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審決分類 審判 全部無効 商4条1項11号一般他人の登録商標 無効としない 042
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない 042
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない 042
管理番号 1067767 
審判番号 審判1997-21445 
総通号数 36 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-12-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 1997-12-17 
確定日 2002-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第3293761号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成11年 9月10日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成11(行ケ)年第365号平成12年9月25日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第3293761号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲に示すとおりの構成よりなり、第42類「オフセット印刷」を指定役務とし、商標法の一部を改正する法律(平成3年法律第65号)附則第5条第1項の規定により使用に基づく特例の適用を主張して、平成4年9月27日登録出願され、特例商標として同9年4月25日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
本件商標の登録無効の理由に請求人が引用する登録第1541634号商標(以下「引用商標」という。)は、「PRINTEX」の欧文字と「プリンテックス」の片仮名文字を上下二段に書してなり、昭和53年12月20日に登録出願され、第3類「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤 」を指定商品として、同57年9月30日に設定登録されたものである。

第3 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録はこれを無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨つぎのように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし同第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標は、請求人が永年日本国において黒色顔料、殊に印刷インクの原料として用いる「カーボンブラック」に使用した結果、全国的に周知著名性を得ているから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号或いは同第15号のいづれかに該当する。
(1)周知著名性について
請求人は、化学工業薬品、医薬品、歯科用合金、顔料(ピグメント)等の開発製造販売を主業務とする世界的企業である。
とくに前記商品「顔料(ピグメント)」の分野では、世界第2位の生産量を持つ各種カーボンブラックがあり、その製品名の一つである引用商標「PRINTEX(プリンテックス)」は、印刷インキの原料として使用されるものであり、国際的に当該取引者・需要者間に広く知られているのである。
日本との該製品取引は、引用商標登録以前の昭和40年頃から、請求人全額出資のデグサジャパン株式会社(以下、「デグサジャパン」という。)を通じて輸入され、日本のインキメーカーの殆どの企業に該製品を販売している。その結果、印刷インキの原料として使用される「カーボンブラック」の出所標識たる引用商標は、本件商標の出願当時に欧米のみならず日本の当業者・需要者間に該製品の商標して広く知られ著名に至っている(甲第5号証ないし同第13号証)。
(2)本件商標と引用商標の類否について
本件商標と引用商標を比較するに、本件商標は、上段に多少図案化されたアルファベット「Z」の文字と下段に表示された「PRINTEX」の文字との組み合わせよりなるものであるが、該構成中、上段に描かれた多少図案化したアルファベット「Z」の文字は、簡単かつありふれたものであるから、本件商標の自他商品の識別機能を果たすのは、下段に表示された「PRINTEX」の文字部分にあるものと認識せしめられるものである。
しかして、本件商標からは、「PRINTEX」の文字に照応し「プリンテックス」の称呼が生ずること明らかである。
他方、引用商標は、「PRINTEX」の欧文字と「プリンテックス」の片仮名文字を上下二段に併記したものであるから、これより「プリンテックス」の称呼が生ずること明らかである。
したがって、本件商標と引用商標は、「プリンテックス」の称呼を共通にするものであるから、その出所について相紛れるおそれのある類似の商標である。
(3)商品・役務間の混同・誤認性について
最近の企業は営業主品目に拘ることなく販促関係は当然として、これらと全く関係ない商品・サービス分野にもその営業活動を多角的に拡大し、また欧米の企業と技術又は資本その他において提携することが多いうえ、テレビ・ラジオ.新聞.雑誌などの宣伝広告手段が急速に発展し人々の脳裏にブランド名が強力に浸透して、高度に著名化した商標が広範囲に使用される時代である。
かかる事実を勘案して、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品を検討すると、本件商標の指定役務「オフセット印刷」には、該役務を提供する上で当然「印刷機械」及び「印刷インキ」は必要不可欠なものであることから、該役務と両商品は極めて密接な関連性が存在すること明らかである。
ところで、商品「印刷インキ」は、該商品の製造の過程において引用商標の使用商品である顔料に属する「カーボブンラック」等を添加することが一般には必要不可欠なもであり、両商品は一体不可分の関係にある(甲第14号証及び甲第15号証)。
しかして、引用商標と称呼上類似する本件商標がその指定役務に使用され取引市場に出現した場合、「カーボンブラック」が使用される「印刷インキ」等との役務・商品間には、密接不可分な関連性を有すること、かつ「印刷インキ」の製造及び取引分野における引用商標の著名性も相まって、取引者・需要者に、請求人会社と経済的あるいは組織的に何らかの関連を有する企業の業務に係る役務であるかのような混同を生じさせるおそれがある。
(4)以上により、本件商標と引用商標とは称呼上互いに類似し、かつ指定商品と役務間の類似性も存在するから、本件商標を付した前記役務が市場に現出することを想定するときは、請求人と営業上何等かの関係があるかの如く、当業者・需要者に誤認混同されるおそれがある。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論と同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、乙第1号証ないし同第12号証(枝番を含む。)を提出した。
(1)甲第1号証ないし同第4号証については、事実を示す書類であるから特に疑義はない。
(2)甲第5号証は、デグサジャパンのパンフレットと解され、デグサジャパンが日本に存在し、請求人の全額出資による会社であって、金属及び化学品を取扱商品としていることが記載されている。しかしながら、「PRINTEX」の文字の記載についは全く存在しない。したがって、甲第5号証からは「デグサジャバン」が何らかの商品又は役務について、「PRINTEX」の商標を使用していることは不明である。
(3)甲第6号証は、「デグサジャパン」の「PRINTEX(プリンテックス)」に係るカーボンブラックの販売実績が記載されているが、証明日は平成9年11月28日となっていて、最近のデータでも平成4年のものが記載されているのみである。そして、平成1年〜平成4年と徐々にその売上は下降している。したがって、本件商標の登録査定時において、「PRINTEX(プリンテックス)」に係る「カーボンブラック」は仮に販売されていても、相当落ち込んでいると推察される。
(4)甲第7号証の1ないし11は、商標「PRINTEX」が請求人の「印刷インキ用カーボンブラック」の商標であることが取引者・需要者、とくに印刷業者及び印刷インキ製造業者間に広く知られているとの証明書であるが、わずか11人の証明に過ぎない。これを以て、商標「PRINTEX」が著名であるとの証明にはならない。
(5)甲第8号証ないし同第11号証は、1971年、1976年 、1987年、及び1990年の「CARBON BLACK年鑑」がそれぞれ示されているが、何れも1990年以前のものである。特に、1990年以降の世界情勢及び経済情勢は目まぐるしく変わっているので、これらの資料のまま経済情勢が進んでいるとも思われないので、甲第8号証ないし同第11号証は参考とはなっても、この資料をもって「PRINTEX(プリンテックス)」の商標が現時点において、周知、著名であるとはならない。カーボンブラック年鑑には内外の主なカーボンブラックの銘柄としてカラー用のカーボンブラックにデグサ社の「Printex140、300、95、85等」種々の「Printex」が記載されている。しかしながら、カーボンブラック年鑑は、インク業者は必要であるかも知れないが、印刷業者には関係がなく、仮に記載されていても、著名の証拠にはならない。
甲第10号証の「CARBON BLACK年鑑第12頁の表10」にカーボンブラックの国別輸入実績が記載されているが、西ドイツからの輸入量は昭和61年で814トンであるから、全輪入量の7.5%となる。また、カーボンブラックの用途のうち、印刷用は同第14頁表12の記載から、11,127/544,068=2%である。
ゆえに、甲第5号証の第4頁に示すように、デグサグループのカーボンブラックがピグメントの分野では世界第2位の生産量を持ち、甲第6号証に示すように「PRINTEX」の商品名を使用した印刷用カーボンブラックの年間売り上げが約3億〜4億円であるとしても、日本における販売実績としては、印刷用カーボンブラックの西ドイツからの輪入量は、前述の輸入量から換算して、カーボンブラック全輸入量の0.15%にすぎない。しかも、カーボンブラックはインキの原料であるので、インクの製造メーカに納品することはあっても、印刷屋に納品するものではなく、これを以て、「PRINTEX」が出願時、査定時に著名であるとの証明にはならない。
甲第8号証ないし同第11号証のカーボンブラック年鑑には内外の主なカーボンブラックの銘柄としてカラー用のカーボンブラックに請求人の「Printex140、300、95、85 」種々の「Printex」が記載されている。しかしながら、カーボンブラック年鑑は、インク業者は必要であるかも知れないが、印刷業者には関係がなく、仮に記載されていても、著名の証拠にはならない。
(6)甲第12号証は1992年の塗料年鑑に、請求人の広告の頁が記載されて、確かにこの中に、「Printex」の文字が記載されているが、一般に広告は会社の宣伝であるから、何を載せるかは自由である。更には、この発行年月日は1991年12月10日で古い。
(7)甲第13号証の1ないし4には、請求人作成配布の「印刷インキ用のカーボンブラック」のカタログが記載されているが、これは甲第4号証に示される商標を使用している実態を表示しているに過ぎない。甲第13号証の1、2、及び4は「Degussa」のカタログであるが、英語及びドイツ語で記載され、日本では頒布されていないと思われるので、特に考慮すべき資料ではない。
(8)甲第14号証には昭和51年発行の商品大辞典の一部が示されていて、カーボンブラックの説明があり、その下欄に製造会社の名称があるが、この中には請求人、「デグサジャパン」の名称はない。そして、甲第14号証の商品大辞典には、カーボンブラックの製造会社として「東海カーボン」、「三菱化成工業」、「電気化学工業」その他のカーボンメーカが記載されているが、請求人の名前は記載されていない。
(9)甲第15号証は事実を示すものであり、甲第16号証は審決公報であるから特に疑義を挟む予知はない。
以上の証拠からすると、1971年〜1991年当時、請求人が「Printex・・」の商標を使用した印刷インキ用カーボンブラックを製造し、「デグサジャパン」が引用商標「Printex・・」を使用して印刷インキ用カーボンブラックを日本で販売していることは分かる。しかしながら、前記各甲号証からも明らかなように、「デグサジャパン」が販売する「Printex・・」の商標を付した商品が、日本の市場を独占しているわけでもなく、「Printex」の名称が企業名であって、商品又は役務の出所を表す商標でもない。したがって、請求人が主張するように、「Printex」という商標が当業者(印刷業)において著名ではなく、更に周知であるとも認められない。
(10)本件商標は「Z/PRINTEX」であり、引用商標は「PRINTEX/プリンテックス」であるので、いずれも「プリンテックス」の称呼が生じる点については認めるが、本件商標には、装飾化した「Z」の文字も記載されており、両者を明確に区別できる商標となっている。
次に、本件商標の指定役務は「オフセット印刷」であり、その役務を提供する上で「印刷機械」及び「印刷インキ」に必要であることは認めるが、「オフセット印刷」の役務と「印刷インキ」の商品に極めて密接な関連性があり、「印刷インキ」と印刷インキの原料である「印刷インキ用カーボンブラック」両商品の間には一体不可分の関係があから、「オフセット印刷」の役務と「印刷インキ用カーボンブラック」の商品が密接不可分の関連性があるというのは論理の飛躍であり、無理がある。
請求人はこの証拠として甲第16号証を引用している。しかしながら、「カーボンブラック」に使用している「Printex」の商標を以上の証拠から判断するに、この商標が周知著名であるとは考えられない。
(11)更に、本件商標の指定役務は「オフセット印刷」であり、これらに接する取引者、需要者が出所の混同を生ずるとは認められない。本件商標の役務の業務内容と、請求人が主張する商品「カーボンブラック」とは、業務内容が異なることは明らかであり、稀な例は別として通常は別々の企業が行っている。このことは、甲第5号証のどこにも、「デグサジャパン」及び金属セクター、化学セクター、医薬セクターと種々の分野を持つデグサグループにおいて、印刷業を営んでいるという記載が見あたらない事実からも明らかである。
また、取引先も当然別であり、「印刷用インキ」の原料である「顔料」は販売業者を通じて印刷用インキの製造業に販売され、「オフセット印刷」の業者は印刷用インキ販売会社を通じて印刷用インキを購入する。ゆえに、「顔料」の製造業者と「オフセット印刷」の業者との間には少なくとも1ステップ、通常3ステップあり、「印刷インキ用カーボンブラック」の商標「PRINTEX/プリンテックス」は印刷用インキの製造業者には仮に周知程度にられているとしても、印刷用インキを使用するオフセット印刷業者に広く知られているとは言い難い。
したがって、オフセット印刷業を指定役務とする本件商標と印刷インキの原料となる「印刷インキ用カーボンブラック」を指定商品とする「Printex」が出所の混同を生じるとは認めがたく、商品「顔料」と役務「オフセット印刷」の類似は成り立たない。
(12)次に、引用商標「PRINTEX/プリンテックス」が著名であるか否かについて検討すると、この商標は請求人が提出する証拠からも明らかなように著名企業の名称を示す商標ではないので、一般の人には知られておらず.単に一部の商品の名称を示す商標である。
更に、引用商標と同じ商標が他の類において、登録又は公告されている。また、引用商標がその他の商品区分で防護商標として登録されている事実もない
以上の理由から、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第11号及び同第15号のいずれにも該当しない。

第5 当審の判断
1 本件商標の指定役務と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定役務は「オフセット印刷」であり、引用商標の指定商品は「染料、顔料、塗料、印刷インキ、くつずみ、つや出し剤 」である。そして、印刷インキ用カーボンブラックは、前記指定商品中の「顔料」に包含されるものと認められる。
しかして、前記指定役務と指定商品とをみると、オフセット印刷なる役務の提供者は主に印刷業者であり、その需要者は出版業者や広告業者等であって、前記指定商品の製造・販売者や取引業者ないし顧客層が共通とはいえないほか、その用途・目的を共通にするものとはいえず、また、同一事業者が前記商品の製造・販売や該役務の提供をするとか、同一場所で販売や提供が行われるものともいえない。
したがって、本件商標の指定役務と引用商標の指定商品とは、その事業者・需要者等を異にするものであって、類似するものとは認められない。
してみれば、本件商標と引用商標との商標の類否について論究するまでもなく、本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものとは認められない。
2 出所の混同のおそれの有無について
(1)引用商標の周知著名性について
(イ)引用商標が実際に用いられているのは、印刷インキ用カーボンブラックであるところ、該商品が、印刷インキの原料としてインキ製造業者の使用に供されるほかに、他の用途を持つ汎用性のある商品として取引がされるとか、インキ製造業者以外の一般消費者等が直接需要者となるといった事実を認めるに足りる証拠はなく、該商品は、その需要者を印刷インキ製造業者に事実上限定する専門的に特化された商品であると認めるのが相当である。
他方、本件商標の指定役務であるオフセット印刷の需要者は、前記のとおり、出版業者や広告業者等であるから、引用商標の使用商品の取引業者ないし顧客層と共通しないことは明らかである。
そこで、引用商標の周知著名性の判断についても、印刷インキ用カーボンブラックの取引者及び需要者と、オフセット印刷に係る業界とに分けて検討する。
(ロ)まず、印刷インキ用カーボンブラックの取引者及び需要者における引用商標の周知著名性について見るに、当審及び訴訟において提出された証拠によれば、請求人は、その製造に係る印刷インキ用カーボンブラックに引用商標を使用した商品名を付して、その子会社のデグサジャパンを通じて日本に輸入していること、該商品の我が国における販売量は、本件商標の登録出願当時である平成4年において、629トン、約3億円であって、これは同年中の日本全体の印刷インキ用カーボンブラックの消費量の4.7%を占めること、また、該商品の名称は、年間発行部数約2000部の「カーボンブラック年鑑」(旭カーボン株式会社ほか5社のカーボンブラック製造会社及び伊藤忠商事株式会社ほか13社のカーボンブラック販売業者を会員とするカーボンブラック協会発行)の昭和46年版、同51年版、同62年版、平成2年版に「内外の主なカーボンブラック銘柄」として記載されているほか、デグサジャパンによる商品の広告も、同年鑑及び平成3年版以降の塗料年鑑に掲載されていることが認められる。しかし、これらの広告における引用商標の取扱いは、単なるアルファベットと数字だけの組合せによる商品番号(例えば「FW200」など)と同列であって、比較的小さな文字で目立たない態様で掲載されているにすぎず、特に「PRINTEX」という名称を印象付けようとしたり、又はそのブランド力を利用しようとする意図を看取することはできない。
また、請求人がインキ製造業者らから徴収した、引用商標が請求人商品を示す著名なものであることの証明書は、あらかじめ証明事項を不動文字で記載した書面の下部に、各インキ製造業者の記名押印をしたというだけのものであるうえ、その一部は、被請求人が徴求した同様の証明書と矛盾する内容となっているなど、信用性に乏しいものといわざるを得ない。
さらに、引用商標の「PRINTEX」なる語は、印刷を意味する「PRINT」の語尾に「EX」を付加した造語であるが、これと同一の商標は、商品区分を別にすれば、昭和41年に凸版印刷株式会社、昭和47年に昭和石油株式会社、昭和58年に旭化成工業株式会社等が登録出願し、登録に至っているほか、同一又は類似の称呼を含む商号を有する会社は我が国においても多数存在していることを踏まえると、引用商標にさしたる独創性を認めることはできない。
そうすると、4.7%というシェアは、必ずしも高いものではないこと、上記の広告は、必ずしも引用商標自体の自他識別力を意識したものとはいえないこと、引用商標の付された商品が特徴的な商品特性で知られていたなど、他に引用商標の周知性を補強する具体的な事情がうかがわれないこと等を踏まえると、引用商標が印刷インキ用カーボンブラックの取引者及び需要者の間で周知であったとは認められない。
(ハ)次に、本件商標の指定役務であるオフセット印刷に係る業界における引用商標の周知著名性についてみるに、オフセット印刷の需要者である出版業者及び広告業者等はもとより、これを提供する印刷業者に関しても、印刷インキの一原料にすぎないカーボンブラックの取引に関わる機会があると認めるに足りる証拠はなく、かえって、被請求人が印刷業者及び広告業者を中心に実施したアンケート調査によれば、印刷インキにカーボンブラックが用いられていることさえ知らない者が大半であり、請求人商品に係る引用商標を知っている者はごく少数に止まるとの結果が示されている。
以上からすると、引用商標は、本件商標の指定役務であるオフセット印刷の取引者・需要者、すなわち出版業者や広告業者等においても、これが周知著名であると認めることができない。
(2)指定役務と使用商品との関連性
オフセット印刷と印刷インキ用カーボンブラックとは、印刷用インキを媒介として、その原材料の一にすぎないものであってみれば、両者の関連性は間接的なものに止まるものといわざるを得ないものであって、両者の関連性は乏しいものというべきである。
(3)出所混同のおそれについて
引用商標の周知著名性、本件商標の指定役務と引用商標の使用商品との密接な関連性については、前記認定のとおり、これを認めることができない。
しかして、本件商標をその指定役務について使用しても、出所混同を生じさせるおそれを認めることができないものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するものとはいえない。
3 結論
したがって、本件商標は、前記各条項に違反して登録されたものということはできないから、商標法第46条第1項の規定によって、その登録を無効とすべき限りでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
(本件商標)


審理終結日 1999-08-19 
結審通知日 1999-09-03 
審決日 1999-09-10 
出願番号 商願平4-236424 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (042)
T 1 11・ 26- Y (042)
T 1 11・ 271- Y (042)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 茂木 静代飯島 袈裟夫 
特許庁審判長 涌井 幸一
特許庁審判官 滝沢 智夫
中嶋 容伸
登録日 1997-04-25 
登録番号 商標登録第3293761号(T3293761) 
商標の称呼 ゼット、プリンテックス 
代理人 清水 三郎 
代理人 中前 富士男 
代理人 加藤 義明 

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