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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 003
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 003
管理番号 1072252 
審判番号 無効2000-35299 
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2000-06-06 
確定日 2003-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第3371329号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3371329号商標(以下「本件商標」という。)は、「CARTER」の欧文字を横書きしてなり、平成6年3月3日登録出願、第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」を指定商品として、同11年10月15日に設定登録され、現に有効に存続しているものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする。審判費用は、被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第37号証を提出している。
(1)請求人が引用する登録第1499004号商標は、「CARTIER」の欧文字を横書きしてなり、昭和48年3月14日登録出願、第4類「せっけん類、歯みがき」を指定商品として、同57年2月26日に設定登録され、その後、平成4年3月30日及び同13年9月25日の2回にわたり商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。同じく、登録1738275号商標(以下、上記登録商標と合わせて「引用商標」という。)は、「CARTIER」の欧文字を横書きしてなり、昭和54年5月17日登録出願、第4類「化粧品、香料類」を指定商品として、同59年12月20日に設定登録され、その後、平成7年5月30日に商標権存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
請求人が使用する引用商標は、いずれも本件商標と類似し、かつ、指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
さらに、引用商標は、請求人及びその関連会社により宝飾品、腕時計、バッグ、万年筆等に世界的に使用された結果、本件商標の登録出願前において、すでに、わが国において取引者、需要者間に広く認識された著名商標「CARTIER」に類似するから、本件商標が指定商品について使用されると、当該商品は請求人あるいは請求人と事業上何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品であるかのごとく、商品の出所について混同を生じるおそれがあるから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
したがって、本件商標は上記規定に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第46条の規定により無効とされるべきである。
(2)本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するという点について
引用商標が本件商標よりも先願に係る現在有効な登録商標であること、並びに本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが相互に抵触していることは明らかである。
そこで、本件商標と引用商標の類似性について比較すると、前記の構成から明らかなように、本件商標と引用商標とは前半の4文字「CART」及び語尾部の2文字「ER」が完全に共通しており、引用商標中の5文字目「I」の有無が相違しているにすぎない。しかしながら、当該相違文字は、共通する他の6文字の中間に位置しており、それ自体目立ちにくい構成であること、さらに、これらの商標の構成において、「I」の文字の有無は微差にすぎず、見る者に対し外観上強い印象を与えているとはいえないことから、本件商標と引用商標とは外観上非常に紛らわしいというべきである。すなわち、商標は、まず視覚的に認識されるものであり、特に本件商標と引用商標の指定商品である化粧品等は、購入者が売場で実際に手に取り、あるいは、実物を見てから購入するのが普通であるから、商標の外観が一般需要者に与える影響は大きく、本件のように6から7文字からなり語頭部と語尾部を共通にする商標において、中間の一つの相違文字を即座に認識し両者を外観上区別することは現実には困難であるというべきである。したがって、本件商標は外観において引用商標に類似することは明らかである。
さらに、本件商標からはこれを英語風に発音した「カーター」の称呼の他に、本件商標と引用商標の指定商品についてはフランス語も商標として広く使用されていることから、これをフランス語風に発音した「カルテ」の称呼も本件商標から生じるというべきである。これに対し、引用商標は、「カルテイエ」もしくは「カルチェ」と称呼されることは明らかである。本件商標から生じる「カルテ」と引用商標から生じる「カルチェ」とは語尾音「テ」と「チェ」が相違するが、これらは母音「エ」を共通にする近似音であるから、両者は全体として極めて紛らわしいというべきである。
よって、本件商標は、引用商標と外観及び称呼において相互に類似し、指定商品も抵触しているから、商標法第4条第1項第11号に該当するというべきである。
(3)本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するという点について
請求人は、宝飾品、腕時計、バッグ等の革製品、万年筆等を世界的に著名な商標「CARTIER」を使用して製造販売しているフランス法人「CARTIER SOCIETE ANONYME」(以下「CARTIER社」という。)及びその他の関連会社の親会社として、それらの製品(以下「CARTIER製品」という。)の世界的な卸売り業務を行っているオランダ法人である。さらに、請求人はそのグループ各社によって使用されている上記商標「CARTIER」を自己の名義で登録すること、並びに当該登録商標の適正な維持及び使用について管理し、他社による類似商標の登録あるいは使用を排除する手続をとること等の業務を行っている。
わが国において「CARTIER製品」が現実に販売されるようになったのは、昭和46年2月からであるが、それ以前からライター、宝飾品、バッグ等の「CARTIER製品」はヨーロッパの最高級品としてわが国の当業者間において広く知られていたことはいうまでもない。
昭和46年以降、わが国においても、「CARTIER製品」が本格的に販売されるようになり、その宣伝、広告も広範に行われるようになった。また、その頃から、わが国経済の発展に伴い、外国の高級品が一般大衆にも知られるようになり、わが国での商標「CARTIER」の著名性は一段と広まった。今日、「ブランド品」「ブランド志向」等の語句が、新聞、雑誌、テレビ等の媒体を通して頻繁に使用されているが、その中でも「CARTIER」が代表的なブランド品としてしばしば紹介されていることも顕著な事実である。さらには、かかるブランド志向の過熱化に乗じて悪質業者によるいわゆる「偽ブランド品」も数多く出現し、社会問題としてもしばしば取り上げられているが、「CARTIER製品」もこれら偽ブランド品を扱う業者による模倣の対象となっている。
以上のような事実から、「CARTIER」がわが国において本件商標の出願日前から周知著名であったことは明白である。
「CARTIER」が請求人及びその関連会社の有する周知著名な商標であり、また、「CARTIER社」の著名な略称であることは、特許庁においてもかなり以前から審決あるいは商標登録の異議申立ての決定において認められてきた(甲第16号証ないし同第31号証)。さらに、平成12年4月12日付け審決(甲第32号証)においても、請求人等の商標「CARTIER」は著名商標であると明確に認定されている。
したがって、商標「CARTIER」がわが国の一般消費者間においても広くかつ深く浸透していることは明らかであり、その浸透度は年々深まっているというべきである。すなわち、わが国において、商標「CARTIER」がいわゆる著名商標であることは、本件商標の出願日である平成6年3月3日よりかなり以前から確立していたことは明らかである。さらに、上述のように「CARTIER製品」は多岐にわたっていることから、商標「CARTIER」の著名性は現実にわが国で販売されている商品のみならず、その他の商品にも及んでいるというべきである。
さらに、企業の多角経営化が顕著な現在において、ある企業が従来の業務に加えて新たな分野に進出し、多種多様な商品を扱うようになっている。このような実状を考慮すると、「CARTIER」のような著名商標と同一あるいは類似する商標が何らを関連性のない者により異なる商品について使用された場合、一般人が当該商品を請求人及びその関連会社あるいはそれらと何らかの関係がある者の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所を誤認混同する可能性は高いというべきである。このことは、請求人が所有する第21類の登録商標「CARTIER」(登録第1357886号)について、24件の防護標章登録が既に認められていること(甲第33号証及び甲第34号証)、並びに商標「CARTIER」が特許庁ホームページ中の「日本国周知・著名商標検索」に掲載されていること(甲第35号証)等からも明らかである。
上述のような商標「CARTIER」の著名性から、現在では商標「CARTIER」の有する自他商品識別力あるいは出所表示力は極めて高いということができる。その結果、「CARTIER」と構成あるいは称呼が近似した商標は、請求人の周知、著名な商標「CARTIER」に関連づけて認識される可能性が高いと言うべきである。いいかえれば、商標「CARTIER」について商標法上の出所の混同を生ずる範囲、あるいは類似の範囲はその著名性の故により広いというべきである。
前述のように、本件商標は商標「CARTIER」に外観及び称呼、特に外観において類似するから、本件商標がその指定商品について使用されれば、一般人は、当該商品を請求人あるいはその関連会社の業務に係る商品であるかのごとく、商品の出所を混同することは明らかである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するというべきである。
以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第46条の規定により、その登録を無効とすべきである。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のとおり述べている。
(1)商標法第4条第1項第11号について
引用商標は「CARTIER」の文字からなるものであり、「カルチェ」の称呼が生ずるものである。これに対し、本件商標はその指定商品について既にカーターウオーレスの称呼で著名な「CARTER WALLACE」の一部である「CARTER」からなるものであり、世間では「カーター」の称呼をもって知られているものである。請求人は、指定商品については商標としてフランス語も使用されることがあるから、本件商標をフランス語風に読むこともありうると主張する。しかし、「CARTER」の文字は、アメリカ合衆国の第39代大統領ジミー・カーター等、英、米国の著名人の名としてわが国においてよく知られている綴りであるから、わが国国民はこれを英語風に読むことに馴れている。
これに対し、フランス語は、現代のわが国では、普及している外国語ではないうえ、フランス語の「carter」なる語は辞書にもその読み方が二種類掲載されているうえ、使用頻度も低い語であるから、これを見るわが国国民が、フランス語と考えることはありえない。それ故、本件商標と引用商標は、外観、観念においても十分に区別しうるものである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
引用商標は、関連する商品の種類も少なく、特に本件商標に関係する商品には全く使用されていない。したがって、本件商標に係る指定商品を目にする需要者、取引者は、引用商標の「CARTIER」など連想するはずもない。これに対し、被請求人の「CARTER WALLACE」の名称及び商標で薬剤及び化粧品、石鹸については著名である。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されている場合、看者はこれを著名な「CARTER WALLACE」の「CARTER」と正しく認識するといって誤りではない。それ故、本件商標が引用商標と誤認されることはありえないから、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第11号について
本件商標は、前記のとおり「CARTER」の欧文字を横書きしてなるところ、その構成文字は、男子の名を表す外国語として一般に馴染み深いものであるから、これに接する取引者、需要者は、わが国で最も普及している外国語である英語風に読み、「カーター」と称呼するとみるのが相当である。
仮に、これをフランス語風に読むとしても、「カルテール」若しくは「カルテ」の二通りの称呼が生ずる(小学館ロベール仏和大辞典「carter」の項参照)ことも相まって、簡易迅速を尊ぶ取引界においては、前記「カーター」の称呼をもって取引に資されるとみるのが相当である。
他方、引用商標は、「CARTIER」の欧文字を横書きしてなるところ、これと同一の綴りである「cartier」(トランプ)を「カルチェ」若しくは「カルテイエ」と称呼するフランス語の例、更には、フランス法人「CARTIER社」が、商品「宝飾品、腕時計、バッグ、万年筆」等に使用して著名な商標「CARTIER」が、取引者、需要者間に「カルチェ」若しくは「カルテイエ」と称呼されていることより、「カルチェ」若しくは「カルテイエ」の称呼を生ずるものである。
そして、本件商標より生ずる「カーター」の称呼と引用商標より生ずる「カルチェ」若しくは「カルテイエ」の称呼は、相違する音「カー」と「カル」及び「ター」と「チェ」若しくは「テイエ」の差により、それぞれ一連に称呼するも、十分聴別し得るものというべきである。
また、観念についても、本件商標が「男子の名を表す外国語」であるのに対し、引用商標は「CARTIER社」の著名な商標「CARTIER」を認識するものであるから、観念上明らかに区別し得るものである。
さらに、外観については、本件商標と引用商標とは、前記のとおり、その構成文字上中間に位置する「I」の有無の差異のみであるが、前記のとおり、観念及び称呼の点において、著しく異なるものであるから、外観において近似した印象を与えることはないものというのが相当である。
してみれば、本件商標と引用商標とは、その称呼、観念及び外観のいずれにおいても相紛れるおそれのない非類似の商標といわざるを得ない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
請求人の主張及び提出に係る証拠よりすれば、「CARTIER」は、「CARTIER社」及びその関連会社により宝飾品、腕時計、バッグ、万年筆等に世界的に使用された結果、本件商標の登録出願時前において、既に、わが国において、取引者、需要者間に広く認識された、著名な商標といい得るものである。
しかしながら、本件商標と引用商標とは、前記のとおり、商標において別異のものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者は引用商標を直ちに連想、想起するとはいえないから、本件商標は、請求人又は同人と関係のある者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生じさせるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のに違反して登録されたものでないから、商標法第46条第1項により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-09-02 
結審通知日 2002-09-05 
審決日 2002-09-27 
出願番号 商願平6-20248 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (003)
T 1 11・ 26- Y (003)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 俊男佐藤 敏樹 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 野本 登美男
茂木 静代
登録日 1999-10-15 
登録番号 商標登録第3371329号(T3371329) 
商標の称呼 カーター 
代理人 松尾 和子 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 大島 厚 
代理人 加藤 建二 
代理人 関根 秀太 
代理人 中村 稔 

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