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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 119
管理番号 1067769 
審判番号 取消2001-30498 
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2001-05-07 
確定日 2002-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第1275796号の2商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第1275796号の2商標(以下「本件商標」という。)は、昭和49年11月15日登録出願、同52年6月10日設定登録とするものであって、商標の構成を「キャスト」の片仮名文字とし、指定商品を第19類「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」として、昭和56年9月7日に商標権の分割移転により登録されたものである。その後、昭和62年7月22日及び平成9年6月10日に存続期間の更新登録がされたものである。

第2 請求人の主張
本件商標の指定商品「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」について登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨次のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第5号証及び上申書(平成13年10月22日付)により甲第6号証を提出している。
1.請求の理由
本件商標は、その指定商品中の「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」について、継続して3年以上日本国内で商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した実績が認められないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により、取り消されるべきである。
2.請求人と被請求人との間の経緯
(1)被請求人は、請求人に対して、平成12年12月27日付で、本件商標の商標権侵害として、東京地裁に侵害訴訟を提起した。
請求人は、平成13年1月23日付で東京地裁に答弁書を提出し、被請求人の使用実績について求釈明を求めた。
東京地裁においては、その後、2回の準備手続が行われ、相当期間も経過しているが、被請求人は使用について立証することができていない。
以上の経緯から、請求人は被請求人に対して、不使用取消審判を請求するに至った。
(3)以上のとおり、本件商標は空権化していることが明らかであるから、請求人は商標法第50条第1項の規定により、請求の趣旨のとおりの審決を求める次第である。
なお、請求人は被請求人に対して平成13年1月23日付で不使用取消審判をすることを予告しているから、商標法第50条第3項の規定により、本件審判請求前3月の使用は除外されることを申し添える。
3.弁駁の理由
被請求人は、乙第1号証(商品総合カタログ)の表紙に明示した「COOKWARE」には、「なべ・かまど等の調理用具」という意味があり、さらに、当該商品カタログには被請求人が製造販売する「なべ類、やかん」等の商品が掲載されており、そして、商品カタログの第1頁の左上には「キャスト」の商標が記載され、「キャストは当社の登録商標です。」との説明文字が付加されているので、本件商標「キャスト」が、その指定商品中の「なべ類、やかん」に使用されていることが明らかであると主張している。
しかしながら、上記カタログの第1頁に記載されている「キャスト」は、具体的な指定商品について付された商標ではない。
すなわち、本件商標権の指定商品は「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」であるから、例えば「なべ類」を取り上げると、どのような具体的な「なべ」商品に使用されているのかが明らかでなければならないところ、乙第1号証の商品総合カタログの第1頁に記載されている「キャスト」には、具体的な指定商品が全く存在しない。
請求人が取消を請求する「コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」についても、同様に、具体的商品について全く使用されていない。
以上のように、標章「キャスト」は、具体的な商品に使用された実績がないことが明らかである。
したがって、乙第1号証第1頁の「キャスト」の記載をもって、使用の事実があるとする被請求人の主張は、失当である。
また、本件商標が専用使用権者または通常使用権者によって使用されていたことの事実もない。
したがって、本件商標は、その指定商品「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」について使用されていないことは明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)及び参考資料1を提出している。
1.答弁の理由
本件商標「キャスト」は、被請求人の商品「なべ類」についてのメインブランドであり、過去数十年にわたり継続して使用され続けているものであって、少なくとも過去3年以上の間に不使用であった期間はない。
(1)本件商標の使用実績について
(ア)商品総合カタログへの表示による使用
乙第1号証は、被請求人(商標権者)の製造販売にかかる商品を掲載した商品カタログである。この表紙には「HOKUACOOKWARE アルミ家庭日用品」と記載されており、右下部分には「PI-97」の記号が記載されている。
当該商品カタログには、被請求人(商標権者)が製造販売する「なべ、フライパン並びに釜」に加え「やかん」等の商品が掲載されており、これらは本件商標の指定商品中の「なべ類、やかん」に属するものである。
そして、この商品カタログの第1頁の左上には、かなり大きな文字でカタカナ四文字からなる「キャスト」の商標が記載されており、その右下には小さく登録商標を示す表示も付加され、さらに下部には「キャストは当社の登録商標です。」との説明文字が付加されている。
したがって、乙第1号証の商品カタログによれば、本件商標「キャスト」が、その指定商品中の「なべ類、やかん」に使用されていることが明らかである。
(イ)商品総合カタログの印刷時期
次に、乙第2号証の1ないし4は、乙第1号証に示した商品カタログを印刷した業者(株式会社北陸サンワ)から被請求人への納品書であって、乙第3号証の証明書は、乙第2号証で示した納品書に明示されている「日用品総合カタログ」が、乙第1号証で示した商品カタログ(記号PI-97で識別されるもの)であることを証明する書面である。
これらの各証拠からも明らかなように、乙第1号証の商品カタログには、表紙に記号PI-97が記載されており、その納品書と証明書によれば、平成9年1月23日に初版(乙第2号証の1)され、その後、同年4月10日(乙第2号証の2)、平成10年11月19日(第2号証の3)並びに平成12年5月18日(第2号証の4)にも増版されたものが納品されていることが明らかである。
そして、少なくともこの最新の増版時期は、本件審判請求時(並びに本件審判請求登録時)の前の三年以内であって、これらの各証拠からは、それ以前から継続して本件商標がその指定商品中「なべ類他」に使用されている事実を証明するものである。
(ウ)商品総合カタログの配布時期
乙第4号証は、被請求人(商標権者)による乙第1号証で提示した総合カタログの配布状況を示すものであり、被請求人の発送管理データの一部の抜粋であって、乙第2号証で示した最新の増刷時期(平成12年5月)から、平成12年末までの発送状況を示している。
この一欄のデータで商品名「総合カタログ」と明示されたものが、乙第1号証に示した商品カタログである。
さらに、この一欄が正しいデータであることを示すために、下線部で示した幾つかの納品先に関する納品書並びにそれに対応する注文の書類(名称は各社異なる)を乙第5号証並びに乙第6号証として提出する。
なお、乙第4号証の下線部のデータに対応する納品書が乙第5号証の1に示す納品書であり、その元となった注文書類は乙第6号証の1に示した出荷指図票である。他2件も同様である。
(エ)使用時期の特例に関して
請求人は、商標法第50条第3項の適用を主張しているが、請求人が本件商標の使用実績について被請求人に対し釈明を求めた平成13年1月23日が、仮に商標法第50条第3項で定める不使用取消審判の予告であったとしても、乙第1号証他の証拠によれば、同日前から本件商標が使用されていたことは明白であるので、当該規定には何ら影響はない。

第4 当審の判断
1.本件商標は、商標の構成を「キャスト」の片仮名文字を横書きし、指定商品を「なべ類、湯沸かし類、加熱器、流し台、調理台」とするものである。そして、本件審判請求は、本件商標の指定商品中の「なべ類,コーヒー沸かし(電気式又は貴金属製のものを除く。),鉄瓶,やかん」について、商標法50条第1項の規定によりその登録の取り消を求めるものであって、その予告登録は平成13年6月6日にされているものである。
2.そこで、被請求人(商標権者)が、本件商標を本件審判の取消対象商品中「なべ類,やかん」について所定の時期において使用していた事実を証明するものとして提出した乙第1号証ないし同第6号証の3をみるに、
(1)乙第1号証は、被請求人の作成に係る「なべ類,やかん」についての商品総合カタログと認められるものであって、当該カタログには、第1頁の左上に標章「キャスト」の記載が認められるほか、裏表紙右下に「富山県高岡市笹川2265」と「北陸アルミニウム株式会社」の表示が認められる。
(2)そして、当該カタログは、乙第2号証の1ないし4の納品書(控)及びこれを追認する印刷業者の乙第3号証の証明書により、当該カタログの納品が平成10年11月19日及び平成12年5月18日に被請求人に対し株式会社北陸サンワよりされていることが証明される。
(3)さらに、乙第4号証(当該カタログ納付先抜粋リスト)、乙第5号証の1ないし3(当該カタログ納品書(本社控))、乙第6号証の1(出荷指図票(営業控))、乙第6号証の2及び3(発注書、連絡書)の各取引書類により当該カタログの配布が、各取引先に対し、平成12年5月23日、同年5月31日及び同年6月6日にされている状況を認め得るものである。
3.そうすると、上記(1)ないし(3)で認定のとおり、被請求人(商標権者)は、「なべ類,やかん」の販売目的のための広告宣伝手段の一である商品総合カタログ(乙第1号証)を作成し(乙第2号証及び乙第3号証)、これの第1頁の冒頭には該カタログに掲載の商品の統括的商標といえる本件商標と構成態様を同じくする「キャスト」の文字を顕著に表示してなり、これを各取引先に配布しているものである。そして、各取引書類(乙第4号証ないし乙第6号証)の発行日からみて本件審判請求の登録前3年以内に配布されたものと認められるから、各取引先との間において「キャスト」商標をもって「なべ類,やかん」についての商取引がなされたとみるのが相当であり、商品の広告及び頒布行為といえる商標の使用であるというべきである。
してみれば、被請求人は、審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品中「なべ類,やかん」について、本件商標の使用を証明し得たものといわなければならないから、本件商標の請求に係る指定商品の登録を取り消すことができない。
4.なお、請求人は、乙第1号証の商品総合カタログの第1頁に記載されている「キャスト」には、具体的な指定商品が全く存在しないから、使用の事実があるとするのは、失当である旨述べ主張するので、この点について判断を加えると、当該商品総合カタログ(乙第1号証)の第1頁に表示の標章「キャスト」は、小さく「まるR記号」及び「キャストは当社の登録商標です。」の説明文字が付加されているところから、被請求人は、登録商標としての使用であることを明らかにしているところであり、商標法第73条(商標登録表示)の規定の趣旨に適うものである。
そして、一企業が多種多様に亘る商品を取り扱う場合、一般的に各種商品の総合カタログに掲載される商品群にあって、それに使用される標章は、代表的標識ないしは個別的標識などが混在して表示されるものであって、例えば、当該カタログの表紙に掲載された代表的標識は総合カタログに掲載の商品全体の商品識別標識の使用というべきであり、そのほか、一群の商品毎に付される総括(シリーズ)的な標章なども存し、家庭日用品の取引分野に限らず各種商品について普通に行われているといえる。そうとすると、本件商標の「キャスト」標章は、当該カタログに掲載された一群の商品である「なべ類,やかん」に使用される総括的商標とみるべきであって、本件に係る当該カタログにおける該標章の使用は、商品識別標識として他の個々商品の標章「キャステージ」「ピュアキァスト」及び「トップ キャスト」等と独立して機能しているというべきであるから、その使用に係る標章は、取引上実質的な使用と認められる商標である。
また、請求人は、平成13年10月22日付上申書において、判決書の記載から明らかなとおり、東京地裁は、被請求人が「キャスト」自体を商標として使用していないと、事実認定をしている旨述べ、判決書(平成12年(ワ)第27776号:甲第6号証)を提出しているが、これは本件商標「キャスト」と請求人標章「TWIN Cast」との間に係る商標権侵害訴訟事件であって、請求人が判決書の当該箇所とする赤下線をした部分において「・・・『キャスト』自体が名称となっているものはない。」、「原告商品カタログには、1頁目に『キャスト』と表示し、・・・その他、原告商品の包装、カタログなどに『キャスト』を単独で使用した記載はない。」旨の記載は認められるとしても、これは後段の「・・・『キャスト』が原告商品を表すものとして高い識別力を有しているということはできないこと」との点を導くための間接的認定と推測されるものであって、該判決書の裁判所の判断において、直接的に「被請求人が『キャスト』自体を商標として使用していない」との事実認定をしているとは認め難いものである。
5.したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、本件審判の取消請求に係る全指定商品について、その登録を取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2002-08-19 
結審通知日 2002-08-22 
審決日 2002-09-11 
出願番号 商願昭49-150785 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (119)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 高野 義三
滝沢 智夫
登録日 1977-06-10 
登録番号 商標登録第1275796号の2(T1275796-2) 
商標の称呼 キャスト 
代理人 佐藤 公博 
代理人 佐藤 正年 
代理人 池内 寛幸 
代理人 佐藤 年哉 
代理人 乕丘 圭司 
代理人 中山 光子 
代理人 鎌田 耕一 

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