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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない Z16
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない Z16
管理番号 1066557 
審判番号 審判1999-761 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-01-06 
確定日 2001-06-26 
事件の表示 平成9年商標登録願第102632号拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、商標の構成を別紙に示すものとし、第16類「鉛筆,ボールペン,その他の筆記用具」を指定商品として、平成9年4月1日に立体商標として登録出願されたものである。
2 原査定の拒絶の理由
原査定は、「この商標登録出願に係る商標は、筆記用具を表したものと認識されるにとどまる形状よりなるものであるから、これをその指定商品に使用しても、単に、筆記用具そのものの形状のみからなる商標を表示するにすぎず、自他商品の識別機能を有しないものと認める。したがって、この商標登録出願に係る商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。また、出願人が提出した証拠書類をみても、本願商標の形状が、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものということができない。」旨の理由で本願を拒絶したものである。
3 当審の判断
(1)平成8年法律第68号により改正された商標法は、立体的形状若しくは立体的形状と文字、図形、記号等の結合又はこれらと色彩との結合された標章であって、商品又は役務について使用するものを登録する立体商標制度を導入した。
立体商標は、商品若しくは商品の包装又は役務の提供の用に供する物(以下「商品等」という。)の形状も含むものであるが、商品等の形状は、本来それ自体の持つ機能を効果的に発揮させたり、あるいはその商品等の形状の持つ美感を追求する等の目的で選択されるものであり、本来的(第一義的)に商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として採択されるものではない。
そして、商品等の形状に特徴的な変更、装飾等が施されていても、それは商品等の機能、又は美感をより発揮させるために施されたものであって、全体としてみた場合、商品等の機能、美感を発揮させるために必要な形状を有している場合には、これに接する取引者、需要者は当該商品等の形状を表示したものであると認識するに止まるというのが相当である。
また、商品等の形状は、同種の商品等にあっては、その機能を果たすためには原則的に同様の形状にならざるを得ないものであるから、取引上何人もこれを使用する必要があり、かつ、何人もその使用を欲するものであって、一私人に独占を認めるのは妥当でないというべきである。
そうとすれば、商品等の機能又は美感とは関係のない特異な形状である場合はともかくとして、商品等の形状と認識されるものからなる立体的形状をもって構成される商標については、使用をされた結果、当該形状に係る商標が単に出所を表示するのみならず、取引者、需要者間において当該形状をもって同種の商品等と明らかに識別されていると認識することができるに至っている場合を除き、商標法第3条第1項第3号に該当し、商標登録を受けることができないものと解すべきである。
立体商標制度を審議した工業所有権審議会の平成7年12月13日付け「商標法等の改正に関する答申」P30においても「3.(1)立体商標制度の導入 ▲3▼需要者が指定商品若しくはその容器又は指定役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないと認識する形状のみからなる立体商標は登録対象としないことが適当と考えられる。・・・ただし、これらの商標であっても使用の結果識別力が生ずるに至ったものは、現行法第3条第2項に基づき登録が認められることが適当である。」としている。
(2)これを本願についてみるに、
▲1▼ 本願商標は、別紙のとおり、後部が平たいクリップ状をした筆記用具の形状を表してなるものと認められるものであって、これを指定商品「鉛筆,ボールペン,その他の筆記用具」に使用しても、取引者、需要者は単に指定商品の一形態を表示したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
請求人は「本願商標は、筆記用具の形態として独自性に富む立体的形状からなるものである。」旨主張する。
しかしながら、本願商標は、前記認定のとおり、筆記用具の形状の特徴を備えたものであり、後部を平たいクリップ状としたのは、紙片等を挟みやすく、落ちにくくする等の機能を効果的に発揮させるために採択されたとみるのが相当であり、それが直ちに本願商標に関し自他商品の識別性に影響を与えるとは認め難く、需要者もまた、筆記用具の形状の範囲のものと認識するにすぎないとみられるものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
▲2▼ 請求人は、本願商標が商標法第3条第2項に該当し、登録されるべきであると主張し、証拠方法として甲第1号証(枝番を含む)ないし同第4号証(枝番を含む)を提出している。
そこで、本願商標が、請求人の主張する前記法条に該当するか否かについて検討する。
ところで、商品等の形状に係る立体商標が、商標法第3条第2項に該当するものとして登録を認められるのは、原則として使用に係る商標が出願に係る商標と同一の場合であって、かつ、使用に係る商品(役務)と出願に係る指定商品(役務)も同一のものに限られるものである。
したがって、出願に係る商標が立体的形状のみからなるものであるのに対し、使用に係る商標が、立体的形状と文字、図形等の平面標章より構成されている場合には、両商標の全体的構成は同一ではないから、出願に係る商標については、原則として使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできない。
また、使用に係る商品(役務)が出願に係る指定商品(役務)の一部である場合は、使用に係る商品(役務)に指定商品(役務)が限定されない限り、出願に係る商標については、使用により識別力を有するに至った商標と認めることはできない。
ア、そこで、請求人の提出に係る甲各号証についてみるに、
甲第1号証は、本願商標を付した筆記用具を販売した販売先の一部から平成5年5月21日ないし平成10年5月20日の各年度における本願商標を付した筆記用具の購入個数、及び本願商標の周知性についての証明書と認められる。
甲第2号証は、平成1年6月から平成5年5月までの各年度に本願商標を付した筆記用具の販売個数、及び、平成5年5月21日ないし平成10年5月20日の各年度における各販売先への販売個数を公認会計士が証明する証明書と認められる。
甲第3号証は、本願商標を付した筆記用具の広告が掲載された「ゴルフ場セミナー」(ゴルフダイジェスト社発行1995年(平成7年)4月号ないし1998年(平成10年)5月号)の写しと認められる。
甲第4号証は、本願商標を付した筆記用具についての記事が掲載された「週刊ゴルフダイジェスト」第33巻第7号(平成10年2月24日ゴルフダイジェスト社発行)及び「アルバトロス・ビュー」第12巻第12号(平成10年5月28日株式会社小池書院発行)の写しと認められる。
イ、本願商標と使用に係る商標の同一性について検討するに、
甲第3号証は、ゴルフ場等向けの雑誌の広告であるところ、該広告に表された商品は、「ゴルフスコアカード用筆記具」と認められる。そして、該筆記具自体の中に「pegcil」、「OKAYA」の文字よりなる商標を表してなるものが認められ、また、甲第4号証の1によれば、「pegcil」の文字を浮き彫りで表した「ゴルフスコアカード用筆記具」のクリップ部分の写真とともに、「よく見てみると、クリップ部分に“pegcil”のロゴがある」旨の記載があることからすれば、甲第3号証及び同第4号証の1における使用に係る商標は、立体的形状と文字の平面標章より構成されており、本願商標と同一のものとはいえないものである。
甲第1号証は、本願に係る指定商品の販売先又はその担当者個人が作成した証明書と認められ、かつ、記載内容の一部については証明者による違いはあるとしても、証明に係る商標については「広く知られた」旨をあらかじめ用意された書式に従い取引の時期と周知時期を書き込んで証明したものにすぎないものである。
また、各証明書には購入数量が記載されているが、甲第3号証及び同第4号証の1によれば、「pegcil」「OKAYA」の文字よりなる商標が付された商品が掲載されていることから、甲第1号証で証明されている購入数量の中には、前記商品の数量も含まれているものと推認される。
甲第2号証は、公認会計士により筆記具の販売数量を証明したものと認められるところ、甲第1号証と同様に、「pegcil」「OKAYA」の文字よりなる商標が付された商品の販売数量も含まれているものと推認されるものであって、証明に係る販売数量が直ちに本願商標に係る販売数量とは認めがたいといわなければならない。
してみれば、甲第1号証ないし同第4号証をもってしては、本願商標が使用により自他商品の識別性を獲得したものと認定するには、客観性に乏しく、また、不十分といわなければならない。
ウ、本願商標の指定商品と使用に係る商品の同一性について検討するに、
本願に係る指定商品は筆記用具であるところ、甲第3号証及び同第4号証の証明に係る商品は、本願に係る指定商品の中の一部である「ゴルフスコアカード用筆記具」と認められるものであり、また、同第1号証及び同第2号証の証明に係る商品にあっても、前記甲第3号証及び同第4号証よりすれば、「ゴルフスコアカード用筆記具」とみられるものである。
したがって、甲第1号証ないし同第4号証の証明に係る商品は、本願に係る指定商品の一部についてのものにすぎない。
▲3▼ 以上、請求人提出の証拠によっては、本願に係る指定商品の全てについて証明しているものとは認められず、また、「ゴルフスコアカード用筆記具」についてみても、本願商標が使用により自他商品の識別機能を有するに至ったものと認めることはできない。
(4)したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、同法第3条第2項には該当しないものであるから、原査定の認定・判断は正当なものであって取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 1999-10-01 
結審通知日 1999-10-19 
審決日 1999-11-04 
出願番号 商願平9-102632 
審決分類 T 1 8・ 17- Z (Z16)
T 1 8・ 13- Z (Z16)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和田 恵美神田 忠雄 
特許庁審判長 三浦 芳夫
特許庁審判官 渡口 忠次
宮川 久成
代理人 高良 尚志 

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