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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 101
管理番号 1070798 
審判番号 取消2001-30458 
総通号数 38 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-02-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-04-20 
確定日 2002-12-24 
事件の表示 上記当事者間の登録第2506611号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第2506611号商標の指定商品中「薬剤」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第2506611号商標(以下「本件商標」という。)は、「FLEX」の欧文字と「フレックス」の片仮名文字とを2段に書してなり、平成元年12月29日に登録出願、第1類「有機工業薬品、無機工業薬品、界面活性剤、薬剤」を指定商品とし、同5年2月26日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証(枝番を含む。)を提出している。
1 本件商標は、その指定商品中「薬剤」について継続して3年以上日本国内において使用された事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
(1)商標法に基づく商標の保護は、本来、商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるものであるところ、登録後も一定期間登録商標が使用されない場合には、保護すべき信用が発生しないので、そのような不使用の登録商標に排他的独占権を与えておくのは、国民一般の利益を不当に侵害するものであり、かつ、第3者の商標選択の範囲を不当に狭めかつ害するものである。商標法における不使用取消の規定は、このような不使用商標登録の権利者と商標の使用を希望する第3者との間の利害を調節するものであり、不使用取消審判請求登録前3年以内の使用の要件及び不使用についての「正当な理由」の判断は、このような商標法の趣旨を前提としてなされなければならないものである。
(2)これを本件について見ると、本件商標の通常使用権者である久光製薬株式会社(以下「本件使用権者」という。)は「商標使用許諾契約書」(乙第1号証)によって本件商標について平成3年1月1日から20年間の通常使用権の許諾を受けているものであるが、平成9年までは何ら本件商標を使用しようとする意思を表示していなかったものである。同者は、平成9年に至り「フレックス」を商品名とする貼付用薬剤について製造承認申請をなし同承認は平成11年2月23日になされているようであるが、その後既に2年半が経過しているにもかかわらず、当該商品は存在していない。更に、本件商標は登録以来8年半という長期間にわたって全く使用されていない。
(3)本件使用権者は、貼付用薬剤について製造承認を得た後2年半も経過した時点において未だ製造の最終意思決定がなされておらず、また製造の準備が完了していないというのは、極めて異常といわなければならない。確かに医薬品の製造承認申請という事実は、その時点において申請人が当該医薬品を製造する意思を有していたという事実を表明するものであるが、製造承認がなされたとしても、その後の事情の変化により、当該商品の製造がなされないということは、ままある事実である。
(4)商標法第50条第2項但書にいう「正当な理由がある」場合とは、当事者が直ちに使用を開始しようとして最大限の努力をしているにもかかわらず、天災地変や時限立法等の不可効力的な外的要因によってやむを得ずその使用ができないという場合をいうものであるが、被請求人が主張する「正当な理由」とは、本件使用権者内の最終意思決定が未だなされていない、また、製造ラインが未だ整っていないという、単純に使用権者内部の事情に過ぎないものであり、このような事情は、製造承認取得の直後にその決定がなされていなければならないものであり、同社がそのつもりになれば直ちに解消できる事情にすぎない、また、同使用権者は貼付用薬剤のメーカーとして著名な会社であり、既存の製造ラインを使用するなど、本当にその気があれば本件商標を使用した商品の製造など極めて容易なはずである。
このような事実は、むしろ、同使用権者が真に「フレックス」商標を使用するという意思が表明されていないことを示すことに他ならず、このような状況が「正当な理由」のある状況といえるものでないことは明らかである。
(5)一方、請求人は、平成13年3月26日に商品区分第5類の「薬剤」を指定商品として「FLEXTAB」の商標出願(商願2001-026975)をなしており、薬剤についてFLEXTABの使用を強く希望しているものである。FLEXTABと本件商標が類似するものであることは明らかであり、本件商標が取消されなければ、請求人によるFLEXTABの登録及び使用は望めないところである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない。審判の費用は請求人が負担する。との審決を求める。」と答弁し、その理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし同第4号証を提出している。
(1)被請求人は、本件商標について、佐賀県鳥栖市田代大宮町在、久光製薬株式会社(本件使用権者)に対して、通常使用権を許諾している(「商標使用許諾契約書」(乙第1号証))。
しかして、本件使用権者は、本件商標に係る指定商品中「薬剤」に含まれる「消炎鎮痛貼付剤」について使用するため現在準備中である。「消炎鎮痛貼付剤」を製造、販売するには薬事法に基づく製造承認が必要であり、また、製造に当たっては、その製造機械その他の設備や準備も必要である。
したがって、本件商標は本件審判請求の登録前3年以内には使用をしていないが、本件使用権者には、商標法第50条第2項但し書きに規定する正当な理由がある。
(2)本件使用権者は、平成9年9月29日付けで本件商標「フレックス」を販売名として、有効成分フェルビナク含有の貼付用薬剤(消炎鎮痛貼付剤)について、薬事法に基づき製造承認を求め、佐賀県福祉保険部を経由して、厚生省(注、現在「厚生労働省」に変更されている。以下同じ。)に申請した(乙第2号証)。
厚生省は、薬事法に従い必要な審査を行った結果、平成11年2月23日付けをもって、本件使用権者宛に、前記申請について医薬品製造承認をした(乙第3号証、同第4号証)。
そこで、本件使用権者は、前記「フェルビナク含有の貼付用薬剤」の製造を開始すべく、現在、販売に備えた試験、製造機械及びラインの発注・施工等及び本件使用権者会社の最終意思決定のための作業を進め、また、準備をしているところである。
しかして、前記厚生省の製造承認の後、本件審判請求の登録までの期間は、通常の製薬会社が厚生省の製造承認を得て、実際に商品を市場に出すに必要な期間内である。
よって、本件使用権者に係る前記事情等は、商標法50条2項但し書きに規定する正当な理由に該当するものである。
以上のとおり、取消請求に係る指定商品「薬剤」について、本件商標の不使用については、本件使用権者に正当理由が存在するので、本件審判請求は、商標法第50条第2項但し書きに該当して成り立たないものである。

第4 当審の判断
商標法第50条第1項に規定する商標登録の取消審判の請求があったときは、同条第2項の規定により、審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明するか、又は、使用していないことについて正当な理由があることを被請求人が明らかにしない限り、その指定商品に係る商標登録の取り消しを免れないこととなっている。
1 本件審判請求に対し被請求人は、本件商標を使用していないことについて正当な理由がある旨主張しているので、その点について判断する。
(1)被請求人提出の乙号証をみると、以下のことが認められる。
a.平成2年1月31日付「商標使用許諾契約書」(写)の乙第1号証によると、商標権者である第一工業製薬株式会社(被請求人)が所有する平成1年商標登録願第150218号商標(注、この登録出願は第2506611号として登録された、本件商標である。)について本件使用権者に「第1類 消炎鎮痛剤」について平成3年1月1日より20年間の通常使用権の許諾契約を締結している。
b.平成11年2月23日付「医薬品製造承認書」(写)である乙第3号証によると、当時の厚生大臣(現、厚生労働大臣)は平成9年9月29日付けで申請された医薬品の製造を薬事法第14条第1項の規定により申請どおり承認する旨記載され、同2頁には本件使用権者作成の平成9年9月29日付「医薬品製造承認申請書」が連結され、その販売名の欄に「フレックス」と記載されている。
この医薬品製造承認申請についは、乙第2号証の平成9年12月12日付証明書(写)では、佐賀県福祉保険部薬務課長が品目〔販売名「フレックス」、種類「医薬品」、申請書、厚生省進達年月日「平成9年10月2日」(注、左記日付については、平成9年9月29日と記載されていたものを訂正されている。)〕について製造承認申請中であることを証明する旨記載されている。
c.平成11年6月12日付「日刊薬業」(株式会社薬業時報社発行)の乙第4号証によると、「医薬品製造承認許可品目」の見出しの下、〔平成11年・医療用〕の一覧表中に年月日「2.23」、名称(販売名)「フレックス」、成分名「フェルビナク」、薬効「264」、業者名「久光製薬(株)」と記載されている。
(2)これらの乙号各証及び被請求人の主張を総合すると、以下のとおりとなる。
被請求人(当時出願人)は、本件商標を平成元年12月29日に登録出願し、その出願中の本件商標について、同2年1月31日に被請求人と本件使用権者との間で、同3年1月1日から20年間「第1類 消炎鎮痛剤」についての使用許諾契約がなされ、該登録出願については同5年2月26日に商標権の設定登録がされたものである。その後、本件使用権者は、平成9年9月29日に薬事法に基づく医薬品の製造承認申請を行い、同11年2月23日に申請どおり製造承認が与えられた。
そして、本件使用権者は、現在、「消炎鎮痛剤」(フェルビナクを主成分とする消炎鎮痛貼付剤)の製造を開始するため、販売に備えた試験、製造機械及びラインの発注・施工等及び製造販売に関する最終意思決定のための作業を進めているところである。
また、本件使用権者が使用しようとしている商品は、本件審判請求に係る指定商品「薬剤」に含まれる「消炎鎮痛剤」(医薬品)であって、薬事法に基づく厚生労働大臣の医薬品製造承認が与えられなければ製造をすることのできない商品であるものと認められる。
(3)ところで、登録商標の不使用の正当理由には、例えば、その商標の使用をする予定の商品の生産の準備中に天災地変によって工場等が損壊された結果、その使用ができなかったような場合等の他、取消請求に係る指定商品についてその登録商標の使用を妨げる事情によりその不使用をもって当該商標権者の責に帰することが社会通念上酷であるような場合も含むものと解される。
(4)しかして、上記認定事実からすると、本件商標は、設定登録時点では、既に、指定商品中「薬剤」に含まれる「消炎鎮痛剤」について本件使用権者に対し通常使用権の許諾がなされ「消炎鎮痛剤」に使用されることが予定されていたものと推測される。しかしながら、使用しようとしている商品が医薬品であることから、その商品を製造販売するための厚生労働大臣への製造承認の申請を設定登録後4年7月経過した平成9年9月29日に行い、その製造承認が与えられてから本件審判請求の登録がされた平成13年5月23日までに2年3月の期間が経過している。そして、そのいずれの期間においても本件商標の使用はされていないものである。
そうしてみると、本件使用権者は、本件商標を「消炎鎮痛剤」に使用するため通常使用権が許諾され、かつ、本件商標が設定登録されてから長期間(4年7月)不使用の状態にあったものを販売名(商標)として製造承認申請を行い、その承認申請が承認された後においても、不使用状態が2年以上に及んでいるものであり、設定登録から本件審判請求の登録まで8年2月経過し、当該製造承認手続を行っていた1年4月の期間を除いても、通算7年10月の間本件商標の使用をしなかったものである。
(5)被請求人は、医薬品の製造承認が与えられた後、本件使用権者は、当該使用商品について製造するための準備作業を行い、同商品の製造に関する最終意思決定のための作業を進めており、これまでの期間は医薬品の製造販売のための準備期間内である旨主張しているが、製造承認申請前の長期にわたる不使用期間を併せ考慮すると、製造承認後2年以上不使用状態が継続されていることは、使用商品が医薬品という事情があるとしても、本件使用権者の責めに帰すことのできない事情によるものということはできない。また、被請求人は、医薬品製造承認後の準備期間として必要不可欠な期間内であって、本件使用権者の責めに帰すことは社会通念上酷であることについてその根拠を何ら明らかにしていないので、不使用についての正当な理由があるものとする被請求人の主張は採用できない。
その他、被請求人は、不使用の正当理由を明らかにする証拠を提出していない。
したがって、被請求人は、本件商標について不使用の正当理由があることを明らかにしたものとすることはできない。
2 また、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその審判請求に係る指定商品のいずれかについての本件商標の使用をしていることを証明していない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、その指定商品中結論掲記の商品についての登録を取り消すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-09-24 
結審通知日 2002-09-26 
審決日 2002-11-11 
出願番号 商願平1-150218 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (101)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中嶋 容伸 
特許庁審判長 宮下 正之
特許庁審判官 小林 和男
平山 啓子
登録日 1993-02-26 
登録番号 商標登録第2506611号(T2506611) 
商標の称呼 フレックス 
代理人 光野 文子 
代理人 佐藤 英二 
代理人 矢野 公子 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 豊崎 玲子 
代理人 又市 義男 
代理人 工藤 莞司 

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