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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) 131
管理番号 1068039 
審判番号 審判1990-4145 
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 1990-03-14 
確定日 2002-11-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第1482034号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成9年3月24日付け審決に対し、東京高等裁判所において、審決取消の判決(平成9年(行ケ)第127号、平成10年3月31日判決言渡)があり、また、同判決に対する上告及び上告受理の申立てに対し、最高裁判所において、本件上告を棄却する旨及び本件を上告審として受理しない旨の決定(平成10年(行ツ)第194号及び同10年(行ヒ)第25号、平成10年10月27日決定言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 登録第1482034号商標の登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1482034号商標(以下「本件商標」という。)は、「壁の穴」の文字を横書きしてなり、昭和52年8月8日に登録出願、第31類「調味料、香辛料、食用油脂、乳製品」を指定商品として、同56年9月30日に設定の登録がされ、その後、平成4年1月29日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、証拠方法として甲第1ないし第4号証(枝番号を含む。)を提出し、その理由を要旨次のように述べている。
被請求人は、正当な理由がないにも拘わらず、本件商標を3年間継続していずれの指定商品についても使用していない。また、専用使用権者又は登録された通常使用権者は存在しない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めると答弁し、証拠方法として乙第1ないし第15号証及び資料1ないし9(枝番号を含む。)を提出したが、その後、東京高等裁判所において本件審決取消の判決があった後に、証拠関係及びその番号を整理した上で、新たな証拠方法として乙第34ないし第41号証(枝番号を含む。)を提出し、その理由を要旨次のように述べている。
本件商標は、乙第34ないし第41号証の提出により、本件審判の請求前に第31類の商品「調味料」について使用していたことの事実が明確になった。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではなく、本件審判の請求は成り立たないものである。

第4 当審の判断
1.本件審判請求事件についてした平成9年3月24日付けの審決(以下「本件審決」という。)は、その結論を「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は、請求人及び参加人の負担とする。」とし、その理由の要旨は次のとおりである。
被請求人が提出した各証拠を総合勘案すれば、通常使用権者と認められる新世界興業株式会社(以下「新世界興業」という。)が経営するレストラン「壁の穴西新宿店」、「チボリ京王モール店」において、持ち帰り商品として、本件審判の請求に係る指定商品中の「ホワイトソース、ドレッシング」等に本件商標と同一性を有する「壁の穴」商標を付して、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたものと認められる。
2.本件審決に対し、東京高等裁判所は、平成10年3月31日に言い渡した判決において、原告(当審での参加人)及び被告(当審での被請求人)の提出した証拠により、概略以下のとおり認定し、「新世界興業が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標と同一性を有する『壁の穴』商標を使用していた事実を認めるに足る証拠はない。したがって、これが認められるとした審決は、事実を誤認したものであって、この誤りが審決の結論に影響を及ぼすことは明らかであるから、審決は違法であって取消しを免れない。」とした。
(1)乙第20号証(乙第20号証商品案内)及び乙第22号証(乙第22号証チラシ)には、新世界興業が経営する「壁の穴」店舗で、ホワイトソース、ドレッシングを店頭販売している旨の記載があり、乙第17号証の2には、乙第20号証商品案内は1988年12月20日付の乙第19号証納品書によって、乙第22号証チラシは平成元年9月10日付の乙第23号証納品書によって納品された旨の記載がある。また、乙第24号証の2(乙第24号証の2納品書)には、1988年9月20日付でお持ち帰りメニューチラシ、パッケージ用シール等が納品された旨の記載がある。しかし、上記各納品書は、いずれもコクヨ株式会社製の「コクヨ ウー221N」の用紙が使用されているところ、調査委託の結果によれば、上記「コクヨ ウー221N」の用紙は平成元年5月から販売が開始されたことが認められ、上記事実によれば、乙第19号証納品書及び乙第24号証の2納品書は、いずれも日付を遡らせて記載されたものであることが認められる。
そして、乙第23号証納品書は、「No.3」であって、乙第19号証納品書(No.2)及び乙第24号証の2納品書(No.1)と一連のものと認められるから、乙第19号証納品書及び乙第24号証の2納品書が日付を遡らせている事実に照らし、乙第23号証納品書の日付も信用できないものといわざるをえない。
また、成立に争いのない乙第32号証(内河煕作成の陳述書)によれば、新世界興業が「壁の穴」店舗を開店したのは昭和52年であることが認められるところ、乙第19号証納品書及び乙第23号証納品書によって納品されたとされる乙第20号証商品案内及び乙第22号証チラシには、いずれも「創業15年 元祖壁の穴」の記載があるから、これらが昭和63年ないし平成元年に作成、使用されるのは不自然である。
そうすると、乙第19、第20、第22、第23号証、第24号証の2は、その作成時期に疑問があり、成立に争いのない甲第7号証(成松孝安作成の宣誓供述書)、第8号証(伏木建一作成の宣誓供述書)に照らしても、新世界興業が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標と同一性を有する「壁の穴」商標を使用していた証左とすることはできないものというべきである。
(2)乙第6号証には、「お持ち帰りメニュー」として「元祖壁の穴」、「サラダドレッシング」等の記載がある。しかし、同号証には、作成時期の記載がなく、また、乙第5号証のメニューと比較して、紙質、文字が大きく異なるものであって、上記メニューと同様に作成、使用されたものとは思われず、前掲甲第7、第8号証に照らし、本件審判請求の登録前に使用されていたものと認めることはできない。
(3)乙第7号証は、「壁の穴」店舗にホワイトソース、サラダドレッシング等を販売している旨のはり紙の写真であり、乙第10号証は、ホワイトソース、ドレッシングなどの容器の写真であるが、上記写真は、いずれも写真事態に撮影年月日を特定できる表示は認められず、上記はり紙及び容器を撮影する目的で撮影されたものと窺われることからして本件審判と関係なく撮影されたものとしては不自然であって、前掲甲第7、第8号証に照らし、本件審判請求の登録前に撮影されたものとは認めがたい。
(4)乙第26号証は、谷口千鶴子に対する「壁の穴ドレッシング」及び「壁の穴ホワイトソース」販売の領収書控であるが、控であるのに販売品の内容が詳細に記載された上、新世界興業の社印及び扱者印が押捺されており、かつ、前後の領収書も全く提出されていないものである。一方、前掲甲第7号証によれば、新世界興業には「谷口千鶴子」という名の従業員がいることが認められ、上記事実及び前記(1)の認定に係る被告が日付を遡らせた納品書を書証として提出している事実に照らせば、乙第26号証が本件審判請求の登録前に作成されたものと認めることはできない。
(5)乙第17号証の2(資料説明書)には、乙第25号証のシールが平成元年9月10日に乙第23号証によって納品された旨の記載があるが、乙第23号証納品書が平成元年9月10日に作成されたとは認められないことは前記(1)のとおりであり、他に上記シールが本件審判請求の登録前に作成されたものと認めるに足りる証拠はない。
(6)乙第30号証の1枚目(成松孝安作成の商品開発報告書)には、新世界興業が壁の穴西新宿店において、ホワイトソース、ドレッシング等を店頭販売している旨の記載があるが、上記は作成年月日の記載もなく、その文面も店頭販売の事実を証する目的で書かれたように窺われ、本件審判請求以前に書かれたものとしては不自然であって、前掲甲第7号証に照らし、新世界興業が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標を使用していた事実を認める証左とすることはできない。
(7)乙第31号証(株式会社三喜作成の証明書)には、持ち帰り用ソース容器のポリ袋(乙第9号証の写真の被写体)、持ち帰り用ソース類その他のポリ袋(乙第29号証の原本)について、昭和60年ころから平成4年にかけてデザインや表示を変えたポリ袋として度々納品した旨の記載がある。しかし、上記ポリ袋自体から納品がそのいずれの時期であったか特定できないのみならず、前記(1)認定に係る被告が日付を遡らせた納品書を書証として提出している事実に照らしあわせると、その記載が事実であると信用し難い。
(8)乙第21号証の写真の被写体であるソースは、その容器の状況及び前掲甲第7号証に照らし、店頭販売用のものと認めることはできない。
(9)新世界興業の経営するレストラン「壁の穴西新宿店」、「チボリ京王モール店」がスパゲティ専門店であったことは原告も認めて争わないところであるが、スパゲティ専門のレストランであることから、ホワイトソース、ドレッシングを持ち帰り商品として店頭販売していたと推認することはできず、この点に関する乙第31号証の記載も信用できないし、他にこれを認めるに足る証拠はない。
3.上記判決(以下「高裁判決」という。)があった後、被請求人は、当審において、新たな証拠方法として乙第34ないし第41号証の1及び2を提出しているが、これらの証拠は、以下に示す理由から、新世界興業が本件審判請求の登録前3年以内に本件商標をその指定商品に使用していたと認めるに足る証左とすることはできないものというべきである。
(1)乙第34号証(内河煕作成の宣誓供述書)には、昭和63年以前から、「壁の穴」商標を使用してテイクアウト商品「ホワイトソース、ドレッシング」を販売していた旨の記載があるが、その記載内容からは、使用に係る商標の具体的な使用状況(商標の構成態様、テイクアウトとしての商品への使用形態等)が明らかでなく、これをもって、使用に係る商標が本件商標と社会通念上同一といえるものであって、それをテイクアウト商品「ホワイトソース、ドレッシング」に使用していたと直ちに認めることはできない。
乙第35号証(窪田和夫作成の宣誓供述書)には、「壁の穴」商標が掲載された商品案内(高裁判決に示す乙第20号証)やメニューチラシ(同第22号証)等を新世界興業に納品したのは、その納品書(高裁判決に示す乙第19号証、同第23号証、同第24号証の2を指すものと認められる)に記載した日付(1988年12月20日、平成元年9月10日、1988年9月20日をそれぞれ指すものと認められる)の頃に間違いない旨の記載がある。しかしながら、仮にそうであったとしても、高裁判決が示しているように、上記の商品案内やメニューチラシには、いずれも「創業15年 元祖壁の穴」の記載があり、新世界興業が「壁の穴」店舗を開店したのは昭和52年であることからすると、依然として、これらの納品書が昭和63年(1988年)ないし平成元年に作成・使用されるのは不自然といわざるを得ない。
乙第36号証(泊良夫作成の宣誓供述書)には、昭和63年当時、高裁判決に示す乙第25号証シールを使用して、「壁の穴ホワイトソース」、「壁の穴ドレッシング」を販売した旨の記載がある。しかしながら、この供述書は、新世界興業の社員の作成に係るものと認められること、さらに、高裁判決において、上記シールが平成元年9月10日に乙第23号証納品書によって納品された旨の記載があるものの、この納品書がその日に作成されたとは認められないとしていることにも鑑みると、この供述書をもって、本件商標と社会通念上同一といえる「壁の穴」商標が、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことを客観的に証明しているとは認め難い。
ところで、上記乙第34ないし第36号証は、そもそも先の審判段階あるいは高裁の訴訟段階において十分提出が可能(現に内河煕作成の陳述書が高裁に乙第32号証として別途提出されていることが認められる)であったものと認められるにもかかわらず、その提出をせずに高裁判決があった後に提出しているものであり、その証拠方法・内容の変遷状況に照らしても、これらの証拠の客観的な立証資料としての信憑性に疑問を持たざるを得ない(このことは、次の(2)以下で述べる乙第37ないし第41号証の1及び2についても同様にいえる)。
(2)乙第37号証は、株式会社総合リサーチが作成した成松孝安(高裁に提出された甲第7号証(宣誓供述書)の作成者)に関する調査報告書であって、これにより高裁での同人の供述内容が信用性に欠けるものであることを立証しようとするものである。しかしながら、この調査報告書は、高裁判決後に作成され、単に甲第7号証作成者本人の過去の経歴や現状、素行を調査内容とするものであり、また、高裁判決によれば、成松孝安の供述内容に信用性が欠けると被請求人が主張する甲第7号証の成立について、高裁段階で被請求人自身が争っていないことが認められ、この点をも考慮すると、一民間企業の調査・作成に係る乙第37号証をもって、成松孝安の上記甲第7号証の供述内容が信用性に欠けるものであると認めるに足る証左とすることはできない。
(3)乙第38号証及び乙第39号証は、「壁の穴」商標の使用に関する平成10年5月22日付けの証明書である。しかしながら、この証明書は、いずれも同じ文面からなる画一的な証明内容について、被請求人側の営業上の関係者が単に署名・捺印したと認められるものであって、その事実関係(意味内容)を正確に理解した上で作成したものであるのかについて疑問が残るばかりでなく、その証明書に添付された写真の掲載商品に貼られたシールは、高裁判決に示す乙第25号証シールと同じシールと認められるものであって、このシールに関する高裁判決(上記2.(5)参照)や前記(1)の認定をも踏まえると、この証明書をもって、本件商標と社会通念上同一といえる「壁の穴」商標が、本件審判請求の登録前3年以内に使用されていたことを客観的に証明しているとは認め難い。
(4)乙第40号証は、新世界興業が株式会社広放に支払ったとする平成元年8月31日付け領収書(写し)である。しかしながら、この領収書には「No.51」の記載があり、当然、その番号の前後の番号に係る他の領収書(他社宛のもの)も存在していたと認められるところ、それらの領収書の提出はなく、乙第40号証の領収書のみでは、証明資料としての客観性の点で十分なものとはいえない。そして、被請求人は、この領収書(原本)が再調査(高裁判決後の調査を指すものと認められる)によって発見されたと主張するが、当初の調査で発見できなかったものが高裁判決後の調査により発見されるということは通常では考えにくいこと、また、前記(1)で認定したように、この領収書に関する記述を含む乙第35号証(窪田和夫作成の宣誓供述書において、商品案内等を納品書によって納品した代金は同納品書の日付(平成元年8月31日)の頃に間違いなく戴いた旨の記載がある)が採用できないことにも照らしあわせると、乙第40号証の領収書は、その作成時期に疑問があり直ちに信用することができないものといわざるを得ない。
(5)乙第41号証の1及び2は、第40号証の領収書の内訳を示す株式会社広放から新世界興業宛の請求書(写し)であり、これも、前記(1)及び(4)に示す理由と同様の理由から採用できないものである。
(6)他に、本件商標を本件審判請求の登録前3年以内にその指定商品について商標権者又は使用権者のいずれかが使用していたと認めるに足る証左はない。
4.以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第50条第1項の規定により取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 1997-02-21 
結審通知日 1997-03-11 
審決日 1997-03-24 
出願番号 商願昭52-56255 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (131)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩崎 和夫岡村 憲佑 
特許庁審判長 小野寺 強
特許庁審判官 小池 隆
久我 敬史
大橋 良三
寺光 幸子
登録日 1981-09-30 
登録番号 商標登録第1482034号(T1482034) 
商標の称呼 カベノアナ 
代理人 石川 義雄 
代理人 長谷川 穆 
代理人 長谷川 穆 
代理人 丹羽 一彦 
代理人 中田 和博 
代理人 丹羽 一彦 
代理人 磯部 健介 
代理人 石井 孝 
復代理人 中田 和博 

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