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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない 033
管理番号 1066277 
審判番号 審判1998-35089 
総通号数 35 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2002-11-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-03-04 
確定日 2002-06-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第3201780号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 1 本件商標
本件登録第3201780号商標(以下、「本件商標」という。)は、下記に示すとおりの構成よりなり、第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」を指定商品として平成6年1月12日に登録出願され、同8年9月30日に設定登録がされたものである。

2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする旨の審決を求め、その理由及び請求人の答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として疎甲第一号証ないし同第八号証(枝番を含む。)を提出している。
(1) 請求人が引用する登録第3165021号商標(以下、「引用商標」という。)は、「北街道」の文字を横書きしてなり、第33類「果実酒」を指定商品として平成5年7月23日に登録出願され、同8年6月28日に設定登録がされたものである。
本件商標は、商標法第8条第1項の規定に該当するにもかかわらず、登録されたものであり、その登録は同法第46条第1項により無効とされるべきである。
(2) 引用商標の「北街道」は、北海道の「海」と「街」をもじって表現したところに顕著性が存する。この顕著性の「街」の表現をそっくり取り入れて「北街道」と表現したうえで、これに単に一般的形容詞になぎない、したがって、何らの顕著性を有しない「ロマンティック」を冠したのみの本件商標及び本件商標類は、「ロマンティック」を上段に冠しようが前段に冠しようが、いずれも引用商標の顕著性を奪っていることは明々白々である。もしこれが許されるとするなら、例えば、「メルヘン北街道」、「美しの北街道」、「ビューティフル北街道」、「雄大北街道」、「豊かな北街道」、「冷涼な北街道」、「フレッシュ北街道」等々あらゆる形容詞を付けることによって容易に「北街道」の顕著性が奪われることになる。被請求人の主張は引用商標の効力を潜脱するためのこじつけ以外の何物でもなく、これを許せば、「北街道」に商標権を付し専有効力を認めた意味は全く没却されることとなり、法的保護と信頼は著しく失われることとなろう。本件商標を認めて新たな商標権を付与することは、引用商標のもつ専有的効力を滅却して、ひいては商標権制度そのものの壊滅を招くことになりかねない。
(3) 被請求人は、「ROMANTIC」なる商標登録が認められていることを根拠に、あたかも本件商標の「ロマンティック」の文字部分が顕著性を有するかのごとく主張をしている。しかし、これは全く根拠とならない。すなわち、「ROMANTIC」はそれ自体単独で使用する場合、それは一般形容詞として使用されたものではなく、むしろ固有名詞として使用された本件商標では全く該当しない例である。
(4) 被請求人は、請求人の有する引用商標が現に使用されていないから具体的に商品の混同が生じない、したがって、本件商標の登録を無効にする理由がないと主張する。しかし以下の点で被請求人のこの主張は理由がない。
(a) 商標権の存続期間は設定登録の日から10年有効であり、その後の更新が認められている。
(b) 請求人は、引用商標を使用したワインを、疎甲第四号証の一のとおり平成8年7月から北海道内のみに於ける贈答や販売のため製造販売している(疎甲第5号証)。
(c) 現在も北海道内限定販売として、疎甲第六号証の一ないし三のとおり「北街道」の商標でハスカップ&リンゴの果実酒を製造販売している。
(d) 請求人は、北海道一のワイン仕込量と作付面積を有している(疎甲第八号証の一、二)が、その製造にかかるワインは全て北海道産の果実から醸造している。このため生産に限りがあり、「北街道」をラベルに使用したワインの醸造本数は少ないため、全国販売しておらず、北海道内限定発売としている。
したがって、全国に向けた商品カタログ(乙第10号証ないし同第14号証)には掲載していないのは当然である。
(e) 被請求人は本件審判請求後に新たに自らの前記(2)の主張に付合させるために横一列の「ロマンティック北街道」ラベル(乙第6号証及び同第7号証)を作成しているが、従来も現在も二段表示(疎甲第三号証の一、二)を使用している。
なお、平成11年11月15日付の被請求人のインターネットのホームページで入手した商品ラインナップには、横に一連に連続した表示がされておらず、翌16日現在も小樽市内の小売店で「ロマンティック」と「北街道」とが分かれて表示されている商品が販売されている(疎甲第七号証の一ないし四)。
(5) 請求人が「北街道」を使用した理由は、北海道産であることと請求人の商品であることを消費者に意識させる点にあるが、もとよりワインは農産加工食品であり、ワイン生産地の農作物から造られるべきであると考えている。
「ホッカイドウ」、「北街道」、「Hokkaido」いずれの表記にせよ、単に売れるからという理由で被請求人のように輸入原料を使用し、北海道産を想わせる名前を使用することは、消費者保護の立場からも避けるべきであり、農産加工食品の地名表示は、原料生産地名表示が本来であると考える。商標は商品の顔であり、信用の証であり、「ロマンティック」なる一般形容詞を付して独自の顕著力が生じるものではない。
商標権の権威と信用のためにも、本件商標の登録は無効とされるべきである。

3 被請求人の答弁
(答弁の趣旨)
本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、答弁書においてその理由を次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし同第14号証を提出している。
(1) 本件商標である登録第3201780号商標は、下記に示す構成よりなり、平成6年1月12日その登録出願し、同8年9月30日登録を受けたものである(乙第1号証及び同第2号証)。
これに対して、請求人の引用商標である登録第3165021号商標は、漢字「北街道」を横書きしたものであり、平成5年7月23日に登録出願され、同8年6月28日に設定登録されたものである(乙第3号証及び同第4号証)。
しかして、請求人は、本件商標が引用商標と同一ないしは極めて類似しているとし、商標法第8条1項の規定に違反しているので、その登録が無効である旨主張している。
しかしながら、本件商標は引用商標と何ら類似するものでなく、本件審判請求は正当な理由なく失当といわざるを得ない。
(2) すなわち、本件商標は、上記のとおり「ロマンティック」部分と「北街道」部分に段落を設けず、文字の大きさ、色彩、字間を統一して一連に「ロマンティック北街道」と表記するとともに漢字部分の振り仮名を「ロマンティック」と同じく片仮名文字で表記してなる。ここに「ロマンティック」の語は英語「romontic」の語を直感させるものであって「伝奇的。空想的。浪漫的」の語義を有する形容詞であって、商品「果実酒」の品質表示、等級表示その他の記述的な表示として通常用いられる語で全くないばかりか、「ロマンティック街道」といえば、たとえば新村出編「広辞苑」第4版(1995年11月15日、株式会社岩波書店発行)によれば、「ドイツ南部、ヴュルツブルクからアウクスブルクを経てフュッセンに至る道路。長さ約350キロメートル。沿道にローテンブルク・ディンケルスビュール・ネルトリンゲンなど、古いたたずまいを残す町が連なり、多くの観光客が訪れる。」とあるように世界的著名な観光的名称であって、本件商標がこれに近似する名称である、と直感させるものであって、全体的に統一した特定の印象ならびに観念を具有するものであってみれば、本件商標はあくまで一連一体的に「ロマンティックホッカイドウ」と称呼されるものと解されるべきである。
すなわち、本件商標の自然的称呼観念は「ロマンティックホッカイドウ」である。
(3) これに対して引用商標は上記の構成からなり、その構成中「街道」の語義が、「各都市間を結ぶ主要道路」であることは明らかで、例えば、「裏街道」のごとくその前の語が地理的な方角、方向あるいは地名を表す場合が多く、引用商標「北街道」からも「北の街道(キタノカイドウ)」の意を直感させるものであって、してみればその自然的称呼は「キタカイドウ」であると言わざるを得ない。
すなわち、引用商標は、明らかにその自然的称呼を「キタカイドウ」とするものであるが、仮に百歩譲って「ホッカイドウ」の称呼が生じると仮定しても、一連に「ロマンティックホッカイドウ」の称呼を自然とする本件商標とは何ら類似するものでなく、本件商標は引用商標と全く類似しないものである。
(4)被請求人の調査によれば、 請求人は上記引用商標をその指定する商品「果実酒」について現に継続して使用しているものとは到底推測し得ないものである。
すなわち、乙第10号証ないし同第14号証は請求人の頒布した商品案内用のリーフレットまたは価格表であるが、そのいずれにも引用商標が使用されていない。もしも引用商標が現に使用されているものでない、とすればこの種商品の実際の取引においても具体的に商品の混同があり得ず、上述の如く本件商標と引用商標が称呼、観念、外観の諸点から類似しないものであるばかりか、出所の混同を惹起するおそれは全く無いことが明白と言わざるを得ないものである。
以上のとおり本件審判請求は何ら正当な理由なく、よって「答弁の趣旨」のとおり審決を求める。

4 当審の判断
本件商標と引用商標の類否について判断するに、本件商標は、下記に示すとおりの構成よりなるものであるところ、その構成に係る各文字は、同書、同大に、ほぼ等間隔にまとまりよく一連に表されている上に、これよりは、「ロマンチックな北の街道」又は「ロマンチックな北海道」という如き観念が生ずると認められものであるから、本件商標は、常に一体のものとして取引に供されるものというべきであり、また、「ホッカイドウ」、「北街道」の部分のみをもって称呼、観念を生ずるとする特段の事由も見当たらない。
そうとすれば、本件商標は、その構成文字に応じて「ロマンティックホッカイドウ」の称呼のみを生じるものと判断するのが相当である。
他方、引用商標は、その構成文字に相応して「ホッカイドウ」の称呼を生じるものと認められる。
してみれば、両商標は、称呼、観念において明らかな差があり、外観においても明らかに区別し得るものであり、本件商標と引用商標とは、その外観、称呼、及び観念のいずれの点より見ても互いに相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
請求人は「ロマンチック」が形容詞で顕著性がない旨主張するが、本件商標の指定商品について、「ロマンチック」の文字が顕著性がないとは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定によって無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 本 件 商 標


審理終結日 2000-06-08 
結審通知日 2000-06-20 
審決日 2000-07-05 
出願番号 商願平6-1272 
審決分類 T 1 11・ 262- Y (033)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米重 洋和木村 幸一 
特許庁審判長 工藤 莞司
特許庁審判官 江崎 静雄
大島 護
登録日 1996-09-30 
登録番号 商標登録第3201780号(T3201780) 
商標の称呼 ロマンティックホッカイドウ、ロマンティック 
代理人 山田 清 
代理人 野本 陽一 

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