で表記している点に特徴がある。)「アヲハタ」を使用しており、請求人らは、その製造販売する加工食品につき「アヲハタ」ブランドとして統一的にマーケティングを行ってきたことが認められる(請求人らはその製造販売する加工食品の一部に「BLUE FLAG」を付していることは認められるものの、「BLUE FLAG」を単独で使用している例はなく、必ず「アヲハタ」若しくは「青色の三角旗の図」の両方又はいずれか一方と組み合わせて使用している)。
このように請求人らは、その製造販売する加工食品につき「アヲハタ」ブランドとして統一的にマーケティングを行ってきたのであり、その結果、一般消費者としては、著名な「アヲハタ」又は特徴的な「青色の三角旗の図」を付された商品に接した場合には、「BLUE FLAG」の文字が付されているかに拘らず、直ちに請求人及びその関連会社の著名商標である片仮名4文字からなる「アヲハタ」ブランドを想起するものであることは容易に推察されるところである。
我が国の一般需要者が、日本語の文字あるいは図形の商標から、直ちにその英語訳を直感し、あえて文字あるいは図形をその英語訳で称呼するということは、経験則上考え難い。このことは、引用商標のように、日本で表記された文字部分が、著名なブランド名を表示することが一般需要者に明らかな場合にはなおさらであり、そのまま日本語の表記に従って「アヲハタ」と称呼されるのが自然である。現に請求人提出の甲第74号証においても請求人らの製造販売する加工商品は「アヲハタ」銘柄として表示されており、また甲第75号証においても同様に「アヲハタ」の名称で呼ばれており、請求人らの商品を「BLUE FALG」ないしは「ブルーフラッグ」のブランド名で紹介しているものは見受けられない。
したがって、実際取引の経験則上からすれば、引用商標は、各種加工食品の販売に関してさえ、「アヲハタ」の称呼のみが生じているというべきである。
また、引用商標の観念についても、引用商標の「青色の三角旗の図」は、三角旗であること、青地の旗の中央に白色の五陵星が配されていること、旗の輪郭が波打ったようなデザインとなっている点に独自性を有するが、「青色の三角旗の図」は、「アヲハタ」ブランドの商品にほぼ例外なく付されている表示であり(甲第69号証ないし甲第73号証)、「青色の三角旗の図」自体が請求人らの製造販売する加工食品にかかる「アヲハタ」ブランドを直ちに想起せしめる出所識別標識として著名なものと認められる。このように引用商標は、我が国においてジャム等の各種加工食品のブランドとして著名な「アヲハタ」の文字と「アヲハタ」ブランドの商品に必ず付されている「青色の三角旗の図」とからなる結合商標であり、「アヲハタ」ブランドの著名性及び「アヲハタ」ブランドを表示するものとしての「青色の三角旗の図」の著名性に鑑みれば、引用商標は、具体的な取引の実情においては、当該文字部分及び図とが一体となって、ジャム等の各種加工食品の著名ブランドである「アヲハタ」ブランドのみを、引用商標に接した取引者や一般消費者をして想起せしめているのであって、一般的な意味での「青い旗」の観念までもが生じているものとは認めがたい。
過去の判決例においても、引用商標と同様に、著名な企業名やブランド名を含む結合商標につき、当該著名な企業名やブランド名を表示するものとしてのみの呼称・観念が生じるとした先例が多数存在する(乙第5号証及び乙第6号証等)。
以上のとおり、本件商標からは「ブルーフラッグ」という称呼とあえて直訳すれば、「青い旗」の観念が生じうるのに対し、引用商標からは、文字部分と図形部分とが-体となって、ジャム等の加工商品のブランドとして著名な「アヲハタ」の称呼及び観念のみが生じるものと認められ、両商標は、称呼及び観念において類似していないことは明らかであり、結局、外観、称呼、観念のいずれについても類似しないのであるから、本件商標と引用商標は、互いに非類似の商標と判断されるべきものである。
なお、請求人は、本件商標と引用商標が類似する商標であることの証拠として、「アヲハタ」、「青色の三角旗の図」及び「BLUE FLAG」が連合商標として登録されている事実を挙げている。しかしながら、連合商標として登録されているという事実が直ちに、本件商標と引用商標が類似する商標であるとの証左にはならない(乙第7号証)。
以上のとおり、本件商標と引用商標は指定役務において類似せず、かつ、商標も類似しない。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人の商標である「アヲハタ」及び「青色の三角旗の図」が著名であるとしても、それは請求人らの製造販売するジャム、缶詰等の加工食品に関してのみであり、請求人の提出した証拠上からも、請求人らがジャムや缶詰等の食品以外の商品や役務につき「アヲハタ」や「青色の三角旗の図」や「BLUE FLAG」の商標を現に使用している事実は認められない。請求人は、その業務の多様性を示すため、食品関連事業以外に行っている業務として、定款の事業目的中の「電算機によるデータ処理の引受」、「不動産の売買、賃貸借及び管理」をあげているが、かかる業務の規模や取引の相手方の範囲などは、何ら明らかにされておらず、一般的にも請求人がかかる業務を行っていることは知られていない。
また、本件商標の指定役務である「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」は、典型的には弁護士の行う法律事務サービスを意味し、近年における企業の多角経営化の傾向を考慮したとしても、各種食品類の加工製造販売業者として著名な請求人が、法律事務及び助言にかかる分野にまで業務を拡大したと一般需要者が想像するとは考え難く、実際問題として弁護士法第72条の規定により、弁護士でない者が法律事務を取り扱うことは禁止されており、また弁護士から構成される事務所は法律事務所と称しなければならないとされているのであるから(弁護士法第20条)、事業会社である請求人やその関連会社が、現在及び将来において法律事務サービスを事業として行うことは、現行法上、あり得ないことである。
特許庁において公表されている「日本国周知・著名商標検索」においても請求人の有する「BLUE FLAG」は、周知・著名商標として掲載されておらず、「BLUE FLAG」は、「アヲハタ」及び「青色の三角旗の図」程には著名でないことは明らかである。
一般消費者の間では、「アヲハタ」といえばジャムやコーン缶等の各種食品のブランドの一つであるというイメージが強く、また請求人は、本件商標の指定役務である法律事務に関するサービスを行うことは考えられないのであるから、被請求人が、請求人の商標として著名な「アヲハタ」自体や「青色の三角旗の図」に極めて類似した商標を使用するのであればいざ知らず、著名商標とは言えない「BLUE FLAG」を法律業務に関する指定役務に使用したからといって、それが請求人の役務であるとの出所の混同を生じる可能性はないものである。
(3)商標法第3条第1項柱書について
我が国の商標法は、登録主義を採用しており、現に使用していない商標であっても、将来使用する意思があるものについては登録が認められている。
デイビッド ムラーキイ及びレべッカ ローの両氏は、本件商標登録査定時において、外国法事務弁護士としての登録を受けていない。しかしながら、両氏は、他国において弁護士資格を取得している外国弁護士であり、しかるべき手続きを行えば、外国法事務弁護士として、日本弁護士連合会に備える外国法事務弁護士名簿に登録を受けることは可能であり、本件商標登録査定時において、本件商標を将来、自己の業務に係る役務について使用することができる立場にあった。
3 弁駁に対する答弁(第二回)
(1)商標法第4条第1項第11号について
(ア)本件商標の指定役務と引用商標の指定役務の類否
弁護士は、特許権等の実施許諾を企図している依頼者のため、契約締結の交渉、契約書の作成やこれらに関する法的助言を業務として行っているが、工業所有権に関する実施許諾契約の代理、媒介、斡旋を行うことは通常ない。 かかる比較からも、「法律事務及び助言」と「工業所有権の実施許諾」とは、出所の混同が生じない非類似の役務である。
そもそも「工業所有権の実施許諾」や「知的所有権の実施許諾」は、特許庁の「類似商品・類似役務審査基準」(第8版)に掲載されている役務ではなく、これらに対する特許庁による類似群コードの指定は、商品や役務の類否に関する特許庁の確定的・拘束力ある判断を示すものでないことは明らかである。
(イ)本件商標と引用商標の類否
我が国の一般需要者が、日本語の文字あるいは図形の商標から、直ちにその英語訳を直感し、あえて文字あるいは図形をその英語訳で称呼するということは、経験則上考え難い。このことは、引用商標のように、日本語で表記された文字部分が、著名なブランド名を表示することが一般需要者に明らかな場合にはなおさらであり、引用商標はその日本語の表記に従って「アヲハタ」と称呼されるのが自然と考えられる。
また、引用商標は、ジャムやコーン缶詰等の各種加工食品に関して、「アヲハタ」ブランドとして、我が国において広く親しまれている商標であり、実際の取引の経験則に鑑みれば、消費者にとって引用商標は、単なる「青い旗」という観念を超えて、「アヲハタ」ブランドを直ちに想起されるものである。
(2)商標法第4条第1項第15号について
本件商標の指定役務は、弁護士の行う法律事務サービスを意味し、近年における企業の多角経営化の傾向を考慮したとしても、各種食品類の加工製造販売業者として著名な請求人が、法律事務及び助言にかかる分野にまで業務を拡大したと一般需要者が想像するとは考え難く、被請求人が、本件商標を、その指定役務について、使用したとしても、請求人のグループ法人がこれを行っているものと、需要者が混同するということは、一般常識的に照らして、極めて考えにくい。
過去の審決例においても、引用された商標の著名性を認めた上で、引用商標に係る商品・役務と、被請求人の指定商品・役務とは、業種、その用途、取引系統、取引者、需要者等を異にしていることを理由として、出所の混同が生じないと判断された先例が多数存在している(乙第20号証ないし乙第22号証))。
(3)商標法第3条第1項柱書について
被請求人は、「BLUE FLAG」という名称を使用して、インターネットを通じて、金融サービス分野における法規制に関連した助言その他の法務サービスの提供を、各国で既に行っており、将来的には、日本においても同様のサービスの提供することを検討中である(乙第24号証)。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、「BLUE FLAG」の欧文字よりなるところ、前半部の「BLUE」の文字は「青色」意味を有する英語として、後半部の「FLAG」の文字は「旗」の意味を有する英語として、我が国において親しまれ一般に使用されているものであるから、全体の文字に相応して「ブルーフラッグ」の称呼を生じ、「青い旗(青色の旗)」の観念を想起するものというのが相当である。
他方、引用商標は、中央に五陵星の図を配した青い三角旗とその三角旗を掲揚した青色のポールを描いた図形の下部に、該図形より大きく「アヲハ夕」の文字を書した構成よりなるから、「アヲハタ」の文字部分より「アオハタ」の称呼を生ずるものである。
さらに、引用商標は、前記したとおり特長のある「青色の三角旗」の図形と「アヲハタ」の文字とが相俟って、全体として「青い三角旗(青色の三角旗)」の観念を生ずるものであり、単に「青い旗(青色の旗)」という観念は生じないものというのが相当である。
また、引用商標に接する取引者、需要者は、簡易迅速を尊ぶ商取引の実際において、「青色の三角旗」の図形若しくは「アヲハタ」の文字部分を捉え、敢えて、これを英語訳にして「ブルーフラッグ」の称呼をもって商取引に資するものとはいい難いものである。
そして、両商標の構成は前記したとおりであるから、外観上明らかに区別し得るものである。
してみれば、本件商標と引用商標とは、観念において、「青」と「旗」という点において、やや近似する場合があるとしても、称呼及び外観において相違するものであるから、称呼、観念及び外観を総合的に観察すると、本件商標と引用商標とは、役務の出所について誤認混同を来すおそれのないものであって、全体として類似する商標としてみることはできないというのが相当である。
なお、請求人は、本件商標と引用商標が類似する商標であることの証左として、「アヲハタ」「青色の三角旗の図」及び「BLUE FLAG」が連合商標として登録されている事実を挙げている。しかしながら、連合商標として登録されているという事実が、必ずしも、本件商標と引用商標とが類似する商標であると拘束され判断すべき理由はない。
2 商標法第4条第1項第15号について
請求人の提出に係る甲第67号証ないし甲75号証によれば、請求人は、引用商標及び青色の三角旗の図形と「BLUE FLAG」の文字を結合した商標を商品「いちごジャム、マーマレード、スイートコーン缶詰、ジャム類瓶詰」等の加工食料品に使用し本件商標の登録出願時には、取引者、需要者間に広く認識され周知著名となっていたことは認められる。
しかしながら、請求人は、前記した商標を前記した商品以外の商品若しくは役務に使用している事実は認められない。
そこで、本件商標の指定役務「金融市場に関連する法令その他に関する法律事務及び助言」と請求人の使用する商品「いちごジャム、マーマレード、スイートコーン缶詰、ジャム類瓶詰」等の加工食料品とを比較すると、その役務の提供と商品の製造、販売とが同一事業者によって行われているのが一般的でないこと、役務と商品の用途、目的、質(内容)等が明らかに異なることからすれば、近年における多角経営の実情及び請求人の業務の多様性を考慮するとしても、本件商標をその指定役務に使用した場合、取引者、需要者が請求人の使用する商標を連想、想起するものとは認められないから、請求人の使用する商品との間に出所について誤認混同を生ずるおそれはないものと判断するのが相当である。
なお、引用商標は、本件商標と同じ第42類について、防護標章の登録がなされているとしても、この登録をもって、必ずしも前記判断が左右されるものではない。
(3)商標法第3条第1項柱書について
被請求人の提出に係る乙第8号証ないし乙第15号証によれば、本件商標の登録時の権利者であるデイビッド ムラーキイ及びレべッカ ローの両氏は、他国において弁護士資格を取得している外国弁護士であることが認められる。
しかして、両氏は、日本国において、しかるべき手続きを行えば外国法事務弁護士として、日本弁護士連合会に備える外国法事務弁護士名簿に登録を受けることは可能であり、本件商標登録査定時において、本件商標を将来、自己の業務に係る役務について使用することができる立場にあったものであり、将来本件商標を使用する意思、蓋然性を否定することはできないから、本件商標が自己の業務に係る役務について使用しない商標であることが明らかであると断定することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同法第3条第1項柱書きに違反して登録されたものではないから、商標法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲
引用商標(色彩については原本参照)


審理終結日 2003-01-22 
結審通知日 2003-01-27 
審決日 2003-02-12 
出願番号 商願平10-69636 
審決分類 T 1 11・ 26- Y (Z42)
T 1 11・ 271- Y (Z42)
T 1 11・ 18- Y (Z42)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 水落 洋 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 中嶋 容伸
茂木 静代
登録日 2000-03-10 
登録番号 商標登録第4367571号(T4367571) 
商標の称呼 ブルーフラッグ、フラッグ 
代理人 大岸 聡 
代理人 新井 悟 
代理人 三村 まり子 
代理人 清水 恵 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 佐藤 一雄 

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