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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 018
審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 018
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 018
管理番号 1072072 
審判番号 無効2002-35124 
総通号数 39 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-03-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-04-04 
確定日 2003-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第3371061号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3371061号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3371061号商標(以下、「本件商標」という)は、平成7年9月28日に登録出願、後掲のとおりの構成よりなり、第18類「かばん類、袋物、携帯用化粧道具入れ、傘」を指定商品として、同11年1月14日に設定登録されたものである。

2 引用商標
請求人が引用する登録第972813号商標(以下、「引用A商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、昭和45年4月16日に登録出願、第21類「宝玉、その他本類に属する商品」を指定商品として、同47年7月20日に設定登録され、その後、その指定商品中の「かばん類、袋物」については、商標権の一部放棄が成された結果、その抹消登録が平成2年6月25日付けでなされているものである。同じく、登録第1793465号商標(以下、「引用B商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日に登録出願、第21類「装身具、ボタン類、かばん類、袋物、宝玉及びその模造品、造花、化粧用具」を指定商品として、同60年7月29日に設定登録されたものである。同じく、登録第1786820号商標(以下、「引用C商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日に登録出願、第22類「はき物(運動用特殊ぐつを除く)かさ、つえ、これらの部品及び附属品」を指定商品として、同60年6月25日に設定登録されたものである。同じく、登録第852071号(以下、「引用D商標」という。)は、「VALENTINO」の欧文字を横書きしてなり、昭和43年6月5日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同45年4月8日に設定登録されたものである。同じく、登録第1415314号商標(以下、「引用E商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日に登録出願、第17類「被服(運動用特殊被服を除く)、布製身回品(他の類に属するものを除く)、寝具類(寝台を除く)」を指定商品として、同55年4月30日に設定登録されたものである。同じく、登録第1402916号(以下、「引用F商標」という。)は、「VALENTINO GARAVANI」の欧文字を横書きしてなり、昭和49年10月1日に登録出願、第27類「たばこ、喫煙用具、マッチ」を指定商品として、同54年12月27日に設定登録されたものである。
そして、上記各引用商標は、いずれも商標権の存続期間の更新登録がなされているものである。

3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第71号証(枝番号を含む。)及び参考資料1ないし7を提出している。
(1)商標法第4条第1項第8号について
審判請求人は、イタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の同意を得て、同氏のデザインに係る各種の商品を製作、販売しており、「VALENTINO GARAVANI」あるいは「VALENTINO」の欧文字からなるそれぞれの商標を上記各種商品について使用している者であるところ、上記の「VALENTINO GARAYANI」(ヴァレンテイノ・ガラヴァー二)氏の氏名は単に「VALENTINO」「ヴァレンテイノ」と略称されており、この略称も本件商標の登録出願の日前より著名なものとなっているところである。
すなわち、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17歳の時パリに行き「パリ洋裁学院」でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion oscar)を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌など著名な新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来同氏は、イタリア・ファッションの第1人者としての地位を確立し、フランスのサンローランなどと並んで世界三大デザイナーとして知られている。この「ファッションオスカー」は無彩色である白を基調にまとめた「白のコレクション」に与えられたものである。その後も同氏の作品は無地の服を得意とし、大胆な「白」と「素材」を特徴とし、その服飾品は芸術に値すると賞賛されており、その顧客にはレオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリ・ヘップパーンなどの著名人も多い。同氏のデザイン活動は婦人用、紳士用衣服を中心にネクタイ・シャツ・ハンカチ・マフラー・ショール・ブラウスなどの衣料用小物、バンド・ベルト・ネックレス・ペンダントなどの装身具、バッグ・さいふ・名刺入れその他のかばん類、その他サングラス、傘、スリッパなどの小物からインテリア装飾にも及んでいる。
我が国においても、ヴァレンティノ・ガラヴァー二の名前は、1967年(昭和42年)のファッションオスカー受賞以来知られるようになり、その作品はVogue(ヴオーグ)誌などにより継続的に日本国内にも紹介されている。昭和49年には三井物産株式会社(千代田区大手町1-2-1)の出資により同氏の日本及び極東地区総代理店として株式会社ヴァレンティノヴテイックジャパンが設立され、ヴァレンティノ製品を輸入、販売するに至り、同氏の作品は我が国のファツンョン雑誌にもより数多く掲載されるようになり、同氏は我が国においても著名なデザイナーとして一層注目されるに至っている。
以上のとおり、ヴァレンティノ・ガラヴァーニは世界のトップデザイナーとして本件商標が出願された当時には、既に我が国においても著名であった。同氏の名前は「VALENTINO GARAYANI」「ヴァレンティノ・ガラヴァーニ」とフルネームをもって紹介されることが多いが、同時に新聞、雑誌の記事や見出し中には、単に「VALENTINO」「ヴァレンティノ」と略称されてとりあげられたことの多いことは甲第七号証のーないし同第七号証の三十二及び同第八号証、同第九号証及び同第十号証(審決謄本写し)をはじめとして、甲第十三号証の二、同第十五号証の二、同第十五号証の三、同第十六号証の二、同第二十二号証の二、同第二十五号証の三、同第三十号証の二、同第三十号証の三、同第三十号証の五、同第四十八号証(報知新聞)によっても明らかである。
しかるところ、本件商標は、その構成が甲第一号証の一に示すとおりのものであって、大きく二段に横書きされた「VALENTINO」「COUPEAU」の文字の上段部分である「VALENTINO」の文字が「ヴァレンテイノ」と称呼されるものであることは明らかであるから、本件商標は、「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名の著名な略称を含む商標であり、その者(他人)の承諾を得ずに登録出願されたことは明らかである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号の規定に違反してなされたものであるから無効とされるべきである。
(2)商標法第4条第1項11号について
本件商標と引用A、B、C商標とを比較検討するに、本件商標は、その構成が甲第一号証の一に示すとおりのものであって、「VALENTINO」「COUPEAU」の欧文字は、全体が一つの語として知られているものではなく、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノクーポー」の9音にも及ぶ冗長なものとなるばかりでなく「VALENTINO」の文字と「COUPEAU」の文字とが上下二段に表示されていることもあって、「ヴァレンティノ」と「クーポー」とがそれぞれ段落をもって称呼されるものであり、しかも、上記のデザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相俟って、これに接する取引者、需要者に親しまれている「VALENTINO」の文字に相当する「ヴァレンティノ」の称呼をもって、取引に当たる場合が決して少なくないものとみるのが簡易迅速を尊ぶ取引の経験則に照らして極めて自然である。
したがって、本件商標は、「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものといわざるを得ない。
一方、引用商標は、引用A商標ないし引用C商標が何れもその指定商品に使用された結果、全世界に著名なものとなっていることは甲第九号証及び甲第十号証(審決謄本写し)をはじめとして、同第六十二号証までの書証によっても明らかなところであって、引用A商標は、「VALENTINO」の文字よりなるものであり、その構成上「ヴァレンティノ」の称呼を生ずるものであることは明らかである。
また、引用B商標及び引用C商標は「VALENTINO GARAVANI」の文字を書してなるものであるところ、その全体を称呼するときは「ヴァレンティノガラヴァ一二」の称呼を生ずるが、この称呼は冗長なものであるので、上記デザイナー「VALENTINO GARAYANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)氏の氏名が「VALENTINO」(ヴァレンティノ)と略称されて著名なものとなっていることとも相挨って、引用B商標及び引用C商標は、その構成文字中、前半の「VALENTINO」の文字に相応する「ヴァレンティノ」の称呼をもって取引に資されている場合も決して少なくないのが実情である。すなわち、引用B商標及び引用C商標は、何れも「ヴァレンティノ」の称呼をも生ずるものであるといわざるを得ない。
してみると、本件商標は、引用A商標ないし引用C商標と「ヴァレンティノ」の称呼を共通にする類似の商標であり、また、本件商標の指定商品は各引用商標のそれと抵触するものであることは明らかである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
審判請求人は、上記の各引用商標の指定商品以外の商品についても、多数の登録商標を使用している。
しかして、審判請求人提出の甲第九号証及び同第十号証(審決謄本写し)ないし同第六十二号証のよって、引用E商標は、婦人服、紳士服、ネクタイ等の被服について使用されていること及び引用F商標がライターについて使用されていること、引用E、F商標が本件商標の登録出願の日前より全世界に著名なものとなっていることは、明らかである。そして、本件商標と引用A商標ないし引用F商標がその称呼を共通にする類似する商標であることは上述のとおりであるから、同様の理由により、本件商標と引用D商標ないし引用F商標とは、類似する商標である。また、本件商標の指定商品と各引用商標が使用されている上記の商品は、何れも服飾品の範疇に属する密接な関係にある商品、いわゆるファッション関連の商品である。
したがって、本件商標は、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、その商品があたかも審判請求人の製造、販売等の業務に係る商品であるか又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係にある者、すなわち姉妹会社等の関係にある者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ぜしめるおそれがあるものである。
(4)答弁に対する弁駁
ア)上記答弁書7の1の4(本案前の主張、答弁書7頁)について
被請求人は、「本件審判請求を提起するに当たって、審判請求人に審判請求の利益があることを明確にした主張立証がない。これが明らかにされない以上は本件審判請求をする利益がない。」旨主張している。
しかしながら、本件においては、審判請求人は、本件商標の登録が存在することにより、自己の取り扱いに係る商品と本件商標の指定商品との間に、出所の混同を生じさせるおそれがある、又は審判請求人の人格権が害されると主張しているところであって、本件商標の存在により、直接不利益を被る者である。
したがって、審判請求人は、本件商標の登録無効の審判を請求することについて、法律上の利害関係を有するものである。
イ)上記答弁書7の1の2(引用商標等の著名性の主張に対する反論、答弁書4頁及び5頁)及び同2(商標法第4条第1項第8号違反の主張に対する反論、答弁書7頁及び8頁)について
(a)被請求人は、Valentino の名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われていることを理由に引用商標「VALENTINO」が著名であるとすることはできないと主張する。
しかしながら、審判請求人は、引用商標「VALENTINO」が服飾品等のいわゆるファッション関連商品において我が国において周知・著名であることについて既に主張・立証したところであり、仮にValentinoの名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われているとしても、イタリアにおけるかかる事由が、引用商標「VALENTINO」の我が国における周知・著名性を何ら妨げる事由となるものでない。
(b)被請求人は、「VALENTINO」の表示をもって直ちに著名人の VALENTINO GARAVANI(ヴァレンテイノ・ガラヴァー二)の著名な略称と言うことはできない旨主張する。
しかし、被請求人は、VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)が著名なデザイナーであることは認めるところ、通常、著名なデザイナーブランド(designer brand)の場合には、特に外国人の著名なデザイナーにあっては、そのデザイナーの略称により、そのデザイナーのデザインに係る商品を指すとともに、そのデザイナー自身を指すことがファッション関連商品を取り扱う我が国業界においてよくみられる取引の実情である。例えば、「ココ・シャネル」を「シャネル(CHANEL)」、「アンドレ・クレージュ」を「クレージュ(Courreges)」、「ジョルジオ・アルマー二」を「アルマーニ(ARMANI)」、「マルセル・ロシャス」を「ロシャス(ROCHAS)」、「クリスチャン・ディオール」を「ディオール」等は夙に知られるところである。「VALENTINO GARAVAN1(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)」は、被請求人も認めるとおり著名なデザイナーであり、上記著名なデザイナーと同様に、「VALENTIN0(ヴァレンティノ)」と略称され、そのデザインに係る商品を指すとともに、デザイナーの略称として我が国の取引者、需要者において周知・著名である。この事実は、審判請求人の提出した証拠に照らせば、明らかである。
ウ)商標法第4条第1項第11号、同第15号違反の主張に対する反論について
被請求人は、VALENTINO の文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても本件商標が引用商標に類似するというのは誤りである旨主張する。
しかしながら、「VALENTINO」「Valentino」の文字を含む結合商標が他に登録されていても、それらが、取引者、需要者によりイタリアの服飾デザイナー「VALENTINO GARAVANI」(ヴァレンティノ・ガラヴァー二)のデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」と明確に区別され、VALENTINO GARAVANI とは関係のないものとして取引されているという事実はない。すなわち、VALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)の商標が「ヴァレンティノ」と呼ばれて、周知・著名である事実に照らせば、取引者、需要者が、「VALENTINO」の語を含む結合商標について、VALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品を示すものであって、それの付された商品を、周知・著名な「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)ブランドないしはその兄弟ブランドであるなどと誤解している可能性も十分にあるというべきである。のみならず、VALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)の商標が「ヴァレンティノ」と呼ばれて、周知・著名である事実に照らせば、「VALENTINO」の文字を含む商標であって、これと区別して認識されているものが、仮にあったとしても、そのことは、本件商標によってVALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品の出所の混同のおそれの事実を何ら左右するものではないというべきである。なぜならば、仮に、他の結合商標が、周知・著名な「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)ブランドと区別され、出所を異にするものとして理解されているとするならば、そのことは、「VALENTINO」の文字を含む商標が、「VALENTINO」とそれ以外の他の特定の文字とが結合したものとしてよく知られ、かつ、VALENTINO GARAVANIとは関係のないものとしてよく知られるに至っている等の特段の事情があることを意味するのであって、そのような場合にこそ、VALENTINOGARAVANIのデザインに係る商品に使用される「VALENTINO」(「Valentino」、「ヴァレンティノ」)の商標と区別されると言い得るのである。ところが、被請求人提出の証拠によっては、本件商標が、「Valentino」とそれ以外の他の特定の文字「Coupeau」とが結合したものとして取引者、需要者においてよく知られ、かつ、VALENTINO GARAVANIとは関係のないものとしてよく知られるに至っている等の特段の事情は、全く認められないのである。
したがって、前記VALENTINOの文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が登録されていることによって、本件商標についてVALENTINO GARAVANIのデザインに係る商品との出所の混同のおそれが減少するものということはできないのである。
なお、審判請求人は、本件に関する事情として「VALENTINO(ヴァレンティノ)」商標の周知・著名性を認定した審決を参考資料1ないし7として提出する。

4 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は審判請求人の負担とする。との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第20号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)著名性に対する反論
ア)まず、甲第2号証の1、2ないし甲第6号証は、引用A商標ないし引用F商標を掲載した商標公報であって、これを以てしては商標公報に掲載された引用商標であるVALENTINO GARAVANI並びにVALENTINO の商標が著名であるとすることはできない。
イ)審判請求人は、甲第8号証の1、2ないし甲第12号証の1〜4を以て、引用商標であるVALENTINO GARAVANIの著名性、並びに、VALENTINOの文字が著名であると言うVALENTINO GARAVANIの著名な略称でもあることを立証しようとしているが、前記書証を以て、前記事項を立証することはできない。
なぜなら、(a)Valentino の名称はイタリアでは男子の名を表す名称としてよく使われている名称である。これを明らかにするため乙第1号証に示す辞典を提出する。また、(b)VALENTINO GARAVANIの表示中のVALENTINOの表示は著名な略称であるとする前記甲第8号証の12ないし甲第12号証の1〜4に示す書証に示された判断に反し、VALENTINO の綴りが前記乙第1号証に示す辞典に記載された通り男子の氏名としてよく使われる名称であるとの判断を示した決定、審決がある。これを乙第2号証、同第3号証、同第4号証として提出する。
ウ)また、甲第7号証、並びに甲第13号証の1、2以下甲第62号証に示す書証を以て前記引用商標、並びに、前記引用商標の略称、及びVALENTINO GARAVANI名称、並びに、その略称であるとする VALENTINOの名称の著名性を立証しようとしているが、前記書証の大半は、発行所が明らかでなく前記書証が刊行物として真正に成立した文書であるかどうかわからない。それだけでなく、前記書証が頒布されたものであるかどうか明らかでない。また、仮に前記書証が刊行物として頒布されたとしても、それは、VALENTINO GARAVANIの表示、並びにその略称であるとするVALENTINOの表示が多くの刊行物に掲載して頒布されたと言うだけのことである。その頒布を以てそれが直ちに前記表示が著名性獲得に結びつくとは限らない。これが著名になったと言うためには、多くの刊行物に掲載して頒布されたと言う事実だけでなく、これとは別な立証手段が必要である。
エ)本件では、引用商標がどのような手段を講じて著名商標としたとの主張、立証もない。従って、引用商標、並びに引用商標の略称であるVALENTINO の文字が著名であるとの審判請求人の主張は成り立たない。
(2)VALENTINO GARAVANI或は、その略称であるとする VALENTINO の表示の著名性について
ア)本件商標は、商標審査の専門家である権威のある審査官が、本件商標の登録の可否を判断するに当って、職務上当然(a)イタリアの服飾デザイナーである著名なヴァレンティノ・ガラバー二氏の存在を知った上で、且つ、同人の氏名の綴りから成っているVALENTINO GARAVANI、並びに、その略称であると審判請求人の主張するVALENTINO GARAVANIの登録商標があることを知った上で、また、これまで同人の氏名の綴りから成る登録商標の著名性を主張、立証して審判申立をし、或は、異議申立がなされた件について、その審判申立、或は、異議申立を排斥した乙第2、3、4号証に示す審決、決定があったことを知った上で、並びに、前記ヴァレンティノ・ガラバー二氏以外の者から、前記商標の存在を前提とて出願されたVALENTINO を配した商標が登録されていることなどを知った上で、これらの事情を勘案して慎重な審査を行い、(b)本件商標を登録しても、本件商標が先登録の登録商標とは外観、称呼、観念の同一性、類似性がなく、また、本件商標を指定商品に使用してもこれらの既存の登録商標の指定商品と同一、或は類似することがないとして、誤認、混同の虞れなしと判断して登録された権利である。
イ)本件商標の登録を無効にしようとする審判請求人の本件申立は、権威のある審査官が行った本件商標の権利設定の処分を覆すものである。即ち、審判請求人の本件申立は、一度有効に成立した本件商標の権利設定処分に反して、本件商標の法的安定性を覆そうとしている行為である。そうすると、そのため提出する証拠は、いわゆる真正に成立した証拠であって、且つ、いわゆる厳格な証拠でなければならない。(a)審判請求人が、前記審判官の判断を誤りとして本件商標の登録を無効にするためVALENTINO GARAVANIの標章が著名の標章であること、並びに、その商標を構成するVALENTINOの標章がVALENTINO GARAVANIの著名な略称の標章であることを証明するためであろうが、甲第7号証〜甲第62号証にわたる多数の書証を提出している。(b)しかし、これらの書証の中の甲第8号証〜甲第12号証を除き、甲第7号証、並に甲第13号証〜甲第62号証の中の二、三を除いては発行所は明記されていない。即ち、これらの書証の多くは成立の真正を立証する証拠はない。(c)そうすると、これらの多くの書証は、ただ単にVALENTINO GARAVANI並びにVALENTINO の表示のある印刷物を書証として沢山提出したと言うだけである。従って、これらの多くの書証を以てしてはVALENTINO GARAVANI或はVALENTINOの標章が著名であるとことを立証することはできない。
(3)本件審判請求を提起するに当って、審判請求人に審判請求の利益があることを明確にした主張立証がない。
本件審判請求は、前記したとおり、権威のある審査官によって適法に権利として設定されて安定した本件商標を無効とする請求である。そうすると、本件審判請求は本件商標の法的安定性を覆す行為である。その請求をするには、それ相当な理由がなければならないはずである。これを明らかにするため、本件請求を行う正当な理由を明らかにされなければならない。
本件審判請求書には、これが明らかにされていない。これが明らかにされない以上は本件審判請求をする利益がない。
(4)商標法第4条第1項第8号違反についてとの主張に対する反論
ア)審判請求人はVALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ・ガラバー)氏は著名なデザイナーであって同氏の顧客の中には、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップパーンなどの著名人も多いとしている。(a)しかし、これら著名人を指すにしても、レオーネ・イタリア大統領夫人、グレス・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップパーンと表示し、或は指称するから、これら著名人を指すことがわかるが、これらの著名人を指すとき、これを単にレオーネ、グレス、エリザベス、オードリーと表示し、或は指称したときは、レオーネ、グレース、エリザベス、と言う人は沢山いるので、前記著名人を単にレオーネ、グレス、エリザベスと言ったときは直ちにこれらの著名人を指したことにはならない。即ち、前記著名人のレオーネ、グレス、エリザベス、オードリーの表示、名称がレオーネ・イタリア大統領夫人、グレース・モナコ王妃、エリザベス・テーラー、オードリー・ヘップパーンの著名人の著名な略称と言うことはできない。
イ)それと同じように、VALENTINO の表示を以て直ちに著名人のVALENTINO GARAVANIの著名な略称と言うことはできない。
ウ)このVALENTINO の名称がイタリアの男子の名称としてよく使われる名称であることは乙第1号証に示す辞典に記載されている。また、VALENTINO の表示が直ちにヴァレンティノ・ガラバー二氏の著名な略称とは言えないとの判断を示した甲第2、3、4号証に示す審決、異議決定がある。従って、ヴァレンティノの称呼、並びに表示を含む商標は、直ちに、イタリアの著名なデザイナーであるヴァレンティノ・ガラバー二氏を指すとは言えない。更に、VALENTINO の綴りが直ちにVALENTINO GARAVANIの略称と言えないことは後述する。
よって、本件商標の登録には、ヴァレンティノ・ガラバー二氏の承諾が必要であり、この承諾を得ないで登録された本件商標は無効であるとの主張は失当である。
(4)商標法第4条第1項第11号について
ア)本件商標の Valentino Coupeauと引用商標のVALENTINO GARAVANIの称呼は冗長なものではない。
イ)因に、審判請求人がVALENTINO GARAVANIの表示が世界の一流品のブランドであることを明らかにしようとするために提出したと思われる甲第14、15、16、17の各号証に示す「世界の一流品大図鑑」と称する文書にはVALENTINO GARAVANI以外の一流品と称するブランド名が掲載されている。
上記文書は、いずれも発行所を明らかにした文書ではなくVALENTINO GARAVANIの著名性を立証できる文書ではないが、上記文書に一流品として掲載されたブランド名として甲第13号証の2〜甲第17号証の5には「VALENTINO GARAVANI」以外に「アンドレ・コラン」(フランス)、「ミラー・グローブ」(イギリス)等が掲載されている。
上記証拠に掲載されたVALENTINO GARAVANI以外の一流品のブランド名の使用者は、自己のブランド名は、取引者、需要者に冗長なブランド名であると言う感じを与えることがないと判断したことにより、これを無理に略称を以て表示したり、称呼する必要がないとして、その表示に当っては取引者、需要者に馴染まれている正規の表示、名称をそのまま使用しているのである。
ウ)本件商標も、後記する商標の例に倣って、ヴァレンティノと略称されることなくヴァレンティノクーポと呼び、これが冗長であると言う感じを持ったり、或は持たれたりせず使われている。
(5)本件商標の構成について、
本件商標の構成は、Valentinoと Coupeau を単純に二段に配した構成ではない。Valentinoと Coupeau の綴りは、まず、同じような書体で綴られている。また、その綴りの大きさも同じような字配りで表示されている。さらに、その ValentinoとCoupeau の配列は、ValentinoとCoupeauの綴りを単純に上下二段に配列した構成としたものではなく、Valentino の綴りの下に、Coupeau の綴りの書き出しがやや右寄りからずれて始まって、その書き終わりがやや右寄りにずれて終わるように配列されてデザイン化されている。即ち、本件商標は、ValentinoとCoupeauとは、Valentino Coupeauと一連に表示する構成ではないが、Valentinoと Coupeau が各別の綴りとして二段に配列された構成でなく、Coupeau の文字も Valentino の文字とが一体となって目立つように連続して一連化されて認識されるような工夫を凝らした字配りで構成されており、Valentinoと Coupeau のいずれか、どちらかが目立つような配列の仕方には構成されていない。従って、本件商標に取引者、需要者が接したときは、極く自然にヴァレンテイノクーポと称呼するよう読み取り、本件商標のValentino の文字(綴り)をCoupeau の文字(綴り)と切り離してValentinoの文字(綴り)に注目するような構成とはなっていない。換言すれば、本件商標は、前記した構成そのものが一体として取引者、需要者に認識されるよう工夫を凝らした構成となっているもので、本件商標を構成するValentino の綴りが本件商標の要部をなすものとしてこれが Coupeauと離して目立つようには構成されているものではない。
以上、観察したところから明らかなように、本件商標と引用商標とはまず、外観を異にするだけでなく、称呼を異にし、更に、同一人物を指すものでないところから観念を異にするものであることは明らかである。
(6)適法に登録処分を受けた本件商標について
本件商標が登録された後、審判被請求人は本件商標の普及に積極的な営業活動を開始する着手している。そうすると、本件商標が取引者、需要者に知られることによって取引者、需要者に馴染まれ、本件商標の表示が冗長であるとか、称呼が冗長であるとかと言う感じはなくなるのは当然である。
(7)審判請求人は、本件商標の Valentino Coupeau を構成する文字の中、本件商標のValentino の文字の称呼が、引用商標のVALENTINO GARAVANIの表示中のVALENTINOの文字の称呼と共通にすることを以て、両商標は同一性があるとしているが、これは誤りである。
ア)イタリアでは VALENTINO の綴りは男子の氏名によく使われていることは乙第1〜4号証に示すとおりである。また、VALENTINOの綴りを用いた氏名を名乗る著名なイタリアのデザイナーに(a)VINCENZO・VALENTINO/ビンチェンツォ・ヴァレンティノ、(b)MARIO・VALENTINO/マリオ・ヴァレンティノ、(c)GIOVANNI・VALENTINO/ ジョバンニ・ヴァレンティノ、(d)GIANNI・VALENTINO/ジャンニ・ヴァレンティノ等がいる。 上記した人々は親族である。
上記したデザイナーの氏名がそれぞれ商標として登録されている。これらの登録商標の1例を乙第5号証の1〜4、乙第6号証の1〜4、乙第7号証の1〜4、乙第8号証の1〜4として提出する。
上記商標なり、ブランド名を指称するとき、それぞれが冗長であるからと言って、ビンチェンツォと言ったり、マリオ、或は、ジョバンニ、ジャンとは略称したりはしない。また、上記商標をヴァレンティノとも略称しない。 また、単にヴァレンティノと言ったときは取引上、上記商標を指さない。
これらのデザイナーの氏名を表す VALENTINO の表示を用いた(a)〜(d)に示す商標なりブランドが、取引者、需要者によって引用商標なりヴァレンティノ・ガラバー二氏のブランドと取り違えられることはない。現に、前記した(a)〜(d)の商標なりブランドはVALENTINO GARAVANIの引用商標なりブランドと区別されて通用している。
イ)それだけでなく、審判請求人が著名商標と言われているVALENTINO GARAVANIの著名な略称であるとするVALENTINOの文字を用いた引用商標の他に著名として取り扱われている商標、ブランドはいくらでも使用されている。即ちVALENTINO GARAVANIの略称であるとするVALENTINO の綴りを使用した著名商標は末尾に添付する乙第9号証の1〜3、乙第10号証の1〜3、乙第11号証の1〜3、乙第12号証の1〜3に示す商標がある。これらの商標はいずれも使用されている。その使用の態様としては自ら使用をしないで使用権を設定して使用されているものがある。その1例を乙第13号証に示す。これらは、取引上、ヴァレンティノとは略称しない。また、単にヴァレンティノと言ったときは、取引上これらを指さない。
ウ)審判請求人の理屈から言えば、これら乙第5〜12号証に示す著名として扱われている商標も無効となると言うことになる。また、著名商標として Christian Dior /クリスチャン ディオールの氏名からなる乙第14号証の1〜6に示す商標がある。その商標の中の略称である Christian /クリスチャンの綴りを使用した前記著名商標以外の著名商標に末尾に添付する乙第15号証の1〜7、乙第16号証の1〜6、乙第17号証の1〜3、並に、乙第18号証の1〜6に示す商標がある。乙第18号証の1〜6に示す商標は、乙第15号証の1〜7に示す商標権者であるエス・アー・クリスチャン・オジャールから権利移転を受けた株式会社イトキン総本社が出願して登録になった商標である。これらの商標は前記商標と区別されて認識され使用されている。審判請求人の理屈から言えば、乙第15、16、17号証に示す著名商標は勿論、乙第18号証に示す著名商標も無効となる。
更に、著名商標としてPIERRE CARDIN /ピエール・力ルダンの氏名から成る乙第19号証に示す商標がある。その商標の中の略称であるPIERRE /ピエールの綴りを使用した前記著名商標以外の著名商標に末尾に添付する乙第20号証の1〜3に示す著名商標がある。これらの商標は前記商標と区別されて認識され使用されている。審判請求人の理屈から言えば、末尾に添付する乙第20号証の1〜3に列記する商標も無効となる。
しかし、これらの登録商標に対して審判請求人が主張する前記理屈が通らないことは明らかである。そうすると、本件商標も審判申立人の主張する理由によっては無効となることはない。
これらの商標は取引者、需要者に外観、称呼、観念はそれぞれ異なると認識され、その認識の下にそれぞれが親しまれており、冗長な商標として取り扱われてはいない。また、略称を以てしては取り扱われていない。
本件商標も略称を以て取り扱われていない。よって審判請求人の主張は失当である。
(8)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用D、E商標とは外観、称呼、観念のいずれも相違することは既に説明したとおりである。
また、VALENTINO の文字を商標中の構成に取り入れている多数の商標が引用商標とは類似しないとして有効に登録されている点からしても本件商標を以て引用商標に類似すると言うのは誤りである。
そうすると、本件商標を以て、直ちに商標法第4条第1項第15号に該当すると言うことはできない。

5 当審の判断
(1)利害関係の有無について
本件審判に関し、当事者間に利害関係についての争いがあるので、この点について先ず判断する。
そして、本件商標は、その構成中に、請求人の使用に係る商標「VALENTINO」の文字を有するものであるから、これを商標権者がその指定商品に使用した場合、請求人の商品との間でその出所について混同を生じさせる蓋然性を認め得るものである。
したがって、請求人は、本件審判について、法律上の利害関係を有する者というべきである。
(2)VALENTINO標章の著名性について
本件審判請求の理由及び甲第7号証及び同第13号証ないし同第56号証(枝番号を含む。)を総合してみるに、以下の事実が認められる。
a)ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)は、1932年イタリア国ボグヘラで誕生、17才の時パリに行き、パリ洋裁学院でデザインの勉強を開始し、その後フランスの有名なデザイナー「ジーン・デシス、ギ・ラ・ロシュ」の助手として働き、1959年ローマで自分のファッションハウスを開設した。1967年にはデザイナーとして最も栄誉ある賞といわれる「ファッションオスカー(Fashion Oscar)」を受賞し、ライフ誌、ニューヨークタイムズ誌、ニューズウィーク誌などの新聞、雑誌に同氏の作品が掲載された。これ以来、同氏は、イタリア・ファッション界の第1人者となり、サンローランなどと並んで世界三大デザイナーとも呼ばれるようになった。そして、請求人は、ヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服等の商品を製造・販売していて、その商品に「VALENTINO GARAVANI」「VALENTINO」の文字よりなる標章(以下、これらを「VALENTINO標章」という。)を使用している。
b)我が国においては、昭和49年に「株式会社ヴァレンティノヴティックジャパン」が設立され、以来、ヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服等の商品が同社により輸入、販売されている。
c)例えば、甲第7号証4ないし32は、主に昭和51年9月〜同11月にかけて発行された新聞等におけるヴァレンティノ ガラヴァーニのデザインに係る紳士服、婦人服の紹介記事を抜粋したと認められるものであるが、その紹介記事の見出しに、「鮮やか黒いファッション ヴァレンティノ秋冬ショー」(繊研新聞、昭和51年9月28日版)、「世界のVIP女性愛用のヴァレンティノ・コレクション発表」(日刊ゲンダイ、昭和51年10月2日版)、「伊の鬼才ヴァレンティノ これが76年秋冬の新作」(日経産業新聞、昭和51年10月6日版)との記載があり、また、「世界の一流品大図鑑’85年版」(甲第15号証)中の「VALENTINO GARAVANI(ヴァレンティノ ガラヴァーニ)」の標章が記載された項における紹介記事においては、「・・・魅惑的で優美な衣裳作りを心がけているというヴァレンティノ。(婦人服)」、「シーズン毎にカジュアルシューズも発表しているヴァレンティノですが、・・・(紳士靴)」との記載、同じく「男の一流品大図鑑’85年版」(甲第16号証)においては、「・・・オフタイムこそ、ヴァレンティノで洒落てみたい。(紳士用ベルト)」との記載、さらに、「25ans 1987年10月号」(甲第22号証)においても、「・・・ヴァレンティノの服は、このスカート丈とニット素材というカジュアル要素を持ちながらも、・・・」等の記載があるように、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と呼ばれ、そのデザイナーである「Valentino Garavani」も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれ、その名で知られていることを前提とした記事が多数掲載されている。
以上の事実によれば、本件商標の登録出願時の平成7年9月頃には、VALENTINO標章は、「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標として、また、デザイナーのヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)も「VALENTINO(ヴァレンティノ)」と呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものということができる。そして、該「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の著名性は、現在も継続していると認められるものである。
(2)出所の混同について
本件商標は、前記のとおりであるところ、「VALENTINO COUPEAU」の欧文字が16文字であり、これより生ずる「バレンティノクーポ」の称呼も8音であって、その構成文字又は称呼のいずれよりみても、一つの名称のものとしては冗長というべきである。さらに、本件商標は、全体として特定の熟語や氏名を表すものとして一般の取引者、需要者によく知られているというような事情も認められない。
そして、前記(1)のとおり、本件商標の登録出願時には、既に、VALENTINO標章が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」の商標と、また、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(Valentino Garavani)が「VALENTINO(ヴァレンティノ)」とも呼ばれて、紳士服、婦人服等について、同人のデザインに係る商品に付される商標ないしは同人の略称として著名であったこと及びVALENTINO標章が付される商品「紳士服、婦人服」等と本件商標の指定商品は、共にファッション関連の商品であって、同一又は高い関連性がある商品といい得るものであること等を併せ考慮すれば、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その構成中上段の「VALENTINO」の文字のみを捕らえ、著名なVALENTINOの商標を連想、想起し、それがヴァレンティノ ガラヴァーニ又は同人と何らかの関係がある者の業務に係るものであるかのごとく、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあったものというのが相当である。
また、この混同を生ずるおそれは、本件商標の登録出願時から現在においても継続しているものと認められる。
(3)結論
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというべきであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標


審理終結日 2002-11-25 
結審通知日 2002-11-28 
審決日 2002-12-10 
出願番号 商願平7-100220 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (018)
T 1 11・ 23- Z (018)
T 1 11・ 26- Z (018)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩内 三夫涌井 幸一 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 井岡 賢一
柳原 雪身
登録日 1999-01-14 
登録番号 商標登録第3371061号(T3371061) 
商標の称呼 バレンティノクーポー 
代理人 末野 徳郎 
代理人 志村 正和 
代理人 廣田 米男 
代理人 杉村 興作 

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