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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z11
管理番号 1070851 
審判番号 無効2001-35430 
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-28 
確定日 2002-11-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4295017号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4295017号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4295017号商標(以下「本件商標」という。)は、「MAGNEGEN SUPERMAG」の欧文字と「マグネジェン スーパーマグ」の片仮名文字を二段に横書きしてなり、平成9年9月3日に登録出願、第11類「工業用水・上水・下水・汚水又はし尿の流路に取り付けるための磁力を用いて流路内壁の防蝕及び異物の付着を防止する水質活性化装置」を指定商品として、同11年7月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第16号証を提出した。
1 第4条第1項第7号について
(ア)請求人は、本件商標が出願された当時、米国特許第5269915号の特許権者、米国商標登録第1762456号の商標権者であり、現在、これら特許権および商標権を所有するベリーズ国ベリーズ市キングストリート2Aに所在のマグネジェン社の総括責任者である。
(イ)被請求人は、本件商標の出願前である1997年7月16日に、請求人が有する特許権、商標権の使用許諾のもとに製造される磁気活水器の日本における独占販売契約を、力ルフォルニア州の有限責任会社であるSuperUSA LLC(デストリビュータ)と締結している(甲第2号証)。 甲第2号証によれば、SuperUSA LLCは被請求人に対してMagneGenが米国登録商標(甲第3号証)であること、およびSuperMagがトレードマークであることを開示しており、取扱う製品が本件商標の指定商品である磁気を用いた水質活性装置であることも米国特許第5269915号明細書(甲第4号証)から明らかである。
してみれば、被請求人、および被請求人の関係会社であり商標登録出願人である株式会社ヒューマンネットワークは、本件商標の指定商品と同一の商品に係わる他人所有の米国登録商標およびトレードマークの存在を知りながら、しかも米国の商標権者および所有者、すなわち、請求人および請求人を総括責任者とするマグネジェン社から何らの承諾を得ることなく、商標登録の出願をしたものである。
この事実は、請求人が平成11年異議第91486号事件の商標登録異議申立理由補充書(平成11年12月9日付)における甲第2号証で証明したとおりである。
(ウ)被請求人代表者波田野辰雄氏は、平成11年異議第91486号事件の商標登録異議意見書(平成12年4月12日付)において、米国における商標権者(特許権者)である請求人に対し、サンフランシスコのレストランにて「日本でのビジネスを継続的且つ安全に行うために請求人又はマグネジェン社の特許、商標等の権利を、被請求人側が日本で使用し且つ取得することを申し出た処」、さらに、福島県郡山市の郡山ビューホテルにおける1997年9月15日のオープニングパーティーにて「日本国内で米国特許第5269915号と商標「MagneGen」及び「SUPER MAG」の表示及び使用をすること、両商標の日本国内の登録を受けることの承諾を求めた処」、請求人がこれを口頭で快諾した旨、反論している。
然らば、被請求人には本商標登録の出願を請求人から承認されたことの立証責任があり、承認された場所、日時、内容などを特定した証拠能力のある書面を提出する義務がある。それにも拘わらず、前記商標登録異議意見書においては証拠能力のある書面が何ら提出されておらず、承認されたとする被請求人の主張は却下されて然るべきである。
請求人は、サンフランシスコ、郡山のいずれにおいても被請求人からその主張のような商標登録出願(特許出願)の承認を求められたことはない。従って、またこれを許諾した事実もなく、被請求人側の主張は全くの虚偽である。
郡山において被請求人側の通訳を担当した柴田英機氏の陳述書(甲第5号証)、サンフランシスコにおいて通訳を担当したジェフリー・チュー氏の陳述書(甲第6号証)からも明らかなとおり、サンフランシスコでの「日本でのビジネスを継続的且つ安全に行うために請求人又はマグネジェン社の特許、商標等の権利を、被請求人側が日本で使用し且つ取得すること」、郡山での「日本国内で米国特許第5269915号と商標「MagneGen」及び「SUPER MAG」の表示及び使用をすること、両商標の日本国内の登録を受けること」、とのそれぞれの申し出に対して請求人が口頭で快諾したとする被請求人側の主張は事実無根である。
(エ)本件商標のように、他人の商標を本人の承諾もなく登録出願を行いその登録を得るという行為は、東京高裁平成11年12月22日判決、平10(行ケ)185号にもあるとおり、国際商道徳に反するものであって公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものと言うべきである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号の規定に該当し、その登録は当然に無効とすべきものである。
(2)第4条第1項第19号について
請求人は、被請求人が、本件商標を構成する「MAGNEGEN」が、被請求人の出願以前から日本国を含め世界各国において周知の商標であったこと、外国および日本における周知商標がわが国において登録されていないことを奇貨とし、国内における代理人としての地位を不当に独占する不正目的での使用を意図して商標登録出願したものであることを、甲第7号証〜甲第12号証を引用して立証する。
(ア)季刊誌「CTI Journal Summer l997,Vol.18,NO.2 」(甲第7号記)には、水処理装置における磁気活水器として「MagneGen Pipe Protector」と「MagneGen Clair Water」が紹介されている。そして、商品の照会先として、米国、日本など17カ国におけるフリーダイヤルNO.が記載されていることからも明らかなように、商標「MagneGen」は、本件商標が出願される前から日本を含め、世界各国において周知商標となっていたのである。被請求人が本件商標の出願前の1997年7月16日に、請求人が有する特許権、商標権の使用許諾のもとに製造される磁気活水器の日本における独占販売契約を締結(甲第2号証)していたことは前記したとおりである。ところが、被請求人および株式会社ヒューマンネットワークは、1998年1月28日またはその頃、マグネジェン社の製品を模造し、偽造ラベルを付して日本と台湾の両国で販売し、このことがデストリビュータに発覚し、その結果、日本における販売権の自動喪失を1998年8月1日付をもって通告され、同年8月4日付で模造製品の製造および販売の停止を通告されているのである。そして、被請求人に代わる日本の販売店として株式会社スーパーマックスUSAが指定されている(甲第8号証、甲第9号証、甲第10号証)。
(イ)このように、被請求人および株式会社ヒューマンネットワークは、SuperUSA LLCとの独占販売契約の締結後、6カ月という極めて短い期間のうちに、模造品を製造し、偽造ラベルを貼付して販売するという、商取引上、許されない行為を冒している。それ故、本件商標は、日本における販売代理人としての地位を不当に独占する不正目的での使用を意図して商標登録出願したものと認めざるを得ず、商標法第4条第1項第19号に該当し、その登録は無効にすべきものである。
被請求人が模造品を製造し、偽造ラベルを貼付して販売した点に関し、当時、株式会社ヒューマンネットワークの業務部長であった小林剛氏の陳述書(甲第11号証)から被請求人および株式会社ヒューマンネットワークが模造品を製造したことが、また、当時、株式会社ヒューマンネットワークの販売代理店であった山本将市氏の陳述書(甲第12号証)から被請求人および株式会社ヒューマンネットワークが模造品に偽造ラベルを貼付して販売したことが、それぞれ明らかである。
(3)第4条第1項第8号について
本件商標を構成する「MAGNEGEN」が、中央アメリカのベリーズ国ベリーズ市を所在地とする法人「MAGNEGEN LTD.」の名称と全く同一であること、当該法人が本件商標の出願時に存在していたことを甲第13号証〜甲第16号証を引用して立証する。
(ア)「MAGNEGEN LTD.」の存在は、ベリーズ国の国際ビジネス会社法(1990年)による「正式会員証」(甲第13号証)、1997年10月25日付の特許と商標の売買譲渡証(甲第14号証)に基づく米国特許商標庁からの譲渡書類の記録通知書(甲第15号証)における譲受人の記載内容からも裏付けできる。また、被請求人が日本における輸入代理店として契約した相手側(SuperUSA LLC)の総括責任者〔甲第8号証、甲第9号証、甲第10号証参照〕であるルイス・R・ピータース氏の誓約書(甲第16号証)から、本件商標の出願前から「MAGNEGEN LTD.」が存在していたことも明白な事実である。
(イ)そして、被請求人、株式会社ヒューマンネットワークあるいは両社の社長を兼ねる波田野辰雄氏は、請求人あるいは請求人を総括責任者とするマグネジェン社に対し、社名(MAGNEGEN LTD.)を、日本その他の国で登録することについての許諾申出は全く行っていなかったこと、前記したとおりである。なお、本件商標では、法人の性格を表す「LTD.」を用いていないが、「LTD.」は省略されて使用されるのが通常であり、実質同一の名称であると言える。
したがって、本件商標は、承諾を得ていない他人の名称を含むものであり、商標法第4条第1項第8号の規定に該当し、その登録は無効とすべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする、との審決を求める。」と答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁理由の詳細
(1)請求人と被請求人等の関係
(ア)マグネジェン社への商品製造委託
マグネジェン社と請求人(同社総括責任者)とは、乙第1号証の1の陳述書に示すように被請求人の代表者波田野辰雄が、米国人知人Jeffrey Chou(ジェフリー・チュー)氏(後に米国側総代理店スーパーUSA社の副社長となる者)の仲介により、当初の磁気活性化装置の製造を委託した関係にあり、当該委託料は乙第2号証の1、乙第2号証の2決済書に示すように1997年7月16日付でスーパーUSA社のオーナー会社AMERICAN Procurement(アメリカン プロキュアメント)社経由にて合計1,430,000米国ドル被請求人より支払われている(但し、約2億円の内の残金約20%は、スーパーUSA社が支払う約束になった)。ちなみにこの時の磁気活性化装置の原型見本は被請求人側が考案して製作したものを提示したもので、請求人はジェフリー・チュー氏により同種類似装置の米国特許保持者として紹介を受けたことにより被請求人が製造委託した関係であり、被請求人側の製造委託の動機は国内ユーザーに対し、米国からの輸入品として販売した方が商品価値が高いという事情を考慮したものである。「SUPER MAG」の商標部分は被請求人側の提案により付させたに過ぎない。
(イ)被請求人側への商標登録の第1回目の承諾
またこの契約に際し被請求人の代表者である波田野辰雄が、サンフランシスコのレストランにてスーパーUSA社の社長Louis Chu(ルイス・チュー)氏、同副社長となったジェフリー・チュー氏、ルイス・チュー氏の会社アメリカンプロキュメント社員 Louis R.Peters(ルイス R.ピータース)氏等が同席の下、請求人に対し、今後の日本でのビジネスを継続的且つ安全に行うためにマグネジェン社を含む請求人側の特許、商標等の権利を、被請求人側が日本で使用し且つ取得することを協議した場で、請求人はこれを□頭で快諾したものである。その結果、後に説明するスーパーマックスユエスエイ社が設立された直後の1998年8月にスーパーUSA社側から代理店契約終了通知や抗議が出されるまで、請求人側からは何らの抗議も申し入れもなかったのである。
(ウ)商標登録についての第2回目の承諾
その後の支払い及び磁気活性化装置の注文は、後述する当該商品の米国側輸出代理店であるスーパーUSA社を通じて行われたが、さらに波田野辰雄は平成9年(1997年)9月に福島県郡山市の郡山ビューホテルで、被請求人の当該商品の国内販売会社で且つ被請求人の専用使用権者である株式会社ヒューマンネットワーク社によって開催された「MAGNEGEN」「SUPERMAG」発売のオープニングパーティー(総勢190名参加)に、上記米国内関係者3名とその家族計9名を被請求人の負担により米国より招待し、その席でコロネル・クライヤ氏を含む当該関係者全員に乙第3号証のヒューマンネットワーク社のカタログを配布した。
上記カタログには米国特許第5269915号と商標「Magne Gen」の表示がなされており、請求人はその内容を了承している。
(エ)コロネル・クライア氏による文書内容の誤りと同氏の取引上の行状
上記の点に関し、上記請求理由中で被請求人が上記両商標を日本で出願登録することにつき、請求人及びマグネジェン社のいずれからの許諾を受けていない旨の指摘は事実に反し、請求人作成の前記申立の甲第2号証、本件請求の甲第5号証及び同6号証の柴田英機氏,ジェフリー・チュー氏の陳述内容及びこれらに基づく請求理由中の主張も事実に反する。
そもそも年間を通じ数億円もの支払いが予想される国際商取引と、国内における多大な経費負担を伴う磁気活性化装置の新規の販売業務を、使用商標の正当な取得を担保しないで行うということ自体が常識的に考えられず、この意味で被請求人が本件商標を適正な手順により取得していることは極めて自然であり且つ常識にかなったものである。また請求人は、乙第4号証1〜2の1998年6月15日付のスーパーUSA社からのヒューマンネットワーク社宛電子メールの内容に示されるように、被請求人が多額にのぼる製造委託の契約金及び商品代金を支払っており尚且つ再三の催促を行っているにもかかわらず、この頃から約束の商品を納品しない等、正にこれらの行為こそ「国際商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し、公の秩序を害するものと言うべきである」。
請求人側の上記行為及び其の後の被請求人側へのアピールに対し、乙第5号証に示すように被請求人は強い抗議と金員の返還を求めている処、未だにその返還はない。
(2)本件請求人、株式会社スーパーマックスユエスエイ(前記異議申立人:以下単に「申立人」と称する)及びその関係者と被請求人等との関係について
(ア)申立人側と被請求人側との紛争関係
上記申立人の会社は、乙第1号証及び乙第9号証に示されるように平成10年7月末に被請求人側の国内総販売元である(株)ヒューマンネットワークの取締役副社長であった柴田英機氏等によって、被請求人側の競業会社として設立されたものであり、被請求人側の会社である(株)ヒューマンネットワークは、乙第6号証に示すように、現在前記申立人会社及び同社役員である柴田英機氏、土肥善衛氏、能勢由美子氏とこれらの者と密接な関係をもっている市川正夫氏とを被告として、千葉地方裁判所に本件商品に係る業務上の損害につき損害賠償請求訴訟を提起(事件番号 平成11年(ワ)第1710号)して訴訟係属中であり、上記訴訟は近く弁論終了の予定である。
(イ)柴田英機氏と申立人等との関係
上記訴訟提起に至る詳細な経過は、乙第1号証の(株)ヒューマンネットワーク代表取締役である波田野辰雄の陳述内容に明らかであるが(但し、乙第1号証中に「カルロ・クレイ氏」とあるのは「Coloneclair」(コロネル・クライア)氏を指している。
上記申立人の代表者である柴田英機氏は、ヒューマンネットワーク社の代表取締役副社長の責任にありながら、同社の株式の過半数買い占めによる「乗っ取り」等を計画し、その失敗が確定的になると共に同社の中核的社員数名の殆どを引き連れて退職し、同社の競業会社を設立したものである。ちなみに柴田氏等による会社乗っ取り話しを知った時点で、ヒューマンネットワーク社の将来に不安を感じた被請求人は、平成10年5月8日付で、被請求人に出願人名義変更手続きを行っている。柴田英機氏はまた、乙第1号証に示すように米国での失業中の身から、ジェフリー・チュ-氏の願い出に応じる形で、被請求人側の会社に恩情的に採用されたものであるが、ヒューマンネットワーク社在職中は本人の米国滞在中の知己及び経験と英会話能力を買われて米国のスーパーUSA社その他とのすべての接渉に係わっている。したがって前述した本件商標をめぐるスーパーUSA社及び請求人と被請求人等との関係はすべて熟知しているはずであるにもかかわらず、ヒューマンネットワーク社在職中からのスーパーUSA社及び請求人等との特別な関係を利用し且つ彼らと連携して、異議申立及び本件審判請求のための証拠書類の作成準備等を進めて本件審判請求に及んでいるものである。
(ウ)柴田英機氏の申立人会社設立の動機と違法行為
尚、柴田英機氏が当時の商標権者ヒューマンネットワーク社と競合する業務を行うために乙第9号証に示す申立人会社(株)スーパーマツクスエスエイを設立したのは、上記のように本人が元来厳しい生活環境下にあり乍らも、・ヒューマンネットワーク社に採用され且つ取締役副社長迄任される過程で同社が乙第8号証に示すように驚異的な成長を遂げるのを見届けながら、身につけた商品入手ルートと在職中のノーハウ及び人的つながり等のヒューマンネットワーク社側の経営資産を私的に流用することを動機とするものである。そして同社を退職する際には、同社の顧客名簿等の備品だけでなく、米国より納品が間に合わないためにヒューマンネットワーク社の代表者波田野辰雄が自社調達を企図して考案していた新商品の試作品まで、同社に無断で持ち去る等の違法且つ不当な行為にさえ及んでいる。
乙第10号証は、柴田英機氏の上記退職後及びスーパーマックスエスエイ社設立後に同社に対するヒューマンネットワーク社からの抗議と持ち出し品の返還を求めた書状である。
(3)請求人、米国スーパーUSA社と被請求人等の関係
(ア)米国総代理店としての設立経緯
既述のように被請求人は1997年7月、マグネジェン社及び同社総括責任者である請求人に磁気活性化装置の製造委託を行い多額の委託料を支払っているが、被請求人と請求人側が日米間で直接輸出入の取引が出来ない、との申し出により米国側総代理店としてスーパーUSA社を設立し、被請求人はスーパーUSA社を介して取引することを余儀なくされ、乙第7号証1〜2に示すように1997年8月以後送金及び取引が開始されて、少なくとも合計11回金889、453.76米国ドル(当時15、000万円強)が支払われている。既述のようにスーパーUSA社には被請求人代表者波田野辰雄を請求人に紹介した当時破産中のジェフリー・チュー氏が役員となっており、米国側関係者の申出によるスーパーUSA社の設立は、請求人側と被請求人の取引を利用して実質上ジェフリー・チュー氏の再起のためのビジネスを作る舞台を整えたに過ぎなかったことを意味している。
(イ)スーパーUSA社の米国側総代理店としての機能性
そしてこの間柴田英機氏はそれまでの深い人的つながりを見込まれ、ヒューマンネットワーク社の営業部長として、1998年3月以後は取締役副社長として、対スーパーUSA社の一切の取引の接渉の窓口となっていた。しかし、乙第4号証1、2に示すように、スーパーUSA社は平成10年(1998年)6月時点で、ヒューマンネットワーク社が多額の商品代金を支払い済みであり且つ再三にわたる商品納品の催促を行っているにもかかわらず、上記納品実現の労を取ろうとしないだけでなく、磁気活性化装置の製造受託者である請求人側との円滑な取引接渉を行うことができず(又は敢えて行うことなく)、被請求人への商品の円滑な供給に既に支障を来し始めており、その役割を十分に果たしていなかったことが明らかである。
(ウ)米国側総代理店としての債務不履行と不法行為
さらにスーパーUSA社には、ヒューマンネットワーク社が送金した約15,000万円のうち約67,000,000円に対応する委託商品「MAGNEGEN SUPERMAG」の未納があるほか、平成10年(1998年)6月3日付で送金した7,068,820円の送金分については、注文したパイププロテクターのすべてが未納であり、ヒューマンネットワーク社に対する代理店契約破棄(甲第9号証参照)後も、現在に至るまで再三の請求にもかかわらず、その金員の返還さえ行われない状態である。のみならず、スーパーUSA社は、上記のような明白な債務不履行及び同不履行によるヒューマンネットワーク社への甚大な損害を与えながら甲第9号証に示すように、平成10年(1998年)8月4日付書状で被請求人及びヒューマンネットワーク社の日本における代理店契約を一方的に破棄した上に、申立人会社株式会社スーパーマックスユエスエイを国内総代理店として指名して来た経過がある。
(エ)スーパーUSA社と柴田英機氏との連携行為
しかもこれらが申立人の代表者柴田英機氏の退職及び申立人会社の設立等の時機と符号し、申立人及びヒューマンネットワーク社に対する債務不履行に関してスーパーUSA社及び柴田英機氏が長期にわたり、遅くとも柴田英機氏がヒューマンネットワーク社の副社長に就任した直後の平成10年4月頃以後、綿密な連携の下に謀議されて行われた事は疑う余地がないものである。特にスーパーUSA社の実質的なオーナー会社であるアメリカンプロキュアメント社と柴田英機氏とは、同氏がヒューマンネットワーク社の副社長在任中であるにもかかわらず、被請求人に隠れて密かにアメリカンプロキュアメント社の副社長に就任し又はさせていた疑いが、柴田氏がヒューマンネットワーク社退職後に同氏の机の内部から発見された同氏の名刺(乙第15号証)からも十分に裏付けられるものである。さらに柴田英機氏がヒューマンネットワーク社の退職と略同時に申立人会社を設立し且つ直ちにヒューマンネットワーク社と同様な磁気活性化装置の販売を開始している事実は(これらの商品が試作のみで1ヶ月以上要することから考えると)、スーパーUSA社がヒューマンネットワーク社に納品すべき代金支払い済みの商品を申立人会社に横流ししたものと推認させるに十分である。このことは申立人会社の設立登記日及び事業開始日(いずれも1998年7月28日)からも明らかである。
(オ)甲第5〜6号証の陳述内容について
本件請求と同趣旨の異議申立を行った申立人の代表者である柴田英機氏は、甲第5号証において被請求人代表者波田野辰雄に英語力がなく、請求人側との交渉は同氏又はジェフリー・チュー氏の通訳を介して行われた旨主張している。しかし本件審判請求人とその米国内関係者及び柴田英機氏等は、正に被請求人の英語力が乏しいことや両氏と請求人を信頼して両氏に請求人側の関係者とのすべての交渉や通訳に当たらせたこと、そしてこれらの接渉中の重要事項を文書として残さなかったこと等を最大限利用することによって、お互いに謀議を図り被請求人の日本国内における営業実績の成果を自己利益のために窃取する背信行為に及んだものであることは上述の通りであるとともに、上記請求人の主張及び柴田氏等の陳述はそのことの傍証でもある。またこのことは甲第6号証のジェフリー・チュー氏の陳述内容についても全く同様のことが言えるものである。
(カ)甲第5、6号証、同第9、10号証の証拠力について
請求人の上記主張内容を立証しようとする甲第5号証、同第6号証及び同第9号証、同第10号証は、その記載事項が単に事実に反するだけでなく、既に述べたように被請求人に対して請求人と共に取引上、雇用契約上、会社経営上等においてすべての信義則にもとる一連の背信行為を働いた張本人又はその協力者である柴田英機氏、ジェフリー・チュー氏等によって恣意的に作成されたものと云わざるを得ず、請求人の主張を裏付けるべき証拠としては証拠力に欠けるものである。
2 本件商標が請求人側の米国登録商標、トレードマークそのものとは云えない点について
請求人は本件商標は、請求人側の米国登録商標、トレードマークそのものであると断定しているが、本件商標中の「SUPERMAG」、「スーパーマグ」の部分は被請求人が考案し、提案して使用されたもので、少なくとも請求人側のトレードマークである等と主張する根拠は全く存在しない。その結果上段が「MAGNEGEN」と「SUPERMAG」からなり、下段が「マグネジェン」と「スーパーマグ」からなる本件商標は、マグネジェン社との合意により同社商標を一部に含んだものに過ぎず、本件商標が請求人側の米国登録商標及びトレードマークそのものであるとする請求人の主張は全く根拠がなく、これをもって商標法第4条第1項第7号に違反するとする主張もまた根拠がない。
3 商標法第4条第1項第19号に対して
請求人は、被請求人が、本件商標が、その出願以前から日本国を含め世界各国において周知の商標であったこと、外国および日本における周知商標がわが国において登録されていないことを奇貨とし、国内における代理人としての地位を不当に独占する不正目的での使用を意図して商標登録出願したものであることを、甲第7号証〜甲第12号証を引用して立証しようとしている。しかしながら、上記主張は以下の点で誤りである。
(1)本件商標が出願前より日本及び世界各国で周知商標であったとする点 本件商標が日本及び世界各国で周知であったとする唯一の証拠である甲第7号証の季刊誌「CTI Journal Summer」は、発行部数や頒布地域も明らかでないために、本件商標の周知判断の何らの手掛かりにもならないだけでなく、本件商標の関連商品が唯一回掲載されただけで世界や日本国内で周知になったとは到底考えられない。またその掲載記事中に日本を含む17ケ国における商品照会先のフリーダイヤルNO.が掲載されたことが、何故に本件商標が日本及び世界で周知になった事の根拠になり得るのか理解に苦しむ処であり、上記請求人の主張は全く根拠がない。
(2)マグネジェン社の製品を模造し、偽造ラベルを付して日本と台湾の両 国で販売したとの主張について
(ア)模造、偽造との主張の根拠について
請求人は、被請求人がマグネジェン社の製品を模造し、偽造ラべルを付して販売した旨繰り返し主張しているが、そもそも被請求人がマグネジェン社のどの製品をどのように模造したのか、同社のどのラベルをどのように偽造したのかについては全く触れていないし、立証もしていない。また甲第8〜10号証においてもMagnegen製品の模造について繰り返し指摘しているが、それらの具体的内容については全く触れられておらず、被請求人が乙第5号証の請求人宛書状において指摘したように、柴田英機氏等の一方的伝聞に基づいて断言しているだけであって、具体的事実に基づくものは何一つ存在しない。後述するように、被請求人側が原型見本を考案、製作してマグネジェン社側に持ち込んだ装置に、被請求人の商標「SUPER MAG」を付すことに何らの問題もありようがない。
(イ)商品の完成と取引上の障害の経緯
(株)ヒューマンネットワーク代表者波田野辰雄が乙第5号証で述べているように、元々本件商標「MAGNEGEN」に係る磁気活性化装置は、波田野辰雄がその構想を米国に持ち込み請求人との打ち合わせによって試作を依頼し、商品として完成したもので、元々「スーパーマグ」はマグネジェン社に存在していないものであり、米国製品に対する顧客評価への期待と請求人との友好的な取引を期待して「MAGNEGEN」の商標を付するには至ったものの、請求人の完成商品を単純に輸入したものではない。そして「スーパーマグ」については甲第11号証の陳述書前半で小林剛氏がいみじくも陳述しているように、請求人側の製品は、当初から納期の遅れや塗装不良の問題を伴っており、その後のスーパーUSA社のランディー(Randy)氏のメール(乙第4号証の1、同2)によっても、マグネジェン社はコロネル・クライア氏の1人会社であり納期厳守の期待はできない、換言すれば同社のディストリビュータ自身によってマグネジェン社は、「スーパーマグ」を作る意思も体制もなく、同社とは円滑なビジネスは成り立たない旨のことが明らかにされているのである。これらの情況下で被請求人側が、マグネジェン社への製造委託に不安を抱き、国産メーカーに製造委託することを考えることは経営者としては極めて道理にかなった事であり、不正の目的等入る余地がないと云うべきである。そもそも甲第11〜12号証において請求人側の陳述人が述べている「スーパーマグ」は、被請求人側の独自開発にかかるオリジナル商品であり、これをマグネジェン社に製造委託したに過ぎず(この製造委託に結果として応じられなかったことは既述の通りである)、「SUPER MAG/スーパーマグ」自体も被請求人側の商標であって、この点でも模造や偽造の謗りを受けるいわれは全く存在しないものである。
(ウ)「スーパーマグ」の台湾への輸出について
請求人が、甲第10号証、同12号証等に基づいて被請求人が主張している台湾への輸出問題は、単に模造や偽造に当たらないだけでなく、請求人が本件請求理由の根拠として引用している小林剛氏の社内における不祥事の後始末として発生したものである。即ち、当時ヒューマンネットワーク社の業務部長であった小林剛氏が、同社で開発中の商品を同社社長波田野辰雄に断りなく外注した(注:これが柴田英機氏の指示又は共謀の下に行われたか否かは不明であるが)ことが後に判明し、当該商品の国内販売が難しいために台湾向けに輸出せざるを得ないこととなったことが台湾への輸出問題の始まりである。上記トラブルは、柴田英機氏が台湾での販売に尽力することを条件に、乙第11号証の議事録添付書類に示されるように平成10年5月9日のヒューマンネットワーク社の第3回役員会議で話し合われて、解決策が出されたもので、このことは請求人主張(甲第8号証)のように1998年1月頃ではなくもう少し後の時期である。柴田英機氏自身の直筆による乙第11号証の議事録に添付した書面に示すように、1998年5月9日の小林剛氏による上記不始末の処理が話し合われたことが、それに先立つ平成10年3月18日には、柴田英機氏,小林剛氏等による上記と関連した社内不祥事の精算の意を込めて、乙第12号証に示すように両氏がヒューマンネットワーク社の他の取締役とともに同社社長の波田野辰雄宛に誓約書を書いており、柴田氏、小林氏等による一連の不祥事の発生とその顛末の一部を表すものである。これらの点に関し、甲第12号証の山本正一氏の陳述中、少なくとも「スーパーマグをアメリ力から買い付け」ていたとする点、「スーパーマグのコピー商品だった」とする点等は陳述人の誤解か意図的に作り上げられた内容のいずれかと解する他ない。
(エ)甲第11号証,同第12号証について
甲第11号証、同第12号証に関し、その作成者である陳述人のうち小林剛氏はヒューマンネットワーク社の元業務部長でありながら同社在職中から柴田英機氏等と謀議して同社の乗っ取りを企ててこれに失敗すると、退職に際しては同社の新商品の試作品及び図面等の重要資材を無断で持ち出す等の行為に及んだ他、乙第13号証に示すように被請求人との間では紛争関係にあり、同様に山本将市氏も乙第14号証1、同2に示すように被請求人との間に紛争を抱えている者である。よって、両陳述人が請求人と被請求人との利害関係、引いては両人の利害にもかかわる事項につき、公明正大に客観的事実を陳述することは期待できないので、甲第11号証,同第12号証もその意味で被請求人の直接の利害にも係わる部分に関しては証拠力のない証拠である。
4 商標法第4条第1項第8号に対して
請求人主張のようにマグネジェン社が「MAGNEGEN LTD.」の商号で本件商標出願前に米国に存在していた事実は認めるが、本件商標は上段に「MAGNEGEN」を下段に「マグネジェン」を横書きしてなり、マグネジェン社の商号「MAGNEGEN LTD.」でもなく、これを含むものでもないから請求人の主張は根拠がない。この点に関し請求人は法人の性格を「LTD.」は省略されて使用されるのが通常であり、本件商標は上記商号と実質上同一の名称であることを主張しているが、この主張は以下に述べるように商標法第4条第1項第8号の規定の解釈を誤っている。
即ち、商標法第4条第1項第8号所定の他人の名称とは、当該他人が外国の会社である場合には、当該国の法令の規定に則って付されたその正式な名称をいい、当該国の法令において、株式会社等の組織形態を含まないものが法令上の正式名称とされているとき以外は、これを含むもののみが同号所定の他人の名称に当たると解するのが相当である。なぜならば、他人の名称を含む商標について登録を受けることができないと規定する同号の趣旨は、当該他人の人格権を保護するという点にあるところ、同号が他人の名称については著名性を要するものとしていないのに対し、他人の略称についてはこれを要するものとしているのは、略称については、これを使用する者がある程度恣意的に選択する余地があるためであると解されるから、このこととの対比において、著名性を要せずに同号該当性が認められる他人の名称とは、使用する者が恣意的に選択する余地のない名称、すなわち、法令上の正式名称であるというべきであり、以上の理は、当該他人が法人、ひいては外国の会社であっても異なるところはないからである。

第4 当審の判断
1.請求人は、「鉄パイプおよび非鉄パイプに気体流と液体流に垂直な磁束を発生させるための磁気源およびコンデンサー」(水質活性化装置)に関する特許を1993年12月14日に米国特許第5269915号(甲第4号証)として取得し、また、「MAGNEGEN」の文字よりなる商標を1993年4月6日に米国登録商標第1762456号(甲第3号証)として取得しているものであり、請求人の関係会社マグネジェン社の総括責任者である。
2.請求人の提出したの季刊誌「CTI Journal Summer l997,Vol.18,NO.2 」(甲第7号証)には、水処理装置における磁気活水器として「MagneGen PipeProtector」と「MagneGen Clair Water」が紹介されている。そして、商品の照会先として、米国、日本など17カ国におけるフリーダイヤルNO.が記載されていることからも、商標「MagneGen」は、本件商標が出願される前から米国において請求人及び請求人の関係会社の取扱に係る水質活性化装置について使用されていたことが認められる。
3.請求人の関係会社であるカリフォルニア州のSuperUSA LLCと被請求人の間で締結された1997年7月16日付「限定的独占販売契約書」(甲第2号証)によれば、被請求人がわが国で販売する「水質活性化装置」は、請求人が米国で特許を受けている商品であること及び当該商品に使用する商標「MagneGen」は米国登録商標であることが明記され、他に関連する商標とみられる「SuperMag」も記載されている。
4.上記3.の契約後SuperUSA LLCは被請求人に対し、契約書に定める権利喪失の通告「日本における販売権の自動喪失」を1998年8月1日付で行っている(甲第8号証)。
5.以上の事実を総合すると、本件商標の出願前から、請求人が米国をはじめ他の国においても「MagNegen」商標を使用していたものと認められ、また、「SuperMag」商標についても、前記した乙第2号証に記載されている。
そうとすれば、被請求人は、請求人の「MagneGen」及び「SuperMag」商標の存在を知りながら、請求人の承諾なしにこれら商標と実質的に同一の商標「MAGNEGEN」及び「SUPERMAG」を上段に書してなり、下段にその読みを片仮名で表し前記したとおりの構成よりなる本件商標を出願し、登録を受けたものというのが相当である。
被請求人は、「MagneGen」商標の登録については、請求人及び請求人関係会社が承諾していた旨主張し、また「SuperMag」商標については被請求人からの提案で使用するに至ったものであると述べているが、両者の取引関係が契約に基づいて支障なく行われていた時期のことであれば請求人が黙認していたと考えられる場合があるとしても、承諾したとする事実を示す証拠がなく、「SuperMag」商標についても甲第2号証の契約書に明記され、かつ、契約書に定める権利を被請求人が喪失したことは4.のとおりであるから、被請求人に係る商標であるとの主張は失当である。
しかして、請求人と被請求人とは本件商標の登録時には契約関係にはなく、かつ、本件商標構成中の「MAGNEGEN」及び「SUPERMAG」が前記した事情にある中で登録された本件商標は、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものといわなければならない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-08-30 
結審通知日 2002-09-04 
審決日 2002-09-20 
出願番号 商願平9-155262 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (Z11)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡田 美加 
特許庁審判長 田辺 秀三
特許庁審判官 小林 薫
岩崎 良子
登録日 1999-07-16 
登録番号 商標登録第4295017号(T4295017) 
商標の称呼 マグネジェンスーパーマグ、マグネゲンスーパーマグ、マグネジェン、マグネゲン、スーパーマグ、マグ 
代理人 河野 誠 
代理人 小林 英一 

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