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審決分類 審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 025
管理番号 1069349 
審判番号 無効2002-35077 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-03-06 
確定日 2002-11-27 
事件の表示 上記当事者間の登録第3272237号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第3272237号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3272237号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、平成6年7月1日に登録出願、第25類「靴類(「靴合わせくぎ,靴くぎ,靴の引き手,靴びょう,靴保護金具」を除く。),運動用特殊靴(「乗馬靴」を除く。)」を指定商品として、同9年3月12日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第24号証(枝番含む。)及び参考資料1ないし同6を提出した。
1.本件商標は、請求人が「靴」について世界的に使用する代表的な図形商標であり「E」の文字をデザイン化したものである(甲第2号証の1及び2)。被請求人はこれを完全に摸倣し登録したため、請求人の甲第2号証に示す出願は登録を受けられない状況になっている。しかし、このような商標が、請求人と全く関係ない者によって「靴」類に使用されるときは、その周知・著名性からして、請求人の商標との間で出所の混同のおそれがあり、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当し、さらに、後述の商標法第4条第1項第7号及び同第19号にも該当するものであって、無効とされるべきである。
2.商標法第4条第1項第10号及び同第15号の該当性
資料1及び2に示す特許庁審決では、「ETNIES」の周知性が認定され、商標法第4条第1項第15号に該当するとして無効とされ、資料4に示す高裁判決でも維持されている。本件商標である「E」デザインも「ETNIES」と常に並行して使用されてきた代表的商標であるので上記審決、及び判決は本件商標にもそのまま当てはるものである。
(1)請求人は、スケートボード用シューズ、運動靴、アウトドアウエア、かばん類、その他の関連商品について本件商標出願(平成6年7月1日)前から米国を中心に需要者の間に広く認識されている商標「ETNIES」及び「E」デザイン商標を使用してきている。
1993年当時の請求人のカタログ(甲第3号証)は、本件商標出願前より「E」デザイン商標が使用されていたことを示すものである。
(2)「E」デザイン商標に係る商品は、主にスケートボード用シューズ及びウエア(Tシャツ、パーカー等)を中心とし人気が高まったものであって、スケートボード選手により使用されるような品質の高い製品であり、当初はスケートボード用靴、運動靴及びこれら関連商品に関し使用され、取引者、需要者に広く知られ、以後アウトドアウエア、バッグ類等に関しても知られるようになったものである。
そして、「ETNIES」シューズは、Natas Kaupas,Eric Dressen,Jason Rogers,SaI Barbier及び請求人であるPierre Andre Senizergues(ピエール・アンドレ・セニゼルゲ)らの有名スケートボード・チャンピオンによって使用されていたのである。スケートボードは米国のカリフォルニアがメッカであり、請求人の販売会社であるETNIES AMERICAが営業を行なっている。
「ETNIES」は、1989年にスケートボード・チャンピオンのNatas Kaupasのシューズをデザインしたものである。Natas Kaupasは当時、世界で最も優れたスケートボード選手であったが、「ETNIES」のNATASモデルはスケートボード界で初めて特定の選手のためにデザインされたものである。
(3)請求人は全世界的に本件商標を出願、登録し、使用している(甲第4号証の1及び2)。日本では請求人自らは販売しておらず、被請求人及び他の販売店を通して行なっていたが、被請求人が「ETNIES」商標を無断出願したことに対する憂慮の念は甲第5号証に示す書簡に述べられているとおりである(甲第5号証訳文参照)。
(4)ETNIES製品は、米国のみならず、わが国においても、本件商標の出願以前に、複数の販売店を通じて販売されていた(甲第6号証及び甲第8号証)。
(5)被請求人は、1993年に請求人に接触して以来、日本におけるETNIES製品の販売を行っている。請求人は、株式会社レバンテからの連絡により、被請求人が「ETNIES」商標の出願をしたことを知り、被請求人に書簡を送っている(甲第12号証)。
したがって、被請求人は、本件商標出願時にはもちろん商標「ETNIES」に係る請求人の商品を知っており、該商標の正当権利者が請求人であるとの認識の上で、「ETNIES」に関する商品の問い合わせをしたり、資料を請求したりし、あげくには請求人所有の「ETNIES」や「E」デザイン図形からなる本件商標を無断出願したのである。
(6)以上のとおり、「E」デザイン商標は、本件商標出願前において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた商標であり、スケートボード靴、運動靴、サンダル等に使用されていたものである。したがって、これと同一の本件商標が被請求人によって上記商品をはじめ、これらと関連のある商品分野で使用されるときは、請求人の商標との間で商品の出所の混同を生じるおそれがあることは明白である。
現に高裁判決においても、米国VANS社が被請求人の「ETNIES」を使用した商品を請求人の商品であると誤認し、警告書を送付してきたこと(甲第13号証の1及び2参照)などは現実の混同の事実を裏付けるものであると認定している。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。
3.商標法第4条第1項第7号及び同第19号の該当性
以上に述べたところから、被請求人は、本件商標を不正の目的をもって登録したことは明らかである。なお、参考資料3に示す審決においては、被請求人の「不正目的」が認定され、商標法第4条第1項第19号が適用されており、極めて妥当な判断である。
また、参考資料2及び同3に示す審決の判断において、被請求人は そのホームページにおいて、自ら「靴」等についての輸入販売に1980年ころから積極的に取り組み、その輸入先は欧米、アジアにまたがり、世界20ヶ国に及ぶと自ら宣伝している(甲第14号証)ことなどからしても、本件商標を知って出願したものと推認するに難くないと認定しており、これも極めて妥当な判断である。
よって、被請求人のこのような行為は、請求人の著名な商標との間に誤認混同を生じさせるばかりか、商標法第4条第1項第19号にも該当するものである。
さらに、本件は外国人の周知・著名商標を横取り登録した典型的事案であり、商標法第4条第1項第7号にも該当する。
4.したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第7号及び同第19号に該当し、その登録は無効とされるべきである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、何ら答弁していない。

第4 当審の判断
1.請求の理由並びに甲第2号証の2、甲第3号証ないし甲第5号証、甲第8号証ないし甲第15号証、甲第20号証、甲第23号証の2及び3及び甲第24号証によれば、以下の事実が認められる。(枝番の全てを引用する場合は、その枝番の記載を省略した。)
(1)請求人は、米国でスケートボード用シューズ、その他の運動靴、かばん類、被服等を取り扱う者であり、その取扱いに係る商品に「ETNIES」、「etnies」の商標を使用している。そして、請求人の「ETNIES」商標は、本件商標の登録出願前には世界の多くの国で登録されていた。
(2)請求人の取扱いに係るスケートボード用シューズは、「ETNIES」、「etnies」の表示とともに、1990年2月には、米国のスケードボード専門雑誌において宣伝広告された。また、その中の雑誌には、わが国においても販売されているものが存在する。
(3)請求人の取扱いに係る商品は、本件商標の登録出願日までには、わが国においても、複数の業者により輸入され、販売されていた。
(4)請求人の米国における登録商標(登録番号;2104599号、以下「米国登録商標」という。)は、別掲(2)のとおりであるところ、該登録商標は、「SHOES,FOOTWEAR,SNEEAKERS,ATHLETIC SHOES AND BOOTS,IN CLASS 25」について使用されるものであり、その最初の使用日を1993年1月1日とするものである。
(5)請求人の取扱いに係る商品を掲載した「HOLIDAY 1993年」(商品カタログ)には、「LOCUT」なる品名の靴が存在する。そして、該靴の左足の外側側面には、欧文字の「E」を、その最下部の横線の右端を軸に右方向に約90度回転させ、そのときに左に位置した縦線は、斜めに切り落としたように他の2本の縦線よりやや短くした図形が表示されている。また、該靴の右足の外側側面には、左の靴と同様に、欧文字の「E」を、その最下部の横線の右端を軸に右方向に約90度回転させた図形が表示されているが、縦線3本のうち右端の縦線は、斜めに切り落としたように他の2本に比べ短く表され、該短い縦線の位置は、左の靴と逆になっている。また、これらの図形は、白抜きで表されている。
しかし、上記左右の靴に表されたいずれの図形も、欧文字の「E」を右方向に倒したとの印象を与える点において、及び左右の靴が一対になるという点からみても、米国登録商標と社会通念上同一の範囲のものということができる。(左右の靴の表された図形を以下「引用商標」という。)
(6)被請求人は、そのホームページ(1996.11)によれば、その業種を履物卸業とし、1980年代初頭より輸入品を取扱い始めた。その輸入先は欧米、アジアにまたがって世界20カ国に及ぶとの記載がある。
そして、被請求人は、1994年2月19日及び同年11月11日に、請求人に対し、「ETNIES LOCUT」を注文した。
また、被請求人は、テレビのスポットコマーシャルにおいて、引用商標が表示された靴、「etnies」の文字及び「コマリヨー」の文字を使用して宣伝広告した。
2.前記1.で認定した事実よりすると、「ETNIES」ないし「etnies」は、請求人の取扱いに係るスケートボード用シューズ、その他の履物等を表示するものとして、本件商標の登録出願前よりわが国においてもその需要者の間に広く認識されていたものと認め得るところである。
そして、請求人は、1993年1月1日には、その取扱いに係る靴の一つである「LOCUT」なる商品に、著名な「ETNIES」商標とともに引用商標を表示していたと認められる。
一方、被請求人は、1980年代の初めころより靴類の輸入販売を主たる業務としており、本件商標の登録出願日前である1994年2月19日に、請求人に対し、「ETNIES LOCUT」を注文し、さらには、テレビのスポットコマーシャルにおいて、引用商標が表示された靴、「etnies」の文字及び「コマリヨー」の文字を使用して宣伝広告したことが認められる。
してみると、被請求人は、本件商標の登録出願前より、請求人の取扱いに係る靴等を表示し、著名な「ETNIES」ないし「etnies」商標の存在についてはいうまでもなく、これらの文字とともに「LOCUT」なる商品について使用される引用商標の存在についても十分知る立場にあったというべきである。
3.本件商標は、別掲(1)のとおり、黒塗りの欧文字の「E」を、その最下部の横線の右端を軸に右方向に90度回転させ、そのときに左に位置した縦線は、斜めに切り落としたように他の2本の縦線よりやや短くした図形よりなるものである。
これに対して、引用商標は、前記したとおりの構成よりなるものである。
してみると、本件商標と引用商標とは、一方が黒塗りで他方が白抜きであるといった差異を有するものであるとしても、欧文字の「E」を右方向に倒したとの印象を与える点において共通するものであり、このような極めて独創的な図形が看者の印象に強く残るものであるということができる。
したがって、本件商標と引用商標は、外観において極めて類似する商標というべきである。
4.以上によれば、被請求人は、請求人の取扱いに係る靴に使用される引用商標の存在を知りながら、これが日本において商標登録がなされていないことを奇貨として、これと極めて類似する本件商標を請求人の承諾を得ずに商標登録出願し、登録を受けたものといわざるを得ず、被請求人のこのような行為に基づいて登録された本件商標は国際商道徳に反するものであって、公正な取引秩序を乱すおそれがあるばかりでなく、国際信義に反し公の秩序を害するものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とする。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 (1)本件商標



(2)米国登録商標


審理終結日 2002-09-30 
結審通知日 2002-10-03 
審決日 2002-10-16 
出願番号 商願平6-65658 
審決分類 T 1 11・ 22- Z (025)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 薫堀内 真一 
特許庁審判長 野本 登美男
特許庁審判官 茂木 静代
中嶋 容伸
登録日 1997-03-12 
登録番号 商標登録第3272237号(T3272237) 
代理人 鈴江 武彦 
代理人 小出 俊實 
代理人 吉野 日出夫 
代理人 石川 義雄 
代理人 松見 厚子 
代理人 宮永 栄 
代理人 幡 茂良 

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