• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Z28
管理番号 1069443 
審判番号 審判1999-35727 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-06 
確定日 2002-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4285636号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1.本件商標
本件登録第4285636号商標(以下、「本件商標」という。)は、平成10年4月15日に登録出願され、片仮名文字「ゾンボーグ」を標準文字とする構成からなり、第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形,運動用具,釣り具」を指定商品として、平成11年6月18日に設定登録されたものである。

2.引用商標
請求人が本件商標の登録無効の理由に引用する登録第655209号商標(以下、「引用商標」という。)は、昭和36年10月23日に登録出願され、後掲したとおり欧文字「VOGUE」とする構成からなり、第26類「印刷物、ただし、この商標が特定の著作物の表題(題号)として使用される場合を除く」を指定商品として、昭和39年10月9日に設定登録され、その後、3回に亙り存続期間の更新登録されているものである。

3.請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第70号証(枝番を含む。)を提出している。
(1)引用商標は、1892年、ニューヨークで創刊されたファッソョン誌のタイトルであって、今では、アメリカだけでなく、世界を代表する老舗のファッション雑誌のタイトルである。
引用商標は、米国のザ・コンド・ナスト・パプリケーションズインコーポレーテッド(以下、「コンド・ナスト社」という。)並びにアドバンス・マガジン・パプリッシャーズ・インコーポレーテッド(以下、「アドバンス社」という。)の所有を経て、現在、請求人が所有する世界的に著名な登録商標である。
請求人は、アドバンス社の関連会社であって、1997(平成9)年6月9日に、アドバンス社から引用商標ほか「VOGUE」関連商標を多数譲り受け、それらの商標権を管理している。
請求人は、後掲に示した引用商標の所有者であり、引用商標を題号とする「VOGUE」誌は、前述の通り1892年(明治25年)にアメリカで創刊されて以来、現在に至るまでの実に一世紀を越える永年月に亙り、世界各国において継続的に使用された結果、商品「服飾雑誌」に関し世界的に著名な商標として世界各国において認識され、「VOGUE」と言えば世界的名声と権威を有するファッション雑誌を指すに至っている。
また、「VOGUE」誌は、1999年7月28日に創刊された「VOGUE」日本版(VOGUE NIPPON)を初めとして、アメリカ版、フランス版、イギリス版、イタリア版、オーストラリア版、韓国版等々、現在、実に世界12カ国において、各国版が発行されており、名実共に全世界的ファッション雑誌である(甲第5号証、甲第6号証の1ないし同9、甲第7号証の1及び同2)。
(2)「VOGUE」商標の著名性について
(ア)「VOGUE」商標(引用商標)の著名性については、当該商標登録第655209号の商標登録原簿(甲第1号証の2参照。)に、既に22件の防護標章が登録されている事実(とりわけ、防護第1号の指定商品(旧第24類)は、本件商標の指定商品を全て含んでいる。)、並びに、一連のいわゆる「VOGUE」判決に照らし、特許庁及び裁判所における顕著な事実であると思料される。
(イ)各種事典類、文献類、新聞、雑誌等々における「VOGUE」誌についての記載を紹介することによって、「VOGUE」商標が本件商標の出願日よりも遥か以前から、わが国において著名性を獲得していた事実を立証する。
a)戦後の入荷
1949年(昭和24年)10月3日発行の「朝日新聞」(甲第8号証の1及び同2)には、「『ヴオーグ』入荷 世界的スタイル雑誌『ヴオーグ』が十年ぶりに一日入荷した。」との記載。
b)事典類の記載
1955年(昭和30年)8月30日、平凡社発行の「世界大百科事典 3」(甲第9号証)には、「ヴオーグ」の項に、「Vogue 最も知られた流行服飾雑誌の名。」として20行にわたる解説が記載されており、昭和30年において、早くも「最も知られた流行服飾雑誌」との評価を受けている。
1970年(昭和45年)8月25日、平凡社発行の「アポロ百科事典3」(甲第10号証)には、「ボーグ」の項に、「Vogue フランスの服飾雑誌。」との記載のほかに、アメリカ版、イギリス版にも触れた記載。
1971年(昭和46年)3月15日、小学館発行の「大日本百科事典ジャボニカ-16」(甲第11号証)には、「ボーグ」の項に、「Vogue 婦人服飾流行雑誌。」との記載と、フランス版、アメリカ版、イギリス版の特色が記載され、「いずれの版もファッション雑誌としては高水準のものを紹介していることでは一致している。」と記載。
1973年(昭和48年)2月1日、平凡社発行の「小百科事典」(甲第12号証)には、「ボーグ」の項に、「Vogue フランスの服飾雑誌。」との記載及びアメリカ版、イギリス版もある旨の記載。
1974年(昭和49年)8月1日、集英社発行の「外国からきた新語辞典 第3版」(甲第13号証)には、「ボーグ」の項に、「アメリカのファッション雑誌名.」との記載。
1981年(昭和56年)4月20日、平凡社発行の「世界大百科事典 3」(甲第14号証)には、「ヴオーグ」の項に、「Vogue 最も知られた流行服飾雑誌の名。」と記載され、アメリカ版、フランス版、イギリス版についての説明も含めて23行にわたる解説が記載されている。
その他、1981年(昭和56年)7月16日講談社発行の「写真大百科事典」(甲第15号証)、1983年(昭和58年)1月10日小学館発行の「最新英語情報辞典」(甲第16号証)、1983年(昭和58年)5月25日講談社発行の「大辞典desk」(甲第17号証)には「ボーグ」の項に「Vogue 服飾雑誌.」との記載、1986年(昭和61年)4月20日名著普及会発行の「アメリカ州文化事典」(甲第18号証)には、「Vogue ボーグ」の項、及び1986年(昭和61年)8月20日平凡社発行の「アメリカを知る事典」(甲第19号証)には「ボーグ|Vogue」の項に「・・・《ボーグ》は代表的なファッション誌となった。」と記載。
c)現代用語の基礎知識の記載
自由国民社発行の「現代用語の基礎知識」1959年(昭和34年)版及び1980年(昭和34年)版(甲第20号証及び甲第21号証)には、「ヴォーグ(Vogue)」の項に「流行。服飾雑誌」旨の記載。
d)服飾関係の事典類の記載
1968年(昭和43年)5月20日婦人画報社発行の「服飾事典」(甲第22号証)、1973年(昭和48年)5月20日同文書院発行の「田中千代服飾事典(増補)」(甲第23号証)、1979年(昭和54年)3月5日文化出版局発行の「服飾事典」(甲第24号証)、及び1980年(昭和55年)10月5日雄山閣発行の「総合服飾史事典」(甲第25号証)の各事典類には「ヴォーグ(Vogue)」が流行雑誌ないしファッション雑誌である旨の記載。
e)昭和42年の日本取材関係の記事
1967年(昭和42年)10月6日付の「朝日新聞」(甲第26号証の1及び同2)には「・・・『ボーグ』誌一行が取材」、1967年(昭和42年)10月21日発行の「週間新潮」(甲第27号証)には「・・・『ボーグ』とは・・・服飾雑誌の権威。」旨の記事。
f)文献類の記載
1984年(昭和59年)4月20日講談社発行の「アメリカ情報コレクション」(甲第28号証)、及び1985年(昭和60年)11月20日講談社発行の「気になるアメリカ雑誌」(甲第29号証)には、「ヴォーグ(Vogue)」が世界的なファッション誌としての記載。
g)「VOGUE」誌の美容編集長の来日関係記事
1977年(昭和52年)2月8日発行の「週間女性」(甲第30号証)には、・・・「VOGUE」誌の表紙写真も「モード界の権威『パリ・ヴォーグ』表紙」として掲載との特集記事、同年1月19日付の「読売新聞」(甲第31号証の1及び同2)には、・・・フランスのファッション誌「ボーグ」編集長の対談記事、同年1月20日付の「朝日新聞」(甲第32号証の1及び同2)には「パリ・ヴォーグ誌美容担当 モーさんのおしゃれ感」についての記事、同年4月1日文化出版局発行の「ハイファッション」(甲第33号証)には「パリ・ヴォーグ誌美容編集長 フランソワーズ・モー」と題するインタビュー記事、の各掲載。
h)「ヴォーグ60年展」の関係記事
英国版「VOGUE」の創刊60周年を記念して、我が国で昭和55年3月に「ヴォーグ60年展」が開催されたときも、マスコミ各社はこの催しを取材した。
同年3月1日発行の「芸術新潮」(甲第34号証)の特集記事。
同年3月6日付の「朝日新聞(夕刊)」(甲第35号証)、同「読売新聞(夕刊)」(甲第36号証)、同「毎日新聞(夕刊)」(甲第37号証)、及び同年3月14日付の「朝日新聞(夕刊)」(甲第38号証)の各日刊紙に「ヴォーグ60年展」の広告。
同年3月7日付の「日本経済新聞(夕刊)」(甲第39号証の1及び同2)、同年3月8日付の「読売新聞」(甲第40号証の1及び同2)、同年3月13日付の「朝日新聞」(甲第41号証の1及び同2)の各紙、及び同年4月7日発行の「MODE et MODE No.195」(甲第43号証)に「ヴォーグ60年展」に関する記事。
同年4月12日発行の雑誌「太陽」(甲第42号証)には「日本語版 ヴォーグ60年」と題する本の広告。
i)その他
1984年(昭和59年)11月23日発行の写真週刊誌「FOCUS」(甲第44号証)にはトップ・モデルの記事において「有名な高級フアツシヨン誌『ヴォーグ』」等の記事、1996年(平成8年)6月1日付の「日本経済新聞」(甲第45号証)には「世界的に有名なファッション雑誌『VOGUE』」の記載、及び1989年(平成1年)9月12日付の「朝日新聞」(甲第46号証)には「著名なファッション雑誌ボーグ」と記載されている。
以上の諸事実を総合すると、「VOGUE」商標(引用商標)が、本件商標の出願日よりも遙か以前から、我が国において、極めて高い著名性を獲得していたことは明らかである。
(ウ)「VOGUE」商標の著名性については、東京商工会議所の周知証明書(甲第47号証)においても、明確に証明されている。
即ち、当該証明書は、「VOGUE」誌が、出版業界は勿論のこと「VOGUE」誌の掲載内容に係るあらゆるファッション業界における取引者及び需要者間において.周知著名な商標として認識されていること、を明確に証明している(証明事項第3項参照。)。
更に、請求人は、世界各国の超一流企業及び公法人等並びに我が国各業界の超一流企業及び全国一流書店による周知証明書(甲第48号証の1ないし同70)を提出する。
(エ)「VOGUE」標章の著名性については、裁判所の平成10年9月29日に判決言渡があった平成9年(行ケ)第278号審決取消請求事件の「判決」(甲第3号証)。また、平成10年12月10日に判決言渡があった平成 年行10年(行ケ)第162号審決取消請求事件の「判決」(甲第4号証)においても明確に認定されている。
昭和60年(ワ)第1035号損害賠償請求事件についての大阪地方裁判所の「判決」(甲第49号証)、昭和61年(モ)第4564号商標権仮処分異議申立事件についての東京地方裁判所の「判決」(甲第50号証)、昭和61年(モ)第53971号商標権侵害行為等差止仮処分異議申立事件の「判決」(甲第52号証)、昭和61年(ワ)第9077号商標権侵害行為差止等請求事件の「判決」(甲第53号証)の各判決においても、「VOGUE」の著名性は明確に認定されている。
因みに、当該「判決」が言い渡された翌日の新聞各紙は、当該「判決」を大々的に取り上げて(甲第51号証の1ないし同7、甲第54号証の1ないし同7)「VOGUE」事件に対する関心の高さを示している。
(エ)「VOGUE」誌はファッション関係を中心として各分野における世界一流の粋を集めたものであり、我が国の一流企業も「VOGUE」誌の権威性及び著名性を極めて高く評価しており、厳しい基準をクリアして宣伝広告を掲載しているのである(甲第56号証)。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について
(ア)本件商標は、片仮名文字で「ゾンボーグ」と横書してなる構成であり、その構成中に著名登録商標「VOGUE」の称呼である「ボーグ」の文字を有するものである。
一般に、著名登録商標を一部に含む商標において、「登録商標の著名度が高い場合には、その著名度の高い部分に世人の注意が集中し当該著名登録商標の称呼、観念が生じる」ものであることは、商標についての不正競争行為差止請求事件における裁判所の判決等において明確に認定されているところである[例えば、昭和39年(ワ)第12182号商標権侵害停止等請求事件(甲第57号証)]。したがって、取引者・需要者の注意が集中する本件商標の「ボーグ」の部分から「ボーグ」の称呼が生ずるとともに、世界的に著名なフフツンョン雑誌である「VOGUE」誌が想起されることは明らかである。
「商標審査基準」において、「他人の著名な商標と他の文字又は図形等と結合した商標は、その外観構成がまとまりよく一体に表されているもの又は観念上の繋がりがあるものなどを含め、原則として、商品又は役務の出所の混同を生ずるおそれがあるものと推認して、取り扱うものとする。ただし、その他人の登録商標の部分が既成の語の一部となっているもの、又は、指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なものを除く。
即ち、本件商標を上記商標審査基準に当てはめてみると、まず、本件商標は既成語ではないから、本件商標中「ボーグ」の文字が、既成語の一部となっていないことはいうまでもない。
また、本件商標と引用商標とが、「指定商品若しくは指定役務との関係において出所の混同のおそれのないことが明白なもの」ではないことも、下記の理由により明らかである。
即ち、今日、大手企業における経営の多角化傾向は世界的趨勢であり、請求人のような大手出版社の多くが、現実に幅広く多角経営を営んでいるところであり、各出版社における多角経営の実体から判断しても、世界的な出版社である請求人が、経営の多角化を展開していく可能性について、取引者・需要者は、何らの違和感も有しないものと考えられる。
したがって、上記事実に照らしても、本願商標をその指定商品に使用すれば、あたかも請求人の取扱いに係る商品であるかの如く、取引者、需要者をして、商品の出所の混同を生じさせるおそれがある。
(イ)日本国内及び諸外国からのVOGUE類似商標の他社出願について、ここ10数年来、著名登録商標「VOGUE」のもつ強力なグッドウィルにフリーライドすることを目的として、「VOGUE」、「vogue」、「ヴォーグ」あるいは「ボーグ」等の文字を含む商標の使用及び出願をする悪質な第三者が後を絶たない状況にある。
このような状況に鑑み、コンド・ナスト社及びアドバンス社は、これらの第三者を排除するために、裁判所に対して仮処分申請を行ない、訴訟を提起し(いわゆる「VOGUE」事件)、特許庁に対しては、登録異議申立をし、無効審判の請求を行なう等、著名登録商標「VOGUE」の防衛のためにあらゆる企業努力を重ねてきたのである。
その結果、まず、対裁判所との関係においては、大阪地方裁判所及び東京地方裁判所に対して申請した都合3件の仮処分申請は全て申請容認の決定がなされ、更に、大阪地方裁判所及び東京地方裁判所に提起し、または、提起された都合4件の訴訟も全てコンド・ナスト社及びアドバンス社側の勝訴となったのである。
(ウ)特許庁の異議決定等で示された判断について
対特許庁との関係においては、「VOGUE」、「vogue」、「ヴォーグ」あるいは「ボーグ」、更には、「VAGUE」等の文字を含む商標が、様々な商品及び役務の区分に数多く出願されており、その中の少なからぬ出願が出願公告されたため、コンド・ナスト社及びアドバンス社は、これらの出願の大部分について登録異議申立を行なったのである。
その結果、異議申立をした出願のうち、ほとんどの出願について、「異議理由あり」の決定がなされ、現在までのところ、89件の出願が著名登録商標「VOGUE」との関係で、商標法第4条第1項第15号に該当することを理由に拒絶査定の処分を受けている(甲第59号証の1ないし同89)。
而して、前記の各商品の中には、ファッション関連商品のみならず、ファッションとは関係が希薄な商品も数多く含まれている。
即ち、請求人の所有に係る「VOGUE」商標は、ファッション関連商品を越えて出所の混同を生ずるほど極めて著名であり、かつ、強い指標力を有する商標であって、本件指定商品「おもちゃ,人形等」は、流行性の高い商品であり、ファッションと関連を有する商品であるから、本件商標はその指定商品に使用すれば、引用商標との関係で商品の出所の混同を生ずるおそれがあることは明かである。
(オ)特許庁の無効審判で示された判断について
無効審判においても、審査例と同様の認定がされている。
即ち、審決書の写し甲第60号証の1ないし同14として提出した審決書の写しの当該登録商標は、何れも「VOGUE」を一部に含む商標であるため、引用商標との関係で商品の出所の混同を生ずるおそれがあると認定されたものである。
因みに、審査並びに審決例中、本件商標と同様に、片仮名文字のみの商標を抜粋すれば、次の通りである。
a)ボーグ 商願昭62-88730 旧第1類 拒絶査定
(甲第59号証の2)
b)ボーグワイン 商願昭61-43407 旧第4類 拒絶査定
(甲第59号証の4)
c)ヴォーグテックス 審判昭55-19023 旧第16類 拒絶査定
商願昭42-70752 (甲第59号証の9)
d)ジィーボーグ 商願平 1-52080 旧第17類 拒絶査定
(甲第59号証の17)
e)ジィーヴォーグ 商願平 1-52081 旧第21類 拒絶査定
(甲第59号証の50)
f)ボーグフィレンツェ 商願平2-61234 旧第23類 拒絶査定
(甲第59号証の61)
g)カーボーグ 商願平 3-23732 旧第25類 拒絶査定
(甲第59号証の78)
h)カーボーグ 商願平 3-23733 旧第26類 拒絶査定
(甲第59号証の81)
i)ジョイボーグ 審判平 4-21816 旧第17類 無効審判
(甲第60号証の5)
j)エクトリ ヴォーグ 審判平 6-1760 旧第17類 無効審判
(甲第60号証の10)
これらの審査並びに審決例に照らしても、「ボーグ」の文字を含む本件商標をその指定商品に使用すれば、同様に、商品の出所の混同を生ずるおそれがあると考えるのが妥当かつ合理的である。
(4)むすび
本件商標がその指定商品に使用された場合、取引者・需要者は、引用商標との関係で、その商品が、請求人又はこれと何らかの関係がある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所の混同を生ずるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすべきである。
(5)弁駁の理由
(ア)被請求人は、まず、「本件商標の構成中『ボーグ』の部分は、『改造人間』を意味する『サイボーグ(CYBORG)』(乙第1号証)の語末『ボーグ(BORG)』に由来するものである。」と主張しているが、仮に、被請求人が、上記の由来に基づいて、本件商標を採択したものであったとしても、本件商標はカタカナのみで「ゾンボーグ」と横書してなる構成であって、その構成中の「ボーグ」が「BORG」に由来するものと認識できる構成態様ではない。
しかして、「ボーグ」の文字が「サイボーグ(CYBORG)」の略称として一般的に使用されている事実はなく、かつ、「VOGUE」商標が極めて著名であることに鑑みれば、取引者・需要者は、本件商標中「ボーグ」の部分は「VOGUE」に由来するものと認識すると考えるのが妥当である。
次に、被請求人は、「ボーグ」の文字を語末に有する商標の登録例を列挙しているが、これらの中の10件は、「BORG」又は「サイボーグ」或いは「房具」の文字を含む商標構成であるから、本件商標とは事例を異にするものであり、残りの8件は、本件商標と同様に無効理由を含むものである。
また、被請求人は、「『ゾンボーグ』 の語は、『サイボーグ』の語に由来する全体として特定の語義を有しない造語をなすものとみるのが妥当であり、観念上、殊更『ボーグ』の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。」「本件商標より生ずる『ゾンボーグ』の称呼は格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、称呼上も殊更『ボーグ』の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。 」、「『ゾンボーグ』の文字は、それぞれ同書、同大で軽重の差なく一連に左横書きした構成よりなるものであるから、外観上も殊更『ボーグ』の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。」と主張しているが、被請求人の上記主張は、「VOGUE」商標が著名であるという本件における格別の事情を無視したものであり、かつ、改正前の審査基準に基づいて、単なる一般論を述べたに過ぎないものであるから、理由がない。すなわち、改正された商標審査基準に基づいて、本件商標が商標法第4条第1項第15号の規定に該当するか否かについて検討してみると、仮に本件商標が「ゾンサイボーグ」のような構成であるならば、その構成中の「ボーグ」の文字は、既成語である「サイボーグ」の一部であると認識し得るが、本件商標は「ゾンボーグ」の構成であるから、取引者・需要者が本件商標に接したときは、記憶にある著名商標「VOGUE」との関係から、その日本語表記である「ボーグ」の部分に注目して、想起、連想作用により、著名商標「VOGUE」を想起・連想すると考えるのが妥当である。
(イ)次に、被請求人は、「VOGUE」の語は、一般的には「ヴォーグ」あるいは「ボーグ」の称呼を生ずるものであるが、請求人は、これを「ヴォーグ」と長年に亘り一貫して称呼していると認められるので、取引者、需要者も引用商標を「ヴォーグ」と称呼しているものと認められる旨主張しているが、「日本語の感覚からすれば『ボーグ』と『ヴォーグ』の称呼の区別はつけにくい」ことは、「甲第4号証」判決において認定されている通りであり、「ボーグ」と「ヴォーグ」は同一視してよいものであるから、被請求人の上記主張は、無意味な主張であるといわざるを得ない。
(ウ)さらに、被請求人は、「加えて、引用商標が、請求人の業務に係る商品『ファッション雑誌』の商標として需要者の間において広く認識されていたものであるとしても、本件商標の指定商品『遊戯用器具』等と『ファッション雑誌』とはその原材料、品質、用途、流通系統等を著しく異にするものであるから、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。」旨主張しているが、被請求人の上記主張は、いわゆる狭義の混同に関する基準に基づくものであるが、「VOGUE」商標に関しては、その著名性に鑑み、裁判所及び特許庁においても、いわゆる広義の混同の基準が採用されているものである。しかして、本件商標の指定商品中、たとえば「おもちゃ,人形」に含まれる「ぬいぐるみ」がファッション関連商品として認識されていることは、「ファッショングッズ」のカタログの中に「ぬいぐるみ」が含まれている事実(甲第70号証)に照らしても明らかである。
そうであれば、本件商標の指定商品中、少なくとも「ぬいぐるみ」等のファッション関連商品に本件商標が使用された場合には、需要者等の間に請求人と何らかの関係があるのではないかとの観念を抱かせ、いわゆる広義の混同を生じさせるおそれがあるものというべきである。

4.被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第21号証を提出した。
(1)本件商標は、片仮名文字「ゾンボーグ」を標準文字で表してなるところ、その構成中「ボーグ」の部分は、「改造人間」を意味する「サイボーグ(CYBORG)」(乙第1号証)の語末「ボーグ(BORG)」に由来するものである。「サイボーグ(CYBORG)」 の語は、我が国において広く知られており、その意味合いから、商品「おもちゃ、人形」等と密接な関係を有している。そのため、「ボーグ(BORG)」の文字を語末に有する造語商標が、おもちゃ、人形及びこれらに類似する商品について好んで採用され、また、多数登録を認められているところである(乙第2号証ないし乙第19号証)から、「ゾンボーグ」の語は、「サイボーグ」の語に由来する全体として特定の語義を有しない造語をなすものとみるのが妥当であり、観念上、殊更「ボーグ」の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。
また、本件商標より生ずる「ゾンボーグ」の称呼は格別冗長というべきものではなく、よどみなく一連に称呼し得るものであるから、称呼上も殊更「ボーグ」の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。
さらにまた、「ゾンボーグ」の文字は、それぞれ同書、同大で軽重の差なく一連に左横書きした構成よりなるものであるから、外観上も殊更「ボーグ」の部分が分離抽出されるとすべき理由はない。
(2)一方、引用商標は、欧文字「VOGUE」 を左横書きしてなるものであるところ。この「VOGUE」の語は、「流行」を意味するフランス語であり(乙第20号証)、一般的には「ヴォーグ」あるいは「ボーグ」の称呼を生ずるものであるが、請求人はこれを「ヴォーグ」と永年に亘り一貫して称呼しているものと認められ(甲第7号証の1、甲第55号証等)、その結果、取引者・需要者も引用商標を「ヴォーグ」と称呼しているものと認められる。
したがって、本件商標「ゾンボーグ」と引用商標「VOGUE」とは、その観念、称呼及び外観のいずれにおいても類似しない別異の商標であって、本件商標から引用商標を想起するものといい得ない。
加えて、引用商標が、請求人の業務に係る商品「ファッション雑誌」の商標として需要者の間において広く認識されていたものであるとしても、本件商標の指定商品「遊戯用器具」等と「ファッション雑誌」とはその原材料、品質、用途、流通系統等を著しく異にするものである。
してみてば、本件商標をその指定商品に使用した場合、その商品が請求人又はこれと何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
よって、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとの請求人の主張は理由がないものである。

5.当審の判断
(1)本件商標について
本件商標は、その構成前記のとおり「ゾンボーグ」の片仮名文字よりなるところ、構成文字は、標準文字(同じ書体、同じ大きさ)で等間隔に表されていて、外観上纏まりよく一体的に看取し得るばかりでなく、これより生ずる「ゾンボーグ」の称呼も一気一連に称呼し得るものであり、かつ、これよりは、何らの特定の意味合いを看取し得ない一種の造語と認識し把握されるものというべく、常に、構成文字を一体的に看取し、前記一連の称呼のみをもって取引に資される固有の商標とみるのが自然である。
(2)引用商標及び仮名表記について
(ア)引用商標「VOGUE」
引用商標は、その構成後掲に示すとおり「VOGUE」の欧文字よりなるところ、「VOGUE」の文字は、請求人提出に係る事典類(甲第9号証、甲第13号証、甲第14号証、甲第20号証、甲第21号証、甲第20号証、甲第23号証、甲第24号証等)には、「ファッション(流行)雑誌」、「流行、人気」等の記述、そして、これを含む請求人提出に係る事典、書籍、新聞及び雑誌(甲第8号証ないし甲第46号証)の「VOGUE」誌に関する解説、紹介記事、広告等によれば、世界的に有名なファッション雑誌の題号として、本件商標の登録出願時以前ないし現在に至るまで日本国内のファッション関連商品の取引者及び需要者並びに一般の女性の間において広く知られると認め得るものである。また、東京商工会議所の証明書(甲第47号証)、世界各国の企業等、我が国各業界の企業並びに全国一流書店による証明書(甲第48号証の1ないし同70)において、アメリカ合衆国、ニューヨーク州所在のザ・コンド・ナスト・パブリケーションズ・インコーポレーテッドの発行するファッション雑誌の題号としての「VOGUE」商標の著名性を証明していることがそれぞれ認められる。
(イ)「ヴォーグ」及び「ボーグ」
「VOGUE」誌日本版(甲第7号証の1)においても、その題号として「VOGUE」の欧文字を使用しているところであるが、一般に我が国においては雑誌の題号に限らず、各種分野で固有の欧文字表記に加えその読みを片仮名文字をもって表記併用し常用しているものであり、これを「VOGUE」の文字についてみるに、該「VOGUE」誌日本版の表紙に「『ヴォーグ』107年の・・・」の使用ほか、1949年(昭和24年)10月3日発行の「朝日新聞」(甲第8号証の1及び同2)には、「『ヴォーグ』入荷 世界的スタイル雑誌『ヴォーグ』が・・・」の記事、「ヴォーグ60年展」とする新聞広告(甲第35号証ないし甲第38号証、甲第42号証、甲第43号証)等、甲各号証においてその多くは「VOGUE」の読みを片仮名表記する場合は「ヴォーグ」の片仮名文字を当てているものであって、「VOGUE」誌と「ヴォーグ」誌とは、同一視されるものとみて差し支えないといえるものである。
他方、「ボーグ」の片仮名表記は、欧文字「VOGUE」の読みを表すものとしては「ヴォーグ」の片仮名文字からなる表記とは発音する上での差はないものと認め得るが、自らがこれを表記使用しているとする証拠はなく、かつ、「ボーグ」の片仮名表記を用いている事典類(甲第10号証ないし甲第13号証、甲第17号証ないし甲第19号証、甲第21号証)は、発音・表記の都合上「ヴォ」を「ボ」にしたものといえないとしても、何れも「VOGUE」の欧文字によりそれを特定しているところであり、また、新聞・雑誌(甲第26号証の1、同2、甲第27号証、甲第31号証の1、甲第46号証)においては「『ボーグ』、『ボーグ誌』」の表記をもって使用している事実は認め得るとしても、これら甲各号証よりして「ボーグ」の文字が世界的に有名なファッション雑誌の題号の片仮名表記として「ヴォーグ」の表記と同様に広く認識し把握されているとは俄に認め難いものである。
さらに、東京商工会議所の証明書(甲第47号証)、世界各国の企業等、我が国各業界の企業並びに全国一流書店による証明書(甲第48号証の1ないし同70)においては「ヴォーグ」又は「ボーグ」の片仮名文字を明示していない。
(ウ)ファッション関連商品
請求人提出に係る甲各号証を総合してみれば、引用商標は、我が国において世界的に有名なファッション雑誌である「VOGUE(ヴォーグ)」誌の題号として、ファッション関連商品の取引者、需要者の間において広く知られていたものであることは前記認定のとおりであるところ、本件商標の指定商品は、第28類「遊戯用器具,ビリヤード用具,囲碁用具,将棋用具,さいころ,すごろく,ダイスカップ,ダイヤモンドゲーム,チェス用具,チェッカー用具,手品用具,ドミノ用具,マージャン用具,おもちゃ,人形,運動用具,釣り具」とするものであって、ファッション関連商品といえるものでなく、かつ、一般の商取引に照らし、両者はその製造部門、販売、流通部門を異にし、購買・消費者層も相違するものといわざるを得ない。
(3)本件商標の商標法第4条第1項第15号該当の当否について
請求人は、本件商標はその構成中に著名登録商標「VOGUE」の称呼である「ボーグ」の文字を有し、これに取引者・需要者の注意が集中するものであるから「ボーグ」の称呼が生ずるとともに、世界的に著名なファッション雑誌である「VOGUE」誌が想起されることは明らかである旨述べ、審判決例及び異議決定例を挙げて、その妥当性を主張している。
しかしながら、本件商標は、片仮名文字により「ゾンボーグ」と表記するものであって、一体不可分に構成されてなるものとして看取され、その構成文字に相応して「ゾンボーグ」の一連の称呼のみを生ずるものであること前記のとおりであって、そして、たとえ、構成中の「ボーグ」文字部分を捉えみても、世界的に著名なファッション雑誌に使用する「VOGUE」の文字、及びその読みとして多数使用される「ヴォーグ」の片仮名文字とは、構成文字を異にし、その商標本来の機能(自他商品の識別機能)が自ずと異なるものといわなければならない。
また、請求人は、本件商標の指定商品中、たとえば「おもちゃ,人形」に含まれる「ぬいぐるみ」がファッション関連商品として認識されていることは、「ファッショングッズ」のカタログの中に「ぬいぐるみ」が含まれている事実(甲第70号証)に照らしても明らかである旨述べ主張するが、いわゆる、ファッション関連商品とは、一般に、流行の被服、靴、鞄及び時計等の服装品に関する商品を称するところであって、上記事実(甲第70号証)のみをもって、「ぬいぐるみ」がファッション関連商品として認識されているものとするのは困難であって、本件商標の係る指定商品がファッション関連商品ということはできない。
(4)結語
以上のとおり、本件商標は、構成上一体的に看取され、これより「ボーグ」の文字部分を捉えて、単に「ボーグ」の称呼をもって取引に資されないこと、本件商標の係る構成中の「ボーグ」の文字部分が世界的に有名なファッション雑誌の題号として使用される「VOGUE」(ヴォーグ)とその態様を異にすること、及び本件商標の係る指定商品がファッション関連商品と関連性がないことを合わせみれば、本件商標をその指定商品について使用しても、これに接する需要者の商取引における一般の注意力をして、直ちに世界的に著名なファッション雑誌である「VOGUE」誌を想起するものといえないから、結局、本件商標は、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
してみれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものとは認定し得ないから、同法第46条第1項の規定によりその登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本件商標(標準文字)

ゾンボーグ

引用商標(登録第4285636号)


審理終結日 2001-12-07 
結審通知日 2001-12-12 
審決日 2001-12-26 
出願番号 商願平10-31924 
審決分類 T 1 11・ 271- Y (Z28)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 信彦 
特許庁審判長 小松 裕
特許庁審判官 大川 志道
高野 義三
登録日 1999-06-18 
登録番号 商標登録第4285636号(T4285636) 
商標の称呼 ゾンボーグ 
代理人 水谷 安男 
代理人 島田 義勝 
代理人 高田 修治 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ