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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 011
管理番号 1069229 
審判番号 審判1999-35720 
総通号数 37 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2003-01-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-12-01 
確定日 2002-11-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4067880号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第4067880号商標(以下「本件商標」という。)は、「∪PACシリーズ」の文字を書してなり、平成7年11月17日に登録出願、第11類「ボイラ用バーナ、業務用ごみ焼却用バーナ、工業炉用バーナ」を指定商品として、同9年10月9日に設定登録されたものである。

2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録は、これを無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする」との審決を求めると申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第165号証(枝番を含む。)を提出した。
本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であって、これらに類似する商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当し、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にされるべきものである。
(1)利害関係
請求人は、「upac」商標及び「ユパック」商標を出願(商願平10一64039、10一64040号)しているが、これらの出願は本件商標の後願として商標法第4条第1項第11号の規定に該当する旨の拒絶理由通知(甲第161号証の1、甲第161号証の2)が発せられている。
よって、請求人は本件商標登録を無効にすることについて、請求の利益を有している。
(2)無効原因
(ア)本件商標と請求人商標との類似関係
別掲の1ないし3に記載の商標は、請求人が昭和41年以来、今日まで使用してきた商標で、今後も使用し続ける商標である。別掲の1の商標はアルファベットの小文字で「upac」と書した文字商標である。別掲の2の商標は「upac」の文字を要部としてデザインした図形商標である。別掲の3の商標は片仮名で「ユパック」と書した文字商標である。これらの請求人の商標は称呼において、本件商標と同一であり、形態において本件商標と類似である。以下、上記請求人の引用した商標を一括して「請求人商標」という。
また、請求人商標が使用されている商品は、ボイラの一種である電気温水器とその部品である。電気温水器はタンク内の水を電気ヒーターで湯に沸かし上げる装置であり、電気ヒーターは、ガスや石油などを燃料とするバーナーと同じ役目を果たす部品である。したがって、電気温水器及びその部品である電気ヒーターは、本件商標の指定商品であるボイラ用バーナと類似する商品である。また、電気ヒーターは、業務用ゴミ焼却用バーナや工業炉用バーナとは用途が異なっても、機能が同じで、メーカーや販売ルートに共通性があると考えられることから、業務用ゴミ焼却用バーナや工業炉用バーナとは互いに類似する商品である。
(イ)請求人の営業活動
請求人は、昭和20年に電力関係部品を製造する会社としてスタートし、昭和39年に電気温水器の開発に成功して以来、この分野で順調に業績を上げ、昭和44年には、電気温水器部門を分離独立させ、電気温水器専門メーカーとして、株式会社ユパック(請求人)を設立している(甲第162号証及び同第163号証)。
請求人の商品は、スポット給湯の容量5リットルのものから業務用の大型6000リットルのものまで数1000機種を揃えている。これらの品揃えの豊富さは、専門メーカーの強みであり、家電総合メーカーも幾つかの電気温水器を市場に出しているが、それらの器種は、数種程度のかなり限られたものでしかない。
請求人は、北海道から九州にかけて12か所の営業所(甲第162号)を有する全国規模のメーカーであって、商品納入先も全国まんべんなく、かつ多数存在している(甲第162号証)。
さらに、請求人製品の年間販売台数は、例年1万台を越えるものであって、市場占有率からも上位4社の常連となっている。
このような営業活動の結果、請求人商標は全国的に知られた有名ブランドとなっているのである。
(ウ)請求人商標の周知性
上記のように、昭和39年以降今日まで継続してきた請求人の営業活動は、甲各号証の証拠方法によって時系列的に把握できるが、これらから認められる特徴は、次のとおりである。
(a)多数のちらし、カタログが、本件商標の出願日前において、約25年間の長期にわたり、全国的に配布されてきており、それらに請求人商標のいずれかが必ず記載されていることにより、請求人商標が広く知られるに至ったと認められる。
(b)上記のちらし、カタログは請求人会社が作成のものの外、東京電力株式会社や中部電力株式会社が作成したものも多く存在する。これら他社製の宣伝媒体に掲載されているということは、請求人製品に対する信頼度も高く、ひいてはユパックブランドの信頼性が高いという証左であり、この結果、請求人商標が広く知られていることを表すものである。
(c)上記のように請求人商標への信頼度が高い結果、高松宮家へも請求人製品が納入されている(甲第34号証)。
(d)上記のような市場へ直接配布されるカタログ、ちらしの外、官公庁の届出書類(型式申請など)にも、請求人商標が記載されており、それら証拠方法(型式申請書等)の数も相当数に及んでいる。
(e)さらに、証拠方法の総数は160余点にのぼり、このことは、また請求人の事業活動が活発であり、その活発さが、請求人商標の知名度向上へ直結していることを示すものである。
以上のとおりであるから、本件商標の出願時点において、請求人商標は、いずれも周知商標となっていたものと認められる。
(エ)使用実績を示す証拠方法
上記した請求人商標の使用実績を示す証拠方法は非常に数多く、かつ内容も多岐にわたっているが、その一部を年度順に甲第1号証ないし同第160号証として提出する。
(3)被請求人の答弁に対する弁駁
(ア)周知・著名性に関する点について
(a)請求人の提出した証拠は、ほとんどすべてが一般大衆へ供給されたパンフレットやカタログであり、監督官庁へ提出された型式認可申請書等である。監督官庁へ認可申請書が提出されているということは、対応製品が市場へ供給されたということであり、それに伴ってパンフレットや取扱説明書を通じて請求人商標が周知になっていることを推認させるものである。
(b)周知の立証は出願時で十分である(法4条3項)。
(c)出願時だけの証拠ではなく、それよりはるかに古く昭和42年以降継続して使用してきた事実を立証するのが、甲第1号証から同第160号証である。このように、何十年も使用され続けてきたからこそ、請求人商標は周知となっているのである。
なお乙第1号証及び同第2号証の登録商標「ユパック」、「∪pac」は、請求人会社の前代表者が個人名義で出願し登録していたものであり、前代表者の死去により管理責任者が不在の状態となり、弁理士も関与していなかったところから、更新手続の必要性を知らないまま消滅してしまったというのが事実である。
(イ)使用する商品の類似性について・
請求人が現実に使用してきた請求人商標は、家庭用電気温水器だけでなく、業務用電気温水器にも使用されてきたものである。この点は、提出済みの甲号証の中のいずれかに記載されていることであるが、改めて甲第164号証(89年度ユパック電気温水器総合カタログ)及び甲165号証(90年度ユパック電気温水器総合カタログ)により立証する。
これらには、学生寮、アスレチッククラブ、学校食堂、コイン洗車場、コインランドリー、ビジネスホテル、工場、給食センター、ペンション、老人ホーム、牛舎、農家納屋、スナック、のように業務用の設置例が示されている。
以上のごとく、業務用の電気温水器にも請求人商標は多く使用されてきている。そして、業務用は一般に大型の電気温水器であり、大型温水器の電気ヒータは業務用ゴミ焼却用バーナや工業炉用バーナとは用途が異なっても、機能が同じメーカーや販売ルートに共通性があると考えられることから、業務用ゴミ焼バーナや工業炉用バーナとは互いに類似する商品と認められる。

3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第2号証を提出した。
(1)周知・著名性について
請求人が提出している資料の半分以上については、それが何時使用されたかを証明できないものであり、かつ使用が証明されているとするものも本件商標の出願日よりもはるか以前の使用のものであって、本件商標が出願されたとき、また登録査定時に需要者の間で広く認識されていることを証明するものではない。
(ア)すなわち、甲第1号証から同第160号証までに需要者に広く知られていることを証明する実質的な証拠として挙げられているもののうち、それが何時使用されたか、実際に配布されたのかを推定できるものは、おおよそ証拠の40%にあたる60物件だけである。
(イ)しかも、提出されている資料のすべてが被請求人の本件商標の出願日以前の使用を証明するものであり、出願後特に本件商標の登録査定時の使用とそれが需要者に広く知られていることの証明は、一切なされていない。
(ウ)加うるに、甲第151号証、同第154号証、同第156号証及び同第157号証以外の156件の証拠は、すべて1994年以前(本件出願の1年以前)での使用であるか、あるいは大半(100件あまり)は使用したことを推認することもできない証拠であり、本件商標の出願時並びに登録査定時の双方において、請求人の業務にかかる商標として需要者の間に広く認識されていたとすることはできない。
(エ)また、請求人目身が電気温水器に使用していたと主張する登録商標「ユパック」(登録第809474号)並びに「upac」(登録第797337号)は、権利が消滅している(乙第1号証並びに乙第2号証)。現実に過去に使用されていた商標、なかんずく請求人の業務にかかる家庭用電気温水器に使用される商標として需要者の間に広く認識されていると主張するほど重要な商標でありながら、本件商標の出願時のみならず査定時にもその使用が証明できず、かつなぜ権利放棄したのか理解に苦しむものである。
すなわち、本件商標の出願時並びこ登録査定時の双方において、請求人が電気温水器に使用していた「ユパック」並びに「upac」なる商標は、請求人の業務にかかる商標として需要者の間に広く認識されていたとすることはできない。
(2)使用する商品の類似性について
請求人が需要者の間で広く認識されていると主張する商品は、請求人が提出している数々の証拠書類からも明らかなように、電気特に深夜電力を利用し温水を作り出す「家庭用電気温水器」であることは明白である。
このことは、請求人が証拠として提出している通商産業大臣からの型式認可書(例えば甲第63号証)に添付されている型式認可申請書に「甲種電気用品の品名:電気温水器」に表示する登録商標として記載されている「ユパック」(登録第809474号)並びに「upac」(登録第797337号)なる商標の指定商品からも明らかである。すなわち、請求人が自ら登録し使用していた登録商標は、いずれも昭和34年法の第11類「電気機械器具、その他本類に屈する商品」である。そして、請求人が使用していたとする商品・電気温水器は、電気ヒーターを使って温水を得る電熱用品であり、本件商標の指定分類第11類の「家庭用電熱用品類(類似群コード11A06)」に属する商品である。
これに対し、本件商標の指定商品は「ボイラ用バーナ(09BO1)」、「業務用ごみ焼却用バーナ(09G58)」、「工業炉用バーナ(09A12)」であり、いずも異なる類似群に属するものである。
しかも、これら「ボイラ用バーナ等」は、いずれも一般家庭を取引対象とはしない、工場設備類の熱源として使用される燃焼器であり、(a)生産部門の不一致(b)販売部門の不一致(c)原材料及び品質の不一致(d)用途の不一致(e)需要者の範囲の不一致(f)完成品と部品との関係にない。
したがって、請求人が商標「upac」並びに「ユパック」を使用していたとする商品「家庭用電気温水器」は、「ボイラ用バーナ」とは非類似の商品であり、こ点だけでも商標法第4条第1項第10号に該当する商標でないことは明らかである。
(3)請求人が過去に使用した「upac」並びに「ユパック」なる商標は、本件商標の登録出願時並びに登録査定時に請求人業務にかかる商標として需要者の間に広く認識されていたものとも認められず、また商標が使用されている商品も「家庭用電気温水器」であり、「ボイラ用バーナ」とは非類似の商品である。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当するものではなく、登録を無効にされるべきものではない。

4 当番の判断
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、(ア)昭和48年10月23日付「電波新聞」(甲第31号証)に、請求人は、昭和39年にわが国で初めて深夜電力利用の電気温水器によるセントラル給湯システムを開発し、関係筋の脚光を浴びている旨掲載された。(イ)請求人の電気温水器「ユパック(UPAC)」は、平成1年の東京電力株式会社、東北電力株式会社の商品カタログ(甲第90号証ないし同第92号証)に掲載されたのを始め、平成7年の四国電力株式会社の商品カタログ(甲第152号証)にも掲載されるなど、電力会社数社の商品カタログに掲載された。(ウ)請求人の電気温水器「ユパック(UPAC)」は、財団法人ベターリビング発行の「BLデータブック」に平成2年から同7年にわたり(甲第98号証、同第157号証等)、平成6年を除き毎年掲載された(平成6年のものは甲各号証に含まれていない。)。(エ)財団法人省エネルギーセンター「ENEX’95ガイドブック」(甲第154号証)の「21世紀型省エネルギー機器・システム表彰」欄の受賞製品に、「上部昇温式電気温水器『ユパック熱湯貯湯式電気温水器』」が記載されている。以上の事実が認められる。
そして、上掲の電力会社の「商品カタログ」は、例えば「電気温水器」の設置契約の際などにしばしば利用されるものと推認することができ、また、「BLデータブック」は、財団法人ベターリビング社が認定した「BL(優良住宅)部品」の商品カタログであり、請求人の電気温水器が該優良住宅部品に認定されたことを意味し、さらに、請求人の電気温水器は、平成7年に「21世紀型省エネルギー機器・システム」として受賞していることが認められる。
しかしながら、請求人の商品カタログ、チラシには、作成年月の不明なものが多く含まれており、また、これらの作成部数、頒布地域等も明らかでないものである。
そして、請求人は、電気温水器について、どの時期にどの程度の宣伝、広告をしたのか、その結果、どの程度の販売実績があったのか、同種商品における請求人の電気温水器がどの程度のシェアを占めていたのかなど、周知の事実を客観的に示す証拠を提出せず、公的機関の証明書或いは同業者、同業組合等の証明書の提出もない。
請求人は、請求人製品の年間売り上げ台数は、例年1万台を越えるものであって、市場占有率からも上位4社の常連となっていると述べるが、その事実を示す証左はない。
以上を総合すれば、「ユパック」又は「UPAC」の文字からなる請求人商標は、本件商標の登録出願の時に、請求人の業務に係る「電気温水器」に使用する商標として、当業界及び取引者、需要者の間において一定の信用及び顧客吸引力を備えるに至っていたものと認められるものの、広く認識され周知性を獲得していたとまでは判断することができない。
(2)以上に加え、本件商標の指定商品と「電気温水器」が類似するか否かについてみるに、本件商標の指定商品の「ボイラー用バーナ」は、発電所、工場で使用され、或いは一般暖房用などの用途に使用されるボイラー用のバーナ、「業務用ごみ焼却用バーナ」は、ゴミ焼却場などでゴミ焼却に使用されるバーナ、「工業炉用バーナ」は、金属、非金属を問わず、これらを加熱、溶解する工業炉で使用されるバーナである。
これに対し、「電気温水器」は、請求人が提出している甲各号証によれば、電気を利用して湯を沸かす給湯装置で、一般家庭、食堂、給食センター、アスレチッククラブ、牛舎等で使用されるものであり、請求人が本件商標の指定商品と類似するとして挙げる「電気ヒーター」はその専用部品と認められる。
そうすると、商品の品質、用途、機能において、前者は、火力発電所、工場などのボイラー、ゴミ焼却場の焼却炉、製鉄所等の熱処理炉、鍛造炉などで、燃料を噴射して燃焼させるための燃焼装置(バーナ)そのものであるのに対し、後者は、一般家庭、食堂、給食センター、アスレチッククラブ、牛舎等で使用される電気を利用した給湯装置あって、両者は、その品質、用途、機構において大きく異なるものであり、また、自ずと取引経路、需要者層も相違する異質の商品といわなければならないから、本件商標の指定商品である「ボイラー用バーナ、業務用ごみ焼却用バーナ、工業炉用バーナ」と請求人の業務に係る「電気温水器、電気ヒーター」とは、類似する商品とは判断することができない。
(5)以上のとおりであり、本件商標と請求人商標の類否について論及するまでもなく、請求人商標は周知性を獲得しているとはいえない商標であって、かつ、本件商標の指定商品は請求人の業務に係る「電気温水器」と類似する商品ではないから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
したがって、本件商標は、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
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審理終結日 2002-09-12 
結審通知日 2002-09-18 
審決日 2002-10-08 
出願番号 商願平7-118999 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (011)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 久美枝 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 高野 義三
滝沢 智夫
登録日 1997-10-09 
登録番号 商標登録第4067880号(T4067880) 
商標の称呼 ユウパックシリーズ、ユウピイエイシイシリーズ、ユウパック、ユウピイエイシイ 
代理人 村瀬 一美 
代理人 山内 康伸 

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