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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Z09 |
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管理番号 | 1066223 |
審判番号 | 無効2001-35072 |
総通号数 | 35 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2002-11-29 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-02-20 |
確定日 | 2002-09-17 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第4211735号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第4211735号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第4211735号商標(以下「本件商標」という。)は、標準文字により「IPGATEWAY」の文字を横書きしてなり、平成9年7月11日に登録出願、第9類「理化学機械器具,測定機械器具,配電用又は制御用の機械器具,電池,電気磁気測定器,電線及びケーブル,写真機械器具,映画機械器具,光学機械器具,電気通信機械器具,レコード,電子応用機械器具及びその部品,オゾン発生器,電解槽,ロケット,遊園地用機械器具,運動技能訓練用シミュレーター,乗物運転技能訓練用シミュレーター,回転変流機,調相機,電気アイロン,電気式ヘアカーラー,電気ブザー,火災報知機,ガス漏れ警報器,盗難警報器,磁心,抵抗線,電極,映写フィルム,スライドフィルム,スライドフィルム用マウント,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,自動販売機,金銭登録機,硬貨の計数用又は選別用の機械,作業記録機,写真複写機,手動計算機,製図用又は図案用の機械器具,タイムスタンプ,タイムレコーダー,電気計算機,パンチカードシステム機械,票数計算機,ビリングマシン,郵便切手のはり付けチェック装置,家庭用テレビゲームおもちゃ,電気溶接装置,電動式扉自動開閉装置,電子スチルカメラ」を指定商品として、平成10年11月13日に登録されたものである。 第2 請求人の引用商標 請求人が、本件商標の登録無効の理由に引用する平成10年商標登録願第52962号商標は、別掲(1)に示すとおりの構成よりなり、第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成10年6月24日に登録出願されたものである。同じく、登録第4316862号商標は、別掲(2)に示すとおりの構成よりなり、平成10年6月24日に登録出願され、第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成11年9月24日に設定登録されたものである。同じく、登録第4316863号商標は、別掲(3)に示すとおりの構成よりなり、平成10年6月24日に登録出願され、第9類「電子計算機(中央処理装置及び電子計算機用プログラムを記憶させた電子回路・磁気ディスク・磁気テープその他の周辺機器を含む。),その他の電子応用機械器具及びその部品」を指定商品として、平成11年9月24日に登録されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第101号証(枝番を含む。)を提出した。 1 請求の理由 (1)本件商標は、頭部のローマ字の2文字「IP」と「GATEWAY」の語の結合された商標であることは容易に認識することができる。 そして「IP」の2文字は、それのみでは商標としての識別性を有しないから、本件商標の要部は「GATEWAY」の語にあるものと思料される。 したがって本件商標は「アイピーゲートウェイ」の称呼のほか、単に「ゲートウェイ」とも称呼されるものである。 (2)「Gateway/ゲートウェイ」は請求人の商号の著名な略称である。 本件商標は、GatewayとGATEWAYは同一であるとみなすことができるから、請求人の著名な略称を含む商標であるということができる。 よって本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。 (3)後述するように請求人は引用各商標を使用してコンピューター関連機器の販売を行ってきた。そして、引用各商標は本件商標出願の当時において日本の需要者間に請求人の販売に係るコンピューター及びその関連機器の商品たることを表示する商標として周知されるに至っていた。 本件商標は、称呼上請求人の引用各商標に類似し、その指定商品中電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具等は請求人の商品と同一又は類似する。 よって本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (4)上記(2)及び(3)に述べたと同様の理由により、本件商標がその指定商品中特に電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具,電線及びケーブル,各種警報機,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,家庭用テレビゲームおもちゃ等の商品に用いられるときは、それらがあたかも請求人の商品であるかまたは請求人と何らかの関係のある者による商品であるかのごとき、商品の出所についての混同を生じさせるおそれがある。 よって本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。 (5)以下、本件商標出願の当時即ち平成9年7月11日の当時において、請求人がコンピューター及びその関連業務の分野において「GATEWAY/ゲートウェイ」と略称されていて、需要者間に周知されていたこと及び「GATEWAY」は請求人の全商品の商標としても使用されていて、請求人の商品を表示する商標として需要者間に周知されていたことについて詳述する。 (ア)請求人とその事業について 請求人は1985年当時まだ大学生であった現会長のテッド・ウエイトがアイオワ州のスー市にある父親の牧場の一角にある小さな納屋を事務所としてコンピューターの周辺機器とソフトウェアを通信販売することから始められた企業である。そのことを印象づけるために請求人は乳牛を観念させるデザインのボックスマークをも使用している。 請求人はユーザーの希望する仕様に基づいたパソコンを設計する注文生産と、ユーザーに直結して受注・生産・販売・アフターサービスを行う直販方式とを採用したため、幅広くユーザーに受け入れられ、その事業は飛躍的に進展し年間売上は1987年には150万ドル、1988年には1200万ドル、1989年には7060万ドルと拡大し、1997年には62億9000万ドル、1998年には74億6800万ドルを売上げるに至った。 請求人は設立当初はGateway2000と称していたが、1998年には名称を現在の社名(Gateway,Inc.)に改め、また本拠をカリフォルニア州のサンディエゴ市に移した。 現在では、英国,フランス,日本等の主要国に販売の拠点を設けその従業員数は1万9千人を超えている。また米国内の直営のパソコン店舗は160店を超え、インターネット「gateway.net」の加入者は40万人に達している。更に98年度のパソコンの集荷台数は全米において第4位、世界市場でも第7位にランクされている。 日本における事業は1995年5月、横浜市に資本金43.45億円の100%出資の仔会社日本ゲートウェイ株式会社を設立し、直販方式で販売を行っている。設立当初の従業員数は150名余であったが、現在では約700名に達している。この事実からも請求人がパソコン及びその周辺機器の日本における販売が如何に成長しているかの状況を知ることができる(甲第1号証及び同第2号証)。 したがって日本ゲートウェイ株式会社が1995年以降、日本において商標「Gateway」を用いて行ったコンピューター関連商品の販売、広報活動は全て本件請求人がなしたものとなすことができ、日本ゲートウェイ株式会社の商標「Gateway」の使用は全て請求人のために効力を生じている。 (イ)請求人の営業活動について 請求人は直販方式を以て商品の販売を行っているので商品のユーザーに対する紹介は、請求人の発行に係るPC総合情報誌「ゲートウェイ・スーパーブック」(甲第1号証及び甲第2号証)によるほか、コンピューター関連専門誌「日経パソコン」に1996年以降ほとんど各号に継続して複数の頁に広告し、ユーザーから直接の注文を受けている(甲第3号証ないし甲第93号証)。 さらに請求人はインターネット上にホームページを設け、その販売する商品のPRを行う他、ユーザーからの注文や多くの要望、照会等に応じている(甲第1号証及び同第2号証)。 上記した請求人の広範な営業活動により、請求人の引用各商標は、本件商標出願の当時には、需要者間に請求人の業務に係る商品を表示する標識として周知されるに至っている。 (ウ)そもそも「Gateway」の名称は、1985年に請求人が創業して以来一貫して使用してきた名称であって、コンピューター関連のハードウエア,ソフトウエアの分野においては、本件商標出願の当時には請求人の名称の略称としても米国内、日本国内は言うに及ばず、その他の国々においても需要者間に周知されるに至っており、本件商標の出願の当時コンピューター関連の分野においては「Gateway/ゲートウェイ」といえば、請求人を指称するものとして、取引者、需要者間に広く認識されるに至っていた。この事実については、甲第1号証ないし甲第93号証によって立証されている。 2 答弁に対する弁駁 (1)被請求人は、請求人の引用する引用各商標はいずれも、本件商標より後願であるから、本件商標の無効理由となり得ないと主張する。 請求人は、引用各商標を本件商標の先願であると主張しているのではない。このことは請求理由から一目瞭然である。 請求人は「GATEWAY」をその創業の当初から、請求人の商号の主要部として用い、また取扱商品の商標として用いている。その結果、請求人の本国は言うに及ばず日本を含む世界の多くの諸国において登録されるに至っている(甲第97号証ないし甲第101号証)。 引用各商標は、請求人の商標を示すために引用したものであるから本件商標の無効理由として主要な要素である。 したがってこの点に関する被請求人の答弁は理由がない。 (2)被請求人は、本件商標はローマ字で同書同大一連不可分に「IPGATEWAY」と記したものだから「IP」と「GATEWAY」に分離分割されることはないと主張する。 しかしながら「GATEWAY」は請求人商号の著名な略称であり、同時に著名な商標である。そして「IP」の文字が「GATEWAY」に接頭語として結合されたからといって、別段の意味合いが観念される語が造語されるわけのものではない。 また看者は、本件商標の構成要素として比重の高い「GATEWAY」の語にその注意が吸引されること必定である。 したがって本件商標は「GATEWAY」の部分が分離観察されることに充分な理由が存する。 よってこの点に関する被請求人の答弁は理由がない。 (3)被請求人は、『請求人の主張する商号の略称は「ゲートウェイ」ではなく「ゲートウェイ2000」と解されなければならない』と主張し、したがって本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しないと答弁している。 請求人は、その設立の当初「Gateway2000,Inc.」と称しており、これに伴って日本の子会社も当初「日本ゲートウェイ2000株式会社」と称していたことを否定するものではない。 しかしながら、請求人自らを称するときに「GATEWAY2000」又は「ゲートウェイ2000」と称することもあったが、通常は「GATEWAY」又は「ゲートウェイ」と略称していた。例えば甲第6号証(日経パソコン1996年2月)、甲第7号証(日経パソコン1996年4月)に示されるように、「GATEWAYならではのサービス体制」のように略称していた。 このような事例からも明らかなように、請求人の名称は自らも「GATEWAY」と略称し、また需要者も請求人を「GATEWAY」と略して呼んでいた。 したがって、請求人の名称が「GATEWAY」と略称されていたであろうことは、甲各号証から容易に考えられることである。 本件商標は、請求人の名称の著名な略称である「GATEWAY」の語を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当すること明白である。 よってこの点に関する被請求人の答弁は理由がない。 (4)被請求人は、本件商標は「IPGATEWAY」であって請求人が引用する「GATEWAY」あるいは「GATEWAY2000」とは非類似であるから、商標法第4条第1項第10号に該当しないと答弁する。 しかしながら本件商標が「IPGATEWAY」という一体不可分の商標として認識しなければならない特段の理由はないのであるから、被請求人の答弁は理由がない。また被請求人は本件商標出願の日、即ち1997年7月11日以前において請求人の商標が周知であることが立証されていないと抗弁するが、当を得ていない。 請求人は1985年以来米国その他の国において、日本においては1995年以降1998年に現在の名称に変更するまで「GATEWAY2000」の名称を用いていた。そして請求人は「GATEWAY2000」と略称されるほか、単に「GATEWAY」とも略称されていて少なくとも1997年7月の当時には需要者間に周知されるに至っていた。 1997年7月の当時請求人が使用していた商標は「GATEWAY200」であるが、「2000」の部分はそれ自体は識別性のない付記的な要素として認識されるのであるから、主要部は「GATEWAY」の語にあるということができる。請求人の引用各商標は1985年以降米国その他の国において、日本においては1995年以降は日本の子会社を通じて広範に使用されていたことが甲各号証によって立証されている。 また本件商標は、「GATEWAY」の語が「IP」の文字から分離観察されるべき商標であるから、請求人の引用各商標に類似し、同一又は類似の商品に使用するものである。 よって本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当することも明白である。 (5)被請求人は、本件商標は請求人の商標とは非類似であり、また、請求人の商標が1997年7月の当時周知されていたことは立証されていないから、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当しないと答弁する。 しかしながら、本件商標が請求人の商標に類似すること及び請求人の商標が1997年7月の当時需要者間に周知されていたことは、前述(4)のとおりである。 したがってこの点に関する被請求人の答弁は理由がない。 (6)なお請求人は甲第97号証の1ないし3及び甲第98号証の1ないし23を以て、請求人の商標が米国及び世界の各国で登録されていて周知されていることを主張した。請求人の商標はこれらの他にも多くの国で登録されているので、その旨を明らかにするため甲第97号証の4ないし7及び甲第98号証の24ないし55として各国の登録証を本書に添付し追加して提出する。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第17号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)請求人の無効理由について 請求人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同第10号、同第15号の規定に該当することをその無効理由とするものである。 しかしながら、前記商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の規定を適用する場合は、商標法第4条第3項の規定を満たさなければならない。すなわち、「……商標登録出願の時に当該各号に該当しないものについては、これらの規定は、適用しない。」との規定の解釈からして、少なくとも、本件商標の出願時である平成9年7月11日に前記各号に該当するものであることが必須の要件である。 しかるに、請求人が引用する引用各商標はすべて本件商標の出願時以降に出願されているものである。 上記引用各商標はいずれも本件商標の出願日である平成9年7月11日よりも後願であることは明白であり、引用各商標は、法条適用することができないものを引用したものである。 したがって、請求人の引用する引用各商標は、本件商標の登録を無効とする理由にはなり得ない。 (2)本件商標について 本件商標は、ローマ文字で同書同大一連不可分により「IPGATEWAY」と普通に横書きされてなるものであり、その構成から「アイピーゲートウェイ」と自然な称呼が生ずるものである。 本件商標は、その構成態様から全体的に軽重の差がない造語標章として登録が認められたものである。この登録の事実からして、本件商標が「IP」と「GATEWAY」とに分離観察されて、「アイピーゲートウェイ」の称呼の他に「ゲートウェイ」との称呼が生ずる余地はないものと解する。 (3)請求人の主張する商標法第4条第1項第8号の規定に対する答弁 請求人は、『「GATEWAY/ゲートウェイ」は、請求人の商号の著名な略称である。本件商標は、GatewayとGATEWAYは同一であるとみなすことができるから、請求人の著名な略称を含む商標であるということができる。』と主張する。 さらに、『請求人は設立当初はGateway2000と称していたが、1998年には名称を現在の社名(Gateway,Inc.)に改め、……』と述べている。 また、『日本における事業は1995年5月、横浜市に資本金43.45億円の100%出資の子会社日本ゲートウェイ株式会社を設立し、……状況を知ることができる。(甲第1号証及び同第2号証)』と述べている。 してみると、請求人の述べるところ、現在の請求人の商号は、「Gateway,Inc.」であるが、本件商標の出願時(平成9年7月11日)での請求人の商号は、「Gateway2000,Inc.」である。また、請求人は、日本では子会社を平成7年5月に設立し、その商号名称を「日本ゲートウェイ株式会社」と述べているが、請求人の挙げた証拠物件を詳細に検討すると、本件商標の出願時(平成9年7月11日)では、子会社の商号名称は「日本ゲートウェイ2000株式会社」のようである。請求人の挙げた甲第23号証の2によると、日経パソコン(97年6月30日号)の裏表紙に「日本ゲートウェイ2000株式会社」と明記されている。おそらく、本件商標の出願時以降に、親会社の商号変更にあわせてそれまでの「日本ゲートウェイ2000株式会社」から「日本ゲートウェイ株式会社」に変更されたものと思われる。 してみると、本件商標の出願時において、請求人の商号は、正しくは国外において、「Gateway2000,Inc.」であり、国内においては、「日本ゲートウェイ2000株式会社」であることが明白である。 次に、請求人の商号の略称としての使用事実を検証してみると、請求人の挙げた甲第3号証ないし甲第23号証から、請求人はいたるところに「ゲートウェイ2000」を使用していることが確認できる。してみると、請求人の主張する商号の略称は、「ゲートウェイ」ではなく「ゲートウェイ2000」と解されなければならない。請求人の主張するような「ゲートウェイ」が「Gateway2000,Inc.」あるいは「日本ゲートウェイ株式会社」の略称として解される余地はない。また、請求人は本件商標の出願時において商号の略称として「ゲートウェイ」が著名であることの理由をまったく立証しておらず、その事実を確認することができない。 であるから、請求人の商号の略称と本件商標とを対比するまでもなく、商標法第4条第1項第8号の規定に該当しないものであることは明白である。 (4)請求人の主張する商標法第4条第1項第10号の規定に対する答弁 請求人が主張する商標法第4条第1項第10号については、本件商標「IPGATEWAY(アイピーゲートウェイ)」と請求人が主張する「GATEWAY(ゲートウェイ)」あるいは「Gateway2000(ゲートウェイニセン)」とが称呼、外観、観念において類似すると解される必要が生じるが、本件商標は全体にまとまりよく構成されてなり分離観察される必然性もないこと、両商標の音構成において顕著な差異を有することから、両商標はまったくの非類似の商標である。 ここでの対比判断する基準は、前述したとおり、本件登録出願日であるから、請求人が主張しなければならない商標は「Gateway2000」である。しかるに該商標が周知であることを請求人は立証しておらず、商標法第4条第1項第10号を適用する理由がない。 したがって、請求人の商標と本件商標とを対比するまでもなく、商標法第4条第1項第10号の規定に該当しないものであることは明白である。 (5)請求人の主張する商標法第4条第1項第15号の規定に対する答弁 請求人が主張する商標法第4条第1項第15号については、本件商標「IPGATEWAY(アイピーゲートウェイ)」と請求人が主張する「GATEWAY(ゲートウェイ)」あるいは「Gateway2000(ゲートウェイニセン)」とが称呼、外観、観念において類似すると解される必要が生じる(ここでは、「ゲートウェイ2000」である。)が、本件商標は全体にまとまりよく構成されてなり分離観察される必然性もないこと、両商標の音構成において顕著な差異を有することから、両商標はまったくの非類似の商標である。したがって、本件商標が指定する商品において、請求人の商品であるか又は請求人と何らかの関係があるかのごとき、商品の出所についての混同を生じるおそれがあるものと解されることはまったくあり得ない。 なお、「ゲートウェイ」の周知性については、請求人の挙げた証拠物件から本件商標の出願時以前のものとして確認できるのは、甲第3号証ないし甲第23号証のみであるが、いずれも「Gateway2000」あるいは「ゲートウェイ2000」であり、「ゲートウェイ」の周知性を立証するものではない。 であるから、商標法第4条第1項第15号の規定に該当するものではないこと、明白である。 上記の答弁の理由により、請求人の主張する商標法第4条第1項第8号、同第10号及び同第15号の適用は誤りであり、本件商標の無効理由にはならないものと解する。 2 弁駁に対する答弁 (1)請求人は、『「GATEWAY」をその創業の当初から、請求人の商号の主要部として用い、また取扱商品の商標として用いている。』旨を述べている。そして、請求人の創業については、審判請求書に1985年と記載されているが、その事実を立証する証拠方法として提出された甲第1号証ないし甲第96号証中、本件商標の出願時(平成9年7月11日)以前の資料としては、甲第3号証ないし甲第23号証であるが、そこに使用されている商標は、いずれも「GATEWAY2000」であって、設立当初の名称「Gateway2000,Inc.」の略称として使用されていたことを示すものである。 また、審判弁駁書において『請求人は1985年以来(日本においては1995年以降)1998年に現在の名称に変更するまで「GATEWAY2000」の名称を用いていた。』事実を容認している。してみれば、本件商標の出願日(1997年7月11日)以降の1998年迄は「GATEWAY2000」が商号の略称ということになる。 この点について請求人は、審判弁駁書において、『「GATEWAY」または「ゲートウェイ」と略称していたとして甲第6号証及び甲第7号証に「GATEWAYならではのサービス体制」のように略称していた。』旨を述べているが、その頁には「GATEWAY2000」が商号の略称として示されており、同頁の文中には数多くの「GATEWAY」が使われているが、すべて2000が付加されている。 (2)請求人は、審判弁駁書において、『本件商標の構成要素として比重の高い「GATEWAY」の語にその注意が吸引されること必定である。従って本件商標は「GATEWAY」の部分が分離観察されることに充分な理由が存する。』旨を述べているが、本件商標「IPGATEWAY」が、一つのまとまった造語として登録されたものである。もし、請求人が主張するごとく、本件商標が「IP」と「GATEWAY」に分離されるものであれば、その後願である「図形」と「GATEWAY」からなる請求人の商標(登録第4316862号、同第4316863号)は、本件商標によって拒絶になっていなければならないものである。 また、乙第1号証ないし乙第17号証によれば、「ゲートウェイ」、「gateway」は、「プロトコルが異なるシステムやネットワークを、相互に接続する機器。」「異なるネットワークへ接続すること。」等の意味を有し、商品「コンピュータ」については、該商品の品質等を表す識別力を有さない語といえるものである。 したがって、請求人が主張するような要旨認定が可能ならば、本件商標は登録されることなく、商標法第3条第1項第3号によって拒絶されていたものである。しかるに、本件商標が登録されたことは、本件商標が一連の造語として判断されたことによるものであることは明確である。 (3)以上に述べたとおり、本件商標と請求人が主張する商標登録願1件と登録商標2件とは、先に述べたとおり商標が非類似であるから、商標法第4条第1項第10号および同法第4条第1項第8号に該当しないこと明らかであり、また、本件商標の出願当時請求人の商号は「GATEWAY2000,Inc.」であって、その略称は「GATEWAY2000」であり、仮に百歩譲って「GATEWAY」,「ゲートウェイ」の称呼が生ずるとしても、本件商標は「IPGATEWAY」であり、常に「アイピーゲートウェイ」の称呼のみが生ずるものであるから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 第5 当審の判断 1 甲第1号証ないし甲第46号証及び主張の全趣旨によれば以下の事実が認められる。 (1)請求人は、1985年当時まだ大学生であったテッド・ウェイトがコンピューターの周辺機器とソフトウェアを通信販売することから始めた企業であり、ユーザーの希望する仕様に基づいたパソコンを設計する注文生産と、ユーザーに直結して受注・生産・販売・アフターサービスを行う直販方式とを採用したため、幅広くユーザーに受け入れられ、その事業は飛躍的に進展し年間売上は1987年には150万ドル、1988年には1200万ドル、1989年には7060万ドルと拡大し、1997年には62億9000万ドル、1998年には74億6800万ドルを売上げるに至ったこと。 (2)請求人は設立当初はGateway2000と称していたが、1998年には名称を現在の社名(Gateway,Inc.)に改め、また本拠をカリフォルニア州のサンディエゴ市に移したこと。 2001年現在では、英国,フランス,日本等の主要国に販売の拠点を設けその従業員数は1万9千人を超えていること。 (3)日本における事業は1995年5月、横浜市に資本金43.45億円の100%出資の子会社日本ゲートウェイ2000株式会社(その後、日本ゲートウェイ株式会社と改称)を設立し、直販方式で販売を行っていること。 (4)甲第1号証は、本件商標の登録出願後に発行されたものであるが、請求人について「1993 GATEWAY2000ヨーロッパをアイルランド・ダブリンに設立イギリスでも販売を開始。12月には米国NASDAQの公開上場企業となる。『フォーチュン500』に入り、米国でも最も早く成長した企業と称される。」、「1995 過去10年間で300万台パソコンを世界で販売。売上総額約37億ドル。5月に日本ゲートウェイ2000株式会社を設立。9月より販売を開始。ベルギー、スイス、ルクセンブルグでも営業開始。社員約8,000名」、「1996 これまでの出荷台数1,900万台を突破。年間総売上は前年比37%増の50億4,000万ドルに達した。また成長著しいアジア太平洋地域での売上げは2億3,000万ドルを超えた。」、「1998 累計集荷台数3540万台。年間総売上75億ドル。社員数19,000人に。」などの記載があること。 (5)請求人は、コンピューター関連専門誌「日経パソコン」に1995年9月から1998年9月までの期間、44回にわたり、ほとんど毎月、広告を掲載して、自己の製品などについて宣伝したこと(甲第3号証ないし甲第46号証)。そして、これらの広告中、1998年6月までのもの(甲第3号証ないし甲第42号証)に、請求人は、図案化したGと思われる図形と「GATEWAY2000」の文字の組合せを要部とする商標を自己の商標として表記し、1998年7月以降のもの(甲第43号ないし甲第46号証)に、牛の白黒模様を表した箱の図形と「Gateway」の文字とを組み合わせた商標を表記したこと。 (6)甲第3号証及び甲第4号証には、「つねに業界をリードするハイスペック&ロープライス。GATEWAYはあなたのお金と時間を大切にします。」、「高い信頼性があってこそGATEWAYの製品は完成します。いつまでも安心して使えるようしっかりサポートします。」との宣伝文が掲載されていること。また、甲第3号証ないし甲第5号証中の「GATEWAY2000STORY」に「・・・そして今回、日本のユーザーの方々にGATEWAYの商品を日本ゲートウェイからお届けできることになりました。・・・」との記載があり、甲第3号証ないし甲第7号証には「GATEWAYならではのサービス体制」の表記があること。 2 以上の事実を総合すると、請求人は、本件商標の登録出願がされた平成9年(1997年)7月11日当時、コンピューターを製造販売する会社として世界的に企業活動をしていたものであり、我が国にも進出して子会社を設立し、需要者間に既に著名な会社となっていたものと認められる。また、請求人は、本件商標の登録出願がされる前より、自己の製品を広告宣伝するにあたり、「GATEWAY2000」また「GATEWAY」の文字表記をもって自己を示すことを普通に行っていたものと認められるものであり、かつ、本件商標について登録査定がされた平成10年(1998年)9月24日前より、「GATEWAY2000」又は「Gateway」の文字を含む商標を使用していたものである。 そうしてみると、本件商標の登録出願時また登録査定時には、本件商標の指定商品の取引者、需要者が「GATEWAY」又は「Gateway」の文字に接した場合、これらの文字より請求人あるいは請求人が使用の商標としての「GATEWAY2000」又は「Gateway」の文字を直ちに想起する状況にあったものと判断するのが相当である。なお、「ゲートウェイ」、「gateway」が、「プロトコルが異なるシステムやネットワークを、相互に接続する機器。」「異なるネットワークへ接続すること。」等の意味を有する語であることは、本件商標の指定商品の取引者、需要者における上記想起に何ら影響を及ぼさないといえる。 3 しかるところ、本件商標は、上記のとおり「IPGATEWAY」の文字を横書きしてなり、その構成文字は同書体、同大の文字により一連に表されているものではあるが、「IP」と「GATEWAY」を結合したものと容易に認識できるものであり、また、これ全体として知られた意味合いが生じて一体不可分のものとして看取されるとまではいえない。 4 そうすると、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者が、本件商標の「GATEWAY」の文字部分に注意を引かれ、この文字部分より、コンピューターを製造販売する会社として世界的に著名な請求人あるいは請求人が使用の商標「GATEWAY」また「Gateway」を想起して、その商品が請求人の業務に係る商品、若しくは、請求人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その商品の出所について混同を生ずるおそれが、本件商標の登録出願時また登録査定時にあったものといわなければならない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであり、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
(1)平成10年商標登録願第52962号商標 (2)登録第4316862号商標 ( (3)登録第4316863号商標 |
審理終結日 | 2002-04-19 |
結審通知日 | 2002-04-24 |
審決日 | 2002-05-08 |
出願番号 | 商願平9-137314 |
審決分類 |
T
1
11・
271-
Z
(Z09)
T 1 11・ 25- Z (Z09) T 1 11・ 23- Z (Z09) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 吉田 静子 |
特許庁審判長 |
野本 登美男 |
特許庁審判官 |
上村 勉 茂木 静代 |
登録日 | 1998-11-13 |
登録番号 | 商標登録第4211735号(T4211735) |
商標の称呼 | アイピイゲートウエー、ゲートウエー |
代理人 | 佐々木 宗治 |
代理人 | 大村 昇 |
代理人 | 小林 久夫 |
代理人 | 木村 三朗 |
代理人 | 河合 信明 |